呉のパイプ加工会社セイエンが語る、0.7Dの極小曲げと0.1秒で漏れずに接合する「気密プロジェクション溶接」

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概要

自動車のボンネットを開けると、エンジンルームには多くの配管が通っている。この動画では、ものづくり太郎が広島県呉市のパイプ加工会社・株式会社セイエンの新井社長を迎え、同社の二つの技術について話を聞いた。一つは他社で断られた形状でも曲げられるパイプの曲げ加工と端末加工。もう一つは、これまでパイプには使えないとされてきたスポット溶接系の手法を応用し、気密を保ったままパイプ同士を約0.1秒で接合する新しい溶接技術である。話題の中心は、配管の加工技術が自動車の設計変更やコスト、CO2排出にどう関わるかという点だ。

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セイエンとONE GROUPという会社

新井社長によれば、セイエンは広島県呉市で60年以上パイプ加工一筋に技術を磨いてきた会社である。2019年にM&AでONE GROUPという中小製造業のグループに加わった。ONE GROUPは「M&Aで世界一の中小企業連合」を目指しているという。ものづくり太郎がセレンディップなど同様の中小企業グループを引き合いに出して「先々越されている」と振ると、新井社長は日本の中小企業を守り盛り上げたいという志は同じだとしたうえで、相手のほうがすでに高い水準で実現しており、自分たちは手本にさせてもらっている立場だと答えた。

グループ内の企業はほとんどが金属加工業で、工作機械向けの歯車やボールねじを作る会社、コバール材やハステロイといった難削材の微細加工を得意とする会社、NC機を揃えて24時間無人で回しコストダウンを得意とする会社などがある。その中でセイエンが担うのがパイプの塑性加工だ。

新井社長は、町工場といえばマシニングや切削が多く、パイプ専業のプレイヤーはそれほど多くなく、全国展開しているところも少ないと説明する。セイエンの強みは、曲げ加工と、パイプの端の形を変える「端末加工」にあるという。

「1.5D」が一般的な曲げ半径を「0.7D」まで詰める

パイプの曲げでは、パイプの直径をDとして、曲げ半径が直径の何倍かで表す。新井社長によれば、一般的な曲げは1.5D程度で、他社より曲げられると言われる「極小曲げ」は1.0Dである。これに対してセイエンは、鉄なら0.6D、アルミでも0.7Dまで曲げられるという。新井社長は、自社で調べた限りここまで曲げられると言っている会社は見当たらず、アルミでの0.7Dはおそらく日本にもないのではないかと述べた。

ものづくり太郎は実物を手に取り、直線部分からすぐに急角度で曲がっている点を示した。本来なら曲げに入るまでにもっと直線の長さを取る必要があるところを、入ってすぐに曲がっている。スタジオには90度以上曲がったパイプもあり、新井社長はなかなかない形状だとしたうえで、エンジンルームの設計上、どうしてもここで急に曲がってほしいという要望に応えたものだろうと説明した。

アルミで0.7Dに曲げた比較的大きなパイプは、ラジエーターにつながる配管で、先にゴムホースが付く。新井社長は、おそらく高さを出したくなかったのだろうと推測し、アルミをここまで曲げられるのはおそらく自社だけではないかと述べた。ものづくり太郎は、上に別のモジュールがあればVベルトなどと干渉するといった事情が考えられると補足した。

なぜエンジンルームで「曲げ」が重宝されるのか

この曲げ技術が求められる理由として、新井社長はエンジンルームが「場所の取り合い」であることを挙げる。パワーユニットやパワートレイン、バッテリー、コントロールユニット、発電機、クーラーユニット、ラジエーターやリザーブタンクなどが、パズルのように空間を埋めている。それらをパイプやホースでつなぐ必要があり、「もう少し曲がれば通るのに」「この形になればここを通せるのに」という要望が頻繁に出てくる。

それが加工できないと、設計変更が必要になる。設計変更にはコストがかかるため、なんとか配管側で曲げられないかというニーズが生まれ、他社で断られた案件がセイエンに回ってくる。新井社長はこれを「駆け込み寺」的な役割として説明した。

ものづくり太郎は、以前訪れた住友理工で聞いた話として、エンジンルームの部品配置は最初から一度に決まるわけではないと補足した。エンジン、ECU、ラジエーター、デンソー系の企業が手がけるユニット、豊田自動織機が手がけるコンプレッサー、ハイブリッド車なら電池と、部品が密集する中で位置が取り合いになり、問題が出るとホースや配管の位置を後から変えることが多いという。そのため配管メーカーには「厳しいけれど通してほしい」という要求が来るはずで、競合の半分ほどの半径で曲げられるノウハウがあれば「A社ではできないがセイエンならできる」という状況になる、と彼は見ている。

