設備ではなく「電力が届くまでの時間」を売る:Critical Loopに見る米国送配電網ボトルネックの攻め方
東京大学FoundXFoundXの「Startup IdeaCast」は、海外スタートアップをAIで分析し、起業を考える人向けに紹介する番組である。今回取り上げたのは米国のエネルギー・インフラ領域のスタートアップ「Critical Loop」だ。紹介役のホストは、この会社の面白さを二つ挙げる。一つは、蓄電池や太陽光発電を売るのではなく、事業開始までに電力を待つ時間を短くすることを売っている点。もう一つは、ハードウェア自体よりも、それらを束ねて制御するソフトウェアに事業の核を置いている点である。番組は冒頭で、情報をAIで整理しているため古い情報や誤りを含む可能性があり、正確さが必要なら各自で一次情報を確認してほしいと断っている。
本題の前には、日本のスタートアップ・エコシステムにおけるハラスメント調査についての雑談があった。本記事ではそこから順に扱う。
冒頭の話題:スタートアップ・エコシステムのハラスメント調査
ホストが紹介したのは、東京大学が英語のプレスリリースで公表した調査だ。東大や慶應などの研究者が、日本のスタートアップ・エコシステムにおけるハラスメントを調べたものである。
ホストが興味深いと感じた点は二つある。まず、過去のスタートアップ界隈ではセクハラが問題になったことがあったが、この調査ではセクハラよりパワハラを受けた割合のほうが高かった。次に、パワハラを受ける割合に男女差がほとんどなかった。ホストはここから、スタートアップをやっていれば誰でもパワハラを受けうるので、防いでいかなければならないと受け止めた。
支援者の立場として気にかけたのは、ハラスメントを受けた人がネットワーキングイベントや支援組織の利用といった外部との関わりを避けるようになる、という報告である。FoundXは避けられる側にあたるため、初期の段階からきちんと介入・ケアする必要があるとホストは話した。人を紹介する際に注意は払っているが、いくら注意しても足りない部分だという認識も示している。
一方で、この調査は2015年以降に創業した約1.3万社を対象とし、回答は約470社、回答率はおよそ4%だった。そのためホストは、数値の割合をそのまま事実と言い切るのは難しいと考えている。ただ、ハラスメントが実際にあったことや、どのような傾向が見られたかは参考になるという評価だ。聞き手のホストも、セクハラもパワハラも問題であり、ハラスメントを受けた人がネットワーキングや支援を避けるようになれば、エコシステム全体に悪影響が出ると応じた。二人は、ハラスメントを許さない姿勢を明示すること、自分たち自身も気をつけることを確認して本題に入った。
Critical Loopの全体像:「Time-to-Power」を売る会社
「ループ」という社名からリサイクル企業を連想しがちだが、そうではないとホストは説明する。Critical Loopは米国のエネルギー・インフラ領域のスタートアップで、送配電網のボトルネックという構造的な問題に対し、モジュール型の解決策を提供している。中核は、電力フローを最適化するソフトウェア制御である。
ホストによれば、この会社の事業を一言で表すと「産業・インフラ向けのTime-to-Power」になる。電力供給までにかかる時間を数年から数週間に縮めるため、モジュール型のマイクログリッドと制御ソフトを提供している。単に蓄電池を販売する業者ではなく、事業開始に必要な電力供給の待機時間を短縮するサービスを売っている点を、ホストは起業を考える人にとって参考になる部分として強調した。
「なぜ今なのか」について、ホストは次のように説明する。AIによるデータセンター需要の増加、EV化、製造業の国内回帰によって、米国の電力需要は大きく伸びている。一方で送配電網の増強は大きく遅れており、商用運転開始までの待機時間の中央値は4年を超えるところまで悪化しているという。
聞き手がなぜ送配電網の増強にそれほど時間がかかるのかを尋ねると、ホストは三つの要因を挙げた。インフラ自体が老朽化して更新が必要なこと、環境アセスメントが必要なこと、そして接続申請が大量に増えていてその審査がボトルネックになっていることだ。では数週間でどう電力を供給するのかという問いには、既存の電力網の空き容量を使い、足りなくなるピーク時をモジュール型の蓄電池で補う仕組みだと答えた。大規模な工事が要らないので、供給までの期間を短くできるという説明である。
課題:1,400GWの接続待ち
ターゲット顧客は三つある。業務用に多数のEVを充電するEVフリート充電事業者、データセンターの開発者、そして工場や航空宇宙の試験施設の運営者だ。
これらの顧客が抱えるのは、今すぐ電力が必要なのに系統に接続できないという問題である。番組の調べでは、全米で約1,400GWの発電が接続待ちの状態にある。最適な事業用地を見つけても18カ月から5年の電力待ちが発生し、機会損失が生まれている。待機時間は長くなる傾向にあり、2000〜2007年の中央値は約2年だったのに対し、2018〜2024年は4年を超えた。現在は5年近いという指摘もあるという。
既存の代替手段にも限界がある。ただ待つ場合は事業の成長が止まる。オフグリッドの発電設備を自前で作る場合は設備投資が大きくなり、排ガス規制が厳しいため許認可のハードルも高い。
聞き手が1,400GWの規模感を尋ねると、ホストは米国の既存発電容量が2026年1月時点で約1,300GWだと説明した(最初に1,800GWと言い、すぐ訂正している)。つまり接続待ちの量が既存の発電容量を上回っており、インフラ側の処理能力がパンクした状態だという。聞き手はオフグリッド発電について、原発を動かす話も出ていると触れた。ホストは、ディーゼルなどのオフグリッド発電は設備費がかかるうえ、州によってはカリフォルニアのように環境規制が厳しく許可を得るのが難しいと述べ、そこまでやるのかという話になると付け加えた。
解決策:既存系統と蓄電池・発電機のハイブリッド、制御の「Signus」
Critical Loopは完全なオフグリッドを作るのではなく、既存の系統電力に太陽光発電、蓄電池、発電機を組み合わせる。ホストが差別化の要と見ているのは、単一メーカーの蓄電池に依存せず、複数メーカーの機器を束ねるハードウェア非依存の統合制御技術である。
この制御を担うのが「Signus」コントローラーで、役割は大きく三つあるという。一つ目は、オフピーク時に充電しピーク時に放電すること。二つ目は、系統から引き込む電力の上限を監視して、それを超えないよう制限すること。三つ目は、機械学習を使ってリアルタイムに最適化することである。
トラクションとしてホストは二つの事例を挙げた。一つはEV充電施設で、長い電力待ちを短縮したというもの(字幕では期間の数字が聞き取りにくい)。もう一つは航空宇宙の試験施設で、2MWhの設備の設置を1日で完了させたという例である。
UL 3141認証が意味するもの
SignusはUL 3141という認証を業界でいち早く取得しており、これが顧客への安全性のアピールになっているとホストは紹介した。聞き手がこの認証の重要性を尋ねると、ホストは次のように説明した。UL 3141は電力制御システム向けの安全規格で、施設の電力負荷、蓄電、発電、送配電網からの電力供給をリアルタイムに安全に連携・制御するシステムの性能と要件を定めている。これを取得していれば、マイクログリッドが送配電網に接続する際、事前に合意した電力の上限を決して超えないことを証明できる。その結果、電力会社からの信頼を担保できるという。
複数メーカーの機器を組み合わせる利点についても質問が出た。ホストによれば、同社は特定のバッテリーメーカーの供給不足や価格高騰のリスクを避けられること、つまりその時点で最もよい条件で調達できるサプライチェーンの柔軟性をメリットと考えている。
市場規模と三つの成長ドライバー
