地方テレビ局に未来はあるのか スーパー・ササダンゴ・マシンと高橋弘樹がNSTの課題を語り、「ReHacQ新潟」の始動に至るまで

YouTubeで開く ↗
概要

2026年9月27日、新潟総合テレビ(NST)が開いたNSTまつりの会場で、ビジネス動画メディア「ReHacQ」とNSTが初めて共同で公開収録を行った。テーマは「地方テレビ局の未来」である。登壇したのはReHacQプロデューサーの高橋弘樹氏、新潟で情報番組やラジオに出演するプロレスラーで実家の工場の経営者でもあるスーパー・ササダンゴ・マシン氏、そして進行役を務めたNST報道部長の丘山慶氏の3人だ。

20分で読めます

高橋氏は冒頭の前振りで、丘山氏が42歳で報道部長になったことを紹介した。高橋氏によれば、報道部長はふつう50歳前後で就くポストだという。若い部長が地方局で新しい取り組みをしたいと考えたことが、この対談のきっかけになった。議論は、ササダンゴ氏が切り出したNSTの不祥事の話から始まり、売上の減少、炎上への恐れ、バラエティ制作の不足、ローカル局ならではの稼ぎ方へと進む。最後には新チャンネル「ReHacQ新潟」の立ち上げが発表された。

8:16

本題の前に持ち出された「所得隠し」

自己紹介で丘山氏は、夕方のニュース番組で編集長を務めていると語った。ササダンゴ氏はそこで「報道人生で一番のスクープは何か」と尋ね、自ら「NSTの所得隠しじゃないですか」と切り込んだ。丘山氏は、その件では30分間カメラの前で説明したと答え、会場には気まずい空気が流れた。

ササダンゴ氏はこの件を単なる冗談で終わらせなかった。地方局だけでなくテレビや広告業界全体にとって大きな問題だと考えている、というのが氏の立場である。新聞はある程度報じたものの、県内のライバル局を含め、メディアが徹底的に追及したわけではなかった。出演者として関わってきた番組が問題の渦中にあったこともあり、何事もなかったように仕事を続けていてよいのかという思いがずっとあったという。ササダンゴ氏自身のところにも調査が来たと明かしている。丘山氏は、現在も進行中のものがあると認めた。

一方でササダンゴ氏は、この件をきっかけにNSTが大きく変わったとも話した。世代が一気に若返り、いろいろな現場で仕事をしてきた自分から見ても、今は風通しのよい会社になっているという。今回の企画が通ったこと自体がその表れではないか、というのが氏の見方だ。ReHacQと組むなら、まずこの問題に向き合わなければならないと考えて口にした、と本人は説明した。丘山氏は、若手から「ReHacQと組みたい」という声が上がり、会社も了承してすんなり実現したと経緯を語り、ササダンゴ氏の発言については「NSTを愛してくださっているからこその言葉と受け止めている」と応じた。

13:13

売上は10年で約70億円から50億円に

本題に入ると、高橋氏は打ち合わせ前に聞いた数字を紹介した。NSTの売上は10年で約70億円から50億円程度に減ったという。そのうえで高橋氏は、それでも大きな企業だとも指摘した。新潟の一等地に不動産を持ち、無料のイベントを開けばこれだけの人が集まるからだ。

局の成り立ちについても説明があった。新潟の民放は4局で、テレビ東京系列の局はない。NSTはもともと日本テレビ系とフジテレビ系のクロスネットで、のちに日テレ系やテレビ朝日系の局ができたという。最大株主はフジ・メディア・ホールディングスだが、創業したのは新潟の経済人だった。上場はしていない。高橋氏は、この人口規模のエリアで4局は多いのではないかと問いかけた。

丘山氏が課題として挙げたのはテレビ離れだ。SNSやYouTubeを見る人が増え、視聴率も年々下がっている。テレビを見る層が全体として減っていると感じており、ここ数年ずっと課題だと考えてきたという。

