睡眠時無呼吸からオレキシン創薬まで 柳沢正史教授が語る「自覚できない悪い睡眠」と睡眠研究の未解決問題
楽待 RAKUMACHI睡眠研究者の柳沢正史教授を迎えた対談の後編では、いびきの延長にある睡眠時無呼吸症候群、流行のリカバリーウェアの効果、寝室の温度管理、年齢による朝型・夜型の変化と中高生の朝練、そして睡眠研究に残る根本的な謎とオレキシン関連の新薬が取り上げられた。柳沢教授は一貫して、本人が気づかないまま睡眠の質が損なわれている状態を問題にし、民間療法的な期待よりもエビデンスと生物学的な事実を重視する立場から話している。
いびきと無呼吸は何が起きているのか
聞き手が最近よく耳にするCPAP(シーパップ)について尋ねると、柳沢教授はまず睡眠時無呼吸の仕組みから説明した。いびきが起きやすいのは、仰向けに寝たときに顎の骨格が小さい人、横から見て下顎が後ろに引っ込んでいる顔つきの人だという。歯並びが悪いのも顎が小さく歯が収まりきらないためで、そうした人では舌の居場所がなく、仰向けになると舌が喉の奥に落ちる。舌と咽頭部の間を息が擦れる音がいびきである。
いびきの段階ではまだ呼吸はできている。ところが特に息を吸うときに気道内が陰圧になり、気道が完全に詰まってしまうと、呼吸しようと努力しても空気が入ってこない。柳沢教授によれば、患者によってはこれが30秒、1分、1分半、2分と続く。血中酸素濃度が下がり続け、ある段階で脳が「覚醒反応」を起こす。教授はこれを「このままだと死んでしまう」という非常事態宣言にたとえた。本人はまったく自覚しないまま覚醒反応で深呼吸をし、また眠り、また止まる。なお柳沢教授自身も軽症の無呼吸があると明かしている。
1時間に50回止まる睡眠と、CPAPで戻った睡眠
教授は実際の測定データを示した。パルスオキシメーター(指につけて血中酸素飽和度を測る機器)の記録には下向きの線が無数に並び、その1本1本が30秒ほど息が止まって戻る「無呼吸イベント」だという。この人は1時間に50.8回呼吸が止まっており、普通の呼吸をしている時間より、止まっているか深呼吸しているかの時間のほうが多い状態だった。酸素飽和度は70%以下、65%程度まで落ちていた。コロナ禍では90%を切れば入院して酸素療法を、とされていたことと比べ、教授は「命がけで眠っている」と言っていい状態だと表現した。
同じ夜の睡眠段階の図も「ガタガタ」だった。一瞬の覚醒と、まどろみに当たるN1、中間的なノンレム睡眠のN2を頻繁に行き来し、レム睡眠は2回しか出ず、深い睡眠はゼロ。教授は典型的な悪い睡眠だとした。
実はこの人物は30代くらいの男性で、すでにCPAP治療を受けていた。鼻にマスクをつけて風を送り、気道内を陽圧に保って塞がらないようにする治療である。自分のCPAPがどれだけ効いているか確かめたいと、2晩測定したうちの1晩だけCPAPを外したのが先ほどのデータだった。CPAPを使った晩は指数が2.6とほぼゼロで、睡眠段階の図もきれいに整っていた(明け方5時前の乱れはおそらくCPAPが外れたためだろうと教授は見ている)。教授はこれを「彼の睡眠の本来の実力」と呼んだ。
940万人に対し治療は70〜80万人
一人暮らしでは無呼吸にどう気づけばいいのか、という問いに対し、柳沢教授はまさにそこが大問題だと答えた。睡眠時無呼吸は基本的に自覚症状がないことが多い。最も多いきっかけはパートナーから「いびきがうるさい」「息が止まっている」と指摘されること、次に昼間の強い眠気だという。8時間、9時間寝ても眠いのに、原因に気づかない人が多い。
治療を検討する目安として教授が挙げたのは、1時間に15回、つまり4分に1回程度以上呼吸が止まるレベルだ。この水準の患者は潜在的に推定940万人、ほぼ10人に1人近くいるとされるが、実際にCPAP治療を受けているのは70万〜80万人程度で、1割にも満たない。教授は、自分で気づかない、だから医者に行かない、行っても検査が煩わしい、という幾重ものハードルを問題視した。
この点に関連して教授は、自らが創業した株式会社S'UIMIN(スイミン)にも触れた。在宅で脳波を測れる装置を作り、測定サービスを行う会社で、先のデータもその装置で測ったものだという。今年6月から在宅での医療レベルの睡眠測定が保険適用となり、患者にとってのハードルが少し下がったと説明した。
聞き手の一人が、睡眠中の音を録音するアプリで「たまにいびきがある程度」だったので安心していたと話すと、教授は、無呼吸は年齢とともに増えると答えた。扁桃が大きいなどの理由で子どもの頃からある人もいるが、中年期以降に増え、更年期前までは男女比が6〜7倍と圧倒的に男性に多い。更年期を過ぎると女性も増え、高齢になると男女差はかなり縮まるとされる。同じ骨格なら太るほど悪化するため、かつては「太った中年男性の病気」と見られていたが、教授はそれを単純化しすぎだとする。アジア人は顎が小さい人が多く、太っていなくてもなる人はなるという。
CPAP以外の治療の現状
喉にレーザーを当てていびきを改善するという自費診療について聞かれると、柳沢教授は、自分の知る限りあまりエビデンスがないと答えた。扁桃が大きい人は取れば良くなるのは事実だが、専門の睡眠耳鼻科医からも推奨されていると聞いたことはなく、標準治療はやはりCPAPだという。
ほかに教授が挙げたのは次のような選択肢である。外科的な舌下神経刺激療法は、舌を前に出す方向に働く神経の枝に電極をつけ、ペースメーカーのような装置を体内に入れて、呼吸が止まると自動で神経を刺激し舌を前に出す。ただし耳鼻科の中でもかなり高度な、細かく大変な手術だという。また、GLP-1系の痩せ薬の一部が日本でも睡眠時無呼吸に適用されつつある(すでになっているかもしれない、と教授は言い添えた)が、これは肥満がある場合に限られる。さらに、肥満がなくても自律神経系に働いて無呼吸を改善する飲み薬が米国などで治験中で、第3相で結構良い成績が出ているらしく、近い将来出てくるだろうと教授は見ている。ただ、どの程度効くかは蓋を開けてみないと分からないとも述べた。
芸人の間でCPAPがちょっとした話題のアイテムになっていることについては、CPAPを使うこと自体は正しいので、広まって「自分もそうかも」と考える人が増えるのは良いことだと評価した。
リカバリーウェアに過度な期待は禁物
