インフレ下で「3000万円」は足りるのか ドローン、Z世代、日本株優位論から考える20年の資産形成

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概要

新R25の投資番組「どっちで増やしまショー」の山崎怜奈回の後編である。前半は2026年の注目テーマ、後半は山崎さんの「20年以内に3000万円」という目標に対する2つのプランを扱う。複眼経済塾の渡部清二さんは10年単位の普及サイクルとインフレを軸に、馬渕磨理子さんはニュースを手がかりにした積立と個別株の組み合わせを提案した。最終的に山崎さんが選んだのは、「金額で考えるな」という渡部さんのプランだった。

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注目銘柄は「1年」ではなく「10年」で考える

2026年の注目セクターや銘柄を問われた渡部さんは、1年単位ではなく10年単位で見るべきだと答えた。渡部さんによれば、新しいものは登場するとだいたい10年で普及する。例として挙げたのがカラーテレビで、1970年代に一気に広まり、新聞広告の時代からテレビ広告の時代へ移った。普及率が100%に近づくと、次の何かが現れる。直近では固定電話から移動電話へ移り、その後の10年で一気に広がったのがスマートフォンだという。

スマホはもう行き渡ったので、次の何かが出てくるはずで、それはすでに登場している、と渡部さんは言う。考え方のコツは、「10年後にはたぶん当たり前になっているが、今はまったく見かけないもの」を想像することだ。

ドローンは物流と下水管点検を変える

渡部さんがその答えとして「間違いない」と挙げたのはドローンである。今の戦争ではドローンが当たり前に使われているのに、街中で飛んでいるのは1機も見たことがない。この落差が、普及前の段階にあることを示しているという見方だ。

渡部さんはまず物流への影響を挙げた。荷物をドローンで各家のベランダへ直接届けるようになれば、インターホンを押して受け取る手間や再配達がなくなり、生活が変わる。こうした光景は10年後にはほぼ当たり前になっていると見ている。

ただし渡部さんは、それより大きな市場としてインフラ点検、特に下水管の点検を挙げた。下水管の中には人が入れず、GPSも届かないので、ドローンは自律飛行しなければならない。自律的に判断して飛ぶ以上、重要になるのは機体よりも搭載するソフトウェアだという。

この話の根拠として、渡部さんは八潮市の道路陥没事故を持ち出した。事故の報道後、国内の下水管約5000kmを更新するというニュースが出た。一方で、国内の下水管は全部で約50万kmある。5000kmはその1%にすぎず、更新需要はまだ大きく残っている。セメントやコンクリート製品の銘柄はその後ずっと上がっており、渡部さんは「たぶんそういうことだと思う」と見ている。強調したのは、どれも誰でも目にする普通のニュースだという点だ。大きな流れをつかめば、それはしばらく続くテーマになるという。

投資で唯一の「絶対」は人が年を取ること

もう1つの視点として、渡部さんはZ世代の山崎さんに向けて世代の話をした。投資の世界に「絶対」はないが、唯一の例外は「1年経てば人は1歳年を取る」ことだという。10年後にはZ世代が社会の中心になる。だから、自分たちが良いと思うもの、こうなるだろうと思うものを想像し、それに関わる会社に投資するのが一番正しい。世の中を作るのは自分たち自身だからだ。

「Z世代の消費が一番大きい」というニュースは市場でいくらでも流れている。必要なのは、その当事者が自分だと気づくことだけだ、と渡部さんは言う。

アナログ回帰と「残存者利益」

山崎さんの世代が好むものの例として、渡部さんはアナログのチェキを挙げた。渡部さんから見れば古くてレトロでも、見たことのない人には新しいものに映る。一方で作れる会社が少なく、チェキなら富士フイルムしか作っていない。ここに「残存者利益」が生まれるという。レコードの生産も、ここ20年ほどで30倍に増えたと渡部さんは述べた。カセットテープも同様の流れにある。

関連して渡部さんは、会社四季報の前号で1件だけ言及があった「磁気テープの2025年問題」も紹介した。磁気テープの記録が、登場から時間が経ったことで去年あたりから物理的に消えつつある。ところが古い記録をデジタル化する機会がないため、代わりにデジタル化を請け負う会社が出てきているという。

ほかにも、ラジカセのブランドを持つ上場企業としてテクミラホールディングスを挙げた。同社はレコードのターンテーブルも作っており、作っているのがそこしかないので、これも残存者利益の例だという。渡部さんは、最先端技術ではなくアナログが強みになる場合もあると述べた。山崎さんは、60代前半の父親の世代が携帯音楽プレーヤーのブランド選びで迷っていたことに触れ、そうしたものが巡り巡って戻ってきているのが面白いと応じた。

