自民党税調の「まとめ役」山際大志郎が語る、食料品1%減税、停滞するスタートアップ投資、Rapidusへの覚悟

YouTubeで開く ↗
概要

ReHacQの高橋弘樹が、自民党衆議院議員の山際大志郎に話を聞いた。山際は当選8回で、経済再生担当大臣や初代スタートアップ担当大臣を務めた。現在は党の税制調査会小委員長として税の議論をまとめ、財政改革検討本部長も兼ねている。対談は、高市政権が掲げる食料品の消費税減税の中身から始まり、目標に届いていないスタートアップ5カ年計画、半導体議連会長として推すRapidus、AI戦略へと進んだ。山際は、減税は選挙で国民と約束した以上やるべきだと述べ、5カ年計画は失敗だったと認めた。そのうえでRapidusについては、成功するまで国は撤退しないと強調した。

18分で読めます
2:56

獣医師から政治家へ、そして「税のまとめ役」に

山際は山口大学農学部獣医学科で獣医師免許を取り、東京大学で博士号を取得した。動物病院を経営したあとに政治家になった。政治家になってからは一貫して経済分野を担当し、AI、半導体、ロボティクス、ライフワークだというエネルギー、コンテンツ、獣医師の経歴を生かしたバイオに取り組んできたと自己紹介した。

当選回数を重ねられた理由として、山際は2012年以降に選挙が頻繁にあったことを挙げた。そのぶん以前より1〜2回分早く期数が進んでいる感覚があるという。高橋が「昔は当選6回で大臣と言われた。今は上が詰まりすぎではないか」と尋ねると、山際は詰まっている感覚はないと答えた。むしろ先輩が次々に引退して上の層が薄くなり、本会議場で「気づくと随分後ろに座っている」という。

税制調査会小委員長という肩書について、山際は「小」が付くので小さな委員会の委員長だと誤解されやすいと話した。実際の役割分担は次のとおりだという。税調会長は、以前なら公明党、現在なら日本維新の会との与党調整を含め、対外的なことを取り仕切る。小委員長は党内の議論をまとめる。党内にはさまざまな意見があり、まとめるのが最も大変な仕事だという。山際は、修羅場をくぐってきたので「大概のことではビビらない」と述べ、解決策もすぐに頭に浮かぶので自分に合ったポジションだと語った。

7:12

高市政権の減税方針と税調内の空気

高橋はまず、税調内の空気を尋ねた。ニュースを見る限り、高市早苗首相の「責任ある積極財政」と減税路線をめぐって、党内は一枚岩ではなさそうに見えるからだ。

山際によれば、今年2月の総選挙で、高市のもとで初当選した「高市チルドレン」と呼ばれる新人議員が大勢入った。そのため、全議員が集まる小委員会の「平場」では、責任ある積極財政に基づく税のあり方に前向きな意見が多い。一方で、長く税に携わってきた「税のプロフェッショナル」の議員からは慎重論も出ている。税は国民一人ひとりにかかり、責任を持ち続けなければならないものなので、どこまでなら許されるかを考えるべきだという意見だ。たとえば消費税を本当に減税するには多くの作業が必要で、もう少し慎重であるべきだという指摘があった。山際はこれを「税の理論からするとごく真っ当な話」と認め、党内が完全に否定的なわけではないと説明した。

山際自身は、消費税減税はやるべきだという立場をとる。理由は税の理論ではない。高市が減税を掲げて選挙を戦った以上、国民との約束を守らなければならないという点にある。選挙で決着した以上、党内で是非を議論するのではなく、どうすれば最大の効果が出る制度にできるかをプロが議論すべきだと考えている。今回はその意味で前向きな議論ができたといい、まとめた案は次の臨時国会に諮られる予定だと述べた。

10:16

なぜ0%ではなく1%なのか

法案の内容は、現在8%の飲食料品の税率を、来年4月1日から1%に下げるものだ。山際はゼロにしなかった理由を技術的な事情から説明した。レジのシステムを改修するとき、0%を入れると何を掛けても0になるため扱いにくい数字になるという。1%なら改修は半年で終わるが、0%で不具合が出ないようテストまで含めると1年かかる、という説明を受けたという。

