円錐形のコイル「コニカルインダクタ」は本当に広帯域か:原理の解説と自作品の測定

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概要

この動画では、円錐形に巻かれた珍しいインダクタ「コニカルインダクタ」を取り上げる。コニカルは日本語で「円錐形の」という意味で、その名の通り円錐状に巻線が広がっていく形をしている。話者によれば、電子回路設計をしている人でも、実物を見たり使ったりした経験のある人は少ないという。インダクタとしての基本的な働きは通常のコイルと変わらない。では、この形にするとどんな利点があるのか。動画はまず高周波アンプを例にインダクタの役割を説明し、次に自己共振という課題を整理する。最後に自作したコニカルインダクタを測定し、通常のソレノイドコイルと比べている。

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なぜ円錐形にするのか

一般的なインダクタは、ソレノイド状に巻いたもの、一か所に集中して巻いたもの、フェライトコアなどの磁性体に巻いたものが多い。話者は、わざわざ円錐形にする理由を「インダクタとして動作する周波数帯域を広くするため」と説明する。この広帯域性がなぜ必要になるのかを示すため、動画ではコニカルインダクタが使われうる回路の例として高周波アンプを取り上げる。

高周波アンプに電源を直接つなぐと何が起きるか

例として示されるのは、左からRF入力、トランジスタ、RF出力と並ぶ高周波アンプである。実際の回路は信号源とトランジスタだけでは動かず、トランジスタに直流バイアスをかける回路と電源が必要になる。電源ラインには、平滑化や電源ノイズをグラウンドへ逃がすためのキャパシタがぶら下がっている。

ここで話者は、バイアス用の電源をトランジスタに直接つないでよいのかを問う。試しに直結した場合、直流で見ればトランジスタは問題なくバイアスできそうだ。しかし交流信号で見ると事情が変わる。高周波の入力信号は結合キャパシタを通ったあと、トランジスタと電源側の両方につながる。電源ラインのキャパシタは周波数が高いほどインピーダンスが低くなるため、高周波信号はトランジスタではなくバイパスコンデンサの方へ流れてしまう。そうなるとトランジスタでは信号を増幅できないか、できてもゲインが低くなりそうだ、というのが話者の見立てである。

電源側から見た問題も挙げられている。電源にノイズがあると、キャパシタで取りきれなかった成分がトランジスタ側へ伝わり、増幅されたり、RF信号側に回り込んだりするおそれがある。話者は、電源を直結するとバイアスはかけられても信号の増幅は難しいとまとめている。

インダクタを入れた構成とバイアスティー

次に、電源とトランジスタの間にインダクタを入れた場合を考える。インダクタは直流を通すので、トランジスタのバイアスは問題なくかけられる。一方、交流信号に対しては高いインピーダンスを持つため、RF信号はインダクタ側には流れず、トランジスタへ向かう。これで信号をうまく増幅できそうになる。

出力側にも同じようにインダクタを入れる。こうすると増幅された高周波信号は電源側へ流れず、RF出力へきちんと出ていく。話者は、このようなインダクタと直流ブロック用キャパシタを組み合わせた回路を「バイアスティー」と呼ぶと補足している。

インダクタは何でもよいわけではない:自己共振周波数

ただし、この位置に使うインダクタは何でもよいわけではない。アンプの動作周波数にもよるが、広帯域で動くアンプなら、インダクタも広い周波数帯域でインダクタとして振る舞う必要がある。話者は、自己共振周波数はなるべく高いことが求められると述べたうえで、より正確には「動かす周波数の中に自己共振周波数がないように設計する」と言い直している。

自己共振が起きる理由として、話者は巻線どうしの間にpF単位の静電容量があることを挙げる。理想的なインダクタはLの成分だけだが、実際のインダクタには巻線の抵抗があり、さらに巻線間の静電容量が並列に入った形になる。周波数が低い領域ではインダクタとして動作するが、ある程度高くなるとキャパシタのインピーダンスの方が低くなり、実質的にキャパシタのように振る舞う。先ほどのアンプ回路では、信号の周波数帯でインダクタが自己共振を起こさないことが重要になる。

ソレノイドとコニカルの違い(定性的な説明)

