ロボットではなく「完成した壁」を売る:Monumentalの小型ロボット群による建設自動化

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概要

FoundXのStartup IdeaCastは、海外スタートアップをAIで分析して紹介する番組である。番組冒頭で、AIで情報を整理しているため古い情報や誤りが含まれる可能性があると断っている。今回取り上げたのは、オランダ・アムステルダムを拠点とする建設ロボティクス企業Monumentalだ。レンガとモルタルの壁を小型ロボット群で施工し、機械を売るのではなく施工済みの壁に対して対価を受け取る。解説役はこのモデルを分析し、成果物課金、垂直統合、小型専用機の協調という三つの論点から、その強みとリスクを検討した。聞き手の富田氏が質問を重ねる形で議論は進んだ。

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Monumentalの概要と選んだ理由

Monumentalは2021年創業である。創業者の2人は、以前にデータ可視化のスタートアップSilkを共同創業し、同社は後にPalantirに買収された。その2人がオランダで立ち上げたのが、小型の自律ロボットで建設現場の作業を担う会社だ。最近は「Behind the Build」という動画シリーズをYouTubeに公開し、開発の様子を発信している。

番組では少し前に、施工の成果を売る米国の建設ロボティクス企業(字幕では「テラファーマ」)を紹介していた。富田氏がその会社との違いを尋ねると、解説役は「提供するものが少し違う」と答えた。Monumentalは現時点ではレンガ積みを手がけている。ただし最終的には「ソフトウェア定義の建設」を目指しており、そこが入り方の違いだという。また解説役によれば、米国の事例とは対象とする工程が異なる。Monumentalは欧州で一般的なレンガとモルタルの壁から始めており、その土地の建築文化に合った工程から自動化に入った点が特徴だと述べた。社名には、長く残る建築物をつくるという意味が込められているという。

「ソフトウェア定義の建設」が意味するもの

解説役の説明では、ソフトウェア定義型とはロボットを遠隔操作することだけを指すのではない。現場、壁、材料、ロボットの状態をデジタルに表現する。それを使って作業を小さな単位に分けて処理する。現場の状況に応じて作業順序を組み替える。同じ機体のソフトウェアを更新して、新しい作業ができるようにする。これらをまとめた考え方だという。

富田氏が「具体的に何が変わるのか」と尋ねると、解説役は二つの点を挙げた。一つは、作業計画、ロボット間の役割分担、現状把握をソフトウェアで行うことで、よりリアルタイムに情報を得てロボットの動きに反映できる点である。建設現場は予定どおりに進まず、イレギュラーが起きて計画変更や一時停止が必要になることが多い。そうした場面でも、デジタルであれば別の手順へ素早く切り替えやすいと解説役は見る。もう一つは、ハードウェアを作り直さなくても、新しい形状や材料に対応できる範囲を広げられる点である。

課題:巨大な市場と低い生産性、職人不足

建設は、住宅、物流施設、データセンター、産業インフラなど、他の産業の基盤となる巨大な産業で、GDPの10〜15%を占めると言われる。解説役は2023年の世界の建設総産出の推計も引用した(字幕では「約13兆」とされ、単位ははっきりしない)。一方で、現場ごとに条件が違うため、製造業のような自動化を持ち込みにくい領域だとされる。

解説役は、生産性の問題を職人の非効率に帰するのではなく、構造的な要因として説明した。建設は一品生産であり、屋外で雨風の影響を受ける。多数の専門工事会社が順番に入るため、プロジェクト管理が複雑になる。前工程の誤差が後工程に影響し、設計も動線も材料も現場ごとに違う。技術以外にも、契約、責任分担、安全規制が変えにくい。こうした理由から、建設は過去1世紀で唯一生産性が低下した産業だと言われているという。富田氏は「毎回違う、一品に近いというのはその通りだ」と応じた。

人手不足も深刻である。英国のHome Builders Federationは、年間30万戸を建設するには約2万人の追加のレンガ職人が必要だと試算している。これに対して、新規の見習いは年間約2,000人程度だという。Monumentalは住宅を買う側ではなく、ゼネコンからレンガ工事を請け負う大規模なサブコントラクターとして入ろうとしている。解説役は、同社が売っているのは人件費の削減だけではないと見る。予定した日に壁の工程を確実に終えられるという、納期どおりの価値を売っているというのが解説役の解釈だ。

