JR九州×SBIの金融参入は地銀に何をもたらすか:BaaSと預金争奪の行方
PIVOT 公式チャンネルJR九州がSBIグループと組み、金融スーパーアプリ「JQ BANK」を共同開発して2027年度中に提供すると発表した。PIVOTの速報解説では、『捨てられる銀行』シリーズの著者で経済ジャーナリストの橋本卓典氏が、この提携の意味を読み解いた。中心となる問いは二つある。鉄道会社が金融に乗り出す流れはどこまで広がるのか。そして、強力な新規参入者を前に地方銀行はどう戦えばよいのか。橋本氏は、今回の提携は預金の集め方という競争の前提を変え、地銀の再編を促す余波を生みうると見ている。
民営化した旧国営会社が自前の経済圏を目指す流れ
聞き手は、橋本氏がこのニュースが出る前から地方の鉄道会社を地域金融の「台風の目」として挙げていたことに触れ、今回の提携は既定路線だったのかと尋ねた。橋本氏は大きな流れとして説明する。民営化した旧国営会社は自力で生きていかなければならず、自前の経済圏を築こうとするのは当然だという。
その手段として今回使われるのが BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)だ。銀行が銀行でない事業者に銀行機能を提供し、鉄道会社は銀行ではないまま、その機能を自社の看板で提供する。橋本氏は、銀行側と鉄道側の思惑が一致したこの流れはJRにとどまらず、私鉄にも続いていくと見る。さらに、これが預金の集め方という競争の考え方そのものを変えるため、既存の金融機関、とくに地銀の再編や、預金が集まらないことによる再編といった余波を多くもたらすと述べた。
なぜJR九州で効果が大きいのか:非運輸収入6割という構造
JR九州の取り組みが先進的なのかという問いに対し、橋本氏はまず、JR東日本がすでにBaaSで金融を提供し、JR西日本も2027年度に始める予定であることを挙げ、JR九州の参入も一つの流れの中にあると位置づけた。
そのうえで、JR各社の収益構造の違いを説明した。橋本氏によれば、JR東日本とJR西日本は運輸収入と非運輸収入がおおむね半々で、利益も半々程度のイメージだ。JR東海はドル箱路線を持つため運輸が約8割を占め、非運輸の貢献は2割程度にとどまる。これに対してJR九州は運輸が4割で、非運輸への依存度が6割あるという。
橋本氏は、非運輸への依存度が高いことは顧客接点が非常に多いことだと言い換えられると述べる。ホテルや流通などで顧客との接点が多いところにBaaSを持ち込めば、効果も大きいはずだという見立てだ。今後注目する対象としてはJR北海道とJR四国を挙げ、運輸収入が8割のJR東海も、長期的には非運輸で収益の柱をどう作るかが課題になるため、この動きが広がる可能性は大いにあると語った。
組み込み型金融の歴史と、人口減少に縛られるインフラ企業
日本の鉄道会社は小売や不動産に手を広げてきたが、これからの本丸は金融なのか。この問いに対し、橋本氏は金融サービスを本業に組み込む考え方自体は古いと説明する。自動車ディーラーで組める自動車ローンがその例で、「組み込み型金融」と呼ばれる概念は昔からあった。ただ、かつては紙の書類を処理して審査していた。
転機として橋本氏が挙げるのは、2007年のiPhone登場以降の流れだ。2010年代に欧州で、銀行以外の事業者にも金融を扱わせてよいのではないかという考えから、APIで銀行システムに接続して銀行機能を使わせる規制緩和が広がった。日本でも2017年の改正銀行法でこれが大きく広がり、BaaSの流れが生まれたという。
橋本氏は、この流れが鉄道だけでなく、ガス会社や電力会社、通信会社にも及ぶと見る。これらの業種は顧客接点が非常に多い一方で、人口減少の制約をどうしても受ける。どれだけ所得のある人でもガスの使用量が2倍や3倍になることはないだろう、と橋本氏は例を挙げた。人口の制約を受けるインフラ系の企業が、BaaSを利用する側、あるいは提供する側として金融サービスに参入する流れは今後も続くというのが橋本氏の見方だ。