最近流行のリカバリーウェアについて、柳沢教授はまず仕組みを整理した。繊維に金属や炭素などが含まれ、遠赤外線で皮膚を温めるもので、一定の物理的基準を満たせば家庭用医療機器として国のお墨付きを得られる。ただしその医療機器としての名目は、昔からある温熱療法の延長として皮膚を温めることにあり、それを着て寝るとよく眠れるかは別問題だという。
教授の知る限り、睡眠への効果を調べた論文は2本しかない。1本は、睡眠の客観的指標にも、主観的な寝心地にも差がつかなかった。皮膚温が上がる結果として深部体温が下がり、それ自体は睡眠にとって良いことだが、肝心の睡眠は変わらなかった。もう1本ではレム睡眠が統計的に有意に増えたものの、増加幅はごくわずかで誤差に近く、意味のある差かは疑問だという。こちらも主観的な睡眠には差がなかった。教授の評価は「微妙」で、値段が高いだけに過度な期待をするのは違うとした。
では寝るときは何を着てもよいのかと問われると、教授は「何でもいい」とは言わないと答えた。自分にとって着心地のよいものであることは大事であり、さらに教授を含む多くの睡眠の専門家は長袖・長ズボンを勧めているという。半袖・半ズボンだと寝具から手足を出したり引っ込めたりする際に温度が急激に変わりすぎるためで、夏でも同様だとした。
万人向けのルーティンはない、エアコンは朝まで
最適な睡眠ルーティンについて、柳沢教授は一人ひとり違うと考えるべきだと答えた。誰にでも共通して「こうすれば眠れる」という方法が見つかればノーベル賞ものだという。教授はその理由を、睡眠がある意味で一方通行であることに求めた。寝ている人を大きな音で叩き起こすのは簡単だが、起きている人をぱっと眠らせるのは基本的に不可能である。だから自分がリラックスできる組み合わせを見つけるしかなく、あとは減点法で、睡眠の実力を妨げているものを取り除いていくべきだとした。
寝室が明るい、うるさいといった条件は当然よくない。教授が特に強調したのは、朝まで快適な温度を保つことだ。夏の冷房も冬の暖房も切ってはいけない、タイマーも駄目だという。つけっぱなしだと冷えすぎるという人は使い方が下手なだけで、設定温度が低すぎるのだと指摘した。エアコンの設定温度は当てにならず、教授の自宅のエアコンも設定27℃で実測は24℃ほどだという。教授は24℃くらいが好みで、夏でもかなり涼しくして薄い掛け布団をかけている。目安として、夏は高くても25℃くらい、冬は低くても20℃以上を朝まで保つのがよいとした。一晩つけっぱなしにしても電気代は20円程度しか変わらないらしいとも紹介し、電気代よりいい睡眠のほうが価値が高いと述べた。
朝型・夜型は遺伝と年齢で決まる
朝型・夜型は遺伝で決まるのか、という問いに、柳沢教授は「これも複雑」と答えた。睡眠時間と同じく、生まれ持った体質と年齢の両方で変わるという。遺伝子の組み合わせによる生来の朝型・夜型がまずあり、さらに年齢によって二相性に変化する。
教授の説明では、10歳くらいの子どもは平均すると朝型である。思春期、中高生から20歳くらいにかけて体内時計が最大2時間ほど後ろにずれ、夜型化する。20代の若者は平均して夜型で、中年になるにつれて朝型に戻り、70〜80代の後期高齢者になると超朝型になる。2時間というのは大きな変化だという。これは生活習慣によるものではなく生物学的な現象だが、メカニズムも意義もよく分かっていない。生殖行動と関係するのではないかと言う人もいるが、証明はされていないと教授は付け加えた。
中高生の朝練は「最悪」、熊本・宇土高校の取り組み
ここから教授は、若者を朝早く叩き起こしてはいけないと話を進めた。朝練は「本当に最悪」だという。多くの中高生や大学生は朝に弱く、体もまだ寝ているので練習の効果がなく、怪我も多いとされる。プロ野球でも、選手の多くが夜型の20〜30代であることから、多くの球団が朝の練習をやめて夕方にしていると教授は紹介した。
熊本出身の聞き手が高校時代に「朝課外」があったと話すと、教授は九州の高校の朝課外を「最悪」と評した。九州は日本の西端で日の出が遅いのに、なぜか朝課外が多いという。別の聞き手は、中学時代に朝7時からランニングをさせられていたと振り返った。
教授が紹介したのが、熊本県宇土市の宇土高校の例だ。スーパーサイエンスハイスクールの指定校で、毎年教授の研究所を訪れているという。同校は昼食後に15〜20分眠る「うとうとタイム」というパワーナップ(短い仮眠)を実施している。教授はこれを良いことだとしながらも、あくまで応急措置だと強調した。理想は夜に十分眠って昼間に眠くならないことである。教授によれば、夜きちんと眠れている大人(高校生を含む)が昼間に寝つくには20〜40分かかる。つまり、パワーナップができてしまう時点で寝不足だということになる。
宇土高校の熱心な理科教員である加藤先生は、熊本県教育委員会を説得し、現在では熊本の県立高校のほとんどが朝課外をやめて夕課外にしていると教授は述べた。実質的に始業時間を遅らせたことになる。米国や英国でも小児科学会、睡眠学会、教育学会などが「スタート・スクール・レイター(始業を遅らせよ)」運動を進めているという。
日本では精神論がはびこっているのではという聞き手の指摘に対し、教授は、教育委員会の幹部は50〜60代で朝型に戻っており、自分が若い頃に夜型だったことを忘れているのだと説明した。
睡眠研究の根本的な謎:なぜ眠るのか
今後の睡眠研究について問われると、柳沢教授は、実は最も肝心な中心的謎が解けていないと語った。第一は「なぜ眠らなければならないのか」である。眠らない動物は一つも知られておらず、より厳密には神経系を持つすべての生き物が眠る。クラゲは神経系はあるが脳、つまり中枢神経と呼べるものを持たない。それでも眠る。
教授はここで「哲学的になる」と断りつつ、一つの考え方を示した。植物のような多細胞生物は、外界の刺激に素早く反応せず動かないという意味で、ずっと眠っているようなものだ。そこへ体の端から端まで情報をミリ秒単位で伝える神経系が発明され、刺激に反応してぱっと動く動物が生まれた。その時点で「覚醒」、すなわち外界の刺激にリアルタイムで反応し続ける状態が発明された。ところが、この生物学的コンピューターとしての神経系はなぜか24時間365日働き続けることができない。覚醒の発明と同時に、覚醒を維持できないがゆえに睡眠が入り込んできた。ここまでは分かっているが、なぜそうなのかが全く分からないという。
