UGREEN 500W USB充電器を分解する:重さの約47%は放熱材料だった

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概要

一般的なUSB充電器は60Wや100Wが主流だ。その中でUGREENは、全ポート合計500W、単ポートで240Wを出せる充電器を発売した。電子工作系YouTuberのイチケンは、この製品の効率、発熱、サーマルスロットリングを実測したうえで分解した。分解の結果、本体重量の約半分が熱伝導用のポッティング材とシートだったことがわかった。イチケンは、それだけの材料を使っても大容量の密閉型電源から熱を逃がすのは難しい、と結論づけている。

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外観と「常時240W」という仕様

イチケンがまず挙げた印象は、とにかく大きいということだ。通常のUSB充電器と並べると、サイズの差ははっきりしている。本体重量は1,595g、外付けのケーブルを含めると1,854gになる。イチケンはこの重さから、持ち運ぶための製品ではなく、会議室や自分の机に常時置いて使う想定だろうと見ている。UGREENは以前に300WのUSB充電器を出しており、今回の500W版はその上位モデルという位置づけだとイチケンは考えている。

この製品の最大の特徴は二つある。全ポート合計で500Wを給電できること、そして一番上のポート(C1)が他のポートの使用状況に関係なく常時240Wを出力できることだ。USB PDトリガーを挿すと、USB PDのExtended Power Range(EPR)の48Vまで出力できることを確認できた。市販の充電器で28V・5Aの140Wを出せるものは多いが、36Vや48Vを出せるものはほとんどない。単ポート240Wでありながらマルチポート充電器でもあるという仕様を、イチケンは「かなり挑戦的」と評している。

一方で、現状では240Wで給電を受けられるデバイスがほとんどない。イチケンは「宝の持ち腐れ感が強い」と述べ、将来対応デバイスが出てくるのを待つ状況だとしている。

マルチポート時の電力配分

付属の説明書によると、USB-CのC2〜C5はそれぞれ最大100Wを出力する。ただし100Wを出せるのは、4ポートのうち2ポートを同時に使っている場合までだ。3ポートを同時に使うと100W・100W・60W、または100W・60W・60Wになる。4ポートすべてを使うと、全ポートが60Wまで下がる。常時100Wで給電できるのは、C1と、C2〜C5のうち二つを合わせた3ポートだけだ。そのためイチケンは、60Wを超える電力を使うノートパソコンなどを充電するときは注意が必要だと指摘している。一番下のUSB-Aは最大20Wだ。

使用感は一般的な充電器と変わらず、特筆する点はないという。ただ、空いているポートに新しく機器を接続しても、すでに接続中のポートの給電が止まることはなかった。イチケンは、常時給電が必要な機器にも安心して使えるだろうと評価している。

45W充電器・300W版とのスペック比較

イチケンは、一般的な45WのUSB充電器(Anker製の単ポート製品)とスペックを比較した。定格電力は11倍なのに対し、体積は28倍、表面積は10倍、質量は27倍だった。電力の伸び以上に体積と質量が大きくなっている。イチケンはその理由として、Anker製品が単ポートなのに対してUGREEN製品はマルチポートであることを挙げる。そのため回路方式や冷却構造が異なり、製品自体の重さを支える部材も多く必要になる、という説明だ。

性能指標で見ると、体積あたりの電力はUGREENが0.45W/cm³だった。最近の単ポート充電器には1W/cm³を超えるものが多いので、それほど高い数値ではない。もう一つの指標が、事前に測定した電力損失を表面積で割った「表面積あたりの電力損失」だ。USB充電器はほとんどの場合、空気の自然対流で放熱する。そのため表面積が広いほど冷やしやすく、この数値は小さいほど放熱に余裕があることを示す。イチケンはこの数値から、放熱には余裕がありそうだと見立て、後で実験で確かめることにした。

下位モデルの300W版と比べると、500W版は体積あたりの電力が低く、放熱指標も小さい。数値の上では、下位モデルより余裕のある設計になっているように見える。

電力変換効率:48V出力で94.2%

次に、コンセントの交流電力をUSB充電用の直流電力に変換する効率を測定した。効率が高いほど本体での電力損失が小さく、発熱も少なくなる。

240Wの単ポート測定では、全体的に効率がかなり高かった。低出力域では他の充電器と同じく効率が下がる。出力70W以下では内部回路が間欠動作になるため、効率の測定は難しかったという。グラフを5V〜20Vの範囲とそれより高い電圧の範囲に分けて見ると、20Vまでの最高効率は93.4%だった。イチケンによれば、100W以下のUSB充電器では92%程度でもかなり優秀な部類に入るので、これは高い値だ。28V以上の範囲では効率がさらに上がり、48V出力時に94.2%に達した。イチケンはこの理由を、定格500Wの電源を定格の半分くらいのちょうど良いところで使っているからだと説明している。

