基板上の金属シールドは実際どれほどノイズを遮るのか:降圧コンバーターでの検証

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概要

電源回路や高周波回路のプリント基板には、部品を覆う金属のケースが載っていることがある。話者によれば、これはケース内の部品を外部ノイズによる誤動作から守り、逆にケース内で発生した電磁ノイズを外に出さないための「金属シールド」である。では実際にどの程度効果があるのか。この動画では、降圧コンバーターを自作し、近傍界プローブとアンテナを使ってシールドの有無を比べている。

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検証用の回路:あえて磁束が漏れるインダクタを選ぶ

検証に使ったのは降圧コンバーターで、入力平滑用キャパシタ、MOSFETのスイッチ、出力インダクタ、出力キャパシタで構成される。電源ICにはテキサス・インスツルメンツのTPS62841を使っている。

ノイズにもいろいろな種類があるが、今回は放射ノイズ、特に磁束によるノイズがどれだけ減るかに絞っている。結果を分かりやすくするため、インダクタには磁路が完全に閉じていないタイプを選んだ。磁路が閉じていないと、電流が流れたときにコアから磁束がよく漏れ出る。そのぶんシールドを載せたときの減り方が見えやすくなるだろう、というのが話者の予想である。

シールドはスズメッキされた鉄製で、厚さは0.3mm。シールドの電位はグラウンドに落としている。

近傍界プローブとFFT表示の見方

最初に使ったのはループ型の近傍界プローブで、部品のすぐ近くで漏れているノイズを見る道具だ。ループの大きいものと小さいものの両方を試している。プローブを回路の上で動かすだけで、どこからどの程度の強さのノイズが出ているかが分かる。

プローブの信号はオシロスコープのFFTモードで表示している。横軸はノイズの周波数で、1MHzから500MHzの範囲を見ている。縦軸はノイズの強度で、スペクトルが上に伸びているほど強い。使用した電源ICのスイッチング周波数はおおむね1〜2MHzで、そこに最も強いスペクトルが立ち、その整数倍の高調波が等間隔に並んで現れていた。

ただし、ループの大きいプローブは面積が大きすぎて、回路のどこから出ているかははっきりしない。話者は、回路全体から出る磁束を拾っている状態だと説明する。そこでループ面積の小さいプローブに切り替え、局所的な磁束を見た。シールドなしの回路を走査すると、想定どおりインダクタの真上が最も強かった。話者はこれを、インダクタの磁路が閉じていないために漏れた磁束がプローブに鎖交しているためだと説明している。

シールドを載せると上面のノイズは大きく減った

同じ手順をシールド付きの回路で行うと、信号強度は大幅に下がった。シールドなしとありのスペクトルを並べると、高周波から低周波まで全体的にかなり減っている。

一方で、磁束が完全にゼロになったわけではなく、ところどころ成分が残っていた。話者は原因の候補として、プリント基板とシールドの間にわずかな隙間があってそこから漏れている可能性や、単純に磁束がシールドを通り抜けている可能性を挙げている。

また話者は注意点として、外に出ていくノイズ(今回は磁束)が減っただけで、発生源が出しているノイズの総量が減ったわけではないと強調している。

基板の裏側からはノイズが普通に出ていた

シールドは基板の上側にしか付けていないため、話者は追加実験として裏側からもプローブを当てた。シールドなしの回路では、裏側でもインダクタ付近が強かった。

シールドありの回路の裏側を見ると、上側とはかなり違う結果になった。ノイズは普通に出ており、シールドなしとほぼ同じレベルだった。裏面はベタグラウンドにしてあるものの、シールドで覆っていない部分からはノイズが抜けてくる。

この結果から話者は、ノイズを外に出さないためには完全にシールドで覆う必要があるのではないかと考えている。逆に、外からのノイズを防ぐ観点では、上側から入ってくるなら上側に、裏側からしか入らない状況なら裏側にシールドを置けばよさそうだとし、両面に付ければかなり効きそうだという感触を述べている。

