UGREEN 500W USB充電器を分解する:重さの約47%は放熱材料だった
イチケン / ICHIKEN一般的なUSB充電器は60Wや100Wが主流だ。その中でUGREENは、全ポート合計500W、単ポートで240Wを出せる充電器を発売した。電子工作系YouTuberのイチケンは、この製品の効率、発熱、サーマルスロットリングを実測したうえで分解した。分解の結果、本体重量の約半分が熱伝導用のポッティング材とシートだったことがわかった。イチケンは、それだけの材料を使っても大容量の密閉型電源から熱を逃がすのは難しい、と結論づけている。
外観と「常時240W」という仕様
イチケンがまず挙げた印象は、とにかく大きいということだ。通常のUSB充電器と並べると、サイズの差ははっきりしている。本体重量は1,595g、外付けのケーブルを含めると1,854gになる。イチケンはこの重さから、持ち運ぶための製品ではなく、会議室や自分の机に常時置いて使う想定だろうと見ている。UGREENは以前に300WのUSB充電器を出しており、今回の500W版はその上位モデルという位置づけだとイチケンは考えている。
この製品の最大の特徴は二つある。全ポート合計で500Wを給電できること、そして一番上のポート(C1)が他のポートの使用状況に関係なく常時240Wを出力できることだ。USB PDトリガーを挿すと、USB PDのExtended Power Range(EPR)の48Vまで出力できることを確認できた。市販の充電器で28V・5Aの140Wを出せるものは多いが、36Vや48Vを出せるものはほとんどない。単ポート240Wでありながらマルチポート充電器でもあるという仕様を、イチケンは「かなり挑戦的」と評している。
一方で、現状では240Wで給電を受けられるデバイスがほとんどない。イチケンは「宝の持ち腐れ感が強い」と述べ、将来対応デバイスが出てくるのを待つ状況だとしている。
マルチポート時の電力配分
付属の説明書によると、USB-CのC2〜C5はそれぞれ最大100Wを出力する。ただし100Wを出せるのは、4ポートのうち2ポートを同時に使っている場合までだ。3ポートを同時に使うと100W・100W・60W、または100W・60W・60Wになる。4ポートすべてを使うと、全ポートが60Wまで下がる。常時100Wで給電できるのは、C1と、C2〜C5のうち二つを合わせた3ポートだけだ。そのためイチケンは、60Wを超える電力を使うノートパソコンなどを充電するときは注意が必要だと指摘している。一番下のUSB-Aは最大20Wだ。
使用感は一般的な充電器と変わらず、特筆する点はないという。ただ、空いているポートに新しく機器を接続しても、すでに接続中のポートの給電が止まることはなかった。イチケンは、常時給電が必要な機器にも安心して使えるだろうと評価している。
45W充電器・300W版とのスペック比較
イチケンは、一般的な45WのUSB充電器(Anker製の単ポート製品)とスペックを比較した。定格電力は11倍なのに対し、体積は28倍、表面積は10倍、質量は27倍だった。電力の伸び以上に体積と質量が大きくなっている。イチケンはその理由として、Anker製品が単ポートなのに対してUGREEN製品はマルチポートであることを挙げる。そのため回路方式や冷却構造が異なり、製品自体の重さを支える部材も多く必要になる、という説明だ。
性能指標で見ると、体積あたりの電力はUGREENが0.45W/cm³だった。最近の単ポート充電器には1W/cm³を超えるものが多いので、それほど高い数値ではない。もう一つの指標が、事前に測定した電力損失を表面積で割った「表面積あたりの電力損失」だ。USB充電器はほとんどの場合、空気の自然対流で放熱する。そのため表面積が広いほど冷やしやすく、この数値は小さいほど放熱に余裕があることを示す。イチケンはこの数値から、放熱には余裕がありそうだと見立て、後で実験で確かめることにした。
下位モデルの300W版と比べると、500W版は体積あたりの電力が低く、放熱指標も小さい。数値の上では、下位モデルより余裕のある設計になっているように見える。
電力変換効率:48V出力で94.2%
次に、コンセントの交流電力をUSB充電用の直流電力に変換する効率を測定した。効率が高いほど本体での電力損失が小さく、発熱も少なくなる。
