宇宙にデータセンターを置くStarcloudは、どこから市場に入ろうとしているのか

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概要

FoundXの「Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで分析して紹介する番組である。番組冒頭では、AIで情報を整理しているため古い情報や誤りを含む可能性があり、事実を重視する場合は各自で確認してほしいと断っている。今回取り上げたのは、ワシントン州レドモンドに拠点を置くStarcloud(旧称Lumen Orbit)である。2024年創業のこの会社は、AIの計算需要が地上の電力・水・冷却の制約にぶつかるなら、データセンターそのものを宇宙へ移せばよいという構想を掲げている。

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解説役がこの会社を選んだ理由は三つある。イーロン・マスクらが最近言い始めた「宇宙データセンター」をかなり早い段階から唱えていたこと、その発想が第一原理思考に基づいていること、そして創業から21カ月でH100を宇宙に打ち上げ、Y Combinator史上最速でユニコーンになったと言われていることだ。以下は、聞き手の富田氏とのやりとりを含めて、番組で語られた分析を整理したものである。

二つのトレンドが交差する点を狙う

解説役によれば、Starcloudが見ている「Why Now」は二つある。一つは、地上のAI需要の急増に伴う電力需要の急増で、水資源も含めて物理的な限界が近づいているという見方である。もう一つは、SpaceXのStarshipなどによって軌道投入コストが大きく下がりつつあることだ。需要は上がり、コストは下がる。この二つの曲線が交わる損益分岐点が来ていると見て、ギガワット級の計算インフラを宇宙に築こうとしている、というのが解説役の要約である。

交差点はいつ頃かと富田氏が尋ねると、解説役は、Starcloudは2028〜2029年という意外に近い時期に地上とのコストパリティに達すると見込んでいると答えた。前提にしているのはStarshipの実用化で、限界費用が1kgあたり10〜50ドル、価格としては1kgあたり400〜500ドル程度まで下がると想定しているという。

地上のデータセンターが抱える電力・水・許認可の問題

想定顧客は大規模なAIラボ、ハイパースケーラー、衛星オペレーターである。解説役は、彼らが地上で直面する課題を三つに整理した。

第一は電力である。送電網に限界があり、新しい系統につなぐには5〜10年かかる。米国のデータセンターの電力需要は2030年までに2倍以上、60〜100GWに達すると言われており、地上でそれをまかなうのは難しいという。

第二は水である。冷却に膨大な水を使い、施設によっては1日100万ガロン規模に達する。解説役は、政策面でも「電力の次は水」と言われていると述べ、特に米国では水が農業用に使われることが多いため、そこと競合して地域との摩擦が激しくなっていると説明した。

第三は許認可と立地である。新規の電力網整備に5〜10年かかることに加え、「ノット・イン・マイ・バックヤード」と呼ばれる住民の反対が表面化している。アリゾナ州ではギガワット級データセンターの建設が拒否された例があり、データセンター周辺は気温が高くなるという論文も出ているという。原子力や地上での送電網増設といった既存の代替手段も簡単ではなく、用地確保はさらに難しくなるのではないか、と解説役は見ている。

富田氏は、水の問題は技術の進化で解決できないのかと尋ねた。解説役は、水についてはさまざまな解決策が講じられているだろうとしつつ、それでも送電網や許認可、地域社会との摩擦は残るとの見方を示した。実際の需要については、AWSやGoogle Cloudがパートナーとして関与したり、基本合意書(レター・オブ・インテント)に向けて動いたりしているというニュースがあり、一定のニーズは確認できると述べた。

地上と軌道上の比較、そしてStarcloud 1の打ち上げ

解説役は、地上と軌道上のデータセンターを電力・冷却・時間の三点で比べた。地上には送電網の制約、冷却水の消費、5〜10年の許認可期間がある。軌道上では、24時間365日太陽光が得られ、大気や夜の影響がないため、発電効率は地上の6〜8倍と言われているという。冷却は真空への放射冷却で行えるので、水の消費は基本的にゼロになる。ただし解説役は、冷却は実際には難しく、あくまで理論的には可能という段階だと付け加えた。ゾーニング規制や住民反対は現時点ではゼロで、今後宇宙法などが整ってくる可能性はあるとしている。

