カーブスはなぜ3年で600店舗に届き、競合を寄せ付けないのか 元ベンチャーリンク役員が語るFC本部の勝ち筋と落とし穴

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概要

女性向けフィットネスとして始まり、現在は高齢者の健康づくりの場として定着したカーブスは、なぜ短期間で急拡大し、いまも後発の追随を許さないのか。M&A BANKの島袋直樹が、カーブスの日本導入に関わったベンチャーリンク元取締役の永井隆志(タカ)に聞いた。永井は、カーブスの強さは商品ではなく「習慣」を売る仕組みにあると見る。話はカーブスの成り立ちから、20億円での買収、加盟店同士のM&A、東京チカラめしの失敗、FC本部の成長段階ごとの注意点へと広がった。

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島袋はクラブピラティス(CLUB PILATES)の日本法人を率いている。ライセンスを取得した理由の一つがカーブスの存在だったという。カーブスはプロテインの販売でも知られ、島袋は販売額が250億円ほどに達していると話す。「国内で2番目に売っている販売会社」と言ってもおかしくなく、もはやプロテインの会社なのではないかと冗談交じりに語った。

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ベンチャーリンクがアメリカから持ち込んだ

永井によると、ベンチャーリンクには2003年ごろから、海外のフランチャイズを日本に持ち込む流れがあった。当時役員だった松本さんがアメリカでカーブスを見つけて評価し、役員会でマスターフランチャイズ権を取得して日本のFC本部を始めることが決まった。スタートは2005年である。

そこから約3年で600店舗ほどに増えた。永井はこれを「ベンチャーリンクの営業力」によるものとしつつ、モデル自体が売りやすかったことも理由に挙げる。フィットネスとしては投資額が軽かった。少し広めのマンションの一室で開業でき、プールもシャワーも要らず、有酸素運動の設備だけで済む。さらに当時は女性専用のフィットネスがなかったため、人気が出た。

アメリカでの広がり方と日本でのローカライズ

島袋は2010年代にアメリカのカーブスを視察した。ロゴは日本と同じだったが、外観などの印象は日本とまったく違ったという。島袋は、カーブスジャパンをアメリカのモデルを思い切ってローカライズして成功した事例と位置づける。

永井は、アメリカでカーブスが全米に広がった理由を説明した。一般的なフィットネスクラブのテレビCMには、筋肉質の男性やスタイルのいい女性が汗をかく姿が映る。それを見た人は自分の体と比べ、恥ずかしくて通えないと感じていた。カーブスは、ややふくよかな人が汗だくで頑張るCMを流し、「ここなら安心して行ける」と受け止められた。通う人たちの間にコミュニティができ、会員自身が「私もカーブスをやりたい」と加盟店オーナーになって広がっていった。松本さんもこの仕組みを見て日本での展開を決めたのだろう、と永井は話す。

日本でも当初は女性専用だったため、一定の離脱率があった。その後、どう改善するかを松本さんが中心になって考え、高齢者にシフトする方針を取った。永井はこの頃にはすでにカーブスから離れていたと断ったうえで、そこで仕組み化を進めたことがカーブスの強みになったと述べる。高齢者へのシフトによって、離脱率は2%程度まで下がったという。

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20億円の買収が数百億円の利益に

カーブスジャパン自体の業績は良かった。しかし親会社のベンチャーリンクは業績が右肩下がりになり、リーマンショックも重なった。ベンチャーリンクを維持するには売るしかない状況になり、松本さんがコシダカの腰高社長に買収を持ちかけた。2008年、コシダカが20億円で買収した。

永井によれば、当時のカーブスジャパンは年4億〜5億円ほどの利益を出していたので、「いい買い物」だった。コシダカは全株を取得したが、その際に松本さんをはじめとする人員をすべて受け入れる条件が出されたのではないか、と永井は推測する。

買収後も店舗は増え続け、高齢者向けへの転換もうまく回った。さらにアメリカ本部の買収を行い、ヨーロッパを含む事業も取得した。年間利益は50億〜60億円ほど出ているため、10〜11年の間に300億円程度の利益を生んだはずだと永井は見積もる。そしてこれを松本さんの経営能力の表れだと評価した。島袋は、現在の時価総額が1,800億円前後あると話し、20億円で買った会社が15〜20年でそうなったことに驚きを示した。