職を奪うのではないかという懸念について、富田氏が質問した。解説役によれば、現時点では確保できない施工能力を補う位置づけである。材料補給、安全監督、品質確認、例外対応はまだ人が担う必要がある。ただし長期的にロボットの性能が上がれば必要人数が変わり、一部で代替が起こる可能性はあると留保をつけた。職人は柔軟だが数が足りず、プレハブは工場生産に向くが現場での接合が課題になる。その隙間にある、職人ほどの柔軟性がなくても担える工程が、Monumentalの入りやすい領域だと解説役は整理した。

解決策:3種類の小型ロボットとAtrium OS

Monumentalは、役割の異なる3種類のロボットで作業を分担する。字幕上の名称では、レンガとモルタルを積んで配置するロボットが「ピサ」、必要なレンガを運んでピサに供給するのが「ペトラ」、モルタルを調合して供給するのが「パダマ」である。これらを「Atrium OS」と呼ばれるソフトウェアで連携させる。

すべての機能を1台に詰め込まず、各機体を小型化している点が設計の核心だ。小型化すれば製造コストが下がるが、解説役は建設現場ならではの利点も挙げた。ドアを通れる。足場や狭い動線に入れる。バンで運べる。故障した1台だけを交換できる。現場規模に応じて台数を増減できる。小型の自律分散型ロボットは、建設現場という制約の多い環境に適しているのではないか、という仮説で同社は進んでいるという。一方、小型化すると積載量、電池容量、アームの到達範囲、単体の速度に制約が出る。これを群制御と材料補給で補う設計だと解説役は説明した。

Atrium OSは、個々のロボットを動かすだけでなく、どの壁のどの部分をどの順番でどの機体が処理するかを管理する。設計データだけを信じるのではなく、現場の最新状態を確認しながら作業を進めるという。公式発表では、100戸規模の住宅のほか、学校、コミュニティセンター、ホテルの施工に関わった実績がある。解説役は、用途の多様性は示されているものの、案件ごとの採算性はまだ分からないと付け加えた。

富田氏は、1台ですべてをこなす方式を取らなかった理由を尋ねた。解説役は、狭い場所に入れること、軽くて交換可能なことに加え、次の点を挙げた。機能ごとに独立して改善できる(積む部分だけを交換・更新できる)。現場のボトルネックに応じて特定の機体を増減できる。1台の故障で全工程が止まるリスクを避けられる。

自律化の範囲については、積む、運ぶ、モルタルを扱うといった作業はある程度自動化されているという。一方で、現場投入前の計画、搬入、補給、安全管理にはおそらく人が関与していると解説役は推測した。

初期市場:オランダと英国のレンガ積み

建設市場全体は巨大だが、Monumentalがいま売れるのは、英国とオランダのレンガ積み市場という限られた範囲である。解説役はこれを初期の「ウェッジ(くさび)」と位置づけた。その先の市場として、壁、躯体、外装など、現在の技術に隣接する工程が欧米圏で広がっていると見る。どこまで狙えるかは技術の発展次第だという。

オランダを選んだ理由として、解説役は次の点を推測した。創業地に近い。レンガ施工が一般的で、現場に繰り返し通える。現地にいることで法制度や顧客ネットワークを理解しやすい。さらに、ロボットを現場間で使い回すには、ある程度の密度で案件がある地域に集中する必要がある。英国については、レンガ職人不足と住宅供給目標が同時に存在するため、支払い意思のある顧客を見つけやすいと見られている。英国政府は150万戸という目標を掲げ、年間37万戸を目指しているが、供給が追いついていないという。

入り口を選ぶ基準としては、次の点を挙げた。人手不足が大きく、納期遅延が起きていてニーズが切迫している。レンガ積みは作業単価が比較的明確である。成果物の品質を測りやすい。同じ顧客から複数案件が出やすい。規制や材料を大きく変えずに導入できる。建設は一品生産だとしても、レンガ積みだけを切り出せばそれほど差がない、という判断があったのではないかと解説役は述べた。