同社が狙うのは「Speed-to-Power」の市場である。番組の調べでは、TAMは米国全体の商工業用エネルギー貯蔵市場で約428億ドル。SAMは、5〜100MWhクラスの電力をすぐに必要とするミドルマーケット。当面の目標となるSOMは、2026年までにEVやデータセンターなどペインの強い案件を中心に約100MWhを導入することだという。
市場成長のドライバーとしてホストは三つを挙げた。一つ目はAI需要によるデータセンターの急増。二つ目は物流や商用車で産業用EVの充電施設が広がっていること。三つ目はカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)が推進する「フレキシブル・サービス・コネクション(FSC)」の制度化である。
FSCについてホストは次のように説明した。配電系統の容量制約のために需要家が希望する容量をフルに受電できない場合でも、系統の安全を保てる範囲で時間帯や条件に応じた容量制限を受け入れれば、通常より早く接続・通電できる制度だ。足りない分は需要家側の蓄電池、太陽光、バックアップ発電機で補える。電力会社にとっての懸念は、顧客が約束した電力の上限を本当に守れるかどうかにある。ここでSignusの安全規格が効いてくる。認証を持つCritical Loopは上限を守れることを示せるため、この制度が追い風になっているというのがホストの見立てだ。
聞き手は、AIデータセンター需要に加えてこうした制度が入ってきたからこそ生まれたビジネスだと受け止めた。ホストはこれに同意したうえで、Critical Loop自身もこの制度づくりに関わっていると補足した。
ミドルマーケットを競合が狙わない理由について、ホストは次のように説明する。大手は数百MWh級の超大型案件に集中しがちである。中規模の案件は現場ごとに複雑な制御が必要で参入障壁が高いため、見過ごされやすいという。
二つのビジネスモデル:EaaSと長期サービス契約
同社はSignusを単体で売るのではなく、蓄電池や発電機などのハードウェアと組み合わせた統合型マイクログリッド・プラットフォームとして提供している。収益モデルは二つある。
一つ目はEnergy-as-a-Service(EaaS)である。顧客は初期投資ゼロで導入でき、設備はCritical Loopが保有し、顧客は継続的にサービス利用料を払う。二つ目は長期サービス契約型で、顧客が設備を購入して税制優遇なども受け、Critical Loopは遠隔でのオーケストレーションや運用・保守・制御で継続課金を得る。
聞き手は、EaaSで設備を自社保有するのは資金面で重いのではないかと尋ねた。ホストはその難しさを認めたうえで、同社はエクイティだけでなくプロジェクトファイナンスやデットも活用して調達していると答えた。長期契約型の「オーケストレーション」の中身については、電力料金の安い時間帯に蓄電して高い時間帯に放電するスケジュール管理や、電力網の異常を検知して瞬時にバックアップへ切り替える運用を24時間体制で行うことだと説明した。
垂直統合というポジショニングと長期ビジョン
ホストによれば、同社の戦略上の立ち位置は、ハード、ソフト、契約設計を束ねた統合型プラットフォームにある。純粋なソフトウェア専業でも発電事業者でもない、中間のポジションだ。内製と外部調達も切り分けており、蓄電池のセルなどのハードウェア部品は外部の複数社から調達して柔軟性を確保している。一方、差別化の核となるハードウェア統合層とソフトウェア・制御層は完全に内製し、ブラックボックスにしている。
10〜20年後の理想像として、同社は単なる電池ベンダーではなく、電力アクセスを設計から運用まで一気通貫で担う「電力インフラのOS」的な運用者を目指しているという。聞き手が「一言では言いにくいビジネスだ」と言うと、ホストは、自分も「一言で言うと何なのか」と思いながら調べていたと笑った。
聞き手はさらに、ソフトウェア専業のSaaSにしたほうが利益率は高いはずなのに、なぜそうしなかったのかと尋ねた。ホストの説明はこうだ。粗利率は確かに高くなるが、その場合、現場での複雑なハードウェア統合を顧客やインテグレーターに丸投げすることになる。そうなると、顧客にとって最大の価値であるTime-to-Power、つまりすぐに電気が使えることを保証できなくなる。だからその道を避けたのだという。
「電力インフラのOS」の具体的な意味を問われると、ホストは自分も具体的にはイメージしきれていないと前置きした。そのうえで、分散した多数の蓄電池や発電機が同社のソフトウェア上でつながり、電力会社からの要請に応じて地域全体の電力バランスを自動で最適化する状態、つまりVPP(仮想発電所)の頭脳のような存在を指しているようだと説明した。
3フェーズのロードマップ
ビジネスの中身は複雑だが、ロードマップは分かりやすいかもしれない、とホストは言う。
フェーズ1は創業から現在までで、PMFの獲得に集中した段階だ。EV充電や航空宇宙試験など、電力接続までの時間が長く機会損失が特に大きい顧客に絞り、数日から数週間で電力を供給して止まらないという実績を、厳しい制約のもとで積み上げた。
フェーズ2は2026年に向けた標準化とルールメイキングの段階である。UL 3141の取得によるシステムの標準化や、蓄電池メーカーとの提携による供給網の確保を進めている。さらにカリフォルニア州公益事業委員会への政策提言を通じてFSCの制度化に直接関わり、自社に有利な市場環境を作っているという。
フェーズ3は拡張と全米展開の段階で、調達した資金をもとにカリフォルニア州外への進出や、AIデータセンターなどハイパースケール市場への拡大を狙っている。
聞き手は、AIデータセンター銘柄かと思ったが最初からデータセンター市場を狙ったわけではないのか、と確認した。ホストによれば、データセンターは規模が大きすぎて導入までの意思決定サイクルが長く、初期のトラクションとPMFを早く確かめたいスタートアップには不向きだと同社は考えたという。政策提言やルールメイキングに深く関わるメリットについては、業界全体のためという面はもちろんあるとしたうえで、自社製品の仕様がそのまま業界標準として採用される可能性が高まり、後発の競合に対する参入障壁になりやすい点を挙げた。
競合マップとモート、弱点
番組が示したポジショニングマップは、縦軸に提供するアセットの重さ、横軸にターゲットの規模を取っている。大規模・ハード重視がVoltaGrid、小〜中規模・ハード重視がScale Microgrid、ソフトウェアのみの提供がCamus Energyで、Critical Loopはこれらがカバーしきれない中間に位置づけられる。ホストは「それはどういうポジションなのかという気もする」と率直に述べつつ、隙間を突いているようだと説明した。
各社の中身もホストは紹介した。VoltaGridは主に大規模データセンターやAI企業を対象に、天然ガス発電を中心としたマイクログリッドを提供している。Scale Microgridはデータセンターや大学、病院などを対象に、垂直統合型のマイクログリッド開発と運用保守を行っている。Camus Energyはソフトウェアの提供が中心で、アセットは軽く、ハード統合よりも制御や系統との協調に軸を置いているという。
Critical Loopのモートとしては、UL 3141認証を持つ自律制御、メーカーに依存しないハード統合力、導入スピードの速さ、移設できるモジュール設計、規制当局や電力会社との連携が挙げられた。一方で弱点として、複数の機器を統合しているため、長期的には保守が複雑になる懸念があると番組は見ている。