240Wの単ポート測定では、全体的に効率がかなり高かった。低出力域では他の充電器と同じく効率が下がる。出力70W以下では内部回路が間欠動作になるため、効率の測定は難しかったという。グラフを5V〜20Vの範囲とそれより高い電圧の範囲に分けて見ると、20Vまでの最高効率は93.4%だった。イチケンによれば、100W以下のUSB充電器では92%程度でもかなり優秀な部類に入るので、これは高い値だ。28V以上の範囲では効率がさらに上がり、48V出力時に94.2%に達した。イチケンはこの理由を、定格500Wの電源を定格の半分くらいのちょうど良いところで使っているからだと説明している。
電力損失はほぼ直線的に増え、240W出力時で15W程度だった。20Vで最大出力のときは損失が多めになる。イチケンは、内部の変換回路が効率よく動作できない条件になっているのかもしれないと推測している。
全ポート使用時の効率と入力電圧の差
5ポートすべてに負荷をつないだ測定も行った。イチケンによれば、この測定は大変だったという。入力電圧は、日本国内を想定した100Vと、海外を想定した200Vの2通りで測った。
結果は200V入力の方が全体的に1〜2%ほど効率が高かった。差は300W以上の高負荷域で特にはっきり表れ、電力損失で見ると500W出力時に10W近い差があった。イチケンはこの差について、200V入力の方が回路に流れる電流が少なくなることが効いているのではないかと述べている。
サーモグラフィーで見えた温度ムラ
サーモグラフィーで本体を測ると、最高温度は68℃だった。ただしイチケンは、実験を続けるとこれより温度が高くなる条件があったと注意を加えている。
注目したのは温度の分布だ。内部の発熱部分の熱が表面に伝わり、四角い形に浮き上がって見えた。ある部分だけが温かく、筐体の隅は温度が低い。イチケンは、熱をうまく拡散できていない印象だと述べる。他のUSB充電器では温度分布が均一なので、これは設計の問題だろうとも話している。さらに本体が大きいため、熱源から表面までの熱の経路が長く、思ったよりも冷やしにくいのだろうと推測している。
3段階のサーマルスロットリングと連続定格350W
UGREENは、加熱による故障を防ぐために出力を意図的に制限する機能を「Thermal Guard™」と呼んでいる。イチケンは、この機能が実際にどう働くかを長時間の実験で確かめた。
初期条件は、上のポートから順に240W・60W・60W・60W・60W・20W、合計500Wとした。温度は最も熱くなる部分で測った。開始直後は500Wを出力し、それに伴って電力損失による発熱で本体温度が上がっていった。
開始から約70分後、表面温度が約70℃に達したところで第1段階のスロットリングが起きた。先ほどのサーモグラフィーの画像はこの時点のものだ。C2〜C5の出力が60Wから45Wに下がり、合計出力は440Wになった。その約20分後に第2段階が起き、C1が48V出力から36V出力に下がって合計380Wになった。開始から180分後には第3段階が起き、C5の出力が15Wに下がって合計350Wになった。その後は第2段階と第3段階を繰り返す動作が続いた。イチケンはこの結果から、350Wが実質的な連続定格電力だろうと判断している。
外装と本体の間の隙間
分解では、まず外装と充電器本体を分けた。外装の内側には、シリコン系とみられる熱伝導シートが本体の胴体を一周するように4面に貼られていた。シートは簡単に剥がせ、とても柔らかくもろい素材だった。
イチケンが指摘したのは、外装と本体の間に熱伝導材料が隙間なく詰まっているわけではなく、かなり隙間があったことだ。小型のUSB充電器では、シリコンのポッティング材が隙間なく充填されていることが多い。サーモグラフィーで見た四角い温度ムラは、この隙間が原因だとイチケンは説明している。ただし、空いた空間に熱伝導度の高いギャップフィラーを入れる設計にはおそらくならないだろう、とも述べる。そうしたフィラーは意外と高価なので、製品価格を抑えるためにこの構造にしたのではないか、という見方だ。
アルミシールドとポッティング材:質量の47%
本体は、厚さ1mmほどのアルミらしき板で一周巻かれていた。回路の熱を逃がすと同時に、回路から出る放射ノイズを外に出さない役割があるという。下位の300W版では真鍮のような材料だったが、500W版では材料が変わっていた。イチケンは、アルミの方が熱をよく伝え、導電率も高いので電磁波シールドとしても優秀だと説明する。このアルミはプリント基板上の回路と電気的に接続されていた。アルミははんだ付けできないため、はんだ付けできる金属とリベットで接合し、その金属を回路にはんだ付けしている。イチケンはこれを「結構大変な構造」と評している。
