Arduino Nano R4レビュー:旧Nanoとの違いと、FFTデモで見る性能差

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概要

電子工作系YouTubeチャンネル「イチケン」の話者は、2025年7月に目立たず発売されていたArduino Nano R4を購入してレビューしている。検証の軸は、従来のArduino Nano(R3世代)と比べて何が変わったのか、今から買うならどちらを選ぶべきかである。話者は、Nano R4はほぼNanoの上位互換だと評価する。一方で、I/Oピンの電流の低下や、安価で高性能な他のマイコンボードとの競合といった注意点も挙げている。

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ひっそり発売されていたNano R4

話者はまず発売までの経緯を時系列で整理している。2023年6月にArduino Uno R4 Minimaが発売され、その直後にUno R4 WiFiが出た。R4世代ではマイコンがルネサス製に変わって性能が大きく上がり、発売当時はかなり話題になった。ただし当時出ていたのはUnoのフォームファクターだけで、Nano版はなかった。そのため、R4世代のボードをブレッドボードに直接挿して使うことはできなかった。

それから約2年後の2025年7月に、Arduino Nano R4が発売された。話者自身も発売に最近まで気づいておらず、たまたま知って購入したという。性能やできることはUno R4 Minimaとほぼ同じなので、R4世代を小型のボードで使いたかったユーザーには朗報だろう、というのが話者の見方である。

ハード設計の変更点:USB-Cと裏面に部品のない基板

外形は従来のNanoのフォームファクターをそのまま引き継いでいる。比較に使った従来Nanoは600円程度で買える互換機で、純正品はかなり高いと話者は補足している。

目に見える変更の一つ目はUSBコネクタである。どちらもPCにUSBでつなげば書き込めるが、従来のNanoはMini-B、Nano R4はUSB-Cになった。話者は、そもそもMini-Bのケーブルを持っていないことが多いので、USB-Cへの変更はうれしいと述べている。

二つ目はピンヘッダーと部品の実装方式である。従来のNanoは通常のスルーホール仕様で、裏面にも部品が載っている。Nano R4は話者の言う「単面スルーホール」の仕様で、裏面には部品が一切ない。そのため、ボードごと別のプリント基板に表面実装できる。話者は、自作キーボードでRaspberry Pi Picoシリーズのボードをキーボード基板にそのまま表面実装する例を挙げ、同じことがNano R4でもできると説明する。Nano R4を使って大量生産することはあまりないだろうとしつつも、小ロットの量産やマザーボードへの直接実装ができる点を良い変更として評価している。

搭載マイコン:ATmega328PからRA4M1へ

従来のNanoは、8ビットマイコンのATmega328Pを搭載している。動作周波数は16MHz、フラッシュは32kB、RAMは2kBである。話者は、Arduinoを使ってきた人の多くがこのRAMの少なさに苦しんだはずだと言う。特に大きなライブラリや配列バッファを扱うとRAMが足りなくなり、なんとか使用量を削ろうとして苦労した経験があるという。

Nano R4は、Uno R4と同じくルネサスのRA4M1(Arm Cortex系の32ビットマイコン)を搭載する。話者は、マイコン単体の性能が桁違いに上がったと評価している。浮動小数点演算ユニット(FPU)とDSPを内蔵しているので計算が速い。メモリはフラッシュ256kB、RAM 32kBで、計算時間やRAM容量を気にしながらプログラムを書く必要がなくなった。Nanoという非常に小さいボードにそこそこ高性能なマイコンが入っているので、組み込み用途ではかなり心強い、というのが話者の感想である。

話者はレビューの主題から外しているが、従来Nanoとの違いとして次の機能も挙げている。

  • オペアンプの内蔵
  • DAコンバータによるアナログ出力
  • CAN通信

価格と互換機の事情

価格は逆転している。秋月電子での価格は、本家のNanoが4,200円、Nano R4が2,860円で、話者は新しい機種のほうがなぜか安いと指摘する。一方、Nanoの互換品はAmazonで1個600円ほどで売られていることが多い。そのため、このコスト感と性能差を比べてどちらを選ぶかになる、と話者は言う。

R4シリーズの互換機について、話者の説明はこうである。Minimaの互換機は存在するものの、Uno R3の時代ほど多くない。Nano R4の互換機はほぼ存在しない。この理由について話者は、詳しくは分からない推測だと断ったうえで、ルネサスが素性の分からない業者にはマイコン自体を卸していないのではないか、という印象を語っている。