高橋氏は、ローカル局が成り立つ仕組みを補足した。キー局の番組を流すとキー局から協力金が入ること、そして電波を安く独占的に使えていることだ。ただ、キー局自身も苦戦しているため、この構造がいつまで続くかは危ういと高橋氏は述べた。

18:58

YouTubeと組むだけでは50億円の商売にならない

NSTの打ち手は何か。丘山氏は「デジタルとの融合」を挙げ、その一つがReHacQとのコラボだと説明した。ササダンゴ氏は、いきなり一番強い相手と組もうとしているところに危機感の強さを感じたと話す。

これに対して高橋氏は「マジレスすると」と前置きし、売上50億円の大きさを強調した。ビジネス動画メディアは全国を対象にしているが、50億円を売り上げる会社はない。PIVOTも届いていないと思うし、ReHacQも届いていない、と高橋氏は言う。全国に数百あるローカル局は、それぞれ数億から100億円規模の売上がある。だからYouTubeと組むだけでは、それに見合う大きな商売にはならないだろう、というのが高橋氏の見立てだ。テレビ局は本来稼げる存在であり、YouTubeを組み合わせることで、テレビ局がこれまでできなかったことをどう実現するかが課題になる、と整理した。

丘山氏の狙いは、これまでと違う層に届けることにある。若い世代や、テレビを持っていない世代だ。入社試験を受けに来る学生にもテレビを持っていない人がいるという。報道の立場からは、人の話をじっくり聞いて届けたいとも語り、最近では田中真紀子氏にもインタビューしたと紹介した。

21:19

テレビの公共性とネットの炎上は両立するか

ササダンゴ氏は、両者の性質の違いを問題にした。テレビは電波を安く使わせてもらっているぶん公共性と忠実性が求められ、苦情1本で番組が吹き飛ぶこともある。一方ネットでは、炎上や話題性のある人物への注目がそのまま「プラスのカウント」になってしまう。この二つを本当に両立できるのか、という問いだ。

丘山氏の答えは「挑戦」だった。燃えに行くつもりはなく、燃えないやり方を模索したい。炎上を完全に防ぐのは難しいかもしれないが、公式なテレビ局としてリスクをどう回避するかは考え続けなければならない、と述べた。

テレビとネットの両方を知る高橋氏は、異なる見方を示した。ReHacQも、放送法や公職選挙法を含め、テレビのコードで運営しているつもりだという。そのうえで高橋氏は、テレビ局が恐れる「炎上」は解像度が低く、その大半は「面倒くさい」という話にすぎないと指摘した。たとえば与党の人気が圧倒的な時期に与党を批判すれば批判が殺到し、人はそれを炎上と呼ぶ。しかしそれは、やってはいけない炎上なのか。選挙報道で反対陣営の候補者からクレームが来るのが面倒だ、という程度のことまで炎上と呼んでいるように見える、と高橋氏は言う。本当に問題になるのは、違法行為や名誉毀損、侮辱罪、公職選挙法違反のように法に触れるケースで、そうしたものはそれほど多くないというのが高橋氏の考えだ。文句を言ってくる政治家とその支持者が怒っても、恥じることをしていないなら「問題ない」と言えるかどうか。それがテレビがウェブと関わっていくうえで大事だ、と高橋氏は述べた。

丘山氏は、政治家の発言を扱ってクレームが来ることは多々あるが、それを理由に訂正することは絶対にないと応じた。そのうえで、どういう種類の批判なのかを見極める判断は重要であり、チャンネルの視聴者が広がれば普段接していない人たちからも声が届くようになるので、自分たちの判断の解像度を上げていくしかない、と話した。

27:56

敵は見えても、味方は見えない

ササダンゴ氏は、NSTの報道を外から見てきた経験を語った。若い記者たちは地元議員のスキャンダルや政治的な問題にかなり根性を入れて踏み込み、あとから議員が抗議の電話をかけてくることもある。ちゃんと戦っていると感じる一方で、取材段階で表に出なくなる話も結構あるようだという。テレビとして総合的に判断して流さないという決断もあるだろう。ただ、別の出し先があれば、相手の政治家は怒って大きな敵になるとしても、同時に味方も増えるかもしれない、とササダンゴ氏は考える。今のテレビは敵の存在を脅威に感じる一方で、実は大勢いる味方の姿が見えていない。問題がないと思っている人は、わざわざ声を上げないからだ。