シールドを外すと樹脂の板があり、その下にはシリコン系の熱伝導ポッティング材がぎっしり詰まっていた。上側から流し込んだものとイチケンは見ている。つまむとボロボロと取れる素材だ。サーモグラフィーで最も熱かった面の下にも、ポッティング材が詰まっていた。
回路を見るためにこれをすべて取り除くと、ポッティング材は677gあった。外装の熱伝導シート4枚を足すと761gになる。本体重量1,595gのうち、約47%が放熱材料だったことになる。
熱の経路が長く、熱抵抗が多い構造
これだけ材料を使っていても、熱を逃がすのは難しい。イチケンはその理由を熱の経路で説明した。一般的な小型USB充電器では、熱源からポッティング材を経て外装に至るので、熱がよく外へ伝わる。一方、この製品では熱源からポッティング材、プラスチック板、アルミ板、熱伝導シートを経てようやく外装に届く。熱抵抗となる層が多いうえ、プラスチック、アルミ、シートは完全に密着しておらず、隙間がある箇所もあった。そのため熱抵抗はさらに高くなる。イチケンは、密閉タイプの充電器である以上こうした構造になってしまうのだろうと述べ、この点が産業用電源との大きな違いだとしている。
回路構成:フィルター、整流、力率補償
内部は左側が入力、右側がUSB出力という配置だ。基板は、メイン基板、USB基板、パワー半導体を載せた差し込み型の基板で、全部で4枚ある。メイン基板にはフィルター回路、整流回路、力率補償回路、絶縁型DC/DCコンバータが載っている。基板の間を空中配線のワイヤーが2本通っているが、これは2次側のYキャパシタなどを1次側に接続するためのものだという。
入力のフィルター回路は、キャパシタとインダクタで構成されている。定格500Wと大きいぶん外に漏れるノイズも大きくなりやすく、フィルター類も大型になっている。白い部品はサーモスタットで、イチケンは基板全体で温度管理をかなり厳しくしている印象を受けたと話している。
整流回路には、ブリッジダイオードではなく、コントローラとMOSFETで構成した理想ダイオード回路が使われていた。500Wクラスではダイオードの損失が大きすぎるため、ダイオードの順方向電圧の代わりにMOSFETのオン電圧で損失を下げている、とイチケンは説明する。この基板の裏側には、ちょうど表面の半導体の位置に小さな金属片が表面実装されていた。イチケンは、銅箔の電流容量を稼ぐ目的に加え、基板の放熱や蓄熱性を高める目的もあると見ている。この部分もシリコン樹脂でポッティングされていた。
力率補償回路は昇圧コンバータと同じ構成で、同じ回路が2つ入っており、交互に動かすインターリーブ制御を行っている。インダクタは500Wクラスらしく大きい。インダクタが載る位置には露出した銅箔があり、ここもポッティング材でインダクタと基板を熱結合していた。パワー半導体には、InnoscienceのGaN-HEMTと、Senguoke製とされるSiCショットキーバリアダイオードが使われている。それが2回路分あるので、イチケンは「かなり豪華」な使い方だと評している。ノイズ対策とみられるフェライトビーズもあった。イチケン自身も詳しくはわかっていないとしつつ、アモビーズのようなものではないかと推測している。
2系統の絶縁型コンバータ
絶縁型コンバータには、非対称ハーフブリッジ方式が使われているようで、これも2回路ある。変圧器の温度を監視する温度センサが2つあり、このあたりもポッティングで熱結合されていた。パワー半導体は差し込み型の基板に2回路分、表面だけに実装されており、これもInnoscience製のGaNだった。イチケンは、Innoscienceは特に中国メーカーの電源で採用例がかなり増えているのではないかと述べている。制御用コントローラはRichtek製で、イチケンはRichtekを台湾のMediaTekのグループと紹介している。
2つのコンバータのうち、1つは240W出力のC1専用だ。もう1つはC2〜C5とA1で共用している。電力的には両回路がちょうど半分ずつ負担する形になっている。ただしイチケンは、使い方次第ではあるものの、共用側のコンバータの方が負荷率は高そうだと見ている。実際、サーモグラフィーで最も熱かったのは、この共用側の変圧器の付近だった。
USB基板とPDコントローラ
USB基板上のインダクタと電解コンデンサ(イチケンは高分子系か固体ではないかとしている)は、すべてC2〜C5とA1用だ。メイン基板で20Vを作り、USB基板上で各ポートのUSB PD電圧まで降圧する構成になっているためで、その証拠に降圧コンバータ用のMOSFETが実装されている。USB基板の裏側には、PDコントローラと降圧コンバータのコントローラを内蔵したiSmartWareのICがある。
