GaNを使わずにGaN充電器並みの小ささを実現したADAMON 65Wの仕組みを分解で探る
イチケン / ICHIKENE-Power SolutionsのUSB充電器「ADAMON 65W」は、日本企業が開発した世界最小級の65W充電器である。最近のUSB充電器では窒化ガリウム(GaN)パワー半導体がほぼ標準になっているが、ADAMONは従来からあるSi(シリコン)パワー半導体を使っている。それでも、GaNを使う他社製品と比べてサイズはほぼ同じか、やや小さいくらいだという。本動画の話者であるイチケンは、この小ささと高い効率がどんな回路的・構造的工夫から生まれているのかを、性能測定、分解、回路のリバースエンジニアリング、動作波形の観測を通して確かめている。
外観と重さ:縦長形状で、このクラス最軽量級
ADAMON 65Wは1ポートで、折りたたみプラグを採用した縦長の直方体形状である。話者によれば、立方体形状よりも縦長の直方体形状の方が放熱には有利だという。縦長の充電器は自重でコンセントから抜けやすい場合があるが、ADAMONは本体が軽いため抜けることはなかった。
実際に量ると重さは64.7gだった。他の65W・1ポート充電器と比べると、CIOは70.6g、Ankerは119gであり、話者はこのクラスでは最軽量級だと評価している。
気になった点:低負荷時のコイル鳴き
一つ気になった点として、話者はコイル鳴きを挙げる。特に負荷電流が1Aくらいまでの低負荷時に音が鳴り、動画では無負荷時の音を実際に聞かせている。入力電圧100Vの状態では、話者自身はそこまで気にならないという。ただ、静かな環境では気になる人もいるかもしれないと述べている。
入力電圧を200Vにするとコイル鳴きはさらにひどくなり、話者も「さすがに気になるレベル」としている。日本国内では100Vしか使わないので問題ないが、海外で使う場合は注意が必要だという。また、この音が鳴っても故障ではないと補足している。
スペック比較:体積46.6cm³、体積あたり電力1.39W/cm³
比較対象には、65Wクラス最小級のCIO NovaPort SOLO Ⅱを選んでいる。定格電力はどちらも65Wだが、ADAMONはSiパワー半導体、CIOはGaNパワー半導体を使う。
ADAMONの体積は46.6cm³で、話者は「さすがは業界最小クラス」と評している。クラウドファンディングのサイトによれば発売は2023年6月頃のようで、2年近く業界最小クラスの座にあったことになるという。表面積も小さく、この点は放熱に影響してくる。
性能指標として、まず体積あたりの電力を見ている。この値が大きいほど電源としての性能は高い。65WクラスのUSB充電器では1W/cm³が標準的な値だが、ADAMONは1.39W/cm³だった。Siパワー半導体でここまで小さくできているので、何か特別なことをしているのではないかと話者は考えた。
表面積あたりの電力損失:放熱の余裕は損失の少なさから来ている
次の指標は、事前に測定した電力損失を表面積で割った値である。充電器の放熱はほとんど自然対流で行われるため、表面積が広いほど冷却しやすい。したがって、この値が小さいほど放熱に余裕があることになる。
CIOと比べると、ADAMONの方が放熱に余裕があった。ただし話者は、これは表面積の広さではなく、電力損失の少なさが効いていると説明する。ADAMONは最大電力損失がCIOより1W程度少なく、このサイズでの1Wの差は放熱にかなり効いてくるという。後述するとおりADAMONではサーマルスロットリングが起きず、話者はその理由も電力損失の少なさにあると見ている。電力損失を減らせるかどうかは、充電器にかけられるコストや設計者の技術力が効いてくる部分だという。
電力変換効率:最大93.2%、ただし200V入力では低下
電力変換効率は、コンセントからの交流電力をUSB充電用の直流電力にどれだけ効率よく変換できるかを示す指標である。効率が高いほど本体で発生する損失が少なく、発熱も少なくなる。
測定では、出力電力の全範囲にわたって効率が高く、最大変換効率は20V出力時の93.2%だった。話者によれば、GaNパワー半導体を使った65W充電器の効率は91〜92%程度である。これと比べて、Siパワー半導体でこの結果は数字としてかなり良いと評価している。
コンセント電圧200Vでの効率も測定した。一般的なUSB充電器では200V入力の方が効率は高くなるが、ADAMONは逆に200Vの方が低かった。話者は、内部的に100Vで効率が高くなるよう設計されている可能性があると推測している。
温度とサーマルスロットリング:3時間の連続65W出力で停止なし