SBIが証券まで持ち込む「フル金融サービス」の意味
JQ BANKはどれほど強力なアプリになるのか。橋本氏はまず日本のBaaSの経緯を振り返った。法改正は2017年だが、トップランナーとして早くから取り組んだ例として、2020年に金融サービスを始めたJALを挙げる。その提供元は住信SBIネット銀行で、同行は現在ドコモに買収されて名称が変わっている。住信SBIネット銀行はまさにSBIの力を使ってBaaSを展開していたが、SBIはそれをドコモに売却した。そのSBIが、今度はSBI新生銀行としてJR九州と組むという構図だ。
橋本氏が驚いたと話すのは、提供範囲の広さである。BaaSは本来、預金や送金といった銀行機能の提供を指すが、SBIは証券会社を持っているため、今回は証券機能も盛り込むという。そうなると、これまでBaaSではできなかった暗号資産や証券なども含めたフルの金融サービスになる。橋本氏は、BaaSという概念が銀行だけのものではなくなってきていることを、今回の件は示していると述べた。
楽天も楽天証券を持っていることを踏まえ、橋本氏は総合金融サービスが今後の主戦場になるかもしれない、その可能性を感じさせる提携だと評価した。
楽天銀行の例に見る、BaaS提供銀行の預金調達力
地銀にとっては強力なライバルの誕生と言えるのか。橋本氏は、2024年に楽天銀行がJR東日本と組んで立ち上げた「JRE BANK」を例に説明した。利用者はJRE BANKに口座を開いて預金しているつもりでも、その預金はBaaS提供元である楽天銀行の預金として紐付けられる。
橋本氏によれば、楽天銀行は現在、毎年1兆円程度預金を伸ばしている。上位の地銀でも前年度比の積み上がりは1000億円程度で、2000億円もないだろうと橋本氏は比較し、楽天銀行の伸びを「脅威的」と表現した。しかも楽天銀行はBaaSを貸し出すことで使用料も受け取っている。
対照的に、地銀を含む既存の銀行は、3カ月で何%といった定期預金キャンペーンで金利を上乗せし、コストを払って預金を集めている。BaaS提供銀行は利用料を受け取りながら自動的に預金を集めているため、預金の調達コストは「勝負にならない」ほど次元が違う、と橋本氏は言う。
調達コストの差は運用面の収益にも響く。橋本氏は日銀当座預金を例に挙げた。日銀が利上げを始めたため、当座預金に預ければ金利が得られる。しかし地銀と楽天銀行が同じように日銀に預けても、調達コストがまったく違うため、収益への効果は大きく異なる。個人預金は預金全体の6割程度を占めるとされ、そこにBaaSによる預金の吸い上げ効果が働けば、地銀は預金を調達できなくなる、というのが橋本氏の懸念だ。利上げで銀行株は高いが、その中でも預金調達力と調達コストで優劣がつくと見る。
勘定系システムがBaaS参入の分かれ目になる
では既存銀行はBaaSに参画できるのか。橋本氏は、BaaSへの参画とは銀行の勘定系システムに外部からAPIで接続させることだと説明する。昔からのメインフレームの勘定系システムは、そもそも外部に情報を渡す設計になっておらず、内部の情報を利活用する前提でも作られていない。そのため、クラウドやオープン系など、APIと相性のよいシステムを構築している銀行が強くなるという。
橋本氏は、預金調達力、システム戦略、どこと組むのか、自らBaaS提供元になれるのか、といった点が金融業界を見るうえでの大きな着眼点になると語った。
JR九州はどれだけ預金を集められるか
JR九州の新事業がどれだけ預金を集められるかについて、橋本氏は発表内容を記憶に基づいて振り返った。JR九州には会員や予約アプリ、ポイントシステムがあり、会員数は500万〜600万程度の話だったと思うという。そのうえで口座数の目標は数十万口座といった規模だったはずだとし、最初はまだ小さいと見る。
