混迷するアメリカ社会と広がる虚無感:中間選挙を前にした米国民の本音
楽待 RAKUMACHIアメリカでは政治的な分断や経済的な閉塞感が高まり、国民の間に強い不満と疲弊が広がっている。第2次トランプ政権の動向や中間選挙への関心が集まる一方で、一般市民の間では「右も左も期待できない」という虚無主義(ニヒリズム)が急速に浸透しつつある。
本記事では、日本在住のアメリカ人であるニック氏とタントリス氏が、司会の岸谷蘭丸氏とともに、米国民が抱く怒りの矛先、トランプ政治への失望、社会保障制度を巡る課題、そして今後の日米関係について語り合った内容を整理する。
若年層を襲う経済的困窮と「アメリカンドリーム」の終焉
現代のアメリカにおいて、特に30歳以下の若年層が直面している最大の問題は、生活費や住宅価格の高騰である。タントリス氏によれば、ベビーブーマー世代は資産や不動産を所有しており、その資産価値の上昇によって恩恵を受けている。一方で、普通に働いている若者は住宅を購入することすらできず、「これからのアメリカンドリームがまったく見出せない」という強い不満を抱えている。
ニック氏もこの世代間格差を指摘する。1946年から1964年生まれのベビーブーマー世代の時代はアメリカ経済が絶好調であり、2年ほど働けば家を買うことができ、大学にも現在よりはるかに入りやすかった。スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校のような難関校であっても、当時は今ほどの過酷な競争はなかったと振り返る。対照的に、現在の20代から30代は親と同居せざるを得ない若者が多く、ニック氏の周囲でも実家暮らしの友人が大半を占めているという。
こうした経済的打撃により、若者の間では外に出ずDiscordで友人と話したり、ゲームに没頭したりして心を閉ざす人が増えている。かつてバイデン政権下で議論されたポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)や表現規制への反発よりも、日々の激しいインフレで「生活が成り立たない」という切実な問題が最優先事項になっているとタントリス氏は分析する。
政治への疲弊が生んだ「虚無主義」
過酷な現実を前に、国民の間では怒りを通り越して「虚無主義(ニヒリズム)」が広がっている。ニック氏は自身も政治に対して無関心になったと明かし、バイデン氏や民主党への不満があったものの、トランプ氏になっても状況は根本的に変わらなかったと語る。政治家が受け取る資金の出所や政策の本質はどちらも大差がなく、期待すること自体に疲れてしまったという。
アメリカ人の約64%が政治家に疲弊しているという調査結果に触れつつ、タントリス氏は「これからのアメリカ人は日本人のようになっていくのではないか」と述べる。かつてのように熱心に政治的議論(ディベート)を交わすのではなく、「政治はもう終わった、その話はもういい」と諦めの境地に至る国民が増えている。
ニック氏も同様に、投票のたびに分厚い冊子を読んで複雑な法案内容を精査する労力をかけるくらいなら、YouTube活動に集中したり子どもの宿題を手伝ったりするほうがよほど有意義だと感じるようになったと明かす。共和党と民主党の違いを見出すことができず、どちらを選んでも変わらないのであれば、最初から投票に行かないという選択をする有権者が増えているのが現状である。
トランプ政権への失望:「反体制」から「既得権益」への変質
2016年の大統領就任時、ドナルド・トランプ氏は「キャリア政治家ではない」「自前の資金を持つビリオネアだから他国や企業に操られない」というアウトロー的な存在として熱狂を生んだ。ヒラリー・クリントン氏に対しても歯に衣着せぬ発言を浴びせ、労働者階級の代弁者として既成事実を破壊するロックスターのような勢いがあった。
しかし、2024年の再選以降のトランプ氏に対して、タントリス氏やニック氏は「普通のキャリア政治家になってしまった」と失望を口にする。かつてのような切れ味のある発言は影を潜め、SNSの投稿もスタッフが作成したような無難で退屈なものに変わったという。
さらに政策面でも、掲げていた約束が果たされていない点が批判されている。物価の高騰は収まらず、国民全員に5,000ドルを給付するといった非現実的なバラマキ公約を掲げる姿勢は「単なる買収のようでくだらない」と切り捨てられている。