眠っている間も脳は休んでいるわけではない。大脳皮質の代謝率は睡眠中もほとんど落ちず、働き続けている。コンピューターにたとえれば、オフラインでメンテナンス作業を一生懸命やっている状態だが、その「何か」が分からない。しかも、外界に鈍くなる睡眠中は動物にとって最も危険な時間であり、オンラインでメンテナンスできるならそのほうが良さそうなのに、なぜオフラインでなければならないのかも謎だと教授は述べた。
第二の謎:眠気とは何か、オレキシンでは説明できなかった
第二の謎は、第一の謎と関係する「眠気」の正体である。起きている間に睡眠へのプレッシャーが蓄積し、眠ると解消される。言われてみれば当たり前だが、この眠気が何なのかは分かっていない。脳は直近の覚醒時間を「もう17時間起きている」「24時間起きている」とカウントしているはずだが、そのカウントの仕組みが全く分からないという。
かつては睡眠物質のようなものが脳内に溜まり、寝ている間に解消されるという単純な説が考えられていたが、教授は、それはおそらく当たっておらず、そんな単純な物質ならとっくに見つかっているはずだとした。教授自身、オレキシンを見つけたときには、それに近いものを見つけたのではないかと「ちょっと甘い考え」を抱いたことがあると明かした。しかし、過眠症のナルコレプシーの患者はオレキシンがほぼゼロであるにもかかわらず、睡眠と覚醒は不安定でも24時間の総睡眠量は健常者とほとんど変わらない。したがって、覚醒時間のカウントの仕組みには根本的な異常がなく、オレキシンは少なくとも直接にはそこに関与していないと言わざるを得ない。教授の研究室はこの眠気の正体の解明に取り組んでおり、何の役に立つかはやってみないと分からないが、将来必ず何か役に立つことにつながると述べた。
オレキシン受容体拮抗薬に依存性が起こりにくい理由
オレキシンの発見からは薬が生まれている。12年前に最初の薬が出たオレキシン受容体拮抗薬という睡眠薬で、依存性、耐性、反跳性不眠といった嫌な性質がないと教授は説明した。
その理由として教授が挙げたのは受容体の性質だ。オレキシン受容体にはOX1RとOX2Rの2種類があり、OX2Rが主に睡眠・覚醒を制御している。一方OX1Rは、ドーパミンが関わる脳内の報酬系、つまり薬物依存や快楽、モチベーションに関わる部位に効いている。教授によれば、OX1Rが刺激されていなければ依存は起こらない。従来の睡眠薬には依存性があると言われていたが、現在日本で臨床使用されている4剤のオレキシン受容体拮抗薬はすべてOX1RとOX2Rの両方を抑えるため、薬理学的・原理的に依存が起こりにくいという。
武田のオレキシン作動薬と業界の過熱
もう一つ大事な話として教授が挙げたのが、2026年8月の出来事だ。武田薬品が世界に先駆けてオレキシン作動薬を開発し、日米中で承認された。薬価も決まり、まもなく発売されるという。
教授がこれを画期的とする理由は、脱力発作を伴う1型ナルコレプシーが、オレキシンを作る神経細胞が脱落して脳内のオレキシンがなくなる「オレキシン欠乏症候群」だからだ。作動薬は、ないものを補い病因そのものを治す薬だという。教授は日本が誇るべき創薬の業績だとし、武田にとって18年ぶりの本当の自社創製品だと聞いていると述べた。
ただし、業界は「少し過熱状態」にあるとも教授は指摘する。GLP-1が当初は糖尿病の薬だったのに抗肥満作用が分かって爆発的に広がり、適応外処方も多いとされる状況になったのと同じことが将来起こるかもしれないという。最初の適応は1型ナルコレプシーだけだが、武田を含む数社が競争しており、他の中枢性過眠症にも近い将来使えるようになるだろうと教授は見る。さらに睡眠時無呼吸に伴う日中の残存眠気、ADHD、ある種のうつ病のサブタイプなど、精神神経疾患にも使える可能性がある。現在のADHD治療薬はメチルフェニデートなど覚醒方向の薬であり、オレキシン作動薬も一種の覚醒方向の薬なので、おそらくADHDには効くだろうと教授は推測した。逆に、OX2Rには触れずOX1Rだけを抑えれば、眠くさせずに依存症の治療ができるかもしれないという。
教授は、最近英エコノミスト誌のインタビューに応じ、コメントが掲載されたことにも触れた。GLP-1で大きな利益を上げているイーライリリーが、オレキシン作動薬を開発する小さなベンチャー(センテッサ)を買収したという。教授の記憶では化合物はまだフェーズ2で、薬は出ていない段階だが、買収額は約1兆円だった。それだけの将来的な見込みがなければ買わないだろうとして、教授はオレキシンの創薬が今すごいことになっていると述べた。
発見者に利益は入らない
オレキシン関連の薬がいくら売れても自分には1円も入らない、と教授が言うと、聞き手は「くださいと言えばくれるのでは」と笑った。教授は、くれるならいくらでも言いたいが、個人的にというより研究に寄付してほしいと返した。教授らが持っていたのは「標的特許」で、それも大昔のものなのですでに切れている。標的特許は、薬を作らない限りお金にならない。薬物の標的は生体にもともと備わっているもので、それを見つけたのは発見であって本当の意味での発明ではないからだと教授は説明した。
「当たり年」の2026年
最後に教授は、今年は睡眠分野の当たり年だと語った。6月の診療報酬改定で在宅PSG(睡眠ポリグラフ検査)が保険適用となり、より大きなこととして不眠症のための認知行動療法(CBT-I)も保険適用された。サスメド社が開発した認知行動療法アプリもデジタル治療として保険償還されたという。さらに「睡眠障害内科」「睡眠障害耳鼻科」といった名称を掲げられるようになったことも挙げた。教授は、こうした変化をきっかけに睡眠の知識がいろいろな人に広まればいいと話を結んだ。
リカバリーウェア、最近流行ってますよね。私の知る限り、2報だけ論文が出ていて、あんまり正直申し上げて大した効果じゃないんですよ。
そうですか。じゃあ、何で寝てもいいんすか? 寝る時、ぶっちゃけ。
何でもとは僕は言いません。多くの睡眠の専門家は……。朝練とかあるじゃん。本当に最悪で。九州の高校って朝課外っていうの。
ありました。あれ最悪なん? 最悪なんだ、九州。
オレキシンの創薬、今すごいことになってると思います。
経済的にも、じゃあすごい。
業界で少し過熱状態にあって、日本の武田が世界に先じてオレキシン作動薬を開発して。これ画期的で、かなり幅広い精神神経系の疾患に使えるようになる、将来。
不動産投資を学ぶなら楽待。
CPAP、最近よく聞きますけども、いびきとかがひどい方はそれをつけて、だいぶ眠りが深くなるみたいに聞きますけど、これはどうですか?