それでも橋本氏は、世代の入れ替わりに注目する。デジタルネイティブの若い世代にとって、夕方6時以降に引き出すと手数料を取られる、送金や振り込みにも手数料がかかるといった既存銀行の仕組みは「罰ゲーム」のように映るという。これに対し、JR九州のポイント「JRキューポ」が金融の利用に応じて貯まり、それをホテルで使ったり、投資信託の購入に充てたりできるという話もあったと橋本氏は紹介した。日々の鉄道利用が資産形成につながるなら、若い世代やビジネスパーソンを中心にじわじわ広がる可能性は大いにある、というのが橋本氏の見立てだ。
聞き手が、一つのアプリですべてまとめてできるものは少ないと指摘すると、橋本氏はそこがSBIの面白いところで、トータルの金融サービスを担える点が大きいと応じた。楽天でもポイントで投資信託を買えるが、今回はあらゆる金融の活動が紐付けられ、ポイントが大きく貯まる仕組みになるのではないかと橋本氏は推測する。外食や、アミュプラザのような駅ビルでの流通も含めて、九州での消費拡大につながるのではないかと述べた。
東京と地方で異なる使われ方、先発組への波及
聞き手は、東京に住んでいればNISAを楽天証券やSBI証券で運用するのが普通だが、地方ではこうした新しいバンクで資産運用もポイントもまとめて済ませる方が便利だと考える人が多そうだと問いかけた。橋本氏は同意し、結局はSBIのプラットフォームを使っているので、SBI証券を使っているのと同じようなものだと説明した。
東京でも人は日々鉄道に乗り、駅ビルで買い物をする。それらはJRE POINTにはなっているが、それが全部SBIの投資信託などに換えられるようになれば、考え方も変わってくるだろうと橋本氏は言う。そのため、後発のJR九州に対し、先発組であるJR東日本が証券領域に入ってくる可能性も当然あると見る。楽天も黙っていないのではないか、とも付け加えた。
地銀の選択肢:裏方銀行か、法人預金での生き残りか
強力なライバルが現れる中で地銀はどう対抗すべきか。橋本氏は、地銀にとって非常に難しい戦いになると答えたうえで、いくつかの道を示した。
一つは、地銀自らがBaaS提供元になる道だ。橋本氏はその可能性もなくはないと考える。ただし前述の通り、勘定系がメインフレームでは難しく、クラウドやオープン系のシステムを構築している銀行に限られる。そうした銀行が、鉄道に限らず地域のインフラ会社などにBaaSを提供すれば、いわば「裏方銀行」として、顧客接点の多い事業者に金融サービスを供給し、自らは裏方に徹することになる。それができるかどうかが問われるという。橋本氏は、規模の勝負に向かう銀行と分かれていくだろうとも述べた。
もう一つは、地域の顧客に密着する道だ。橋本氏によれば、今回のようなBaaSの主な狙いは法人預金ではない。そのため、法人預金の獲得が伝統的な銀行にとって最後の生命線になると見る。単に金利を取ってお金を貸すのではなく、経営改善のアドバイス、販路拡大や業務改善といったコンサルティング的な支援ができる銀行が、法人預金をどう取り込むか。事業承継や、海外では主流だというファミリービジネスにいかに入り込めるかが鍵になると橋本氏は語った。
なぜ地銀ではなく東京のSBIと組んだのか
九州出身の聞き手は、JR九州には九州の優秀な人材が集まり、県境に縛られず九州全域をカバーできるという二つの強みがあると指摘した。橋本氏も同意しつつ、裏事情はまだ取材できていないと断ったうえで、SBIと組んだ点が面白いと語った。
九州にはふくおかフィナンシャルグループがあり、その傘下のデジタルバンク「みんなの銀行」もBaaSを提供している。JR九州はそこを活用せず、東京のSBIと組むことで、より大きく構えた形になった。橋本氏は、どこか一つの地銀と組めば、たとえば鹿児島銀行や肥後銀行を擁する九州フィナンシャルグループをまともに敵に回すことになると指摘し、地域の事情を考えればSBIを選んだのは「なるほど」と思えると述べた。
