常温・無加圧でPETを原料に戻すDePolyの戦略 ― FoundX IdeaCastが読み解く「制約の排除」とドロップイン供給

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概要

FoundXのポッドキャスト「FoundX Review Startup IdeaCast」は、海外スタートアップの事例をAIで整理・分析して紹介する番組である。今回取り上げたのは、スイスのクリーンテック/ディープテック企業DePoly。紹介役がこの会社を選んだ理由は、PETをリサイクルする技術そのものよりも、既存のサプライチェーンにそのまま組み込める事業設計がうまいと感じたからだという。番組の冒頭では、情報はAIを使って整理しているため古かったり誤っていたりする可能性があり、事実を重視する場合は自分で一次情報を確認してほしいという断りがあった。

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雑談:スタートアップの「数」と「成長」

本題の前に、紹介役は最近読んだ野村総合研究所(NRI)のマネジメントレビューのレポートを紹介した。レポート自体は、AIを活用したデータプラットフォームをスタートアップ支援に使ってはどうかという提案だった。紹介役が共感したのは冒頭の整理のほうで、日本成長戦略会議の資料をもとに、スタートアップが生む社会価値を「スタートアップの数×個社の成長力」と表していた点だという。アクセラレーターを運営していると採択数を伸ばしたくなりがちだが、採択後の事業成長まで見据えて選び、支援を続ける必要がある。紹介役はレポートを読んでその点を改めて意識したと話した。

DePolyとは:分子レベルまで分解して原料に戻す

DePolyは2020年創業のスイスのスタートアップで、PET(ポリエチレンテレフタレート)とポリエステル製品を対象にしたケミカルリサイクル技術を開発している。一般的な機械リサイクルは、プラスチックを溶かして型に入れ、もう一度成形する物理的な処理である。DePolyは化学反応でプラスチックを分子レベルまで分解し、純度の高いプラスチック原料に戻す。そのためバージン材と同じものを作れる、と紹介役は説明した。同社は世界経済フォーラムのテクノロジーパイオニアにも選ばれている。

同社が掲げる目標は、廃プラスチックをバージン同等の原料に戻して完全な循環を実現し、化石資源への依存を断つことだ。あらゆるPET・ポリエステルを品質低下なしに繰り返し循環させることを目指している。紹介役によれば、世界で生産されるプラスチックのうちリサイクルされているのは9%程度にとどまり、多くは焼却、埋め立て、ポイ捨てに回っている。追い風として挙げられたのは、EUの包装規制と、2025年に発効する廃棄物枠組み指令(Waste Framework Directive)による繊維のEPR(拡大生産者責任)である。EPRは、ブランドなどの生産者に使用済み製品の回収やリサイクル費用の負担を義務づける仕組みだ。これが導入されると大量の廃棄衣料が回収されるようになり、リサイクル技術への需要が増える。DePolyは自社を単なるリサイクル工場ではなく、廃棄物から基礎原料を作って既存のサプライチェーンを置き換える「サプライチェーン再設計」の担い手と位置づけているという。

聞き手が「以前紹介した企業もスイスだった」と指摘すると、紹介役は二つの背景を挙げた。CEOがスイスの大学出身であること、そして欧州で規制が強まっていることだ。聞き手は、スイスでは炭素価格が高いことも関係しているかもしれないと付け加えた。

PETとポリエステルに絞っている理由について、紹介役は次のように説明した。飲料ボトルや衣料品として世界で大量に消費されている。一方で、汚れを含むものや複合素材のものは既存手法ではリサイクルが難しい。だから解決できたときのインパクトが大きい、という見立てである。プラスチックのリサイクルが進まない理由としては、分別と洗浄のコストが高いこと、素材が混ざっていたり汚れや着色があったりすると既存手法では処理できないこと、処理できても品質が下がって新品と同じ用途には使えないことが挙がった。

課題:汚れ・混在・着色の壁と、高温高圧のコスト

DePolyが向き合う壁は「汚れ」「混在」「着色」の3点だと紹介役は整理した。主流の機械リサイクルは透明できれいなボトルには有効だが、色付きのプラスチック、異物や汚れが混じったもの、ポリエステル繊維には向かず、品質が下がるダウングレードを避けられない。衣料品が特に難しいのは、染料で着色されているうえ、綿やポリウレタンなど他の繊維と混紡されていることが多く、純粋なポリエステルだけを取り出しにくいからだという。