電力損失はほぼ直線的に増え、240W出力時で15W程度だった。20Vで最大出力のときは損失が多めになる。イチケンは、内部の変換回路が効率よく動作できない条件になっているのかもしれないと推測している。

全ポート使用時の効率と入力電圧の差

5ポートすべてに負荷をつないだ測定も行った。イチケンによれば、この測定は大変だったという。入力電圧は、日本国内を想定した100Vと、海外を想定した200Vの2通りで測った。

結果は200V入力の方が全体的に1〜2%ほど効率が高かった。差は300W以上の高負荷域で特にはっきり表れ、電力損失で見ると500W出力時に10W近い差があった。イチケンはこの差について、200V入力の方が回路に流れる電流が少なくなることが効いているのではないかと述べている。

サーモグラフィーで見えた温度ムラ

サーモグラフィーで本体を測ると、最高温度は68℃だった。ただしイチケンは、実験を続けるとこれより温度が高くなる条件があったと注意を加えている。

注目したのは温度の分布だ。内部の発熱部分の熱が表面に伝わり、四角い形に浮き上がって見えた。ある部分だけが温かく、筐体の隅は温度が低い。イチケンは、熱をうまく拡散できていない印象だと述べる。他のUSB充電器では温度分布が均一なので、これは設計の問題だろうとも話している。さらに本体が大きいため、熱源から表面までの熱の経路が長く、思ったよりも冷やしにくいのだろうと推測している。

3段階のサーマルスロットリングと連続定格350W

UGREENは、加熱による故障を防ぐために出力を意図的に制限する機能を「Thermal Guard™」と呼んでいる。イチケンは、この機能が実際にどう働くかを長時間の実験で確かめた。

初期条件は、上のポートから順に240W・60W・60W・60W・60W・20W、合計500Wとした。温度は最も熱くなる部分で測った。開始直後は500Wを出力し、それに伴って電力損失による発熱で本体温度が上がっていった。

開始から約70分後、表面温度が約70℃に達したところで第1段階のスロットリングが起きた。先ほどのサーモグラフィーの画像はこの時点のものだ。C2〜C5の出力が60Wから45Wに下がり、合計出力は440Wになった。その約20分後に第2段階が起き、C1が48V出力から36V出力に下がって合計380Wになった。開始から180分後には第3段階が起き、C5の出力が15Wに下がって合計350Wになった。その後は第2段階と第3段階を繰り返す動作が続いた。イチケンはこの結果から、350Wが実質的な連続定格電力だろうと判断している。

外装と本体の間の隙間

分解では、まず外装と充電器本体を分けた。外装の内側には、シリコン系とみられる熱伝導シートが本体の胴体を一周するように4面に貼られていた。シートは簡単に剥がせ、とても柔らかくもろい素材だった。

イチケンが指摘したのは、外装と本体の間に熱伝導材料が隙間なく詰まっているわけではなく、かなり隙間があったことだ。小型のUSB充電器では、シリコンのポッティング材が隙間なく充填されていることが多い。サーモグラフィーで見た四角い温度ムラは、この隙間が原因だとイチケンは説明している。ただし、空いた空間に熱伝導度の高いギャップフィラーを入れる設計にはおそらくならないだろう、とも述べる。そうしたフィラーは意外と高価なので、製品価格を抑えるためにこの構造にしたのではないか、という見方だ。

アルミシールドとポッティング材:質量の47%

本体は、厚さ1mmほどのアルミらしき板で一周巻かれていた。回路の熱を逃がすと同時に、回路から出る放射ノイズを外に出さない役割があるという。下位の300W版では真鍮のような材料だったが、500W版では材料が変わっていた。イチケンは、アルミの方が熱をよく伝え、導電率も高いので電磁波シールドとしても優秀だと説明する。このアルミはプリント基板上の回路と電気的に接続されていた。アルミははんだ付けできないため、はんだ付けできる金属とリベットで接合し、その金属を回路にはんだ付けしている。イチケンはこれを「結構大変な構造」と評している。

シールドを外すと樹脂の板があり、その下にはシリコン系の熱伝導ポッティング材がぎっしり詰まっていた。上側から流し込んだものとイチケンは見ている。つまむとボロボロと取れる素材だ。サーモグラフィーで最も熱かった面の下にも、ポッティング材が詰まっていた。

回路を見るためにこれをすべて取り除くと、ポッティング材は677gあった。外装の熱伝導シート4枚を足すと761gになる。本体重量1,595gのうち、約47%が放熱材料だったことになる。

