アルミニウムを燃料にしてデータセンターの「電力待ち」を埋める:Voya Energyの一次電池戦略

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概要

FoundX Review Startup IdeaCastの今回の回では、スクラップのアルミニウムを固体燃料として使い、燃やさずに現地で発電するシステムを開発するVoya Energyを取り上げている。番組はAIで海外スタートアップの情報を整理して紹介する形式で、冒頭で「AIを使って整理しているため情報が古い・誤っている場合がある」と断っている。紹介役がこの会社を選んだのは、以前からデータセンター向け発電事業を調べていたことと、アルミニウムで発電する技術自体を知らず面白いと感じたことが理由だという。

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中心の問いは、充電できないという弱点を抱えたアルミニウム空気電池を、どうすれば事業として成り立たせられるかである。紹介役は、Voya Energyが「二次電池を目指すのではなく一次電池として使い、システム全体で循環させる」という発想の転換をしている点に注目している。

前置き:ディープテックを「12マス」で見る

本編の前に、FoundXの馬田氏が書いた記事「12のマスで考えるイノベーションの戦い方と時間軸」が話題になった。記事は供給リスクを4段階、需要リスクを3段階に分け、ディープテック企業を12のマスに位置づける。企業の位置は一度決まって終わりではなく移動していくとも書かれている。

紹介役は、ディープテックをもっと細分化して見るべきだという主張に同意した。自社がいまどのマスにいて、将来どこに移るのかを考えながら進めれば、戦略や最初のポジショニングも変わってくる。スタートアップを育てる立場から見ても、企業の現状を把握するのに必要な考え方だという。

執筆の狙いについて、馬田氏は二つを挙げた。一つは日本がどこで勝てるかを考えたかったこと。もう一つは、エンジニアリング寄りの領域にはなかなか補助金が出ないが、そうした領域もディープテックであり支援が必要な場合がある、と伝えたかったことである。紹介役はこれを「供給リスクがサイエンス側に極端に寄った領域以外もきちんと見よう」というメッセージと受け止め、自分も反省しながら読んだと話している。

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Voya Energyの全体像

紹介役によれば、Voya Energyはスクラップのアルミニウムを固体燃料とし、燃焼させずにその場で発電するエネルギーシステムを開発・提供している。特徴は、リチウムイオン電池のように充電して繰り返し使う二次電池ではない点にある。アルミニウムをペレット状にして物理的に補給し、使い終われば次のアルミニウムを入れる一次電池として運用する。

同社は燃料のアルミペレット、発電機、そして反応後に生じる副産物の回収までを一体で設計しており、紹介役はこれを「フルスタックに近いアプローチ」と表現した。

同社が売っているのは最も安い電気ではない。AIデータセンターの急増で電力が不足し、送電網の拡張待ちで系統接続までに長い時間がかかる。既存のディーゼル発電には環境規制や騒音規制がある。こうした状況で、系統接続を待たずに事業を始められる電気を価値として提供する企業だ、と紹介役はまとめている。

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アルミニウム空気電池という技術と、その弱点

馬田氏から、金属を燃料にする方法は新しいのかという質問が出た。紹介役によると、アルミニウム空気電池という技術は以前からあり、先行企業もいくつか存在する。負極にアルミニウム、正極に空気中の酸素を使って発電する金属空気電池である。

利点として紹介役は、エネルギー密度が高くリチウムイオン電池を上回る大容量を実現できること、アルミニウムは資源が豊富で安価なこと、発火の危険性が低いことを挙げた。一方で充電が難しいという課題がある。二次電池として使えるアルミ電池を作ったというニュースも出てはいるが、まだ完全には確立されていない。そのため従来はリチウムイオン電池のように二次電池として使える技術ではなかった、というのが紹介役の説明である。

そのうえで紹介役は、Voya Energyの面白さは技術そのものの新規性以上に、アルミニウムをペレット化して自動供給し、データセンター向けのメガワット級システムとして仕組みを組み上げた点にあると見ている。

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顧客の課題:「Time to Power」

想定顧客は、系統接続で開発が止まっている事業者である。最大のペインは「Time to Power」、つまり電力が手に入るまでの時間だ。送電網の整備を待つと数年かかり、その間に機会損失が生じる。

