3億円の目標に対し、専門家2人は「国策テーマ」と「米国株」を提案した ―― 青木さやか回・後編

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概要

投資バラエティ「どっちで増やしまショー」の後編では、タレントの青木さやかが投資で実現したい目標を示し、アナリストの馬渕磨理子と大川智宏がそれぞれ運用プランを提案した。青木の目標は「7年以内、60歳までに3億円」。これに対して馬渕は、まず3億円は現実的ではないと数字で示し、国が定めた成長分野に乗る方法を勧めた。大川は米国株を強く推し、オルカン(全世界株式)よりS&P500の方が分散投資として優れていると主張した。最後に青木が選んだのは大川のプランである。

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3億円の内訳は老後資金、葬式費用、動物保護

青木は3億円の用途として、自分の老後資金、世話になった人の葬式費用、動物愛護の活動費の3つを挙げた。

葬式費用の話には青木の家族の経験がある。青木の両親は、青木が高校生の時に離婚した。それから30年ほどたって父親が亡くなった時、父親にはお金がなく、母親が看取って葬式を出したという。青木自身もその覚悟で今後男性と付き合っていきたいと語り、「一応」別れた夫の葬式費用も確保しておきたいと話した。さらに、お金がなくなる知人の例として司会の加藤(ザブングル加藤)を挙げ、加藤がお金に困ったら葬式費用くらいは出すと言って笑いを誘った。

動物愛護については、青木が参加している団体に1億円を渡したいという。1億円あれば今施設にいる動物たちが生涯暮らせ、もう少し大きなドッグランも作れるからだ。ただし「3億あれば1億ぐらい渡せる」のであって、なければ渡さないとも付け加えた。

現金はほぼゼロ、あるだけ投資に回す

青木の現在のポートフォリオは約7割が不動産で、所有するマンションが資産の大部分を占める。現金は1%しかない。青木は、お金があると使ってしまう性質なので、現金をできるだけゼロに近づけて毎月投資に入れていると説明した。NISAの枠も特に意識せず、「今月は50万円あった」という月にはそのまま入れる。

加藤はこのやり方を評価した。あったら使ってしまう人は、なければないなりに充実して暮らせるのに、ボーナスが入るとすぐ使ってしまい、それで幸福度が大きく上がるわけでもなさそうだ、というのが加藤の見方である。

祖父から受け継いだ凸版印刷株をどう見るか

3年前の資産は不動産と現金、そして母親から受け継いだ個別株だった。祖父が持っていた凸版印刷(現TOPPANホールディングス)の株を母親が受け継ぎ、青木は2000株ほどを譲り受けた。代々受け継いだ株は売りにくいという話も出たが、青木は約7年保有した後に見直し、1500株を売って500株を残した。

大川はこの銘柄について解説した。凸版はもともと印刷の会社だが、書籍は電子書籍に、新聞は電子版に置き換わりつつあり、紙の印刷は需要が変わってきている。それでも株価は堅調だという。大川によれば、理由は時代に合わせてビジネスモデルを変えてきたことにある。凸版は半導体の基板の事業が好調で、AIブームのなかで成長が強い。大川は、意外な企業が実は半導体に関わっている例は多いと話し、同じ印刷業の大日本印刷(DNP)も、印刷から始まった技術をデジタルサイネージのような分野でサービスとして提供していると紹介した。そのうえで、今のハイテクブームが続く限りは大きく崩れることはないだろうとして、長期で持ち続けてもよいという見方を示した。

企業の事業の変化をどう調べるかという質問に対して、大川は四季報は見ないと答えた。会社のホームページや決算資料にはセグメント別の業績が載っているので、保有銘柄の株価がなぜ上がっているのか疑問に思ったら、どの事業が儲かっているかをざっくり確認するだけで十分だという。

経営者と情報開示が株価を動かす

出演者の一人は、社長を見て投資するという観点を挙げた。多くの事業は続けているだけでは先細りになり、生き残るには新しいことを始めなければならない。それを決めるのは社長なので、社長が高齢なら変わらないだろうと判断でき、若い社長に交代する時は良くも悪くも株価に影響が出ることがあるという。

馬渕も、経営者と会う機会が多い立場から、人は大事だと話した。事業内容が良いことが前提だが、それを推進できそうか、株主に好かれそうな説明ができるかも重要だという。お金を出すのは投資家なので、会社が自社をうまくアピールできるかは営業のプレゼンテーションと同じだ、というのが馬渕の考えである。

その例として馬渕は、社名を伏せつつ「誰もが知っている某大手製造業」の話をした。それまで情報開示に消極的だったその会社が、問い合わせ窓口の電話を設置しただけで「投資家にフレンドリーになった」と受け止められ、株価が急騰したという。馬渕は、会社と投資家の接点がそれほど重要だと今も感じていると語った。