もっとも大きな亀裂を生んでいるのが対外政策、特に中東問題への関与である。トランプ氏は「もう終わりなき戦争(Forever War)は始めない」と主張していたにもかかわらず、イランやイスラエルを巡る情勢に深くコミットしている。アメリカ国内では「トランプはアメリカファーストではなく、イスラエルファーストになってしまった」とみなす保守派が増えており、熱心な親イスラエル派以外の保守層がトランプ支持から離反する原因になっている。著名な国際政治学者ジョン・ミアシャイマー氏の議論を引き合いに出し、巨額の支援資金の使途が不透明なまま対外支援を続ける現体制は、自国の困窮に苦しむ一般国民の理解を得られなくなっている。
また、政財界の暗部を暴くと期待されていた「エプスタイン文書」の全面公開が進まなかったことも、トランプ氏が既存の腐敗した政府システム側に取り込まれたと失望される一因となった。
崩壊する医療インフラと社会主義への関心
経済的困窮とともに米国民を苦しめているのが、高額すぎる医療制度である。タントリス氏は、日本に来て風邪を引いた際、自己負担が怖くて病院に行くのをためらった経験を語る。アメリカでは無保険者や不十分な保険しかない場合、診察だけで1,000ドル(約15万円)以上の請求を受けるリスクがあり、破産を恐れて救急車すら呼べない人が多い。多くの国民は、タイレノールのような強力な鎮痛剤を大量に服用して耐えるしかない状態に置かれている。
ニック氏も学生時代に高熱で倒れた際、搬送先の病院の看護師から「インフルエンザごときで来るな」と罵倒され、雑な注射によって数年間痛みが残る後遺症を負った体験を明かした。救急車を呼べずに配車アプリのUberを使って自力で病院へ行くといった事態は、日常茶飯事となっている。
この問題の根深さを象徴する出来事として、2024年に大手保険会社のCEOがルイージ・マンジョーネ容疑者に射殺された事件が挙げられた。容疑者を擁護・支持する声が若者を中心に巻き起こった現象について、タントリス氏は「40年前のジミー・カーターとロナルド・レーガンの討論会でも全く同じ医療改革が議論されていた。何十年経っても労働者階級の医療費問題が解決されないため、国民は『日頃の行いが悪かったのだから同情できない』とうんざりしている」と分析する。
こうした状況下で、かつてはタブー視されていた「民主的社会主義(ソーシャル・デモクラシー)」への関心が若者の間で高まっている。しかし、アメリカで皆保険制度のようなインフラが定着しにくい理由について、ニック氏は「日本は同質性が高く互いに支え合う意識を持ちやすいが、人種・宗教・価値観がバラバラなアメリカでは『なぜ自分と何の関係もない他人のためにお金を払わなければならないのか』という反発が勝ってしまう」と指摘する。
タントリス氏もこれに同意し、東洋的な儒教精神(相手を思いやる文化)とは対照的に、アメリカは弱肉強食の文化であると語る。1950年代の冷戦期に「ソ連のような共産主義になってはならない」と徹底的に刷り込まれた結果、国民を救うための基礎的な社会インフラの整備ですら「社会主義への傾倒」として拒絶される、極端な個人主義が形成されてしまったと指摘する。
極端な個人主義の限界と、富裕層優遇のシステム
議論は、アメリカ社会が内包する「勝者と敗者(ウィナーとルーザー)」を分断する教育・社会構造へと及んだ。少数のイノベーター(スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような存在)を生み出すために、大多数の脱落者を容認する競争システムについて、タントリス氏は「アメリカンドリームは富裕層が権力を維持するための蜃気楼にすぎない」と断言する。
現実には、上位1%から10%の富裕層が親からの遺産相続やコネクション(親がハーバード卒なら子も入りやすい仕組みなど)を通じて利益を独占している。労働者階級は「努力すれば報われる」と信じ込まされているが、インフレ下では株式や不動産などの資産に投資できる人間だけが勝ち組になり、普通の給与労働を続ける者は取り残される仕組みになっている。
トランプ氏がこの構造にメスを入れることはできず、支持率も低迷している。国家としての経済力や国際的影響力が低下した結果、政権が打てる有効な手立てはほとんど残されていない。
混迷のアメリカから距離を置く選択と、日本の自立
