ホンダCR-VのPCUを分解し、前世代フィットとの設計の違いを見る

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概要

この動画では、北米版6代目ホンダCR-Vから取り外したパワーコントロールユニット(PCU)を分解し、使われている技術と、以前に分解したフィットのPCUからの変化を調べている。CR-Vは日本でも2026年2月から販売されるという情報があり、話者は、パワートレインの仕様が大きく変わっていなければ日本版にも同じPCUが載る可能性が高いと見ている。このPCUはフィットのものより新しい世代にあたる。話者の結論は、全体としてかなり最適化されている一方、この形式のパワーモジュールでは改良の余地がほとんど残っていないのではないか、というものである。

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ハイブリッド方式のおさらい

分解の前に、話者は各社のハイブリッド方式を簡単に整理している。トヨタのTHSⅡはシリーズ・パラレル方式で、動力分割機構を通してエンジン、発電機、モータの動力を分配し、駆動輪を回す。日産のe-POWERはシリーズ方式で、エンジンは発電機を回すだけで、駆動輪は基本的にモータだけで回す。話者はこれを、3つの中で最も電気自動車に近い方式としている。

ホンダのe:HEVはトヨタと同じくシリーズ・パラレル方式に分類されるが、動作はシリーズ方式に近い。特徴は、速度域が高いときにエンジンと駆動輪を直結して走るモードを持つ点である。話者は、実態としては「シリーズ・パラレル切り替え方式」と呼ぶ方が適切かもしれないと述べている。

外観、端子、フィットとの寸法比較

PCUはケーヒン製で、見た目はよくあるインバータである。北米版CR-Vの電動機出力は133kW、発電機出力は約120kWで、PCUはその電力を変換できる大きさになっている。

端子は次のように配置されている。まず駆動用バッテリーの入力端子があり、バッテリー電圧はハイブリッドで262.8V、プラグインハイブリッドで347.5Vである。次に車内電装品用の12V出力端子がある。PCU内部には、約260Vの駆動用バッテリー電圧を12Vまで降圧する回路が入っている。その横に冷却水の出入口がある。底面には、駆動用と発電用の三相モータにつながる端子が2つある。底面をよく見ると、PCU自体を制御する信号をやり取りするためのコネクタも付いている。

フィットのインバータと並べると、幅はCR-Vの方が広く、高さはCR-Vの方が薄い。フィットは上面からコネクタを出す構造のため、高さ方向の寸法がどうしても大きくなる。CR-Vは下からコネクタを出す構造なので、その分薄くなっていると話者は見ている。モータへの端子もどちらも底面から出ているため、話者は、コネクタ類を底面にまとめる方がスマートで、PCU上部のスペースも有効に使えると評価する。実際に北米版や国内販売予定のCR-Vでは、PCUの上部スペースをインテークが通る配置になっている。これは上からコネクタが出ていないからこそできる配置だという。

3層構造の内部

天板を外すと、2階建てのプリント基板が現れる。基板を外すとパワーモジュールがあり、その横にフィルムキャパシタが並ぶ。パワーモジュールは、以前分解した世代のものよりかなり小さい。フィルムキャパシタとパワーモジュールを外すと、冷却水の流路が見える。

底面側の蓋を外すと、駆動用バッテリーの端子から入った電力がラミネートバスバーを通り、フィルムキャパシタやパワーモジュールを含む各部品へ分配されている。ここにはインダクタとDC/DCコンバータもある。インダクタはバッテリー電圧を昇圧する双方向コンバータの一部で、入力1つに対して巻線が2つある。そのため話者は、昇圧コンバータがインターリーブ制御をしているかもしれないと推測する。前の世代のDC/DCコンバータはごちゃついた印象だったが、今回はすっきりしているという。インダクタとDC/DCコンバータの下にも冷却水の経路がある。

全体を整理すると、PCUは3層構造になっている。上層には、フィルムキャパシタ、パワーモジュール、その上のゲートドライブ回路と制御基板がある。中央には冷却水が通るアルミブロックがある。下層にはDC/DCコンバータとインダクタがある。

