韓国調達庁がスタートアップの「最初の顧客」になる理由:カン・ソンミン調達庁次長との対談
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スタートアップが事業を伸ばすには投資も重要だが、最終的には顧客がいなければならない。EOチャンネルの司会者は、最近最も重要な顧客層の一つとして浮上している市場に、政府・公共機関の公共調達市場を挙げ、これは韓国だけでなく世界的な流れだと語る。この対談で調達庁のカン・ソンミン次長は、公共調達が実績のない新興企業に「最初のレファレンス」をもたらす通路になり得ると説明する。その手段として、革新調達制度の仕組みや実際の事例、参入方法を紹介する。
司会者は、EOチャンネルで再生回数1位の動画も公共調達に関係していると紹介して対談を始める。ある大学生が独自の方法で融雪剤を作って政府に納品し、その後、世界中に融雪剤を供給する大企業へと成長した。司会者は、この政府への納品が世界的な企業へと向かう出発点だったと評価する。
調達庁とはどのような機関か
カン次長は調達庁を、政府が必要とする物品、サービス、施設を調達する中央行政機関だと紹介する。その過程で政府と企業をつなぐ役割を担う。彼が示した規模は次のとおりだ。昨年時点で公共調達全体の規模は約240兆ウォンで、そのうち約145兆ウォンが調達庁の運営する「ナラジャント」システムで取引される。参加企業は約60万社、需要機関は7万余りに上る。カン次長は、こうした大きな政府の購買力を活用し、創業初期の企業の成長を支援する取り組みも併せて行っていると話す。
日常生活で公共調達がどれほど身近なものかと尋ねられると、彼は道路のアスファルトコンクリート、信号機、指定ごみ袋などがすべて調達庁を通じて調達されていると答える。最近の中東の戦争情勢で尿素水の価格が上昇する問題が起きた際も、調達庁が備蓄していた尿素を放出し、尿素水の一部が調達庁を通じて供給されたという。公共調達は目立たないだけで、生活の隅々に浸透しているというのが彼の説明だ。
「実績がなければ納品できない」というジレンマと革新調達
司会者は企業が直面する問題を、「新人を採用しなければ、どうやって経験を積めというのか」という状況にたとえる。納品実績がなければ納品できない構造の中で、公共調達が呼び水となって企業に実績と売上をもたらし、同時に社会問題も解決する、と理解すればよいのかと尋ねる。
カン次長はこの説明に同意する。新しい製品は民間市場でレファレンスを積むのが非常に難しい。一方で政府には、新しい技術で解決できる社会問題が数多くある。政府は革新技術で社会問題を解決し、企業は政府を通じてレファレンスを積んで販路を広げる。この二つのニーズを結びつけるために6〜7年前に作られたのが「革新調達」制度だ。カン次長によれば、昨年時点で革新調達の販売実績は1兆1千億ウォン前後だという。
彼が代表的な成功事例として挙げたのは、床面設置型の歩行者信号機だ。スマートフォンを見ながら歩いて事故に遭う危険を減らすための製品で、5年前に革新製品に指定された。カン次長は、その後横断歩道での事故率が約40%減少したと話す。革新製品ではないが、同様に普及した事例として横断歩道前の日よけテントにも触れる。10年ほど前に登場して好評を得て、今ではほとんどの横断歩道に一つずつ設置されているという。また、最近は非常に暑いため、屋外で微細なミストを噴霧して熱気を和らげる製品が、革新製品の中で意外によく売れていると伝える。
ナラジャント、革新市場、ベンチャーナラはどう違うのか
司会者は、ナラジャント、革新市場、ベンチャーナラという三つのプラットフォームがどう違うのかを尋ねる。カン次長は、大枠がナラジャントで、その中にショッピングモール、ベンチャーナラ、革新市場があると説明する。区分の基準は次のとおりだ。
- 革新市場:これまでになかった新しい製品であれば、革新製品を検討すればよい。
- ベンチャーナラ:既存の種類の製品だが、まだ要件をすべて満たしておらず、ショッピングモールにも掲載されていない場合は、ベンチャーナラに入るのがよい。
- 判断が難しいとき:どこに行けばよいかわからない場合は、調達庁のコールセンターに連絡すれば、取り扱う製品に合わせて適切な経路を案内してもらえる。
革新製品から海外進出につながった三つの事例
カン次長は、革新製品に指定された後に成長した企業の事例を三つ紹介する。