聞き手は、VoltaGridのような大規模プレイヤーがミドル層に降りてくる可能性を尋ねた。ホストは可能性はあると認めつつ、VoltaGridはガス発電でアセットが重い事業をしているのに対し、Critical Loopは既存の系統電力を「ハック」する事業なので、構造的に噛み合わず、競合を避けられると同社は考えていると説明した。保守の複雑さへの対策としては、Signusの制御を内製し、クラウド経由で全モジュールの稼働状況を監視・遠隔制御することで、物理的な保守の手間をソフトウェアで吸収しようとしているという。ただしホストは、それがどこまで実現できるかは今後の課題だと付け加えた。
参入戦略:経済的なペインが最も大きい顧客から
ホストが面白いと感じたのは初期ターゲットの選び方だ。同社は「環境によいから」という理由で買う顧客ではなく、系統の都合で事業が止まり、その停止コストに困っているため支払い意欲の高い顧客に絞った。具体的にはEVフリート、工場、航空宇宙の試験設備など、経済的なボトルネックの解消を最優先する層である。
MVPは、ゼロから巨大なオフグリッド発電所を作るのではなく、既存系統の空き容量を最大限使い、足りない分だけを補うハイブリッド構成で製品化した。初期顧客にはスピードを武器に直接販売し、実際に稼働したという実績をてこに広げていった。
聞き手がこの初期市場だけで十分スケールするのかと尋ねると、ホストは「多分難しい」と答えた。初期市場だけでも数千万ドル規模はあるそうだが、ここで実績と信頼を作り、それを使って本命のデータセンター市場へ進みたいというのが同社の考えだという。PMFの指標も、ユーザー数ではなく、現場で事業を絶対に止めないこと、そして電力会社から承認を得ることという厳しい基準に置いていたとホストは紹介した。
チーム:SpaceXの設計思想を地上の電力インフラへ
ホストが特に面白いと感じたのは、創業チームが電力業界の出身ではない点である。CEOはSpaceXのチーフエンジニアとして、有人ロケット級の高性能ハードウェアとフェイルセーフを含む絶対的な安全性に携わってきた人物だという。CTOは元Palantir、COOはUberなどを経て、財務や事業オペレーションのスケーリングを担ってきたとされる。ホストは、宇宙船の高度な自律制御と絶対的な安全性という設計思想を地上の電力インフラに移植した点がこのチームの特徴だと述べた。
聞き手は、電力の専門家がチームにあまりいないことは弱点なのか強みなのかと問いかけた。ホストは、「待つのは当たり前だから仕方ない」という業界の常識に縛られない点は強みになると見る。一方で規制やルールは厳しいので、おそらく電力会社出身者などをアドバイザーとして迎えているのではないか、と推測を述べた。
聞き手はさらに、SpaceX出身者の知見はシステムを止めないための冗長化設計、異常検知、フェイルオーバーなどに生きそうだが、Palantir出身者の知見はどこに生きるのかと尋ねた。ホストは、各現場の稼働データ、天候、電力網の負荷をリアルタイムに統合・解析し、最も経済的で安全な充放電のタイミングを予測するAIアルゴリズムづくりに生かされているそうだと答えた。技術の中核であるSignusの制御に関わる部分だという理解である。
創業初期の学び:統合作業の複雑さと規制を中心に据える設計
ホストによれば、同社の創業初期の最大の学びは、現場でのハードウェア統合作業が想像以上に複雑だったことだ。市販のバッテリーとインバーターを組み合わせるだけではスケーラビリティがないと気づき、ハードウェア非依存のSignusコントローラーを自社で内製する方針に切り替えたという。
また、UL 3141などの規制対応を製品完成後に追いかけるのではなく、初期段階からプロダクト仕様の中心に据えた。規制への適合そのものをモートに変えるアプローチである。その結果、2023年の創業から数年で50MWh規模の導入を終え、カリフォルニア州の制度設計に影響を与える立場にまで成長したとホストは紹介した。
統合作業のどこが複雑だったのかという質問に対し、ホストは次のように答えた。蓄電池、太陽光発電、電力会社の系統は、通信規格も安全基準もそれぞれ異なる。それらを連携させ、しかもミリ秒単位で制御する必要があったことが複雑さの背景だという。創業数年で制度設計に関われた理由については、州政府自身も電力網のパンクをペインとして抱えており、同社が実際にハードウェアを動かして解決したトラクションを示したことで、専門家として意見を求められる立場になったのではないか、とホストは推測している。
資金調達と急成長、そのリスク
番組の調べでは、同社は2026年4月にシリーズAで2,600万ドル(約39億円)を調達し、エクイティとデットを合わせた累計調達額は4,900万ドルに達した。投資家には、インフラ・エネルギー投資に強いConifer Infrastructure Partnersと、ディープテックに強いHanoverが参加しているという。調達成功の要因としてホストは、気候変動対策を掲げるのではなく、「電力への接続が産業の成長を止めている」という経済的なボトルネックの解消を示した点を挙げた。
成長の数字として、従業員数は直近1年で8人から35人に増え、2026年には100MWhの稼働を目標とする成長フェーズに入っているという。聞き手がインフラ系ファンドも投資している点に注目すると、ホストは、EaaSモデルではハードウェア資産を保有する必要があるため、安定したリターンを好むインフラ投資家と相性がよかったのではないかという見方を紹介した。
100MWh目標のリスクについては、需要側は十分にあるとしたうえで、供給側がボトルネックになりうるとホストは指摘した。バッテリーメーカーから安定した供給を確保できるか、そして現場で設置するエンジニアを十分に確保できるかという点である。
日本への応用:ノンファーム型接続と三つの参入案
日本でも再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、ノンファーム型接続のルール整備が進んでいる。ホストは、米国と同じく、系統接続や工事に時間がかかる高圧需要家の間で早く受電したいというニーズが高まっていると紹介した。ただし海外のシステムをそのまま持ち込むのは難しい。優位性になりうるのは、日本特有の電力会社との協議や保安要件をクリアする実務オペレーションそのものをモートにすることかもしれない、という見方である。
AIの分析からは三つの案が出されたという。一つ目は「暫定受電ハック」で、工場の増設やEV拠点など系統増強を待てない企業向けに、需要家側の制御と蓄電池の導入パッケージを提供する。二つ目は「実装OS特化」で、ハードウェアには汎用の海外製品を使いつつ、日本の厳しい保安要件や受変電設備にローカライズしたソフトウェアに特化する。三つ目は「サブスクリプション型EaaS」で、ハードウェアを売るのではなく、導入の時短、非常時のバックアップ、遠隔運用をすべてセットにして月額サービスとして提供する。
聞き手が日本のノンファーム型接続と米国の柔軟接続の違いを尋ねると、ホストは基本的な概念は似ていると答えた。系統の空き容量の範囲で接続を認め、混雑時には出力を制限するという仕組みが共通している。そのため、この仕組みが広がれば制御ソフトの需要も増えるかもしれない、という見立てである。
学び:待ち時間という価値の見つけ方
番組のまとめとして、Critical Loopの事例から学べる点が三つ示された。一つ目は、設備や蓄電池を売るのではなく、事業開始の遅れを防ぐTime-to-Power、つまり時間の価値を売っていること。二つ目は、規制や電力会社の実務を後から対応する条件として扱わず、最初からプロダクト要件の中心に組み込み、競争力にまで昇華させたこと。三つ目は、宇宙産業や防衛のように絶対に止まってはいけない領域で培った高信頼性のノウハウを、電力というレガシー産業の課題解決につなげたことである。実践できるアクションとしてホストは、自分たちの業界で、設備や技術が足りないのではなく待ち時間や制度的なラグが価値を毀損している場所を探し、それをハックできないか考えることを挙げた。
