海外スタートアップ52社をAIで横断分析する:成長市場ではなく「次の不足」を探す

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概要

FoundX Review Startup IdeaCastは、放送回数が50回を超えたことを記念して特別編を組んだ。これまで1社ずつ紹介してきた海外スタートアップ52社をAIに横断分析させ、その結果にFoundXの馬田と富田がコメントしていく形式である。約半年分の回を並べてみて、自分たちの選び方にどんな傾向があり、そこからどんな勝ち筋が読み取れるのかを探った。

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AIが最初に示した大きな流れは、「大きな事業アイデアは次の不足にある」というものだ。成長市場の中心に入るのではなく、市場の成長によって次に生まれるボトルネックを狙う企業が多いという見立てである。馬田は冒頭で、この分析が必ずしも正しいわけではないと断ったうえで、AIの指摘に二人が自分たちの観点を加えていく進め方を示した。富田は「AIの方がよく分かっているのではないか」と冗談めかしつつ、人間らしい感覚でコメントすると応じている。

52社の全体像:エネルギー・製造、B2B・B2G、物理的な現場への偏り

最初に確認したのは、52社の分布である。エネルギーと製造の企業が大きな割合を占め、二人とも偏らせている自覚はあったが、実際に偏っていたと認めた。顧客の種類では大半がB2BとB2Gで、それ以外は5社程度しかなかった。B2Cに近い例として二人が思い出したのは、宇宙旅行の会社や、家庭向けの事業を持つベースパワーくらいだった。

物理的な設備や現場を伴う「重い」会社が多いことも、分析で改めて確認された。AI関連の企業もあったが、AIのモデルそのものより、電力、冷却、半導体、コスト管理といったAIの周辺需要を扱う企業が中心だった。例として、イスラエルのポイント5のようなクラウドコスト管理の会社も挙がっている。

AIはこの傾向を、「新しい消費需要をつくる企業より、すでに見えている需要を供給できない供給制約を解く企業が多い」とまとめた。需要リスクは取らず、供給リスクを引き受ける企業群だということだ。AIは同時に、これが世界のスタートアップ全体の分布ではないとも指摘した。富田は、一般にスタートアップと言われてこうした領域を挙げる人はまずいないだろうと応じている。一方で、消費者向けアプリ、教育、メディア、ホリゾンタルなSaaSは、AI系で多少関連する程度で、ほとんど取り上げていなかったと二人は振り返った。

なぜ「難しい供給側」に資金が集まるのか

馬田は、自分たちが選んできたのは「難しい供給側」の企業で、実際にこの領域に資金が集まっているのではないかと見る。背景にはAI、脱炭素、地政学、人手不足といった外部環境の変化がある。顧客の損失が大きく、既存産業では対応しきれず、ソフトウェアだけでは解決できない。そのため、物理レイヤーを含む領域に大きな資金が入っている、という解釈である。例として、100億円規模の資金を調達し、Nvidiaが出資しているとされるヘロンパワーが挙がった。

富田は、ニーズがすでにあるので、あとは供給をどれだけ早くするかの勝負になっていると整理した。例として挙がったのは、建設ロボットではなくゼネコン側まで踏み込んだオール3、最近取り上げたテラファーマ、番組初期に紹介した磁石のバルカンエレメンツ、国内製造を全部自分たちでやると打ち出したウエストマグなどである。

馬田は、電力、磁石、住宅のように何が足りないかが明らかなら、供給リスクを取れば済むのでこちらの方が取り組みやすいのではないかと述べた。富田も、新しい技術で供給するのか、既存技術を組み合わせるのかという攻め方の違いはあっても、供給リスクを取る点は共通していたと言う。

ただし二人は、こうした領域の難しさにも触れている。一般的なスタートアップのイメージとかけ離れているため、起業家が関心を持てるか、想像できるかは分からない。資金は集まりやすくても、最初の一歩をどう踏み出すか、小さく検証できるかが難しい。富田は、1社目の起業でこれをやるのはかなり難しいだろうと調べながら感じたと語り、補助金や助成金を活用する会社が多く、デットでの調達が非常に大きい会社もあったと指摘した。