将来への希望が見出せない中で、一般の人々はどう生きるべきなのか。タントリス氏は「自分は遠くから笑いながら客観的に見つめる」と述べ、国家への過度な帰属意識を手放す姿勢を示した。ニック氏の弟は、社会に絶望した末にモンタナ州の僻地に農場を開き、動物を育てながら地域住民と物々交換で暮らす生活を選び、以前よりもはるかに幸福そうに暮らしているという。
また、AI技術の急速な進展についても懸念が示された。学校現場では課題を生成AIに任せる生徒が急増し、既存の教育システムが機能不全に陥りつつある。バーニー・サンダース上院議員やテック企業の首脳陣がAIの発展ペースを落とすべきだと警鐘を鳴らすものの、開発を止めれば中国に覇権を奪われるというチキンレース状態にあり、歯止めは利かない。
こうしたアメリカの内情を踏まえ、ニック氏は日本に対する提言を残している。自身が日本国籍を取得していない立場であることを前置きした上で、「アメリカの国益と日本の国益は決して同一ではない。アメリカは国内の分断が進み、極めて不安定な国家になっているため、日本がこの先もアメリカに依存し続けるのは危険である。日本は自前の防衛力を強化し、他国に頼らず自立する道を真剣に考えるべきだ」と語った。
中間選挙の展望:下院の民主党奪還と政権の更なる停滞
動画の締めくくりとして、近づく中間選挙の行方が予想された。
タントリス氏とニック氏の見立てでは、上院については共和党が有利な選挙区が多いため多数派を維持する可能性が高い。しかし、下院については民主党が過半数を奪還する公算が大きいとみている。
下院を民主党が握った場合、トランプ大統領に対する弾劾手続きの開始や、政権が進める法案の徹底的な阻止が可能になる。実際に大統領を辞任に追い込むことは困難であるとしても、政権運営は極めて煩雑になり、トランプ政権の政策実行力はさらに麻痺することになる。
アメリカ社会が右と左の極端な対立を深め、国民の多くが無力感に苛まれる中で行われる中間選挙は、根本的な問題の解決をもたらすのではなく、さらなる政治の機能不全と社会の混迷を浮き彫りにする通過点にすぎないという見解で議論は結ばれた。
不動産投資を学ぶなら楽待。楽待チャンネルをご覧の皆さん、こんにちは。岸谷蘭丸です。お久しぶりでございます。すっかり気温も下がって、僕、今日初セーターというか、夏が明けてニット素材のものを初めて着たんですが、健康に気をつけてチャンネルを見ていただければと思っております。
さあ、本日のテーマですが、「迫る中間選挙、アメリカ人の本音は」ということです。トランプ大統領の言動につきまして、日本でも様々なニュースや記事が出ていて、エブリデイ、トランプ氏が何かを言って何かしらの波紋を呼んでいますが、実際にアメリカの人々は今の状況をどう見て、どう感じているのかというところを、今回はこちらの方々に聞いていこうと思います。まずニックさんです。よろしくお願いします。
さあ、さらにですね、楽待初登場のタントリスさんにお越しいただきました。よろしくお願いします。少し緊張されていますかね。ちなみに今は何をしていて、どこ出身で、どれくらい日本にいらっしゃるんですか?
ウィスコンシン州出身です。アメリカの中西部で、あまり知られていないんですけど、分かりやすく言うとシカゴの北の方で、五大湖のところですね。日本は4年目になります。2022年に初めて日本に来て、もうここがいいなと思ったので、多分アメリカには帰れないですね。
4年でこんなに日本語を話せるってすごいですよね。その頃は全然日本語を喋ってなかったんですか?
その頃は拙い日本語で、日常会話ぐらいだったんですよね。去年にたまたま自身のチャンネルを始めて、日本語が仕事のツールになったので、もっと頑張らないとちょっと困るみたいな状態だったから、その時からずっと全力で勉強していました。
すごいですね。僕も4年アメリカにいましたけど、英語で今こんなに喋れないですよ。どんどんできなくなってきて。僕も20年日本にいるから、この前「エアポート」という言葉を忘れちゃって「空港」しか出てこなくて。日本人すぎますね。僕もこの前、漢字で「学校」が書けなかったです。漢字が書けない我々でお送りしていこうと思います。よろしくお願いします。
さあ、本題に行きましょう。今日のテーマは「アメリカどうなるんや」というところでして、アメリカがどうなっていくのか、そしてアメリカ人の怒りや不満の矛先についてです。アメリカ国内では非常に不満が高まっているというか、「もうさすがにトランプは勝たないんじゃないか」みたいな空気を感じているんですが、どうでしょう?みんな不満なんですか?