上場の形についても触れた。2020年の上場時、コシダカホールディングス傘下の子会社だったカーブスは、コシダカの株主に対してコシダカ1株につきカーブス1株を現物で配る、珍しいスピンオフの形をとったと二人は振り返る。島袋の記憶では、コシダカの時価総額は1,500億円ほどあり、それが750億円ずつに分かれる形になった。コシダカの株主にとっては非常に幸運で、20億円でカーブスを買えたタイミングが大きなメリットを生んだと二人は話した。

初期の加盟開発は「簡単に取れた」

島袋は、2005年の1号店から2年ほどで500店舗ほどに達した当時、現場はどういう状況だったのかを尋ねた。永井によると、アメリカでの成功実績を示し、「女性専用フィットネスにはこれから大きなニーズがある」「投資はこれくらいで、これくらいの期間で回収できそうだ」と説明した。フィットネスを始めるには数千万円から億単位のお金がかかるのが普通だったところ、2,000万円ほどで開業できるモデルは業界に例がなかった。そのため、加盟契約は比較的簡単に取れたという。

加盟店同士のM&Aと、第三者への売却

永井の元部下は現在、カーブスの加盟店として東京を中心に16店舗ほどを運営している。新たに出店できる場所はもう限られているため、売却を考えている加盟店があれば、すぐに買いに行っているという。つまり加盟店同士のM&Aである。

島袋は、フランチャイズでは本部の承諾なしに店舗を売却できず、契約書にもそう定められていると確認した。そのうえで、店舗数の多いFCほど加盟店間のM&Aが起きやすいと指摘する。では第三者に売るケースはあるのか。永井によれば、本部にとって最も困るのは撤退で店舗がなくなることなので、なくなるくらいなら別のオーナーに続けてもらいたい。ただし、加盟店が加盟店を買うなら問題は少ないが、新しいオーナーが買う場合、本部はそのオーナーに任せて大丈夫かを最も気にする。さらに15店舗を運営する会社をまとめて新オーナーが買うとなれば、店舗数が多い分だけ本部への発言力も大きくなる。そのため、オーナー審査は非常に厳しくなるという。

本部による買い取りの危うさ

島袋は、買い手が見つからないため本部がいったん買い取るケースに危うさを感じていると話した。自身も本部を運営しているので、店舗を減らしたくない気持ちや、利益の出る店舗なら買ってもいいと考える気持ちは分かる。しかしFC本部の仕事と店舗運営の仕事は、似ているようでまったく違う。前者はB2B、後者はB2Cである。本部が買い取った後にPMI(買収後の統合)がうまくいかず、潰れていくケースは多いのではないか、と島袋は問題提起した。

永井もこれに同意した。直営店を抱えると、加盟店のフォローアップに割ける工数が減る。期間限定のつなぎとして本部が買うことはよくあるが、本部が買ってそのまま直営として続けると、人員の問題などでうまくいかなくなるケースが多いという。その点でもカーブスはうまくいっている例であり、すべてが仕組み化されているからだと永井は述べる。

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離脱を防ぐ仕組み――「習慣」を売る

永井はフィットネス業で最も重要な指標として離脱率を挙げる。離脱が増えれば集客費用をまたかけなければならず、利益に直結するからだ。カーブスでは、月2回来る会員と週2回来る会員とでは離脱率がまったく違い、月2回の会員のほうが離脱しやすい。そこで利用頻度を上げるための取り組みを定めている。たとえば2〜3週間来ていない会員には電話を入れ、「最近大丈夫ですか、具合が悪いんですか、また来てくださいね」と声をかける。こうしたフォローアップ体制がすべてマニュアル化されている。

永井は、カーブスは商品ではなく習慣を売っているから強い、とまとめる。習慣になると、言葉は悪いがカーブスは高齢者の「井戸端会議の場」になり、やめなくなる。

島袋はこれを実感したことがある。さいたま新都心にクラブピラティスが開業したとき、隣にカーブスが入っていた。壁が薄く、隣から多くの年配女性の楽しそうな声が聞こえてきた。100人くらい来ているのではないかと思うほどで、これはフィットネスというより別のものだと感じたという。

永井によれば、会員をファーストネームで呼ぶこともマニュアルで定められている。カーブス側は怒るかもしれないと前置きしたうえで、スタッフにはクラブピラティスのスタッフほどの専門知識は必要ないと言う。むしろ必要なのはコミュニケーション力や気遣いの力で、これが離脱率と利用頻度に直結する。本部はこの部分を継続的に磨き、SV(スーパーバイザー)を通じて現場に落とし込んでいる。