一方、C1のPDコントローラはメイン基板側にあり、Richtek製だという。C1は専用のコンバータを持つので、USB基板上で電圧を変換する必要がない。ただしCC信号は取る必要があるため、そのための配線パターンはUSB基板上にある。
分解から見えた放熱の難しさ
イチケンは、この充電器の最大の特徴である単ポート240W出力を支える回路構成が、分解で「丸わかり」になったとまとめている。最近のUSB充電器では、熱をどう抑え、どう逃がすかが課題になっている。この製品は、本体内部に熱伝導ポッティング材を充填して全体を熱結合し、その熱を外装から外に逃がす方式をとっていた。ただし、大容量の密閉型スイッチング電源である以上、熱を逃がすのはかなり難しそうだということも分解でわかったという。充電器の質量の約半分を放熱材料が占めていることからも、放熱には非常に苦労したのではないか、とイチケンは考えている。
この動画はRAMXEEDの提供でお送りします。
こんにちは。今日はこちらの化け物級500WのUSB充電器を分解レビューしていきます。充電器業界では60Wや100Wの充電器が多い中、UGREENはまさに規格外と言っても良い500WのUSB充電器を出してきました。果たして性能や内部の構造はどのようになっているのかを検証していきます。その前に今日のスポンサーの紹介です。どうぞ。
今日はRAMXEEDが手がける面白いメモリデバイスを紹介します。RAMXEEDはかつて富士通グループに属していた会社で、今年1月に社名をRAMXEEDへ変更しました。現在はこれから紹介する半導体メモリデバイスを開発・販売しています。
そのメモリがこちらのFeRAMです。こちらのデモはFeRAMとロータリーエンコーダを組み合わせたものです。ここにFeRAMに記録された回転数と回転角が表示されています。このつまみを回すと数字が増えます。
さて、ここで問題です。電源を抜いたままつまみを回したらどうなるでしょうか?電源を抜いて、つまみを回して、再度電源を入れます。そうしますと、なんと回転数がしっかりと加算されています。
実はこのデモはFeRAMのすごいポイントである高速書き込み、低消費電力、不揮発性、高書き換え耐性を一度に見るものだったのです。ここで重要なのは、指で回すくらいの非常に小さな電力でFeRAMは動作可能で、さらに書き込みが早いので、電源が落ちるギリギリ直前のデータもFeRAMへ書き込みできることです。フラッシュメモリやEEPROMではこうはいきません。
例えば、RAMXEEDのFeRAMをロボットのロータリーエンコーダに入れておけば、停電した後にモータがどれくらい回ってしまったのかを記録できます。
そして今回はRAMXEEDとイチケンのコラボ記念で、FeRAMのサンプルキットとイチケンが着ているRAMXEED Tシャツをセットで限定10名様にプレゼントします。応募方法については概要欄のリンクから確認をお願いします。ぜひチャレンジしてみてください。
まずは外観を見ていきます。一言で言うと、でかいですね。通常のUSB充電器がこのサイズなのですが、それと比べると、このUSB充電器がどれほど大きいかというのがよくわかると思います。重さは1,595g。ケーブルは外付けとなっていて、これも合わせると1,854gです。
そのため小型の充電器のように持ち運びするようなものではなくて、基本は会議室の机とか自分のデスクの上に常時置いておくような使い方を想定しているかと思います。
UGREENは実は前にも300Wというかなり大電力のUSB充電器を出してきていました。今回の500W版はその上位モデル扱いかと思います。
このUSB充電器の一番の特徴は、全ポート合わせて500Wでの給電が可能で、さらに一番上のポートは他のポートの使用状況に関わらず常時240W出力が可能であることです。
実際にUSB PDトリガーを挿してみると、このようにUSB PDのExtended Power Range、EPRの48Vまで出力可能となっています。市販のUSB充電器では28V、5Aの140Wを出すものはたくさんありますが、それ以上の電圧である36Vや48Vを出せるものはほとんどありません。
このような単ポートでの240W給電や、そもそもマルチポート充電器であるなど、そのような仕様を考えると、かなり挑戦的な製品かと思います。
