M&A後に「放置」すれば伸びていても失敗する――野本正生氏が語るEQ重視のPMI 3ステップ

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概要

ロールアップ型のM&Aで会社を大きくしようとする経営者が、若手も含めて増えている。では、買収した後のPMI(経営統合)には何が必要なのか。M&A BANKのMC・島袋直樹氏がこの問いを投げかけた相手は、メディア総研株式会社の取締役副社長で、同社が買収した静岡県浜松市の子会社アドウィルの代表取締役も務める野本正生氏である。野本氏は島袋氏が最初に創業したときから20年以上仕事を共にしてきた人物で、数か月前には福岡で小塚氏とPMIのセミナーを開いている。

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野本氏の立場ははっきりしている。PMIに必要なのは知識や計算の力(IQ)よりも、心の知能指数とも呼ばれるEQであり、それがなければPMIは動き出すことすらできない。以下、野本氏が自身の実践から語った内容を順にたどる。

PMIに必要なのはIQではなくEQ

島袋氏はまず、買収後のPMIで必要なスキルは何かと尋ねた。野本氏によれば、多くの人は知識、つまりIQが必要だと考える。算盤を弾いて買収し、その後にKPIを設定し、管理項目を変える。IQ型のアプローチは、1から100までをマイクロマネジメントで管理してプロセスに乗せるという発想になりがちだという。島袋氏はこれを、机上で組み立てた計画をそのまま現場に落とし込むと大変なことになる、という意味だと受け止めた。

野本氏がいうEQは、これとは真逆のものだ。対象の会社を尊重し、オーナーも含めた全社員に寄り添い、どうすればこの会社がさらに良くなるかを社員と一緒に考えられる状況をつくる。そのためには細かな変化に気づける能力が要る。多くの会社がPMIで苦戦している原因は、このEQを重視していないことに隠れている、と野本氏は見ている。

EQが必要なのは買われた側だけではない。買い手は当初、売上や利益を主な目的として入り込み、デューデリジェンスもそこを中心に行う。しかし実際にPMIが始まると、それ以外の部分のほうが比重が大きい、と野本氏は言う。EQの部分で課題が解決すれば売上は後からついてきて、成長まで手に入る。逆にIQだけで臨み、売上を当面維持できたとしても、中長期では売上が下がっていくケースが多い。スタート地点がずれているからだ、というのが野本氏の説明で、これは実際にやってみてよくわかったことだという。

「寄り添う」とは具体的に何をするのか

島袋氏が「寄り添う」とは具体的に何をするのかと問うと、野本氏はまず、ただ話を聞くだけでは全くだめだと答えた。

第1段階で重要なのは、誰がPMIの責任者として入るかである。「担当になったので来ました」という人が入った時点で、もう寄り添っていないことになる。人は自分たちがどう見られているかを無意識のレベルで感じ取るからだ。それなりの責任者が入り、あなたたちの組織を尊重し大事に思っていることを、言葉ではなく行動で示さなければならない。

第2段階は、全員と一対一でコミュニケーションを取ることだ。ただし、いきなり問題に踏み込むのではなく、まず空気をひとつにしていく。これまでいなかった人、しかも責任者が入ってくれば、最初は違和感が生まれ、場はぴりぴりする。その状態を続けながら、氷を溶かすように少しずつ自分の存在を当たり前にしていく。野本氏のいう寄り添いは、ぴったり横にくっつくことではなく、その場の空気がどう成り立っているかを読み解くことだ。そうすると社員は「この人がいても自分たちのままでいいんだ」と心を開き、責任者は会社の一員になっていく。そのうえで状況に応じて一人ひとりと話し、オーナーと打ち合わせをする。この二つの過程を経て、寄り添いがようやく成立するという。

伸びていても「放置」は失敗する

島袋氏は普段、売却側を支援することが多い。その目線から疑問を投げかけた。上場企業に買収され、社長がロックアップで残る場合、社員には「上場企業の傘下に入って事業も広がる、引き続き伸ばしていこう」と説明するだろう。そこへ親会社からPMI担当が来て社長も含めて面談していけば、社長は「もう売ったのだからそうだよな」と感じそうだ。ロールアップで買った会社は、ある意味放置して伸びてくれるのがいちばん良いのではないか――。