取引先について新井社長は、地元のマツダに加え、最近はスズキが増えており、日産、ダイハツ、一部ホンダにも納めていると話した。一方、愛知県の顧客はまだないといい、今回の新しい溶接技術で愛知県エリアのニーズを得ようと営業活動を進めているところだという。

端末加工:パイプを2倍以上に広げ、1本から作る

曲げと並ぶもう一つの強みが端末加工である。スタジオにはステンレスパイプの端を金属の限界まで広げたサンプルがあった。金型は一つひとつ製作するという。

その一例がオイルを吸い上げるストレーナーだ。吸い上げる側の面積を広く取りたい一方で、反対側は細くしなければならない。新井社長によれば、一般的には1.5倍程度しか広げられないところを、セイエンでは2倍以上広げており、それによって吸い込みたい量を吸い込めるようにしている。

逆に絞る加工のサンプルも紹介された。太いパイプからこれほど細い径まで絞ることは通常できず、他社では細い部分を別部品にして溶接しているという。セイエンは1本のパイプから作り出せるため、ものづくり太郎は、部品が1点で済むので輸送コストも下がり、装置も一つで済むと評価した。

曲げた直後に「スプール」を作る難しさ

もう一つのサンプルは、極小曲げの直後に「スプール」と呼ばれる膨らみを設けたパイプだ。スプールは相手側の穴に差し込んだときにカチンと止まる、ストッパーの役割を持つ。

新井社長によれば、本来はスプールから曲げに入るまで、ある程度の直線距離が必要なことが多い。ものづくり太郎は、曲げでは内側が縮み外側が引っ張られるため、スプールの先にひずみが溜まったり破損したりしやすいはずだと補足した。新井社長はさらに、外側が薄くなると流量が確保できなくなったり、肉厚が薄くなって強度が下がったりし、アルミなら裂けてしまうと説明する。

アルミでもこうした加工ができる点について、ものづくり太郎はEVの流れで少しでも軽くしたいニーズがあることを挙げ、アルミでD0.7が曲げられることを高く評価した。

パイプと切削部品をつなぐ工程を引き受ける

後半は溶接の話題に移る。パイプは何かと何かをつなぐ部品であり、ラジエーターやエンジンブロックのような大きな部品に圧入されるケースと、パイプ自体が一つのパーツとして別のパーツに取り付けられるケースがある。

スタジオには、パイプに切削部品を取り付けた製品があった。ものづくり太郎は、このような形状は自動旋盤などで一体では削り出せないため、穴加工をしておいて後から溶接で取り付けることになると説明した。新井社長によれば、従来セイエンはパイプを納品するだけで、納品先が切削部品を別途仕入れて溶接するという工程になっていた。今回、パーツ同士を取り付ける工程まで自社で担えるようにし、それを新しい溶接技術で実現したという。

溶接の3分類と、スポット溶接の長所・短所

新井社長は溶接を大きく3つに分けて説明した。1つ目は金属を溶かして接合する「融接」で、TIG溶接のように一般的にイメージされる溶接である。2つ目は加圧して熱を加える「圧接」で、自動車の製造ラインでロボットが行うスポット溶接もここに入る。3つ目は溶けやすい別の金属を接着剤のように使う「ろう接」で、はんだ付けがその例だ。セイエンが開発した技術は2つ目の圧接に属する。

圧接はすでに技術開発が進み、新たな余地は少ないのではないかというものづくり太郎の問いに対し、新井社長は溶接にはまだ開発の余地が多いと考えていると答えた。スポット溶接はタクトタイムが短く生産効率が高い一方で、いくつもの課題を抱えているという。

その例として挙げたのがトヨタのレーザースクリューウェルディングである。新井社長は、スポット溶接より剛性は高いが作業時間が長いというレーザー溶接の課題に対応したものだと位置づける。ものづくり太郎は、点でつけていたスポット溶接に対してレーザーで線状につけることで接点が増え剛性が上がること、フォルクスワーゲンなどは以前からこうした溶接を用いており欧州車は剛性が高いと言われてきたこと、ただしサイクルタイムが課題だったところをトヨタが速くしたことを説明した。新井社長はこれを「ボタン留めからジッパー留めになった」とたとえた。