この説明を聞いた首相は、とにかく1日でも早く減税したほうがよいと判断した。そこでまず1%まで下げ、残る1%分、約6000億円とされる額は給付で手当てする形になった。山際はこれを、政策効果を少しでも早く出すための工夫の一つと位置づけた。

11:15

税の専門家が懸念する「複雑さ」と、米や缶詰の例

高橋は、税の専門家が何を心配しているのかを掘り下げた。山際の説明では、税をいじるとさまざまな場所に影響が及ぶ。飲食料品には生産者、間に入る業者、最終消費者が関わり、加工の工程を経るたびに税がかかる。さらに、目的が物価高対策なら、消費税を変えるより給付のほうが確実に早いという意見もある。山際はこうした理屈は理屈として成り立つと認めた。そのうえで、だから消費税に絶対触ってはいけないということにはならないと述べ、政治決断が下された以上は実行する立場に立つと語った。実際に取り組んでみると「非常に複雑」だとも話した。

具体例として山際が挙げたのは米農家だ。米を作るための資材やエネルギーには10%の消費税がかかり続ける。一方、米を卸に売るときは1%になる。卸からスーパーや米屋に渡る段階でも、仕入れで消費税を払い、販売で受け取る計算が発生する。米でさえこうなのだから、マヨネーズのように原材料の多い加工品はさらに長い工程になるという。高橋が「農家は肥料を10%で買い、1%で売るのはきつい」と言うと、山際は同意した。そのため今回は税制とは別に、農家が負担する10%分を補う給付制度も合わせて用意したと説明した。

高橋は缶詰の例も持ち出した。マグロ漁の燃料は10%、加工業者はマグロを1%で仕入れるが、缶は10%で買う。「超複雑で、やらないほうがいいのでは」と問うと、山際は、そういう意見は実際に出ていると認めた。そのうえで、複雑で大変なのは分かっているが、やってはいけないことではないと繰り返した。約束を守らなければ政治は信頼を失い、次の重要な政策を進めようとしても誰も聞いてくれなくなる、というのが山際の考えだ。

15:41

「選挙期間が短すぎる」という高橋の問題提起

高橋は、選挙期間中に缶詰や肥料の話は聞いたことがなかったと指摘した。食料品の減税は党首討論の主要テーマだったのに、細部は後から知らされた。先に分かっていれば、給付か、消費税の一律引き下げか、食品だけ1%かを議論できたし、高市も別の選択肢を出したかもしれない。2週間の選挙期間では足りないので、せめて主要政策は事前に議論したい、と高橋は述べた。

山際は、選択肢を示したうえで選挙をするのは当然ありだと応じた。同時に、コロナ対策担当大臣だったときの経験を紹介した。各家庭に10万円を給付した際、その後の使われ方を追跡すると、8割方が預貯金に回っていたという。消費税減税なら毎日の買い物のたびに少しずつ効果が出るので、少なくともタンス預金になることはない。山際は、首相もそうした点を考えたのではないかという見方を示した。

選挙で政策をどこまで細かく伝えるかについては、山際は「聞かれれば答える」と述べた。有権者にはそれぞれの生活があり、生活の土台を専門家である政治家に任せるのが選挙だ。だから背景まで全部理解してもらうのは難しく、本質を分かりやすく丁寧に説明できるかが問われているという。税調はプロの場なので、こうした議論を「侃々諤々やっている」とも語った。

18:27

マイナンバー口座への直接給付という工夫

1%分の給付を早くする工夫として、山際は申請主義の見直しを挙げた。国から給付を受けるときは、国民が自ら申請する「申請主義」が広く採られている。この場合、市町村の担当者がまず「このお金は必要か」と意思を確認する文書を送り、返事を集計し、さらに振込先の口座を尋ねるという手順を踏むので、非常に時間がかかる。

今回は、マイナンバーに紐づいた公金受取口座を登録している人には、意思確認を省いて国から直接お金を振り込む仕組みにした。銀行や郵便局の口座を登録しておけば、来年4月以降、対象者には速やかに自動で入金されるという。山際は、ここで挙げたのは2つだけで、実際にはこうした工夫を細かく詰めたと述べた。給付の部分は、田村憲久が会長を務める社会保障制度調査会で検討し、税の部分は税調が担った。