野本氏の答えは、放置は失敗するというものだった。「必ずと言うと語弊がある」と前置きしつつ、伸びていたとしても失敗すると言い切り、特にオーナー企業であるほどうまくいかなくなるという。さらに、オーナーが残り、PMI担当がただ派遣されただけでもうまくいかないと付け加えた。

その理由として野本氏が挙げるのは、現状維持が目的ならM&Aをする意味がない、という点だ。オーナーはM&Aの成立で目的を達成できる。しかし売却された会社の社員にとってのメリットは何か。野本氏はアドウィルの社員に対し、自分は現状維持のために来たのではないと話しているという。未上場企業は未上場としての経営をしてきたが、今は上場企業グループの枠に入っている。社員の力は大きいので、上場企業という舞台で力を発揮してみないか、という話から入っている。

上下関係ではなく「同じ船の同志」になる

島袋氏はさらに踏み込んだ。オーナー社長が残っていても、「もう売ったのだから」という構図になりやすい。そうなると社員は、社長よりも派遣されてきた担当者がボスなのだと受け取るだろう。PMI担当と残る社長のどちらが上かを明確に示すべきか、社長を立てるべきか。

野本氏は、上下関係を示してもあまり意味がないと答えた。警戒が強まるだけで、「この人より自分が偉い」という態度で「こういう会社になります」と言われても、社員は怖いと思うだけだという。

代わりに野本氏が示したのは、PMI担当は「新しいお父さん」が来たという感覚で入るべきだという比喩だ。家族で離婚があっても子どもは前の父親に会える。それと同じように、現状を維持するためではなく、新しい目標に一緒に取り組み、一緒に成長したいと本心から伝える。そのために前オーナーにも相談役として一定期間力を借りるが、全責任は自分が負い、成長したらそのリターンも分かち合おう、と話しているという。

そうすれば上下はなくなり、社員は「船が新しい海に向かっていて、自分たちはその船員だ」と思えばよくなる。主役は社員で、自分は船を日本海から開かれた太平洋へ走らせるための新しい船長にすぎない、と野本氏は表現した。同じ運命を背負った仲間として同志の関係が生まれて、ようやくPMIの第一歩が踏み出せる。これがなければ全ては幻で、一定期間運良く出る売上も幻であり、継続性も成長性もないという。

野本流PMIの3ステップ

では、その第一歩の後に何をするのか。野本氏は大きく3段階のプロセスを挙げた。

  1. 心を通わせ、寄り添い、マインドセットを新しく書き換える。野本氏はこれを「教科書には載っていない第1段階」と呼ぶ。
  2. 会社の健康診断を行う。野本氏の場合、過去7年分の財務・会計・契約の流れをすべて確認し、全社員の経歴や昇給、仕事のスキルがどう変化してきたかまで7年分チェックする。
  3. それを踏まえて、今の事業をさらに進化させるためのスクラップ・アンド・ビルドの体制をつくる。

成長が一気に進むのは3つ目からだが、1から3のすべてが必要で、この順番で進める必要があるというのが野本氏の考えだ。

やってはいけないのは「押し付け」

PMIでやってはいけないことを問われ、野本氏は押し付けを挙げた。買収された会社の社員は、買収されるためにその会社にいるわけではない。自分のやりたいことや夢があって働いている。そこへ買い手の都合で「売上をいくら立ててください」と求めるのは押し付けだ。

これを逆転させ、面白いことをやりたい、もう一度挑戦してみたい、というマインドに書き換えられれば、社員はおのずと売上を上げたいと思うようになる。野本氏自身も長くオーナー企業を経営してきた立場から、買収前の会社はオーナーの思考の枠の外に出られないと語る。仕事でも生活でも人生でも、その枠の中の思考を変える必要があり、それがマインドセットの書き換えだという。

そのために野本氏は、やる気になれば何でもできると話をして寄り添い、背中で見せるように自分がいちばん働いて会社を理解する。社員と同じレベルで会社を理解した人が見せるから押し付けにならず、共通の新しい目標を見られるようになる、という説明だ。