この構想を裏付けるものとして、Starcloudは2025年11月に「Starcloud 1」の打ち上げに成功した。NVIDIAのH100を載せて軌道上で稼働させ、nanoGPTのトレーニングと、字幕上「ジェミナ」と聞こえるモデルの実行に世界で初めて成功したという。これを受けて、2026年初めには大型の資金調達も行っている。一方で、ダウンリンク(下り回線)の制約や、競合が次々に現れていることなど、課題も残ると解説役は指摘した。

冷却・放射線・デブリという技術課題

富田氏は、メリットの裏にあるデメリット、特に冷却の工夫について尋ねた。解説役は、宇宙は真空で冷たいから冷却は簡単だと思われがちだが、そうではないと答えた。真空では対流が使えず、熱は主に放射で逃がすしかない。そのため展開式ラジエーターがボトルネックになり、小型の宇宙機でも放熱面積の不足が中心的な課題として整理されているという。

もう一つの難しさが放射線である。宇宙用の電子機器はシングルイベント効果や総線量が設計を左右する。地上向けの最先端GPUをそのまま持ち込めば対策が必要になり、それが重量・コスト・信頼性に直結する。Starcloudは地上用GPUを宇宙で動かした事例を実証しており、その際には鉛シールドだけに頼らず、ソフトウェア側のエラー補正を組み合わせて対策したという。後の質問で富田氏が放射線対策の具体的な仕組みを尋ねると、解説役は、宇宙空間ではビット反転が起こりやすいことが元々の問題であり、それが起きても推論や学習の全体に影響しないよう、冗長化とチェックポイントからの復旧という仕組みを敷いていると説明した。

H100をどうやって載せたのかという質問には、解説役自身も不思議に思っていたと前置きしたうえで、得られた情報では、軽量化のために不要な部品を取り除いて重量を80%減らし、ワックスなどの特殊な材料で熱対策を施したとされていると答えた。

宇宙デブリのリスクも運用上の課題として認識されている。解説役は、こうした事業が増えれば、デブリ対策の事業への需要も高まるのではないかという感想を述べた。

市場規模:いきなり地上の代替は狙わない

Starcloudは、グローバルなAIインフラ市場全体をTAMと見ており、その規模を数十兆ドル規模と考えているという。SAMは軌道上インフラ・データセンター市場で、2035年に約390億ドル、年平均成長率67.4%という極端な成長を想定している。そしてSOMとしては、宇宙機向けの軌道上エッジ処理市場を最初の市場に据えている。

解説役が注目するのはこの順序である。いきなり地上データセンターの代替を狙うのではなく、ダウンリンクが足りないという切実な痛みから入っている。市場予測には大きな誤差がありうるが、成長の方向性は確かだろうという判断で事業を進めているのが今のStarcloudだ、と解説役は述べた。

最初の顧客について尋ねられると、解説役は、SAR(合成開口レーダー)衛星や地球観測衛星のオペレーター、国防総省のような安全保障関連部門が買い手になると言われていると答えた。将来的に宇宙へ移るワークロードについては、遅延が大きくなることから、遅延に敏感でないバッチ処理、大規模学習、ソブリンクラウドがまず移行すると見られているという。最終的には、新設されるデータセンターの過半数を狙う構想もあるようだ。

ユニットエコノミクス:95%削減という主張

Starcloudは、40MWクラスターの10年間の総費用を比べると、宇宙のほうが約95%安くなると主張している。解説役は「本当かなという感じはする」と率直に述べつつ、第一原理思考に基づく計算だという。内訳として、地上ではインフラ、冷却水、土地、許認可、バックアップ電源などを足し上げると約1億6700万ドルになる。一方、宇宙では打ち上げ費用と放射線シールドを合わせて約820万ドルになる、というのが彼らの物理的な計算である。

ビジネスモデルは、Equinixのように中立的な「箱」と電力・冷却を提供するものだという。自分たちでクラウドを作るのではなく、箱を提供する。支払う顧客はCrusoeのようなクラウド事業者になる。輸送コストが1kgあたり500ドルを下回れば、宇宙の電力コストが地上の平均を下回るというロジックを組んでおり、最終的には1kWhあたり0.05ドル以下を目標にしている。そこに達すれば経済合理性だけで宇宙が選ばれる、という考え方だ。