最後に聞き手は、時間価値を売るという点は以前番組で紹介したエグザバット(字幕表記のまま)にも近く、モノやサービスではなく待ち時間を減らすための時間を売るという発想は参考になると感想を述べた。一方で、価値は明確でも事業の中身が複雑で理解しづらく、その複雑さがある意味でモートになっているのではないかとも話した。ホストも、何を売っているのかを徹底的に調べても分かったような分からないような気持ちだったと振り返った。そのうえで、モートになっているとすればおそらく制御の部分であり、何にでも対応できるという複雑さそのものがモートなのかもしれないと応じた。
聞き手は、規制に関わり、ソフトを作り、ハードを買い、エネルギーを供給し、ときにはサービスとして提供するという組織内部の複雑さをどうデザインしていくかは、それ自体が大変だろうと想像を述べた。ホストも役割が多くマネジメントは大変だろうと同意し、今後形が変わっていく可能性も十分あるとして、その行方が気になるスタートアップだと締めくくった。
皆さん、こんにちは。FoundXの馬田です。
同じくFoundXの富田です。
今回、雑談というところでなのか分からないですけど、東大の英語のプレスリリースで出ていた「Harassment in Japan's Startup Ecosystem」で、日本語だと「スタートアップエコシステムにおけるハラスメント調査を実施」っていうようなタイトルで出てたので、そちらの紹介ができたらと思うんですが、やってたことがですね、えっとなんだっけ? 東大と慶應とか、ドックスの大学の研究者で調査していて、日本のスタートアップのエコシステムにおけるハラスメントの調査をしましたよっていうような調査結果が紹介されていましたと。
個人的に、いや、興味深いなと思ったポイントはですね、過去スタートアップ界隈だとですね、セクハラが問題になったこともあったんですが、その調査だと、セクハラよりもパワハラを受けてる率の方が高いっていうようなところが指摘されていて、かつそのパワハラを受ける性別の差っていうのは、男性女性関係なく性差がなかったっていうところは、なんていうか興味深いというか。なので、スタートアップをやってたら誰でも受ける可能性があるっていうのは、防いでいかないといけないポイントだなというのは個人的に思いました。
支援者として気をつけたいポイントだなっていう風にも思ったのが、ハラスメントを受けると、ネットワーキングイベントとか支援組織の活用とか、そういった自分の外部の組織との関わりをちょっと避けてしまうようなことが報告されているそうでして、なので初期から介入というか、ケアというか、きちっと対応しないといけないなという風には思いましたね。避けられると、我々は避けられてしまう側の立場だと思うので。なので、やれることだから、ハラスメントを受けないようなネットワーキングであったりとか、その人を紹介するってところを注意深くやるっていうのは気をつけてはいるんですけど、いくら気をつけても足りないようなところなんだろうなというのは思いました。
一方でですね、この調査自体が、一方でってわけではないんですけど、2015年以降の創業の1.3万社対象のうち、470社程度が回答だったということで、回答率が4%ぐらいでちょっと低いんですね。なので、その数字の率とかについては、本当にそうだってところまで言い切るのはちょっと難しいんじゃないかなというのは個人的には思ってるんですが、ただハラスメントがありましたよとか、こういうような傾向がありましたよっていうところは参考になる点だと思うので、支援する時にも気をつけたいなと思いました。
そうですね。セクハラもパワハラも両方問題だと思いますし、パワハラしちゃう人に紹介しないように気をつけないといけないですと。
いや、そうですよね。でも、パッと分かるようなものでもないとも思いますしね。
そうですね。ただ本当、ハラスメントを受けてこうしたネットワーキングとか支援組織を使わないみたいな判断になると、なんでしょう、ある意味にも悪影響なので。
全体として悪影響ですよね。
いや、そうですよね。なので、許さないという態度で我々としては明示してやっていくっていうところとですね、私たち自身も気をつけないといけないなと。
いや、本当ですね。そうですね。というところで、注意してアイデアキャストを始めていきたいと思います。
FoundX Review Startup IdeaCastですが、海外のスタートアップのアイデアをAIを使って分析して紹介する番組になります。これからアイデアを考える方たちのご参考になればという風に思います。そして、最初にディスクレーマーですが、AIを活用して情報を整理しているので、一部の情報は古かったり間違ったりしている可能性もあります。ファクトを重視される場合は、必ずご自身で調べていただくようお願いいたします。本ポッドキャストはあくまで、そこからアイデアの参考情報とか考え方とかを引き出すことを主な目的としています。そしてですね、今回ご紹介するスタートアップですが、Critical Loopという企業になります。
このループって、またリサイクルかなと思いきや、ちょっと違う。
そうなんです。そう、そう、そう。これにしますって馬田さんに言った時、「リサイクルですか」みたいな感じだったんですけど、違います。
えっとですね、ちょっとまたお話しするんですけど、電力供給の時間を売るというか、電力供給を待つまでの時間を短くしますよっていうような会社でして、電力も供給するんですけど、その電力供給までの時間を短くしますよっていうところがちょっと面白いなっていうところと、あとは、その電力を供給するってところで蓄電とかですね、太陽光発電とかとも関連があるんですけど、それを直接売るんじゃなくて、それらを制御していくっていうところが、この企業の肝になっていて、そこがちょっと面白いポイントだなと思ったので、ご紹介できたらと思います。
そうですね、全体というか、こういう会社だよってところを早速お話しできたらと思うんですが、このCritical Loopですが、アメリカのエネルギーとかインフラの領域のスタートアップになります。彼らですが、送配電網のボトルネックっていうのがありますよっていうのは以前も言ったんですけど、その構造的な問題に対して、モジュール化の解決策っていうところを提供しています。ハードウェアだけではなくて、電力フローの最適化を担うようなソフトウェアの制御ですねが、彼らの核になっています。なので、単なる蓄電を販売する業者ではなくて、事業の開始に必要な電力供給の待機時間を短くするようなサービスを提供しているっていうような会社になります。
続けて全体像についてお話しできたらと思うんですが、ボトルネックをハックする時間の提供というところですが、彼らの事業をですね、一言で表すとすると、工業とかインフラ向けのTime-to-Power、電力供給までの時間を数年から数週間に短縮するようなものになっています。モジュール型のマイクログリッドと制御ソフトの提供をやっています。
なぜ今かという点に関してですが、AI需要によるデータセンターの需要が増えるっていうところとEV化、それから製造業の国内回帰によって、電力需要がすごく増えていますと。一方で、米国の送配電網の増強の遅延っていうところはすごく深刻になっていて、商用運転までの待機時間の中央値っていうのが4年を超えるところまで悪化しているそうなんですね。
なので、そうですね、皆さんとか起業を考えてる方に対して少し参考になるかもしれない点としては、蓄電を売ってるんじゃなくて、その待機時間を短くすることを売っているっていうところが面白いポイントだなという風に思います。
なんで送配電網の増強に4年以上かかるんでしょう。
いや、そうですよね。インフラ自体が老朽化していて、それの更新をする必要があるっていうところに加えて、環境のアセスメントとか、ものすごく接続の申請が増えてるらしくて、それの審査が結構ボトルネックになっているようですね。
じゃあ、この後話すかもしれませんが、最短数週間での供給っていうのはどうしてるんでしょう?