ここから話者は「定性的な話」と断ったうえで、通常のソレノイドインダクタとコニカルインダクタの違いを説明する。

ソレノイドインダクタは、各ターンの直径やピッチがほぼ均一である。そのため巻線間の寄生容量もほぼ均一になり、コイル全体が一つのLC共振回路として振る舞う。その結果、ある特定の周波数で自己共振を起こし、それより高い周波数ではインダクタとして機能しなくなる。

コニカルインダクタがなぜ広帯域で動作するかについては、いくつかの見方があると話者は紹介する。一つは、ターンごとにインダクタンス値や巻線間容量が異なるため、共振点が分散するという考え方である。もう一つは、直径の小さい部分から太い部分までが、それぞれ異なる周波数帯域を分担しているという考え方である。どちらの見方でも、広い周波数帯域でインダクタとして動作し続ける点がコニカルインダクタの特徴だとしている。

自作コニカルインダクタの測定方法

動画の後半では、話者が自作したコニカルインダクタの帯域を実際に確かめる。先ほどのアンプ回路のようなバイアスティー構成での使用を想定した測定回路にインダクタを組み込み、NanoVNAにつないでSパラメータを測定した。見たのはS11とS21で、横軸は50kHz〜900MHzの周波数、縦軸はdBである。

話者はSパラメータの詳細な説明は省きつつ、この測定での見方を簡単に説明している。S11は信号がどれだけ反射するかを示し、今回は基本的に低い方がよい。信号を入れても何も返ってこないのが理想である。S21は入力ポートから出力ポートへ信号がどれだけ伝わるかを示し、今回は直流以外でなるべく0dBに張り付いているのが望ましい。入れた信号が減衰せずにそのまま出力から出てくるのが理想ということだ。

コニカルインダクタの結果:837MHz付近の落ち込み

低い周波数ではインダクタのインピーダンスも低い。そのため信号入力とグラウンドが、インダクタの巻線抵抗を介してつながった短絡に近い状態になる。信号は線路の途中で反射してS11が大きくなり、出力まで届かずに減衰するのでS21は小さくなる。低域の特性が悪いのはこのためだと話者は説明する。

さらに周波数を上げると、837MHzの地点で変化が現れた。S11が大きくなり、S21が小さくなっている。話者はこれを、インダクタのインピーダンスが下がり、巻線間容量によって直列共振的な動作になっている「可能性がある」と解釈している。つまりこの付近では、入力信号が反射して戻り、出力ポートに届くまでに減衰して振幅が小さくなっている。

一方で話者は、共振点は確かにあるものの、それより上の周波数でも「もしかしたら」インダクタとして動作しているようだ、とも述べている。本来は次の共振点が見えるところまで高い周波数を調べたかったが、数十GHzまで測れるネットワークアナライザーが手元になく、今回は見送ったという。

ソレノイドインダクタとの比較

比較用に、コニカルインダクタと似た直径で、ターン数もほぼ同じに揃えたソレノイドインダクタも測定した。話者によれば、結果はコニカル側の特性の方が良くないのではないか、というものだった。

低域では、ソレノイドの方がコニカルよりインダクタンス値を大きく取れる。そのため低域での特性の落ち込みが小さい。途中の350MHzと550MHz付近に共振点のようなものが見え、S21も少し下がるが、低下は0.5dB程度で実用上は問題なさそうだと話者は評価している。コニカルインダクタで見られた840MHz付近のS21の落ち込みも、ソレノイドには現れなかった。

この結果から話者は、900MHzまでの範囲ではソレノイドの方が良い結果に見えると述べる。コニカルインダクタを使う目的は広帯域でインダクタとして働かせることにあるが、少なくとも今回測定した900MHzまでの帯域では、その広帯域性の利点は確認できなかったと結論づけている。

結論と今後の課題

話者は、測定系の問題や製作上の点から、思い描いたようなコニカルインダクタにはならなかったと振り返る。それでも、コニカルインダクタの動作原理と、なぜ広帯域で使えるとされるのかについては理解できたのではないかとしている。

実際に巻いてみたところ、コニカルインダクタは作るのがかなり難しかったという。話者は、巻き方やテーパー比を変えたり、より高い周波数まで測定できる環境が揃ったりしたら、改めて挑戦したいと述べて動画を締めくくっている。900MHzより上の帯域でコニカル形状の利点が現れるのか、製作方法を改善すれば低い帯域でも差が出るのかは、今回の実験では未確認のまま残された。