SpaceX上場の熱狂にどう向き合うか テスタは見送り、大川智宏は「待ち」を勧める

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概要

投資を始めて2年足らずの青木さやかさんが、投資のプロに素朴な疑問をぶつける回である。回答するのは個人投資家のテスタさんと、今回初登場のオスカグループCEO・大川智宏さん。前半の中心は二つの問いだった。プロはどんなきっかけで銘柄に出会い、買おうと判断するのか。話題のSpaceX株はいまから買ってもよいのか。後者について、テスタさんは最初から投資対象に入れていなかったと話し、大川さんは「買うとしても待った方がいい」と答えた。

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青木さやかさんとお金の来歴

番組ではまず青木さんの経歴をグラフで振り返った。青木さんは大学卒業時にアナウンサーを目指したが試験に落ち、就職活動でも他の試験に全部落ちて、名古屋でタレントになった。本人は自分を「芸人」とは感じていないという。ネタをそれほど作れないことが理由である。

売れる前は生活が荒れていた。バイトが続かず、現実を忘れたくて昼はパチンコ、店が閉まれば雀荘に通い、消費者金融から借りて回していた。借入は最大450万円ほど。周囲にも同じような人が多く、消費者金融を「私の銀行」と呼ぶ知人もいたため、普通のことだと思っていたと振り返る。

転機は2003年である。「エンタの神様」でネタを披露し、「笑っていいとも」や「ロンドンハーツ」にも出演して、グラフが直角に近い角度で上がるほど一気に売れた。2005年には番組の企画で写真集を出した。タイトルはフランス語で「どこ見てんのよ」を意味するもので、約8万5000部売れたという。当時は給与明細を一切見ていなかった。見ても変わらないと思っていたからだが、銀行には8000万円ほどあった。その後2007年に結婚し、2010年に出産、のちに離婚している。

大きく変わったのは2025年に、お金まわりの見直しをテーマにした本を出版してからだと青木さんは言う。自分がどれだけ散財し、人に渡し、貸して返ってこなかったかを見つめ直した。8000万円がそのまま残っていれば、とも口にしている。投資も2025年に始め、ふだんはChatGPTに相談している悩みを今回プロに聞きに来た。

大川さんの立場と、身近なところから銘柄を見る方法

最初の質問は「プロはいつ、どんなときに銘柄と出会い、何を見て買おうと思うのか」だった。

大川さんは、まず自分は投資をしていないと断った。自分で分析して情報を発信する立場上、個別銘柄の売買は規制があって基本的にできない。そのうえで質問を「どんな銘柄にピンとくるか」と読み替えて答えた。大川さんは野村総研などを経て、数学や統計学で株価や市場の値動きを予測する仕事をしてきた。本人は「気持ち悪いこと」と自嘲する。それでも、良い悪いを感じる銘柄は生活圏や自分の興味に偏ると話す。

例に挙げたのは宝(焼酎や日本酒のメーカー)である。大川さんは酒好きなので、業績や株価を常にモニタリングしている。株価が好調なので理由を調べると、海外展開を積極化しているというニュースが出ていた。酒に詳しいため、この種の酒は海外でも人気がある、といった文脈がすぐにつながる。好きな分野はずっと見ているので、良いニュースも目や耳に入りやすい。青木さんの場合なら猫の話のように、人より少し詳しい分野で前向きな話題が入ってきたときに投資を検討するとよい、というのが大川さんの勧めである。

ニュースを見てからでは遅いのか

青木さんは「ニュースで見た時にはもう遅いのではないか」と尋ねた。大川さんの答えは「全然遅くない」だった。ニュースが出た時点で業績の伸びがすべて株価に織り込まれるわけではない。後から乗っても悪くないという。

ただし条件がある。ニュースの中身が短期的なイベントならダメで、「こういうものが売れている」「人気がある」という状況であれば続く可能性が高い。ニュースがイベント性のものか、実際の業績の流れなのかを見極めることが必要で、後者ならゆっくり買っていっても問題はないというのが大川さんの見解である。

おにぎりの欧州進出と外食企業の海外展開

これを受けて出演者の一人が、その日に見たニュースを持ち出した。「おにぎり ごんべえ」のおにぎりがヨーロッパでよく売れているという話である。大川さんは個別銘柄の良し悪しは分からないと前置きし、外食関連の株価は全般に低迷していて、その理由ははっきりしていると説明した。

日本はいまインフレだが、外食は値上げしにくい。大川さんによれば、日本人はインフレに慣れておらず、昔は値上げしたら下がるまで待つのが日本人の感覚だった。最近は諦めて買うようになり、多少は慣れてきた。それでも値上げへの抵抗はまだ強く、すぐに値上げすると客が離れる。そうなると外食企業には海外進出しか道がない、と大川さんは見る。インバウンドで人気を得た企業が海外展開を強化するのはその流れの一環で、海外ではインフレが普通なので価格を上げやすい。この観点から、おにぎりのヨーロッパ進出は戦略として正しく、業績が拡大する可能性はあるというのが大川さんの評価だった。