いわゆる睡眠時無呼吸ですね。いびきのひどいやつで、いびきって何が起こってるかっていうと、特に仰向けに寝てる時に、顎の骨格がちょっと小さい人とか、横から見て少し下顎が後ろに引っ込んでる顔つきの人とかが多いんですけど。顎が小さいっていうのは、例えば歯並びが悪いっていうのは、もう顎が小さいので歯が入りきらないから歯並びが悪くなるわけですよ。
そういう人に多いんですけど、舌がですね、ベロが居場所がなくなって、仰向けに寝てる時に後ろに落ちちゃうんですね、舌が。舌と咽頭部の間で擦れる、息を吸ったり吐いたりする時に擦れる音がいびきなんですよ。こう、っていう。
うまい。
私、無呼吸があるんで、自分が。
先生、無呼吸あるんすか?
ある。軽症ですけど。だから真似がすごい上手なんです。無呼吸の場合は、そのいびきはまだ息はしてるわけですね。
ところが、それが本当に、特に吸気の時が多いんですけど、吸気の時に気道内圧が陰圧になるじゃないですか、吸気ですから。それが完全に詰まっちゃって、呼吸努力はするんだけど息は入ってこないと。それが患者さんによっては、30秒、1分、1分半、2分続く人もいます。
怖いなあ。
それで、その結果、当然血中酸素濃度がどんどん下がっていって。あるところまでいくと、脳が覚醒反応っていうのを起こして、要するに非常事態宣言ですよね。「お前、このままだと死んじゃうよ。息した方がいいよ」と。自分では全く自覚がないんだけど、覚醒反応っていうのを起こして息をするわけですね、深呼吸を。
これがその図なんですけど、この下半分を見てください。一番下の橙色のギザギザの線がありますが、パルスオキシメーターって、コロナ禍の時に家庭用のが流行りましたけど、血中の酸素飽和度っていうやつですね。指につける。
そう、指につける。
これを見ていただくと、下向きのひげというか線がたくさん出てるじゃないですか。1本1本が、さっき言った無呼吸イベントっていうんですけど、息が30秒とか止まって戻る。それが1本1本の下向きの線なんですよ。
これ全部が、一つ一つが。
そう、息が止まってる。だから、この方は50.8って書いてありますけど、あれは1時間に50回息が止まってると。だから、ほぼ毎分息が止まってます。
息を吸ってる時間の方が短いってことですか?
吸ってるというか、息してる期間の方が。ほぼ深呼吸してるか止まってるか、どっちかみたいな。
通常の呼吸は。
だから、この方は本当に重症の人で。しかも、その下がり方が尋常じゃなくて、70以下ぐらいまで下がっちゃってるんですよ。70%以下ぐらい。コロナ禍の時に、90を切ったらもう入院して酸素療法してください。90ね。この方、65とか70までなので、本当に命がけで眠ってると言っていいんですよ、この方。
上半分の睡眠の図を見てほしいんですけど、もうガタガタなんですよね。さっき見てきたのと全然違うでしょ。一瞬の覚醒と、N1っていうのはまどろみですね、すごく浅いノンレム睡眠。N2が中間のノンレム睡眠ですけど、それを繰り返す。すごく縦線が多いじゃないですか。行ったり来たり、行ったり来たり、すごく不安定。それから、レム睡眠も2回しか出てないし、ほとんどないですよね。それから深睡眠、ゼロですよね。だから、ものすごい悪い睡眠。もう典型的な悪い睡眠。
だから、これむちゃくちゃ質の悪い睡眠で。この方は、そのCPAPっていう、さっきおっしゃった鼻にマスクをつけて、風を送ることによって気道内圧を陽圧に保つ、塞がらないようにする、そういう治療法ですけど、それを実際にやってる人で。この方、自分のCPAPがどれだけ効いてるか試してみたいって言って、2晩測ったうちの片方を外して測ったんですよ。だから、その外して測った日が下なんです。
そういうことなんですね。
この方はすでに治療していて、普通に治療したら、無呼吸低呼吸指数が2.6って書いてありますけど、ほぼゼロですよね。だから、もう完璧に治療できていて。睡眠の図を見ていただくと、すごくきれいじゃないですか? 最後の方の5時前ぐらいは、あれ多分CPAPが外れてたんだと思うんですけど。それまでは本当にさっきみたいな、若者らしい。この方、確か30代ぐらいの男性なんですけど。これが彼の睡眠の本来の実力ですね。
これって、やっぱりいびきでは気づくじゃないですか。でも、これパートナーいたら分かるんですけど、一人暮らしとかってどうやって気づける?
そうなんですよ。それが本当に大問題で。実は、睡眠時無呼吸は気づかないです、基本的に。基本的に、相当気をつけてないと自覚症状がないことの方が多くて。ある人もいるんですけど、一番多いのは、パートナーに「うるさい、いびき」とか「息が止まってるよ」って指摘される。それから、昼間むちゃくちゃ眠い。これですから、眠いに決まってるわけですよ。
そうですよね。
例えば8時間、9時間寝ても眠い。実は気がつかない人がすごく多いんですね。日本全国で、こういうCPAPの治療、この無呼吸指数が15を超えると治療を考えましょうってなるんですよ。15だから4分に1回息が止まる。それ以上息が止まると治療を考えましょうってなるんですけど。そのレベルの患者さん、潜在的に940万人だったかな。推定940万人いるんです。
そんな数字が飛び出てくると。
ほぼ10人に1人近くいるんですよ。ところが、実際にこのCPAP治療を今やれてる方が70万人とか80万人とか。
全然足りてないですね。
10人に1人もできてないんですよ。それが無呼吸の最大の問題点で、自覚できない。それから医者に行かない。だから、本当に無呼吸は大問題です。いろんな意味でハードルがあって、まず自分で気がつかない。従って医者に行かない。医者に行っても検査がうざいとかね。
今、在宅の精密検査。実はこれ言うの忘れてたけど、私たちが始めた株式会社S’UIMINっていう、ふざけた名前の会社じゃないですけど。
ストレートなネーミングですね。
そうですよ。株式会社S’UIMINで作った、在宅で脳波を測れる装置でこれ測ってるんですけど、そういうサービスをやる会社で。今、その在宅の、医療レベルの睡眠測定が保険収載されたんで、この6月から。少し患者さんにとってはハードルが下がる。
なるほど。
僕なんか、アプリで睡眠時の音が録音できるみたいなの、やったことあるんですけど。
ありますね、たくさん。どうでした?
