売却から3年、ロックアップを終えた辻井良太氏が振り返る「雑になった判断」とお金の使い方

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概要

運用型広告の代理店CRAFTを創業した辻井良太氏は、2023年に同社をエフ・コードへ売却した。2段階譲渡によるロックアップが今年8月に明け、現在は代表を退いて取締役を務めている。M&A BANKの島袋直樹氏とともに広島のクラブピラティス(CLUB PILATES)を視察した回で、辻井氏は売却後3年間の心境、新しく始めた事業、失敗したラーメン店、そして「お金が入ってから判断が雑になった」という反省を語った。

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ロックアップ明けでも「まだ気を引き締めている」

島袋氏に「ロックアップが解けて意気揚々と広島に来た」と冷やかされると、辻井氏は「まだまだ気を引き締めている」と答えた。代表としての役目を終えて「ちょっと気は楽になった」とは言うものの、動画として世に出るため下手なことは言えないと、言葉を選ぶ場面が多かった。

3年間を振り返り、辻井氏は「M&Aをしてちょっと気楽になるかと思っていたが、2段階譲渡だったこともあり、売却してからの方が大変な期間があった。思ったより長かった」と話す。メンタル面では、新しいことを並行して始めているため、健全な状態が続いているという。

クラブピラティスの出店と「出店前に広告を打つ」手法

辻井氏はクラブピラティスのフランチャイズとして、福岡の店舗をM&Aで取得し、東京では清澄白河のスタジオを運営している。東陽町でもう1店舗を準備中で、その次の候補地はまだ決まっていないが、海浜幕張や福岡でも出したいと考えているという。

島袋氏が紹介したのが、辻井氏の出店手法だ。出店前にそのエリアで広告を打ち、反応を分析して失敗しない場所を選ぶというやり方で、島袋氏は辻井氏をこの手法を「編み出した張本人」と呼んだ。辻井氏は、他ブランドもやっているかもしれないが良い方法だと思う、と答えている。また、上場している競合がIRで数値を開示しており、それと比べると「全然戦えるんじゃないか」という感触を持っていると話した。

会社を売ったのに、また事業をやる理由

クラブピラティス以外にも、辻井氏はフランチャイズをもう1つ手がけ、ビーガン向けクッキーの「フルオーツ」を展開している。今後はフルオーツとクラブピラティスを主軸にしていくつもりだという。

フルオーツは「今めっちゃ伸びている」と辻井氏は言う。売上はまだ月1,000万円ちょっと程度で、広告費は月500万円ほど。ただし非常に安いCPAで獲得できるようになり、広告費を半年ほどで回収できる件数が取れ始めた。「ここからだ」という段階だと本人は位置づける。

会社を売ったのにまた事業をやる心境を問われると、辻井氏は、もともと物を売る側を頑張りたかったので、ようやくそちらに時間を割けるようになったと答えた。他人の商品を売る代理店業ではなく、自分たちのプロダクトを作って売りたいという考えだ。「クッキーはAIには作れない。美味しいものを作って、マーケティングはAIに少し手伝ってもらう」という構想を語っている。

変わったのは「お金の使い方」

売却から3年で何が変わったかを聞かれ、辻井氏が挙げたのはお金の使い方だった。「M&Aする前は、お金が入っても堅実にいくと思っていたが、いろいろやりたくなって判断が雑になる。どうしても。それは反省点」と述べている。

島袋氏はかねてから売却組にこう忠告してきたという。売却後おおよそ半年は、皆「自分はバカじゃないからそんなに使わない」と言って何もしない。しかし半年ほど経つと少しずつ「ネジが取れてくる」。辻井氏はこの教えを聞いていたので最初の半年は我慢したが、1年ほど経つと変化がなく楽しくなくなってきたと振り返る。

島袋氏はロックアップ特有の事情も指摘した。会社を売ったのに組織に残っているためストレスが溜まりやすく、お金はあるので発散として投資や事業に手を出しがちになる。しかもロックアップ中は自分の時間をあまり使えず、手を出した事業を十分にマネジメントできない。そのため成功率が低い状態で投資してしまう、というのが島袋氏の見立てで、辻井氏もこれに同意した。