ササダンゴ氏はさらに、新潟のテレビの「潜在的な登録者数」という見方を示した。新潟県の人口は約200万人、世帯数は80万から90万ほど。テレビ離れが言われるが東京ほどではなく、氏の感覚では、全局合わせると家庭の4〜5割でテレビがついている日も珍しくないという。東京は3割程度になることもある、と氏は比べた。県内にはおそらく100万台以上のテレビがあり、どのテレビにもNSTのチャンネルが入っている。テレビの作り手は登録者100万人のYouTuberにすぐひれ伏すが、自分たちは最初から200万人に届くボタンを持っている。もっと堂々としていいのに、とササダンゴ氏は語った。丘山氏は、SNSは好きなものを取りに行くメディアで、テレビは広く一般に届けるメディアだという違いは大きいと応じつつ、もう少し「味の濃いもの」も出してみたいと話した。

31:34

ローカル局は本気でバラエティを作っていない

高橋氏は、ローカル局の番組をジャンル別に評価した。まず報道は本当に大事だという。キー局にはできないし、Googleで手に入る情報でもないからだ。ただし報道はコストセンターで儲からない。大事だからこそ、それを生かすために別のところで稼ぐ仕組みが必要になる、と高橋氏は述べた。情報番組については、ローカル局は情報ワイドに命をかけていると評価した。

厳しかったのはバラエティについてだ。高橋氏の見方では、ローカル局がバラエティを本気で作っているとは思えない。NSTには自社制作があるだけ良心的で、自社制作すらしていない局もたくさんある。現場は頑張っていても、経営側が本気で若手を育て、場を与えようとしている局は少ないのではないか、と高橋氏は言う。丘山氏も、NSTに情報バラエティはあるが純粋なバラエティはなく、バラエティを頑張ろうとすると怒られることもあると認めた。

高橋氏がバラエティにこだわる理由は人材にある。バラエティの制作能力は演出力として情報バラエティを下支えする。それに、バラエティがなければ「面白いものを作りたい」と思ってテレビ局に入る人がいなくなり、コンテンツ制作の力が落ちていくのではないか、と高橋氏は懸念する。民放連賞や放送文化基金の審査で地方局の番組を見ると、東海や大阪の局に加えて、北陸の局にも毎年いい特番を作るところがあるという。力を入れている局は入れているのだ。

余力の問題について、高橋氏は「立派なスタジオと機材と人がいて、みんな給料をもらっている」と指摘した。この日の祭りにも相当な費用をかけられているのだから、余力はあるはずだという見方だ。給料を下げない前提で議論が始まることについては、下げればみんな辞めてしまうので大事な前提だとも述べている。ササダンゴ氏は、脂の乗ったディレクターが月に2本、ラーメン店を3軒回る12分のVTRを作るだけ、という働き方を例に挙げた。しかもそのVTRがよくできていて面白いのが厄介だという。だからこそ、もっと打席があってほしい。若い出演者も大勢いるし、今は東京からも昔より安く人を呼べる。チャンスをもっと作ってほしい、とササダンゴ氏は訴えた。

報道については、夕方のニュースが少しずつ評価を上げているという。ササダンゴ氏は、新潟には原発があり、政治家の不倫などのゴシップも定期的に生まれる「飽きない県」だと冗談めかして語った。丘山氏は、県内経済に関わる失敗などをもっと精査していきたいと述べた。