成長の一歩先にある「次の不足」

AIのまとめによると、成長の一歩先には次の不足がある。AIが成長すれば、モデルだけでなく電力、冷却、コスト管理、検証が足りなくなる。宇宙経済が成長すれば、衛星だけでなく契約、決済、輸出管理、運用が足りなくなる。エネルギー転換が進めば、発電設備だけでなく系統、施工、蓄電、金融がボトルネックになる。フィジカルAIが広がれば、モーター、磁石、アクチュエーター、量産能力が不足する。すでに顕在化しつつある成長の次の段階にどう備えるかが、52社に共通する傾向だとAIは分析した。

富田は、宇宙の契約や決済に着目したネベックス(字幕表記)を聞いたとき、そこに目をつけるのかと驚いたと振り返る。宇宙分野の大きな契約のマーケットプレイスのようなものを今の時点で作るという発想が、この傾向を象徴していると感じたという。馬田は、既存の系統の余力を計算すれば電力は確保できるのではないかと考えるグリッドケアを挙げた。富田は、これはAI時代だからこそできる解決策で、今まさに求められているニーズだと評価している。

ボトルネックには種類があり、しかも移動する

馬田は振り返りの中で、ボトルネックにもいくつか種類があると整理した。電力を作って売ればよいという供給能力のボトルネック。グリッドケアのように時間帯ごとに調整して需給のミスマッチを解消するタイプ。規制のボトルネック。関係者間の契約や情報が足りない調整能力のボトルネック。

さらに馬田は、ボトルネックは移動すると指摘する。一つを解消すると次が詰まる。太陽光発電であれば、施工、保守、出力保証、金融と次々に詰まりどころが変わっていく。これに対して、垂直統合で一気通貫に対応するパターンと、次に詰まる箇所を先回りして準備しておくパターンがあると述べた。富田は、一気通貫の提供はボトルネックがどこに移ってもカバーできるので、戦略として理にかなっていると応じた。

供給制約を解く企業と、コモディティの難しさ

馬田は、需要側の企業ももっと取り上げたかったと言う。AIのモデル企業のように需要側を当てなければ大きくならない領域もあるからだ。それでも今回は、鉄、磁石、電力、肥料、住宅など、実行リスクや供給リスクのある企業を多く紹介した。例として、鉄のハーシャメタル、磁石のバルカンエレメンツ、モーターのウエストマグ、肥料のプラズマリープが挙がった。

富田は、普段は意識しないが確実に需要があるもの、つまりコモディティに近い領域が多かったと振り返る。馬田が、コモディティは利益を取りにくいという欠点があると指摘すると、富田は各社がそこを工夫していたと答えた。プラズマリープのように既存の肥料会社以外を顧客にしたり、アディティブドライブのように少量だけ欲しい顧客やなるべく早く欲しい顧客を相手にしたりする企業があったという。

馬田は、政策が絡む領域が多い点にも触れた。政策が変われば需要も変わるので、需要があると言っても本当にあるのかは慎重に見る必要がある。富田は、だからこそ風向きが良いうちに一気に踏み込む必要があると述べた。馬田は、難しい判断が多い領域ではあるが、いわゆるアプリ系より需要は見えやすく、どう参入するかについては参考になる知見が多かったとまとめた。

顧客が買っているのは製品ではなく「成果」

その知見の一つが、顧客が実際に何を買っているかである。馬田によれば、紹介した企業の多くは製品や機能ではなく、顧客が求める結果を提供していた。例として挙げたのは次の4社である。

  • クリティカルグループ(字幕表記)の顧客が欲しいのは蓄電池ではなく、事業に必要な電力を使えるようになるまでの時間短縮である。
  • マントレイト(字幕表記)の顧客が欲しいのは探査機器ではなく、掘削の失敗を減らすことである。
  • 望遠鏡を扱う宇宙企業の顧客が欲しいのは望遠鏡ではなく、観測データである。
  • ポイント5の顧客が欲しいのはコストのダッシュボードではなく、実際にクラウド費用が減ることである。

一方で馬田は、成果そのものを売ると、その分だけ責任とリスクも大きくなると指摘した。富田も、責任をどこまで負うかは戦略と密接に結びついていると述べ、ポイント5がそれをどんな仕組みで支えているのか気になったと話した。

馬田は、成果を売ると売り先も変わると付け加えた。同じ企業の中でも技術部門ではなく事業部門に売ることになり、予算も設備予算ではなく、機会損失や保険費用、リスク管理費用から払ってもらう形になりうる。富田は、成果の測定まで自社で担う企業にも注目した。結果が何を意味し、どこまで測れれば成果と言えるのかまでカバーし、成果が出るところまで保証する会社があったという。二人とも、何でも全部やればよいわけではなく、自社がどこまで制御できるかを見極めて範囲を切り分けることが難しいと認めている。