富田氏は、故障時の保守や交換のコストも含まれているのかと尋ねた。解説役によれば、Starcloudの言い分ではコストに含まれている。宇宙では限界電力コストがゼロになるので、多少性能が落ちても長く使い倒せるうえ、モジュール単位での廃棄や交換を想定して設計しているという。ただし解説役は、廃棄の方法や、自分たちがデブリになってしまうリスクへの対処はまだ見えていないと指摘した。500ドル/kgを下回る時期については、Starshipが安定した商用頻度と量産体制に達するのが2028〜2030年と言われており、2028〜2029年頃のパリティ達成が目標になっているという。

中立的なインフラ層というポジション

解説役は、宇宙データセンターのスタックを三層で説明した。一番下が打ち上げ、真ん中が電力・冷却・放射線耐性などを提供するインフラ層、一番上がAIモデルやGPUチップ、クラウドの層である。Starcloudが取ろうとしているのは真ん中のインフラ層で、打ち上げはSpaceXなどに、AIモデルやチップはクラウドベンダーに任せる。

SpaceXやxAIのようなマスク系企業は、自社でデータセンターまで作る垂直統合を目指しており、Googleも研究として取り組んでいる。これに対してStarcloudは、誰でも乗れる水平分業型のインフラを目指している、というのが解説役の整理である。

10〜20年後の理想像として、Starcloudは5GW・4km四方の巨大構造体というビジョンを示し、人類を地球上の資源制約から解放すると言っている。ただ、直近の顧客が見ているのはその夢ではない。衛星運用者、政府・安全保障系の調達部門、クラウドパートナーに対して、ダウンリンクの節約、意思決定の速さ、停止リスク、データ主権、総保有コストといった合理性に訴えている。地上のAI・HPCに対抗するには、価格競争力とハードウェア更新頻度への対応が必要になるとも解説役は述べた。

4km四方の構造体はどんな形になるのかという富田氏の質問に対して、解説役は、その大きさではデブリ衝突のリスクが高まるので、長期的にはモジュール式で分散させ、一部が壊れても全体が動き続ける設計を目指すのではないかと推測した。

フェーズ戦略とStarship依存のリスク

解説役が最も参考になると評価したのは、この壮大な構想への「登り方」である。フェーズ1は、衛星向けのエッジ計算だ。高利益だが市場規模は小さく、現在の高い打ち上げコストでも利益が出る領域から入りつつ、技術実証を積む。フェーズ2では、「Starcloud 3」と呼ぶ機体でコストパリティの達成を目指す。ここがPMFに近い段階で、そこから先は打ち上げを増やしていくだけになる、と解説役は表現した。フェーズ3の2030年代には、ギガワット級の展開と、地上データセンターの宇宙への本格移行を目指す。高単価のニッチ市場から始めて大きなビジョンにつなげるという、スタートアップの定石に沿ったやり方だと解説役は述べた。

富田氏は、Starshipの開発が遅れたらどうなるのかと尋ねた。解説役の答えは、フェーズ1が長くなるというものだった。フェーズ1だけでも持続可能なビジネスモデルになっているので、時間的に延長することになる。ただし、打ち上げ価格が下がらなければパリティには達しない。

解説役は、ほかのリスクも挙げた。一つはハードウェアの更新周期である。AI向けハードウェアはほぼ毎年世代交代するが、Microsoftの海中データセンターの教訓として、密閉されたまま頻繁に更新できない構造はAIと相性が悪いと言われている。これはStarcloudにもそのまま当てはまる。もう一つは、規制、デブリ、データ主権、衛星運用責任といった法的な制約で、事業が大きくなるほど物理法則以外の制約が重くなるという。

フェーズ3に向けたボトルネックとしては、まず打ち上げ能力の確保がある。Starshipが安くなっても、打ち上げ回数が少なければ難しい。さらに、大規模な衛星群を制御・連携させる光通信ネットワークの構築も課題になる。加えて、ゼロウォーター冷却や地熱などで地上側が先に改善すれば、宇宙であることのメリットが削られてしまう。これはStarcloud自身のボトルネックではないが、競争環境上のリスク要因だと解説役は見ている。

モートと競合

解説役は、Starcloudの差別化要素として次の五つを挙げた。

  • ISSの約10分の1の重量と低いコストを実現するという独自ラジエーター技術と、熱制御に関する知財
  • 軌道上でH100を動かしたという最初の運用実績
  • 高価な宇宙用チップではなく、市販チップとソフトウェア補正を組み合わせた安価な放射線耐性
  • 光通信とデータ伝送に最適化したネットワーク
  • ハイパースケーラーと競合しない、インフラ特化の中立性