使い分けと、上位互換ではない点

話者は、全体としてNano R4はNanoの上位互換なので、今からNanoを買うならNano R4を選んだほうがよいだろうと言う。そのうえで、用途による使い分けの目安を次のように示している。

  • 従来のNanoで十分な場合:ディスプレイを使わない、プログラム中のAD変換の回数が少ない、計算量もそれほど多くない。
  • Nano R4が向く場合:RAMを多く使うディスプレイを接続する、AD変換を何度も行う、計算量が多い。

ただし、すべてが上位互換というわけではない。話者が唯一の注意点として挙げるのは、I/Oピンの電流である。従来のNanoは20mAだったが、Nano R4は8mAになった。リレーやLEDをピンに直結する場合は電流が足りなくなる可能性がある。その場合は外部のバッファ回路やドライバーが必要になる場面もあるだろう、と話者は述べている。

デモ:FFTを実行してディスプレイに表示する

性能差を示すため、話者はFFT(高速フーリエ変換)のデモを用意した。AD変換の速さ、RAM容量、計算速度の違いがはっきり出るテストだという。画面の上側がNano、下側がNano R4で、同じ信号源の出力を両方のボードに入れている。各ボードは信号をAD変換し、内部でFFTを計算して、結果をOLEDディスプレイにバーで表示する。

信号を入れて周波数を変えると、どちらもFFT自体は動作していた。しかし話者によると、内部の計算量は両者で大きく違う。プログラムはほぼ同じだが、ボードに合わせてFFTのサンプル数を変えている。Nanoは32サンプル、Nano R4は256サンプルである。

サンプル数を分けたRAM容量の差

Nanoのサンプル数が少ない主な理由は、RAMの少なさとサンプリングの遅さだと話者は説明する。2kBのRAMに32サンプルを超えるデータを載せるのは難しい。サンプル数を増やすとRAMがあふれて、そもそも動かなくなる。

コンパイル結果の表示では、32サンプルの設定で、最大2048バイトのRAMのうちグローバル変数が639バイトを使い、残りは1409バイトとなっている。数字だけ見ると余裕がありそうだが、OLEDのフレームバッファが1kB近くを使うので、実際にはかなりぎりぎりだと話者は言う。実際にサンプル数を64に増やすと、コンパイルも書き込みも通るが、電源を入れてもマイコンは動作しなかった。

一方、Nano R4は256サンプルと、Nanoの8倍に設定しているが、それでもRAMにはまだかなり余裕がある。このサンプル数の差は、FFTの結果にもそのまま表れる。Nanoは32サンプルなので周波数分解能が粗く、表示できるバーの数も少ない。R4は256サンプルなので分解能が高い。入力信号の周波数を変えながら比べると、表示の細かさに大きな差があることが画面上で確認できる。話者は、RAM容量の違いで作れるプログラムの規模がこれほど変わることを思い知らされる、とまとめている。

サンプリング周波数とアナログリードの限界

もう一つの差は、計算速度とAD変換の速度である。話者によると、NanoはAD変換が遅く、内部の計算もそれほど速くないため、サンプリング周波数は8kHzが限界である。したがって、FFTで扱える信号の上限は4kHzになる。Nano R4は計算とサンプリングがかなり速く、サンプリング周波数は20kHz程度まで上げられた。話者はこれを、可聴域の20kHzまで問題なくFFTできると表現し、性能はおよそ5倍良いと述べている。

ただし、このデモのAD変換はArduino IDEで使えるアナログリード(analogRead)を使っており、話者によればこの関数はかなり遅い。R4のマイコンをルネサスのマイコンとして扱い、レジスタを直接操作するコードにすれば、サンプリング周波数を100kHz程度まで上げられるという。話者はこの点も含めて、両ボードのマイコン性能の差を強調している。

結論:Nanoの形を選ぶ理由があるか

話者の結論はこうである。Nano R4はR3世代のNanoより性能が大幅に上がっている。Nanoのフォームファクターを使いたいのに、性能不足で他のマイコンを選ぶしかなかった人にとっては「救世主的な存在」になるだろう。

一方で話者は、Raspberry Pi Pico 2やSeeed StudioのXIAOなど、安くて高性能なマイコンボードがすでに多数出ていることも指摘する。その中であえてNanoシリーズを選ぶのか、それとも他のマイコンに置き換えてコストダウンと性能向上を両立できるのかは、よく考えてから選んだほうがよさそうだ、と話者は述べてレビューを締めくくっている。