見逃しやすい皮膚がんと、皮膚に出る「がんのサイン」 内科医・森勇磨が語る見分け方

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概要

皮膚がんは目に見える場所にできるのに、なぜ見逃されるのか。皮膚がん以外のがんが皮膚にサインを出すことはあるのか。内科医で「予防医学ch」を運営する森勇磨が、PIVOTの番組「ビジネス虎の巻」の後編で、MCの柴田阿弥、西岡孝洋の質問に答えた。森の立場ははっきりしている。皮膚がん全体の生存率は高いが、種類によっては命に関わる。見分け方の知識を持っておき、長引く症状や繰り返す症状、複数のサインが重なる場合には医療機関で相談すべきだという。

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生存率9割超でも油断できない理由

番組の前編では主ながんの5年生存率のグラフが紹介されており、皮膚がんは9割を超えていた。柴田は、ほかのがんと比べれば怖くないのではないかと受け止めた。森はこれに対し、全体で見れば生存率は非常に高いが、種類によって事情が違うと説明する。特に注意が必要なのがメラノーマ(悪性黒色腫)で、とにかく進行が早く、急速に全身へ転移する。少し放っておく間に転移し、治療ができなくなってしまうのが特徴だという。

原因について森は、外的要因としては紫外線を挙げたうえで、物理的な刺激や日本人特有の原因もあると述べた。

柴田は、膵臓がんのように体内で見えないがんと違い、皮膚がんは目に見えるので早く見つけやすく、だから生存率が高いのではないかと考えていたという。森の答えは逆だった。毎日見ているからこそ見逃しやすい。さらにほくろやシミと形がよく似ているため、見えていてもがんだとは思わない、思うことすらないことがあるという。すでにあるほくろががん化することもあると森は述べた。西岡は、男性はほくろができても気にしないと話し、柴田も新しくできたほくろを把握していないかもしれないと応じた。森は、見分け方を知らなければ怪しいものができても危ないのか普通のほくろなのか判断できないとして、知識を持っておくことを勧めた。

基底細胞がん:最も多く、進行はゆっくり

森は「3大皮膚がん」を順に説明した。1つ目の基底細胞がんは、皮膚がんの中で最も数が多い。写真を見た柴田は、赤くて湿疹っぽく、肌荒れをかいたらかさぶたになったようなもので、自分もよくできると驚いた。

森によれば、基底細胞がんはメラノーマとは逆に進行がゆっくりで、これで命を落とす人は少ない。患者はがんを疑って受診するというより、赤みのある出来物がまったく改善しないという違和感から受診するケースが多いと森は見ている。顔にできやすく、大きさはあえて言えば10mmいかない程度が多いという。

柴田が「改善しない」という点が大事だと指摘すると、森はあらゆる症状に共通することとして、長引いている場合は油断しないことが肝心だと述べた。

有棘細胞がん:やけどの跡や皮膚炎から

2つ目の有棘細胞がんは、基底細胞がんの次に多い皮膚がんである。森は、やけどの跡や皮膚炎を起こしやすい場所を発生源として生じることがあると説明した。写真ではカリフラワーのように盛り上がるパターンや、潰瘍になってジュクジュクした状態が示された。そこまで進めば多くの人が病院に行くだろうが、さらに放置するとにおいや出血が出てくるという。見た目のわりに命に関わることは多くないとしつつ、森はがんである以上は同じように注意が必要だとした。

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メラノーマ:日本人は足の裏や爪に注意

3つ目がメラノーマである。写真を見た柴田は「ほくろです」「一番わかりにくくないですか」と反応した。森は仕組みを工場にたとえて説明した。皮膚にはメラニンという色素をつくるメラノサイトという「工場」がある。メラノーマはその工場自体ががん化して暴走し、普通の色素ではなくがんのもとをどんどん生産してしまう状態だという。そのため進行が早い。

できやすい場所について、森は意外かもしれないとしたうえで、日本人では足の裏にできやすいと述べた。白人では腕など紫外線を浴びやすい部位に起きるのが基本だが、日本人の場合は足の裏や手に起きやすい。歩くときの物理的な刺激が原因かもしれないと言われている、というのが森の説明である。MCの2人は、靴下と靴で覆われて最も日が当たらず、普段ほとんど見ない場所だと驚いた。森も、対策としてはもう見るしかないと述べた。

爪にもできる。写真では爪に黒い1本の線が入っていた。森は、メラノーマ以外でもこうした線が出ることはあるので、これだけで絶対にメラノーマというわけではないと断ったうえで、爪にできるとこの形で現れるパターンがあると説明した。西岡がドアに挟んだときにも似たものができると言うと、森は血の塊がこう見えることもあると認めた。ただし、あまり改善しない、どんどん太くなる、広がるといった場合は早めに皮膚科に行くべきだという。手だけでなく足の爪にもできることがある。