ビジネスモデル:完成した壁に対して支払ってもらう

Monumentalはハードウェアを販売していない。従来の設備販売では、顧客が初期投資をし、オペレーターを採用・育成し、故障や陳腐化のリスクを負っていた。Monumentalの顧客が発注するのは成果物、つまり壁の工事である。顧客は機械を買わず、Monumentalを独立したサブコントラクターとして雇い、完成した壁に対して支払う。既存のサブコン発注の予算項目を取りにいく形だ。

顧客にとっては導入の摩擦が下がる。Monumentalは機体の製造、故障対応、現場間輸送をすべて自社で抱えるが、成果物を約束しやすいという面もあると解説役は見る。仮にロボットがうまく動かなくても、最後は人間がレンガを積めば壁は完成するからだ。

ユニットエコノミクスが実際に成り立っているかは「正直分からない」と解説役は言う。それでも、壁の受注単価に対してロボットと人を動かすコストを十分に下げられれば、採算は合っていくと考えられる。自律性が上がるほど監督者1人が扱える台数が増え、利益率が改善する。製品性能の改善がそのまま自社の原価低下につながるため、顧客価格を下げても利益を増やせる構造だと解説役は整理した。

富田氏は、このモデルの難しい点を尋ねた。解説役はまず弱みとして、SaaSより資本集約的な重いビジネスであることを挙げた。売上を増やすほど、機体、保守部品、現場チーム、運転資金が必要になる。そのうえで、リスクを次のように列挙した。受注価格は基本的に市場価格に収れんする。ロボットの性能が不十分だと、現場ごとの例外対応費が膨らむ。機体の現場間移動が長いと稼働率が下がる。故障時に人間が代わりに施工すると粗利を削る。顧客の工程変更で待機させられても、費用を請求できない可能性がある。

戦略:ソフトウェアから施工までの垂直統合

Monumentalは、Atrium OS、ロボットのハードウェア、施工サービスまでを自社で持つ。解説役によれば、これは技術リスクを顧客に負わせないための判断である。初期のロボティクスでは、問題がソフトウェア、センサー、機構、材料、現場のどこにあるのかを切り分けにくい。外部ベンダー間の責任分担をなくし、現場で起きた問題を一つのチームで直せるようにする。それが垂直統合を選んだ理由だと解説役は見る。成果を顧客に保証する以上、主要技術と現場運用を自社で制御する必要もある。

拡張の方向として、解説役は外壁の範囲を段階的に広げる道筋を想定した。まずブロックのような材料、さらに断熱、窓枠、ドアへと進む。ただしこれは単なる機能追加ではない。材料の保持方法、品質検査、他工種との責任分担が変わり、防水や断熱といった性能責任も加わる。この点が今後の戦略上の論点になるという。外壁全体を請け負えれば、一工程あたりの小さな売上から大きな契約へと拡張できる。同じ現場に長く滞在できるため、搬入や設営の費用を複数工程に分散できる可能性もある。ただ、どこまでできるかは技術の発展次第だと解説役は留保した。

どの工程に広げやすいかについては、同じ認識機構や位置合わせを再利用できる工程、同じ運搬の仕組みが使える工程、同じ顧客・同じ現場・同じ契約に追加できる工程を挙げた。ブロック施工のように壁の積み作業に近いものは比較的拡張しやすい。窓やドアの取り付けは単価が大きいかもしれないが、品質責任が重く難しいと見る。また、案件を積み重ねることで、ハードウェアの優位性だけでなく運用データが蓄積される。どの現場条件なら、どの機体構成と作業計画で納期を守れるか、というデータだ。これを早く取りにいくことが、長期的な学習上の優位につながりうると解説役は述べた。

富田氏が「垂直統合は重くないか」と問うと、解説役は「重いですよね」と認めた。製造、施工、保守、ソフトウェアを同時に拡張する必要がある。製造業と違い、建設では地域ごとの拠点や現場チームが要る。学習しやすいという利点はあるが、成熟後にこれをどう回すか、あるいはパートナーシップで一部を任せるかを考える必要があるかもしれないという。