従来型のケミカルリサイクルにも限界がある。PETの強固な結合を分解するには、大きな熱エネルギーと圧力、あるいは特殊な触媒が必要になる。紹介役が示した例では、0.5トンのPETの分解に4万kJのエネルギーを消費し、バージン製造の6倍のコストがかかるという。

こうした背景から、DePolyは高品質な再生原料を必要とする包装材メーカーやアパレルブランドを顧客に据えている。食品や化粧品の容器は口や肌に触れるため安全基準が非常に厳しく、品質の劣る機械リサイクル材は使えない。アパレルはブランド価値の面でも繊維から繊維への循環を実現したいが、現状ではペットボトル由来の再生材に頼っている。この二つが解決すべきペインとして紹介された。

解決策:常温・無加圧で混合廃棄物をPTAとMEGへ

DePolyのコア技術は、PETを常温・無加圧で解重合し、PTA(テレフタル酸)とMEG(モノエチレングリコール)に直接分解するプロセスである。使う薬品は特殊で危険なものではなく、家庭用レベルの安全な市販品だという点も紹介役は強調した。条件が穏やかなため、未選別・未洗浄のごみや他のプラスチックが混ざった廃棄物をそのまま投入できる。その結果、選別・洗浄の前処理コストと加熱・加圧のエネルギーコストをともに下げられる。最終製品のCO2排出量は最大66%削減できると試算されている。バージン材と完全に同等のPTAとMEGを直接つくれることが最大の価値だと紹介役は述べた。

聞き手は「選別も洗浄もいらないのはすごい」と反応した。紹介役によれば、パイロットプラントでの実績はあるものの、どの程度の汚れまで許容できるかは分からなかった。混合物を扱える理由は、反応がPET・ポリエステルの結合にだけ選択的に作用するためだ。ポリエチレンやポリプロピレンなど他のプラスチックは分解されずに元の形のまま残るので、PETが溶けた後に分離すればよい。

使っている薬品について、紹介役は特許情報も読み込ませたうえで、水酸化ナトリウムのような一般的なアルカリなど身近な薬剤を使っているようだと答えた。ただし企業秘密・ノウハウにあたる部分で、詳細は分からなかったという。CO2削減の根拠は、化石燃料から新たにPTA・MEGを製造する工程の排出を回避できることと、常温無加圧でプロセス自体のエネルギー消費が少ないことを合わせて計算したものだと説明された。

市場:包装と繊維の二正面

対象市場として紹介役が挙げたのは、プラスチック市場全体で5000億ドル規模、年平均成長率はおよそ5%という数字である。そのうちDePolyが狙うSAMは、機械リサイクルが難しく現状は焼却・埋め立てに回っているペットボトル、包装材、ポリエステル繊維だ。当面の獲得対象は、厳しい基準が求められる食品・化粧品の包装材と、完全循環を目指すアパレルブランドの高品質再生材需要である。成長のドライバーとしては、消費者の環境意識に加えて、EUの規制と企業のスコープ3排出削減目標が強制力を持っている点が挙げられた。

衣料と包装材のどちらが魅力的かという質問に対し、紹介役は、現状は両方にアプローチしていると答えた。包装材は食品接触基準というハードルがあるが、クリアすれば高単価を狙える。繊維は未処理の廃棄量が多く、ブランド側の課題意識も強いためポテンシャルが大きいと見られている。聞き手も、繊維リサイクルのスタートアップがいくつか出てきていると応じた。PE・PPの市場を狙わないのは、技術のコアがPET・ポリエステルのエステル結合の分解にあるからだ。将来は他の樹脂への拡張も示唆されているが、まずは得意領域でスケールを狙う方針だという。

ビジネスモデル:バージン原料と価格で競うドロップイン供給

DePolyのビジネスモデルの中心は、再生モノマーのPTAとMEGを既存の化学メーカーや樹脂メーカーに販売するB2Bのドロップイン供給である。目指しているのは、石油由来のバージン原料と同じ価格帯で競争できる構造だ。常温無加圧プロセスによる運用コスト(OPEX)の低さと前処理コストの低さがそれを支える。特殊な高温高圧リアクターが不要で汎用設備を使えるため、設備投資(CAPEX)も抑えられる可能性がある。スケールするほど規模の経済が働き、バージン材に対する価格優位が高まる、と同社は主張しているという。