プロテインが売れるのは信頼関係があるから

島袋が挙げたプロテインの販売額についても、永井は同じ構造で説明する。スタッフと会員の間に、他のフィットネスとは比較にならないほどの信頼関係ができている。健康相談を受けるなかで、押し売りではなく本当に良いものとしてプロテインを勧める。

永井はこれをスターバックスのスタッフになぞらえた。スタバのスタッフはブランドへの愛着が強いため、商品のストーリーを語って売ることができる。カーブスでも「このプロテインはこういう理由でとても評判がいいんですよ」と勧められ、会員が「一度試してみよう」と買い、そのままリピートしていく。押し売りをしている感じはまったくなく、信頼関係で売れているのだという。

ブランド愛は初期の加盟店から生まれる

島袋は、スタバの例に出てきた「ブランド愛」がFC本部運営で非常に重要だと考えており、本部はそれをどう作ればいいのかを尋ねた。

永井の答えは、好きになってもらう働きかけをするというより、初期の加盟店を本当にそのブランドが好きな人で埋めることだった。いま支援しているアーリーステージのフランチャイズでも、そうした人たちで初期の枠が埋まる。好きな人同士が集まるので加盟店間の会話が盛り上がり、後から加盟した人もその雰囲気に引き込まれる。初期は、有名ブランドでなければ、実際に体験したり食べたりしてファンになった人から広げていくのが本部として最もやりやすいという。

店内にFC募集の告知を出すことに効果はあるか、という島袋の質問に、永井は何度も試したが問い合わせはかなり入ると答えた。島袋も、クラブピラティスでは通っている会員が正社員やインストラクターになる例が多いと話す。そこでFC募集をすれば、ブランド愛のある人が「私もやろう」となるのではないか。実際、アメリカ本部からもそうするよう言われたという。永井は、これは先ほどのアメリカのカーブスと同じパターンだと応じた。数字だけを見て投資回収が早いから試そうという人と、自分がはまって広げるのを手伝いたいという人とでは全然違い、特にアーリーステージではその思い入れが大事だと述べた。

スピード出店で競合の入る余地をなくす

カーブスほどの規模になると、後発はもう出てこないし、出ても勝てない。島袋も、挑もうとは思わないと言う。永井の記憶では、途中で競合として出てきたのはごく小さな事業者が数店舗出した程度だった。

永井は、ゴルフパートナーの時もそうだったと振り返る。当時のFC本部の勝ち筋は、競合が入る前にスピード出店でシェアを取り切ることだった。カーブスも同じやり方で追随を許さなかった。3年で600店舗という数字を「ありえない」と表現し、本部は毎日の研修受け入れ、物件の立地診断、開業準備でおそらく大混乱だっただろうと話す。

一方で、出店のしやすさもあった。カーブスは目的来店型なので、立地の基準は比較的緩く、空中階でも出店できる。物件選びにはそれほど困らない。商圏が非常に狭く、同じ駅の少し離れた場所にもう1店舗出しても既存店の売上に影響しない。狭い商圏でなければ2,000店舗も出せない、と永井は言う。飲食店を1店舗出す労力と比べると、本部の負担はそれほど大きくなかった。

今後について永井は、日本の人口ピラミッドを見れば高齢者は増え続けるので、仮に店舗数が増えなくても加盟店の売上と利益は伸び、本部の売上と利益も伸びていくのは間違いないという見方を示した。

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東京チカラめしの誤算――直営100店舗のうち80店舗が赤字

島袋は、一気に面を取りに行く戦略には失敗例もあるとして、三光マーケティングフーズの東京チカラめしを挙げた。永井は実はこの案件に関わっていた。焼き牛丼の業態で直営100店舗を出し、そこからフランチャイズ展開したいので手伝ってほしいと依頼されたという。

運営してみると、アイドルタイムは問題ないが、忙しい時間帯には焼きムラが出て品質に差が生じた。当時の会長は、この差をなくすために煮る牛丼に切り替えると言い出した。永井は反対した。焼き牛丼だから差別化できているのであって、煮る牛丼では今から大手3社(吉野家、松屋、すき家)に勝てない、というのが永井の意見だった。それでも切り替えることになったため、永井は手を引いた。