前置きしていいですか?毎回僕が出ると「専門家でもないのになんで呼んでるんだ、こいつ」みたいに言われるんですけど、専門家の回もあるし一般アメリカ人の回もあるので、これは専門家の考えじゃなくて普通のアメリカ人がどう思っているかについての番組なので、そこは分かってください。
その通りです。専門家の回は専門家が座ってプロがやるので、今回は一般人の雑談として聞いていただければと思います。でも両方の視点が大事ですよね。
アメリカ人は本当に不満ですよ。特に30歳以下の人はもう家を買えないので、「これからどうしようかな」ってみんななっているんですけど、ベビーブーマー世代は資産や家を持っているので、その価値だけは上がっています。それに対して、普通に働いている若者はこれからのアメリカンドリームが全然なさそうなので、不満みたいな気持ちが強くなっているのかなと思います。
アメリカのベビーブーマー世代は1946年から64年までだったんですけど、その頃はアメリカの経済もめちゃくちゃ良かったですし、大体2年間働けば家も買えるし、大学もすごく入りやすかったんですよ。今は競争が結構激しいじゃないですか。スタンフォード大学とかも、当時と比べて今はすごく入りにくくなっています。僕の母はUCバークレーとスタンフォードの両方に行ったんですけど、母に聞くと「もう誰でも入れた」みたいなことを言いますし。今は本当に、30歳や20代の人たちは親の家に住んでいる人が多いですね。
日本では「子供部屋おじさん、おばさん」なんて言われていますけど、リアルに普通に実家で両親と暮らしていますというアメリカ人ばかりですよね。
僕の友達もほぼ全員そうです。40歳で親と同居している人もいます。僕は不満というよりは、虚無主義になっちゃって。申し訳ないけど、めちゃくちゃ無関心になっちゃいました。もうどうでもいいです。民主党もバイデンもすごく嫌だったんだけど、トランプも全然変わっていなくて、もらっているお金も同じ人からもらっているし、配っているお金も変わらないんですよ。
ずっとゲームをやっている人が多いですね。インターネットでチャットしたりゲームをしたりして、心がもう折れているみたいな人が多いと思いますよ。Discordとかで外に行かずにずっと友達と話している人が普通にいると思います。
僕の場合は、2020年の時はまだアメリカに住んでいたんですよ。2年くらいバイデン政権を経験したんですけど、この時の若者は確かにポリコレとか検閲がちょっとやばい状態になっていました。僕は表現の自由が好きな人として、すごく悲惨な状況になったなと思っていたので、日本に行ってからは「もうバイデンはいいよ」って僕もなっていました。
国民としては物価が一番大切だったのかなと思います。生活が苦しい状況だから、今は戦争もポリコレも社会もどうでもいい、とりあえずインフレが半端なくて生活できないっていう考え方の人が多いと思います。
2016年くらいの第1次トランプ政権の時は、また全然空気が違いましたよね。
もう人間が違うんですよ。2016年のトランプと今のトランプは、全然違う人なんです。発想とかも全然違います。2016年にトランプがなぜ勝ったかというと、伝統的なキャリア政治家ではなかったからです。イスラエルなど他の国からお金をもらっていないし、自分のお金があるビリオネアだから、買収されることは絶対になかったんです。でも2024年のトランプは、もう完全にキャリア政治家になっちゃった感じなんですよね。
前の方がツイートとかも面白かったんですよ。今は多分誰かが作っていて、昔は「こいつ大丈夫かよ、ヒラリー・クリントンに対してそんなこと言っていいの?」みたいなアウトロー感があったんですけど、今はもう普通の政治家になっていますね。
確かに昔はちょっとロックンロールな感じがありましたよね。アウトローで既存のものを壊して、言っちゃいけないことを言ってやるぜみたいな。でも今やXの担当者がいて、トランプがバイデンの演説を見ながら喋っている横で、女性がパチパチ打ち込んでいる映像もありましたよね。
僕がめちゃくちゃ絶望したのは、政治家がミームをすごくやるじゃないですか。トランプがブラックジョークみたいなことを書いても面白くないし、ユーモアを分かっていない人が書いているなと思って。イラン政権のツイートを見ると、そっちの方が全然面白かったんですよ。あと、調査によると64%のアメリカ人はもう政治家に疲れているみたいで、やっぱり絶望というか心が折れていますね。
やっぱりトランプは変わったと思いますか?