では代替手段はどうか。紹介役によると、ディーゼル発電機はすぐ用意できても、NOxや騒音の問題で環境アセスメントや地域住民の反対をクリアできず、使えないケースが増えているという。リチウムイオン電池は短時間の発電には向くが、数日間にわたるバックアップを賄おうとすると大きな敷地と多額のコストが必要になり、現実的ではない。

似た課題を抱える業界として、紹介役は建設現場、鉱山のような遠隔地、災害対応のインフラ、充電インフラが追いついていないEVトラックの充電ステーションを挙げた。ただし規模が最も大きいのはおそらくデータセンターであり、同社の初期市場は系統接続までをつなぐ「ブリッジ電源」としての用途が想定されている。

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解決策:燃料・発電・副産物をコンテナに分ける

システムは、10フィートコンテナの燃料コンテナ、20フィートコンテナの発電モジュール、10フィートコンテナの副産物コンテナで構成されるモジュール型である。

紹介役が伝えた数値は次のとおりだ。アルミニウム燃料のエネルギー密度は1リットルあたり22kWhとされ、ディーゼルの2倍、リチウムイオン電池の70倍だという。その結果、約400平方メートルの広さで100MWの出力と10GW分の電力を提供でき、ディーゼル発電機と比べて4倍ほどコンパクトになるとされる。燃焼ではなく電気化学反応で電気を取り出すため排気ガスが出ず、音も静かである。変換効率は会社の主張で57%程度で、ディーゼルの35%より高い。紹介役はこれらを会社側の主張や「言われている」数値として紹介している。

副産物について馬田氏が尋ねると、紹介役は、出るのはただのゴミではなく水酸化アルミニウム(ATH)で、安定した粉末になると説明した。水処理や難燃剤などの工業原料として使われるため、売却する方針だという。ただし反応に伴って水素も発生するため、その安全性をどう担保するかは課題だろうと紹介役は見ている。

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市場:AIデータセンターとオフグリッド電源

対象市場の全体は米国の発電機・バックアップ電源市場で、100億ドルを超える規模と言われているという。成長のドライバーはAIである。米国のデータセンターの電力消費シェアは2023年に約4.4%だったが、2028年には最大12%まで増えるという予測もあると紹介役は伝えた。加えて、気候変動による異常気象への備えとして、送電網から切り離されても動くオフグリッド電源の需要も高まっている。

初期市場は電力逼迫が顕著な米国内、特にカリフォルニアが中心だという。ただしインフラの制約は日本にもあり世界的な課題でもあるため、グローバル展開も可能な事業だと紹介役は考えている。

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ビジネスモデル:オープンループからクローズドループへ

紹介役が「面白いところ」として強調したのがビジネスモデルである。最初はオープンループで始める。市場でスクラップのアルミニウムを買って燃料にし、発電後の副産物ATHは産業原料として外部に売る。課金は、ハードウェアの販売またはリースと、継続的に消費される燃料ペレットの販売の組み合わせで、紹介役はこれを「髭剃りの刃」のモデルにたとえた。

長期的にはクローズドループを目指す。回収した水酸化アルミニウムを、再生可能エネルギーが余って電気代が安い地域へ運び、そこでアルミニウムに還元して燃料に戻し、また使う。これが実現すれば同社は燃料供給事業者になり、利益率とサステナビリティが上がると見込んでいるという。

最初からクローズドループをやらない理由を馬田氏が尋ねると、紹介役は、アルミの還元工場を建てるには資本投資も時間も必要で、許認可を取る手間もあると答えた。それを待っていては機会を逃すため、あえて最初は還元まで行わず、既存のサプライチェーンを使う選択をしているようだという。最初のアルミニウム燃料プラントの建設開始は2030年に設定されており、4年ほどで移行することを見込んでいるようだ。

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戦略:何を内製し、何を借りるか

最終的に同社が狙うのは、エネルギー供給のクローズドループを握る垂直統合である。ただし紹介役によれば、内製して知財を守るのはコア技術に限られる。金属の腐食を防ぐ独自の電解液とセル設計、そしてアルミニウムをペレット化するプロセスにリソースを集中している。燃料のスクラップは既存の回収網から調達し、輸送には一般的な10フィート・20フィートの輸送コンテナをそのまま使う。これによりインフラ投資を抑えながら燃料を届ける体制を作っているという。

