Anker Nano Charger 45W(ディスプレイ付き)を分解する:表示機能と充電モード切替を持つ小型充電器の熱設計

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概要

エレクトロニクス系YouTuberのイチケンが、Ankerから発売されたディスプレイ付きの45W・1ポートUSB充電器「Anker Nano Charger (45W, Display, スイングプラグ)」を検証し、分解した。この製品はディスプレイで現在の充電状況を確認でき、充電モードも切り替えられる。動画では、ディスプレイを載せたことで中身や熱設計がどう変わったのかを、実測と分解で確かめている。

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本体の形状とスイングプラグ

一般的なUSB充電器はコンセントに挿すとUSB-Cの差し込み口が上を向く。この製品は上側にディスプレイがあるため、ポートが少し変わった方向から出る。ただしプラグ部分が180度回転するので、USB端子を上方向へ引き出すこともできる。イチケンは、このスイングプラグの可動範囲が広いぶん、耐久性が気になると述べている。

充電を始めると、ディスプレイの表示が「急速充電中」に変わる。映像では暗く見えるが、肉眼ではそこまで暗くない。とはいえ、ものすごく明るいわけでもない、というのがイチケンの評価だ。電力表示には±1W程度の誤差がある。イチケンは、この表示はどのくらいの電力で充電しているかが分かればよいという目的のものなので、実用上は全く問題ないとしている。

タッチセンサによる操作と温度表示

ディスプレイの横には操作ボタンがある。物理ボタンではなく、タッチセンサ式だ。1回タップすると表示が切り替わり、長押しすると表示の向きが180度回転する。2回タップすると項目を選んで切り替えられる。

温度表示は充電器の内部温度を示すもので、低温・常温・高温の3段階だ。実際に内部温度が高い状態では高温の表示が出る。

急速充電モードと保護充電モード

充電モードは「急速充電モード」と「保護充電モード」の2種類から選べる。急速充電のほうが早く充電が終わって便利だ。一方で、バッテリー保護の観点から充電電力は低いほうがよいというニーズもある。保護充電モードはそのための、充電電力を制限するモードである。

実際に切り替えると、急速充電モードで27W程度だった電力が、保護充電モードでは最大でも17W程度に下がった。表示も「保護充電中」に変わる。電源を一度抜いて挿し直すと、保護充電モードは解除されて急速充電モードに戻る。イチケンは、保護充電モードのまま使い続けて「充電が遅い」というクレームが出るのを避けるためだろうと推測している。毎回モードを入れ直すのは面倒だが、仕方ないという見方だ。

電力の制御は、充電器側が通知するPDO(Power Data Object)を切り替える方式で行われている。急速充電モードでは最大45Wで、出力電圧は20Vまで対応し、PPSにも対応する。保護充電モードでは最大20Wで、電圧は12Vまでに制限されるが、PPSは使えるようだ。イチケンは、最大充電電力をユーザーが選べる点を面白いと評価し、うまくニーズを拾ったと述べている。

Apple製品のモデル検知

充電プロトコルはかなり高機能に実装されているようで、Apple製品のモデル検知機能もある。iPhoneを接続すると「iPhone 17 Pro」と表示され、バッテリー残量も充電器本体に表示された。表示された74%は端末側の値と一致していた。

Androidスマートフォンを接続した場合は、充電はされるが、バッテリー残量などは表示されず、充電電力だけが表示される。また、すべてのApple製品でモデル検知ができるわけではないので、自分の端末が対応しているかは確認が必要だという。イチケンは、モデル検知は現状ではおまけ機能のようなものだと位置づける。モデル名が表示されても今のところ「それがどうした」という程度で、将来これを使って何かができるようになれば面白い、と述べている。

従来の45W充電器との比較

2025年にAnkerから発売されたディスプレイなしの45W充電器と比べると、どちらも1ポート・45Wで同じだが、新製品のほうが全体に大きく、重い。イチケンは、ディスプレイとスイングプラグ機構を付けたためだろうとしている。

その結果、充電器の重要な指標の一つである体積あたりの電力は悪化した。それでも1cm³あたり1W近くあり、十分に小さい充電器だとイチケンは評価する。一方、放熱性能に関係する表面積あたりの電力は、実は良くなっている。体積が増えて表面積も大きくなったぶん、放熱には有利になるという説明だ。

電力変換効率

電力変換効率は、コンセントの交流電力をUSB充電に使う直流電力へどれだけ効率よく変換できるかを示す。効率が高いほど充電器本体で生じる損失が少なく、発熱も少なくなる。

測定では、最近のUSB充電器らしく、出力電力の全域で効率が高かった。コンセント電圧100Vでの最高効率は20V出力時の92.5%、200Vでの最高効率は93.7%だった。イチケンはこの結果を「かなり良い」と評価し、この種の充電器は基本的に200Vで使ったほうが効率が高くなると補足している。

表面温度とサーマルスロットリング

サーモグラフィーで測った本体の最高温度は、本体上部の73℃だった。熱くなるのは主に側面で、ディスプレイ面にはそれほど熱が伝わっていないように見えた。タッチセンサ周辺も熱くはなっていたが、内部構造によるものか、熱が強く伝わっている様子はなかった。