あ、そうですね。既存の電力網の空き容量というか、空いてる時に貯めるよみたいなのも使って、不足するピーク時に対してモジュール型の蓄電池で補う。なので、大規模な工事がいらないってところで短くすることができるそうです。
ちょっと続けて課題についてお話しできたらと思います。先ほども言っているように、今すぐ電力が必要なのに接続ができないっていうところになります。まず、ターゲットの顧客ですが、業務目的で多数のEVに充電するようなEVフリート充電事業者、それからデータセンターの開発者、そして工場とか航空宇宙試験施設の運営者っていったところになります。彼らが抱えている課題ですが、電力を得るまでの接続待ちっていうところです。全米でですね、約1400GWの発電っていうのが接続待ちの状態になっているそうです。なので、機会損失が生まれてしまっているんですね。最適な事業を見つけても、18ヶ月から5年の電力待機が発生しているっていうことのようです。
この電力の待機時間なんですけど、伸びちゃっているみたいでして、2000年から2007年の間の待機時間の中央値は2年ほどだったそうです。ただ、2018年から2024年の間だと、中央値が4年を超えてしまっていて、今だともう5年ぐらいまで増えているっていう指摘もあったりするようで、だんだん増えちゃっているってことのようです。
ただ、こういった課題があるんですけど、既存の代替手段っていうのはまだまだ限界があります。1つが、待てばいいじゃないっていうところはあるかもしれないんですけど、それは事業成長が止まってしまうのでなかなか取りづらくて、もう1つ、オフグリッドの発電を作るっていうのもあるんですが、それはCAPEXが多くなってしまうし、排ガス規制が厳しいので、結構そこをクリアするのが難しいっていうところになります。
そうですね。さっきこの話を聞いてて、エズラ・クラインの『アバンダンス』とかもちょっと思い出したんですけれど、この1400GWの接続待ちっていうのは、大体どれぐらいの規模感なのか、分かりやすく言うとどういう規模感なんでしょう?
そうですね。アメリカ全体の既存の発電容量っていうのが、2026年1月時点で大体1800GWだそうなので、1400GWの接続っていうのは、その既存の発電容量を上回っちゃっていて、なのでインフラ側での処理能力がパンクしている状態になります。
今、1800GWって言いました?
あ、ごめんなさい。1400GW、あ、1300GWが今の発電容量です。
じゃあ、もう本当に完全に上回ってるって感じなんですね。接続待ちが。
そう、そう。
ちなみに、オフグリッド発電での代替は、CAPEXがかなり大きいというところですが、実際難しいんですかね。原発を動かしたりしてるみたいな話があった。
そうですよね。オフグリッドのディーゼルとかのオフグリッド発電はCAPEXに加えて、州によるとは思うんですけど、カリフォルニアとかだと環境規制がすごく厳しくなっていて、許認可を得るのもなかなか難しいっていうところがあるようですね。そこまでやるかっていう話だと思います。
そういった課題に対して、彼らが提供している解決策についてです。彼らのアプローチですが、完全なオフグリッドを作るのではなくて、既存の系統電力と太陽光発電、それから蓄電池、あるいは発電機を組み合わせる点にあります。彼らのちょっと面白いというか、差別化のポイントになっているのが、単一メーカーの蓄電に依存するんではなくて、複数メーカーの機器を束ねる、ハードウェアに依存しない統合制御技術になっています。この制御を担うのが、Signusコントローラーというものなんですが、これがちょっと面白いところで、このSignusの役割としては大きく3つあるそうで、1点目がオフピーク時の充電とピーク時の放電をやるってところ。それから、系統からの電力の引き込みの上限っていうのをきちっと監視して制限すること。そして、機械学習を用いてリアルタイムに最適化するっていうところをやっているそうです。
このSignusですが、業界内でいち早くUL 3141っていうような認証を取っていて、これが顧客にとって安全だよっていうところのアピールになっているようです。このSignusというか、このCritical Loopですが、トラクションもあって、それがですね、EVの充電施設での長い待ちを数ヶ月間に短縮したっていうところ。そして、航空宇宙試験施設では、1日で2MWhの設置を完了させたっていうようなものがあるそうです。
さっき言ってたUL 3141認証っていうのは、どれぐらい重要なものなんですか?
そうですね。UL 3141認証ですが、これが電力制御システム向けの安全規格になっているそうです。これが定めてる要件というか、やってることがですね、施設の電力の負荷と、それからオンサイトの発電、そして送電網からの電力供給をリアルタイムで安全に連携制御するシステムに対する性能と要件を定めているそうです。これを取得していることでですね、電力会社に対して信頼が担保できるっていうところのようでして、マイクログリッドが送電網と接続するところにおいて、事前に合意した電力の上限を決して超えないところをきちっと守れるっていうことを証明することになるそうです。
複数のメーカーの機器を組み合わせるみたいな話もちょっと出たのかなという風に思うんですけれど、これのメリットっていうのは一体どういうものなんでしょう?