ロードマップ:技術ではなく「有料で再発注されるか」から検証する

解説役はロードマップを三つのフェーズに分けて整理した。

  • フェーズ1(PMF・局所的検証):オランダ国内でレンガ積みのMVPとして、局所的なプロトタイプと実用テストを行う。ここで検証するのはロボットが動くかどうかではない。顧客が市場価格で発注し、完成物を受け入れるかどうかである。
  • フェーズ2:曲線や窓など複雑なデザインへの対応、稼働台数の拡大(現在150台規模とも言われる)、少数の熟練エンジニアに依存しない運用への移行、英国展開。
  • フェーズ3:米国などへの海外展開と材料の拡張。技術リスクだけでなく、営業、契約、現地作業、規制を含めたリスクを検証する。

解説役が面白いと評価したのは、技術的に最も難しいところから検証を始めていない点だ。最も単純な成果物を有料で納品し、繰り返し受注できるかどうかから始めている。今後見るべき指標として、次の点を挙げた。同じ顧客から品質を評価されて再発注が来るか。現場の立ち上げにどれだけ時間がかかるか。自律稼働がどこまでできるか。監督者1人あたり何台を扱えるか。

海外展開の難しさについて富田氏が尋ねると、解説役は技術よりも地域の建築法規や規制が難しいのではないかと答えた。米国ではテキサスやフロリダのような暑い地域が候補に挙がっているという。そもそもレンガが主流ではない可能性、労働組合、州ごとの基準の違い、保険や安全基準も課題になる。欧州で動いた機体が米国で動くかどうかより、米国でその現場の経済性が成り立つかが分からないという見方である。

競合と堀:大型機械、職人、ヒューマノイド

競合として、解説役はまず大型ロボットを使う建設自動化を挙げた。Monumentalは狭い既存現場に複数の小型機で入る。最高速度では劣るかもしれないが、柔軟性や可用性が高く、搬入、配置変更、複数現場への展開がしやすい。機材ではなく成果物を提供する点でも、大型機械とは異なる。

人間の職人も競合になる。人間は柔軟で例外処理能力も高い。Monumentalが勝つには、人間より万能になるのではなく、人が確保できない反復工程で速く安定的に供給することが必要だと解説役は見る。

技術的な堀については、コンピュータービジョンや自己位置推定は汎用技術に近づきつつあり、長期的な堀にはならないだろうと解説役は述べた。本当の堀は、高い精度で見積もりを出し、施工し、期日に引き渡す組織能力をいかに早く作るかにある。加えて現場データ、特に失敗パターンや、地面の傾き、材料のばらつき、他業者との干渉といった例外データを早く蓄積できれば、それが堀になる可能性は十分にあるという。

大手企業が同じような小型ロボットを作る可能性について、解説役は、ハードウェアだけなら模倣可能だと認めた。一方で、現場運用、見積もり、故障対応、顧客との信頼関係、安全実績は積み上げに時間がかかる。そこで先に実績を積むことが勝ち筋の一つだという。ただし蓄積したデータが本当に使えるものでなければ、大企業に負ける可能性は十分にあると留保した。

汎用ヒューマノイドについては、すでに200万円程度で買えるものもあり、価格、耐久性、安全性、作業速度が大きく改善すれば競合になりうるとした。ただ、重いものを動かす、精度が重要、保守性や原価を考えると、建設には専用機のほうが向いているのではないかというのが解説役の見方だ。

参入戦略:職人不足で工期が遅れている現場にサブコンとして入る

新技術の初期顧客は技術好きの会社になりがちだ。これに対しMonumentalは、職人不足で工期が延びている会社にサブコンとして入った。痛みが強いほど、未完成の新技術を試す動機が顧客側に生まれる。最初のMVPは直線かつ平面の壁に限定した。複雑な装飾の依頼は断り、確実に成功できる作業にスコープを絞って納品したという。

ロボットが止まっても人間が補って納品する設計にしているため、初期は粗利を犠牲にしてでも顧客の導入不安を下げられる。解説役はこれを、摩擦の少ない進め方だと評価した。今後の成否を見るうえでは、市場価格で契約できたか、利益が出たか、完成品が受け入れられたか、次の現場の発注が続いたかを確認する必要があるという。