たまにいびき、グッて言ってたぐらいなんですけど。それで、無呼吸ではないかって安心してたんですけど、それを信用するっていうのも別にいいんですかね。
年齢とともにどんどん増えてくるんですよ、無呼吸。若者でも、若者だからないってことはないんですよ。ある人はもう若い頃から、子供の時からある人もいますから。扁桃が大きかったりするとね。中年期以降、増えてくるんですよ。更年期以前までは圧倒的に男性に多いんですよね。多分男女比が6、7倍とかあって。ただ、更年期を過ぎてくると女性も増えてきて、徐々に高齢になるとだいぶ男女差が減るって言われてますけど。
いずれにしても、若い頃はまだともかく、あともちろん同じ骨格であれば、太れば太るほど悪くなるんですよね。
やっぱり、恰幅がいい人がなって。
だから、一昔前だと、太った中年男性の病気っていう。でも、あれはちょっと単純化しすぎで。特にアジア人は、さっきから言うように顎が小さい人が多いんで、太ってなくてもなる人はなります。いずれにしても気がつきにくい。
ちょっと医者的に気になるのが、CPAPもあるんですけど、今、自由診療で喉にレーザーとかを当てて睡眠時無呼吸を改善するみたいなのを見たりしたことあるんですけど、あれって効果あるんですか?
僕の知る限り、あんまりエビデンスがないと思います。
そうなんですね。結構ありますよね。全国にそういう病院がある。
本当に扁桃の大きい人とかは取ると良くなるのは事実なんだけど、あれがどこまで。専門の睡眠、耳鼻科とかの先生に聞いたらいいんですけど、あんまり推奨されてるっていうのは聞いたことがないですね。やっぱり標準治療はCPAPと。もちろん外科治療で、神経刺激法って言って、すごいんですよ。
舌下神経の、舌を前に出す方向に働く枝に電極を装着して、この辺にペースメーカーみたいな。息が止まると自動的にその神経をビッと刺激するようにできたデバイスを、本当に手術で入れるっていう。
前に出るってことですね。
すごい。でも、これすごい大変な手術で。
手術でもう入れて、ずっとそれが機能するように。
ちょっと怖さありますね。
怖いし、本当に大変なんですよ。本当にこの辺の、ものすごい細かい。耳鼻科の中でもかなり高度な手術だと。
それから、今話題になってるのはGLP-1の痩せ薬。あれの一部が日本でも今、睡眠時無呼吸にも適用になりつつあって、もうなってんのかな。ただ、それは肥満のある場合ですね。それから、肥満がなくても自律神経系の薬で、飲み薬で無呼吸を改善するっていう飲み薬が、アメリカなんかで今、治験をやっていて。第3相治験で結構いい成績が出てるらしいんで、近い将来、飲み薬が出てきますね。
そうですか。
どのぐらい効果があるか、ちょっとふたを開けてみないと分かんないですけど。
芸人界ではCPAP、ちょっとウケるアイテムみたいになってます。
確かにな、テレビ。割とつけてる人も多いし。
それはそれで市民権を得ていいですよね。CPAPをやること自体は正しいことなんで。だから、それはいいことなんですよ。
広まっていった方が、自分もそうじゃないかなって。割と芸人、CPAP詳しくなってます。
ありますよね。みんなYouTubeとか、1本CPAPで、こういう装置なんだっていうのを、割と発信してるのはありますけども。
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リカバリーウェア、最近流行ってますよね。あれはいかがですか?
リカバリーウェアって、ご存じのように繊維の中に、何でしたっけ、金属とか炭素とかが入ってて、遠赤外線を、要するに皮膚に反射して、その皮膚を温めるっていう。あれで一応、ある一定の物理的な基準を満たしていると、あれ家庭用医療機器なんですよね。ある意味、国のお墨付きがついてるんですよ。
そうですか。
ただ、その医療機器の名目っていうのは、基本的に今言ったように、遠赤外線で皮膚を温める、いわゆる昔からある温熱療法の延長みたいな。そういう意味で医療機器に認められてる製品が多いんですが、あれのパジャマを着るとよく眠れるかっていうのは別問題ですよね。
これ、私の知る限り2報だけ論文が出ていて、2報とも、あんまり正直申し上げて大した効果じゃないんですよね。
そうですか。売ってますよね、いっぱい。結構専門……。
片方の論文は、確か睡眠の客観指標には一切差がつかなかった。主観的な睡眠、寝心地にも差がつかなかった。唯一、皮膚温が上がるせいで深部体温が下がると。逆にね、皮膚を温めるから。深部体温が下がること自体は睡眠にとってはいいことなんですけど、肝心の睡眠は変わってなかったと。
もう一方は、レム睡眠がちょっと増えたのかな。一応、いわゆる統計学的に有意に増えたんだけど、増え幅がすごいほんのちょっとなんですよ。
ちょっと誤差の範囲ぐらいの。
これが意味がある幅なのか、統計学的に有意かもしれないけど、っていうレベルで。しかも、その論文でも主観的な睡眠には差がつかなかったんですよね。
そうですか。
だから微妙です。
過度な期待をするのは違う。高いだけに。
高い。そうですよね。
じゃあ、何で寝てもいいんすか? 服って、寝る時ってぶっちゃけ。
何でもとは僕は言いません。やっぱりあなたにとって、自分にとって寝心地のいい、着心地のいいものであることは大事ですよ。気をつけた方がいいのは、確かに何でもいいとは思わない方が。あと、私及び多くの睡眠の専門家は、長袖で長ズボンを勧めてます。
やっぱりそうなんですか。
半袖で半ズボンだと、寝具からどうしても出したり引っ込めたりするじゃないですか。その時に急激に温度が変わりすぎるっていうのがある。
じゃあ、割と夏場でもそこは統一して。先生の考えるベストな睡眠ルーティーン、さっき言った睡眠習慣。
ルーティーンに関しては、本当にこれ、一人一人違うと思った方がいいです。万人に共通して、こうやれば眠れますっていうのが見つかったら、これもう本当に、それこそノーベル賞です。これ本質的に難しい。睡眠って、ある意味、象なんですよ。寝てる人を叩き起こすのは簡単じゃないですか。「おいおい」ってやれば、大きな音を聞かせて叩き起こせますよね。起きてる人をパッと寝かせるのは基本不可能なんですよ。
確かに。ルーティーンに関しては、本当に自分がこれをやるとリラックスできるみたいな組み合わせを見つけてくださいとしか言いようがないんですよね。
それこそ、これやってると眠くなるなとかを利用してもいいと思う。
そう、利用すると。残りはむしろ減点法で、あなたの睡眠の実力を妨げてるものを除いていきましょうと。
なるほど。
寝室が明るいとか、うるさいとか、ダメですよね。当たり前。それから、私よく言うんですけど、朝まで快適であることが大事で。夏はクーラー、冬はエアコンの暖房を切ったらダメです。
つけっぱなしで。
つけっぱなし。タイマーはダメ。本当にダメ。
そうなんですね。
よく、クーラーつけっぱなしだと冷えすぎるとかっていう人いるじゃないですか。あれは使い方が下手くそなだけ。
それは確かに、上げればいいんじゃない。
そう。設定温度が低すぎるだけのことで。エアコンの設定温度って全然当てにならないんですよ。私のうちにあるやつもそうですけど、今、設定温度、確か27度だけど、実測すると24度ぐらいなんですよね。
やっぱりそうなんですね。
私は24度ぐらいが好きなので。夏でもですよ。だから結構涼しいです。多くの人が、真夏でも薄い掛け寝具をかけて、自分にとって快適な温度を保つのがいいんですけど。高くても25度ぐらい。
結構涼しい。
冬でも逆に、低くても20度以上。だから冬は暖かく。とにかくその温度で保つこと。
朝まで保つ、エアコンは消さない、が大事ということですね。
こないだ、それこそエアコンを切っても、朝までつけっぱなしにしても、一晩で電気代20円しか変わらないらしいですよ。
そうですか。
普通に正しく設定して使ってれば。だから電気代を気にする必要ないし。
節約でどうとかじゃなくて。
そんな電気代よりも、いい睡眠の方が価値が高い。
あと、よく言う朝型・夜型みたいなのってあるじゃないですか。あれはもう遺伝で決まってたりするんですか?