41:18

TeNYの成功とフジテレビの人材流出

ササダンゴ氏が紹介したのは、日本テレビ系のテレビ新潟(TeNY)の例だ。日本テレビにいる新潟出身の高橋利之氏(『行列のできる法律相談所』などゴールデン番組を立ち上げた人物として紹介された)がTeNYで次々に番組を作り、東野幸治氏やひろゆき氏、マツコ・デラックス氏を呼んだ特番がことごとく当たっているという。ササダンゴ氏自身も出演している。高橋利之氏の編集の指示やキュレーション能力によって、50代のベテランディレクターが息を吹き返し、それを見て若手も育っている。放っておくと差がつくのではないか、とササダンゴ氏は語った。

高橋弘樹氏は、同じことをフジテレビ系でやろうとしても難しいと述べた。フジテレビのバラエティのエースたちは辞めてしまったからだ。『ホンマでっか!?TV』の演出をしていた人物や、『人志松本の酒のツマミになる話』『すべらない話』に関わっていた人物が、いまはABEMAで番組を作っているという。一方で新潟のテレビ欄を見ると、視聴率を取っている面白い番組にはテレビ東京の番組が多い。テレ東のエッセンスが強い土地柄なので、テレ東出身の佐久間さんに頼んだほうがいいかもしれない、と高橋氏は冗談まじりに提案した。地元出身者に番組を作ってもらうという発想自体は有効だとし、新潟出身の作り手を探すべきだとも述べた。

45:07

ラーメン特番という現実と、配信事業者との共同制作

「高橋さんがNSTで番組を作るなら」と問われると、高橋氏はまず現実を示した。各地のローカル局の視聴率を分析したことがあり、行列のできるラーメン店の特番は15%、場合によっては20%を取るという。高橋氏はそれを「絶望」と表現し、毎月ラーメンを取材に行くのは正しいのだと認めた。

そのうえで高橋氏が提案したのは、配信事業者との共同制作だ。自分がローカル局のディレクターなら、ABEMAやNetflixと組んで全国に出す機会を作り、制作費をもらってやりたいという。テレビ東京がディズニーと組み、先にディズニーで配信してから地上波で放送するドラマを作った例も挙げた。Amazonプライム・ビデオ、そして「狙い目」だというDMM TVの名前も出し、お金を持っているところと組んで企画を通す仕組みを作るべきだと述べた。高橋氏は「YouTubeと組もうとしてるけど間違ってますからね。YouTubeは金ないですから」と、ReHacQと組もうとしているNSTの方向性そのものにも冗談めかして釘を刺した。ササダンゴ氏は、NSTの中に配信事業者と番組を作る発想はおそらくなかっただろうと述べた。

ブランディングと商売を両立させているローカル局の例として、高橋氏は東海地方の局のドキュメンタリーを挙げた。少なくとも採用やステーションイメージには効いているはずだという。ほかに『かまいたちの掟』や、古くは『水曜どうでしょう』の名前も出た。結論として高橋氏は、ヒットするIPを作らなければならないと述べた。

予算の話題も出た。ゴールデン1時間番組の制作費を問われると、最初は高額な数字が出て驚かれ、やり取りの末に300万〜400万円程度という話になった。高橋氏は1時間150万円程度を想像していたという。金曜19時台にはTeNYの高橋利之氏の番組が毎週放送されており、NSTは自社制作の特番を定期的にぶつけている。番組はほぼオールロケで作っているという。ただし丘山氏は「400万円が独り歩きすると困る」と話し、実際にはそこまでないと思うと付け加えた。

51:43

雪国と離島という素材

新潟ならではの企画として、高橋氏は自身が過去に作った番組を挙げた。視聴率は取れなかったが面白かったという、ヘリコプターでしか行けない場所を訪ねる番組だ。雪で道が埋まって孤立した集落へヘリで行き、買い物に行きたい人や孫に会いたいおばあちゃんを運ぶ。高橋氏によれば、この番組は後の『ポツンと一軒家』と同じチーフプロデューサーだったという。

ササダンゴ氏は、佐渡や粟島といった離島を挙げた。島で活動するYouTuberは人気があるのに、テレビは定期的には取り上げていないという。高橋氏は、2年交代で医師が赴任する島の診療所を扱い、離れられない医師を奥さんとデートさせた企画や、島では菓子パンが喜ばれるという話を紹介した。ただし話しながら、石川県の島と混同しているかもしれないと訂正している。