橋本氏はまた、JR九州にとって新幹線はドル箱路線だろうが、在来線は赤字のところが多いと見る。その穴を埋め、収益を拡大するために、東京の大手で証券まで扱えるSBIと組んだのは面白く、地銀が選ばれなかったこと自体も興味深いと語った。聞き手は、金融がJR九州にとって今後を担う主力事業になりうるとまとめた。
ドコモの転身が示す、提供される側から提供する側への道
最後に橋本氏は、本題からは少し外れるとしつつ、ドコモの動きに注目したいと述べた。ドコモはもともとJRと同じくBaaSの提供を受ける側だった。ところが、危機を感じたのか旨みがあると見たのか、住信SBIネット銀行を買収し、自らBaaS提供元の銀行に転じた。
橋本氏は、同じような動きが通信以外にも起きるのかを問いかける。鉄道会社や電力、ガスといったインフラ系、交通系の企業が、金融サービスを続ける中でBaaS提供元になっていくのか、それともあくまでBaaSの提供を受ける側の事業として続けるのか。その経営戦略は非常に見物だ、というのが橋本氏の結びの言葉だった。
JR九州とSBIの提携をテーマにお話を伺います。銀行が非銀行に銀行機能を提供すると。総合金融サービスっていうところが、もしかしたらその主戦場になってくるかもしれないと、1つの可能性を感じさせるような形ですよね、今回は。あらゆる金融の活動っていうのが紐付けられていって、またそれがポイントが多分大きく貯まるっていうシステムに多分すると思うんですよね。
先発組であるJR東日本とかも証券領域に入ってくるのかどうかとか、当然、可能性としてはあるんじゃないかなと思うんですよね。
こういう強力なライバルが現れる中で、地銀ってどう対抗していけばいいんですか?
これ、地銀は非常に難しい戦いになると思うんですね。預金の集め方っていうこの競争の概念も変えてしまうので、預金が集まらないがゆえの再編とかですね、余波も多くもたらすような、そういうふうに見ております。
皆さん、こんにちは。PIVOTの佐々木です。今回の速報解説はJR九州とSBIの提携をテーマにお話を伺います。ゲストにお迎えしましたのは、経済ジャーナリストの橋本卓典さんです。橋本さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
橋本さんは元々共同通信にいらっしゃって、『捨てられる銀行』という大ベストセラーがあって、地銀と言いますか、地方の経済について聞くなら橋本さんという存在で。実はこのニュースが出る前にも、こういった地方の鉄道会社が、地銀であるとか地域金融の台風の目と言いますか、1番の注目株って話を頂いてたんですけど、その橋本さんからすると、今回の提携の話っていうのは結構既定路線でしょうか?
これはもう大きな流れというか、本当に大きな流れでいくと、やっぱり民営化した、いわゆる昔の国営会社っていうのは、がむしゃらに生きていかなきゃいけませんから、自分で経済圏を確立していくっていうのは当然の大きな流れがあって。その中で今回、このBaaSっていうことなんですけれども、Banking as a Serviceって言いまして、銀行が非銀行に銀行機能を提供すると。銀行じゃないんですけども、鉄道自体は、この看板を使わせてもらうみたいな。
その中で、お互いの銀行と鉄道側の双方の思惑が合致したっていう流れは、JRだけじゃなくて、私鉄の方でもこれからも続いていくと思いますし、これが転じて、後ほどお話があるかもしれませんけれども、預金の集め方っていうこの競争の概念も変えてしまうので、既存の金融機関、地銀とかの再編とか、預金が集まらないがゆえの再編とかですね。そういう余波も多くもたらすような、そういうふうに見ております。
そういった中で、JR九州の取り組みっていうのはかなり先進的なものなんでしょうか?