一つ目は歩行リハビリロボットだ。利用者がどこへ行こうとしているのか意図を読み取り、それに合わせてロボットが動きながら歩行能力を養う製品だ。この会社はKOSDAQ上場まで果たしたという。
二つ目はポータブルX線装置だ。固定型ではなく、移動型の車両に積んだり、宇宙のような空間で使ったりできる小型装置だ。革新製品に指定された後、インドネシアで実証を経て成功判定を受けた。カン次長は、今年下半期にNASAの研究所に進出する見込みだと話す。まだ確定した結果ではなく、見通しとして示した内容だ。
三つ目はAIベースの水中浄化ロボットだ。海や河川を自ら動き回って汚染物質を回収する製品で、革新製品に指定された後、サウジアラビアをはじめとする複数の国と輸出契約が進んでいるという。
試験購入と海外実証支援の仕組み
司会者は、他国の政府まで購入するのはよくあることなのかと尋ねる。カン次長は制度の流れを段階ごとに説明する。革新製品に指定されると、まず「試験購入」を一度行う。調達庁が製品を購入して必要な機関に提供し、機関が現場で実際に使ってみたうえで品質と現場での適用性を確認し、成否を判定する。
彼は、支援がそこで終わらないと強調する。海外は言語、法的要件、環境がすべて異なるため、企業単独で進出するのは難しい。調達庁は予算の範囲内で海外進出を支援し、その過程で海外でのレファレンスも積み上がっていく。カン次長は、気候のように韓国が抱える社会問題を他国も抱えている場合が多いため、国内で検証された解決策が海外でも通用し得ると見ている。彼の説明によれば、調達庁は800億ウォンほどを投じており、そのうち約200億ウォンを海外実証に充てている。
海外実証は二つの方式で行われる。一つは、企業が「インドネシアで実証してみたい」と申請し、現地の機関を探して進める方式だ。もう一つは、調達庁と協約を結んだ機関から推薦を受ける方式だ。発電公企業、韓国水資源公社、KOICAのような機関が革新製品のリストを見て、特定の製品を使ってみたいと推薦すれば実証につながる。司会者はこれを、企業が知らなかった機会や情報につないでもらいながら、事業も一緒に大きくなる仕組みだとまとめる。
小さな会社がグローバル企業になる姿を多く見てきたかという質問に、カン次長は、制度の施行から約7年が経った今が、ようやく定着して成果が出始める時期だと答える。
海外でも政府との協業が成長の足がかりとなった事例
司会者は、革新調達がなぜ重要なのかを示すため、海外の事例を二つ付け加える。一つはGoogle Earthだ。司会者は、このサービスが政府と共同で研究して作られ、世界的な製品になったと話す。もう一つは、最近Metaに加わったアレクサンダー・ワンだ。司会者によれば、彼は20代でScale AIを創業し、同社は米国防総省と仕事をしながら大きく成長して世界的なAI企業となり、30兆ウォンを超える金額でMetaに売却された。司会者はこれらの事例を根拠に、国家の革新調達が世界的に重要になりつつあると見ている。この部分はカン次長の発言ではなく、司会者が付け加えた説明だ。
「難しい、コネが必要だ」という誤解について
司会者は、公共調達は非常に難しいとか、コネがなければならないといった誤解が多いと指摘し、準備の方法を尋ねる。カン次長はまず、難しく感じられる理由から説明する。革新製品は公共で使われる物なので、革新性と公共性を備えているか、物品ごとの法的要件を満たしているかを、調達庁がすべて確認しなければならない。
彼は支援を受けられる窓口も案内する。調達庁が運営する革新市場に基本マニュアルがまとめられている。地方調達庁や、革新調達事業の委託を受けて運営している「革新製品支援センター」を通じて、電話や対面での相談も受けられる。
司会者は、初めて参入する過程は不慣れで難しいかもしれないが、自治体や韓国のような先進国の政府から信頼を得たという事実そのものが市場でのトラックレコードになるため、全国や世界へと広がっていく足がかりになるとまとめる。カン次長も、これが「最初のレファレンス」だという点に同意し、実際の現場で「これはいいね」という評価を得ることが重要だと話す。
彼が挙げた例は、トイレでの盗撮検知技術だ。トイレにはCCTVを設置できないため、この製品はセンサーで人の動作を認識する。盗撮をする際にとる特定の姿勢が検知されると、管理者に盗撮の疑いがあるという通知と画像を送り、人が直接確認に行けるようにする。カン次長は、この製品が複数の場所に設置され、いくつかの大きな被害を防いだり、犯罪を予防したりした事例があり得ると説明する。一か所で効果が確認されると他の場所でも導入が続き、レファレンスが積み上がり続けるというわけだ。