6代目CR-Vのe:HEV構成と2段階のエンジン直結

話者は6代目CR-Vのe:HEV構成を調べ、電気系は従来から大きく変わっていないと説明する。バッテリー、DC/DC、双方向コンバータがあり、2つの三相インバータがモータと発電機をそれぞれ動かす。大きく変わったのは機械系で、これまで1段だったエンジン直結を、北米版CR-Vでは2段階に変速できるようになった。

e:HEVは基本的にバッテリーの電力でモータを回して走る。電力が足りないときはエンジンで発電機を回し、その電力でモータを回す。速度が高い領域ではエンジンを駆動輪に直結して燃費よく走る。従来は直結モードが高速域に限られていたが、CR-Vではクラッチの開閉でハイギアとローギアを選べる。低速で直結するときは一方のクラッチを、高速で直結するときはもう一方のクラッチを閉じる。これにより、幅広い速度域でエンジン直結による効率のよい走行ができるという。

エンジン直結中もモータや発電機は止まっているわけではなく、エンジンを最も効率のよい動作点で動かすための協調制御をしている。エンジンの負荷が重すぎればモータを力行させてアシストする。負荷が軽すぎれば回生動作にして、エンジンのエネルギーと車体の運動エネルギーをバッテリーに回収し、エンジンに適切な負荷をかける。この制御をモータ側と発電機側のどちらで行うかについて、話者は調べても分からなかったとしている。そのうえで、最も効率の高い方法を取っているはずで、おそらくモータ側だろうと推測している。

制御基板とゲートドライブ基板

パワーモジュールの上の基板は2枚構成である。上が制御基板、下がパワー半導体を駆動するゲートドライブ基板で、下の基板にはセンサも載っている。

制御基板のマイコンはルネサスのR7F701275で、デュアルコアのハイエンド車載マイコンである。モータの回転角を検出するレゾルバ用の変換回路もこのマイコンに内蔵されている。

ゲートドライブ回路は1枚の基板にまとまっている。基板上に並ぶ大きめの部品は、ゲートドライブ回路に電源を供給するための変圧器で、絶縁距離もしっかり確保されている。話者によると、上側アームのパワー半導体はスイッチング状態によってエミッタの基準電圧が変わるため、個別の絶縁電源が必要になる。そのため素子の数だけ変圧器が要る。下側アームはエミッタの基準電圧が共通なので、例えばインバータの下側アーム3つ分のIGBTは1つの絶縁電源で賄える。ただしその変圧器は3素子分の電力を供給するため、サイズが大きくなる。

裏面のゲートドライブICはロームのBM60059である。話者によると、ロームのゲートドライバICはよく使われている。データシート上の絶縁方式は磁気結合で、IC内部に変圧器を駆動する回路を持っている。外付けFETは必要だが、このIC1つでゲートドライブ用電源も作れる便利なICだと話者は説明する。

基板にはホールセンサ用ICも載っている。このICはパワーモジュールの中に挟み込まれ、バスバーのすぐ近くに位置する。バスバーを流れる電流が作る磁束を読み取り、電流値に変換する仕組みだ。外からは見えにくいが、パワーモジュール内にはバスバーを一周囲む鉄系のコア材が入っている。

上下の基板をつなぐ可動コネクタ

話者が「かなり面白い」と注目したのが、制御基板とゲートドライブ基板をつなぐコネクタである。このコネクタは手で動かすと大きく動く。基板を外して確かめると、動くのはゲートドライブ基板側のコネクタだった。調べると、イリソ電子工業のZ-Moveという独自技術を使った製品だと分かった。

コネクタはX方向とY方向に動く。話者はこれを、嵌め合い時の位置ずれを吸収するための機構と見ている。この機構があれば、基板同士を接続するときにこじる力が生じにくく、はんだ付け部や端子接触部へのストレスも減らせる。

コネクタはZ方向にも動く。話者はこちらについて、位置ずれの吸収よりも、基板の振動や共振の影響を抑えることが目的だと推測している。車体から振動が伝わると基板全体が揺れる。基板はしっかり固定されているので影響は小さいが、条件によってはコネクタの接点が摺動する。摺動が続くと接点が摩耗し、信号がうまく伝わらなくなることがある。このコネクタは本体が動いても接点は固定されたままなので、長期的な信頼性が保たれるようだと話者は説明する。