JR九州の取り組みはですね、JRってことだけでもJR東日本、そしてJR西日本も、JR西日本は2027年度ってことなんですけれども、このBaaSっていうことで金融をそのまま提供していくってことは、1つの流れっていうことですね。
なので、今後注目するのはJR北海道とかJR四国とか、ちょっとここが違うんですよね。JR東日本と西日本っていうのは、大体半々ぐらいなイメージの、いわゆる運輸収入と非運輸収入っていうのが半々、あるいは利益も半々ぐらいなんですけど。JR東海だけは違って、JR東海はドル箱路線を持ってるので、もう運輸が8割ぐらい占めてるんですよね。非運輸の貢献度は2割ぐらいしかないんですけど、九州に限っては4割が運輸で、非運輸の依存度っていうのは6割あるんですよね。
ってことは、非運輸の依存度が高いっていうことは、イコール、顧客接点が非常に多いっていうふうに言ってもいいと思うんですよね。ホテルとか、いろんな流通とか、そういうところの接点が非常に多いので、そこにこのBaaSを持ち込むっていうのは非常に効果も大きいんだろうなと。なので、運輸収入、非運輸収入が逆転している北海道とか四国とか、あとは確かに8割は運輸収入なんですけど、長期的に見ればJR東海の方もですね、非運輸収入のところで収益の柱をどう作っていくかっていうのは課題ですので、この動きは広がっていく可能性は大いにあるんじゃないのかなと思いますね。
日本の鉄道会社は、小売であるとか不動産であるとか、そこで多角化を進めてきましたけれども、そのこれからの1番の本丸がこの金融ってところなんですね。
そうですね。この金融の概念っていうのは、実はデジタル化とすごく親和性があるように思うんですけど、古くはですね、概念自体は、我々が自動車ディーラーに行くと自動車ローンとかあるじゃないですか。昔からあるんですね、この概念は。組み込み型金融って言うんですけど。
概念はあったけど、昔はこういう紙の書類を処理して、それで審査してたんですけど、2007年のiPhoneの登場、そして2010年代ですね、欧州の方でこの非金融事業者に金融をやらせてもいいじゃないかっていう、APIっていうので銀行のシステムに接続して、銀行の機能を使わせてもらうっていう規制の緩和っていうのが広がって、日本でも2017年の改正銀行法でこれが大きく広がったんで。
このBaaSっていう流れがこれからもですね、非金融事業者にとって、鉄道だけじゃなくてガス会社だとか電力会社とか、いわゆる顧客接点が非常に多いけれども、人口減少の制約をどうしても受けてしまう。どんな所得のある人も、多分ガスの使用量って2倍とか3倍にならないと思うんですよね。なので、やっぱり人口っていうことの制約を受けてしまうこの業種、鉄道もそうだし、今申し上げたインフラ系ですよね。どこもまさにそうなんですね。通信系もそうなんですけど、このBaaSっていうのを利用したり、もしくはBaaSを提供する側に入ってくるっていう、この金融サービスに参入するのは、大きな流れとしてこれからも続いていくなというふうに思います。
大きな取り組みとして、この金融スーパーアプリ、JQ BANKというものを共同開発して、2027年度の中の提供ってことなんですけど、これはかなり強力なアプリになるんですかね。もう本当、スーパーアプリとして全部入ってくるんですね、これ。
日本におけるこのBaaSっていうのが、法改正は2017年からなんですけど、1番最初にトップランナーでやってきたのは2020年ですね。JALも金融サービスっていうのを始めてるんですけど、元々の提供は住信SBIネット銀行。今、名前が変わって、さらにドコモがこれを買収しちゃったんで、ドコモSMTBネット銀行って言うんですけど、元・住信SBIネット銀行っていうのは、まさにSBIのこの力を使ってこれをやったわけですよね。