聞き手が本当にバージン原料と勝負できる価格になるのかと問うと、紹介役は、現状の規模では難しいかもしれないが、スケールした際にはバージン価格と競争できると同社が明言していると答えた。根拠は、原料が廃棄物なので安価か無料で調達でき、エネルギーコストも抑えられることだ。聞き手は、廃棄物を集める物流は大変そうだが、未洗浄・未選別で処理できるならそこのコストを減らせるかもしれないと述べた。紹介役は、回収ネットワークがあることが前提になるかもしれないと付け加えた。

収益源については、公開情報を見る限り、自社でプラントを建設・運営してモノマーを販売するモデルが主軸だという。将来の展開では技術ライセンスもありうる、というのが紹介役の見立てである。

ドロップイン戦略:既存インフラのボトルネックだけを置き換える

紹介役がDePolyの面白さとして挙げたのは、新しい環境対応型プラスチックを一から作って普及させるのではなく、既存素材であるPETの部品にあたるPTAとMEGを作っている点だ。抽出したモノマーは既存の化学工場や樹脂メーカーの設備にそのまま投入できるため、顧客は新たな設備投資やプロセス変更を一切必要としない。DePoly自身も、コストとノウハウが要る重合(モノマーからプラスチックを作る工程)や最終製品の成形には手を出さず、分解してモノマーを作る部分に特化している。エコシステム全体を変えるのではなく、既存インフラを活用しつつ、ボトルネックになっている「廃棄物から原料に戻す」工程だけを置き換える戦略である。

ドロップイン戦略の利点について紹介役は、顧客のスイッチングコストを下げられることを挙げた。既存の機械も製法も変えずに仕入れる原料を変えるだけでサステナビリティ目標を達成できるので、導入が進みやすい。既存の巨大化学メーカーは敵か味方かという問いには、むしろ強力なパートナーになると答えた。大手化学メーカーも化石燃料からの脱却を迫られており、実際にDePolyの出資者には世界最大の化学メーカーBASFの投資部門が入っているという。

ロードマップ:技術リスクと資本リスクを切り離す段階的スケール

ロードマップは段階的なスケールアップで、技術リスクと資本リスクを切り離していく典型的なモデルだと紹介役は評した。

  • フェーズ1:1kgのラボ環境から年間50トンのパイロットプラントへ拡大。未選別のごみから本当に純粋なモノマーが作れるかという技術的な成立性を検証した。
  • フェーズ2(2024〜2025年):年間500トン規模の小規模プラントを建設。技術の再現性に加え、ユニットエコノミクスが成り立つかも検証している。
  • フェーズ3(2027年以降):本格的な商業プラントを稼働させ、グローバル展開を図る。

最初から大きな資金を集めて巨大工場を建てるのではない。マイルストーンごとに必要なデータを出し、それを使って次の資金と次の顧客を確実に取りに行く手堅いアプローチだという。

50トンから500トンへ移るときの壁について、紹介役はエンジニアリングの課題だろうと述べた。バッチ処理で済んでいたものを連続運転に移すには、不純物を継続的に分離する効率を高め、溶媒を回収・リサイクルする必要がある。そこでの化学的な課題が壁になったようだという。500トン規模のデモプラントは、次の大型プラント建設のためにプロジェクトファイナンスを提供する銀行・投資家と、数千トン単位で原料を購入するブランドや化学メーカーに対して、経済合理性を証明するためのものだった。最初の商業プラントは自社主導で計画しているようだ。規模拡大の段階では、大手化学会社とのジョイントベンチャーやライセンス供与も選択肢になりうると紹介役は見ている。

競争優位:最も扱いにくい原料を最も軽い条件で処理する

DePolyのモート(競争優位)について、紹介役は技術そのものより、その技術がもたらす「制約の排除」が特徴的だと述べた。前処理の必要性と、必要な設備・エネルギー負荷という2軸で見ると、DePolyは前処理がもっとも少なく、エネルギーもほとんど使わない位置にある。そこから、常温無加圧、未選別・未洗浄への対応、低いCAPEX、バージン材と同等の品質、ドロップインの互換性といった強みが生まれる。他のリサイクル技術企業との違いは、処理条件の穏やかさと、汚れや混在を受け入れる原料許容度の広さにあるという。聞き手は、日本のJEPLANも名前が挙がっていたと触れた。