続いて、サーマルスロットリングが起きるかも確かめた。サーマルスロットリングとは、加熱による故障を防ぐために出力電力を意図的に制限する機能だ。最も発熱する部分に熱電対を貼って45Wで出力し続けたところ、開始から70分で温度が飽和し、最高74℃に達した。スロットリングは起きず、安定して動作を続けた。イチケンはディスプレイが付いているぶん放熱では少し不利になると予想していたが、実際にはそれほど影響がなかったとしている。

ディスプレイの傷つきやすさ

分解の前に、カバンの中で他の物とこすれた場合を想定して、ディスプレイ部分の傷つきやすさも試した。鍵で思い切りガリガリこすると傷がついたが、軽くこする程度では小傷ができる程度だった。樹脂がかなり丈夫なので、強く引っかかない限り大きな傷はつかない、というのがイチケンの見立てだ。

ディスプレイと充電器モジュールの分離構造

分解すると、ディスプレイは全面を表示に使っているわけではなく、半分だけを使っていることが分かった。ディスプレイと充電器はピンヘッダのコネクタでつながっており、充電器モジュールを差し込んで接続する構造になっている。

筐体の中は、ディスプレイの部屋と充電器の部屋に分かれている。この製品の熱伝導材は、青色の放熱用シリコンパッドと灰色のシリコンポッティング材だ。イチケンは部屋を分けた理由を二つ推測している。一つは、ポッティング材がディスプレイ側に流れ込まないようにするため。もう一つは、組み立て時や使用中の振動でちぎれた熱伝導材のカスがディスプレイに入り込まないようにするためだ。ただし後者については、ディスプレイはもともと金属ケースで覆われているので、異物の侵入はある程度防げているだろうとも述べている。

ディスプレイ面を使った放熱

ディスプレイカバーの内側で、表示に使われていない領域も放熱に使われている。筐体のこの部分の内側には熱伝導シリコンパッドとポッティング材があり、その位置には充電器の変圧器がある。変圧器は発熱の大きい部品なので、シリコンパッドに押し付けてディスプレイ面から熱を逃がす方式だ。先のサーモグラフィーでディスプレイの一部がよく発熱していたのも、この構造による。

タッチセンサは静電容量式で、タッチ部分の内側に金属シートが貼られている。このシートが充電器の基板から伸びた金属端子に接触する構造になっている。

充電器モジュールの放熱設計

充電器モジュール自体は非常にコンパクトに設計されており、イチケンは実際に持ってみて驚くほど小さく、これで45Wだと強調している。放熱は基本的に、すべての面から熱を逃がす設計になっている。

材料は面の形状によって使い分けられている。背の低い表面実装部品が並ぶ平坦な面には、青色の放熱用シリコンパッドを押し当てている。形状が複雑な部分には、ポッティング材を流し込んでいる。2次側のUSBプロトコルICの部分では、先にポッティング材をICに塗り、その上からシリコンパッドを貼る「合わせ技」も見られた。電解コンデンサ周りのように形状が複雑な面はポッティング材が主体で、パワー半導体が実装された面にはやや厚めのシリコンパッドが使われている。底面は前述のとおり、変圧器にシリコンパッドを密着させてディスプレイ面から放熱する。ポッティング材はコンセントのプラグ側の面から流し込み、最後にプラグで封をする構造だ。

3枚の基板と実装部品

充電器部分をさらに分解すると、基板は3枚構成だった。

1枚目は、変圧器などスルーホールのパワー系部品がまとまった基板だ。電解コンデンサにはJSH製が多用されている。表面実装面にはオールインワンのDC-DCコンバータICがあり、パワー半導体は当然、窒化ガリウム(GaN)だ。残り2枚の基板には、部品の保持と絶縁を兼ねたプラスチック部品がはめ込まれている。

2枚目は、変圧器の2次側回路に使うパワー半導体やICを載せた基板だ。「053201」と書かれたICを、イチケンはおそらくディスプレイ制御用のMCUだろうと見ている。裏面の「PY259128」はフラッシュメモリで、設定情報やディスプレイに表示する情報を保存するためのものだろうと推測している。その横には高分子系の電解コンデンサがあり、これもJSH製だった。

3枚目はUSBプロトコルIC周りの回路の基板だ。この基板にはコンセント側の高電圧回路とUSB出力側の低電圧回路が混在している。両者を分けるために基板にスロットが掘られ、そこに2つに分かれる白いプラスチックカバーを絶縁材として固定している。USBプロトコルICは「SM001H」だが、イチケンが調べた限りではメーカーは分からなかった。

まとめとしての評価

イチケンは、Ankerはもともと設計力・技術力のある会社だと思っていたが、今回の分解で技術力がさらに増している印象を受けたと述べる。Ankerはこれまでもディスプレイ付きのUSB充電器やモバイルバッテリーを数多く出してきたので、その経験の積み上げが大きいのではないか、というのがイチケンの見方だ。