CIO共同の国産USB充電器、試作機の温度試験で筐体表面が約85℃に。熱設計と部品選定を見直す
イチケン / ICHIKEN充電器メーカーのCIOと共同で進める「国産USB充電器プロジェクト」の第2弾として、イチケンが初期サンプルの充電器を試験し、分解して現状を報告した。イチケンはキックオフ動画の公開前からこの充電器の設計に関わっており、今回は設計者の視点から構成を解説している。中心となる話題は2つある。1つは「サーマルスロットリングを起こさない充電器」という目標に対して、試作機の発熱が想定を大きく上回ったこと。もう1つは「国内メーカー部品の使用率を高める」という目標に対して、現時点では日本製部品が0%であり、置き換えられる部品と難しい部品があることだ。
開発の現段階:回路レイアウト変更ができなくなる直前
イチケンによれば、この充電器は充電器として動作するかを確かめる原理検証を終え、設計を固めるための検証段階にある。同時に筐体の金型づくりも始まっている。この段階の設計が完了すると、回路のレイアウトは基本的に変更できなくなる。一方で、熱対策としてシリコーンや熱伝導シートを追加することは、状況に応じて後からでも可能だという。設計完了後は、量産の準備と認証申請の準備に進む予定である。
基本仕様と「サーマルスロットリングを起こさない」という目標
試作機は65W出力でUSB-Cポートを2つ備え、プラグは折りたたみ式である。設計仕様の1つとして掲げたのが、サーマルスロットリングを起こさないことだ。サーマルスロットリングとは、大電力で連続使用したときに、充電器自体を熱から守るため出力電力を制限する保護機能を指す。これが働くと、スペック表記より少ない電力でしか充電や給電ができなくなる。イチケンは例として、CIOの「世界最小級」の65W充電器がサーマルスロットリングで出力を絞っていたこと、Appleの60W USB充電器は製品仕様としてサーマルスロットリングがあらかじめ明記されていることを挙げた。
ただし、この目標はコストと直結する。性能の高い電子部品を使えば発熱そのものを抑えられ、性能の高い熱伝導素材を使えば熱を効率よく外部に逃がせる。しかしどちらもコストを押し上げる。イチケンは、コストを度外視すれば理想の充電器は作れるが、販売価格が高くなりすぎて誰も買わない商品になると述べる。実際に売る製品としては、価格と性能がちょうど釣り合う点を探す必要がある。今回は国産プロジェクトの第1弾なので少し例外的な位置づけではあるものの、メーカーは一般に部品コストや製造コストを抑えて利益を確保することが求められるため、付加価値と販売価格を考えながら設計しなければならないという。
操作ボタンとディスプレイという独自要素
外観は一見よくある充電器だが、これまでの製品と異なる点として操作ボタンとディスプレイが付いている。電源を入れるとディスプレイに表示が出るが、表示される機能や項目はまだ作り込みの途中で、今後の動画で紹介するとしている。ボタンは押し込みと上下の3方向の操作ができる。試作品のため表面に多少の凹凸があり、コーティングの艶も量産品ではさらに良くなる予定だという。
サイズと放熱の関係
他社の65WマルチポートUSB充電器と並べると、試作機はやや大きい。イチケンは、2ポートの充電器はCIOに限らず他社製品もサイズが大きめであり、今回はそれに加えてディスプレイや操作機能を詰め込んだぶん本体が大きくなっていると説明する。その結果、表面積が広く放熱に余裕があるため、サーマルスロットリングは起こりにくいという見立てだった。本体の故障による発熱や、極端な高温環境での保護停止は別として、通常の65W使用ではサーマルスロットリングを起こさないことを目標とし、本体サイズで表面積を確保して放熱に余裕を持たせる設計にしている。
温度測定:筐体表面は約85℃、プラグ付近は90℃超
次に温度測定を行った。試作段階のため筐体は3Dプリンターで出力したもので、放熱材料も製品版とは異なる仕様だが、とりあえず動かして温度上昇とサーマルスロットリングの発生有無を確かめた。最も高温になると予想されるパワー半導体と変圧器がある部分の筐体表面に熱電対を貼り付けて測定している。
条件は1ポート出力で65W、入力は交流100V、室温28℃で、室温はやや高めである。結果、筐体表面温度は約85℃まで上昇した。イチケンは「想定よりもかなり高い温度」だとし、サーマルスロットリングの有無より先に、まず熱そのものを考え直す必要があると述べた。