そうですね、彼らが言っているところとしては、特定のバッテリーメーカーの供給不足であったり、価格が高騰してしまうっていうリスクを回避できると。なので、常にその時点で1番いい調達を行えるっていうような、そのサプライチェーンの柔軟性がメリットだという風に考えているそうです。
この解決策に対して彼らが対峙している市場ですが、先ほど言ったようなスピード・トゥ・パワーっていったところの市場になります。全体のTAMですが、アメリカ全体の商工業のエネルギー貯蔵市場で約428億ドルという風に見込まれています。その中で、SAMとしては5から100MWhクラスの即時の電力を求めるようなミドルマーケットを狙っているそうです。当面の目標であるSOMですが、これが2026年までに、EVとかデータセンターなどのペインポイントの強い案件を中心に、100MWhぐらいの導入を目指しているそうです。
この市場なんですけど、成長を後押しするようなドライバーがいくつかありまして、1点目が、AI需要によるデータセンターの爆発的な増加。2点目が、物流とか商用車における産業用のEVの充電施設がどんどん進展していること。そして3点目ですが、カリフォルニア州のCPUC(公益事業委員会)が推進する、フレキシブルサービスコネクションっていったものの制度化になるそうです。
この制度なんですが、FCS、あ、ごめんなさい、FSC、フレキシブルサービスコネクションなんですが、これがどういったものかって言うと、配電系統の容量の制約によって、需要家が希望するフルな全ての容量を受電できない場合にも、系統の安全性を保てる範囲で、時間帯とか条件に応じて容量制限をしますよ、それでもいいですかっていうのを受け入れることで、普通より早く接続とか通電が可能になるような制度だそうです。なので、不足分を顧客側、需要家側の蓄電とか太陽光、バックアップ発電機などで補うことが可能になるっていうことのようです。
こういう制度があるので、先ほどのSignusの安全規格の話が効いてきて、電力会社からすると、顧客は本当に約束した電力上限を守れるかっていうのが不安の種になるんですが、先ほどのCritical Loopは認証を取っているので大丈夫ですよっていうところが、彼らの追い風になっているってことのようです。
ああ、本当に、AIのデータセンター需要に加えて、こうした制約というか規制が入ってきたからこそ生まれたビジネスっていう感じなんですね。
いや、そうですね。この規制というか、その制度自体も、彼らも話し合ってというか関わって作っていっているっていうところもあるそうなので、そこもうまくやり取りしてるんだろうなと思います。
とはいえ、一方でこれは競合他社も狙えるってことだと思うんですけれども、このミドルマーケット、5MWhとか100MWhとか、それぐらいの規模のミドルマーケットを競合が狙わないのは何なんでしょう?
そうですね、大手のところだと、もっと大きな数百MWhの超大型発電のところに集中しがちだそうです。なので、中規模ですし、かつその現場ごとに複雑な制御を求められているので、参入障壁が高くて見過ごされがちっていうことのようですね。
その彼らが取っているビジネスモデルですが、2つの形で提供しています。前提というか、なんですけど、Signus単体ではなくて、蓄電池とか発電機などのハードウェアと組み合わせて、統合型のマイクログリッドプラットフォームとして提供しているそうです。ただ、その収益モデルとしては2つあって、1点目がエネルギー・アズ・ア・サービスです。顧客としてはCAPEXゼロで導入できて、Critical Loopが設備を保有して、顧客は継続的なサービス料金を支払うっていうようなところになります。2点目がですね、長期サービス契約型です。顧客自身が設備を購入して、税制優遇とかも享受しますが、Critical Loopは遠隔でのオーケストレーションとか、運用の保守・制御といったところによる継続的な課金を得るところになります。
このエネルギー・アズ・ア・サービス型でCritical Loopが設備を保有すると、結構資金的に難しいなと思うんですけれど、その辺はどうしてるんでしょう?
いや、そうなんです。めっちゃ重たくなるので、そこのところは難しい点だと思います。なので、彼らはですね、エクイティでの調達だけではなくて、プロジェクトファイナンスとかデットも活用して調達しているっていうところのようです。
なるほど。じゃあ、一方のその長期サービス契約・SaaS型みたいな収益モデルに関して、オーケストレーションとかっていうのは具体的にはどういうことをしてるんでしょう?
そうですね。電力料金が安い時間帯に蓄電をして、高い時間に放電するスケジュール管理とか、あと電力網の異常を検知して瞬時にバックアップに切り替えるといったような運用ってところを、24時間体制で行っているということのようです。
そして、彼らの戦略についてお話ししたいと思います。彼らの戦略的な立ち位置ですが、ハードとソフトと契約の設計を束ねた統合型のプラットフォームっていう点になりますね。なので、純粋なソフトウェアの専業でもないですし、発電事業者でもないっていうような中間のポジショニングになります。何を内製して、何を外部から調達するかっていうところが切り分けられていて、蓄電池のセルなどのハードウェアコンポーネントについては外部の他社から調達して、柔軟性を確保していますと。一方で、その差別化のコアとなるようなハードウェアの統合層とか、ソフトウェアとか制御層は完全に内製化しているので、ブラックボックスにしているということのようです。彼らの10から20年後の理想像ですが、単なる電池のベンダーにとどまらず、電力のアクセスを設計から運用まで一気通貫で担うような、電力インフラのOS的な運用者を目指しているっていうことのようです。
なかなか一言では言いづらいビジネスモデルですね。
そうそう、なんですよね。なんか複雑で、これは一言で言うと何なんだみたいなのは思いながら調べていたんですが。
ソフトウェア専業の方が、さっきで言うとSaaSとかにしちゃった方が、ビジネスモデル的に利益率は高くなると思うんですが、それを選ばなかった理由とかあるんですかね?
そうですね。確かに粗利率っていうのは高くなるんですが、その現場でのハードウェアの統合、それが複雑なんですが、それを顧客とか、あるいは統合するような業者に丸投げすることになってしまう。そうすると結果的に、その顧客の最大価値であるTime-to-Powerが保証できなくなってしまう。すぐに電気が使えますよっていうところは保証できなくなってしまうので、避けたっていうことのようです。
最終形の理想像みたいな、長期的な理想像で、この次世代電力インフラのOS的運用者みたいなことはあったと思いますが、これって具体的に言うと、もうちょっとどういう意味なんでしょう?
いや、そうですね。私も全然具体的にはイメージできてないんですけど、分散したような蓄電池とか発電機がいっぱいある状態で、それがCritical Loopのソフトウェア上で繋がって、電力事業者からの要請に応じて地域全体の電力バランスを自動的に最適化するような、VPP(仮想発電所)の頭脳になるような状態っていうことを指しているようですね。
そうなんですよね。結構複雑なんですが、彼らが何をやって、どういう風に進めていったかというお話、ロードマップをお話しできたらと思うんですが、これは結構分かりやすいかもしれないですね。まず、フェーズ1ですが、創業から現在までというところですが、これはPMFの獲得に集中したそうです。EVの充電とか航空試験とか、要は発電の接続までにすごく時間がかかって、機会損失がとっても大きいような会社さんに特化したそうです。ここで、最短数日から数週間での電力供給っていう、極端な制約で止まらない実績っていうのを構築したそうです。
フェーズ2ですね。2026年の今年に向けて、標準化とルールメイキングを行っていこうという風にやっているそうでして、UL 3141の取得によるシステムの標準化とか、あとはその蓄電の会社さんとの提携を通じて、国内の供給網を確保するっていうのを進めているそうです。さらに、先ほどもちょっと見たんですけど、カリフォルニア州の公益事業委員会との政策提言を通じて、フレキシブルサービスコネクションの制度化自体にも直接関与して、自社に有利な市場環境も作っていっているそうです。
今後ですね、フェーズ3としては、拡張したり全米展開したりするようなフェーズで、調達した資金をもとにですね、カリフォルニアの外への進出とか、AIデータセンターなどのハイパースケール市場への拡大を狙っているっていうことのようです。
AIデータセンター銘柄かなと思ったんですが、最初から巨大なデータセンター市場っていうわけではないんですね。
いや、そうなんですよね。そこはちょっと私も気になったところで、データセンターだともうちょっと規模が大きすぎて、導入までの意思決定サイクルが長いので、スタートアップとしては、初期のトラクションとPMFを早く実証するにはちょっと不向きだっていう風に考えたそうですね。
この政策提言とかルールメイキングにかなり関わってるっていうところが珍しいスタートアップかなと思うんですが、そこの強みというかメリットというのはどういうところでしょう?