富田氏は、最初の顧客がよく受け入れたものだと感想を述べた。解説役の推測はこうだ。職人を確保できず、何もしなければ工期が遅れることが分かっている状況なら、ロボットでもいいから欲しいという切迫したニーズになる。最後は人間が責任を持って仕上げるなら、ロボットが積もうが人が積もうが構わない。機械を買う必要もないため、機械のことを知らなくても壁が納品されればよい。こうした条件がそろって受け入れられたのではないかという。

創業チーム:建設の素人がソフトウェアの流儀で入った

共同創業者のサラー氏とセバスティアン氏は、SilkをPalantirに2016年に売却した2人で、どちらも建設業の出身ではない。ソフトウェア、データ、AIのバックグラウンドから参入した。解説役は、ドメイン知識がないことはリスクだったとしつつ、既存の大型機を自動化する以外の設計を素人の発想で考えやすかった可能性もあると述べた。2人は、自動運転で発展した認識技術と位置推定技術が建設現場で使える段階に来たと考えて、Monumentalを始めたという。データ製品の市場はGDPで見れば比較的小さく、現実世界の大きな物理的課題を求めて建設に入ったとも説明された。

採用を促すため、同社は一部だけを最先端にし、それ以外は保守的にする考え方を取った。既存のレンガ、既存のモルタル、既存のサブコン契約を使い、顧客の設計や材料を極力変えない。解説役は、最後に人が入って完成させるやり方を、PalantirのForward Deployed Engineering(FDE)的だとも表現した。完成品を遠隔で提供するのではなく、技術者が顧客の現場に入って実際の問題を解決するという意味である。一方で建設には、ロボティクスだけでなく機械、電気、製造、現場施工の専門家が必要になる。そうした人材を集めつつ、ソフトウェア出身チームならではの反復速度で進めてきたという。

富田氏は、FDEはカスタマーサクセスとどう違うのかと尋ねた。解説役によれば、一般的なSaaSのカスタマーサクセスは顧客に使い方を教える仕事だ。FDEは、技術者が現場の業務やデータ構造に入り込み、自ら手を動かして製品を修正・追加しながら問題を解決する。初期は個別対応でコンサルに近いが、そこから共通課題を抽出してプロダクト化し、ロボットやソフトウェア本体の改善につなげる点に肝があるという。

建設の経験がないのにうまくいきつつある理由について、解説役は二つを挙げた。一つはソフトウェア業界流の反復と学習である。もう一つは、既存の材料を維持してスコープを解決可能な範囲に絞り、早く実績を集めたことである。ただし、建設や製造の専門人材は早い段階で加える必要があったのではないかとも述べた。

開発手法:ソフトウェアの反復速度をハードウェアに持ち込む

ハードウェア開発では、設計、部品発注、加工を経ると1回の反復に数カ月かかりやすい。Monumentalは、ダクトテープ、結束バンド、3Dプリント部品を使い、粗いプロトタイプを1週間で作って現場に投入し、分かっていなかった課題を発見しては修正するというサイクルを回したという。試作品を売ることはロボット企業としてはできないが、自社で施工に使う分にはそれが可能になる。これも自社施工モデルの利点である。

解説役は具体例を二つ紹介した。一つは、レンガの縦積みの要望があったときにモデルが機能しなかった事例である。同社は物理的なスロープを自作し、1〜2週間で現場に適用させたという。もう一つは初期の3Dプリント部品で、当初は成功率が50%程度しかなかったが、形状を修正して現場対応につなげたという。完璧な万能機を先に作るのではなく、案件を回しながら必要な機能を追加して学習していったという見方だ。

ただし、案件ごとに専用の仕組みを作り続けるだけでは受託開発会社になってしまう。解説役は、同社がモジュール化、3Dプリンティング、シミュレーション、ログ収集、交換しやすい部品などを通じて標準機能を作ることを考えながら進めてきたのだろうと推測した。顧客の前で失敗しながらも、納期は人間が担保して守っていたのではないかという。

富田氏は、粗く作ってよい部分と最初から品質を確保すべき部分の線引きを尋ねた。解説役は、安全停止、構造の品質、法令に関わる部分は粗くできないと答えた。治具、UI、作業順序、内部部品は粗くてもよい。顧客が求めるのは成果物なので、成果物に大きく影響しない部分から粗く始めているのだろうという。