全然変わったと思います。2年前はみんなトランプを応援していたんですよ。トランプが勝ったらアメリカはもう戦争を始めないとか、物価も下がるって期待していたんだけど、結局大統領になって何も変わらなかったんです。それなのに彼はまだ守れない約束ばかり言っているので、それにもうんざりしているのかなと思います。
一番大きいのは戦争ですよね。イスラエルを応援する人と反イスラエルのアメリカ人がたくさんいる中で、トランプはイスラエルに操られていると思っている人がたくさんいます。僕もそっちに入っているかもしれないですけど。簡単に言うと、「トランプはアメリカファーストじゃなくなった」と思っている人がすごく多いと思います。
僕からすると、戦争だけじゃなくてエプスタイン・ファイルとかですね。何が入っているのか誰も分かっていないですけど、俳優やトップの政治家が絡んでいるってみんな何となく分かっています。本当のことをちゃんと公開してもらいたいのに、公開するはずの時になっても何にもならなくて、結局トランプは完全に政府の人になっちゃいました。昔は労働者階級の代わりに、本当は言っちゃダメだけど思っていることをたくさん言ってくれたから面白かったのに、最近はそういう発言もなくて、むしろ「俺が勝ったらアメリカ人全員に5000ドル配る」とか、ワイロみたいなくだらないことを言うようになっちゃいましたからね。
今回の中間選挙は上院と下院がありますよね。今は共和党が両方持っているけれど、民主党が下院を取るかもしれないという状況になっています。上院は難しいかもしれないですけど、どっちにしてもトランプがこれから法律を作ることなどをブロックできるようになるので、トランプにとってはすごく面倒くさいと思います。ただ、普通のアメリカ人からすると、民主党も共和党もあんまり変わらない同じものだと思っちゃっているので、本当に無関心ですね。
前の大統領選では投票したけど、2024年は投票した?
僕はしてないです。絶対にしてない、もういいです。それがアメリカ人の本音だと思います。日本では普段あんまり政治的な話をしないじゃないですか。アメリカ人みたいにずっとディベートする文化ではないですけど、これからのアメリカ人は日本人みたいになるのかなと思います。「政治はもう終わったから、そういう話はもういいよ」って。
投票する時にすごく分厚い本をもらって、法律を全部リサーチしなきゃいけないんですよ。毎回そんな時間をかけるくらいなら、どうせみんな同じになっちゃうんだから、YouTubeに集中したり子供の学校の宿題を手伝ったり、もっと大事なことがあるだろうと思うようになりました。投票に行くくらいなら1ドルでも多く稼がなきゃと思いますよね。共和党と民主党の政治の区別ができないんだったら、別に選ばなくていいんじゃないかと。
それで言うと、アメリカはだんだん民主党の揺り戻しが来ているというか、レフトウイングっぽいものが強くなっていますよね。世界ではイタリアやヨーロッパなど保守派が強くなる中で、アメリカは保守に疲れて左派勢力が強くなっている印象ですが、どう思いますか?左派がどんどん増してくると思いますか?
来るんじゃないですか。でもまた右に戻ると思いますよ、毎回そうですから。全然変わらないと思っていて、ニューヨークは元々左寄りの州だったので、もっと左になっているだけかなと。ルイジアナ州などアメリカ南部は全然リベラルにならないと思います。キリスト教の影響がすごく強いので、そういったイデオロギー的な考え方は広がらないと思います。両極端になっているだけで、本当に変わっていると言えるのかなと。
ウィスコンシン州などの出身の方はどうですか?
ウィスコンシン州はスイング・ステート(激戦州)ですね。ミルウォーキーはウィスコンシン州で一番大きい街で基本的にみんなリベラルなんですけど、ミルウォーキーから離れたら保守派しかいないという感じです。全米の世論によってスイング・ステートの意見が変わると思います。だから選挙の時はウィスコンシン州やオハイオ州などのスイング・ステートしか見ていなくて、ニューヨークは絶対に左、テキサスは絶対に右みたいな感じです。
テキサスで左派が勝つという説も聞いたんですけど、オースティンは完全に左なんですよね。
オースティンに住んでいる友達と話したんですけど、テキサスの文化って本当に強いんですよ。オースティンだけはリベラル寄りになっていると思うんですけど、そこから離れたらみんな保守派らしいので、さすがにテキサス全体では保守派が変わらないかなと思います。
次の選挙のテーマは何になるんでしょうね。物価や生活がテーマだと思いますが、2016年の最初のトランプの時は「リベラルに疲れた」だったじゃないですか。行き過ぎた権利やリベラルに疲れて、一回リベラルをやめてトランプにしてみた。その後負けて、また再選して、アメリカ人は次は何をテーマにしたいんですかね?