そうですね、もちろん自社のためだけにやっているわけではないと思うので、業界にプラスになるってことはもちろんだと思うんですが、ただ、その自社のプロダクトの仕様とかがそのまま業界の新しい標準として採用されるような可能性も高まるので、そういった点で後発の競合に対しては参入障壁になりやすいって点はあるかなと思います。
そして、彼らの競合についてです。競合マップですが、縦軸に提供するアセットの重さと、横軸にターゲットの規模を置いていますが、大規模で、ハードというか重ためのものを重視するVoltaGridと、小から中規模でかつハード重視のScale Microgrid、そしてソフトだけを提供するCamus Energyっていうのが存在しています。Critical Loopは、これらがカバーしきれないような中間にポジショニングする。それはどういうポジショニングなんだみたいな気もするんですけど、中間に当たるっていうことのようです。
もう少し競合について言うと、VoltaGridについては、主に大規模データセンターとかAI関連を対象にしていて、天然ガス発電主体のマイクログリッドを提供しているそうです。Scale Microgridについては、データセンターとか大学病院とかを対象にしていて、垂直統合型のマイクログリッドの開発とか保守運営をしているそうです。Camus Energyについては、ソフトウェアの提供ですね。なので、資産がCritical Loopよりライトで、ハード統合ではなくて、もう少し制御とか系統での協調に軸を置いたようなものになっているそうです。
Critical Loopですが、モートとしてはいくつかあって、1点目が、先ほども言っているようなUL 3141認証の自律制御、そしてメーカーに依存しないハードの統合力、それから導入のスピードですね。これが短いこと。そして、移設が可能なモジュールの設計と、重なるんですが、規制とかユーティリティとの連携っていったところにあるそうです。
一方でですね、弱点としては、複数の機器を統合しているので、長期的には保守の複雑性が増大するような懸念もあるという風に考えられますね。
VoltaGridとか、超大規模なプレイヤーがミドルの層に降りてくるみたいな、そういう可能性はあるんでしょうか?
可能性はあるとは思うんですが、VoltaGridはですね、ガスでの発電っていうところをやっているので、すごくアセットが重たくなっているので、Critical Loopはそういうものではなくて、既存の系統電力をハックするようなことを展開してるので、そういったところが構造的に噛み合わないというか、苦手になっているので、避けられるんじゃないかなという風に考えているそうです。
あと、さっき保守の複雑性みたいな弱点があるという話でしたが、これにはどう対策していくんでしょう?
そうですね。なので、Signusの制御とかがコアっていう風にもお伝えしたんですけど、そこを内製化する。で、クラウド経由で全モジュールの稼働の状況を監視して、つまり遠隔でオーケストレーションして、物理的な保守の手間をソフトウェアで吸収しようとしているっていうことのようですね。でも、どこまで実現できるかとかは、本当にこれからの課題になるんじゃないかなと思います。
では次に、参入戦略についてお話ししていきたいと思います。彼らですが、初期のターゲットの選定っていうのが面白いポイントだなと思います。環境にいいからというところではなくて、系統の都合で事業が止まってしまって、停止のコストでとっても困っているので支払い意思が高いですよっていうような顧客にフォーカスをしました。具体的には、EVフリートとか工場、それから航空試験設備といったところの、経済的なボトルネックの解消を優先する層を対象にしたそうです。MVPとしては、ゼロから巨大なオフグリッドの発電所を作るのではなくて、既存の系統の空き容量を最大限に使って、不足分だけを補うようなハイブリッドの構成で製品化したそうです。
初期の顧客ですが、スピードを武器にして直接販売したっていうところで、それで稼働しましたよっていうところで、その稼働の実績自体をテコにして広げていったってことのようです。
この初期の市場だけで、ビジネスって十分にスケールしていくんですかね?
いやあ、多分難しくて、一応その最初の市場だけでも数千万ドル規模はあるそうなんですが、ただここで止まるのではなくて、ここで認められてますよっていうような実績と信頼を作って、それを使って本命のデータセンター市場に行きたいっていうことのようですね。
彼らがですね、最初の顧客獲得で確認したとか、PMFとして測った指標としては、ユーザー数とかではなくて、現場で事業が絶対に止まらないこと、それから電力会社からの承認の獲得っていうような、厳しい基準があるそうで、そこをできましたよってところを実績にしたいっていうことだと思います。
そうですね、起業プロセスです。これがですね、ちょっと面白いところで、創業チームがですね、電力業界の出身者ではないですと。CEOのアラチャンダルラマララマムルティさんは、元SpaceXのチーフエンジニアで、有人ロケットレベルの高性能のハードとか、それからフェイルセーフとかも含めて、絶対的な安全性の専門家に当たるそうです。CTOのリディア・マーサさんは元Palantirで、COOのアンドリー・グリナルズさんは、Uberなどを経て、金融とか事業、オペレーションのスケーリングを担っているそうです。
彼らの強みとしては、電力への知見があるっていうところももちろんあると思うんですけど、そこだけではなくて、宇宙船のですね、高度な自律制御、そして絶対的な安全性っていった設計思想を、地上の電力網インフラに移植したっていうところが面白いポイントになるかと思います。
電力の専門家が、あんまりチームにね。そうみたいですね。ただ、なので、それは弱点になるのか、とてもいい手になるのか。
いやいや、そうですよね。その業界の常識がない、だから、待つのは当たり前だからしょうがないよみたいなところに縛られないっていうのは強みになるかなとは思うんですが、一方で結構規制とかルールは厳しいと思うので、おそらくアドバイザーとか電力会社出身の方はチームに引き入れているとは思います。
SpaceXの方が入ってるっていうのは、システムダウンさせないための冗長化設計とか、複数のコンポーネントの異常検知とか、あとはフェイルオーバーとか色々あると思うんですけれど、Palantirの方って、どういうところでその知見って生かされるんでしょうか?
そうですね、各現場の稼働のデータとか天候、それから電力網の負荷っていうのをリアルタイムで統合して解析する。そして、1番経済的で安全な放電のタイミングを予測するっていうAIのアルゴリズムを作るっていう点で生かされているそうです。多分、そのSignusの制御っていうのが1番の技術的な肝になるので、そこに関連しているっていうことだと思います。
彼らの学びと初期の歩みについてです。彼らの創業初期の最大の学びとしては、現場でのハードウェアの統合作業が思った以上に複雑だということだったそうです。単に既製品のバッテリーとインバーターを組み合わせるだけだと、スケーラビリティがないっていうところに気づいたそうで、なので、ハードウェアに依存しないSignusコントローラーを自社で内製化する方針に変えていったってことのようです。
そして、安全規格UL 3141とか規制への対応を、製品ができてから後追いするのではなくて、初期の段階からプロダクトの仕様の真ん中に据えたそうです。なので、規制の適合そのものをモートに変えるっていうようなアプローチを取ったそうです。結果としてですね、創業が2023年なんですが、そこから数年で50MWhの規模の導入が完了していて、カリフォルニア州の制度設計にも影響を与えるようなポジションまでに成長したようですね。
現場での統合作業が複雑だったっていうことですが、特にどの辺が複雑だったんでしょう?