21:20

スタートアップ5カ年計画は「完全に落第」

話題は、岸田政権で山際が初代担当大臣として関わったスタートアップ育成5か年計画に移った。2027年までにスタートアップへの投資額を年10兆円規模にすることを目標に掲げていた。高橋は、京都のIVSでも「5年経ってうまくいっていないのでは」と話題になっていたと切り出した。

山際は「正直申し上げて大変忸怩たる思い」と答え、うまくいっていないと認めた。計画当時、年間投資額は1兆円に満たなかったが、現在も1兆円に届いていないという。もう一つの指標である、時価総額で今なら1600億円程度のユニコーンを100社つくるという目標も「全く届かない」と述べた。ただし、スタートアップへの熱が冷めたわけではないので計画を作った意義はあったとも語った。計画どおりに進んでいるかといえば「完全に落第」であり、進まない原因が見えてきたので、新たな5カ年計画のようなものを速やかに作って対策を打つべきだと述べた。

24:11

原因は「数百億円」を出せない保守性

高橋が原因をはっきり言ってほしいと求めると、山際は「日本社会の保守性」が最大の原因だと答えた。スタートアップは、アイデア段階なら数百万〜数千万円で起業できる。しかしスケールさせるには、億、10億、100億単位の投資が必要になる。日本でも数十億円規模までなら投資する側に経験があり、資金を集められる企業も増えてきた。ところが数百億円規模になると、日本の金融機関などの出し手にはなかなか出せない。アメリカでは当たり前に起きることなので、ここで桁の差が生まれていると山際は説明した。

解決策として山際が挙げた案は二つある。一つは、政府が主導して数百億円規模の案件をいくつか示し、民間が融資や投資で抱き合わせる枠組みだ。もう一つは、数百億円を入れた経験が豊富なアメリカのVCを日本に呼び、プレイヤーとして出資してもらうことだ。その場合はアメリカで上場するといった条件が付くが、半分が日本企業、半分がアメリカ企業でもよく、経済のパイが広がることが大事だという。これらを現行計画の中で実施するか、計画を改定して盛り込むかを議論している段階だと述べた。

高橋の反論:政府の目利きと、投資に値する企業の有無

高橋は二つの疑問をぶつけた。一つは、Spiberの例を見ても政府の目利きは怪しく、政府が入るとかえって民間が引いてしまうのではないかという点だ。もう一つは、そもそも数百億円を調達するに値するスタートアップが出てきていないのではないかという点で、儲かると思えば民間は出すはずだと述べた。

山際は後者に対し、「出てきていると思う」と答えた。数億、数百億の投資を受ければ一気に伸びる企業は指折りいくつもあるという。社名は伏せたが、AI、半導体、ロボティクスの分野、特にロボットのスタートアップに「これはいける」と感じる企業があると述べた。山際は政治家になる前に起業しており、その経験から見極めているつもりだとも語った。

こうした企業は国内の出し手を回っても全部断られ、シリコンバレーなど西海岸のVCに話を持っていかざるを得ない。すると米国上場が条件になる。もともと会社の規模が小さいので、数百億円が入ればマジョリティはVCが握る。日本で種を育てたのに一番おいしいところをアメリカに持っていかれることを、「純粋な国士」のような考えの起業家たちは嫌がるという。山際は、応援しなければならないと思っているが、まだ仕組みができていないのは事実だと認めた。経済産業省の政策を中心に、大型投資への減税や補助金を組み合わせれば支援は十分できるとの見方も示した。

30:07

ユニコーンの定義を広げる提案

ユニコーンが育たなかった理由について、山際は、資金不足とほぼ同じ問題だとした。そのうえで、日本のスタートアップは早い段階でIPOを選ぶケースが多かったことも挙げた。アメリカではSpaceXのように上場せずに資金を集め続けて巨大になることが普通に起きるが、日本はそうした生態系になっておらず、「もったいなかった」と述べた。

上場後に順調に育ち、企業価値が1600億円を超えている企業は日本にもいくつもあるという。山際は、ユニコーンを未上場企業に限ると日本企業の多くが外れてしまうので、上場後5年や10年といった期間内に1600億円を超えた企業もユニコーンと認定してよいのではないかと提案した。認定によって注目が集まり、株式投資の資金が流れ込めば、日本経済のパイを増やすことになるという考えだ。