サーモグラフィーで温度分布も確認した。本体の角やディスプレイのある面は温度が低く、筐体に熱を伝えきれていない状態だとイチケンは読み取っている。最も高温なのはコンセントプラグのすぐ上の部分で、サーモグラフィー上では90℃を超えていた。
原因の切り分けは次回以降の動画で進めるとしている。電力損失が大きすぎて温度が上がっているのか、熱設計が悪く放熱が追いついていないのかを分けて考える方針だ。加えて、ディスプレイのある面を放熱に100%使いきれないことは、設計条件としてかなり厳しいとイチケンは話す。
分解して見た内部の放熱構造
取り出した回路部分を熱設計の観点から見ていく。撮影時点で回路の基本構成はほぼ確定しており、大型部品のレイアウトはこれ以降変更できない。
基板には熱伝導シートが2枚貼られている。めくると、片面に変圧器、反対側の面にパワー半導体があり、よく発熱するこの2つを本体中央にまとめる設計になっている。そこで発生した熱を熱伝導シート経由で外へ逃がす構造だ。イチケンの説明では、USB充電器の基本的な放熱の仕組みは、内部の熱を本体表面に伝え、空気の対流で逃がすことであり、それに加えてコンセント部分からも熱が逃げる。ディスプレイのある面は筐体との空間が大きいため、ここで積極的に放熱するわけではなく、ほかの面とコンセントから逃げる熱で放熱をまかなうことになる。
熱伝導シートの拡大案と電解コンデンサの寿命
貼られていた熱伝導シートは全部品を覆っていない。イチケンは、特にスルーホール部品が実装されている面はシートの面積を広げてもよいかもしれないと考えており、具体的には電解コンデンサが隠れるくらいまで大きくする案を示した。電解コンデンサの内部にはロール状に巻いたアルミ箔が入っているため、実は軸方向には熱がかなりよく伝わる。シートを電解コンデンサまで広げれば全体の熱結合がとれ、電解コンデンサ経由で筐体に熱を逃がせるという理屈だ。
一方で、熱伝導シートは安い部品ではなく、電解コンデンサは熱に弱い部品である。全体を熱結合することが寿命の観点で良いのかは疑問が残るとイチケンは言う。そのため、シート面積を広げたときの原価上昇、内部温度の低下幅、電解コンデンサの温度変化を天秤にかけて調整する必要があるとしている。
ディスプレイという熱に弱い部品
ディスプレイの存在も熱設計を難しくしている。イチケンによれば、ディスプレイはどちらかといえば熱に弱い部品であり、それを充電器内部という高温環境に入れるため、何らかの熱対策が必要になる。後々問題になる可能性が高い部品なので慎重に見ていくとし、製品回収のような事態はなるべく避けたいと述べた。なおディスプレイの裏側には無線関係のデバイスが載っている。用途については明かさず、「無線で何かやるのだろう」と期待していてほしいという言い方にとどめている。
国内メーカー部品の使用率:目標50%、現状0%
このプロジェクトのもう1つの目標は、国内メーカー部品の使用率をできるだけ高めることだ。できれば50%程度は使いたいとCIO側と話しているという。しかし現状の試作品は全部品が海外メーカー製で、日本メーカー部品の比率は0%である。イチケン自身も部品選定に関わっており、その経緯を部品ごとに説明した。
電解コンデンサ:日本メーカーは強いが、充電器向けの形状がない
電解コンデンサは日本メーカーが強いことで有名だが、日本メーカーで選定しようとすると逆に非常に難しく、ほぼ不可能だったという。USB充電器に使う電解コンデンサは特殊で、直径が細く縦に長いものがほとんどであり、試作品もそうしたものを使っている。充電器内部の空間を有効に使うために詰め込む必要があるからで、実際に筐体に収まるぎりぎりの高さまでコンデンサが伸びている。
イチケンの説明では、日本の電解コンデンサメーカーは全方面に強いわけではなく、産業向けや車載向けに強い。産業用途ではこうした細長い形状が求められることはそれほど多くなく、筐体サイズに余裕があることが多いため、あえて細長い品を選ぶ理由もない。充電器向けの細長い電解コンデンサの市場はレッドオーシャンで価格競争が激しく、中国メーカーしか手がけていない状況だという。日本メーカーもかつては製造していたようだが現在は撤退しており、探した限りでは製造している日本メーカーは見つからなかった。
昔日本メーカーが作った流通在庫は存在するが、在庫が切れれば充電器を作り続けられなくなるため、なるべく使いたくないのが本音だという。直径を2〜3mm大きくすれば日本メーカーの量産品もあるが、充電器のサイズを考えると採用はかなり厳しい。日本メーカーの電解コンデンサは高品質で使いたいものの、充電器に使えるものとなると採用は難しいというのがイチケンの現状認識だ。
MLCC・チップ抵抗・変圧器コア