このUSB充電器のマルチポート使用時の電力の振り分けは付属の取り扱い説明書に書いてありますが、簡単に説明すると、USB-CのC2~C5についてはそれぞれ最大100Wの出力となっています。ただし使用状況によって出力電力が変わるようで、100Wを出せるのはこの4つのうちの2ポート同時までです。3ポート同時で使っていると100W、100W、60Wか100W、60W、60W。4ポートを同時に使っていると、全て60Wまで出力可能電力は落ちてしまいます。そのため消費電力が60W以上のノートパソコンなどを充電するときは要注意です。
常時100Wで給電できるのはC1一つと、C2~C5のどれか二つを合わせた3ポートのみです。一番下にあるUSB-Aについては最大20W出力となっています。最近はあまり使わないですが。
使用感についてはよくある一般的な充電器です。特にレビューする事もないかと思います。使用中に空いているポートに接続しても、すでに接続している他のポートの給電が止まるといったことは起きないので、常時給電が必要なものにも安心して使えるかと思います。
この充電器の最大の特徴である240W給電ですが、現状では240Wで給電を受けられるデバイスがほとんどありません。ですから宝の持ち腐れ感が強いのですが、将来的に対応するデバイスが出てくるかもしれないので、現状は待ちですね。
ここからは実際のスペックを表や実験で確認したものを見ていきます。まずはこちらのスペック比較表からです。これは一般的な45WのUSB充電器との比較です。比べてみると数値の桁が一つ二つ違っていることがわかります。定格電力は11倍、体積は28倍、表面積は10倍、質量は27倍大きくなっています。
これを見る限りでは、電力を大きくするとそれ以上に体積や質量が大きくなるようです。この理由はわかっていて、Ankerの方は単ポート製品であるのに対して、UGREENはマルチポートの製品です。そのため内部の回路の方式が違うことや冷却構造の違い、製品自体の重さを支えるために使う部材が多くなることなどが理由として挙げられます。
次は性能指標を見ていきます。まずは体積あたりの電力です。この数字が大きくなるほど電源としての性能は高くなります。最近の単ポートのUSB充電器ではこの数字が1W/cm³を超えてくるものが多いです。UGREENは0.45W/cm³ですので、体積当たりの電力はそれほど高くないという結果になっています。やはり先ほど挙げた回路や冷却構造、使用している部材などが効いていると思います。このあたりは後で実際に分解して確かめます。
次は表面積あたりの電力損失です。電力損失については前もって測定しました。この数字を見るとUSB充電器の放熱にどれくらい余裕があるのかが分かります。このようなUSB充電器の放熱は自然放熱の空気の対流で行うことがほとんどですから、表面積が広ければ広いほど冷却しやすい構造となります。この冷却に関する性能指標は数字が小さいほど放熱に余裕があるというものです。この数字を見てみると、放熱には余裕がありそうな雰囲気です。これについても後で実験して確認します。
こちらの比較表は下位モデルである300W版との比較です。性能指標だけを見てみると、体積当たりの電力は低くなっています。放熱の指標も小さくなっているので、下位モデルと比べて余裕のある設計になっていそうです。
次は電力変換効率の測定を行いました。これはコンセントからの交流電力を、どれだけ効率よくUSB充電で使う直流電力に変換できるかを示すものです。効率が高いUSB充電器ほど、このUSB充電器本体で発生する電力損失が小さく、その結果発熱も少なくなります。
まずは240W単ポートでの測定結果です。横軸は出力電力、縦軸は変換効率です。全体的に効率はかなり高いです。電力が低い領域では他の充電器同様、効率は低くなります。ちなみに出力電力が70W以下の領域では、充電器の内部回路の動作が間欠的になるため効率測定は難しかったです。
このグラフは少し見づらいので、一般的な充電器で使える5V~20Vまでのグラフと、それより大きいもので分けていきます。まずはこちら、20Vまでの場合、最高効率は93.4%でした。USB充電器としてはなかなか高効率です。100W以下のUSB充電器では、変換効率は92%くらいあればかなり優秀な部類です。次はこちら、28V以上のレンジです。効率はさらに高くなり、48V出力の時に94.2%となりました。効率としてはかなり高いです。このようになった理由としては、定格電力500Wの電源をその定格の半分くらいのちょうど良いところで使っているからです。