競合については、Axiom Spaceのように宇宙ステーションに隣接したネットワーク型に取り組む企業や、Blue Originの動きがあるという。Orbital Edgeは宇宙機向けの軌道上エッジ計算を手がけており近い競合だが、どちらかというとモジュール供給や実験寄りだと解説役は見ている。また、字幕上「ラボンスペース」と聞こえる企業は、宇宙での計算を可能にする部材やプラットフォームを手がける間接的な競合として紹介された。さらに広い視点では、地上データセンターの冷却革新や、地熱と組み合わせたデータセンターなど、地上側の進歩も宇宙データセンターのポジショニングを変えうる競合だと解説役は述べた。

MVPは「ダウンリンク不足」を解く軌道上推論

StarcloudのMVPは、生データを地球に送るのではなく、軌道上で直接推論し、結果だけを送るエッジコンピューティングだった。課題は、SAR画像のようなテラバイト級の生データを送るにはダウンリンクが物理的に足りないことである。軌道を1周する90分のうち通信できるのは5分程度しかない。そこで軌道上でAIによる推論を行い、たとえば船舶の座標のような数KBのインサイトだけを送れば、細い帯域でも必要な情報を届けられる。

その結果、遅延の解消に高いお金を払う防衛系などの顧客と実証契約を結び、MVPへの需要も見えてきていると言われている。解説役は、大きな未来を描きながら、最初のプロダクトは足元の切実でミクロな課題に向けている点を評価した。

富田氏は、数KBのインサイトだけでは誤りのリスクがあるのではないかと尋ねた。解説役によれば、初期は意思決定の「当たりをつける」段階だけに使い、最終確認用に低解像度の画像も同時に送信する運用でカバーしているという。地球観測以外の用途としては、どの国の法律も及ばないデータ主権を求める顧客向けに、暗号鍵の保管やバックアップが想定されている。

チームと宇宙太陽光発電からのピボット

チームは少数精鋭で、McKinsey出身のフィリップ氏がビジネスを、Airbus出身のエズラ氏が熱・材料工学を、SpaceX出身のアディ氏がソフトウェアと通信を担っている。この組み合わせが先に挙げたモートにつながっている、と解説役は説明した。アディ氏はMicrosoftで長年にわたり大規模GPUクラスターの構築を主導した経験もあるという。

創業時、彼らはホワイトペーパーを出しており、当初は宇宙で太陽光発電をして地球に送る、Aetherfluxのような事業を考えていた。しかし、電力を地球に送ると95%がロスになるのに対し、宇宙で発電した電力をそのまま宇宙で計算に使えばよいと気づいた。そこでデータセンターごと宇宙に持っていくという発想に至ったという。解説役は、常識や直感ではなく計算によって得られた気づきである点を面白いと評した。宇宙太陽光発電は日本も取り組んでいる分野だが、地球に送らずその場で使うという転換は面白い発想だと述べている。

少人数で衛星打ち上げまで到達できた理由について、解説役は外部委託をうまく使ったことを挙げた。宇宙機の設計、熱管理、GPUクラスターはコアメンバーに絞って担い、機体製造などは外部に委託したという。

21カ月で打ち上げに至った仮説検証

当初は無謀だ、成功するはずがないと言われていたという。Starcloudは、熱と放射線は解決可能かという仮説に対し、独自ラジエーターを製造し、H100を素粒子加速器に持ち込んで放射線の照射試験を行った。そして創業から21カ月後にStarcloud 1を打ち上げ、nanoGPTの学習に成功した。解説役は、物理的に不可能と言われていたことが、実際にはエンジニアリングと製造の課題にすぎなかったことを彼らが実証したと見ている。批判に反論するより実証を重ねたことが信用につながり、大型の資金調達にも結びついたという。

富田氏が2年足らずでの打ち上げの珍しさを尋ねると、解説役は、通常は設計から打ち上げまで4年ほどかかるため、かなり異例だと言われていると答えた。既存ロケットの相乗り枠を創業初日に予約し、その打ち上げ日に向けてアジャイルに開発したという。加速器試験では、宇宙線の陽子や重イオンを模擬してGPUに照射し、どこでエラーが起きるか、ソフトウェアでどう復旧できるかのデータを取ったと説明された。