山崎怜奈さんの目標「20年以内に3000万円」

後半は山崎さんの目標から始まった。20年以内に3000万円を作り、子どもを育てることになったときの生活費や教育費にしたいという。本人は28歳で、結婚や出産の予定はまったくないと断ったうえで、周りで子育てを始める人が増えていると話した。今の物価高の中で東京で子どもを育てるといくら必要なのか分からず、自分で計算すると、高校生くらいまで育てるのに最低でも3000万円はかかった。今後さらに増えるかもしれない。使い道は子育てに限らず、自分の老後資金や入院などもまとめて考えているという。

共演者から「お金持ちと結婚しそう」と冗談が出ると、山崎さんは、相手にある程度の経済力は求めても、自分も社会で自分の足で立っていたいと答えた。パートナーがいなくなる事態が起きても、子どもと自分を支えられる資金を持っていたい。大学時代の友人からも、人生の転機がいつ来るか分からないので聞いてきてほしいと頼まれたという。

2児(中3と小6)の親であるザブングル加藤さんは、結論として「私立に行かなければそんなにかからない」と話した。公立なら無料で、給食も医療も無料、児童手当も出る。必要なのは大学の費用くらいだという。ただしフィギュアスケートのようにお金のかかる習い事は別で、加藤さんはサッカー程度なら大した額ではないと述べた。山崎さんは、本気でプロを目指せばクラブチームに入る必要が出るし、私立に進むこともあるので、選択肢を広げるためにお金はあった方がいいと返した。山崎さん自身、地元の公立小学校になじめず、親に頼んで中高一貫校を受験し、中学3年間は特待生の奨学金で通ったという経験がある。将来海外に住む選択肢のために取り崩す可能性も挙げた。

子育て世帯を「贅沢できていいな」と批判する声をSNSで見かけることにも触れ、そう言われても気にせずにいられるお金をどう貯めればいいのか分からないので教えてほしい、というのが今回の相談の趣旨だった。

現在のポートフォリオ

山崎さんのポートフォリオはほぼ投資信託だった。テスタさんは、新NISAが始まって投資信託の需要が大きく伸び、初めて株を始める人の資金がまずオルカンやS&P500に向かったと説明した。テスタさんが株を始めた頃は、個別株が9割という時代で、米国株をやっている人もいなかったので、今っぽい構成だという。

個別銘柄は誰もが知る大企業が中心で、急騰はしないものの緩やかに上がって安定しているものが多い。米国株も同じ傾向で、投資信託は全世界型と米国型を持っている。不動産とゴールドはやっておらず、特にゴールドは「やっておけばよかった」と話し、テスタさんは「それはみんな思っている」と応じた。

馬渕磨理子さんの「ニュースストラテジー」プラン

馬渕さんはまず必要な積立額を示した。オルカンの年平均リターンを約7%とすると、月5万7000円の積立を20年続ければ3000万円に届く。リスクの低い3%程度の運用を選ぶ場合は、月9万1000円ほど必要になる。リスクを取って月額を抑えるか、リスクを減らして月額を増やすかの選択だ。馬渕さんは、今のペースで積み立てていけば、オルカンやS&P500で十分に実現可能だと見立てた。

ただし、ニュースに合わせて動く戦略に切り替えるなら注意点がある。トランプ大統領の誕生や関税の問題で、アメリカやドルは大丈夫なのかという懸念がある。そこが揺らぐとオルカンやS&P500の戦略が崩れるので、アメリカが覇権を握り続けられるかをニュースで見続けてほしいという。全世界型にも米国株が多く含まれ、ドル建ての比重が大きいからだ。一方で、今後50年を考えれば緩やかに上がるだろうという見方も示した。人口が増え、中国が追い上げているとはいえGDPで世界一の国だからだ。

山崎さんが少しだけ持っているインドについて聞くと、馬渕さんも保有していると答えた。2025年はパフォーマンスが悪かったが、急成長中なので長期で持ち続け、増額も考えているという。中国も持っていたが利益確定した。アメリカ以外の地域も持ちたいので、アフリカなどをパッケージでまとめて買うより、国ごとに見ていく方がいいと考えている。日本で買えるETFにはサウジアラビアのような商品も出てきている。インド関連の投資信託は信託報酬が高めで、投資先として一般的でない地域ほど手数料が高く、オルカンは人気もあって安いという話も出た。

そのうえで馬渕さんは、積立をベースにしながら、前編で示した上半期のセクター資料を使った攻めの投資を少し加えることを勧めた。たとえば選挙で消費減税が注目されるなら、日頃行くスーパーマーケットの銘柄を調べる。猫を飼っているならキャットフードなど猫関連の上場企業を見る。自分の生活に関わる企業をニュースと結びつけて一部組み入れ、基本は積立額を増やしていく。そうすれば目標は十分達成できるし、ニュースの解説力も上がる、というのが馬渕さんのプランである。

