テスラで暮らすミニマリストしぶ ― 家を持たない生活は成り立つのか

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概要

YouTubeで「ミニマリストしぶ」として活動し、SNSの総フォロワー数が約55万人いるしぶさんは、昨年、生活の拠点を車に移した。本人はこれを「家がなくてもいいんじゃないかという実験」と呼んでいる。7月のある日、都内で待ち合わせた取材班がその1日に密着し、車内の私物、ミニマリストになった経緯、仕事の進め方、恋愛や家族についての考えを聞いた。

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「動く高級カプセルホテル」としてのテスラ

しぶさんが選んだ車はテスラで、価格は770万円だった。つなぎ目のないシームレスなデザインが好きで、「車界のミニマリスト」と呼ばれている車だと紹介する。後部座席を倒してシングルサイズのマットレスを敷き、そこを寝室にしている。横幅にも余裕がある。寝るときは前方のカーテンを閉め、外から見えないようにする。

しぶさんが強調するのは、電気自動車ならではの寝心地だ。アイドリング状態にならないので騒音がなく、寝たままエアコンをつけられる。取材時は半袖で過ごす夏場だったが、夜も涼しく眠れるという。しぶさんはこの車を「動く高級カプセルホテル」と呼んでいる。

車中泊を選んだ理由はコストだ。仕事で毎月東京に来ているが、ホテル代が高すぎて、カプセルホテルを使っていた時期もあった。それなら車を買って自分で寝た方がいいと考えた。昨年は仕事で飛び回ってホテルに140泊した。ホテル代は1泊1万〜1万5000円ほどかかっていたので、車で生活を始めて半年経った今、1泊1万円で計算しても180万円を節約できているとしぶさんは話す。

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ローンを組まないというポリシー

770万円のテスラは一括で購入した。しぶさんは借金をしない、ローンを組まないと決めている。ローンを組まないと買えないものは身の丈に合っていない、という考え方だ。このポリシーはスマートフォンにも適用していて、4年払いなどの分割購入が一般的になった今でも一括で買っているという。

車内に収まった全私物

普段の私物はすべて車の中にある。マットレスは朝起きたら普通のベッドメイクと同じように整えるだけで、出したままにしている。別に収納スペースがあり、冬用の毛布はそこにしまっている。

車内にはテーブルやライトがあり、前方には仕事用のパソコン、カメラ機材、ゲーム機を置いている。マットレスの下の一部はテスラ専用のジャストフィットする冷蔵庫になっていて、取材時の表示は6℃だった。中には納豆や卵、水などが入っていて、しぶさんは取材スタッフに水を差し出した。

服は車の前部の収納にまとめていて、ここをクローゼットとして使っている。今着ているTシャツの替え、長袖、パンツ、タオル、帽子、下着がそこに収まる。同じ場所にオリーブオイルや塩などの調味料も置いている。運転席で食事をすることが多く、運転席から手を伸ばせば届くからだという。常温保存できるものはここに置く。そのほかにある私物は撮影機材、携帯トイレ、わずかな日用品だけだ。

運転を始めると、しぶさんはテスラの機能を説明した。アクセルを踏んだ瞬間に、車がカメラで前方に障害物がないことを判断し、自動でドライブに切り替える。シフトレバーを操作しなくていいのがテスラの良いところだという。

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朝の過ごし方と「家がなくてもいい」実験

テスラ暮らしの1日は、車の外に出て散歩することから始まる。駐車するのは近くにトイレや水回りがある場所にしていて、軽く歩いて日光を浴び、トイレに行く。午前中は仕事に充てると決めていて、起きたら髪を軽く整えてZoomの打ち合わせやメールの返信をする。朝いちばんのエネルギーがあるうちに重い仕事を終わらせる。

車で暮らす理由について、しぶさんは「家がなくてもいいんじゃないか」という実験をしていると話す。いちいち家に戻って服を取りに行くのが面倒なので、車で生活してしまおうと考えたという。

散らかった実家から始まった、後天的なミニマリスト

もともとミニマリストの性格だったのか、途中で目覚めたのかという質問に、しぶさんは「目覚めたタイプ」と答えた。実家はゴミ屋敷のような状態で、自分の子ども部屋にもおもちゃやゲームがたくさんあった。むしろ散らかっている側の人間だったという。

きっかけは高校卒業後に来た。「クズな自分を変えたい」というのが最初の動機だったとしぶさんは振り返る。進学校に通い、周りは東大や医学部、早慶などに進んだが、しぶさんは2年間浪人したうえで大学に行かず、実家でフリーター生活をしていた。学年200人のうち、フリーターになったのは自分だけだった。成績が良くなかった同級生も短大に行くか就職していた。強い劣等感があり、周りに合わせる顔がないと感じていた。

そこで、せめて実家を出て一人暮らしをし、自立した大人になろうと考えた。ただ、フリーターの月収は10万円あるかないかだった。少ないお金で一人暮らしをする方法を考えて、物を減らせばいいと思いついた。一人暮らしを始めた当初は月6万円で生活し、家賃1万9000円の6畳1間に引っ越した。物が少なければそれでも十分に広い。月6万円なら少ない収入でも暮らせて、貯金もできる。

しぶさんは、当時のアルバイトは週3〜4日で、半分は休んでいたと話す。一人暮らしはしたいがフルタイムでは働きたくない、という「わがままな人間」だったので、それを実現するために生活コストを限界まで下げれば労働時間も下げられると考えた。そのころから、本当に大事なものだけを買うように意識が変わった。これが19歳のときで、ミニマリスト生活は11年になる。