野本氏は、起業家と一般の社員とでは志向の種類が違うとも話した。起業家は何かをやりたい気持ちが人一倍強いが、長く勤めた社員は枠組みの中の仕事をきっちりこなすことに慣れすぎていて、やれることをやって安定した生活を送りたいという志向が強い。そこにベンチャーマインドを少し呼び起こす。アドウィルでは今、「こういうことをやってみたい」「これまでのやり方をこう変えたい」という声が会議で多く出るようになった。野本氏はこれを第1フェーズの完了と位置づけている。

組織図ではなく業務プロセスを変える

島袋氏は、面談をすると「この人は優秀なのになぜ出世していないのか」「なぜこの人がこの責任あるポジションにいるのか」と感じる場面があるはずだとして、組織を変えるのかを尋ねた。

野本氏は、そうした状況は実際にあると認めたうえで、組織自体を大きく変えることはしないと答えた。代わりに仕事や業務プロセスを変え、その人の力を生かせるところまで引き上げている。外部から来たからこそ、「この人にはもっとこういうスキルがあるのに生かせていない」「スキルがずれている」と見える。それを整えることが、成長のスイッチを入れるために必要だという。単に配置を変えると、組織のバランスも心のバランスも崩れるため、業務プロセスのほうを変える。

具体例として野本氏が挙げたのは、トップ1人とフラットなメンバーからなる5人程度のグループだ。取りまとめる力や、問題・課題を発言できる力のある人を一段だけ上げ、それまでトップがすべて話していたことを一度その人に担わせる。ただし必ず事前に話をする。才能があると言われても使いたくない人も多いからだ。やってみたいという人には、指示命令系統を少しだけ変え、野本氏自身もグループミーティングにすべて同席し、終わった後に「あれは良かった」「これはこう伝えたほうがいい」と評価する。

スキルがずれている人については、仕事そのものを作り替える必要があると野本氏は考え、取り組んでいる。仕組みにAIをどんどん導入し、その人の別のスキルを生かした結果、業務は10倍ほど速くなっていると野本氏は話す。

島袋氏が、それは具体的に指示してやり方を変えさせるということかと確認すると、野本氏は「実は具体的ではない」と答えた。相手が自発的に気づくような仕組みをつくるのだという。「これをこうやってください」と指示するだけでは、本人はマインドがわからないまま取り組むため、一定の結果しか出ない。たとえばデザインの仕事なら、野本氏がAIでコアになるものを少し作り、そのエンジンに成果物を載せればこうアップグレードできると見せる。「どう思う?」と聞くと「面白い」となり、「このプログラムを一緒に作らないか」と誘うと「やってみたい」となる。そうして本人の力が掛け算になり、大きな成果が出ているという。

島袋氏はここで、EQという言葉の意味がわかったとまとめた。業務の進め方は変えるが、指示で変えるのではなく、共感を生むプロセスをつくって気づかせ、自発的に動いてもらう。何を変えるべきかを分析したうえで、共感をもって変えられるかどうかがPMIの巧拙を分ける、という理解に野本氏も同意した。

過去7年分の財務から会社の「コア」を読む

第2ステップの財務確認について、野本氏は単にキャッシュリッチかどうかを見るのではないと強調した。デューデリジェンスでも財務や会計は見るし、それ自体はきれいだ。しかし第1段階を終え、社員がどんな気持ちで働いているかを理解した後は、成長のために何を取り入れ、何を捨てるかに入っていく。守破離でいえば、まず守って受け継ぎ、次に壊して新しくするために、現状と歴史を財務という健康診断表から考える段階だという。

見るべきは、オーナーが汗と血を流して経営してきた流れである。契約の流れ、金額、顧客を追えば、何年目のここで苦労した、ここで一気に伸びた、この契約が会社のコアをつくった、ということが創業経験者ならわかる、と野本氏は言う。長く経営されてきたオーナー企業には、採算の取れているものと取れていないものが混在している。それを解きほぐし、捨てるもの、取り入れるもの、守るものを評価する。これは会計士だからできるというものではなく、中に入って会社が伸びるために何が必要かを判断しなければならない。野本氏は現在、ある程度事業を整理して得意分野に寄せ、力が生まれたところで新しい事業やサービスをリリースする準備をしているという。

