GaNを使わずにGaN充電器並みの小ささを実現したADAMON 65Wの仕組みを分解で探る

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概要

E-Power SolutionsのUSB充電器「ADAMON 65W」は、日本企業が開発した世界最小級の65W充電器である。最近のUSB充電器では窒化ガリウム(GaN)パワー半導体がほぼ標準になっているが、ADAMONは従来からあるSi(シリコン)パワー半導体を使っている。それでも、GaNを使う他社製品と比べてサイズはほぼ同じか、やや小さいくらいだという。本動画の話者であるイチケンは、この小ささと高い効率がどんな回路的・構造的工夫から生まれているのかを、性能測定、分解、回路のリバースエンジニアリング、動作波形の観測を通して確かめている。

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外観と重さ:縦長形状で、このクラス最軽量級

ADAMON 65Wは1ポートで、折りたたみプラグを採用した縦長の直方体形状である。話者によれば、立方体形状よりも縦長の直方体形状の方が放熱には有利だという。縦長の充電器は自重でコンセントから抜けやすい場合があるが、ADAMONは本体が軽いため抜けることはなかった。

実際に量ると重さは64.7gだった。他の65W・1ポート充電器と比べると、CIOは70.6g、Ankerは119gであり、話者はこのクラスでは最軽量級だと評価している。

気になった点:低負荷時のコイル鳴き

一つ気になった点として、話者はコイル鳴きを挙げる。特に負荷電流が1Aくらいまでの低負荷時に音が鳴り、動画では無負荷時の音を実際に聞かせている。入力電圧100Vの状態では、話者自身はそこまで気にならないという。ただ、静かな環境では気になる人もいるかもしれないと述べている。

入力電圧を200Vにするとコイル鳴きはさらにひどくなり、話者も「さすがに気になるレベル」としている。日本国内では100Vしか使わないので問題ないが、海外で使う場合は注意が必要だという。また、この音が鳴っても故障ではないと補足している。

スペック比較:体積46.6cm³、体積あたり電力1.39W/cm³

比較対象には、65Wクラス最小級のCIO NovaPort SOLO Ⅱを選んでいる。定格電力はどちらも65Wだが、ADAMONはSiパワー半導体、CIOはGaNパワー半導体を使う。

ADAMONの体積は46.6cm³で、話者は「さすがは業界最小クラス」と評している。クラウドファンディングのサイトによれば発売は2023年6月頃のようで、2年近く業界最小クラスの座にあったことになるという。表面積も小さく、この点は放熱に影響してくる。

性能指標として、まず体積あたりの電力を見ている。この値が大きいほど電源としての性能は高い。65WクラスのUSB充電器では1W/cm³が標準的な値だが、ADAMONは1.39W/cm³だった。Siパワー半導体でここまで小さくできているので、何か特別なことをしているのではないかと話者は考えた。

表面積あたりの電力損失:放熱の余裕は損失の少なさから来ている

次の指標は、事前に測定した電力損失を表面積で割った値である。充電器の放熱はほとんど自然対流で行われるため、表面積が広いほど冷却しやすい。したがって、この値が小さいほど放熱に余裕があることになる。

CIOと比べると、ADAMONの方が放熱に余裕があった。ただし話者は、これは表面積の広さではなく、電力損失の少なさが効いていると説明する。ADAMONは最大電力損失がCIOより1W程度少なく、このサイズでの1Wの差は放熱にかなり効いてくるという。後述するとおりADAMONではサーマルスロットリングが起きず、話者はその理由も電力損失の少なさにあると見ている。電力損失を減らせるかどうかは、充電器にかけられるコストや設計者の技術力が効いてくる部分だという。

電力変換効率:最大93.2%、ただし200V入力では低下

電力変換効率は、コンセントからの交流電力をUSB充電用の直流電力にどれだけ効率よく変換できるかを示す指標である。効率が高いほど本体で発生する損失が少なく、発熱も少なくなる。

測定では、出力電力の全範囲にわたって効率が高く、最大変換効率は20V出力時の93.2%だった。話者によれば、GaNパワー半導体を使った65W充電器の効率は91〜92%程度である。これと比べて、Siパワー半導体でこの結果は数字としてかなり良いと評価している。

コンセント電圧200Vでの効率も測定した。一般的なUSB充電器では200V入力の方が効率は高くなるが、ADAMONは逆に200Vの方が低かった。話者は、内部的に100Vで効率が高くなるよう設計されている可能性があると推測している。

温度とサーマルスロットリング:3時間の連続65W出力で停止なし

サーモグラフィーで見ると、本体の最高温度は71℃で、側面が最も熱くなっていた。充電器全体が均一に暖まっていたことから、話者は内部の熱をうまく表面に拡散できていると判断している。

サーマルスロットリングとは、発熱による故障を防ぐために出力電力を意図的に制限する機能である。これが起きるかどうかを、最も温度が高くなる部分に熱電対を貼り付けて確かめた。実験開始直後から65Wを出力し、温度はそれに従って上昇したが、30分程度で上昇は飽和し、最高温度は68℃だった。約3時間連続で運転してもサーマルスロットリングは起きず、止まる気配もなかったため実験を終了している。

話者は、他メーカーがGaNを採用するなかで、Siパワー半導体だけでここまでの性能を出しているのは「結構すごい事」だと述べ、分解に進む。

分解:3枚の基板と、ぐるりと巻かれたグラファイトシート

内部は3枚の基板で構成されており、表面実装部品が多く載った面などに熱伝導シートが貼られていた。外装の内側にはプラスチックのシールドのような部材があり、全体を1周ぐるっと覆っている。その外側には、グラファイトシートも1周巻かれていた。