住信SBIネット銀行は確かにドコモに売ったんだけど、SBI新生銀行ですよね。SBIがもう1度、このJR九州と組んでやると。これはちょっと驚いたのは、BaaSって、Banking as a Serviceって銀行機能とか預金とか、送金とかそういうことなんですけど、プラス、この証券機能も、やっぱりSBIって証券会社を持ってるじゃないですか。なので、その証券機能も盛り込んでくると。
ってなると、これまでできなかった仮想通貨とか証券、NISAもそうだし、そういうフル金融サービスってことで。なので、BaaSっていう概念も、銀行ってだけではもうなくなってきてるっていうふうに、1つ今回の現象っていうのは思いますよね。これに対して、じゃあ楽天も楽天証券とか持ってるわけじゃないですか。ってことで見ると、総合金融サービスっていうところが、もしかしたらその主戦場になってくるかもしれないという、1つの可能性を感じさせるような提携ですよね、今回は。
そうすると、地銀にとっては強力なライバル誕生とも言えるんですかね。
これがまた、まさにおっしゃる通りで、例えば楽天銀行は2024年、JR東日本と組んでJRE BANKってこれを作ってるんですけども、私たちがやっぱりJRE BANKに銀行口座を開いて預金してるつもりですよね。ところが、その預金っていうのは、BaaS提供元銀行である楽天銀行の預金に紐付けられるんですね。よって楽天銀行って今、毎年1兆円ぐらい預金を伸ばしている。
これは驚異的で、例えば地銀でも、上位の地銀でもですね、1000億円とか、預金の前年度比での積み上がり方が1000億円とか、2000億円も多分ないと思うんですけど、楽天銀行は毎年1兆円積み増してるんですよね。さらにBaaSを貸し出してるわけですね。BaaSとして貸し出して、その貸し出し使用料も受け取ってるわけですね、楽天は。
ところが既存銀行っていうのは、地銀もそうですけど、よく定期預金キャンペーンっていって、金利を上乗せして、利息を上乗せして、3か月何%とかやって、コストを払って預金を調達してる。ところが、こういうBaaS提供銀行っていうのは、BaaS料ももらって、利用料ももらいながら、預金も自動的に集めてきてるってことで、預金の調達コストっていうのが、全く勝負にならないぐらい次元の違う話になってる。
ってことは、当然、調達コストが圧倒的に違うってことは、その向こうにある運用にも大きく影響してくるわけですよね。例えば銀行っていうと、日銀の当座預金にお金を預けると、日銀が金利を上げ始めましたから、金利が日銀からもらえるんですけど。じゃあ地銀と楽天銀行が同じように日銀に預けたとしても、楽天の方が調達コストが全く違いますから、収益的なインパクトっていうのは全然違うんですよね。
よって、このBaaS提供っていうのは、非常に金融業界の勢力を塗り替えてしまうとは言わないけれども、少なくとも預金の6割ぐらいは、個人預金が占めてるわけですから、そこに対してこのBaaS提供っていうのが、預金吸い上げ効果っていうか、そういうのがあると、預金を調達できなくなると。金利が上がっても、日銀の金利が上がると今、セクター株ってことで銀行株は総じて高いですけれども、その中でもやっぱり優劣がついてくる。預金調達力、預金調達コストで、そのBaaSに参画できるのか。
このBaaSに参画するってことは、要は銀行の勘定系システムに外部から接続させるってことなんですね。これはAPI接続って言うんですけど、メインフレームっていうこの勘定系システム、昔からあるシステムなんですけど、これを持ってると、そもそも外部に情報を渡すっていう設計じゃないんですよね、メインフレームっていうのは。なので、内部の情報を利活用するっていう設計じゃないので、元々。よって、この勘定系システムがクラウドシステムとかオープン系っていうふうに、APIと親和性のあるようなシステムを構築している銀行が強いとなるわけですね。
なので、預金の調達力、そしてシステム戦略でどこと組むのか、あるいはBaaS提供元銀行になりうるのか。こういうところも、金融業界を見ていく上で大きな着眼点かなというふうに思うんですよね。
橋本さん、このJR九州のこの参入は、かなり預金を集められると思いますか?