はい。これも複雑で。さっき、睡眠時間が遺伝、体質、生まれ持った体質と年齢で違う。朝型・夜型もそうなんですよ。生まれ持った遺伝子の組み合わせによる、生まれ持った体質としての朝型の人、夜型の人がまずいるんですね。年齢によって二相性に変化するんですよ。めんどくさい。
まず、10歳ぐらいの子供は平均すると朝型なんですね。個人差ありますが、平均すると朝型。ところが、思春期、中高生から20歳ぐらいにかけて、最大2時間ぐらい時計がずれるというか、夜型化するんですよ。それで、20代ぐらいの若者は押しなべて夜型で。そこからだんだん、中年になるにつれ朝型に戻っていって、私ぐらいの年になると朝型に戻るんですね、平均値として。70歳、80歳、後期高齢者になると超朝型になる。だから、おじいちゃん、おばあちゃんは早寝早起き。そういう大きな、2時間ですからね、でっかい変化なんですよ。
それ、生活習慣とか関わらず、大体。
これはバイオロジカル。生物学的になぜかそうだ。メカニズムもよく分かってないし、意義もよく分かってないんだけど。一部の人は、生殖行動と関与するんじゃないかとかっていう。
なるほど。夜型になった方が確かにいいかなと。そういうことか。
そういうことを言う人もいますが、証明はできてないし。
腑には落ちるというか。
事実としては、そういう変化があるんですよ。若者、早く叩き起こしちゃいけないんです、本当は。
そうなんですね。そうか。じゃあ、学校とかやっぱり良くないですね、朝は。
そうなんです。朝練とかあるじゃないですか。本当に最悪で。まず、多くの中高生、大学生は朝弱いので、体も寝てるわけですよね。だから練習の効果がないし、怪我が多いし、良くないとされてますね。最近、プロ野球の多くの球団が朝練をやめて夕方にしてるじゃないですか。野球の選手もみんな20代、30代が多いので、多くは夜型なんです。
九州の高校って朝課外あるの?
ありました。あった。ありました。
佐賀でしたっけ?
僕、熊本なんですけど。
朝課外ね。あれ最悪なんです。
最悪なんだ、九州。最悪なことして。
九州って、だって一番西だから一番日の出が遅いじゃないですか。
確かに。
なのに朝課外がなぜか多い。あれは本当に良くなくて。実は、熊本の宇土市に宇土高校ってある。
高校あります。あります。
あそこ、スーパーサイエンススクールで、うちの研究所に毎年来るんですよ。宇土高校だから、ウトウトタイムって。
うまいこと言いますね。
本当に、要するにいわゆるパワーナップ、昼過ぎの短い仮眠を本当に全校でやってて。「ウトウトタイムです」って言って、みんな飯を食った後、20分とか15分寝るんですよ。そういう睡眠を一生懸命やってる高校なんですね。
それはいいことなんですか?
いいことです。いいことです。もちろん、あれですよ、応急措置ですよ。本当は夜十分寝て、昼間眠くないのが理想なんだけど。日本の高校生はそういうわけでね。
ちなみに、パワーナップって15分から20分の短い仮眠なんですけど、本当に夜寝れてる人は、大人、高校生も含め大人は、昼間の睡眠潜時って言って、寝つき時間、昼間は20分、30分、40分かかるんですよ。
なるほど。
だから、パワーナップが可能な時点で、あなたは寝不足ですってなる。
なるほど、そっか。できちゃってる時点で。
できちゃってる時点で。その宇土高校の加藤先生、すごく熱心な理科の先生がいて、スーパーサイエンススクールをやってるんですけど。彼が頑張って、なんと熊本県の教育委員会を説得して。本当に今、熊本県立の高校、ほとんど朝課外をやめてると思うんです。
そうなんすか? じゃあ俺、負の世代かもしれない。最後の、朝課外があった。
確かに。
朝を、本当に夕課外にしたの。だから実質的に学校の始業時間を遅らせてるんです。
そうなんですね。
これは実は、アメリカとかイギリスではスタート・スクール・レイター運動っていうのがあって。本当に小児学会とか睡眠学会、教育学会が、みんな「遅くしろ、遅くしろ」って言ってるんですよ。さっき言ったことがあるから。
俺、朝7時から中学校の時、ランニングさせられてましたよ。
中学。最悪。
最悪じゃん、あれ。マジっすか?
日本はまだまだ遅れてますよね、その辺り。いまだに精神論がはびこってるっていうか。これ、言い出すときりがないんですけど。さっき言ったように、50代、60代ぐらいだと朝型に戻ってくるんですよ。大体、教育委員会のお偉いさんとか、みんなそのぐらいの年齢で。自分が若い頃、夜型だったってことをすっかり彼ら忘れてるんです。
なるほど。「朝起きられないとは何事だ」ってことになりますね。
そう。自分は起きられるから。
そんなことだったんだ。なるほど。
じゃあ、これを見てる10代の子たちはかなり心強いでしょうね。自分が起きられないのは当たり前のことなんだって。ご両親にこの動画を見せたりする子もいそうですけどね。
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先生、この今後の睡眠研究っていうのはどうなっていくんですかね?