このクラスのUSB充電器では、内部を熱伝導ポッティング材で固めることが多いが、ADAMONにはそうした構造はない。グラファイトシートで熱を外側に伝える方式について、話者はAppleのUSB充電器と設計思想が似ていると指摘する。熱は、熱源から熱伝導シート、プラスチックシート、グラファイトシートを経て外装へ逃げていく。本体温度が均一だったのはグラファイトシートが1周巻かれていたおかげであり、サーモグラフィーで最も熱かった面には熱伝導シートが貼られていた。

軽さの理由もここにある。ポッティングをすると質量の20〜30%程度をポッティング材が占めるため、使わなければ大きく軽量化できる。話者は、コイル鳴きもポッティング材を使っていないせいかもしれないと推測している。

外装には、UNIFIVEの刻印があった。話者が調べたところ、E-Power Solutionsはファブレス企業であり、基板設計の最適化、放熱設計、量産などはUNIFIVEが担っているようだという。

回路構成:入力平滑部に置かれた2つのMOSFET

話者は基板を全てばらしてリバースエンジニアリングを行った。主要な構成は次のとおりである。コンセントからの交流を全波整流回路で直流にし、平滑用の電解コンデンサを経て、アクティブクランプ方式のフライバックコンバータと変圧器に送る。そして2次側の回路で20VなどのUSB出力電圧に調整する。

話者が注目したのは、平滑コンデンサ周辺の回路である。回路全体に流れる電流を遮断できる位置にMOSFETが入っており、さらに一部の電解コンデンサにも直列にMOSFETが入っていた。

使われている電解コンデンサの耐圧は、200Vか250Vのものしかなかった。この充電器の入力電圧範囲は100〜240Vで、通常の構成なら電解コンデンサの電圧は340Vまで上がる。これでは明らかに耐圧が足りない。そこで話者は、MOSFETを交流電圧の瞬時値に合わせてオン・オフし、耐圧を超えて電解コンデンサを充電しないように動作しているのではないかと仮説を立て、実験で確かめた。

動作波形:240V入力でもコンデンサ電圧は233Vに抑えられていた

測定では、黄色を交流入力電圧、赤を入力電流、青をMOSFETが直列に入った電解コンデンサの電圧(Vᴄ₁)とした。緑は、DC/DCコンバータ直前の電解コンデンサの電圧である。

入力100Vでは、電解コンデンサの電圧は見慣れた波形だった。入力電圧のピークまで充電されたあと徐々に放電し、次の山が来るとその電圧に張り付いてまた充電される、という繰り返しである。

入力を240Vにすると挙動が変わった。まず青のVᴄ₁は常に一定で、100V強程度だった。話者の説明では、ある程度充電されたところでMOSFETをオフにし、電流が流れないようにしているためである。次に緑のDC/DC直前のコンデンサは、ある一定期間だけ充電され、その後は放電する波形になった。ピーク電圧は233Vで、耐圧250V以下に収まっていた。回路全体の電流を制御するMOSFETが、特定の区間だけオンになって電解コンデンサを充電し、それ以外の区間はオフになって、蓄えた電荷でDC/DCコンバータを動かしているという。

100V入力ではMOSFET付きの電解コンデンサを使い、240Vでは使わない理由について、話者は次のように説明する。電圧が十分に高くなると、2つの電解コンデンサだけでDC/DCコンバータに十分なエネルギーを供給できるからである。こうして入力電圧が電解コンデンサの耐圧より高くても、制御の工夫によってコンデンサ電圧を耐圧以下に抑えていることが確認できた。

考察:低耐圧化が小型化と低損失につながる

最後に話者は、なぜADAMONが小型で低損失なのかを考察している。

一つ目は電解コンデンサの小型化である。電解コンデンサは耐圧が高いほど体積が大きくなる。通常のUSB充電器では、コンセント電圧が100Vのとき電解コンデンサに140Vᴅᴄ、240Vのとき340Vの直流電圧がかかるため、高い方に合わせて450V耐圧品を使うことが多い。一方ADAMONは入力回路でコンデンサ電圧を制御しているので、250V耐圧品で済み、電解コンデンサの体積を大幅に縮小できている。

二つ目は設計のしやすさである。一般的な充電器ではDC/DCコンバータにかかる電圧の振れ幅が100〜340V程度あるのに対し、ADAMONは100〜240V程度にとどまる。そのため、DC/DCコンバータの最適化が他の充電器より少しやりやすいのではないかと話者は見ている。

三つ目はMOSFETの低耐圧化である。一般的なUSB充電器では、650V耐圧のスーパージャンクションMOSFETかGaNパワー半導体を使うところだが、ADAMONではかかる電圧が240V程度なので、300〜400V程度の耐圧品が使える。MOSFETは耐圧を高くするとオン抵抗が高くなる。話者は、スイッチング損失など他にも考慮すべき点はあると断りつつ、少なくともオン抵抗は低くできる可能性があると述べている。

話者のまとめによれば、ADAMONは部品にかかる電圧を下げることで、部品そのものの小型化と発熱の低減を実現し、それによって充電器本体の小型化を可能にしている。最近のUSB充電器は最先端の部品で効率を高める方向にあるが、ADAMONはむしろ設計や回路そのものを工夫して効率を上げるアプローチの製品だ、というのが話者の結論である。