高市政権では17の重点投資分野を定め、それに横串を刺す8つほどの分野横断テーマの一つにスタートアップが入っている。各分野でスタートアップになりそうな企業はすべてこの枠に引っかかる、というのが山際の説明である。

32:46

半導体は「経済のコメ」:日の丸半導体はなぜ負けたのか

半導体議連の会長でもある山際に、高橋は日の丸半導体の復活に何が必要かを尋ねた。山際は、「復活したい」というより「復活させないと21世紀の日本は世界で生き残れない」という感覚だと答え、自らを「背水の陣」と表現した。

この問題意識は、師匠と呼ぶ甘利明との議論から生まれたという。デジタルの世界では半導体が「経済のコメ」であり、コメを買う側にいるか、生産して売る側にいるかで全く違う。放っておけば買う側になってしまう。10年近く前のこの議論で、「乗るか反るかではなく乗るしかない」と考え、半導体戦略を練り直して経済の武器にしようと動き出した。2019〜20年頃には、日の丸半導体で失敗したのに反省もなく同じことをするのか、と党内外から相当批判されたという。

山際は、かつての失敗の理由を二つ挙げた。第一に、アメリカが敵に回ったことだ。山際によれば、アメリカから叩かれ、日本の技術を韓国に「ただで移植しろ」と言われた結果、韓国と台湾が伸び、日本は沈んだ。第二に、投資の問題だ。半導体は装置産業で、兆円単位の投資が要る。諸外国は政府がセットで投資したのに、日本だけは「民間でできることは民間で」として、競い合う各社に任せた。1社で賄える額ではないので「勝てるわけがない」と山際は述べた。

36:42

Rapidus:日米連携と、撤退しない覚悟

その反省を踏まえた象徴がRapidusだと山際は言う。北海道で世界最先端のチップを作る会社で、設計はIBMが担う。最初から日米で組んでいるのでアメリカは敵に回らない。山際は、嫌がらせを避けるためというより、互いに利益を得られるよう最も親和性の高い日米で組んだのだと説明した。

もう一つの違いが国の支援で、すでに約2兆4000億円を投じている。山際は「成功するまで絶対にこれはやめない」と言い切り、中途半端にやめないしつこさが前回とは違うと強調した。こうした事業には政治生命をかける必要があり、失敗すれば自分は政治家を辞めることになると思う、とも述べた。甘利からは「自分はそろそろ引退するからいいが、君らはこれからの世代だ。ポシャったら政治生命を絶たれるぞ、それでもやるか」と問われたという。誰かがやらなければならないので自分たちのチームでやろうと始めたのだと、山際は振り返った。

38:35

需要の不安は消えた:ChatGPT以後の「ゲームチェンジ」

高橋は、Rapidusを訪ねた際の印象を伝えた。作るのは必ずしも最先端品ではなく、早く作れることを売りにしているように感じたこと、まだ製造途中なので顧客が本当に付くのか分からないことだ。山際は、5年前は顧客をどこで捕まえるかが課題だったと認めた。最初の顧客はIBMになるが、その先をどう売るかに不安があった。しかし今は全く心配していないという。

山際の説明はこうだ。最先端品でなければ性能が出ず、最先端のチップを作れるのはTSMCとRapidusだけになる(Rapidusはまだ量産前で、作れるようになることを目指している段階)。韓国勢にも作れるところは多少あるが、AIデータセンターの需要がこれだけ高まると、2社がフル回転しても足りない。プロジェクトは2022年11月のChatGPT登場より前から進んでいた。高橋が「先見の明があった」と言うと、山際は、半導体でさまざまなものが進化することは見越していたが、生成AIがあのタイミングで出てくることは誰にも分からなかったと否定した。そのうえで、それによってゲームが完全にチェンジしたと述べた。

技術ロードマップについて、山際はシリコン半導体の進化はまだ続くと語った。Rapidusは2ナノの次の1.4ナノの開発にすでに取り組み、IBMはさらに先の0.7ナノまで手がけているという。平置きだった構造が3Dに積み重なることで、性能はさらに上がるとも述べた。光電融合ではNTTが力を入れ、チップ間の信号を電気から光に変える段階に来ている。今後はチップ内部の光化、さらに光半導体へと進む。その先の量子の分野は勝負が全くついていないが、光電融合は実装が始まっているので、NTTが負けないよう応援しなければならないと語った。