馬田氏は、スクラップアルミはリサイクル業者などと取り合いにならないかと疑問を出した。紹介役はその通りだとし、特に高品質なスクラップは既存産業と競合すると説明した。同社の強みは、既存のアルミ再生プロセスでは扱いにくい低品位のスクラップでも燃料にできる技術にあるという。

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ロードマップ

紹介役が示したロードマップは3段階である。

  1. PMFと実証:50kWから2MWのモジュールを構築して認証を取得し、2MWのシステムでデータセンターなど1〜2社とパイロットを行い、経済性と安全性を証明する。現在はこの段階にある。
  2. 拡販と量産:カリフォルニアの2万8000平方フィートのパイロット工場から、最初のギガファクトリーの着工へ進む。商業展開で資金を回収し、コストを最適化する。
  3. 2030年以降:数百MW規模の展開に加えて、アルミ還元プラントを自前で稼働させ、クローズドループを実現する。

リサイクル網の自社構築はフェーズ3以降に回し、まずは既存のスクラップで電力不足を解決してトラクションを稼ぐ構成になっている。

2027年に初期導入というのはかなり速いペースではないか、という馬田氏の問いに、紹介役は同意した。2025年創業で約2年でメガワット級のシステムというのはとても速い。背景として、同社が投資ファンドの内部で技術探索を経てインキュベーションされた経緯があるのではないかと紹介役は推測している。

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ポジショニングと差別化

紹介役は、AIの整理がここはあまりうまくないと断ったうえで、同社のポジションを「長期間のオフグリッド稼働が可能で、かつ排出しない」ものと説明した。ディーゼル発電は長期間動くが環境負荷が高い。水素や鉄空気電池はクリーンだが、パイプラインなどの燃料インフラに依存する。リチウムイオン電池は充電用の電力網に依存し、充電に時間がかかる。これらと比べ、長時間稼働とクリーンさを両立する位置を取れているようだという。優位性としては、エネルギー密度が高く狭い場所でも設置できること、排気がなく静かなこと、燃料をコンテナで運べることを挙げた。

馬田氏は、本当にディーゼルの代替になるのか、起動がゆっくりになる可能性はないかと尋ねた。紹介役によると、同社はミリ秒単位でフルパワーまで立ち上げられると主張しており、そうであれば起動時間でもディーゼルと同等以上になる。ただし本当にできるかはまだ検証中ではないか、というのが紹介役の見方である。

腐食抑制技術の強みについては、アルミニウム空気電池では燃料のアルミニウムが発電を待つ間に自己腐食して使えなくなる弱点があり、それを止める電解液を開発したことが技術的なポイントだと説明された。

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初期の参入戦略:置くだけで使える

MVPは標準の10フィート・20フィートコンテナに収まる設計になっている。特別な配管工事や施設の改修を不要にし、トラックで運んで置くだけで使えるようにすることで、導入の摩擦を減らしている。

初期顧客の獲得については、紹介役は「おそらく」と前置きしたうえで、Energy Impact Partnersのネットワークや、元エネルギー責任者らが参加するアドバイザリーボードを活用したエンタープライズ営業を行っているようだと述べた。アドバイザリーボードには、大手テック企業でデータセンターのエネルギー戦略を担った人物や大手インフラ企業の創業者など、メガワット級の電力を買う側の立場を知る人が含まれているという。

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チーム:投資ファンド発のカンパニークリエーション

同社は、投資ファンドのEnergy Impact Partnersの内部で1年以上にわたり金属燃料の技術探索を行った後、インキュベーションされる形で生まれた。そのため初期チームに人材が揃っていると紹介役は説明する。

CEOのリチャード氏は元Cuberg CEOで、スタンフォード発の電池ベンチャーをNorthvoltに売却した実績を持つ。CCOのマット・ホートン氏は元RivianやProterraの幹部で、モビリティやエネルギーの商業化と大型営業を知る人物だ。CTOのスティーブン氏は元Appleの材料科学部門のヘッドで、科学的なブレークスルーを製品に落とし込む方法に詳しい。科学、商業化、資本調達のピースを最初から揃えている点が強みだという。