確認はできれば7年から10年分、明細まですべて見る。どの案件について聞かれても、何年目に売上が立ち、今は月額いくらで、誰が担当し、何をつくってきたかまで答えられるレベルにする。島袋氏はこれを、新しいボスが「過去を知っている」状態をつくり、「知らないくせに」と思われるのをなくすことだと言い換え、野本氏もその通りだと答えた。

成長のためには「逆走」も必要

第3ステップについて、野本氏は買い手にとって最も大事な点だと述べた。買収する会社は財務だけでなく、カルチャーや歴史、仕事のスキルを含めて良い会社だから買う。しかし現状維持を狙えば、売上は少しずつ下がっていく。必要なのは維持ではなく成長で、そのためには第2ステップで力をつくり、第1ステップのマインドセットを経たうえで、新しいサービスや商材、仕事をつくる。ここには人事も含まれ、自分の目線で新しい人を採用することもある。

野本氏が買い手の多くが悩むところだと指摘したのが、見込みどおりに売上が上がらないときだ。大事なのは理由があって下がっているのかどうかで、成長のためには一度「逆走」する必要があるという。フルマラソンにたとえれば、現状維持なら同じペースで走ればよいが、スタミナはやがて切れる。成長させるには新しい走り方や新しいシューズが必要で、それを見つけるために一度止まったり戻ったりしなければならない。第2ステップで見つけた不採算の仕事をなくすには、そこまで戻る必要がある。一度なくしてから新しいもので売上を戻し、伸ばしていく。

したがって、買収後に売上をいくら立てるかは当然目指すものの、多少下がっても次のフェーズに必ず持っていくというビジョンを共有して走ることがいちばん大事だと野本氏は言う。成長のビジョンがなければ、買収後4〜5年で赤字になっていくケースが多いと見ている。自走できるところまでがPMIだと思われがちだが、売上や新しいものを生み出す力をつけさせることがPMIの最終的な目的地だ、というのが野本氏の主張である。

PMI担当者の条件と買い手の責任

島袋氏は、買収後に売上が下がれば買い手は「話が違う」と感じるが、PMI担当には逆走してでも伸ばすという気持ちが必要なのか、と尋ねた。野本氏は、それは当然必要だとしたうえで、当事者として語れるかどうかが重要だと答えた。売上が落ちたときに、なぜなのかを明確に説明できるか。

野本氏は病気にたとえた。出血の原因がわからずにガーゼで押さえていれば出血多量になる。どの血管が破れているかがわかっていて、だからバイパス手術をするという治療なら復活できる。PMI担当はそういう目線の人でなければならない。経営はすべて経営陣の責任であり、買われた会社の責任ではない。誰を配置するかは買い手の責任で、担当者が「理由がわからない」というなら担当者を替えなければならない、と野本氏は述べた。

島袋氏が、細部まで把握でき、しかもEQ寄りの人を派遣すべきだということかと確認すると、野本氏は同意し、買収を続けるならそうした人材をヘッドハントするなり社内に用意すべきだと語った。ただし、そういう人材は少ない。少ないが、いないわけではなく、創業者が向いているという。

野本氏は、こうした仕事ができる人を増やしたいという夢を語った。それは日本企業のためにも、労働者のためにも、オーナーのためにも、日本という国のためにもなるが、このポジションの仕事が今の日本にはないという。大企業経験者だけでもだめで、ビジョンをライフワークとして実践できる人を集め、PMIの際に1〜2年きちんと派遣して再生し成長させれば、組織の中からトップになれる人が必ず出てくる。そこまで育てられるのはEQが高く、創業や事業再生の経験がある人たちで、買い手はそうした人に入ってもらうか、アウトソーシングするのがベストだと野本氏は考えている。

島袋氏は、事業承継とロールアップで会社を大きくすると語る若い経営者が増えているが、それほど簡単ではないと述べ、ロールアップを掲げるならPMI人材をどう確保するかがセットになると指摘した。野本氏も、若手起業家から同様の相談を多く受けていると応じた。自分の会社より歴史のある会社を買うことになれば、オーナーがつくってきた歴史を同じ感度で感じて泣けるかどうか、大げさに言えばそこまでの感性が要るという。事業承継するレベルの歴史を丸ごと引き受ける覚悟と、社員の家族まで支え、全員が前オーナーから乗り換えてくれるほどの夢が必要で、一人の夢だけでは全員の人生は支えられない。野本氏は、M&Aをする人には自分が夢を語るのではなく、グループに入った会社の一人ひとりが夢を語れるようなM&Aをしてほしい、それが責任だと語った。