実は、一番肝心な睡眠の中心的な謎が解けてないんですよ。何が言いたいかというと、まず、なんでみんな寝なきゃいけないのっていう。
確かに。そもそも根本ですね。
全ての動物が眠るんですよ。眠らない動物って一個も知られてない。もうちょっと厳密に言うと、全ての神経系を持つ生き物は眠るんですよ。例えばクラゲ。クラゲさんは神経系はあるんですけど、脳は持ってないんですよ。中枢神経と言えるものは持ってない。でも彼らも眠る。
寝るんですね。
寝るんです。
脳のためじゃない可能性。
そう。脳以前からもう眠ってる。哲学的になっちゃいますけど、考え方としては、もともと生物が地球上で生まれてきて、多細胞生物になるじゃないですか。例えば植物もいいんですけど、彼らって言ってみればずっと眠ってるようなものだということなんですよね。外界の刺激に素早く反応することはできないし、動かないし。
ところが、神経系というものが発明されて。要するに神経系っていうのは、体のここからここまで情報をミリセカンドで伝達する、素早い情報伝達系じゃないですか。それがどこかの段階で発明されて、神経系を持つ生き物ができて。それが我々が言うところの動物ですよね。何かに刺激反応してパッと動くみたいな。その神経系ができた途端に、要するにそこで覚醒というものが発明されるわけですよ。
なるほど。
覚醒っていうのは、要するに我々が外界の刺激に、サブ秒の単位でリアルタイムに反応し続けてる状態が覚醒ですよね。それをやるためには、絶対、神経系が多分必須なんですよ。その神経系が、なぜか生物学的なコンピューターですけど、24時間、24/7、働き続けることができないんです、なぜか。
それが要するに、1日に1回でも何回でもいいんですけど、ある時間眠らなきゃいけない。だから、覚醒が発明されたと同時に、覚醒はずっと維持できなくて、睡眠というものが入り込んでくると。そこまでは分かってるんです。それがなぜなのかが全く分からない。眠ってる間も、我々の脳は休んでるわけじゃないんですよ。
例えば大脳皮質の燃費、代謝率を測ると、ほとんど落ちないんですよ、睡眠中。だから働き続けてるんですね。何やってるかっていうと、コンピューターに例えると、オフラインのメンテナンス作業を一生懸命やってる。何かやってる。でも、その何かがよく分からないし、なんでオフラインじゃないとメンテができないの?
なるほど。
だって、ずっとオンラインでメンテができたら、それに越したことはないようにも見えるじゃないですか。だって、動物にとって眠ってる間って一番危険な期間ですよね。外に対する反応が鈍いわけで。
そうですね。
なぜなのって。それがまず根本的な謎の第一。第二は、それと関係するんですけど、さっきも言ったように、ずっと起きてることはできないわけですよ。要するに、起きてる間に何か眠気みたいなものが蓄積していくわけですよね、睡眠に対するプレッシャーが。ある程度それが蓄積していくと、そこで眠くなって寝て、眠ってる間にそれが徐々に解消されるわけですよね。言われてみれば当たり前なことじゃないですか。でも、今こう手でやったこの眠気って何なの?
確かに。
それが実は分かってない。だから我々の脳は、直近の覚醒時間をカウントしてるわけですよ。「もう何時間起きてる? もう17時間起きてる。もう24時間起きてる。眠い」ってなるわけでしょ。そのカウントのメカニズムが分からない。自分の脳のどこかで、覚醒してるということを自覚していて、その時間をカウントしてるわけです。そのメカニズムが全く分からない。
確かに。
だいぶ昔は、睡眠物質みたいなものがあって、それが脳の中でたまっていくんじゃないかと。寝てる間にそれが解消される。そういう単純なことが考えられてたんだけど、それは多分当たってなくて。そういう単純な物質とかだったら、もう絶対見つかってるんですよ。
確かに。
僕ら、オレキシンを見つけた時は、そういうものに近いものを見つけたんじゃないか、最初ちょっと甘い考えを抱いてたことがあるんですよ。ところが、それは甘くて。例えば、早い話がナルコレプシーの患者さん。この居眠り病、ナルコレプシーの患者さんは、オレキシンが欠乏、ゼロなんですよね。オレキシンが欠乏してしまって。でも彼らは、睡眠・覚醒がすごく不安定なんですけど、24時間の総睡眠量は健常者とほとんど変わらないんですよ。
なるほど。
だから、さっき言ったカウントのメカニズムとかには、基本的な、根本的な異常はないんですよ。だから、オレキシンはそこには関与してないと言わざるを得ない。直接にはね。
また別だったってこと。
別だった。だから、その眠気なるものが何かっていうのがすごい深い謎で。僕らのラボ、僕らの研究室は、そこを何とか解明しようと。
もし分かったら、また研究の幅が広がるみたいなこと。
幅が広がるし、絶対、将来的にはそこから何か役に立つこと。それが何だか分からないですよ、アプリオリには。やってみないと分からないけど、絶対何か役に立つことにはつながります。ただ、それをまず解明したいっていうことですね、基礎研究のレベルでは。
なるほど。まだまだロマンがあるということですね。
そう。あと、オレキシンの発見によって、医薬ができたわけですね。まず12年前に最初のが出たんですけど、睡眠薬ができたわけですよ。この睡眠薬は、おっしゃったように依存性とか耐性とか反跳不眠とか、そういう嫌な性質がないんですね。これ、実は理由があって。
受容体、穴分子ですね。受容体が2種類あって、OX1R、OX2Rって2種類あるんですよ。2Rの方が睡眠を制御してる、覚醒を制御してる受容体。1Rの方が、どうも脳の中の報酬系って言われるんですけど、いわゆる薬物依存とかに関わってくる。依存症とか、快の座とかモチベーションとか言われますけど。ドーパミンっていう、これも脳内物質があるじゃないですか。あれが関わってくるところに効いていて。OX1Rが刺激されてないと、依存って起こらないんですよ。
なるほど。もともとの睡眠薬は結構依存があるって言われてたので。
オレキシン拮抗薬ね。今、臨床で使われてるオレキシン拮抗薬は、4剤、今日本でありますけど、全てがOX1RとOX2R、両方を抑える薬なんですよ。だから薬理学的に、原理的に依存が起こりにくいんです。
なるほど、そういうことなんだ。
そこから発展して、発展してというか、もう一つ大事なのは8月です。2026年の8月に、日本の武田が世界に先じてオレキシン作動薬を開発して、それが日米中国で承認されたんですよ、最終的に。もうすぐ薬価が決まって発売されるんですけど、これはすごくて。