サーモグラフィーで見ると、本体の最高温度は71℃で、側面が最も熱くなっていた。充電器全体が均一に暖まっていたことから、話者は内部の熱をうまく表面に拡散できていると判断している。
サーマルスロットリングとは、発熱による故障を防ぐために出力電力を意図的に制限する機能である。これが起きるかどうかを、最も温度が高くなる部分に熱電対を貼り付けて確かめた。実験開始直後から65Wを出力し、温度はそれに従って上昇したが、30分程度で上昇は飽和し、最高温度は68℃だった。約3時間連続で運転してもサーマルスロットリングは起きず、止まる気配もなかったため実験を終了している。
話者は、他メーカーがGaNを採用するなかで、Siパワー半導体だけでここまでの性能を出しているのは「結構すごい事」だと述べ、分解に進む。
分解:3枚の基板と、ぐるりと巻かれたグラファイトシート
内部は3枚の基板で構成されており、表面実装部品が多く載った面などに熱伝導シートが貼られていた。外装の内側にはプラスチックのシールドのような部材があり、全体を1周ぐるっと覆っている。その外側には、グラファイトシートも1周巻かれていた。
このクラスのUSB充電器では、内部を熱伝導ポッティング材で固めることが多いが、ADAMONにはそうした構造はない。グラファイトシートで熱を外側に伝える方式について、話者はAppleのUSB充電器と設計思想が似ていると指摘する。熱は、熱源から熱伝導シート、プラスチックシート、グラファイトシートを経て外装へ逃げていく。本体温度が均一だったのはグラファイトシートが1周巻かれていたおかげであり、サーモグラフィーで最も熱かった面には熱伝導シートが貼られていた。
軽さの理由もここにある。ポッティングをすると質量の20〜30%程度をポッティング材が占めるため、使わなければ大きく軽量化できる。話者は、コイル鳴きもポッティング材を使っていないせいかもしれないと推測している。
外装には、UNIFIVEの刻印があった。話者が調べたところ、E-Power Solutionsはファブレス企業であり、基板設計の最適化、放熱設計、量産などはUNIFIVEが担っているようだという。
回路構成:入力平滑部に置かれた2つのMOSFET
話者は基板を全てばらしてリバースエンジニアリングを行った。主要な構成は次のとおりである。コンセントからの交流を全波整流回路で直流にし、平滑用の電解コンデンサを経て、アクティブクランプ方式のフライバックコンバータと変圧器に送る。そして2次側の回路で20VなどのUSB出力電圧に調整する。
話者が注目したのは、平滑コンデンサ周辺の回路である。回路全体に流れる電流を遮断できる位置にMOSFETが入っており、さらに一部の電解コンデンサにも直列にMOSFETが入っていた。
使われている電解コンデンサの耐圧は、200Vか250Vのものしかなかった。この充電器の入力電圧範囲は100〜240Vで、通常の構成なら電解コンデンサの電圧は340Vまで上がる。これでは明らかに耐圧が足りない。そこで話者は、MOSFETを交流電圧の瞬時値に合わせてオン・オフし、耐圧を超えて電解コンデンサを充電しないように動作しているのではないかと仮説を立て、実験で確かめた。
動作波形:240V入力でもコンデンサ電圧は233Vに抑えられていた
測定では、黄色を交流入力電圧、赤を入力電流、青をMOSFETが直列に入った電解コンデンサの電圧(Vᴄ₁)とした。緑は、DC/DCコンバータ直前の電解コンデンサの電圧である。
入力100Vでは、電解コンデンサの電圧は見慣れた波形だった。入力電圧のピークまで充電されたあと徐々に放電し、次の山が来るとその電圧に張り付いてまた充電される、という繰り返しである。
入力を240Vにすると挙動が変わった。まず青のVᴄ₁は常に一定で、100V強程度だった。話者の説明では、ある程度充電されたところでMOSFETをオフにし、電流が流れないようにしているためである。次に緑のDC/DC直前のコンデンサは、ある一定期間だけ充電され、その後は放電する波形になった。ピーク電圧は233Vで、耐圧250V以下に収まっていた。回路全体の電流を制御するMOSFETが、特定の区間だけオンになって電解コンデンサを充電し、それ以外の区間はオフになって、蓄えた電荷でDC/DCコンバータを動かしているという。
100V入力ではMOSFET付きの電解コンデンサを使い、240Vでは使わない理由について、話者は次のように説明する。電圧が十分に高くなると、2つの電解コンデンサだけでDC/DCコンバータに十分なエネルギーを供給できるからである。こうして入力電圧が電解コンデンサの耐圧より高くても、制御の工夫によってコンデンサ電圧を耐圧以下に抑えていることが確認できた。