その他の受動部品、つまりチップMLCCやチップ抵抗器は日本メーカーがかなり強い領域である。MLCCは大部分を日本メーカーに置き換える予定だという。チップ抵抗器については、イチケン自身が日本の抵抗器メーカーに連絡を取り、CIOとつなぐことができた。撮影中にも話が進んでおり、その抵抗器メーカーが量産でも採用されるのではないかとイチケンは見ている。
変圧器のコアにも検討の余地がある。適切なコア材料を使えば変圧器自体を小さくでき、コアの体積が減ることで、充電器の発熱が減ったり体積が小さくなったりして付加価値が高まるという。ただし今回はコアには手を付けていない。国産プロジェクトは第1弾を起点に第2弾、第3弾と続けたいとCIOの社長とも話しており、取り組みが続けば将来は変圧器にも日本メーカーを採用できないか考えているという。良いコアメーカーを知っている人がいれば自薦他薦を問わずコメントで教えてほしい、とも呼びかけた。
半導体部品:中国メーカーが強く、日本製採用は難しそう
USB充電器に使われる半導体部品は中国メーカーが非常に強く、日本メーカーは弱い領域だとイチケンは言う。特に、統合型のGaNパワー半導体とUSB PDコントローラICがそうである。今回の試作品では、GaNパワー半導体にSouthchipのSC3107、USB PD ICに同じくSouthchipのSC2167Aを使っている。
ただ、日本メーカーがこの領域を一切やっていないわけではない。以前分解したベルのUSB充電器では、ルネサスのGaNパワー半導体とUSB PD ICが使われていたという。設計変更をすれば国内メーカー採用の可能性はあるが、コストをはじめさまざまな問題があり検証が必要だ。こうした特定用途の半導体で日本メーカーを採用するのは不可能ではないものの、現状では難しそうな雰囲気だとイチケンは述べている。
今後:量産設計と「どこから日本で作るのか」
動画制作中には、CIOと一緒に中国のUSB充電器工場の視察にも行ったという。今後は量産を見据えた設計と試作に入り、その段階で採用する日本メーカー部品も確定していく。製造については、「国産」と銘打つ以上、どの工程から日本で行うのかが重要になる。部品実装から日本で行うのか、ある程度中国で実装したものを日本に持ち込んで組み立てるのか。こうした視聴者が抱くであろう疑問に答える動画を現在制作中で、近く公開予定だとしている。温度が想定を大きく上回った原因が電力損失なのか熱設計なのかという切り分けも、次回以降の検証に持ち越された。
こんにちは。充電器のCIOと進めている国産充電器プロジェクトの第2弾の動画です。前回のキックオフ動画から少し時間が経過してしまいましたが、今回は初期サンプルとしてもらってきたUSB充電器がどのような構成になっているのか、現状を確認しつつ分解しながら見ていきます。
まず前提として、前回の国産USB充電器プロジェクトのキックオフ動画を公開する前からこの充電器の設計にイチケンは関与していましたので、その点含めて開発者・設計者視点で色々と解説していきます。
今このUSB充電器がどの段階にいるのかと言うと、充電器としての動作を見るための原理検証が完了して、設計を固めるための検証段階にいるという状況です。これと同時に筐体の金型作りなんかもスタートしている状況です。この段階での設計が完了したら、回路的なレイアウト変更は基本的にできないという状態になります。熱設計関連のシリコーン追加であったり、熱伝導シートの追加は状況に応じて可能です。この後は量産に向けての準備であったり、認証申請に向けての準備に入っていきます。
そんな状況なわけですが、まずはこのUSB充電器の外観を見ながら基本的な性能について確認していきます。充電器の基本的な仕様としては65WでUSB-Cポートが2つあるタイプのものです。プラグはこのように折りたたみ式です。
この充電器を作る時に決めた設計仕様の1つとして、サーマルスロットリングを起こさないというものがあります。サーマルスロットリングというのは、大電力で充電器を連続使用した時に充電器自体を熱から保護するために出力電力を制限する保護機能のことです。サーマルスロットリングを起こすとUSB充電器から出力できる電力が減ります。なのでスペック表記よりも少ない電力でしか充電や給電に使うことができません。例えばCIOの世界最小級の65W充電器はサーマルスロットリングで出力電力を絞る動作をしていましたし、Appleの60W USB充電器は製品の仕様としてサーマルスロットリングがあらかじめ表記されています。