成果の中でも比較的多かったのが「時間」である。AI周辺では遅延や所要時間、エネルギーでは系統接続までの時間を売る企業が数社あった。馬田はこれをアメリカならではの事情に見えると述べつつ、早く納品することまで含めれば、時間を成果として売る例は他にも出てくるかもしれないと話した。富田は、宇宙系にも同じような話がちらほらあったと付け加えている。

垂直統合:ツールを売らず、新しい事業者になる

成果を保証するために多かったのが垂直統合である。DXを支援したりツールを売ったりするのではなく、自分たちが新しい事業者になる。馬田は、自分たちがそういう企業を好んで選んだ面もあるかもしれないと笑いながら、例を挙げた。オール3は設計AIにとどまらず工場と施工まで統合した。テラファーマは自動運転技術を売るのではなく、ゼネコンのように土木や解体の成果を請け負う。ジェットソンホームはヒートポンプに加え、見積もり、補助金、許認可、施工、保守までまとめて担う。ベースパワーも同じ系統に入る。保険のコーギーは、認可を受けた保険会社として自ら引き受けまで行う。二人はコーギーについて、カフェを開くなど話題づくりに熱心な会社だという印象も語っていた。

馬田の整理では、ツールを渡すだけでは顧客の成果を制御できないから、自ら統合して成果を保証する、という構図である。富田は、工程を別々の会社が担うと時間がかかり、責任範囲が曖昧になり、データも集まらずモデル改善に活かせないという問題があると補足した。自社で担えば、それが自社の改善にもつながる。

ただし富田は、すべてを垂直統合できるわけではないとも述べた。地域ごとの対応、人材、設備など負担は大きい。どの規模が最適かは領域によって違い、顧客にどんな成果を提供するかによって決まってくるだろうという。馬田は、日本でもAIネイティブカンパニーのような形で似た動きが出てきそうだとし、どこまで垂直統合できるかは業界ごとに異なると見る。垂直統合の会社は調達額が大きく、デットを使う例も多いため、資金調達できるかという問題もある。

それでも馬田は、フルスタックには学習が進みやすい利点があると強調した。以前ディープテックについての記事でも書いたように、部品の提供だけでは学習の機会が顧客側に移ってしまう。宇宙向け部品であれば、打ち上げに搭載されるのが2〜3年後で、それまで学びが得られないということにもなる。フルスタックにすれば最終成果の責任を負うことになるが、そのぶん学習は速くなりうる、というのが馬田の見方である。

「ない」のではなく「見えていない」未利用資産

次にAIが示したのは、「ないのではなく見えていない」という分析である。何かが不足しているとき、新しい設備をつくる前に、残っているものや捨てられているものがないかを確かめるとよい、という指摘だ。時間帯や場所ごとの系統余力を扱うグリッドケアがその典型である。

富田は、もったいない精神が強く、この種の会社を多く取り上げてきたと振り返る。使用済み太陽光パネルからガラス、銀、シリコンなどを取り出すソーラーサイクル。既存のやり方では扱いにくい原料を複数の金属の収益源に変えるスティルブライト。既存の排水処理施設を活用するグルーカーボン(字幕表記)。特にグルーカーボンについて富田は、既存資産をうまく回すだけでなく、炭素除去の価値を上乗せし、その証明まで行ってプラスの価値を出している点に驚いたと語った。ドロップイン型で、顧客の切り替えコストを減らす発想の企業が続いたことにも触れている。

馬田は、古い設備の使い回しやブラウンフィールドの活用も同じ流れだとし、日本でも空き家や古い設備など、使われていないか低い稼働率にとどまっている資産を活用するアイデアがありうると述べた。

同時に馬田は注意点も挙げた。捨てられているものに価値をつけて売るやり方は、一時的な裁定取引の機会にはなる。しかし加工技術が守られていなければすぐに競争が起き、利益は消える。持続的に稼ぐ仕組みをどこで確保するかが大事だという。リサイクル系では、原料をどこから集めるか、物流をどうするかも番組内で繰り返し課題になっていた。