資金調達と商用スケールへの移行

Monumentalは2024年に2,500万ドルを調達した。2026年7月にはKhosla Venturesが主導する3,200万ドルのシリーズBを発表している。最新の公式情報では従業員は約130人で、研究開発だけでなく、オペレーション、工場の技術者、ロボットオペレーター、配備チームを抱えている。ロボットは100台を超え、外部では150台超とも報じられている。住宅も100戸を超える実績があるという。レンガを正しく置けるか、自律で動けるか、モルタルを扱えるかといった研究開発の課題に取り組むチームと、商用スケールの課題を解くチームが並存しているのが現状だと解説役は説明した。

今回の調達の前に何が証明されたのかについて、解説役は、デモにとどまらず実際の建設現場で施工実績が出たことだろうと答えた。配備台数などのデータも出てきており、成果物課金で売上が見えやすいことも寄与したのではないかという。今後はプロジェクトファイナンス、リース、設備金融といった手段も使っていく可能性がある。フリートが増えるほど、ソフトウェア企業というより航空会社のような資産を抱えるビジネスに近づいていくかもしれないと解説役は述べた。

日本への応用:AIが挙げた三つの案

日本ではレンガ積みは一般的ではないため、番組ではAIに日本での応用案を考えさせた。AIが挙げたのは次の三つである。

案Aは、木造の軸組やプレカット材の現場組み立てである。建て方職人の人手不足を背景にした提案だ。

案Bは、基礎工事の鉄筋結束の自動化である。解説役は、日本でもこの領域でロボットを手がける企業が出てきていると触れた。基礎の配筋は比較的平面的で、位置が図面化されており、品質検査基準も明確なので入りやすい。反復作業で身体的な負荷も大きいため、事業化の価値を説明しやすい。一方で、地形や高低差などの現場差があり、それを吸収できるかが課題になる。

案Cは、狭小地向けに特化した群ロボットによる外壁施工である。東京のように狭小住宅が多く大型機械を入れにくい現場で、小型分散という設計思想を活かす。外壁ボードやサイディングの運搬、位置合わせといった作業を専用機に分ける構想だ。顧客にはロボットを売らず、外壁の施工会社として平方メートル単価で受注するサブコンとして入るのがよいというのがAIの提案である。

日本の建設業就業者は55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%で、高齢化が強く表れている。技能継承の問題も含めて自動化の余地はあると解説役は述べた。顧客としては、専門工事を発注する会社や地域の工務店に対するサブコン、あるいは外壁や基礎を請け負う中堅サブコンが想定される。建材メーカーなどと連携し、材料データと施工をつなぐ方法もありうるという。一方、日本の新築住宅着工は前年比で3年連続減少している。改修や非住宅に展開できるかどうかは、顧客と技術の選択次第だと解説役は付け加えた。

まとめとして示された三つの示唆

番組の最後に、AIがまとめた三つの示唆が紹介された。第一に、ツールではなく成果物を売ること。顧客が欲しいのはロボットではなく壁であり、新技術を買ってもらうのではなく、既存の予算、契約、評価方法に合わせて納品する。第二に、ソフトウェアの反復速度をハードウェアに持ち込むこと。完成度の高い機械を長期間かけて作るより、早く現場に投入し、ダクトテープを使ってでも学習サイクルを回し、現実世界で失敗しながらグラウンドトゥルースを得る。第三に、制約の多い現場では、巨大な万能機より小型の専用機を組み合わせるほうが適用しやすい場合があること。台数を増減でき、故障機の交換や機能ごとの改善がしやすい。そのうえで、協調させるOSと現場運用を作り込む。

解説役はさらに、小型ロボットという技術面の堀だけでなく、成果物課金によって事業面の堀も作っている点を指摘した。難しいことではあるが、模倣を難しくする一つの方法ではないかという。

富田氏は、小型ロボットを複数種類持つことで汎用性と拡張性を確保しつつ成果物を提供する組み合わせが上手だという印象を述べた。顧客はロボットが欲しいのではなく、壁ができればよいからだ。解説役は、レンガ積みロボットにとどまらない方向に進んでいる点が面白いと応じ、日本でもフィジカルAIを人手不足の現場にうまく使うスタートアップが出てくればよいと述べて番組を締めくくった。