こちらは電力損失カーブです。割と直線的に増えていて、240W出力の時に15W程度の電力損失がありました。この結果を見てみると、20Vで最大出力の時は電力損失が多くなるようです。これは内部の変換回路が効率よく運転できない条件になっているのかなと思います。
次は全ポートを使った時の効率の結果です。このような実験セットアップでやっています。5ポート分あるので測定は大変でした。入力電圧は日本国内で使った時の100Vと、海外で使った時を想定して200Vの2パターンで測定しました。やはり200V入力の方が効率は良くなっていて、全体的に1~2%程度高効率になっています。特に300W以上の高負荷領域ではその差がよく分かります。
電力損失カーブを見るとさらに分かりやすいです。500W出力時などは10W近く差が出ています。基本的に200Vの方が回路に流れる電流は少なくなりますので、その辺りが効いているのではないかと思います。
次はサーモグラフィーを使って本体の温度測定を行いました。最高温度は68℃となりました。そこそこ熱くなっています。ただ一つ注意点がありまして、実験を続けていくと、これよりも温度が高くなる条件がありました。それについては後で解説します。
よく見てみると、内部で発熱している部分の熱が伝わってきて、四角形の形ができているのが分かります。熱の分布としては、ある部分だけが温かくなっていて、筐体の隅の部分は温度は低いです。全体的に温度差があるので、うまく熱を拡散できていない印象です。他のUSB充電器の場合では温度分布は均一なので、設計の問題でしょうね。この辺りも後で分解して確認します。
あとは本体のサイズが大きいので、熱源から表面までの熱の伝わる経路が長くて、思ったよりも冷えにくいというか、冷やしにくいのだと思います。
次は温度と関連して、サーマルスロットリングが起きるかも確認しました。サーマルスロットリングとは、USB充電器が過熱によって壊れるのを防ぐために、出力可能な電力を意図的に制限する機能のことです。UGREENはこの機能のことをThermal Guard™と呼んでいます。先ほど軽くネタバレしたのですが、この充電器はサーマルスロットリングをしています。
こちらが実験結果です。少し見にくいグラフですが、横軸が実験を開始してからの経過時間、左の縦軸がUSB充電器の温度で、一番温度が高くなる部分で測定しています。右の縦軸がUSB充電器の出力電力です。出力電力の初期条件は、上から順に240W、60W、60W、60W、60W、20Wの合計500Wです。
実験結果を見てみると、開始直後から500Wの電力を出力しています。それに伴ってUSB充電器の内部で電力損失が発生し、それが熱に変わり本体の温度も上昇を始めました。
実験開始からまず70分が経過してから、第1段階のサーマルスロットリングが起きました。表面温度は約70℃です。先ほどのサーモグラフィーで見たものがこの時点の温度です。第1段階の動作としては、C2~C5の電力を60Wから45Wに低下させるような動作となっています。このため出力電力は440Wに低下しました。
そこから20分程度経過後に、さらに第2段階のサーマルスロットリングが起きました。この動作としては、C1のポートが48V出力から36V出力に低下します。これによって出力電力は合計380Wに低下しました。
さらに時間が経過して、実験開始から180分後に第3段階のサーマルスロットリングが起きました。これはC5のポートの出力電力が15Wに低下して、出力電力の合計は350Wまで低下しています。その後は第2、第3のサーマルスロットリングを繰り返すような動作となりましたので、350Wが連続定格電力になるということでしょう。
ここからは本編部分であるUSB充電器の分解検証に入っていきます。ある程度分解したものを用意しました。こちらです。充電器本体がこの中に入っていて、そして外装のような構成となっています。
外装部分のシートはシリコン系の熱伝導シートのようです。こちらの充電器の胴体部分を一周ぐるっとするように4面に貼り付けられています。割と簡単に剥がすことができます。かなり柔らかくて、そしてもろい素材でできています。
見た限りでは、外装部分と充電器の間にみっちりと熱伝導系の材料が詰まっているといった感じではなくて、結構隙間があります。このあたりは小型のUSB充電器では隙間なくシリコンポッティング材が充填されているので、大きな違いかと思います。先ほどのサーモグラフィーで熱分布が一様ではなくて温度差があったのが、これが原因です。四角形の形で熱い部分が浮き上がっていましたね。