若いアメリカ人としては、医療制度ですかね。40年間ずっと同じような話をしていますけど、民主党でも共和党でも医療制度や家を買えない状態が変わらないので、みんなそういう問題しか考えていないです。あとはAIについてもより考えるようになると思います。社会主義的なものが人気になっていくんじゃないですかね。
初めて日本に住んだ時に、たまたま風邪を引いちゃって、友達に「病院に行ってみれば」と言われたんですけど、「お金がかかるんじゃないか」と思ったんですよね。アメリカに住んでいた時は全然病院に行けなかったんですよ。行くだけで1000ドルとか15万円とかかかって破産するリスクがあるので、救急車を呼びたくない人すらいます。日本のいいところはインフラがちゃんと成り立っているところですね。
僕、大学生の時にインフルエンザになって道で高熱で倒れちゃったんですよ。警察に車に乗せられて病院に行って薬をもらったんですけど、看護師に「インフルエンザくらいで来てんじゃねえよ、もっと重症な人がいるのになんで来てんだ」ってキレられました。しかも注射もすごく雑で、3年間くらいずっと痛かったんです。
僕も牡蠣にあたってめちゃくちゃ熱が出て、「死ぬ」と思って救急車を呼んでくれって騒いだんですけど、ナースに「水でも飲んどけ、死なないから」って言われました。留学生も「病院は高すぎるから行くな」と言われていて、保健室に行くとタイレノールという強い薬をもらって、それを飲むとすべての痛みが消えるんです。友達も肩を脱臼しているのに薬を飲んで「痛くない」って野球をやっていました。それくらい病院に行かないんですよね。
ヘルスケアに関して言えば、去年ルイジ・マンジョーネというイケメンの若いアメリカ人が保険会社の社長を暗殺した事件があって、めちゃくちゃニュースになりました。「暗殺したことは正しい」と言って彼を応援する人がたくさん出てきたんです。40年前のジミー・カーターとロナルド・レーガンのディベートでも「医療制度は変わるべきだ、労働者階級が払えなくなる」と全く同じ話をしていて、普通のアメリカ人はもううんざりしているので、社長が暗殺された時も「日頃の行いが悪かったから自業自得だ」みたいに見られていました。
日本は社会主義的というか、みんなが平等に支え合って誰も見捨てない思想がありますよね。アメリカがそういうものを求め出すとなると、自由と資本主義で成り上がってきたアメリカの姿とは変わってきますよね。
日本はほとんど日本人しかいないのでお互いを支え合おうという考え方があるんですけど、アメリカは自分と全く似ていなくて宗教も違う人に対して「なんで俺があいつのためにお金を払わなきゃいけないんだ」ってなっちゃうから難しいですよね。
儒教の影響もあると思います。日本では相手のことを考えるのが当たり前ですけど、アメリカは弱肉強食の文化になっています。1950年代にソ連が共産主義をやっているのを見て、「アメリカは絶対にこうなっちゃいけない」という考え方が一般的になりました。日本人からするとインフラや医療制度は当たり前のことなのに、アメリカ人は「それはソ連みたいな共産主義だから絶対にやらない方がいい」と洗脳されて、極端な個人主義になっているのかなと思います。
アメリカを見ていると、本当に一部の勝ち組だけが勝って、99%が死んで1%が勝つみたいな極端な個人主義で限界だなとも思います。でもアメリカの教育がそもそもウィナーを生む教育で、「100万人死んでもいいからスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクが1人生まれろ」というガチャを回し続けているようなシステムですよね。競争のシステムが変わらない以上、ルーザーが生まれてしまう。どうなっちゃうと思いますか?