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ABCDEルールで怪しいほくろを見分ける

メラノーマの見分け方として、森は「ABCDEルール」を紹介した。5つの項目は次のとおりである。

  • A(Asymmetry:非対称性):正常なほくろは対称的で円形のものが多い。非対称だからすべて悪性というわけではないが、非対称なほくろがあれば一度疑うきっかけにしてほしいという。
  • B(Border:境界):普通のほくろは滑らかな線で縁取られている。ギザギザやでこぼこがあったり、周りの皮膚との区別がつかずまだらになっていたりすると怪しい。
  • C(Color:色):普通のほくろはほぼ一色だが、メラノーマは工場が暴走しているため、薄いところと濃く黒っぽいところなど色が混じる。
  • D(Diameter:大きさ):6mm以上が1つの目安。MCの2人も、ほくろとしては結構大きいと受け止めた。森も、それだけ大きければ本人が認識しているはずだとした。
  • E(Evolving:変化):A〜Dを統括する項目で、だんだん大きくなる、色がまだらになっていく、境界が崩れていく、形が変わるといった変化を、怪しいほくろがあれば定期的にチェックすることが大事だという。

大きいほくろ自体は普通にあるため、森はいくつ当てはまるかも重要だと述べ、1つ当てはまっただけで皮膚がんだと思う必要はないとした。最も着目すべき項目を問われると、森はあえて言えばわかりやすさの点で大きさを挙げた。ほくろが多い人なら、まず大きいものを「マーク」しておき、そこにA〜Cのサインが出てこないかを見ていくとよいという。

診断は皮膚科で、ほくろの部分を顕微鏡で見て悪性の組織がないか確認する。確定診断は自分ではできないので、ABCDEルールはあくまで怪しいかどうかを判別するための知識だと森は位置づけた。

予防は紫外線対策、ただしビタミンDとの兼ね合いも

予防について森は、足の裏の話はあったものの、できることとしてはやはり紫外線を避けることだと述べた。紫外線は日本人にも白人にも同じようにリスクになるという。帽子、日焼け止め、長袖の服、あるいは外に出ないことも含め、どの方法でもやってよいとした。

西岡は、男性が日傘を差すのは格好悪いとずっと思っていたが、去年からついに宗旨替えしたと明かした。

ただし森は、皮膚がんに限れば紫外線を全く浴びないのが一番だとしつつ、別の問題があると付け加えた。日光を浴びると皮膚でビタミンDがつくられ、これは腸でのカルシウム吸収を活性化させる。まったく浴びなければビタミンDがつくられず、食生活によっては不足して、将来骨がもろくなる骨粗しょう症のリスクになる。そのためバランスが大事だという。

柴田は、アトピーがあって日焼けすると肌がかゆくなるため、かなり気をつけていると話し、ビタミンDはサプリメントではだめかと尋ねた。森は、結局は総合点なので、皮膚の問題などがあればサプリメントを使うのも1つの選択肢だと答えた。

15:40

日焼け止めはSPFとPAを確認する

日焼け止めを選ぶ際の注意点として、森はSPFとPAという指標を挙げた。紫外線には2種類あり、それぞれを防ぐ指標になっている。目安はSPF30以上、PAは「++」以上だという。今の時期ならもう少し強いものでもよく、那覇と札幌でも違うように地域にもよるため一概には言えないが、目安としてはその辺りだと説明した。

塗り直しについては、ベストで言えば2〜3時間おきに塗り直したいという。実際にできるかどうかは別として、そのくらいやってもよいと森は述べた。西岡は中学時代にソフトテニス部でこんがり焼けていたこと、日焼け止めも去年から使い始めたが時々忘れることを話した。森は、次に購入するときはSPFとPAを確認してほしいと勧めた。

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がん以外の病気のサイン:帯状疱疹を繰り返す

後半は、皮膚がん以外のがんが皮膚に出すサインに移った。森が挙げたのは、帯状疱疹を繰り返す、イボの急激な多発、皮膚の黒ずみ、まぶたの湿疹、水ぶくれの5つである。

帯状疱疹について森は、幼少期にかかった水ぼうそうのヘルペスウイルスが、治った後も体内の神経節に潜伏していると説明した。体調が悪くなったり免疫が落ちたりすると、かぶれのような発疹が体の片側に出る。がんになると免疫機能が落ちるため、帯状疱疹を繰り返してしまう。普通の生活をしているのに最近帯状疱疹を繰り返しており、その大元の原因ががんだったというエピソードはたまに聞くと森は話した。高齢になるとどうしても起きやすくなるとも付け加えた。