55:17

地方の企業ブランディング動画という空白

高橋氏は、バラエティを作る意義をもう一段掘り下げた。きっかけは「ReHacQ九州」を運営して気づいたことだ。地方には中央にはない広告の需要がある。テレビCMを流すだけでなく、企業と一緒にブランディング動画を作り、採用や切り出しに使ってもらうビジネスだ。高橋氏の見立てでは、PIVOTはゴールデン番組を2回作れるほどの金額でこうした動画を売っているのではないか。地方では単価は下がるものの、採用動画やブランディング動画を作りたい企業の需要がある。そして、そこを今は誰も取っていない。

ただ、地方局がそれを受注するには、地方にスタークリエイターがいることが分かりやすく見えなければならない、と高橋氏は言う。地方にも優秀なCMクリエイターは大勢いるが、名前を売る手段がない。テレビで毎週放送される番組の作り手になれば名前が立つ。しかも放送法の縛りがあるため、テレビでは広告色のある動画は作りにくいが、YouTubeならそれができる。「この番組を作っているクリエイターと一緒に、御社のブランディング動画を作りましょう。うまくいけば地上波で取り上げられるかもしれません」と提案すれば、1本数百万円で売れる気がする、と高橋氏は述べた。北海道で『水曜どうでしょう』の藤村忠寿氏が作るとなれば企業は必ず乗る、という例も挙げている。一方で、そうした作り手は独立して辞めてしまいがちだという難しさにも触れた。

ササダンゴ氏は、新潟ならまだ「NSTが作る」という看板自体がスタークリエイターに匹敵する力を持つかもしれないと応じた。テレビで流れる企業紹介は当たり障りのないきれいなものばかりで、知りたい情報に届かない。根性のある報道記者が経営者や会社について、新潟の課題に何ができるかまで、尺を取って掘り下げる動画には価値があるはずだ、と話した。

59:49

「ここを切られました」という企画

話題はニュースの尺に移った。田中真紀子氏のインタビューは、当初「1時間以内」と言われたのが1時間半ほどに延びたが、テレビで流したのは約10分だった。ニュース番組としては長めだという。ネットでは全編を公開し、よく回ったと丘山氏は振り返る。記事についても、通常のニュース原稿に加え、記者が書き足りなかった思いを長めの読み物にしてウェブに出すことがあるという。

丘山氏は、記者が丹精込めた素材を自分が「ここいらない」と切ることに、記者が怒りを抱くこともあると認めた。自分も若手の頃、なぜここを切るのかと思ったことがあったという。

ここからササダンゴ氏が提案したのが、切られた部分を復活させる企画「ここを切られました」だった。記者が丘山氏のパネルを後ろに置いて「こいつに削られました」と紹介する、プロレスのような構図だ。YouTubeでは何も切らないのだから、これはテレビにしかできない、と高橋氏も乗った。高橋氏はさらに、どこを切りどこを伸ばしたのかを当てる「クイズ 丘山が切りました」を提案した。視聴率だけでなく、視聴者のために比較考慮した結果こちらを選んだという判断は、NSTのニュースに対する考え方そのものだ。それを見せればニュースへの理解や没入感が上がる、というのが高橋氏の説明である。丘山氏は「パソコンに向かう手が震える」と苦笑した。

1:06:21

会場からの質問:深夜番組の記憶と、作る動機

質疑応答では、まずNSTファンを名乗る来場者が、かつて金曜夕方に生放送していたバラエティ番組(字幕では「八千代ライブ」)を「壮大な生コント」として挙げた。出演者陣は、フジテレビの『全力!脱力タイムズ』をさらに脱力させて生でやっていたような番組だったと振り返った。若い層には人気があった一方、テレビをよく見る年配層にはまったく受けず、時代の流れの中でなくなったという。高橋氏は、今ならOTTと組んで全国に発信すれば話題になるクオリティだったのではないかと述べた。