話者は機械的な共振にも触れている。基板の一部だけが激しく振動する現象で、板の振動が作るクラドニ図形を思い浮かべると分かりやすいという。突然現れた共振モードで接点が摺動し、すぐに摩耗してしまう事態も、この構造なら避けられるという見立てである。

フィットの制御基板との比較

前世代のフィットと比べると、話者は全体にかなり最適化された印象を受けている。フィットは基板1枚構成で、モータ制御用にルネサスのマイコンを2個使っていた。CR-Vは低電圧の制御基板と高電圧のゲートドライブ基板に分かれている。そのため絶縁距離を過度に気にする必要がなくなり、レイアウトがすっきりした。マイコンは2個から1個に減り、パッケージはQFPからBGAに変わった。こうした最適化の結果、プリント基板の面積は約20%減っている。

外部通信用コネクタの扱いも変わった。前世代ではコネクタが基板に直接実装されていた。新世代では小型のコネクタを基板の横から出し、PCU内をケーブルで引き回して底面のコネクタにつないでいる。話者は、このコネクタの高さ分だけPCUを低くできたのではないかと推測している。

パワーモジュールとフィルムキャパシタ

パワーモジュールはフィルムキャパシタのすぐ近くに置かれている。フィルムキャパシタから出たバスバーが最短距離でパワーモジュールにつながっている。キャパシタから半導体までの距離が短いので、ループインダクタンスもかなり小さくできているだろうと話者は見ている。

パワー半導体は2in1構成で、仕切られた部屋ごとに配置されている。中央の2つが双方向コンバータ用、その両隣の3つずつが2つのインバータ用である。パワー半導体とバスバーははんだ付けでつながっている。

チップの大きさは用途によって異なり、一方のインバータのチップはもう一方の約1.8倍の大きさがある。車体から取り外したわけではないので、どちらがモータ用でどちらが発電機用かは分からないと話者は断っている。そのうえで、モータの方が出力もトルクも大きいので、大電流に対応するために大きいチップを使っている可能性を挙げている。

モジュールの裏側には冷却フィンが密なピッチで並んでいる。フィンは均等ではなく、ところどころに大きなフィンがある。話者は、この配置の理由は分からないとしている。基本的にはチップの直下にフィンがあるので、空いた広いスペースも活用して大きめのフィンを置き、冷却水へより多くの熱を逃がそうとした設計ではないかと推測している。

前世代パワーモジュールとの比較

前世代品と並べると、まず配置が違う。新しいものはパワーモジュールとフィルムキャパシタが横に並ぶ。前世代はパワーモジュールが上、フィルムキャパシタが下の縦積みだった。この違いが薄型化に効いていると話者は説明する。

パワーモジュール自体も大幅に小型化した。前世代は各部屋に半導体チップが1つだったが、新しいものは各部屋に2チップ入っている。

キャパシタからチップまでをつなぐ銅バスバーの配置も大きく変わった。前世代では、キャパシタから伸びたバスバーがモジュールの両端に接続され、そこからさらにモジュール内部のバスバーを通ってチップに至っていた。話者は、これでは経路が長く、ループインダクタンスが大きくなると指摘する。配線1cmあたりの自己インダクタンスは10nHと言われるので、長い経路は不利になる。新しいものでもモジュール内をバスバーが通るが、その距離は前世代より圧倒的に短く、この点は大きく改善されたと評価している。

冷却構造も違う。前世代はパワーモジュールにウォータージャケットが付いていた。新世代はアルミブロックに冷却水路を設け、パワーモジュールでその水路に蓋をする設計になっている。話者はどちらが優れているかの判断は保留しつつ、部品点数が少ない新世代の方がコストは安く済みそうだと述べている。

モータへの接続端子も変わった。以前は銅線に圧着した端子に、モータ側のコネクタをねじ込む構成だった。新世代は圧力による接続で、分解すると中にバネが入っていて、端子を押し付ける構造になっている。この部分は動く必要があるため、すべてをバスバーで作らず、逃げの動きができるように編み込みの線材を使っている。話者はその接合部について、超音波接合が使われているのではないかと推測している。