50歳からの投資は遅いか

青木の「50歳から投資を始めても遅くないか」という質問に、テスタは遅くないと答えた。100歳まで生きると考えれば50年あり、テスタ自身の投資歴は20年だという。青木はもっと早く始めればよかったとも言ったが、出演者からは「自分の人生で今日が一番若い」という言葉が出た。

投資を始めて良かった点を聞かれた青木は、お金の流れをはっきりさせることで、自分が何のためにお金が欲しいのか、何に使っているのか、何をすると楽しいのかが明確になったと答えた。青木はこれを「自分自身を知るスピードが上がった」と表現した。

投資資金は元本2000万円と月10万円

青木が示した投資資金は、元本2000万円と月々10万円(20万円入れる月があってもよい)である。テスタは、自分が同じくらいの金額から3億円にするまでに9年かかったと話した。青木は、60歳が区切りとしてちょうどいいと思っただけで、9年でもいいと応じた。

馬渕プラン:3億円は非現実的、まず7〜10%を目指す

馬渕はまず、目標額について数字で検討した。元本2000万円に毎月10万円を7年間積み立てると、投資額は合計2840万円になる。これを3億円にするには毎年40〜45%程度のリターンを出し続ける必要がある。馬渕は、「投資の神様」ウォーレン・バフェットでも20%程度だとして、ハードルはかなり高いと述べた。

現実的なラインとして馬渕が示したのは次の試算である。手元資金を年7%で回せば7年後に約3800万円。これはオルカンなど一般的なインデックスのリターンに相当するという。最近はインデックスの成績も良く、年によっては20〜30%出ることもあるので、年10%なら7年後に5000万円程度になっている可能性もあると馬渕は見積もった。ただしこれは日々の相場次第だとも付け加えた。1億、2億、3億を目指すなら、リスクのある個別銘柄に踏み込む必要がある。馬渕は、まず減らさないことを基本にしながら、一部でリスクを取る方針を提案した。

国が定めた17の成長分野に「便乗」する

リスクを取る先として馬渕が挙げたのが、政府が定めた17の戦略成長分野である。馬渕によれば、6月24日に最新版が公表され、今後日本の産業に官民合わせて総額370兆円の投資を呼び込む方針が示された。資料は政府のホームページに掲載されており、馬渕は元のデータを見てほしいと繰り返した。個人投資家も機関投資家も、どの産業が注目されているかを政府資料で細かく見ているので、大きなお金が流れ込む分野にまず乗るのが一つの手だという。これが馬渕の「未来便乗投資法」である。

首相が代わったら方針が撤回される可能性はないかという質問に対し、馬渕は、高市政権が続くことが前提だとしつつ、この種の政策は一度線を引くと首相が代わっても続くだろうと答えた。経済産業省が主導しているからだという。自民党政権でなくなれば変わる可能性はあるかと重ねて問われると、馬渕はその可能性を認めつつも、AI、半導体、防衛はアメリカ、中国、ヨーロッパでも国主導で進められている世界の潮流なので、方向性が一気に変わることはなさそうだと述べた。

馬渕が政府資料から投資に関係が深く規模の大きい分野を抜き出した内容は、次のとおりである。

  • 半導体:全体で68兆円の投資目標。
  • フィジカルAI:AIを組み込んで自律的に動くロボットを指し、10兆円の投資が見込まれるという。
  • 防衛:ドローンなど、軍事と民間の両方で使えるデュアルユースの分野。ただし株価はすでにだいぶ上がっている。
  • 医薬品:国内で薬を作れないと国民の生活を守れないという観点からの国内生産と、アルツハイマーなどの新薬開発。23兆円程度の投資とされる。
  • フードテック:植物工場や陸上養殖など。規模は小さく、成功するかは正直分からず、株価もまだあまり動いていないと馬渕は述べた。
  • コンテンツ:すでにヒットしているが、国がさらに力を入れ、ゲームで24兆円を呼び込む話があるという。

フィジカルAIと中国の追い上げ

馬渕が特に注目を促したのがフィジカルAIである。今後しばらくトレンドになる言葉だという。ファミレスで料理を運ぶロボットや工場で働くロボットがその例で、中国では人型ロボットがハーフマラソンを完走したりボクシングをしたりして話題になっている。

馬渕は、人型ロボットで世界トップを走る中国企業の関係先に取材に行った経験を話した。中国は国として資金を投入し、規制緩和によって道路などさまざまな場所で実験できるため進化が速く、正直なところ日本を追い抜きそうな状況だという。一方で日本も強く、国がようやく資金を投入し始めたので、規制緩和は難しいとしても投資対象として注目できると馬渕は述べた。まだ割安感のある企業群もあるので、今から入るならこの分野はありではないかという。具体的な企業は、AIに「フィジカルAIの企業は」と聞けば有名企業が一覧で出てくると紹介した。

馬渕は最後に、インデックス中心で緩やかに7〜10%を目指すか、リスクを取って大きなお金の流れに資金を置くかを選んでほしいと締めくくった。損失が出る可能性もあると明言している。

