霧島の発酵文化を巡る――種麹の歴史から黒酢の熟成、地域創生レストランまで

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概要

鹿児島県霧島市は、豊かな自然や霧島神宮だけでなく、日本の発酵産業を根底で支えてきた土地でもある。お酒造りに欠かせない「種麹」の約8割が霧島で作られているといわれるなど、古くから発酵の源流とも呼べる環境が培われてきた。

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今回の旅は、株式会社KINSの代表である下川穣氏が、霧島神宮周辺の街起こしに関わったことを契機に企画された。霧島の持つ土地の力と発酵文化の奥深さを伝えるべく、健康管理やサプリメント、食品に関わる事業家・専門家らを招き、1泊2日の行程で現地の黒酢蔵や地域再生の拠点を巡る視察ツアーが行われた。

霧島という土地と発酵の関わり

ツアーの出発にあたり、下川氏は霧島を訪れた理由として、霧島神宮を中心とした地域の魅力と、この地に根付く発酵文化の重要性を挙げた。清酒や焼酎の製造に用いられる種麹の多くがこの地域で生産されている事実に触れ、自身の活動の観点からも非常に重要な場所であると位置づける。

ツアーには下川氏が展開するサービスの利用者や、長年サプリメント開発に携わってきた専門家、飲食店経営者などが参加した。参加者の一人で沖縄にて飲食店を展開する女性は、自身の健康管理習慣について触れ、日々の栄養摂取や検査を通じた体調管理の実情を語るなど、健康や食に関心を持つ多様なメンバーが集まる機会となった。

黒酢の郷で体験する伝統製法とクラフトビール

一行が最初に訪れたのは黒酢の生産拠点である。屋外に無数の壺が並ぶ「壺畑」を有する施設で、昼食とともに黒酢の製造技術を活かした食文化に触れた。

ここでは、自社農園の有機野菜を使用したサラダや、黒酢を用いたタルタルソース、3年熟成の有機玄米黒酢を使った黒豚料理などが提供された。さらに、黒酢そのものを混ぜるのではなく、黒酢造りに用いられる独自の伝統的な発酵技術を応用して醸造されたクラフトビール(ベルジャンホワイトなど)も紹介された。下川氏は、アルコール摂取が腸内環境に与える影響を日頃から説きつつも、発酵技術の多様な展開としての味わいを評価した。

ツアーに同行した株式会社メディスム代表の藤井氏は、医療専売サプリメントの開発や品質管理を長年手がけてきた人物である。藤井氏は2000年代半ばの状況を振り返り、当時は常在菌や腸内環境への着目が医療・健康分野でほとんど一般化していなかったと回想した。下川氏は、そうした先駆者たちの長年の啓発と試行錯誤があったからこそ、現在の菌ケアや発酵への理解が広がっていると敬意を示した。

霧島神宮駅のリニューアルと黒酢の成分的価値

一行は続いて、近年リニューアルが行われた霧島神宮駅周辺へ向かった。同駅は地元企業とJR九州が連携し、地域の職人が手がけた工芸品や特産品を揃えた空間として整備されている。下川氏は駅の売店で手に入る非加熱の濁り天然蜂蜜などを紹介し、地域の独自産品が持つ質の高さを説明した。

駅周辺での散策中、黒酢が健康面で着目される科学的背景についても議論が交わされた。藤井氏は、一般的な穀物酢や熟成期間の短い酢と比較した黒酢の特徴として、GABAやアミノ酸の豊富さを挙げた。長期熟成によってアミノ酸の種類や含有量が変化し、リラックス効果などが期待される点について、専門的な見地から解説が加えられた。

その後訪れた黒酢の壺畑では、1年ものと3年ものの原液の違いを視察した。年数を経るごとに色合いの深みや香りの濃厚さが増し、後味の広がりが変化することを確認した下川氏らは、論文などのデータとして知るだけでなく、現地の環境と時間によってのみ生み出される伝統製法の価値を再認識したと述べた。

発酵イタリアン「meguri」での夕食と地域創生

夜の懇親会は、霧島神宮駅の近くに店を構えるレストラン「meguri」で開催された。同店は下川氏がアドバイザーを務めており、シェフ自身も下川氏の健康・発酵に関する発信を通じて学びを深めてきた経緯がある。

提供されたのは、鹿児島の地元食材と発酵技術を融合させたイタリア料理のコースである。食事の前には高麗人参を発酵させたエキスが参加者に配られ、それぞれの料理と厳選されたドリンクとのペアリングが振る舞われた。食材の持つ風味と発酵調味料の組み合わせによって、口に運ぶたびに味わいが変化する構成について、参加した食の専門家や企業家たちからも高い評価が寄せられた。

懇親の席には、霧島神宮駅周辺の建築や地方創生を手がけるリーダーも同席し、地域の景観づくりや活性化の取り組みについて参加者と意見を交わした。

1日目を終えての所感と今後の展望

ツアーの初日を終え、下川氏は今回の取り組みについて振り返った。自身がプロデュースに関わる旅行企画は初の試みであり、当初は運営上の不安もあったという。しかし、霧島という土地が持つ豊かな自然と歴史的な発酵文化、そして現地で地域創生を進める人々の熱意が明確なコンセプトとなったことで、意欲的な参加者同士が深く交流できる場になったと総括した。

霧島神宮への正式な参拝やさらなる地域文化の視察は2日目に予定されており、下川氏は霧島が秘めるポテンシャルを今後も多角的に発信していきたいという意向を示して1日目を締めくくった。