シールド周辺で磁束はどう振る舞うか

続いて話者は、シールドの周りや中で磁束がどうなっているかを考察している。シールドがない場合、インダクタから出た磁束はそのまま外へ抜け、プローブで検出できていた。

今回のシールドは強磁性体である鉄なので、インダクタからの磁束はシールドを突き抜けずに鉄の中を通り、ぐるっと一周するように流れるイメージになる、と話者は説明する。ただしすべての磁束が鉄の中を通るわけではなく、一部は漏れる。シールドありでもプローブが磁束を拾っていたのは、おそらくこの成分だろうと話者は推測している。

さらに、磁束の発生源はインダクタだけではない。電流が流れている配線の周りにも磁束はできる。実際、シールドの真上でもシールドから外れた回路上でも磁束が検出されていた。これがシールドから漏れた磁束なのか、パターンを流れる電流による磁束なのか、どこの磁束をどれだけ拾っているのかは今回は検証していないと、話者は明言している。

また、変化する磁束が金属を貫こうとすると、レンツの法則によってそれを打ち消す向きの渦電流が金属表面に流れる。話者はこれをIHクッキングヒーターと同じ原理だと説明し、シールドがインダクタの磁束でわずかに発熱して電力損失につながっているかもしれないと述べる。素材が鉄なのでヒステリシスが効いている可能性にも触れている。

電力変換効率への影響はほぼ見えなかった

渦電流による損失の可能性を受けて、シールドの有無で電力変換効率が変わるかも測定した。同じプリント基板に同じ部品を載せ、シールドなしのものとシールドをはんだ付けしたものを比べている。

横軸を出力電力、縦軸を変換効率としたグラフでは、シールドの有無で効率はほとんど変わらなかった。話者は、わずかに違っている可能性はあるものの、今回の計測器ではその差を読み取れなかったと言うほうが正確かもしれない、と留保している。

アンテナによる回路全体の放射ノイズ測定

最後に、近傍界ではなく回路全体が出すノイズを見るため、対数周期(ログペリ)アンテナを使った。電波暗室は用意できず、なるべく電波の少ない場所に移動して測定している。回路からアンテナまでの距離は約80cmで、これを遠方界と呼んでよいかは分からないと話者は断っている。

回路を何も接続していない状態をバックグラウンドノイズとし、シールドなし、シールドありの回路を順に接続して比べた。接続するとスペクトルの一部で振幅が変わり、シールドありの回路では500MHz付近が盛り上がる様子も見られた。しかし全体としてはバックグラウンドノイズとほとんど変わらなかった。

話者はその理由として、専用のスペクトラムアナライザではなくオシロスコープのスペアナ(FFT)機能を使っているため感度が足りないのだろうと推測している。それでもシールドの有無でスペクトル成分には違いがあり、回路に何かが付いていることで差が出ているのかもしれないと述べる。近いところでは磁束が支配的だが、離れると電磁波として振る舞うようになる、という位置づけも示している。結論としては、オシロスコープのFFT機能で測るのは難しく、ちゃんとした設備と専用のスペアナでやり直したいとしている。

結論:近傍では効いたが、遠方での効果は確認できず

話者のまとめによれば、今回のセットアップでは、回路の近くのノイズは金属シールドでかなり遮蔽できていた。ただし完全ではなく、基板とシールドの隙間、基板の裏側、シールド自体を抜けてくる成分も見えていた。

近傍界について話者は、外に出るノイズを減らす効果もあったかもしれないが、どちらかといえば外部からシールド内に入ってくるノイズを減らす効果として見たほうがよいかもしれない、と述べている。ログペリアンテナによる測定ではシールドの効果はよく確認できず、話者はその理由を、部品単位ではなく回路全体から放射されるノイズを見ていたためだと考えている。回路全体を金属の缶で覆えばまた違う結果になりそうだという見通しを示しつつ、短時間の実験ながらノイズ対策はかなり難しいと感じた、と締めくくっている。