酵素分解を使うCarbiosとの違いを問われると、紹介役はアプローチの違いだと答えた。DePolyは化学的に分解し、Carbiosは酵素を使うバイオ的なアプローチをとる。DePolyは酵素を使わないのでコストや反応時間の制約を受けず、より安価でシンプルな薬品で処理できると主張しているという。他社が真似できないのかという問いに対しては、特定の触媒配合と反応プロセスの制御について特許を取得しており、それが壁になっていると説明した。混合ごみから不純物を効率的に分離するシステムにもノウハウが詰まっているようだという。最大の脅威としては、Eastmanのような既存大手化学メーカーが資本力にものを言わせて高温高圧プラントを巨大化させ、規模の経済で価格競争を仕掛けてくる事態が挙がった。

初期市場:品質要求の最も高いアパレルと食品包装から

最初の入り方として、DePolyは品質要求が極めて高いアパレルと食品包装を突破口にした。初期のターゲットはスイスのスポーツアパレルブランドや包装材の開発企業だった。食品包装には厳しい安全基準があり、アパレルは品質低下による機能性の喪失を嫌う。どちらも機械リサイクルでは限界があり、バージン同等の品質がどうしても欲しいというペインを抱えていた。初期の実証では、服やボトルまで自社で作ることはしなかった。純粋なPTAを生成してパートナーに渡し、相手の既存ラインで製品化できるかという点に絞って証明したという。聞き手は、自国に最初の顧客・需要家がいるのは良いことだと評価した。

アパレルブランドとの実証では、生産工程で出るポリエステルの端材をDePolyの技術でモノマーに戻し、バージン同等の糸を作って製品化した。繊維から繊維への循環のコンセプト実証に成功したということだ。聞き手は、Redwoodも端材から始めていた記憶があると重ねた。食品接触基準については、過去のごみに含まれていた有害物質が新しい製品に移らないよう、それが一切残っていないことを証明する必要があり、非常に難しいという。DePolyは分子レベルまで分解して精製するため不純物を除去でき、基準をクリアできることが強みになっている。自動車部品や建材など他のPET用途も技術的には可能なようだが、高品質であることに最も高い対価を払ってくれるという理由で、まずアパレルと食品包装に集中しているという。

創業の経緯:マイクロプラスチックへの危機感と研究室からの社会実装

創業のきっかけは、CEOのサマンサ・アンダーソン博士がEPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の博士課程在籍中に、マイクロプラスチックが人体に侵入しているという報告を読んで強い危機感を抱いたことだという。アンダーソン氏は単なる研究にとどめず社会実装を目指し、既存のリサイクル産業の構造を分析したうえで、根本的な解決には新しい化学的アプローチが必要だと考えた。その後ラボで何百回も反応テストを繰り返し、6〜9カ月かけて現在の技術のプロトタイプを見つけた。同じラボの研究者とチームを組み、有機化学とビジネス(アンダーソン氏)、プロセス工学とスケールアップ、材料の3分野で役割を分担したという。

アンダーソン氏にもともとビジネス経験はなく、純粋な研究者だった。コンペやアクセラレータープログラムを通じてビジネスプランの作成やピッチを特訓し、技術を投資家に伝える力を育てていったという。社会実装で直面した困難として紹介されたのは、ラボのサンプルはきれいなので、本当に汚れたごみでも使えることを証明しなければならなかったというエピソードだ。そのために廃棄物処理施設の敷地内にパイロット設備を建てるなど、現場での実証にこだわったという。

マイルストーンとしては、まず常温でPETを完全分解できるかという仮説を1kgバッチのテストで確かめ、特許を出願した。2019年には技術が機能することを示したうえでビジネスプランを書き、EPFL関連の起業コンペで優勝した。これが大きな転機になったという。2020年に会社を設立して年産50トンのパイロットプラントを立ち上げ、2024年には世界経済フォーラムのテクノロジーパイオニアに選ばれた。パイロットプラントの資金には、コンペの賞金、フランス語名の財団(紹介役は「ファンデーション・フォー・イノベーション・テクノロジー」と読んでいた)の資金、シードラウンド、スイスや欧州の初期支援プログラムの助成金が使われたという。聞き手は、コンペ優勝から会社設立までの流れを、ある意味理想的で着実な成長に見えると評した。