JRの発表もありましたけど、この会員だとか予約システム、予約アプリってあるじゃないですか。あとポイントシステムっていう、ここで多分、会員が500万とか600万とか、そういう話だと思うんですよね。その中で、確か202年度までに、数十万口座みたいな感じで言ってたと思うんですよね。なので、まだまだ最初は小さいと思うんですよ。
ただですね、人口の世代が入れ替わっていくと、やっぱりデジタルネイティブな若い世代っていうのは、銀行にお金を預けて、6時以降引き出すと手数料を取られるとか、送金しても手数料を取られる、振り込んでも手数料を取られるとか、なんでその罰ゲームってやっぱり思うわけですよね。
やっぱり、そういう金融のアクティビティを重ねることで、キューポっていうJR九州がやってるポイントがあるんですけど、こういうキューポっていうのが貯まったりとか、それによっていろんなホテルだとか、あるいはこのキューポっていうのを使って投資信託とかも買えるとか、そんな話も確かあったそうなんですよ。そこのところを考えると、日々の鉄道利用っていうのが資産形成にもつながっていくってことですから、これは若い世代中心に、じわじわと広がっていく可能性はやっぱりあるよねと。ビジネスマン中心に広がっていく可能性は大いにあるんじゃないかなと思うんですよね。
しかも1つでまとめて全部できるっていうのは、なかなかないですもんね。
これはやっぱりSBIの面白いところで、トータルの金融サービスをやっていくっていうところは大きいですよね。楽天とかでも確か、楽天のポイントを使って投資信託もできるんですけれども、今回はあらゆる金融のアクティビティ、活動っていうのが紐付けられていって、またそれがポイントが多分大きく貯まるっていうシステムに多分すると思うんですよね。なので、外食もそうだし、いろんなところの流通、駅ビル、アミュプラザとかあるんですけど、九州には。こういうのも消費の拡大とかにつながっていくんじゃないかなと思うんですよね。
橋本さんの肌感覚として、地域によっても違うと思うんですけど、東京都とかに住んでると、もうNISAをやって、楽天かSBIに口座っていうのが普通じゃないですか?
そうですね。
地域だと、そのやり方をするよりも、こういった新たにできたバンクに入って、資産運用もポイントも全部まとめてやった方が便利であるって考える人は多そうですよね。
そうですよね。だって結局はSBIのプラットフォームを使ってるわけですから、SBI証券でやってるようなもんなんですよね。それが、例えば東京にいる人は日々鉄道に乗ったりとか、あるいは駅ビルで何か買ったりとかしますよね。ただそれは、東京だったらJRE POINTとかにはなってるとは思うんですけど、それも全部このSBIとかの投資信託に変えられるようになってくるってなると、これ考えようですよね。
なので、じゃあその他の、いわゆる後発組じゃなくて、その先発組であるJR東日本とかも証券領域に入ってくるのかどうかとか、こういうのは当然、可能性としてはあるんじゃないかなと思うんですよね。楽天も多分黙ってないんじゃないですか、ということですね。
こういう強力なライバルが現れる中で、地銀ってどう対抗していけばいいんですか?