資金調達:YC史上最速のユニコーン

Starcloudは、プレシードで300万ドル(解説役の換算で日本円にして約5億円)、シードで2100万ドル、シリーズAで1億7000万ドルと調達を重ねてきた。評価額が11億ドルに達したのはYC卒業からわずか17カ月後で、YC史上最速と言われている。投資家にはYC(S24バッチ)、NFX、シリーズAではBenchmarkとEQTが名を連ねる。

解説役は、評価の理由を二つ挙げた。一つは、宇宙へのデータセンター移行が進めば巨大なインフラ事業になるというTAMの大きさ。もう一つは、H100を実際に宇宙で動かした実行力である。軌道上データセンターが成立すれば数十兆ドル規模の市場になるため、成功確率とアップサイドを掛け合わせたオプション価値で考えれば、評価は正当化されうる賭けだと解説役は述べた。成功確率よりアップサイドを重視するのがスタートアップらしい、という見方である。シードラウンドでは200社以上のVCが殺到したと言われており、その時点では打ち上げ前だったものの、打ち上げ枠を確保し開発が進んでいることを示していたという。

調達資金の使い道としては、大規模な展開型ラジエーターの自社製造ラインの構築や、Starshipの打ち上げ枠の事前確保のための予約金が挙げられた。解説役は、宇宙データセンターといっても単に施設を作ればよいのではなく、最大のボトルネックは熱であり、だからラジエーターが重要なのだということが、この会社を見るとわかると述べた。

日本からの参入余地:AIの提案と解説役の留保

番組では、日本での応用案をAIに考えさせた結果も紹介された。案は三つある。一つ目は「スペースエッジ・ソフトウェアレイヤー」で、巨額の打ち上げ費用を避け、JAXAや民間衛星向けに汎用AIチップの放射線エラーを補正するミドルウェアに特化する。二つ目は「アドバンスト・サーマル・マテリアルズ」で、日本の素材産業を生かし、超軽量・高効率な放熱ラジエーターのサプライヤーになる。三つ目は「ソブリン・スペースノード」で、防衛省などの政府向けに、災害時でも機能するセキュアな軌道上データストレージを提供する。参入手順としては、地上で素材やソフトウェアを実証し、既存の小型衛星に相乗りして宇宙での実績を積むことが推奨された。

解説役はこれらを、AIらしく保守的な選択肢だと評した。富田氏が、地上でのソフトウェア実証に日本らしさを生かせる点はあるのかと尋ねると、解説役は、JAXAの宇宙線データや、重粒子線治療施設などの加速器を活用する可能性はあるかもしれないとしつつ、「正直わからない」と答えた。資金調達も米国と同規模は難しいだろうとし、だからこそAIがサイズの小さめな選択肢を提案してきたのではないかと推測した。

学べることとして示された三つの点

最後に解説役は、Starcloudから学べることを三つにまとめた。第一は第一原理思考である。直感的に馬鹿げて見える発想でも、数式や物理法則で裏付け、物理的には可能だときちんと言えることが重要だという。第二は、完璧を待たずに楔を打つことだ。Starshipの完成やコスト低下を待たず、今の高コストなロケットでも黒字になる衛星向けエッジ計算というニッチ市場で実績を作り、フェーズ1をクリアしてから大きなビジョンへ向かう。第三は、制約を逆手に取ることである。地球の水や土地の制約を、宇宙の空間、真空、無尽蔵の太陽光という利点に置き換え、その代わりに生じる放射線などの問題をエンジニアリングで解決する。

そのうえで解説役は、物理的・構造的な制約について、その制約が存在しない場所や環境はないかと問い直すこと、第一原理で計算してみること、指数関数的な変化のカーブが交差する点に機会がないかを見ること、そして日付を先に決めて打ち上げ枠を予約してしまうような進め方を勧めた。

富田氏は感想として、アップサイドは非常に大きいが足元ではニッチ市場を確実に取るという点がスタートアップらしく、以前はSaaSで行われていたやり方がそのまま応用できるのが面白いと述べた。解説役も、大きな事業は無理だと諦める前に、理論的には可能であり、最初の一本目はこれができる、という道筋を見つけることが起業家の発想を広げるのではないかと応じた。ただし、95%のコスト削減、モジュールの廃棄とデブリの扱い、AIハードウェアの更新周期への対応など、番組中で解説役自身が「本当かな」「まだ見えていない」と留保した点は、未解決の問いとして残されている。