アメリカでの生産については、今のところ予定はないと述べた。Rapidusは千歳での量産に精一杯で、来年の今頃までに量産にこぎつけようと必死だという。現時点では「奇跡的にオンスケジュール」で、成功すれば見方が大きく変わり、資金も集まって、次のステップとしてアメリカ展開も考えるかもしれないと話した。

44:05

経済規模の見積もりと北海道バレー

経済規模を問われると、山際は「少なく見積もっても兆円オーダーのさらに上」と答えた。具体的な数字は今は言えないとして、NVIDIAを例に挙げた。NVIDIAはTSMC製の最新チップをGPUユニットに組み上げて販売しており、今年受けている注文は売上だけで150兆円と日本の国家予算を超え、粗利は8割とも言われると話した。TSMCも粗利5〜6割の会社で、Rapidusも同様になると山際は見る。覇権を握れば利益が非常に大きいのが半導体の世界だというのが山際の説明だ。成功すれば日本企業としてトヨタ級になり、景気も「ものすごく良くなると思う」と述べた。

山際は北海道の将来にも触れた。Rapidusを中心に、苫小牧から石狩にかけての一帯を「北海道バレー」とする構想があり、関連産業の集積が始まっているという。地球温暖化で住みやすくなり、観光や食もあるので、北海道は日本で最も伸びしろがある地域だと述べた。千歳は数年前とは全く違う街になっているとも語ったが、土地を買うべきかと問われると、良し悪しへの言及は避けた。

47:40

経済安全保障とサプライチェーン

経済安全保障上の留意点については、「ものすごくある」と山際は答えた。素材からチップ製造、チップレット化、データセンターのラックに入るまでのサプライチェーンは非常に長く、その一つひとつが経済的威圧を受けないようにするのは大変だという。現在は、多少コストが上がってもリスクのある国からの調達をやめ、価値観を共有する「ライクマインデッド・カントリーズ」から調達できるよう進めている。高市政権の17重点分野それぞれに、期限を区切って「自立性」(立つほうの「自立」)を確保する目標を盛り込んでいる。ただし、これはすべてを国内で賄うという意味ではないという。全部を自国だけでやるのは無理なので、安定的に調達できる状況を作ることが目的だと説明した。

失敗したら誰が責任を取るのか

高橋が「失敗したら山際さんが辞めるのか」と迫ると、山際は、自分一人が責任を取っても国民の損失はなくならないと答えた。来年秋に間に合わなくても冬にできればリカバーできるので、できなくなるわけではないと思う、とも述べた。一方で、半導体は時間勝負だと強調した。高橋が「2カ月遅れならいいが、また失敗すれば第3次の失敗になる」と問うと、山際は「今はまだ大丈夫と言える状況ではない」と認めた。政治にできることは、現場が雑音なく開発に集中できるよう環境を整えることくらいだという。

開発を担っているのは日本人の技術者で、山際はこれを「侍」と表現した。40〜50代の、半導体戦争に負けて悔しい思いをした人たちが「夢をもう一度」と集まり、若い世代も加わって人材育成も進んでいるという。

51:38

AI戦略:汎用モデルではなく現場のAIで勝つ

最後に高橋は、OpenAIなどアメリカ勢が強いなかで、日本政府は国家としてどこまでAIに関与すべきかと尋ねた。安全保障上のリスクを考えると対抗手段を持たないのは怖い、という問題意識からの質問である。

山際は戦略はいくつかあるとしたうえで、ロボットをゼロから作れる国は「大胆に言うと中国と日本しかない」と述べ、日本には物づくりの技術が現場に残っていると強調した。すべてを統合した汎用の基盤モデルでは勝負にならなくても、特定の工場に合ったAIなら作れる。その分野は勝てるとして各社がすでに取り組み始めているという。有望な分野を問われると、自動車は間違いなく、ロボットの世界でも負けないと答えた。高橋が「どこの株を買っておけばいいか」と冗談交じりに尋ねたところで、字幕は途切れている。