これ、地銀は非常に難しい戦いになると思うんですね。自らこのBaaS提供になるっていう可能性も、私はなくはないと思います。ただ、先ほど申し上げたように、勘定系システムがメインフレームでは難しいので、クラウドシステムとかオープンシステムっていうのを構築してるところっていうのは、別に鉄道だけじゃなくて、先ほど申し上げた地域のインフラ会社だとか、いろんなところにこのBaaSを提供していくと。
そうすると、簡単に言うと裏方銀行みたいな感じですよね。顧客接点が多いところに金融サービスっていうのを提供していき、自らは裏方に徹していくみたいなところができるのかどうか。そういう銀行もあれば、もちろん規模の勝負だっていうところと分かれていくってことと、あともう1度、地域の中で顧客のところに密着して。今回のBaaSっていうのは、主な狙いは法人預金ではないので、法人預金の獲得っていうのが伝統的な銀行の最後の生命線になると思うんですよね。
なので、その法人預金をいかにがっつりと押さえるかってことになると、当然ですけど、単に金利を取ってお金を貸してるようなもんじゃなくて、やっぱり付加価値ある経営改善のアドバイスだとか、コンサルティングだとか、総合的な販路の拡大とか業務の改善とか、そういうコンサル的な動きができる銀行で法人預金をどう取り込んでいくか。あるいは事業承継とかですね、海外では主流であるファミリービジネスとか、そういうところにいかに入っていけるかっていうことだと思うんですよね。
私も九州出身なんですけど、JR九州っていうと、九州のベスト・ブライテストが集まるっていう意味で人の力も非常にある。かつ九州ってことで、県に縛られず全域を押さえることができる。この2つがあると、やっぱり強力ですよね。
そうなんですよね。これ、裏事情はまだ取材できてないんですけれども、SBIと組んだっていうのがまた面白いなというところです。九州ってことでいくと、ふくおかフィナンシャルグループだとか、ふくおかフィナンシャルグループの傘下にはみんなの銀行っていうデジタルバンクがあって、そこもBaaSって提供したりしてるんですよね。そういうそこを活用したわけじゃなくて、東京のSBIを活用すると、より大きく構えたってことになる。
やっぱりどこかの地銀と組むと、じゃあ例えば九州フィナンシャルグループって、この鹿児島銀行とか肥後銀行を、ともすると敵に回すわけじゃないですか。よって、SBIと組んだっていうのはなるほどなというところで、やっぱり地域の事情ってあるんで。JR九州、いわゆる九州を一円にカバーするJR九州は、確かに新幹線とかそういうところはドル箱路線だと思うんですけど、在来線ですよね。こういうところは、はっきり言って赤字のところが多いと思うんですよ。
こういうところを穴埋めし、かつ収益を拡大していくために、東京の、大きく構えて証券とかそういうところと組んだっていうのは、なかなか面白い。地銀が選ばれなかったっていうですね。僕も面白いなって思うんですよね。
JR九州にとっても、非常に重要な事業というか、これからを担っていくぐらいの主力事業になりうるってことですね。
あと、やっぱり1つ注目したいのが、若干今日の趣旨とは違いますけど、そのドコモですよね。ドコモっていうのは、JRと同じようにBaaSを提供される側だったんですよね、元々は。ところが、おそらく危機を感じたのか、うまみがあるのか、BaaS提供元に転じてしまったんですね。先ほど申し上げた住信SBIネット銀行を買収して、自らがBaaS提供元銀行になったと。
同じような動きが通信だけじゃなくて、この金融サービスを通じる中で、鉄道会社とか電力、ガス、そういうインフラ中心に、交通系中心に、BaaSになってくるのか、ないのか。あくまでBaaS提供先の事業としてやるのか。ここも経営戦略は非常に見物だなというふうに思うんですよね。
分かりました。やっぱりここ、地域をきっかけに地域が盛り上がるってことで、かなり面白くなってきましたので、その辺りの地銀の変化、金融業界の変化も、橋本さんに別の動画で、10月5日にこちら配信になるんですけれども、インダストリーマップシリーズで配信しますので、ぜひそちらも見ていただけると、今日の解説の話がより深くなるんじゃないかなと思います。それでは橋本さん、解説ありがとうございました。
PIVOTアプリでは、バックグラウンド再生やダウンロード機能をご利用いただけます。バックグラウンド再生により、通勤中や運動中、SNSを見ながらでも、ながら視聴が可能です。また、ダウンロード機能を使えば、電波のない環境やWi-Fiが接続されていない場所でも、快適に番組をお楽しみいただけます。全ての機能は無料です。ぜひPIVOTアプリをご活用ください。
記事公開 · 更新