カンパニークリエーションのメリットを馬田氏が尋ねると、紹介役は、投資家が最初から市場のペインと技術の実現可能性をある程度検証したうえで起業させるため、「プロダクトを作ったが売れない」というディープテック特有の状況に陥るリスクを下げられる点を挙げた。

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初期の学び:腐食の抑制と速いスケールアップ

アルミニウム空気電池には、待機中に金属が自己腐食する、副産物が詰まって反応が止まる、といった弱点が昔からあった。紹介役によると、同社は低温環境、独自の電解液、ペレットを少しずつセルに送り込む供給制御によって、腐食を99%抑制することに成功したという。

紹介役がさらに驚いたのは開発速度である。2024年に紙の上でアイデアが生まれ、そこから12か月で目標性能のセルを構築し、翌年にはセルを30倍にスケールアップしてパイロット工場を開設したという。

馬田氏が「これは本当にできるものなのか」と尋ねると、紹介役は、最初から12か月で達成できると見込んでいたかは分からないし、過去の基礎研究の蓄積もあるだろうと留保した。そのうえで、CTOをはじめとするエンジニアチームが最初から量産の仕方を考えて逆算して設計したことが大きいのではないか、いかに早く大きくするかを最初から考えて進めれば速くなるのかもしれない、と推測を述べた。

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資金調達と投資家

紹介役によると、同社は2025年に1300万ドルのシードを、2026年8月にシリーズAで3500万ドルを調達し、公開ベースで計4800万ドルを集めている。リード投資家はEnergy Impact Partnersで、Founders FundやJohn Doerr氏など気候変動分野のトップ投資家も参加している。加えて、Activate Fellowshipのネットワークやカリフォルニア州のEPICプログラムといった公的な助成金・グラントも活用し、初期の資本負担を軽くしている。

シリーズAの3500万ドル(約50億円)はハードウェア系として妥当か、と馬田氏が尋ねた。紹介役は「標準か少し大きめくらい」と答えた。MW級のパイロット工場を立ち上げ、これから量産設計に入る段階としては標準的か少し大きい規模で、極端に大きいわけではないという。また、防衛系やインフラ系のファンドも入っていることから、単なる環境技術ではなく国家の重要インフラとしても見られていると推測されている、と紹介役は付け加えた。

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日本に応用するなら

番組ではAIに日本での応用案を考えさせ、紹介役が三つを紹介した。案Aは、郊外などで系統接続に時間がかかっているデータセンターへの適用。案Bは、自治体や離島向けに防災・レジリエンスのためのクリーンな分散電源として構築する案。案Cは再エネ余剰活用型で、北海道など出力制御が起きている地域でアルミを還元して燃料を作る案である。日本独自の条件としては、アルミ缶のリサイクル率が高いことから、非鉄金属のリサイクル業者と組めばサプライチェーンを築きやすいのではないかという提案もあった。

これに対し馬田氏は、日本のアルミスクラップはかなり取り合いになっている印象があると指摘した。紹介役もその通りだとし、既存産業では使い道のない低品位スクラップを使えるという同社の技術が日本でも通用するのか、そのうえでコスト競争力を持てるのかは検証すべき点だと述べた。

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まとめと残った問い

紹介役は最後に三点を挙げた。一点目は常識の転換で、電気を電池に貯めるのではなく金属そのものを燃料にする。二次電池を目指さず一次電池とし、システム全体でクローズドループを目指すという発想が面白いという。二点目は段階的なスケールで、最初から自前のリサイクル工場を作らず、既存のスクラップとコンテナ物流を使って目の前のデータセンター電力不足というペインを解きに行く。三点目は実行体制で、すぐに真似できるものではないとしつつ、科学・営業・資本の人材を最初から揃えることで「顧客がいない」段階を駆け抜けやすくなるという。考えるヒントとして、自分の業界にありふれた物質や廃棄物を、エネルギーや別のキャリアとして使えないかを考えてみてほしいと呼びかけた。

馬田氏は、技術の発想の転換も重要だとしつつ、この短期間でここまで事業を進めていることに感心していた。紹介役は、12か月でセルを30倍にしたのは非常に速く、どうやって開発したのかが気になると述べた。CTOを含め、エンジニアリングチームの構成自体を最初から狙って組んでいたのだろうと推測しつつ、その具体的な進め方は未解決の問いとして残された。