資金調達:希薄化を避けたグラント活用とバリューチェーン上のCVC

資金面では、技術リスクの高い初期に株式の希薄化を防ぐため、助成金・グラント・コンペ賞金を徹底的に活用して「死の谷」を越えたという。パイロット実証が進んだ2023年にシードラウンドで1380万ドルを調達し、2025年には同ラウンドのセカンドクローズとして総額2300万ドルまで拡大した。投資家には金融系VCに加え、BASFや、ニベアを展開するBeiersdorfのCVCなど、バリューチェーン上の戦略的プレイヤーが入っている。紹介役はこれを面白いポイントに挙げた。チームは創業時の3名から、CFOなどの専門人材を含む40名以上に拡大している。

BASFの狙いについて紹介役は、自社の化学品サプライチェーンをサステナブルにすることが大きかったようだと答えた。Beiersdorfには、自社の化粧品パッケージの100%リサイクル化を達成するという目標があったという。

日本に応用するなら:三つのシナリオ

最後に紹介役は、日本のインフラや規制に合わせた三つのシナリオを示した。一つ目はブランドとの共同で、アパレルブランドと組み、端材を起点に衣類から衣類へ戻す実証を行い、ブランドのESG発信と直結させる案である。二つ目は自治体との連携で、焼却率が高いという日本の特徴を逆手に取る。自治体のごみ処理施設に隣接してプラントを設け、原料を確保しやすくすると同時に、処理残渣の焼却やエネルギーの活用も一体化させる。三つ目は既存のプラントエンジニアリング大手とのジョイントベンチャーで、日本企業の設計・調達・建設の技術と資金力を活かし、資本集約型事業の壁を早く越えることを狙う。

紹介役は、日本の強みとして世界トップクラスの分別回収インフラを挙げた。きれいなごみが集まるので原料の質と量を確保しやすく、海外に対する強力な障壁になりうるという。聞き手は、日本はペットボトルのマテリアルリサイクル率がかなり高く、その回収の仕組みは使えそうだと応じた。そのうえで、マテリアルリサイクルが比較的うまくいっている日本でどこに需要があるのかと問うと、紹介役は、飲料ボトルのリサイクルは進んでいるが、色付きのプラスチック、食品トレー、ポリエステル衣料の多くは焼却されているので、そこを開拓する需要はあると答えた。聞き手は、「サーマルリサイクル」は和製英語とされ、欧州ではエネルギー回収(energy recovery)と呼ばれてリサイクルとはみなされない傾向があると指摘した。その基準に沿っていくなら需要が出てくるかもしれないという見方である。紹介役は、残渣はそのまま焼却して熱もエネルギーとして使えるので、エコシステム全体の効率を上げる形もありうると補った。

日本のスタートアップがDePolyに勝つにはどうすればよいかという問いに対しては、技術はもちろんだが、日本の緻密な静脈産業と結びつき、安定的かつ安価に原料を調達し続けられる仕組みを制度レベルで作っていくことが重要になるだろうと紹介役は答えた。

このケースから学べること

締めくくりに紹介役は学べるポイントを3点挙げた。1点目は制約からの逆算で、「高温が必要」「洗浄が必要」という既存技術の常識を疑い、それを排除したプロセスを設計したこと。2点目はグラントの活用で、希薄化しない資金によってアイデアをラボレベルから工業条件でのテストまで引き上げたこと。3点目は段階的なスケールで、いきなり巨大工場を目指さず、小規模な実証で確実にデータを出し、それで次の資金と顧客を呼び込むサイクルを作ったことである。

明日から実践できるアクションとして紹介役が勧めたのは、解決したい産業課題で「当然」とされている前提を列挙し、それを外したときにどんなボトルネックが残るか、それが本当のボトルネックなのかを考えることだった。聞き手は、サーキュラーエコノミーの実現に日本でもぜひ挑戦してほしいと述べた。紹介役は、制度などの前提が異なるので、調べていくとまた別の壁にぶつかる可能性はあると留保をつけたうえで、何かの参考になればと話を終えた。