今回はサーマルスロットリングが起きないように頑張って設計していたわけなんですけども、実はその設計というのはコストと大きく関わっています。内部に性能の高い電子部品を使えば発熱自体を抑えることも可能ですし、性能の高い熱伝導素材を使えば外部に効率よく熱を伝えて放熱することもできます。ただそれを実施するとコストが上がることになります。コスト度外視であれば好き放題やって理想のUSB充電器を作ることはできるのですが、実際のところそれをやると販売価格が高くなりすぎて誰も買わない商品になってしまいます。実際に販売する製品としては、販売価格と性能がちょうど良くなるポイントを探していく必要があります。
今回のUSB充電器は国産USB充電器プロジェクトの第1弾となっていて、少し例外にはなりますが、一般的にはメーカーは部品のコストや製造にかかるコストをできるだけ低くして利益を確保していくことが求められます。ですので充電器が持っている付加価値と、そして販売価格を考えながら設計していく必要があるわけです。
外観をさらに詳しく見ていきます。一見よく見るCIO品の外観なのですが、これまでリリースされてきたUSB充電器と違った点として、こちら操作ボタンとディスプレイがあります。実際に電源を入れてみると、はい、このようにディスプレイに表示されました。こちらに表示されている機能であったり項目なんかについては、まだまだ作り込んでいる途中です。今後の動画でも機能紹介などしていきますので、是非楽しみに待っていてもらえると嬉しいです。
ちなみに操作としては、押す方向と上下方向の3つの操作ができるようになっています。こちらはあくまで試作品なので、表面が若干デコボコしていたり、このコーティングの部分の艶感なんかがまだまだなんですね。この辺りは量産製品ではさらに良くなる予定です。
他社の65WマルチポートUSB充電器とサイズ感の比較をしてみます。こんな感じです。分かりますでしょうか?サイズ感としてはやっぱ若干大きめなんですよね。こんな感じ。サイズ感と熱の関係については、2ポートのUSB充電器はCIOに限らず他社含めてサイズ感は大きめです。今回は2ポートのUSB充電器であることに加えて、ディスプレイや操作機能などを詰め込んでいるので、その分本体サイズは増えています。なので表面積が広く放熱には余裕があるので、サーマルスロットリングは起こりにくいです。あとは本体が壊れてしまったことによる本体加熱であったり、極端な高温環境で使った場合の加熱保護による出力停止は別として、通常の65W使用ではサーマルスロットリングを起こさないぞということを目標にしています。本体サイズによって表面積を確保して、放熱には余裕を持たせるという設計になっています。
次は温度測定です。現在は試作品の段階なので筐体も3Dプリンターで印刷したものであったり、放熱材料も製品版に使うものと違う仕様ですが、とりあえず動かしてみます。温度がどれくらい上がるのか、そしてサーマルスロットリングが発生するしないも含めての検証です。こちらが実験セットアップです。温度が最も高くなると予想されるパワー半導体と変圧器がある部分の筐体表面に熱電対を貼り付けて温度測定をしています。こちらが実験結果です。横軸は実験を開始してからの時間、縦軸は測定点の筐体表面温度です。実験の条件は1ポート出力で65W、入力電圧は交流100Vで、室温は28℃の条件です。室温は少し高めです。筐体表面の温度は約85℃まで上昇しています。想定よりもかなり高い温度となってしまいました。これはサーマルスロットリングどうこうの前に、まず熱について考え直す必要があります。
さらにサーモグラフィーを使って温度分布も見てみました。本体の角の部分であったり、ディスプレイがある面の温度は低くなっています。つまり筐体に熱を完全に伝えきれていない状態です。さらに1番温度が高い部分はコンセントプラグのすぐ上の部分でして、サーモグラフィーの結果ではありますが90℃超えとなっています。先ほども話しましたが、見て分かる通りサーマルスロットリングとかそういうのを考える前に、まずは温度を何としても下げる必要があります。ここからは次回以降の動画で検証を進めたいのですが、まずなんでこうなったかを考える必要があります。電力損失が大きすぎて温度が高くなっているのか、熱設計が悪くて放熱が追いついていないのかを分離して考えていきます。これに加えて、ディスプレイがある面を100%使いきれないというのは、設計の条件としてはかなり辛いものになっています。