かといって、空いている空間に熱伝導度の高いギャップフィラーを入れようとも多分ならないです。熱伝導度の高いギャップフィラーは結構高くて、意外とコストがかかってしまいます。製品価格を抑えるためにも、このような設計にしているのかと思います。
次は充電器本体を見ていきます。アルミっぽい素材で充電器を一周ぐるっと巻いています。板厚は1mmぐらいあります。これは回路の放熱と、回路から出る放射ノイズを外に出さない役割があります。下位モデルの300W版では真鍮っぽい材料でできていましたが、500W版は材料を変えたみたいです。アルミの方が熱をよく伝えますし、導電率も高いので、電磁波シールドとしても優秀な側面があります。
アルミはプリント基板上の回路と電気的に接続されていました。ただアルミははんだ付けできないので、はんだ付け可能な金属とリベット接合をされていて、その金属と回路をはんだ付けで繋げるという結構大変な構造をしています。
アルミシールドを取り外しました。下を見てみると、さらに樹脂の板があって、その下に熱伝導のためのシリコン系ポッティング材が充填されています。見る限りでは、こちらを上側にして、ここからポッティング材を流し込んでいるのかと思います。かなりぎっちりと詰まっています。
ポッティング材はこのようにつまむと取れます。結構ボロボロと取れます。内部の回路を見るために、これを全部剥いていきます。
ちなみにサーモグラフィーで見ていたときに、こちらの面のこの辺りが一番発熱していました。この下に何かあるのでしょうね。
めちゃくちゃ詰まっていますね。
熱伝導系の材料を全て除去しました。ポッティング材が思っていたよりも使われていて、このように大量のポッティング材がこのUSB充電器の中から出てきました。入っていたポッティング材の質量はどうかというと、677gです。そこへ外装へ貼り付けられていた熱伝導シート4枚の重さを足すと761gです。本体の重さが1,595gなので、約47%が放熱材料の質量ということになります。ものすごい量の放熱の材料が使われています。
見てきた通り放熱についてはかなり頑張っているとは思うのですが、それでも熱を逃がすのはここに書いているようにかなり難しいです。というのも、一般的なUSB充電器は熱源があって、ポッティング材があって、外装になるといった放熱の経路です。そのため熱源から外に熱がよく伝わっていきます。一方でUGREENの方はどうなるかというと、これまで分解して見てきた通り、熱源があって、ポッティング材があると。そしてプラスチックがあって、その次にアルミの板があると。さらに熱伝導シートがこちらにあって、外装というように熱の経路はなっています。
このように熱抵抗となるものが多く、外に熱が逃げて行きにくい構造となっています。さらにプラスチックとアルミ、熱伝導シートは完全に密着しているわけではなくて、隙間ができている箇所もありましたので、それが原因で熱抵抗はさらに高くなります。
今回分解したUSB充電器は密閉タイプのものなので、どうしてもこういう構造になってしまうんでしょうね。このあたりは産業用電源との大きな違いです。
ここからはさらに分解して、内部の回路を見ていきます。大まかな構造を見ていくと、左側が入力で、右側がUSBの出力です。こちらのメイン基板は、フィルター回路、整流回路、力率補償回路、絶縁型DC/DCコンバータ、USB基板です。基板は全部で4枚構成です。メインの基板、USBの基板、そしてパワー半導体が載ってるようなこのような差し込みタイプの基板です。
ここに2本ワイヤーが空中を飛んでいますが、これは2次側のYキャパシタなどを1次側に接続するための配線です。裏側を見てみると、このように表面実装部品がたくさん並んでいます。
回路を順番に見ていきます。まずはフィルター回路です。これはキャパシタとインダクタのフィルター回路です。定格電力が500Wと大きい分、外に漏れ出すノイズも大きくなる傾向にあります。そのためフィルター類も大きくなっています。この白い部品があるのですが、これはサーモスタットですね。これから見ていくのですが、基板全体で温度管理を結構厳しくしている印象です。
次は整流回路です。これはフィルター回路を通ってきた交流電圧を直流に変換する回路です。これですね。こちらの製品はブリッジダイオードは使わずに、理想ダイオード回路をコントローラとMOSFETで作っています。500Wクラスの電源になると、ダイオードを使うと損失が大きすぎますからね。ダイオードの順方向電圧ではなくて、MOSFETのオン電圧にすることで電力損失を低減しています。