別の来場者は、キー局の番組を流せばお金がもらえるのに、それを捨ててまで地方局がバラエティを作る動機は何かと尋ねた。高橋氏の答えは「長期的には人材のため」だった。自社制作をやめて作り手がいなくなれば、人が入ってこなくなる。そうなれば高い給料も維持できない。地元の優秀な人材が来る企業であり続けるには、作りたいと思える番組が必要だ。高橋氏はさらに踏み込み、正直に言えば4局はいらないし、北陸にこれほどの局は必要ない、と述べた。行政で道州制が議論されるように、広域免許で北陸全体にNHKと民放2〜3局あれば足りるというのが経済の論理だ。それに抗って自分たちの待遇を守るなら、人材の質を高めるしかない。作り手のいない会社がIPを作れるはずがない、と高橋氏は話した。

3人目の来場者は、新潟でしかできないバラエティがあれば見たいと話し、ササダンゴ氏が出演する番組を毎週見ていると伝えた。高橋氏は、米山隆一氏をMCにした番組を提案した。ササダンゴ氏は、新幹線でよく見かける米山氏が東京駅で中指を立てられても毅然と歩いていく姿を美しいと感じたと語り、知事時代は制作スタッフの間でも評判がよかったと紹介した。ただし米山氏は現職の政治家であり、選挙の候補者になり得る人物はテレビに出しにくい、という壁があることも話題になった。

1:15:47

「ReHacQ新潟」の発表と、まだ見えない形

終盤、丘山氏が台本どおり「重大発表」としてReHacQ新潟の立ち上げを告げた。高橋氏は収録の10分前にチャンネルを作ったと明かし、会場の約300人に登録を呼びかけた。最初にやるべき番組として挙げたのは、やはり「丘山が切りました」だ。ササダンゴ氏は、数週間前の打ち合わせではこの話はまったくなく、この日に知ったと驚いていた。

チャンネルの規模感も語られた。1年ほど前に始めたReHacQ九州の登録者は約10万人で、NSTの公式YouTubeはニュースと公式を合わせて13万人ほどだという。NSTは制作と報道でチャンネルを分けている。ReHacQ新潟の方向性について、高橋氏は60年分の映像アーカイブを生かしたいと語った。田中角栄氏の音声、集団就職や出稼ぎの時代に冬にバスで帰省する人々の映像、そして米山氏の知事時代の会見をすべて1本ずつ出すだけでも話題になるはずだという。ササダンゴ氏は、保守層が強い新潟で米山氏が知事になったこと自体が奇跡的だったと振り返った。

ササダンゴ氏は、東京では怖くて話せないReHacQの出演者とも、新潟でなら話したいと語った。新潟にサウナを作っているという「箕輪さん」とも、新潟でなら毒が抜けた話ができるはずだという。高橋氏は、ササダンゴ氏がReHacQ新潟に関わる可能性にも触れ、テレビの収録後に30分もらえれば撮れると話した。新潟ゆかりの出演候補として、川合俊一氏や高橋克実氏の名前も挙がった。

丘山氏は、ReHacQ新潟がどんな形になるのかは正直想像がつかないと認めた。それでも、テレビとの融合から新しい世界を見たい、と挑戦の意思を示した。ササダンゴ氏は、テレビは見たことのないものを見せ続けなければならないメディアだと語った。耳は聞いたことのあるものを聞きたがるが、目は新しいものを見たがる。普段のニュースに新しい視点がつけば、テレビもネットも両方見たくなるかもしれない、という見方である。

収録は予定を25分以上延長して終わった。終わりが見えた途端に明るくなった丘山氏について、ササダンゴ氏は、ReHacQ新潟を始めると言ったときに会場がどう受け止めるかを心配していたのではないかと推し量った。丘山氏は「ずっと心配でした」と認めた。地方テレビ局に未来はあるのか。その問いへの答えは、この日始まったばかりの新チャンネルで、何がどこまで実現するかにかかっている。