西岡は、帯状疱疹は「アナウンサーの病気」だと語った。ストレスや、朝の番組を担当する人の睡眠不足のような生活から、よく耳にしたという。

頻度の目安について森は、毎月起きるのはおかしいと述べた。1回なっただけではなく、1カ月程度の短期間で繰り返す場合は医師に相談すべきだという。どのがんのリスクかという質問には、特定のがんというわけではないと答えた。どのがんも進行すれば免疫機能が落ち、筋肉や脂肪を分解して体にダメージを与える。帯状疱疹の繰り返しは、特定のがんというより、がんが体にダメージを与えている状態を示す進行度の問題だと森は見ている。

イボが急に増える

2つ目のイボの急激な多発について、森は「正直マニアックな症状」だと前置きした。高齢になると背中などにブツブツとイボのようなものができることがあり、通常は少しずつできる。これが急激に広がっている場合には、まれにがんが原因のことがあるという。柴田は、祖父の背中にあったイボについて尋ねると「年を取るとできる」と言われた思い出を語った。

イボとがんがつながる理由について、森は、がんが血流に乗って転移するなど体内で悪さをする中で、皮膚にも症状を出すことがあると説明した。ただし、がんによるイボと普通のイボは見た目だけでは区別できない。そのため、急激に進行しているか、数の増えるスピードはどうかといった変化に気をつけることが大事で、普通のイボをむやみに怖がる必要はないという。関連が多いのは胃がんや大腸がんだと森は述べた。かゆみが出ることもあるが、ただのイボでもかゆいことはあるため、それだけでは判断しにくい。爆発的に出たときはよく見た方がよいというのが森の考えである。

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皮膚の黒ずみは体型と合わせて見る

3つ目は皮膚の黒ずみである。わきや股関節など皮膚がこすれやすい場所が黒くなる現象で、太っている人には出ることがあり、ゆっくり進行する場合もあると森は説明した。柴田は、力士に肉の下が黒くなっている人がいることを例に挙げた。問題は、そうした要因がないケースだという。痩せている、持病がないのに急に黒ずみが広がっている場合は、イボと同様、がんが体内で悪さをして起きていることがあると森は述べた。

かゆみや痛みについては、普通の黒ずみでもあり得るため区別しにくいという。柴田が前編で話した体重減少などと組み合わせて考えるべきかと尋ねると、森は同意した。全体的なメッセージとして、1つのサインだけでなく2つ3つと当てはまれば確率が上がるので、知識としてまんべんなく持っておき、気になる症状が複数当てはまる場合は一度医師に聞いてみるという考え方もある、と森はまとめた。

まぶたの湿疹:皮膚筋炎とがんのリスク

4つ目のまぶたの湿疹は、厳密にはがんそのもののサインではなく、がんのリスクを上げる病気のサインだと森は説明した。その病気が皮膚筋炎である。関節リウマチのように、自分の免疫が暴走して自分自身を攻撃する膠原病の一種で、皮膚と筋肉に炎症が起き、力が入りにくくなることもある。症状の1つとして、まぶたの表面、両側が腫れて重くなるような湿疹ができることがあり、特に中年女性に多いという。

柴田は、まぶたの腫れはよくできるので難しいと指摘した。森も、筋力低下など他の症状と合わせて判断することになると認めた。そのうえで、自己免疫疾患はがんのリスクを上げることがあるため、まぶたが重くなる症状がもし膠原病によるものなら、早めに治療した方がよいと述べた。

水ぶくれ:治らない、繰り返す場合は皮膚科へ

5つ目の水ぶくれについて、森は類天疱瘡を挙げた。これも自己免疫疾患の一種で、足に急に水ぶくれができ、やけどでもないのに治らなければこの病気の可能性があるため、皮膚科に行ってほしいという。西岡は、放っておけば割れて終わると思っていた、自分は水を抜いてしまうと話した。森は、割れて落着すればよいが、同じ場所から再び出てくる、大きく赤くなって広がっていくといった場合には注意が必要だとした。単発で終わらず何度も繰り返す場合は、大元の原因が潜んでいることが多いという。

忙しいビジネスパーソンへのメッセージ

最後に森は、産業医として働く中で、忙しくてがん検診や健康診断を受けられない人や、受けてみたら血糖値が上がっていたという事例を多く見てきたと語った。医学的に正しいがん検診や健康診断はそれほど数が多くなく、打ち手も比較的シンプルだという。30代や40代から予防医学に関心を持ってほしいと森は呼びかけた。健康診断の結果の見方は一度覚えれば一生使えるというのが、森が最後に伝えたかった点である。

西岡は、気合でがんも治せるのではないかと思っていたところがあったと振り返り、まず当たり前のこととして検診には行かなければならないと反省を口にした。柴田も、忙しいと検診の予約をしてその日に行くのはハードルが高いと認めつつ、健康が第一だと締めくくった。