こちらの基板の裏側を見てみると、このようになっています。小さい金属片が表面実装されています。これは銅箔の電流容量を稼ぐという目的もありますが、この基板自体の放熱や蓄熱性を上げるために使われているものかと思います。実際ここら辺もシリコン樹脂で全部ポッティングされていましたからね。おもて面の半導体の位置を見てもらうと分かりやすいです。ちょうど半導体の位置に実装されています。
次は力率補償回路です。力率補償回路は昇圧コンバータの回路と同じです。実はこちらの製品、力率補償回路が2つ入っていて、同じものです。交互に動かすインターリーブ制御をしています。500Wクラスの回路なので、インダクタもさすがに大きいです。
変圧器が乗っていたところには、熱の伝わりを良くするために露出した銅箔がありました。この辺りも全部熱伝導ポッティング材が充填されていて、インダクタとプリント基板を熱結合しています。
メイン基板の裏側に制御ICとパワー半導体があります。パワー半導体については、InnoscienceのGaN-HEMTとSenguoke製のSiCショットキーバリアダイオードを使っています。それが2回路分あるので、かなり豪華にパワー半導体を使っている印象です。
ノイズを減らすために使われていると思うのですが、フェライトビーズがあります。よくわかっていないのですが、アモビーズ的なものでしょうか。
その後絶縁型コンバータに入っていくわけですが、これは非対称ハーフブリッジ方式を使っているようです。それが2回路あります。よく見てみると、変圧器の温度をモニターするための温度センサが2つあります。この辺も全部ポッティングされていて、熱結合をされていました。
パワー半導体はこちらの差し込み型の基板に2回路分実装されています。このような外観です。おもて面だけです。これも同じくInnoscience製のGaNパワー半導体です。やはりInnoscienceは結構強いです。特に中国メーカーの電源で採用例がかなり多くなっているのではないでしょうか。
制御用のコントローラはRichtek製のコントローラです。台湾のMediaTekのグループです。
先ほど絶縁型コンバータが2回路あると言いましたが、1つは240W出力のC1専用に使われていて、もう一つはC2~C5、そしてA1が共用する形で使われています。電力的にはそれぞれの回路がちょうど半分ずつ負担する形となっています。実際の使い方にもよりますが、こちらの上側のコンバータ、C2~C5、A1で共用しているものの方が負荷率は高そうです。サーモグラフィーを見てみるとよく分かりますが、この変圧器の辺りが一番発熱していました。
そして最後、USB基板を見ていきます。インダクタや電解コンデンサ、多分高分子系か固体かと思うのですが、これらは全てC2~C5、A1で使われるものです。というのも、メイン基板で20Vを作った後は、このUSB基板上でUSB PD用の電圧まで降圧するからです。その証拠に降圧コンバータ用のMOSFETが実装されています。USB基板の裏側には、PDコントローラと降圧コンバータのコントローラが内蔵されたiSmartWareのICがあります。
C1のコントローラはどこにあるかというと、こちらのメイン基板側にあります。これはRichtek製のPDコントローラだそうです。C1についてはこれしか使わない専用回路なので、USB基板上で電圧変換をする必要がありません。ただCCの信号を取ってくる必要はあるので、それ用のパターンはあります。
というわけで今日はUGREENの500W USB充電器を分解レビューしてきました。この充電器の一番の特徴としては、やはり単ポートで240W出力できることです。そして分解してみると、それを支える回路が丸わかりといった感じでした。
最近のUSB充電器は、どうやって熱を抑えるか、放熱するかが課題になっています。今回の充電器では、本体内部に熱伝導系のポッティング材を充填して全体を熱結合、そしてその熱を外装を伝って外に逃がしていくというやり方でした。ただこれは大容量の密閉型スイッチング電源ですから、やはり熱を逃がすのは結構難しそうというのが分解していて分かりました。充電器質量の約半分を放熱材料が占めていることを考えても、やはり放熱が非常に難しかったのではないかと考えています。
今日分解した充電器については概要欄に購入リンクがありますので、気になる人はぜひチェックしてみてください。
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