次は分解して内部構造を確認していきます。これは内部から取り出した回路部分です。まずは熱設計の観点で見ていきます。回路の基本的な構成はこの動画を撮影している時点でほぼ確定していて、大型部品のレイアウト変更はこれ以降はできない状態です。熱伝導シートがこのように2枚貼り付けられています。めくってみるとこんな感じです。ここに変圧器、そして反対側の面にパワー半導体です。よく発熱する変圧器とパワー半導体は本体の中央にまとめられている設計です。そこで発生した熱を熱伝導シートを介して外部に逃がせるようになっています。
USB充電器の基本的な放熱機構としては、内部で発生した熱を本体表面に逃がして、そして空気の対流で熱を逃がします。それにプラスアルファとして、コンセントの部分からも熱は逃げていきます。こちらにディスプレイがありますよね。この面については筐体との空間的なスペースが大きいので、ここでガンガン放熱していくという感じではないです。他の面とコンセントから逃げる熱で放熱を頑張るということになります。
先ほど貼り付けてあった熱伝導シートを見てみると、全部の部品は覆っていない状況です。特にこちらのスルーホール部品が実装されている面は、もう少し熱伝導シートの面積を広くしても良いかもしれません。具体的にどうするかというと、こちらの電解コンデンサたちが隠れるくらいまで大きくします。電解コンデンサの内部構造はロール状に巻かれているアルミ箔が入っているので、実は軸方向には熱はかなりよく伝わります。なので電解コンデンサーを覆うくらい熱伝導シートを広げた方が全体の熱結合ができますし、電解コンデンサ経由で筐体に熱を逃すことができます。熱伝導シートは安くない部品ですし、電解コンデンサーは熱に弱い部品なので、全体を熱結合するのも寿命の観点で考えるとどうなんだろうというのはあります。ですので、熱伝導シートの面積を大きくした時に原価がどれくらい高くなるのか、内部の温度がどれくらい下がるのか、電解コンデンサーの温度変化はどうなのかというのを天秤にかけての調整が必要な部分です。
あとはこちらにディスプレイが付いているんですけども、そのディスプレイの存在も熱設計としては難しい部分です。ディスプレイは熱に強いかと言われると、どちらかというと弱い部品です。それを充電器の内部という高温環境に入れてしまうわけですから、何かしらの熱対策は必要となっています。後々問題になる可能性が高い部品ですので、熱設計は注意深く見ていく必要があります。製品回収とかにはなるべくなりたくないですからね。
ちなみにディスプレイの裏側を見てみると、こちら無線関係のデバイスが付いています。想像にお任せしますが、無線でなんかやるんだろうなと、そういう風に期待していてもらえればと思います。
次は使用している部品について見ていきます。このUSB充電器で実現したい目標の1つに、国内メーカーの部品使用率をできるだけ高くするというものがあります。できれば50%ぐらいは使いたいかなみたいなことをCIOの人と話しています。現状この試作品に使われている部品は全て海外メーカーのものでして、日本メーカー部品の使用比率は0%です。私も部品選定については色々と関わってきていますので、その点も色々話しながら解説していきます。
まずは電解コンデンサーですね。電解コンデンサーは日本のメーカーが強いことで非常に有名なんですけども、その部品選定を日本のメーカーでやろうとすると逆にめちゃくちゃ難しいというか、ほぼほぼ不可能でした。これには色々な理由があります。USB充電器に使う電解コンデンサーは少し特殊で、直径が細くて縦方向に長いことがほとんどです。こちらの試作品についても実際そういう電解コンデンサーを使っています。なんでそういう形状の電解コンデンサーを使うかと言うと、充電器内部の空間を有効活用するために詰め込む必要があるからです。実際筐体に収まる軸方向ギリギリまで電解コンデンサーの高さがありますよね。
日本の電解コンデンサメーカーって強いんですけども、実は全方面に強いわけではなくて、産業向けとか車載向けに強いんですね。実際産業向けの電解コンデンサーでこのような細長い形状が要求されるということはそこまで多くはありませんし、そもそも筐体サイズに余裕があることが多いので、細長いコンデンサをあえて選ぶ理由もないんですね。USB充電器に使われるようなこういう細長形状の電解コンデンサーの商売というのはかなりレッドオーシャンで、価格競争も激しく、中国のメーカーしかやっていない状況です。日本のメーカーも昔はやっていたようですが、現在はこのサイズの電解コンデンサーの製造からは撤退していて、製造している日本のメーカーは探した限りだとありませんでした。昔日本のメーカーが作っていた流通在庫はあるんですけども、在庫が切れてしまうとこのUSB充電器を作り続けることはできなくなってしまいます。なるべく流通在庫は使わないようにしたいのが本音です。