対談の中では、島袋氏がM&A BANKと組んでPMI人材を紹介する取り組みを提案し、野本氏も前向きに応じる場面があった。野本氏によれば、メディア総研は理系人材に強く、顧客はプライム市場の企業から地方の大手製造業オーナーまで製造業が中心で、そうした会社もPMIの課題に悩んでいるという。

最大の秘訣は、最初に感じる「空気」

対談の終盤、野本氏は前半で予告していた「秘訣」を明かした。買収候補の会社を訪れたときの感覚を大事にしてほしい、というものだ。

起業して生き残ってきたオーナーの多くには、野生の勘があると野本氏は言う。人に会ったとき、取引先や買収対象の会社に入ったときに肌で感じる雰囲気があり、そこで違和感がある会社はうまくいきにくい。科学的に証明しろと言われると困るが、その違和感はM&A後にPMIを始めると致命的な問題につながることがある、と野本氏は語る。

メディア総研の場合、野本氏がアドウィルを訪問したとき、会社の空気、社員の顔、オーナーの顔から非常に良いオーラを感じ、相性が良いだろうと思った。実際にグループに入った今、その感覚はすべて正解だったと野本氏は振り返る。島袋氏が、最初に「これは無理だ」と感じたらたいてい無理ということかと問うと、野本氏は、やめておいたほうがいいかもしれない、現状維持はできるかもしれないが成長させるのは難しい可能性がある、と答えた。未上場企業を買う場合が多い以上、この感覚は通知表には載らない。帳面ではなく感じるものを大事にして検討することが、PMI成功の最も重要な要素のひとつだという。

規模と空気によってやり方を使い分ける

島袋氏は、小塚氏のやり方は空気の良し悪しに関係なく強引に進める「豪腕型」であり、野本氏のやり方はEQの高い人が寄り添うことを前提とするため、訪問時に寄り添えなさそうだと感じたら難しいのではないか、と整理した。

野本氏はその理解を認め、どちらのやり方も有効な場合があると述べた。従業員が300人、500人の会社ではパワープレイがどうしても必要になる。50人や100人以内であれば寄り添い型が向く。さらに空気の質も判断材料になる。事業再生の領域で業績が下がっている会社は社員の意識も下がり、全体がネガティブに進んでいるため、パワープレイが必要だ。一方、オーナーが引っ張っている会社はフラットか、ポジティブとネガティブが混在していることが多い。その凸凹をならす作業にはEQが必要で、社員がオーナーについて進んできた以上、根本のマインドは良いため寄り添うべきだという。大規模でネガティブが強い会社は一度壊して強制的に変え、その中で人も再生させるが、パワープレイの中の一部署ではEQ型も必要になる、と野本氏は説明した。

島袋氏はこれを受けて、冒頭で野本氏が未上場で従業員数十名規模のオーナー企業を想定して話していた理由がわかったと述べ、小さな企業で強引に進めれば社員は辞めてしまうだろうと応じた。

上場企業グループに入った会社が持つ力

最後に野本氏は、実践の中で今とても良いと感じていることを語った。元々良い会社が新しい売上や成長を求めたときのパワーは、ゼロから成長するベンチャーより強い、と野本氏は実感しているという。

上場企業として投資家にどう還元するかを考えたとき、メイン事業を伸ばすのは当然だが、M&Aでさまざまな力をグループに取り込み、その中で新しいモデルが次々に生まれることに大きな価値がある、と野本氏は見ている。組織の大きい上場企業本体が新しいことを連続して行うのは大変だが、グループインした会社はフットワークが軽く、一人ひとりがやる気になれば新しいものが次々と生まれる。M&Aは新しいものを生み出すという目線でも有効であり、まだ眠っている技術がたくさんある以上、未上場企業のM&Aはこれからもっと伸びるだろう、と野本氏は締めくくった。