昇圧コンバータのインダクタ

下層のインダクタは、1つのコアに2つの巻線を巻いた構成である。バッテリーからの入力端子は2つの巻線で共通で、出口側の2つの端子は別々にパワー半導体へつながっている。巻線には、密に巻いて体積を減らすため平角線が使われている。2つの巻線は互いの磁束を打ち消す向きに巻かれている。話者はこの構成と接続から、昇圧コンバータが走行状況に応じてインターリーブ制御をしていそうだと改めて推測している。インダクタの裏側は冷却水路になっていて、冷却フィンは円柱形状である。

CR-Vのインダクタはフィットのものの約2倍の大きさがある。話者は、CR-VのPCUの方が電力容量が大きいのは当然で、コンパクトカーとSUVの容量差が明確に表れる部分だとしている。

余談として、話者はフィットのDC/DCとインダクタの載せ方を「結構変」だと振り返っている。フィットではDC/DCとインダクタが一体になっていて、しかもインダクタがさらに別に外せる構造で、ゴムパッキンを4つ使っていた。部品の搭載効率や組み立て性はあまりよくなさそうだったという。CR-VではDC/DCとインダクタが別々のコンポーネントになり、ゴムパッキンもそれぞれ1個ずつ、合計2個に減っている。

12V DC/DCコンバータ

DC/DCコンバータは、駆動用バッテリーの高電圧を12V系機器向けに変換する回路である。取り外せるプリント基板にほとんどの部品が載っていて、背の高いスルーホール部品が多い。話者は、シリコーンを充填して、振動による部品脱落やはんだクラックを防いでいるのだろうと推測している。トヨタ5代目プリウスのDC/DCコンバータと比べるとスルーホール部品が多く、特にフィルムキャパシタを多用している分、回路の体積が大きい。5代目プリウスではコンデンサのほとんどがMLCCに置き換えられているという。

基板の下の層には、プリント基板に実装できない大型の磁気部品と半導体部品が並ぶ。話者は入力側から出力側へ順にたどっていく。中継基板を外すと、新電元のMG051Dが現れる。話者はこれをMOSFETモジュールではないかと見ている。DC/DCコンバータの回路構成自体は前世代から大きく変わっていない。ただし前世代ではこの部分にディスクリートのパワー半導体を使っていたのに対し、今回はモジュール化によって実装面積を大幅に減らしている。モジュールの裏面には熱伝導グリスが塗られ、アルミへ熱を逃がしている。

その先の変圧器は、1次側巻線が平角線、2次側巻線がバスバーで、巻線とフェライトコアの熱を逃がすために熱伝導シートが挟まれている。変圧器の後には出力チョークコイルと整流用パワーモジュールがあり、チョークコイルとフィルムキャパシタのアレイでフィルター回路を構成している。

整流用モジュールは新電元のダイオードモジュールで、3並列のダイオードが2セット入っている。話者はこれをショットキーバリアダイオードだろうと見ており、スナバ回路も同じパッケージに入っている。前世代は、サンケン電気のショットキーバリアダイオードをアルミ基板に実装する形だった。話者は、モジュール化によっていろいろな点が改善されたと評価している。

主要なパワー半導体には新電元のモジュールが多く使われている。話者は余談として、新電元にはTWシリーズというDC/DCコンバータモジュールがあり、この基板にもTW109と書かれていること、そして新電元の筆頭株主がホンダであることを挙げる。そのうえで「予測の域を出ない」と断ったうえで、このDC/DCコンバータを新電元が設計している可能性を指摘している。

基板裏側の冷却フィンの設計手法は不明だが、パワー半導体が載る部分だけ溝が深くなっていて、より多くの熱を逃がせるようになっている。

この形式のパワーモジュールの行き着く先

話者は、北米版6代目CR-VのPCUはフィットなど前世代と比べて全体的に最適化されており、小型化と高パワー密度化に貢献していると評価する。そのうえで、ここからさらに良くするには、そもそもこのタイプのパワーモジュールを使うのが正解なのかを考える必要があると述べる。今回のような形式のモジュールを使い続けるのか、トヨタのように両面冷却できるパワーカードを積層する方式にするのか、という問いである。話者は、今回のようなパワーモジュールを使う方式はかなり行き着くところまで来ていて、ここからさらに改良するのは難しいのではないかと、分解しながら感じたと語っている。