テスタさんの場合:大きな値動きから理由を調べる

テスタさんのアイデアは、何か大きな出来事が起きたときに浮かぶという。値上がり・値下がりのランキングなどで大きく動いた銘柄を見つけたら、なぜ動いたかを調べる。

テスタさんが挙げた例はこうである。今月発売予定だったゲームがバグで3カ月延期になり、株価が10%下がったとする。延期だけが理由なら、3カ月後には10%戻ると考える。3カ月で10%、月3%程度ならそれほど魅力はないが、15%下がっていれば3カ月で15%取れる計算になり、少しずつ買い下がっていけば大きく損はしないだろう、と判断する。このように、出来事が起きたときに期間とリスク・リターンを比べ、投資する価値があるかを考える。インバウンドが増えているといったニュースから関連銘柄を検索して探すこともある。長年相場を見てきたので、蓄積したデータや傾向から自然に浮かんでくるイメージだという。

情報源について問われると、テスタさんはいまはX(旧Twitter)が多いと答えた。投資家をたくさんフォローしておけば、今日動いている銘柄や大きなニュースが出た銘柄、ストップ安(1日の値幅制限の下限)になった銘柄などが話題として流れてくる。その銘柄名を検索欄に入れると、詳しく解説する人の投稿やニュースサイトの記事が出てきて、上がった理由や下がった理由(好決算など)が分かる。証券会社のツールの値上がり・値下がりランキングで見つけた銘柄を、またXで検索するというやり方もある。

最近はAIで理由を聞く人も増えているようだとテスタさんは言う。ただ自分が試した範囲では、AIは嘘をついたり、まったく違う理由を答えたりすることがまだある。それでも、いずれ普通の検索よりAIのほうが正確になるのではないかと見ている。

AIへの課金と、その使いどころ

話題はAIツールへの課金に移った。出演者の一人はChatGPTに月3000円払っていて、青木さんも同じ、加藤さんは無課金である。大川さんはClaudeだけを使っていて、いくつかあるプランのうち一番高いものを契約しており、月に数万円かかるという。

ただ、大川さんは実はあまり使っていないと話す。既存の情報をまとめて資料にする記者のような仕事なら使い道は多い。しかし大川さんは自分で考えることが求められる立場で、世の中に出ている情報を発信しても意味がない。AIはWeb上の情報を適切にまとめるのが仕事なので、たまに大川さん自身の発言が出てくることもあると笑う。一方で、プレゼン用の資料づくりには便利に使っている。情報を一気に集めてくれるうえ、最近は良いモデルを使えば資料そのものも作ってくれる。それでも「ネタ」は作ってくれない。芸人のネタと同じで、既存のウケたものをまとめるのは上手いが、自分で考える部分はまだ無理だというのが大川さんの評価である。別の出演者も、ゼロから1を生む最初のアイデアや、一次情報を組み合わせてシナリオを考えるのはまだ人間の役割だと同意し、そのうえで大量の情報をまとめる能力は非常に優れていると述べた。

大川さんの情報源:人と話すこと

X以外の情報源を聞かれた大川さんは、もともと数学や確率を使うクオンツをしていたため、多くの情報が入るとかえってノイズになるおそれがあったと話す。そのうえで、いまは1日に2〜3本の収録をこなし、対談や共演でプロ同士が集まる場で多くの情報を得ているという。その場でいろいろなアイデアが浮かび、この日も共演者の話を聞いて考えが浮かんだと認めた。

株にそれほど詳しくないが頑張っている人は、自分とは違うデータを見せてくれる。一部分だけやけに詳しい人は、質問しながら自分の答えを持っていて、話が独演会のようになる。そういう人の話からも得るものが多いという。最近の大川さんは、講演会が終わってもすぐに帰らず会場に残り、個人投資家からの質問を必ず受けるようにしている。個人投資家は集まれば市場を動かす立場で、その人たちが何を見てどう考えているかが参考になるからだ。投資は人がお金を出して行うものなので、その人たちの考えに接点を持つことが非常に重要だと最近気づき、積極的に話を聞いていると語った。

SpaceX株は買うべきか:テスタさんが見送った理由

次に青木さんは、SpaceX株を持っていたらかっこいいと思うが、いまから買うのはどうかと尋ねた。

テスタさんは自分の体験として、申し込みもせず、買ってもいないと答えた。理由は二つある。一つは米国株で身近ではないこと。大川さんが言うように身近なところから投資アイデアが浮かぶのだとすれば、遠い企業ほど状態を把握しにくい。いまどういう状況で、何月何日にどんなミッションがあるかを調べようにも英語が必要で、日本ではニュースになりにくい。テスタさんは遠い国の株はあまり買わないという。

もう一つは時価総額の大きさである。上場時点ですでに日本の名だたる企業の何倍もの規模で、将来とてつもない金額を稼ぐことが決定しているかのような値段がついているとテスタさんは表現する。宇宙事業なので想像もつかないほど稼ぐかもしれないが、ここからさらに2倍、3倍になるかといえば、時価総額が途方もない額になってしまう。だから夢は見にくい。日本で小さな会社が上場して何倍にもなった例はたくさんあり、小さい企業のほうがウォッチもしやすい。そのためSpaceXはもともと投資対象に入っていなかったという。