重い産業をスケールさせるモジュール化と標準化

よく見られたもう一つのパターンは、反復できる単位のプロジェクトを積み重ねてスケールさせるやり方である。馬田によれば、重い産業が重いのは設備が大きいからだけではない。案件ごとに設計、見積もり、施工、教育、許認可を毎回やり直す必要があるからでもある。それに対して、モジュールを用意して数を増やすことで大きくしていくパターンがあった。

例として、50MW級のユニットを複数並べる地熱のファーボ、ロボットをレゴのように組み合わせるドイツのロボコ、コンテナ型の熱電池、中型の設備を並べて拡張する熱系の企業が挙がった。馬田は、ジェットソンホーム、ベースパワー、施工まで手がけるドイツの太陽光スタートアップも、部材、工具、施工手順、教育を標準化してすぐに施工できるようにしている点で、ある意味ではモジュール化だと見る。

馬田の強調点は、設備を小さくすることではない。案件ごとに繰り返していた判断を減らし、次の案件の見積もり、工期、品質を予測可能にして、学習曲線を描くことである。標準外の案件を受けすぎるとこの仕組みは崩れるが、主に内部的な標準をつくって数を増やすのは有力な方策だという。富田は、顧客にとっても自分に合った形で供給してもらえる利点があると述べた。

モジュールを成り立たせるには、インターフェースの安定、共通化、個別案件への特殊対応をどこまで許すかの線引きが必要になる。富田が、最初からモジュール化するのは厳しいかもしれないと述べると、馬田は、最初からモジュール化を意識して案件を受けていくことになるのではないかと返した。馬田はさらに、日本は個別受注や個別の特注が多くなりがちなので、考え方を切り替える必要があるかもしれないと述べた。

標準化には金融面の利点もある。馬田は、原価、工期、稼働率が読めるようになれば、銀行が融資しやすくなり、リースや保険もつきやすくなると指摘した。富田は、設備ではなく判断のプロセス、たとえば見積もりや検査から標準化して入っていく道もありそうだと述べた。

「グリーンだから買う」から経済価値へ

AIの分析によれば、環境に良いことと顧客が買う理由は分かれている。ハーシャメタルはグリーンな鉄であることより、最終的に低コストで国内供給できることを前面に出して売っている。別の熱貯蔵の企業は、安い時間帯の電力を熱として貯め、ガス価格への依存を下げると訴えている。デポリーは再生材を品質と価格の面でバージン材に近づけようとしている。

馬田は、グリーンプレミアムを払ってでも買うというより、コストが下がる、供給や操業が安定する、規制に対応できる、新しい売上や収益源が生まれるといった価値に重心を置く企業のほうが資金を集めやすいのではないかと見る。富田も、制度への対応、追加投資なしでの既存設備の有効活用、コスト削減など、顧客にとっての価値をどう見せるかが大事だと応じた。

馬田は、最近紹介したウェイブメーカー関連の企業を例に、カーボンクレジットで稼ぐことを見据えつつ、複数の経路から収益が入る仕組みをつくる手もあると述べた。グリーンプレミアムを入り口として使い、量産すれば安くなるので今は少しプレミアムを払ってもらう、という進め方もありうるという。富田は、営業の場面では「グリーンだから買いたいか」と聞くより、どの設備更新が厳しいか、調達が止まったらどれだけ損をするかを聞くほうが入りやすいかもしれないと述べた。

馬田の結論は、環境価値を弱く見せる必要はないが、それだけで買ってもらえると前提しない方がよい、というものだ。ただしレジリエンスの価値も測りにくいので難しさは残る。二人は、複数の価値を組み合わせて提案する形になるだろうと話した。

技術の外側までがプロダクト:金融・契約・許認可・施工

AIは次に、「技術の外側までがプロダクト」だと分析した。良い技術が導入されないのは、技術が悪いからとは限らない。クルーバー(字幕表記)は、顧客が太陽光を欲しがっていても融資審査が遅い、機器を仕入れる資金がないといった理由で進まないなら、そこを自分たちで担う。ネベックスは、宇宙技術があっても政府契約、輸出管理、決済、運転資金がなければ取引が成立しないので、そこに手を入れる。ジェットソンホームは補助金や許認可を巻き取り、導入体験全体を良くしている。