考察:低耐圧化が小型化と低損失につながる
最後に話者は、なぜADAMONが小型で低損失なのかを考察している。
一つ目は電解コンデンサの小型化である。電解コンデンサは耐圧が高いほど体積が大きくなる。通常のUSB充電器では、コンセント電圧が100Vのとき電解コンデンサに140Vᴅᴄ、240Vのとき340Vの直流電圧がかかるため、高い方に合わせて450V耐圧品を使うことが多い。一方ADAMONは入力回路でコンデンサ電圧を制御しているので、250V耐圧品で済み、電解コンデンサの体積を大幅に縮小できている。
二つ目は設計のしやすさである。一般的な充電器ではDC/DCコンバータにかかる電圧の振れ幅が100〜340V程度あるのに対し、ADAMONは100〜240V程度にとどまる。そのため、DC/DCコンバータの最適化が他の充電器より少しやりやすいのではないかと話者は見ている。
三つ目はMOSFETの低耐圧化である。一般的なUSB充電器では、650V耐圧のスーパージャンクションMOSFETかGaNパワー半導体を使うところだが、ADAMONではかかる電圧が240V程度なので、300〜400V程度の耐圧品が使える。MOSFETは耐圧を高くするとオン抵抗が高くなる。話者は、スイッチング損失など他にも考慮すべき点はあると断りつつ、少なくともオン抵抗は低くできる可能性があると述べている。
話者のまとめによれば、ADAMONは部品にかかる電圧を下げることで、部品そのものの小型化と発熱の低減を実現し、それによって充電器本体の小型化を可能にしている。最近のUSB充電器は最先端の部品で効率を高める方向にあるが、ADAMONはむしろ設計や回路そのものを工夫して効率を上げるアプローチの製品だ、というのが話者の結論である。
この動画は横河計測株式会社の提供でお送りします。
こんにちは。今日は日本企業が開発した世界最小級のUSB充電器を分解レビューしていきます。それがこちらのUSB充電器、E-Power SolutionsのADAMON 65Wです。
このUSB充電器、最近の充電器ではほぼ標準となっている窒化ガリウムパワー半導体を使っておらず、なんと従来からあるSiパワー半導体を使ってここまで小型化してるという事です。実際他の窒化ガリウムパワー半導体を使った充電器と比べてみると、サイズ的にはほぼ同じか小さいくらいのサイズ感となっています。
今日はこの充電器について、一体どのような回路的な工夫や構造的な工夫がされているのかというのを分解しながら確認していきます。ちなみに今日分解したUSB充電器の購入リンクは概要欄にまとめていますので、気になる人はぜひチェックしてみてください。
その前に今日のスポンサーの紹介です。どうぞ。
皆さん計測器を持っているかと思いますが、しっかりと校正・調整していますか。今日は横河計測の標準発生器の紹介です。横河というとオシロスコープや電力計などの計測器のイメージですが、計測器の校正に使う標準発生器、キャリブレーターも作っています。計測・発生、両方出来るのが横河計測の特徴です。
突然ですが、こちらにパワーメーターを2つ用意しました。ここに標準発生器を繋いでみると、こちらのパワーメーターは発生器とほとんど同じ表示になり、もう一方は違った値を表示しています。実は下のパワーメーターは製品の仕様から大幅に外れてしまっているものを用意しました。これでは仕事には使えないですね。
このようにして普段から使っている計測器を標準発生器を使って校正する事で、しっかりと確かな値を表示しているかを確認する必要があります。仕様を外れて合わなくなってしまったものはどうするかというと、この後表示値が仕様の範囲内に収まるように調整に出します。
横河計測では高精度な計測器に加えて、標準電圧電流発生器や交流電力校正器をリーズナブルな価格で用意しています。社内で校正が必要な方は、横河計測をぜひ検討してみてください。
それでは、さっそく見ていきます。外観については一般的なUSB充電器です。1ポート式で折りたたみプラグを採用しています。形としては縦長形状です。右手にあるような立方体形状よりは、このような縦長の直方体形状の方が放熱的には有利です。
充電器の縦長形状は充電器自体の重さによって抜けやすかったりするのですが、これはそんな事ないです。充電器自体が結構軽いので抜けはしません。というか触っていて気づいたのですが、この充電器結構軽いです。64.7g。他の65W 1ポートの充電器と比べてみると、CIOは70.6g、Ankerは119gでした。このクラスのUSB充電器では最軽量級です。