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オートパーキングと充電の合間の仕事

取材班は、しぶさんが「空気が澄んでいる」と話す大山の駐車場に向かった。そこにテスラの充電器がある。駐車にはオートパーキング機能を使う。画面が空いている区画を認識し、ボタンを押すとハンドルが自動で回って車が動き、白線に対して均等な位置に止まった。充電は専用の充電器のプラグを車に差し込むだけで、あとは待つ。その間にカフェインレスのコーヒーを買い、テスラ専用のデスクをセットして仕事を始めた。

「物・お金・デジタル」をまとめて整えるコーチング

デスクワークの中心は、片付けサービスの利用者へのオンライン指導だ。利用者とLINEで1対1でつながり、質問に答えたり、物を減らしてインテリアを整えた部屋の報告に対して、さらに良くするための助言をしたりしている。取材中には、きれいに片付いた部屋の写真が届いていた。現在は約50人を同時に担当しているという。

しぶさんはこれを「お片付けコーチング」と呼ぶ。YouTubeでは家を訪問して片付ける企画を「モノ減らしコーチング」として配信していて、それをオンラインで行うものだと説明する。

ただし、教えているのは物を減らすことだけではない。しぶさんが提供しているのは、物・お金・デジタルの3つを整えるサービスだ。物が多く散らかっている人はお金遣いが荒かったり、スマホの中のデータが乱れていたりする。この3つはつながっていて、どれか1つだけがきれいな人はいないとしぶさんは考えている。支出を抑えて無駄遣いがない人はたいてい家もきれいで、家がひどく散らかっているのにお金が貯まっている人や、お金遣いが荒くない人は見たことがないという。そのため3つを同時に指導していて、お金の管理や、パソコン・スマホの写真データの整理が苦手な人も受講しているそうだ。

自分の価値観について、しぶさんは、勉強が得意ではなく、働くこともそれほど好きではなかったと話す。自分の内面と向き合った結果、物を減らして必要な労働時間を減らし、自分の時間がある方が幸せだという結論にたどり着いた。お金も大事だが、それ以上に自由な時間がどれだけあるかを、生きるうえで大事にしているという。

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10年来の友人が見たしぶさん

午後、しぶさんは自分のところで働いている友人の高橋さんを車で迎えに行き、ランチに向かった。車を買ってから、友人を送迎する機会がとても増えたという。高橋さんとは、しぶさんがYouTuberではなくブロガーだったころ、友人が集まるコミュニティサロンのオフ会で知り合った。フリーター時代の貧乏なころからの付き合いで、10年来の友人だ。現在はマーケティングを担当していて、しぶさんの公式LINEの運用やメッセージ配信を任されている。

恋愛事情も含めて全部知っているという高橋さんは、YouTubeで見るしぶさん、仕事で見るしぶさん、プライベートで見るしぶさんの間に人格の切り替えがないと話す。基本的に常識にとらわれず合理的に考え、やりたいことをひたすらやる。そのやり方が良い方向に転んでいる、というのが高橋さんの見方だ。

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恋愛・結婚とミニマリズムは両立するか

好きなタイプを聞かれると、しぶさんは、大前提として一緒にいて面白そうな人がいいと答えた。価値観が真逆でも、一緒にいて楽しそうならいい。結婚願望はないが、最近は一周回って、結婚しないとこの先の人生は暇そうだとも思い始めているという。

結婚や家族はミニマリズムとは対極にあるのでは、という問いに、しぶさんはその通りだと認めた。子どもができて家族が増えれば必要な物も増え、難易度は上がる。ただ、しぶさんが追求しているのは、そのときどきのライフステージに合わせた必要最低限だ。誰かと物の少なさを競っているわけではない。子どもができてベビーカーやたくさんのスタイが必要になっても、それは本当に必要か、もっと少なくできないかを考えるのが好きだという。実際に、子どもが5人いる7人家族の家を片付けたこともある。5人の子どもにどう部屋を割り振るか、小さい子のおもちゃをどこに置くかを考えるのはとても楽しかったと話す。

客観的に見て結婚できそうかと聞かれると、しぶさんは「絶対できない」と繰り返した。一方で高橋さんは、家も片付けて家事もするのだから、こんなに良い条件の人はいないと反論した。

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免許不要派が自動運転で車を持った

高橋さんは、ライフステージの話の延長として、しぶさんがもともと免許はいらないという考えだったことに触れた。しぶさんは1年半前まで運転免許を持っておらず、マイカーなどいらないと考えるタイプだった。考えが変わったのは自動運転の存在で、自動運転の時代なら持ってもいい、むしろ持った方が便利だと思い、すぐに教習所に行って2週間で取得したという。

夜、レインボーブリッジを走りながら、しぶさんはハンドルに手を添えているだけで動かしていないと説明した。カーブも車が自分で曲がる。手は添えておく必要があるが、この機能を使うと常に車線の真ん中を走るので安定する。福岡から東京まで片道14時間かかり、今年はすでに4往復しているが、その間もこの機能に任せていて、とても楽だという。

しぶさんは、ミニマリストが物を持たずに暮らせるのはテクノロジーの発展によるところが大きいと話す。テスラを買ったのは自動運転を使いたかったからで、寝ている間に車が運転してくれて、朝起きたら好きな場所に着いている。そんな未来が来たらいいと思って買ったという。

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車で見直した東京

東京にいるときは、有明周辺で寝泊まりすることが多い。この日は偶然、車から花火が見えた。しぶさんは「最高の花火」だと喜び、これが車生活の醍醐味だと話した。

しぶさんは、もともと東京という街があまり好きではなかったという。しかし車で移動するようになり、電車に乗らなくていいならこんなに快適なのかと感じて、東京にいる時間が増えた。ドライブ中に見える夜景もきれいで、車を持って東京の印象が変わったと話す。こうして1日を終えたしぶさんは、「今から寝ます」と言って車内で眠りについた。家を持たずにどこまで暮らせるかという実験は、まだ続いている。