大川さんの見方:伸びしろと収益化の不透明さ

大川さんも規模の問題を強調した。宇宙ビジネスは夢を買うビジネスで、目先の業績はまだ赤字であり、投資家は将来の成長を取りにいっている。上場時の時価総額が100億円や1000億円なら良かったが、いまは何百兆円である。そこから100倍になる可能性はほぼゼロで、物理的に拡大しようがないと大川さんは述べる。宇宙関連で夢を買うなら、時価総額100億〜1000億円程度の宇宙ベンチャーのほうが理にかなっているという。

もう一つ重要なのは、宇宙ビジネスに限らず、本当に金になるのかを見極めることだと大川さんは言う。月の資源を事業の柱に掲げる宇宙ベンチャーもあるが、それが本当に必要かは分からない。宇宙旅行も、実現したとして収益化できるのかがクリアにならない。大川さん自身は宇宙旅行には怖くて行きたくないが、子どもの頃は天体観測をしていて宇宙は好きだという。夢があるから買いたいという人は、特にガンダム世代に多いだろうと見ている。それでも投資は夢と分けて考えなければならない。SpaceXは応援しているし好きな銘柄だが、今後大きく上昇を続けるかといえば、需給面も含めて現状は厳しいというのが大川さんの見立てだった。今後予想されるOpenAIやAnthropicの大型IPOについても、「ほぼ一緒の議論」になるとした。

PSRで見る割高感

続いて、スライドを使ってPSR(株価売上高倍率)を説明した出演者がいた(馬渕磨理子さんとみられる)。SpaceXは赤字なので、利益を基準に株価水準を比べられない。そこで売上に対して株価がどの水準かを見るのがPSRで、米国では赤字企業をこの指標で判断することが多いという。

スライドでは、SpaceXのPSRは113倍と100倍を超えていた。比較として、Microsoftは10倍程度と紹介された。話題のNVIDIAについても数値が示されたが、字幕では「230倍」と聞き取れるため、正確な数字はここでは断定しない。Amazonもかつては100倍だったが、現在はこの水準から下がっているという。倍率が高いほど割高で、赤字企業は倍率が高くなりやすい。黒字化して利益が出てくるとPSRが下がり、割安感が出てくる。SpaceXはいま値動きが激しく割高感もあるため、「ジャンピングキャッチ」の感があるという評価だった。PSRは多くのサイトで無料で確認できるので、100倍超は割高の目安と覚えておくとよい、とこの出演者は勧めた。

テスタさんは、株価は将来を想像してつくものだと補足した。創業以来赤字の会社は価値がないように見えても、将来とてつもなく稼ぐと多くの人が思えば、普通の黒字企業より高い値がつく。SpaceXは赤字でも宇宙で将来莫大な利益を上げると期待され、100兆円といった時価総額がついている、という説明である。

株に興味のない人が買ったことが危うい

大川さんが特に危ないと感じたのは、株にまったく興味のない人が周囲で買っていたことだった。大川さんの親も、株に詳しくないのに証券会社に申し込みに行ったと話していたという。PSRなどの指標は人によって評価が違い、高いから悪い、安いから良いという単純な話ではない。高い成長が見込め、将来の株価と業績がついてくるからこその割高なら許される。しかし「SpaceXというものがあるらしい」「イーロン・マスクがすごい企業を上場させたらしい」と買った人が多いのなら、分析に基づかない需給がかなり入っていることになる。だから買うとしても、変な需給が抜けて落ち着くまで待ったほうがいい、というのが大川さんの結論である。

テスタさんはこの状況を「お祭り」と表現した。普通は米国企業のIPOを日本の証券会社からわざわざ申し込んで取りにいくことはない。それだけ巨大な企業なので日本にも多く割り当てられた。企業側は上場時に大きな資金調達をしなければならず、米国だけでは足りないため、日本の投資家にも投資してほしいというニーズがあったという説明である。

さらに別の出演者は、今後SpaceX、Anthropic、OpenAIの3社が上場する可能性が言われているとしたうえで、3社を合計すると時価総額は600兆円になり、日本のGDPも600兆円だと指摘した。日本全体の企業が日々生産活動して生み出す規模を、3社で超えるほどのことが起きている。この「お祭り感」は知っておいたほうがいい、という指摘である。

決めるのは自分自身

話を聞いた青木さんは、ネットのニュースを見て「今買わなきゃ」と思うのではなく、自分でもきちんと調べようと思ったと語った。テスタさんは、出演者3人でも立場が少しずつ違い、立場が違えば意見も変わると述べた。必ずこの人が正解という世界ではないので、いろいろな意見を参考に自分の中で咀嚼し、自分の意見として投資してほしい。投資はあくまで自己責任で、決めるのは青木さん自身だ、と念を押した。

前編の最後では、次回のテーマとして青木さんの投資目標が示された。自分の老後資金、お世話になった人の葬儀費用、動物保護活動の費用として、7年以内、60歳までに3億円を目指したいという。その実現に向けたマネープランは後編で扱われる。