一つ気になった点としては、コイル鳴きが聞こえます。特に負荷電流が1Aぐらいまでの低負荷時に音が鳴るようです。実際聞いてみるとこんな感じです。
これ無負荷時の音です。
私はそこまで気になりませんが、人によっては気になるかもしれません。特に静かな環境で使っていると気になるかもしれません。
ちなみに今聞いていたのは入力電圧が100Vの状態ですが、200Vの状態ではコイル鳴きはさらにひどくなります。
これはさすがに気になるレベルです。日本国内では100Vしか使わないので問題ないのですが、海外で使う場合は要注意です。この音が充電器から鳴っても壊れているわけではないので注意してください。
ここからはスペック表や実験で確認した性能を見ていきます。まずはスペック比較表です。65Wクラス最小級のCIO NovaPort SOLO Ⅱと比較します。定格電力は同じ65Wですが、ADAMON 65WはSiパワー半導体、CIOは窒化ガリウムパワー半導体を使っています。
ADAMONの体積は46.6cm³となっていてかなり小さく、さすがは業界最小クラスといったところです。ちなみにクラファンサイトを見てみると2023年6月頃に発売されたようなので、2年近く業界最小クラスとなっていたようです。表面積もやはり小さいです。このあたりは放熱に響いていきます。
次は性能指標を見ていきます。まずは体積あたりの電力です。この数字が大きいほど電源としての性能は高くなって、65WクラスのUSB充電器では1W/cm³が標準的な値です。ADAMONは1.39W/cm³となっていて、サイズの割には大電力なUSB充電器となっています。Siパワー半導体を使ってここまで小さくできているので、何か特別な事をしているのかなとも思います。
次は表面積あたりの電力損失です。電力損失は前もって測定しました。この数字が小さいほど放熱に余裕があるという事になります。充電器の放熱は自然対流で行う事がほとんどなので、表面積が広いほど冷却しやすい構造となるからです。
同じクラスのCIOと比較してみると、ADAMONの方が放熱には余裕があるようです。これは表面積の広さが効いているというよりは、電力損失の少なさが効いています。後で出てきますが、ADAMONの方が最大電力損失は1W程度少ないです。このサイズで1Wの電力損失は放熱にかなり効いてきます。
サーマルスロットリングによる過熱保護も後で確認するのですが、ADAMONの方はサーマルスロットリングは起きませんでした。安定的に65W出力可能となっています。これについてはUSB充電器で発生する電力損失が少なかったから、サーマルスロットリングが起きなかったと見ています。電力損失を少なくするのは、充電器にかけられるコストや設計者の技術力が効いてくる部分です。
次は電力変換効率の測定を行いました。これはUSB充電器がコンセントからの交流電力をUSB充電に使う直流電力にどれだけ効率高く変換出来るかを示すものです。効率が高いUSB充電器であるほど本体で発生する電力損失が少なく、その結果発熱も少なくなります。
こちらが効率測定の結果です。横軸が出力電力、縦軸が電力変換効率です。全体的な効率はかなり高くなっています。最大変換効率は20V出力のときに93.2%となりました。このクラスのUSB充電器としてはかなり高効率な部類に入っています。しかもこれ、窒化ガリウムパワー半導体を使っていないSiパワー半導体でこの結果ですからね。窒化ガリウムパワー半導体を使った65W充電器の電力変換効率が91~92%程度である事を考えると、数字としてはかなり良いです。
ついでにコンセントの電圧が200Vのときの変換効率測定もしました。一般的なUSB充電器では200V入力のときの方が効率は高くなりますが、ADAMONの場合は200Vのときの方が効率は低くなるようです。内部的には100Vで効率が高くなるように設計されている可能性があります。
次は本体の温度測定です。サーモグラフィーで見たところ、最高温度は71℃となりました。この側面部分が一番温度が高いようです。充電器全体が均一に暖かくなっているので、内部で発生した熱を表面にうまく拡散できています。
次は温度と関連して、サーマルスロットリングが起きるか見てみます。サーマルスロットリングとは、充電器本体が過熱によって壊れるのを防ぐために出力電力を意図的に制限する機能の事です。
温度の測定は熱電対を貼り付けてやりました。こちらが実験結果です。横軸が実験を開始してからの経過時間、左の縦軸が充電器の表面温度、一番温度が高くなる部分で測定しています。右側の縦軸が充電器の出力電力です。