要するに、さっき言ったように、ナルコレプシーの、特に1型ナルコレプシーって言われるんですけど、脱力発作っていうのを伴うようなナルコレプシーは、もうオレキシン欠乏症候群なんですよ。脳内のオレキシンがなくなってしまう。オレキシンを作る神経細胞が脱落しちゃうんですけど。それが原因なので、その病因を治す薬なんですね。ないものを補う。だから、これ画期的で。
これはもう、日本が誇るべき創薬の、本当に業績で。武田さんにとっては、18年ぶりの本当の内製の薬だって言ってましたけど。ずっと導入が続いてたので。これもすごく今、業界で少し過熱状態にあって。
今、GLP-1がすごいじゃないですか。要するに、最初は糖尿病の薬だったんだけど、ふたを開けてみたら抗肥満作用がある。これがもうすごいことになった。良くも悪くも、怪しげな、いわゆる適応外処方も多いとされていて、やばいわけですけど。それと同じようなことが将来起こるかもしれなくて。
実は、まず真面目に言うと、真面目にというか、いい方ではね。最初の適応は、1型ナルコレプシーっていうオレキシン欠乏症だけなんですよ。だけど近い将来、武田も、他の数社が今競争してますけど、他の種類の中枢性過眠症とか、眠い状態の治療薬として絶対使えるようになる。やがてはもしかしたら、さっき言った睡眠時無呼吸に伴う昼間の眠気にも使えるようになるかもしれない。
さらに言うと、例えばADHDとか、ある種のうつ病のサブタイプとか、そういう脳の精神神経疾患にも使えるようになる可能性がある。特に、例えばOX1、1型の受容体なんかは、そういうモチベーションとかにも関与してるし。今使われてるADHDの治療薬って、あれ覚醒薬なんですよね。メチルフェニデートとか、本当にメタンフェタミンの類とかですね。だから、それと同じでオレキシン作動薬も一種の覚醒方向の薬なんで、おそらくADHDは多分効くんですよ。
なるほど。
もしかしたら逆に、1Rを抑えることで依存症の治療もできるかもしれないので。眠くしないでね、OX2Rは触らないで。OX1Rだけを抑えると、もしかしたら依存症の治療もできる。かなり幅広い精神神経系の疾患に使えるようになる、将来、可能性があるんですよ。
すごい。
だから、業界が今、ハイプがすごくて。こないだ私、イギリスの経済誌で、エコノミストっていう有名な経済誌があるんですけど、あれのインタビューに応じて、私のコメントも載ってますけど。イーライリリーっていうメガファーマあるじゃないですか。あれ、本当にGLP-1で今大儲けしてる会社なんですけど。
あそこが最近、センテッサっていう小さいベンチャーで、オレキシン作動薬を作ってる会社で、まだクリニカルトライアルの途上の、まだまだこれからの化合物なんですけど、作ってる会社を買収したんですよ。「これからはこれだ」って。いくらだと思います?
買収ですか? でも、どんだけ。
桁違いなんじゃない?
約1兆円。
億じゃなくてですか? 億で考えてましたわ。兆。まだこれからってことですよね。
そう、まだ出てないんですよ、薬は。確かフェーズ2ですよ。まだ全然これからなのに。だから、それだけの将来的な見込みがなきゃ買わないじゃないですか。
やばい。
じゃあ、もう確信を持ってるってことですね、そこは。
そう。だから、オレキシンの創薬、今すごいことになってると思います。
経済的にも、じゃあすごい。そうなんですね。
ちなみに、オレキシン拮抗薬や作動薬がいくら売れても、私には1銭も入らない。
見つけたのに、もらえないんすか?
もらえないんです。
言った方がいいです。「ください」って言ったらくれるんじゃないですか?
くれるんだったら、いくらでも言いたいよね。武田さんにそう言いたいけど、個人的というよりも、研究に寄付していただきたいですけど。
さすが。
だけど、本当に僕らが持ってるのは標的特許なんですよね。もうそれも大昔なんで切れちゃってますけど。標的特許って1銭にもならないんですよ。
そうなんですか。
薬を作らないと。
なるほど。そこで初めて。
だから、要するに薬物標的っていうのは、もう我々に備わってるものだから、それは本当の意味の発明じゃないわけですよ。
見つけたっていうことだから。
発見だから。
それをどうするかみたいなことですね。確かにそうか。今年はかなり睡眠業界は、なかなか盛り上がってるというか。
今年、すごい当たり年で。6月に保険収載が、本当に、例えば在宅PSGが保険収載。それから、でかいのは、さっきおっしゃったCBT-I、不眠症のための認知行動療法が保険収載されて。それから、サスメドっていう会社の作ったアプリですね、認知行動アプリ。いわゆるデジタル処方っていうんですか、デジタル医薬として保険収載されたし。だから、相当当たり年ですよ。
それから何よりも、睡眠障害って名乗れるようになったんですよね。睡眠障害内科とか、睡眠障害耳鼻科とか。今年は本当に、いろいろな意味で当たり年。
いろんな人に、この睡眠の知識みたいなのが広まって。
だといいですね。
ぜひ、この動画、もう多分ここまで見てるということは、最後まで見てくださった方が多いと思うので。これをさらに、睡眠のルーティーンとして、もう内容は分かっていただいたんで、眠りの前に再生していただいて、眠くなっていただいて、ご覧いただきたいと思います。
というわけで、本日は柳沢正史先生、くさんとともに、睡眠について解説していただきました。お二人、ありがとうございました。
ありがとうございました。
楽待チャンネル、IRニュースコーナー。このコーナーでは、楽待チャンネルを運営する楽待株式会社の、投資家・株主の皆様向けの情報を1分でお伝えします。今回は、東証スタンダード市場に上場する楽待株式会社の2026年7月期通期の決算発表についてお知らせします。
売上は36億1700万円で、前期比14.5%増。営業利益は18億9900万円で23%増となり、通期の業績予想を売上・利益ともに上回りました。営業利益率は52.5%と高い水準を保ちながら、売上はこの5年で2倍になっています。
27年7月期は売上40億円と、5期連続の2桁成長を見込み、年間配当は13円から16円へ増配を予定しています。詳しくは、概要欄・コメント欄のIR情報のリンクからご覧ください。
まち、楽待、楽待、まち、楽待、楽待。
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