最初のレファレンスを作る方法と機関のためらいの解消
最初のレファレンスをどう積むのかという質問に、カン次長は、革新製品の場合は企業が希望する需要先を直接提案できると答える。たとえば「この製品は自治体で、あの製品は海洋研究所で使ってもらいたい」と伝えれば、調達庁が当該機関に対し、費用は調達庁が負担するので使ってみて問題ないか、改善すべき点は何かを評価してほしいと依頼する。そこで成功判定が出れば、レファレンスが生まれる。
それでも機関は、レファレンスがまったくない製品と契約することをためらう。一度使ってみただけでは信頼しにくいと言うこともある。こうした場合に備えて調達庁は、当該製品が随意契約の対象になり得ること、また正規の手続きで購入したのであれば購入に対する免責が適用されることを、公文書で機関に案内する制度も運営しているとカン次長は説明する。
事業アイデアは政府の業務計画から見つけられる
司会者は、事業家であれば、ニュースを見ていて解決策のアイデアが浮かんだときに自ら開発し、販路を切り開いてみる姿勢が、思いがけない機会につながるかもしれないと話す。カン次長は具体的な方法を付け加える。政府のサイトには各機関の年初の業務計画がすべて掲載されており、そこには機関が直面している社会問題と解決の方向性が書かれている。特に、解決策の前にどのような社会問題があるのかを記述した部分に注目するようにと言う。そこで自分が持つ技術や類似技術を応用できるポイントを見つければ、それ自体が事業計画になり得るというのだ。
「うちの製品は良いのに、なぜ使わないのか」という問いへの答え
カン次長は、「うちの製品は良いのに、なぜ公共機関は使わないのか」と尋ねる企業にときどき出会うと話す。彼の見方では、それほど高度な技術が本当に必要なのかを検討すべきだという。普及した技術でより安価に解決できる場合もあるからだ。技術水準よりも需要、つまりどの社会にどんな問題があり、何が必要なのかをまず見るべきだというのが彼の助言だ。
安全と品質は当然保証されなければならないと彼は強調する。たとえば、機関で使用中に問題が生じたのにすぐに対処されなければ困る。革新調達の過程ではこうした点まで検証されるため、企業はより一層気を配るべきだという。
司会者はこれを次のようにまとめる。革新調達には革新産業を育てる意図があるが、結局は使う人の役に立たなければならない。だからこそ、技術がどれほど優れているかよりも、なぜ必要なのか、安定的に供給できるのかをアピールするほうが、関係を築くうえではるかに有利だ。
国内の公共市場をまずテストベッドとして活用せよという助言
司会者は、韓国で事業をしてきて今は複数の国で事業を展開している立場から感じたことを付け加える。海外に出てみて、国内の公共調達市場をうまく活用することが非常に重要だと強く思うようになったという。どの国でも、なるべく自国企業の製品を優先して購入しようとする傾向があるため、公共需要がありそうなソリューションを作っても、国内市場を飛ばしていきなり海外の公共市場に参入するのは容易ではないというのだ。そのため、国内をテストベッドとしてまず実績を積み、それを足がかりに海外へ進出するという順序を検討してみるよう勧める。
調達庁が自ら語った役割
最後に、スタートアップや中小企業の代表たちに伝えたいことを尋ねられると、カン次長は、創業者たちが開発した技術が埋もれてしまわないよう、調達庁が懸命に取り組んでいると話す。優れた技術を開発したなら、調達庁を通じて革新製品に指定され、その後優秀調達物品へと格上げされ、海外市場に進出してグローバル企業になる過程で、調達庁が呼び水の役割を果たしたいという。今後、企業の成長支援にさらに積極的に取り組むとも述べる。
司会者が、企業を直接訪問して足で稼いでいるようだと言うと、カン次長は、書類だけで見るのには限界があり、現場に出て直接話してみなければわからない部分があると答える。そのため、できる限りそうした機会を多く持つようにしていると話す。司会者は、調達庁のホームページや対談で言及したさまざまなサイトを通じて情報を丁寧に集め、事業機会を作っていくよう勧めて対談を締めくくる。
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