馬田によれば、プロダクトの本体は画面や装置ではなく、顧客が実際に変わったか、便益を得られたかである。関心を持つ段階から、見積もり、審査、契約、許認可、施工、運用までのバリューチェーンの中で、どこで離脱が大きいか、どこをカバーすればボトルネックが解消するかを見ていく必要がある。最近は金融をうまく使って前払いを後払いにしたり、バンカビリティを高めたりする設計が重要になっているという。

富田は、技術はあくまで道具であり、顧客の価値を生むところまでを提供するのがプロダクトだと整理した。標準化によって銀行が融資しやすくなる話とセットで考えるべきだとも述べ、そうなるとMVPとは何かという問いの答えも変わってくると話した。馬田は、スタートアップが金融商品になっているという話がときどき出るのと同じように、技術をどう金融商品に近づけるか、どうすればインベスタブルになり、バンカビリティが上がるかを考える視点があるかもしれないと述べた。

モートは「学習する実行系」

競争優位について、AIは「モートは学習する実行系」だと分析した。競争優位というと特許やアルゴリズムに目が向きがちだが、今回の企業群は現場を動かすほど学習する仕組みを持っている、という指摘である。

例として挙がったのは次の企業である。コボルドメタルズは地質データを標準化し、AI、地質学者、センサー探査、鉱山開発を自ら手がけて学習データを得る。別の企業は人の組織や細胞とロボットを使い、均質な実験データを自ら生み出している。ノミナルは試験データの検証ロジックを研究から運用まで再利用する。ベースパワーは自社で設置した蓄電池を制御し、保守やテキサスの電力取引に活かしている。実行から計測、改善までを自社で大きく長く持つことで、ループを高速で回せるという見立てだ。

富田は、データが溜まること自体がモートになるのではなく、改善を速く回せることをモートとしている点が印象的だったと述べた。馬田は、改善が回らなければ案件が増えても毎回別々に学習・判断することになり、ずっと受託事業のままになると指摘した。見るべき指標として、成功確率が上がったか、見積もり誤差が減ったか、工期が短くなったか、粗利が改善したかを挙げている。

富田は、紙やメール、個人の記憶で職人として強くなるのではなく、結果をデータとして誰でも見られる形で記録する仕組みそのものがモートにつながると述べた。馬田は、最近よく言われる「システム・オブ・レコードではなくシステム・オブ・アクション」という考え方を引き、実際の制御や判断を担う企業のほうが、その結果として新しいデータを得やすいと述べた。逆に、結果のラベルがないデータは、センサーデータが大量にあっても学習に使いにくい。富田は、顧客から本当にデータをもらえるのか、機密や規制に関わるデータの扱いには契約や信頼が必要になると付け加えた。顧客の機密に触れない範囲で、判断と結果が本当に良くなったかを確認できるデータまでをきちんと取る設計が大事だと二人は話した。

大きな物語と、小さく鋭い最初のくさび

AIが次に挙げたのは、「大きな物語と小さく鋭いくさび」の組み合わせである。テラファーマは火星での建設を語りながら、地上では土木の遠隔管理や自律施工を短期的に進めている。ユリシーズは海藻の再生や海洋調査から始め、海洋ロボットによる「海のGoogle Maps」や海のSpaceXのような構想を語る。スタークラウドは特定用途の宇宙計算から入りつつ、宇宙データセンターを構想している。ルナエナジーは家庭用蓄電池とVPPの運用から、分散型エネルギーOSを目指している。

馬田は以前ブログに書いたとおり、エクイティはナラティブをお金に変えることができる唯一の装置だと考えている。各社は物語をうまくつくって資金と人を集めつつ、足元では売上、データ、許認可といった実績を着実に積んでいる。その両立が面白いと馬田は言う。富田は、両方できることが起業家的だと評価した。テラファーマの場合、最初の市場と長期の火星建設は大きく違うが、地球でできたことの経験や能力が長期でも使えるというストーリーをうまく組み上げていると述べた。

馬田は、市場の隣接性より自社の能力の隣接性を意識して段階を上っていくストーリーになっていると見る。足元の市場で儲かっているかどうかにかかわらず、それが将来必要なデータやビジョンにつながるよう設計しているのではないか、という印象である。富田は、最初の市場として、潰すべき重要な不確実性を検証できる市場を選んでいると指摘した。施工が難しそうなら施工を含む案件を取り、規制がリスクなら最初から規制の厳しい領域に入る、という選び方だ。