熱の経路が長く、熱抵抗が多い構造

これだけ材料を使っていても、熱を逃がすのは難しい。イチケンはその理由を熱の経路で説明した。一般的な小型USB充電器では、熱源からポッティング材を経て外装に至るので、熱がよく外へ伝わる。一方、この製品では熱源からポッティング材、プラスチック板、アルミ板、熱伝導シートを経てようやく外装に届く。熱抵抗となる層が多いうえ、プラスチック、アルミ、シートは完全に密着しておらず、隙間がある箇所もあった。そのため熱抵抗はさらに高くなる。イチケンは、密閉タイプの充電器である以上こうした構造になってしまうのだろうと述べ、この点が産業用電源との大きな違いだとしている。

回路構成:フィルター、整流、力率補償

内部は左側が入力、右側がUSB出力という配置だ。基板は、メイン基板、USB基板、パワー半導体を載せた差し込み型の基板で、全部で4枚ある。メイン基板にはフィルター回路、整流回路、力率補償回路、絶縁型DC/DCコンバータが載っている。基板の間を空中配線のワイヤーが2本通っているが、これは2次側のYキャパシタなどを1次側に接続するためのものだという。

入力のフィルター回路は、キャパシタとインダクタで構成されている。定格500Wと大きいぶん外に漏れるノイズも大きくなりやすく、フィルター類も大型になっている。白い部品はサーモスタットで、イチケンは基板全体で温度管理をかなり厳しくしている印象を受けたと話している。

整流回路には、ブリッジダイオードではなく、コントローラとMOSFETで構成した理想ダイオード回路が使われていた。500Wクラスではダイオードの損失が大きすぎるため、ダイオードの順方向電圧の代わりにMOSFETのオン電圧で損失を下げている、とイチケンは説明する。この基板の裏側には、ちょうど表面の半導体の位置に小さな金属片が表面実装されていた。イチケンは、銅箔の電流容量を稼ぐ目的に加え、基板の放熱や蓄熱性を高める目的もあると見ている。この部分もシリコン樹脂でポッティングされていた。

力率補償回路は昇圧コンバータと同じ構成で、同じ回路が2つ入っており、交互に動かすインターリーブ制御を行っている。インダクタは500Wクラスらしく大きい。インダクタが載る位置には露出した銅箔があり、ここもポッティング材でインダクタと基板を熱結合していた。パワー半導体には、InnoscienceのGaN-HEMTと、Senguoke製とされるSiCショットキーバリアダイオードが使われている。それが2回路分あるので、イチケンは「かなり豪華」な使い方だと評している。ノイズ対策とみられるフェライトビーズもあった。イチケン自身も詳しくはわかっていないとしつつ、アモビーズのようなものではないかと推測している。

2系統の絶縁型コンバータ

絶縁型コンバータには、非対称ハーフブリッジ方式が使われているようで、これも2回路ある。変圧器の温度を監視する温度センサが2つあり、このあたりもポッティングで熱結合されていた。パワー半導体は差し込み型の基板に2回路分、表面だけに実装されており、これもInnoscience製のGaNだった。イチケンは、Innoscienceは特に中国メーカーの電源で採用例がかなり増えているのではないかと述べている。制御用コントローラはRichtek製で、イチケンはRichtekを台湾のMediaTekのグループと紹介している。

2つのコンバータのうち、1つは240W出力のC1専用だ。もう1つはC2〜C5とA1で共用している。電力的には両回路がちょうど半分ずつ負担する形になっている。ただしイチケンは、使い方次第ではあるものの、共用側のコンバータの方が負荷率は高そうだと見ている。実際、サーモグラフィーで最も熱かったのは、この共用側の変圧器の付近だった。

USB基板とPDコントローラ

USB基板上のインダクタと電解コンデンサ(イチケンは高分子系か固体ではないかとしている)は、すべてC2〜C5とA1用だ。メイン基板で20Vを作り、USB基板上で各ポートのUSB PD電圧まで降圧する構成になっているためで、その証拠に降圧コンバータ用のMOSFETが実装されている。USB基板の裏側には、PDコントローラと降圧コンバータのコントローラを内蔵したiSmartWareのICがある。

一方、C1のPDコントローラはメイン基板側にあり、Richtek製だという。C1は専用のコンバータを持つので、USB基板上で電圧を変換する必要がない。ただしCC信号は取る必要があるため、そのための配線パターンはUSB基板上にある。

分解から見えた放熱の難しさ

イチケンは、この充電器の最大の特徴である単ポート240W出力を支える回路構成が、分解で「丸わかり」になったとまとめている。最近のUSB充電器では、熱をどう抑え、どう逃がすかが課題になっている。この製品は、本体内部に熱伝導ポッティング材を充填して全体を熱結合し、その熱を外装から外に逃がす方式をとっていた。ただし、大容量の密閉型スイッチング電源である以上、熱を逃がすのはかなり難しそうだということも分解でわかったという。充電器の質量の約半分を放熱材料が占めていることからも、放熱には非常に苦労したのではないか、とイチケンは考えている。