電力は実験開始直後から65Wを出力しています。それに従って温度も上昇していきました。実験開始から30分程度で温度上昇の速度は飽和して、最高温度は68℃となりました。特にサーマルスロットリングなども起きずに安定的に動作しています。3時間程度連続で運転しましたが、特に止まる気配はないので実験終了としています。
ここまでいろいろ実験してきましたが、他のメーカーが窒化ガリウムパワー半導体を使う中で、こちらは窒化ガリウムを使わずにSiパワー半導体だけでここまでやっているのは結構すごい事かと思います。
ここからは実際に中身がどうなっているのかを分解検証をしていきます。
さっそくですが分解しました。このような構造になっています。見てみると基板は3枚構成です。1、2、3です。熱伝導シートも貼ってあります。こちらの面と、そしてこの表面実装部品がたくさん実装されている面です。
外装部分をよく見てみると、このようにプラスチックのシールドのようなものが入っているのですね。こちらの部材で、このように全体を覆うようになっていました。このようにプラスチックのシートが1周ぐるっとなっているのですが、これをよく見てみるとグラファイトシートも外側に1周ぐるっと巻かれています。このような状態です。
このクラスのUSB充電器では熱伝導ポッティング材で固められている事が多いのですが、ADAMONについては特にそのような構造はしていません。このようにグラファイトシートを使って熱を外側に伝えていくのは、AppleのUSB充電器と設計思想が似ています。
熱の伝わり方としてはこのようになっています。熱源があって、熱伝導シート、プラスチックのシートがあって、その次にグラファイトシートがあり、そして最後外装の方に熱が逃げていくという事になります。本体の温度が全体的に均一になっていたのは、このグラファイトシートが1周ぐるっと巻かれていたおかげです。特に発熱の多い面については熱伝導シートがありました。この面はサーモグラフィーで見たときに一番熱くなっていた面です。
また本体質量が軽いのは、熱伝導系のポッティング材を全く使っていないからです。実際ポッティングするとなると、質量の20~30%ぐらいをポッティング材が占める事になるので、使わないと軽量化に効いてくるわけです。コイル鳴きしていたのも、もしかしたらポッティング材を使っていないからかもしれません。
分解した基板の外装をよく見てみると、UNIFIVEの刻印がありました。よく調べてみると、ADAMONの開発元のE-Power Solutionsはファブレス企業で、基板設計の最適化、放熱設計、製品としての量産などはUNIFIVEが実施しているようです。
回路について全てバラしてリバースエンジニアリングをしてみました。回路の主要な部分をまとめるとこのようになっています。コンセントから入ってきた交流電圧を直流電圧に変える全波整流回路、その後に平滑用の電解コンデンサ、ここにアクティブクランプ方式のフライバックコンバータがあって、変圧器、そして2次側の回路があります。ここでUSB充電器に使う電圧の20Vなどに調整されているわけです。
この回路をよく見てみると、この平滑キャパシタあたりに面白い回路があります。この部分に回路全体に流れる電流を遮断出来るようにMOSFETが入っています。さらにこの電解コンデンサの部分にも直列にMOSFETが入っています。
分解した回路に使われていた電解コンデンサを見てみると、耐圧が実は200Vか250Vのものしかないのですね。この充電器の交流入力電圧は100V~240Vまでです。通常通り使うと電解コンデンサの電圧は340Vまで上昇する事になります。明らかにこの電解コンデンサの耐圧は足りていません。
多分ここにあるMOSFETをこの交流電圧の瞬時値に合わせてオン・オフする事で回路に電流を流さない、つまり耐圧以上に電解コンデンサを充電しないような動作になっている可能性があります。
実際に実験をして波形を確認してみます。このようなセットアップで実験をしました。まずは入力電圧が100Vのときの動作波形をとります。負荷を入れます。
こちらの黄色の線は充電器の交流入力電圧、赤色の線は充電器の入力電流、青色の線はスイッチが直列に入っている電解コンデンサの電圧、緑色の線、少し青色のところにかぶって見えにくいのですが、これはDC/DCコンバータの直前にある電解コンデンサの電圧です。
電解コンデンサの電圧を見てみると、よく見る波形をしています。交流入力電圧のピーク電圧のところまで充電されて、徐々に放電されて、次の入力電圧の山が来たらその電圧に張り付いて、電解コンデンサが充電されてといった具合です。