スポット溶接がパイプに使えなかった理由

セイエンが狙ったのは、スポット溶接の短いタクトタイムという特徴を残したまま、これまで使えなかったパイプの接合に転用することだ。

新井社長によれば、パイプの中には水、空気、ガスなどが通る。スポット溶接は点で接合するため隙間ができ、気体や液体が漏れてしまう。さらに、パイプの側面に別のパイプをつけようとして大きな力で加圧しながら通電すると、板厚1mm程度のパイプは加圧と熱で一瞬にして変形し、ひずみが出て品質が安定しない。そのため、パイプにスポット溶接は使えないというのが基本的な常識だったという。

セイエンの技術は加圧しながら接合するものだが、新井社長は詳細を「ノウハウ」としつつ、事前に加工を施すことで加圧時にパイプがきちんとへこまないようにし、電気の力で一瞬、約0.1秒で接合すると説明した。しかも漏れないよう気密を保って接合できるという。概要欄では、この技術は「気密プロジェクション溶接」と呼ばれている。

ろう付けとの比較:時間、材料、強度

現在、パイプ同士を漏れないように接合する方法としては、ほとんどの場合ろう付けが選ばれている。新井社長によれば、職人が行うと1箇所に7〜10秒ほどかかる。ものづくり太郎は、それでは量産効果が出にくく、集中力も要し、自動車のように数万〜数十万個の単位になると現実的ではないと述べた。

数量が多い場合は、職人ではなく「トースターのような」炉で一括してろう付けする方法もある。ただし新井社長は、これには大規模な投資が必要で、雰囲気制御と呼ばれる品質確保も難しいと説明する。

これに対してセイエンの方法は設備による溶接なので、職人の熟練は要らず、設備を置けば0.1秒で接合できる。新井社長が挙げた利点は次の通りだ。タクトタイムが圧倒的に短いため、労務費を中心にコストダウンに直結する。母材同士を接合するので、ろう材が不要になり材料費がかからない。さらに母材同士がつくため接合強度も高く、自社調べではろう付けの1.5倍の強度があるという。

対応材料については、電気を使う方式のため鉄系が最も得意だという。

CO2削減とキャップ・アンド・トレード

新井社長は、ろう付けを見直す中で、コストに加えてCO2削減も提案できると考えたという。職人によるろう付けではガスバーナーのような装置で火を当て続ける必要がある。炉を使う方式は生産効率は高いものの、溶かす前段階から炉を温め、稼働中は常に熱を出し続ける。そのため新井社長は、ろう付けはCO2を非常に多く出す接合方法だと考えている。

一方、セイエンの方法は電気を流すのは一瞬だけなので、CO2を大幅に減らせるという。新井社長は、4月から始まったキャップ・アンド・トレードの取引の中でCO2がコストになる時代になったとし、タクトタイム短縮による製造コストの削減と、接合工程でのCO2削減による制度上のコスト削減の二つを同時に実現したのが今回の技術だと述べた。ものづくり太郎は、二つの部品を一緒に接合して納められるので運搬の手間が省け、サプライチェーンの管理コストも下がると付け加えた。

採用実績と特許

新井社長によれば、この技術はすでに自動車向けで量産採用されており、ダイハツやマツダが採用しているほか、過去にはホンダでも採用実績があるという。先日展示会に出展した際には多くの引き合いがあり、OEMからも直接問い合わせを受けている。新井社長は世界初の技術だと考えていると述べ、特許は出願中である。

次の課題はアルミ

気密プロジェクション溶接は鉄ではすでに実績があるが、展示会では「アルミはできないのか」という声が多かったという。自動車にはアルミ配管が多く使われ、ラジエーターやエアコンなど、アルミ配管の接合は現状ろう付けしか選択肢がない。ものづくり太郎も、かつて派遣でエアコンの製造ラインに入った際に、人がろう付けをしていたと振り返った。

新井社長によれば、アルミへの対応は現在まさに技術開発中で、収録の2週間前にアルミも接合できるようになったばかりだという。最初の壁は越えたが、どの程度の圧力まで耐えられるのか、どれだけ均一に接合できるのかといった開発はこれからで、実証検証に協力してくれる企業を求めている。

最後に、この種の曲げや溶接は自動車に限らず、冷蔵庫やエアコンなど配管があるところでは目に見えない形で使われており、そうした分野の企業からの引き合いも待っていると話して、対談は締めくくられた。