3,000万〜4,000万円を失ったラーメン店

具体的な失敗として辻井氏が挙げたのが、緑色のタレのラーメン店だ。M&Aの後に始めたもので、うまくいかず一旦クローズしている。

狙いは、健康に良いものをたくさん販売したいという思いから「健康にいいラーメン」を企画することだった。しかし結果として「人はラーメンに健康を求めていなかった」と辻井氏は認める。島袋氏は「ラーメンを食べる人の求めるものと真逆」と応じ、その辺りの判断が緩くなっていたと辻井氏自身も述べた。損失額は3,000万〜4,000万円ほどだという。現状でいちばんの失敗はラーメン店かと問われ、辻井氏はそれを認めている。

高級ワインは「失敗ではない」

島袋氏が「高級ワインもあるのでは」と振ると、辻井氏は「あれはやっちゃったとは思っていない」と答えた。

経緯はこうだ。島袋氏側はこのM&Aを手伝い、大型のディールで手数料も入ったため、自身の売却経験も踏まえて「一生の思い出に残ること」を自分たちの負担でやりたいと考えた。超高級寿司店で1本100万円ほどのワインを何本か開け、5〜6人で会計が数百万円になる祝いの席を設けたという。

辻井氏の案件は2段階譲渡だったため、2回目の譲渡が完了した際には今度は辻井氏が「自分にやらせてほしい」と申し出た。島袋氏は遠慮せず、ロマネ・コンティを2本ほど開けたという。辻井氏は、嬉しかったのでお返しをしたかったのだと説明する。派手に遊んだわけではなくお返しであり、今は飲みにもほとんど行かず、酒も飲まなくなったと話した。家族が動画を見ているので、ロマネ・コンティの部分はカットしてほしい、と冗談交じりに頼む場面もあった。

「早く売ろうとする人が増えている」

最近の相談状況について、辻井氏は、ちょこちょこ来るが直近はそれほど多くないと答えた。ただ、早く売ろうとしている人が増えている感じはあるという。自身の売却タイミングについては「あのタイミングで良かった」と振り返り、島袋氏も「M&Aは本当にタイミング」と応じた。

誘惑を避けるためにコミュニティに入らない

売却組のコミュニティにはあまり参加していないという。島袋氏が運営するフランチャイズ関連のコミュニティ(FC BANK)にも興味はあり、良いコンテンツを出していることも知っているが、話を聞くとやりたくなってしまい、またお金が消えていくので入会していないと辻井氏は説明した。「判断がざるになってきているので危ない。クラブピラティスを伸ばすのが優先」と述べ、自分に案件を紹介してはいけないとまで言っている。自分の判断が緩くなっていることを自覚し、情報に触れる機会そのものを減らしているわけだ。

広島のロードサイド店を見て

番組の中盤では広島のクラブピラティスのロードサイド店を視察している。島袋氏は、地方のロードサイドはクラブピラティスにとって狙い目だと考えている。辻井氏も、採用には課題がありそうだが集客は十分できそうで、施策を間違えなければ広告費をかけずに集客できるだろうと評価した。

島袋氏は、都心部のインストラクターは業務委託だが、社員化できたらすごいのではないかという考えも口にした。ロードサイドの事例はほかにあまりないが、辻井氏は、現地のオーナーの話を聞くと「事例がないだけで、やれば全然いけるのでは」と感じたという。雨の日だったこともあるが、人はほとんど歩いておらず、車の量は多い立地だった。

年を取ったと思わないようにする

以前、島袋氏の紹介で英語講師のグレン氏とロサンゼルスを車で回ったのをきっかけに、辻井氏は英語学習を始め、プログリットにも取り組んだ。今もやめずに続けていて、趣味としても良いと話す。

41歳になった辻井氏は、「年を取ったと思わないようにしている」という。そう思ってしまうと気持ちが沈み、新しいことをやめておこうとなりそうなので、自分は若いと思っていろいろなことをやっている、というのが本人の説明だ。島袋氏は、自分はたるみが出てきたのでシンガポールで耳の後ろを少し切って引き上げるフェイスリフトを受けるつもりだと明かし、辻井氏にも勧めた。辻井氏は「怖い」と言いつつ、やるなら撮影はせずこっそりやると笑って返した。

一行は広島でお好み焼きを食べ、翌日東京へ戻る弾丸日程だった。売却後の資金と時間をどこに向けるかについて、辻井氏は失敗を認めたうえで、当面はフルオーツとクラブピラティスに絞り、新しい誘惑からは距離を置くという方針を示して回を終えている。