馬田は、どこまで最初から計画していたかは分からないと留保しつつ、良いくさびは将来の選択肢を増やす一方で、最初に儲かっても次につながらなければ悪いくさびになり、サンクコストになりうると述べた。各段階で何を証明し、どんな能力を培い、それを次の市場にどう活かすのか。そのうえで足元では、顧客からお金をもらいながら難しい仮説を検証できるくさびを打っている、というのが馬田の見立てである。

海外スタートアップを日本へ翻訳する

最後の横断分析は、日本への翻訳である。AIは、海外の製品をそのまま持ち込む「日本版」ではなく、日本の制約と既存の能力を組み合わせ、日本の制約から始めるとよいと提案した。

例としては次のようなものが示された。ロボコのB2B向けの「ロボットのレゴ」なら、中小工場の人手不足に対して、後付け可能なロボット、簡単な制御、月額利用、導入支援で入る。クルーバーのモデルなら、分散した施工業者に共通のOS、金融、調達を提供する。ソーラーサイクルやサイクリックマテリアルズのモデルなら、使用済み製品を都市鉱山として回収し、品質を証明して長期の供給に変える。人手不足、分散した中小事業者、老朽設備、廃棄物、複雑な商流といった日本の制約を見据えつつ、部品、素材、設備、保守、現場改善といった日本の強みを世界のバリューチェーン、特に世界で不足しているところにつなげる、というのがAIの提案だった。

富田は、制度もきちんと見るべきだと付け加えた。番組ではEUやアメリカの企業を扱うことが多いが、日本の制度とはずれがある。ただ、日本も今後EUやアメリカに近い状況になるなら事業環境は変わるし、制度を自ら作っていく方向で設計すれば、アイデアを翻訳できる可能性もあると述べた。

52社から見えた3つの原則と、5つの問い

AIは全体を3つの原則にまとめた。一つ目は、どこを見るか。AI、宇宙、エネルギー転換、フィジカルAIといった成長市場の名前ではなく、それが伸びたときに生じる電力、熱、材料、契約、検証などの詰まりを見に行く。二つ目は、何を売るか。設備やソフトウェア単体ではなく、稼働開始までの時間、失敗確率、停止回避、実際の収益といった顧客の成果に翻訳して売る。三つ目は、どう実装するか。技術だけでなく、金融、規制、契約、施工、保守、現場データの学習まで設計することが、結果的に実装を速くする。

馬田は冒頭、自分たちが単にエネルギーや製造、ディープテックの企業を多く選んだというだけではない、とAIのまとめを紹介した。これに富田が「多かったんじゃないですかね」と返し、馬田も多かったことは認めている。

AIは同時に、次の不足が必ず事業になるわけではないとも注意した。その不足は長く続くのか、解消したら誰がお金を払うのか、スタートアップに本当にできるのか、既存企業がすぐに参入できない理由はあるのか、を考える必要がある。そのうえで、事業アイデアを探すための問いとして次の5つを示した。

  1. 今、急成長しているものは何か
  2. それが10倍になったとき、最初に不足するものは何か
  3. 顧客は製品ではなく、最終的に何を買っているのか
  4. ソフトウェアだけでは解決できない理由は何か
  5. 日本に豊富にあるが、十分に活用されていない資産や能力は何か

富田は、問いのまとめとしては良いが、知識を自分で調べることも重要だと述べた。AIに今急成長している市場を聞けば「AI」と答えるだろうし、この問いを考えるだけでは皆が同じ答えにたどり着いてしまう。自分しか知らない情報や、業務経験を含むこれまでの経験といった観点を入れて初めて、良い答えが出るという考えである。

馬田もこれに同意し、問いに答えるには鮮度の高い情報が必要だと述べた。例として挙げたのが変圧器である。今でこそ変圧器の納期が長いことは問題として知られているが、2年ほど前から変圧器の情報を得ていた人たちは早くから動き始めていた。こうした兆しにいち早く気づけるかが非常に大事だという。そのうえで、スタートアップに適した領域か、小さく始められるか、本当に支払ってもらえるか、実行するほど会社が強くなる学習ができるか、技術の実証にとどまらず顧客の行動や成果を変えられるかを見ていきたいと語った。

最後に富田は、この分析だけでは足りず、やはり足元の現場を見なければならないと改めて感じたと述べた。馬田も、現場がなければ良い最初のくさびは打てないと応じ、分析パートを締めくくった。