渡部清二さんの「金額で考えるな」プラン

渡部さんも、月々の積立自体は難しくないと認めた。そのうえで、「今いくら必要か」という切り口で計算を示した。現在の10年国債金利2.185%をリスクフリーレートとし、最も安全な運用で複利を20年回して3000万円にするには、今1947万円が必要になる。

ただし、この計算には大きな落とし穴がある。インフレだ。渡部さんは会社四季報の価格を例に挙げた。2022年に2300円だった四季報は4年連続で値上がりし、2026年には2900円になった。上昇率は年5.9%。2022年当時の金利は0.07%だった。もし2300円を2.185%で運用していても、2026年には2508円にしかならず、四季報が買えない。安全な運用だけではインフレに負けるということだ。

渡部さんがインフレを大きなテーマと捉えたのは4年前だという。そのとき、会社四季報の全コメントの中で初めて「インフレ」という言葉が1件だけ出た。それまではインフレもデフレも出ておらず、最後に「デフレ」が出たのは2020年6月だった。渡部さんはそこでインフレという流れを伝え始め、翌年から四季報の値上げが始まったと語った。

山崎さんが生きてきたこの30年はデフレの時代で、今の3000万円が将来も同じ価値を持つという感覚になりやすい。しかしインフレに入った以上、将来のお金の価値は下がる。今と同じ感覚の3000万円を持つには、もっと大きな額が必要になる。渡部さんの試算では、年1%のインフレなら3661万円、3%なら5418万円、5%なら7160万円が必要になる。四季報だけでもここ4年で年5.9%上がっていることを渡部さんは改めて指摘した。山崎さんも、事前の打ち合わせで20年後の3000万円が今と同じ価値のはずがないと感じており、今回は最低ラインとして3000万円を設定したと明かした。

日経平均とNYダウ、冷戦・インフレ期には日本が優位だったという見立て

インフレに勝てるのは株式しかない、と渡部さんは続けた。示したのは、日本の株式市場が戦後に再開した1949年5月を1とした日経平均とNYダウの長期チャートである。現在、日経平均は306倍、NYダウは291倍で、年率複利に換算すると日経平均7.8%、NYダウ7.7%になるという。

チャートの前半は日本が先行し、圧倒的に強かった。渡部さんによれば、ピークの1989年までは冷戦期であり、インフレの時代だった。1989年にベルリンの壁が崩壊して冷戦が終わり、同じ頃に日本はデフレに入った。そこから日経平均は徐々に劣勢となり、NYダウが勝つ流れが続いた。

ところが足元ではインフレに転換し、チャートの右端でわずかに日経平均が勝ち始めている。渡部さんはこれを転換のサインと見る。インフレに転じ、世界が動乱期に入ったとなれば、再び日本優位の展開になる。そのうえで、日経平均とNYダウのどちらを選ぶかは「ご自身で判断ください」と投げかけた。

山崎さんは、このグラフは中高の世界史の授業で使うべきだと言い、歴史を自分ごととして考えられるからだと理由を述べた。出演者からは、2014年にも一時的に日経が上回った時期があったと指摘が出た。渡部さんは、当時はデフレで冷戦も終わり、金融緩和の局面だったと説明した。今はそれがまるで変わり、チャート左側の時代に近い状況になっているという。歴史は繰り返すという話も出たが、渡部さんは「絶対ではない」と念を押した。ただ、どちらの指数も1から大きく上がっている以上、お金を守るには株式への投資が正しいことは間違いない、とまとめた。山崎さんが、アメリカのベネズエラ侵攻、ロシアのウクライナ侵攻、起こりうる中国の台湾侵攻など世界情勢の緊張に触れると、渡部さんは、冷戦期には日本だけがどんどん上がっていったと応じた。

山崎さんの選択

最後に山崎さんが選んだのは渡部さんのプランだった。28歳の今から順調に積み立てれば、馬渕さんの言うとおり額面は貯まるだろう。しかしお金の価値そのものが変わるので、数字だけで考えない方がいい。この指摘が大きな学びになったと山崎さんは話した。

テスタさんは、レベルの高い話ができたのでまた来てほしいと締めくくった。20年後に必要な額が3661万円なのか7160万円なのかはインフレ率次第であり、日本株優位への転換が本当に続くのかについても、渡部さん自身が「絶対ではない」と断っている。この2点は、判断材料として視聴者に委ねられたまま番組は終わった。