大川プラン:米国株の方が日本株より銘柄を選びやすい

大川の提案は一言で「アメリカ株に行ってください」である。大川はもともと日本株の専門家だが、今は仕事の6〜7割が米国株の分析だという。米国株の方が圧倒的に面白く、投資のチャンスも大きいというのが理由だ。

大川によれば、アメリカ企業は時価総額が何百兆円という規模まで膨らみ、世界中からお金が集まる。お金が集まれば研究開発やイノベーションも世界の最先端で進む。ストップ高・ストップ安がないので、1日に何十%動いたり株価が倍になったりすることもある。怖さはあるが、そのぶん大きな利益を狙えるという。

大川が最も強調したのは、日本株よりアメリカで良い銘柄を選ぶ方が「圧倒的に簡単」だという点で、これは断言してもいいと述べた。日本では、会社の報告書で利益が今後1年で10%、20%伸びると示され、それが市場平均を大きく上回っていても、株価に素直に反映されにくい。大川はその理由を、外需依存が大きく為替の影響も強いため、予想どおりの利益にならないことが多いからだと説明した。一方アメリカは経済の中心なので、成長予想がそのまま株価に反映されやすく、成長率の高い銘柄がそのまま上がる。多額のお金が流れ込んでいるため適正な値段がつく、というのが大川の見方である。そのため大川は、これから株を始める人にはアメリカから始めることを勧めているという。成長率のデータも、大手企業ならパソコンで調べればいくらでも出てくる。

個別銘柄に土地勘がない場合は、S&P500のETFや投資信託でもよいと大川は言う。S&P500は、厳しい競争のなかで成績の良い銘柄を自動的にまとめてくれる「世界最強の投資信託」であり、多めに持っておくだけで世界最先端の成長やテクノロジーのトレンドを買っていることになる。過去を見れば日本株より圧倒的にパフォーマンスが良く、最近は半導体の強さで日本株もある程度追いついてきたが、長い目で見れば米国株だと大川は述べた。ただし「世界の経済の構造が変わらない限りは」という条件をつけている。

オルカンは「分散投資と呼べない」

オルカンとS&P500ならどちらかと問われ、大川は「圧倒的にS&P500」と答えた。オルカンを否定はしないが、あれは分散投資とは呼べないという。大川の考える分散投資とは、良いもののうち相関性の低いもの、連動性があまりないものを組み合わせることであり、ダメなものを入れてはいけない。オルカンはとりあえず全部買う商品なので、ダメなものも入ってしまう。S&P500は「選ばれし500社」なので、そちらの方が良いと大川は考えている。

これに対して、オルカンも成績によって銘柄が入れ替わるので、それなりに良いものが集まったパッケージではないかという反論が出た。大川は、各国のなかでは選別されているし、大きな規模になった企業は伝統的に良い企業である可能性もあると認めた。しかし問題は国単位にあるという。景気の良い国も悪い国も、政情不安を抱える国も、少子高齢化が進んで今後が難しい国も、発展途上で不安定な国も全部入ってしまう。国を取捨選択できる商品なら良いが、全部入れるのは「思考停止」だと大川は述べた。戦略的に分散を考えるか、それを自動でやってくれる商品を選ぶべきで、それがS&P500だというのが大川の結論である。

ナスダックについては、アメリカは成長力の高い銘柄が素直に上がる市場なので、基本的にパフォーマンスは良いと大川は言う。ただし上がる分、金融危機などの局面では反動で大きく売られるリスクも大きい。どちらを選ぶかは好みの問題で、リスクが大きい方がナスダックというイメージだと説明した。

青木の選択と、米国株を「逃げる」べき時

青木は大川のプランを選んだ。理由として、景気が良いと大きく上がるシンプルさと、市場の大きさを挙げた。

大川は改めて、忖度抜きで米国株は良いと思うと述べ、分析していても素直な市場だと話した。そのうえで、唯一考えておくべきリスクとして「中国にとって代わられた時は逃げてください」と付け加えた。それが起こるまでは、テクノロジーも金融も中心はアメリカだという。

大川は、何十年後かに世界の中心が中国になることもありえない話ではないと述べた。中国は本気で、半導体には国家戦略ファンドのようなものがあって企業に資金を注ぎ込んでおり、昨年の年末年始だけでもGPUなど半導体関連の大型企業が中国で次々に上場したという。それは政府の意図によるもので、アメリカに追いつき追い越せという動きだと大川は見ている。テクノロジーの覇権を握る者が経済の覇権を握ることは過去が証明しており、中国には資金も人口もあるので、甘く見ていると足元をすくわれると大川は述べた。

締めくくり

青木は、興味はあるが知らなかったことを一気に吸収したので疲労感もあるが、一つ成長できたと感想を述べた。テスタは、青木の優しさがプランに表れていたと評したうえで、まずは自分自身の目標を目指し、それを超えたら他の人のことを考えればよいのではないかと話した。