そうですね。バッテリー、蓄電池と太陽光発電、そして電力会社の系統っていったように、それぞれ通信の規格であったり安全基準が異なる機器を連携させて、しかもミリ秒単位で制御する必要があって、もうそこが大変、大変というか複雑だった背景のようです。
その創業から数年で制度設計に関与したということだったと思いますけれど、それってどうやってやったんでしょうね。
そうですね。州政府自身もですね、電力網がパンクしちゃっているっていうのはペインだったそうでして、それを実際にハードウェアを動かして解決したよっていうようなトラクションを作ったので、政府側からも、州政府側からもですね、専門家として意見を求められる立場になったのではないかなと思います。
このような彼らですが、資金です。まず資金調達の状況としては、2026年4月にシリーズAのラウンドで、2600万ドル、約39億円を調達しました。これによってですね、エクイティとデットを合わせて、累計で4900万ドルを調達していますと。投資家としてはですね、インフラ・エネルギー投資に強いようなコニファー・インフラストラクチャー・パートナーズと、ディープテックとか先端技術に強みを持つハノーバーが参画しているそうです。これらの調達を成功させた要因としては、気候変動対策をしますっていうのではなくて、電力への接続が産業の成長を止めていますっていうような、経済的なボトルネックの解消を提示したっていうことのようです。
成長の数字としてはですね、従業員数が直近1年で8人から35人にめちゃくちゃ増えたりとか、導入容量も2026年には100MWhの稼働を目標とするような、グロースのフェーズに入っているそうです。
インフラ系ファンドも投資してるんですね。
いやあ、そうですね。なので、ビジネスモデルもお話ししたんですが、エナジー・アズ・ア・サービス、エナジーを提供しますよっていうところのモデルだと、ハードウェアの資産を保有する必要があるので、それと、そういったところの安定を好む層と相性が良かったんじゃないかという風に考えられるそうですね。
今年の100MWhは目標だということですが、リスクがあるとしたらどのあたりにあるものですかね?
そうですね。その顧客の需要側はもう十分にあるそうなんですが、供給側はですね、バッテリーメーカーからの安定した供給の確保と、それを現場で設置するようなエンジニアが十分いるかっていったところが、ボトルネックになるような可能性があると思います。
そして、日本での応用についてです。日本でもですね、再エネの導入の拡大に伴って、ノンファーム型接続のルール整備が進んでいますと。なので、アメリカ同様ですね、接続の系統とか工事に時間を要する高圧の需要家の間では、早急な受電のニーズが高まっているそうです。ただ、海外のシステムをそのまま持ち込むっていうのはもちろん難しいので、日本特有の電力会社との協議とか保安の要件をクリアしたような実務のオペレーション自体をモートとするような優位性にはつながるかもしれませんと。
AIとしては案を3つ出していて、1点目がですね、暫定受電ハックというところで、工場の増設とかEV拠点とか、系統の増強を待てないような企業向けに、需要家側の制御と蓄電池の導入パッケージを提供するですね。2点目としては、実装OSの特化というところで、汎用の海外製のハードウェアは使いつつ、日本の厳しい保安要件とか受変電設備にローカライズしたようなソフトウェアに特化するような戦略になるそうです。3点目が、サブスクリプション、エネルギー・アズ・ア・サービスで、ハードウェアを売るのではなくて、導入の時短とか非常時のバックアップ、それから遠隔での運用を全てセットにして、月額サービスというか、サービスとして提供するところが考えられるのではないかということのようですね。
その日本のノンファーム型の接続っていうところ、記事で見たりしてる人もいるかもしれませんが、米国の柔軟接続と違うところはどういうところでしょう?
あ、基本的な概念は似ているそうです。似てる点としては、系統の空き容量の範囲の中で接続を認めるよ、混雑した時には出力は制限するよっていうような仕組みっていうのは似ているところだそうです。
なので、ここが拡大すると、制御ソフトの需要自体は増えるかもしれないねというみたいですね。
最後にまとめになります。今回、Critical Loopの事例から学べるようなポイントは3点挙げられていて、1点目が設備とか蓄電池とかを売るのではなくて、事業開始の遅れを防ぐような、Time-to-Power、時間の価値を売っているという点になります。
2点目が、規制とか電力会社の実務を、後から対応するような条件ではなくて、最初からプロダクトの要件の真ん中に組み込んで、それを競争力にまで昇華させたような点です。
3点目が、宇宙産業とか防衛といったような、絶対に止まってはいけないようなところで止まらないという、信頼性の高いノウハウを、電力といったレガシー産業の課題解決につなげたというところになります。
今後考えられるというか、実践できるようなアクションとしては、自分たちの業界において、設備とか技術が欠如しているのではなくて、待ち時間とか制度的なラグが発生して、それが価値を毀損してしまっているところを探して、それがハックできないかというところは、考えるポイントとしてあるかもしれません。はい。というところで以上です。
今回はCritical Loopをご紹介したんですけど、いかがだったでしょうか?
そうですね、この時間価値を売るというのは、前に紹介したエグザバットとかもちょっと近いところがあるのかなと思ったんですが、やっぱりものではなく、あるいはサービスではなく、待ち時間を減らすための時間を売るみたいなところはすごく参考になるなと思いました。
一方で、そうした価値は明確なんですが、結構やっているビジネスが複雑で、ちょっと厳しづらいところもあって、この複雑さがある意味の堀にもなっているのかなというのはちょっと思ったところですね。
そうですね。いや、めっちゃ複雑で、何を売っているんですかというのをめっちゃ調べて、[笑い]分かったような分からないような気持ちになって調べていたんですが、おっしゃるように、複雑で堀になっているとしたら多分制御だとは思うんですが、ただ、それゆえに何でも対応できるよみたいな、複雑さが堀になっているのかもしれないです。多分。
そうですね。この規制とかにちゃんとうまく絡んでやりつつ、ソフトも作り、ハードも買い、エネルギーも送り、時にはサービスもするみたいな、この組織の中の複雑さをどうデザインしていくかは、それはそれで大変なんだろうなとちょっと想像しますね。
いやあ、そうですよね。かなり役割も多そうなので、マネージは大変だろうなと思います。今後変わっていく可能性は十分あるのかなとは思うんですけどね。そういった点で、今後どうなるかもちょっと気になるスタートアップではありました。
はい、では今日はこちらで終了となります。FoundX Review Startup IdeaCastですが、今後も皆さんのアイデアのために最新のスタートアップをご紹介していけたらと思いますので、ご興味のある方はぜひチャンネル登録やいいねをお願いできたらと思います。
また、FoundXのプログラム[音楽]では応募を募集しているので、周りに起業を考えていらっしゃる方がいたら、ぜひご紹介いただけると大変嬉しいです。
ではまた次回よろしくお願いします。ありがとうございました。[音楽]ありがとうございました。
記事公開