じゃあ、部品の時にもう少し直径を大きくすればいいじゃんとか思うんですけども、実際これより2〜3mm大きくすれば量産製品で日本メーカーからも出ています。ただ充電器のサイズとかを考えると、そういう部品を採用するのは結構厳しいんですね。ですので、電解コンデンサー自体は日本メーカーは非常に高品質で使いたいところではあるんですけども、充電器に使えるものとなると採用はかなり厳しいという状況です。
その他の受動部品、チップMLCCやチップ抵抗器については日本のメーカーがかなり強い領域です。特にMLCCについては大部分を日本メーカーに置き換え予定です。チップ抵抗器の選定については、実は私の方から日本の抵抗器メーカーへコンタクトを取っていて、CIOとつなぐことができています。この動画を撮影している最中も色々と話が進んでいて、多分その抵抗器メーカーが量産でも採用されるのではないかと思います。
受動部品で言うと、変圧器のコア部分についても検討の余地があります。コア材料に適切なものを使うと変圧器自体を小さくしたり、コアの体積が減るので、結果として充電器の発熱が少なくなったり体積が小さくなったりと付加価値は高くなります。今回は変圧器のコアについてはノータッチとしています。なんですけど、国産USB充電器プロジェクト自体はこの第1弾をスタートとして、第2弾、第3弾と続けていきたいとCIOの社長とも話しています。今後もしこの取り組みが続くようであれば、将来的には変圧器も日本メーカーを採用できないかと考えています。自薦他薦問いませんので、良いコアメーカーを知っている人がいましたらコメント欄で教えてもらえると助かります。それかコアメーカーの人が見ていましたら、概要欄のメールアドレスまで連絡ください。
ここまでは主に受動部品について見てきましたが、半導体部品についても見ていきます。実はUSB充電器に使われる半導体部品は中国のメーカーが非常に強いです。逆に日本メーカーはこの辺りはちょっと弱い領域ですね。特にインテグレーションされたGaNパワー半導体とUSB PDのコントロールICです。今回の試作品では、GaNパワー半導体部分はSouthchipのSC3107、USB PDのICは同じくSouthchipのSC2167Aを使っています。じゃあ日本メーカーはこの領域を一切やっていないかというとそんなことはなくて、以前分解したベルのUSB充電器ではルネサスのGaNパワー半導体とUSB PDのICを使っていました。なので設計変更をすれば、そういった国内メーカーの採用の可能性はあります。ただコストと色々な問題がありますので、その部分については検証が必要です。こういった特定用途の半導体部品で日本メーカーを採用するというのはいけなくはないんですけども、現状ちょっと難しそうな雰囲気はしていますね。
というわけで、日本のUSB充電器メーカーのCIOと共同で進めている国産USB充電器プロジェクトについての経過報告でした。
実はこの動画を作っている最中にも、CIOと一緒に中国のUSB充電器工場の視察にも行っています。今後は量産を見据えた設計や試作に入っていくわけですが、その段階で使用する日本メーカーの部品についても確定していきます。製造については、国産USB充電器と言ってはいますが、どの段階から日本で始めるのかというポイントも重要になってきます。例えば部品実装から日本でやるのか、それともある程度中国で部品実装したものを日本に持ってきて組み立てるのか。そういった視聴者の人が思っているであろう疑問を解決できるような動画も現在作成中です。その動画については割とすぐ公開される予定なので、楽しみにして待っていてもらえると嬉しいです。というわけで、国産USB充電器プロジェクトを応援している人は高評価、そしてコメントも残してもらえると嬉しいです。それでは最後まで動画をご視聴いただきありがとうございました。
動画の最後になりますが、イチケンチャンネルを企業のPRに活用するのはいかがでしょうか?イチケンでは製品の宣伝、工場見学、アウトリーチ活動、人材採用への活用など幅広く対応いたします。これ以外にもお気軽にお問い合わせください。動画を作成すれば、その後は再生され続けて動画が代わりに営業してくれます。やるなら早くをお勧めします。実績や詳細は概要欄にあるメールアドレス、ホームページからご連絡ください。それではご連絡お待ちしております。
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