下位90%のアメリカ人はみんな競争し合っていると思うんですけど、アメリカンドリームはただの蜃気楼ですよ。上位10%や1%の利益を守るための戦略です。労働者階級は「頑張れば夢を叶えられる」と思っているけれど、本当はお金持ちが親から相続でお金をもらっていて、「親がハーバード卒だから自分もハーバードに行ける」みたいなシステムになっています。
物理的な話をすると、投資をしている人が勝ち組になって、投資をしていない人が負け組になります。インフレがあるから、投資をしないと絶対にお金持ちにはなれないです。普通の仕事をしてもお金持ちになれないので、株や不動産をやらないといけないですね。
トランプは経済政策でテコ入れをしないんですか?「リベラルは口だけで何もしないが、俺はちゃんと経済政策をやる」と言っていたのに、何もしていないんですか?
何もしていないというか、中国にも負けているし、アメリカには昔のような力も権力もないからできないんですよ。だからトランプの支持率は今すごく低いです。トランプを応援している人たちはまだイスラエルを応援している人たちで、反イスラエルの保守派はアンチ・トランプになっちゃいました。労働者階級の代表として話してくれていたはずなのに、アメリカのシステムが腐敗していて誰も信じられなくなっています。一般のアメリカ人はこんなに貧乏なのに、なぜイスラエルにたくさんのお金をあげるのかおかしいと批判したら、「反ユダヤ主義だ」「差別主義者だ」とレッテルを貼って話を聞かない。トランプも完全にそのシステムに従っています。
国際政治学者のジョン・ミアシャイマーは、「イラン戦争や中東への関与はアメリカ史上最大の失敗だ」と言っています。経済にも世界経済にも良くないし、一瞬で終わらせられると思っていたのに一生終わらない。トランプのキャッチフレーズは「No More Forever Wars(果てしない戦争を終わらせる)」だったはずなのに、毎年1月にアメリカがイスラエルに多額の資金を提供し、それを自由に使わせていることに対しても批判が集まっています。
アメリカ人は今後どうするんですか?お二人はどうしますか?
僕は遠くから笑いながら見ます。もうアメリカには期待していないというか、国境なき軍隊にでも入ろうかなと。アメリカ人ではないみたいな感覚ですね。
僕は日本に帰化していないので言えるんですけど、アメリカの国益として考えると、日本の米軍基地はすごく良いことです。でも日本の国益を考えると、日本は自分の軍隊をもっと大きくしないとダメだと思います。アメリカは今すごく不安定な国になっているので、これから頼ることができない可能性も考えなきゃいけない。アメリカの国益は日本の国益ではないし、日本の国益はアメリカの国益ではないので、日本の皆さんにもそれを考えてほしいです。
アメリカが助かる唯一の道があるとすれば、AIが発達して、みんながスマートグラスをつけてメタバースの中でハッピーに暮らして、ベーシックインカムみたいに食べ物が配られるシステムにするしかないような気がします。AIに全て管理させて「暴れないでね」という社会にするしかないのでは。
AIが気づかない間に人々を支配して、一部の人が得をするようなシステムを組むんじゃないかと思います。AIは人間に対して恨みはないけれど、完全に人間に対して無関心になることもあり得るので、そうなるとすごく危ないと思います。AIのせいでアメリカの教育システムも崩れていて、エッセイなどの課題もChatGPTに聞けばいいやとなってしまっています。AIの発達を減速すべきだという声もありますが、アメリカが開発を止めたら中国がやるだけだから、チキンレースで止められないんですよね。
僕の弟はすごく賢くて、10年前に保守派に絶望してモンタナ州の誰もいない場所にファームを作ったんです。今は自分で動物を育てながら、コミュニティの中でお金じゃなくて物々交換で暮らしていて、すごく幸せそうなんですよ。結局そっちに戻るのが一番幸せなんじゃないかと思います。
お二人の諦めモードを見ると、本当にアメリカは大変な局面なんだなと感じます。でも今熱く語っているのは左派ですよね。労働者や一般国民の暮らしを守ろうという流れから左派が強くなってきているのかもしれません。最後に中間選挙の結果の予想をお二人にお聞きしたいです。
今回の上院選は共和党が強い州が多いので上院は共和党で大丈夫だと思いますが、下院は民主党が勝つと思います。下院を民主党が取ると弾劾手続きなどもできるようになるので、トランプを辞めさせることは無理だとしても、すごく厄介で面倒なことになるのでトランプは結構ビビっていると思います。
下院は民主党が勝ってねじれが生じるだろう、という結論ですね。アメリカがどうなっていくのか心配ですが、皆さんもいざとなったら自給自足で暮らしていけるような準備をしておきましょう。ありがとうございました。
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