島袋は客として見た印象を語った。客は入っていたが、吉野家などと比べてオペレーションが回っておらず、食べ終わった皿が20枚ほど片付けられずに残っていることもあったという。

永井によれば、直営100店舗のうち80店舗が赤字だった。会長の「これは絶対いける」という思いから、繁華街とロードサイドに一気に直営で出店する号令がかかった。全部うまくいくと思って出したが、データを見ると8割が赤字だった。黒字だったのは、家族客が入れるテーブル席を置いたロードサイド店だけだったという。

赤字の理由を永井は次のように説明する。牛丼店の勝負は、ランチでも、アルコールがあまり出ないディナーでも、短時間でどれだけ客をさばけるかにある。吉野家や松屋はオーダーから3〜4分で提供するが、東京チカラめしは焼く工程が入る。生焼けなら食中毒の問題があり、焦げれば品質の評価が下がる。そのため提供まで10分ほどかかり、さばける客数が吉野家の半分程度になった。売上は思ったほど取れず、スタッフの人件費は吉野家の1.2〜1.3倍かかっていた。

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FC展開はフェーズを分ける

永井は、この状態でフランチャイズ展開すれば、成長段階を正しく理解していない本部は体制が追いつかないと指摘する。人気が出て一気に50店舗、100店舗になっても、本部がSV2人、プロモーション担当1人といった体制なら、必ずクレームの嵐になる。

永井のやり方はこうだ。第1フェーズでは、本当にファンである人にリスクを説明したうえで、本部の体制に応じて5店舗だけ、10店舗だけと募集数を絞る。その店舗を直営と同じように手厚く支援して収益を出させる。その過程で本部自身も鍛えられる。この10店舗がうまくいったら次のフェーズに移り、一気に増やす。分かっていない本部は最初から一気に増やそうとし、後工程が追いつかずにクレームや訴訟が増えるという。

島袋は、最近X(旧Twitter)などで急成長しているフランチャイズを見て、その時期の本部社長は自分が無敵だと思っているはずだと話した。島袋自身もかつて、何でもできると思っていたという。小さなクレームから始まり、それが大きくなって、実は巨大な時限爆弾を抱えていたということがある。そのとき本部の社長は精神的に追い込まれがちになる。島袋の感覚では、30〜50店舗の間に最初の「ジャブ」が来て、50〜100店舗の間にもっと大きなものが来る。

本部の社長がフランチャイズを知らない

永井は現在、10社ほどのFC本部のコンサルティングを手がけている。そこで痛感するのは、FC本部の社長が意外なほど、というよりほとんどフランチャイズのことを知らないという点だ。契約書はどこかからコピーしたようなもので、必要な条項が抜けていたり、「合意なく解約できる」という条項と「3カ月前に解約できる」という条項が矛盾していたりする。

法的な問題だけでなく、本部体制が整っていないため、アーリーステージでは請求ミスやロイヤリティの計算ミスも起こる。永井は、起きてしまうこと自体は仕方がないと言う。問題はフォローアップができていないことだ。知らないうちに加盟店同士で「おたくもそうだったのか」「うちも納品数が合っていなかった」と話が広がり、「この本部はダメだ」「弁護士に相談しよう」となるケースは非常に多い。初期の体制がファンで成り立っていれば、「一緒にこのブランドを育てていくのだから」とミスを許してもらえる。しかしコミュニケーションが取れていないと、いきなり内容証明が届くような事態になるという。

加盟店が儲かって本部が儲かる仕組みだけが続く

永井は、加盟店が儲かった結果として本部が儲かる仕組みだけが永続すると述べる。実際には本部しか儲からない仕組みも多い。形のうえでは加盟店が儲かれば本部も儲かる設計になっていても、中身がぐだぐだなケースも多い。その整理をしっかり行い、フェーズを守りさえすれば、売れるモデルであれば必ず成功に導けると永井は話す。

島袋は、フランチャイズの営業代行はあっても、本部構築をフェーズごとに経験して理解している支援者は限られていると指摘した。永井も、ベンチャーリンク出身でFCコンサルや加盟開発をしている人は多いが、まともにやっている人もいれば、2カ月いただけの人もいると話す。そのうえで、日本のフランチャイズ業界はまだまだ発展途上であり、少しでも良くしていきたいと締めくくった。