次は入力電圧を240Vにしてみます。そうするとこの青色の線Vᴄ₁、これはMOSFETが直列に入っている電解コンデンサの電圧ですが、常に一定となっています。だいたい100V強程度になっています。これは動作的には、ある程度充電されたらMOSFETをオフにして電流が流れないようにしているからです。
この緑色の波形、DC/DCの直前にある電解コンデンサの電圧はこのようになりました。ある一定期間のみ充電されて、その後は放電するといった波形です。この期間のみ充電されています。
ちなみに電解コンデンサのピーク電圧は233Vとなっていて、耐圧の250V以下で使えるようになっています。これは回路全体に流す電流を制御しているMOSFETをオン・オフする事で、電解コンデンサへの充電を制御しているからです。
具体的に言うと、この区間はMOSFETをオンにして電解コンデンサを充電、これ以外の区間はMOSFETをオフにして充電はせずに、溜まった電荷を放出してDC/DCコンバータを動作させるといった動きです。
ちなみに入力電圧が100Vのときにこの電解コンデンサを使っていて、240Vのときに使っていないのは、これは電圧が十分に上がって、2つの電解コンデンサだけでDC/DCコンバータに十分なエネルギーを供給出来るようになるからです。
今見てきたように、回路への入力電圧は電解コンデンサの耐圧より高いのですが、制御を工夫する事によって電解コンデンサの電圧を耐圧以下に抑えるようにしています。
ここからは、このADAMONがなぜ小型化出来るのかとか、あとは損失が少ないとか、そのような事を考察していきます。
基本的に電解コンデンサは耐圧が高くなるほど体積は大きくなります。まずこの点が小型化に効いてきています。
通常のUSB充電器では、コンセントの電圧が100Vのときは140Vᴅᴄが電解コンデンサに加わります。コンセントの電圧が240Vのときは340Vの直流電圧がこの電解コンデンサに加わります。そのため耐圧を高い方に合わせなければいけないんですね。実際の耐圧をどのくらいにするかというと、450V耐圧のものを使う事が多いです。
一方でADAMONの方はどうかというと、この入力回路の部分で電解コンデンサの電圧を制御しているので、耐圧を低く出来るのです。実際に250V耐圧のものを使う事で、電解コンデンサの体積を大幅に縮小しています。このように電解コンデンサの耐圧を下げる事で、充電器の小型化に貢献できているわけです。
また設計のしやすさから言うと、ADAMONの場合、このDC/DCコンバータの電圧の振れ幅が小さいというのが効いてきています。一般的なUSB充電器では、この間に加わる電圧はだいたい100V~340Vぐらいまでの振れ幅がありますが、ADAMONの場合は100V~240V程度となっていますので、ADAMONの場合このDC/DCコンバータの設計の最適化が他の充電器と比べて少しやりやすいのではないかと思います。
また回路に加わる電圧が低いので、この部分に低耐圧のMOSFETを使う事ができます。一般的なUSB充電器では650V耐圧のスーパージャンクションMOSFETか、あるいはGaNパワー半導体を使うのではないかというところですが、ADAMONの場合はやはり240Vくらいなので、耐圧で言うと300V~400Vくらいの間の物が使えるわけです。
MOSFETの耐圧を高くすると、どうしてもオン抵抗が高くなってしまいます。もちろんスイッチング損失などいろいろ考えなければいけない事もあるのですが、少なくともオン抵抗については低く出来る可能性があるわけです。
そのためADAMONは部品に加わる電圧を低減する事で、部品本体の小型化、発熱を低減出来る事、そしてそれらによるUSB充電器本体の小型化が可能となっているわけです。
というわけで今日はE-Power SolutionsのADAMON 65Wを分解検証をしてきました。実際に分解をしてみると、回路の工夫によって部品を小型化、そして本体を小型化しているという事が分かりました。
最近のUSB充電器では最先端の部品を使って効率を高くしていくような事があるのですが、ADAMONはどちらかというと設計や回路自体を工夫して効率を良くしていく、そんなアプローチの製品かと思いました。
今日分解した製品や、その他おすすめのUSB充電器については概要欄にリンクをまとめていますので、気になる人はぜひチェックしてみてください。
というわけで、もしこの動画が役に立ちましたら高評価・チャンネル登録をお願いします。もし何か気になる事がありましたら、ぜひコメントを残してみてください。それでは最後まで動画のご視聴ありがとうございました。
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