大栗博司が語る「基本法則のラスボス」:量子力学と重力の統合は西暦4275年か
PLAYERS公式理論物理学者の大栗博司が、経済学者の成田悠輔を相手に、ホワイトボードを使って物理学の「統合」の歴史をたどった対談である。中心の問いは、量子力学と重力を一つの理論にまとめると何が分かるのか、そしてそれはいつ実現しそうなのかというものだ。大栗は超弦理論(番組中では「弦理論」)をその唯一の候補と位置づけつつ、完成と検証には気の遠くなる時間がかかるという見積もりを半ば冗談めかして示した。後半では、時間と空間の不確定性、「すべてのものは波である」という量子力学の考え方、そして人間の言葉や感覚で自然を理解することの限界へと話が広がった。
400年の物理学は「統合」の歴史である
大栗はまず、統合理論の意義を歴史から説明した。ガリレオやニュートンの時代から約400年続く現代物理学の進歩の一つのあり方は、別々の現象を説明していた基本法則が次第に統合されていく過程だという。
最初の例は万有引力である。コペルニクスやケプラーは惑星と太陽の間に重力がどう働くかを探求し、一方でガリレオやニュートンは物がどう運動するかの法則を追った。ニュートンはこれらを統合して万有引力の法則をつくった。大栗が重要だと強調するのは、地球上でリンゴが落ちることと、月が地球の周りを回ることが、同じ一つの法則で説明できた点である。
それ以前、少なくとも西洋では、天と地の法則は別物だと考えられていた。アリストテレスは天界が「第5の物質」でできていて別の法則が支配していると考えた。神様の世界だからである。ところがガリレオが望遠鏡で月の表面を見ると、地球と同じように山や谷があった。こうして天体の世界も地上と同じ法則に支配されているのではないかと分かってきた。それまでは地球のことをいくら研究しても宇宙のことは分からないと思われていたが、統合によって人間が理解できる範囲が一挙に広がった、と大栗は述べる。
マクスウェルから一般相対性理論へ
次の段階として大栗は19世紀の電気と磁気を挙げた。磁気は紀元前から知られており、中国では羅針盤のようなものも作られていた。電気の理解はそれより新しい。この二つが一つの理論で説明できることを19世紀後半に示したのがマクスウェルで、その帰結として電磁波も見つかった。
しかし、ニュートンの運動の理論とマクスウェルの電磁場の理論は矛盾していた。これを解消したのがアインシュタインの特殊相対性理論である。ところが今度は特殊相対性理論が重力と矛盾し、それを統合したのが一般相対性理論(1915年)だった。大栗はこの段階で「古典物理学」が完成したと言われていると説明する。19世紀の物理学者ケルビンは、これで物理学でやることはなくなったと言ったほどで、日常生活で出会う現象の性質はこの範囲でおおむね説明できるという。
ホワイトボードでは「重力」「運動」「電磁場」「特殊相対性」「一般相対性」と枝分かれした図が描かれたが、漢字が書けないと2人で笑い合う場面も挟まれた。
量子力学の誕生と、場の量子論・標準模型までの時間
19世紀後半になると、強い電磁現象や原子の内部構造が分かるようになり、自然界に量子の世界があることが明らかになった。量子力学の成立はおおむね1925年から27年で、大栗によれば、ドイツ人は1925年、オーストリア人は1926年を挙げることが多いという。今年はユネスコが定めた量子の年で、ちょうど100周年にあたる。
特殊相対性理論と量子力学の統合はすぐにできた。それが場の量子論で、最初のものは1929年、つまり2年ほどで生まれた。ところが、場の量子論が実際の素粒子の世界を説明できるようになるまでには約50年かかった。1970年代半ば、1975年ごろに素粒子の標準模型ができ、現在実験で観測できる素粒子の世界をすべて説明できるようになった。さらにその検証には約40年を要し、ヒッグス粒子の発見とノーベル賞によって完成したと言われている。
では、なぜ50年もかかったのか。大栗は理由を二つ挙げた。一つは、最初に作られた場の量子論が当時の数学ではうまく扱えない理論だったことで、それを使えるものにするまでに20年かかった。これが朝永振一郎、ファインマン、シュウィンガーによる「繰り込み」である。もう一つは実験の側で、第二次世界大戦直後から世界各地で粒子加速器が作られ、素粒子を高いエネルギーで衝突させることで未知の現象が次々と見つかった。それを場の量子論で説明するのにさらに30年かかった。理論の整備、実験、新現象の発見を経て50年、というのが大栗の整理である。
量子と重力の統合は「25倍難しい」――西暦4275年という見積もり
残るのは、量子の世界と一般相対性理論の重力の統合で、これはまだできていない。大栗は、物理学者は何でも定量化したがるという話を受けて、この統合の難しさを見積もってみせた。
量子力学と特殊相対性理論の統合(場の量子論)は約2年でできた。一方、量子力学と一般相対性理論を統合する候補である弦理論が重力を含むと分かったのは1974年で、量子力学の誕生からおよそ50年かかっている。50年を2年で割って、25倍難しいと評価できるというのである。
この倍率を先の歴史に当てはめると、場の量子論から標準模型まで50年かかったので、弦理論から「標準模型のようなもの」に至るには約1250年かかる。ヒッグス粒子のように実験で検証されるまで40年かかったので、これも25倍して約1000年。合わせて約2250年となる。現在の2025年に足すと4275年で、計算には成田も加わり「ホワイトボードに貢献した」と冗談を言った。大栗は、古代ギリシャの人々が原子論を考えていた頃から現在までくらいの時間だとたとえ、そのくらいまで長生きして達成したい、もう少し早くやりたい、と笑いながら語った。
何が足りないのかという問いに、大栗は、人類がまだ自然のことを実験・観測的に十分知らないことを挙げた。さらに数学の問題もある。場の量子論ですら、数学的にはまだ完成していない。21世紀の初めにクレイ研究所が7つのミレニアム問題を出し、そのうち1つはすでに解かれたが、その中に場の量子論の数学をきちんと作れという問題が含まれている。物理学者はこの理論で計算ができるが、数学者はまだちゃんとした理論だと見なしていない。弦理論の数学はそれよりはるかに難しく、少なくとも繰り込み理論に相当する段階まで作るだけでも、25倍として約500年かかると大栗は見積もる。
統合が完成すると何が分かるのか
4275年に統合ができたとして何が分かるのか。成田の問いに大栗は、過去400年の自然理解の歴史がそこである程度完成すると考えられている、と答えた。現段階では、それより深い理論は考えられないという。大栗はこれを「基本法則のラスボス」と呼んでいる。
反証可能性がないという「問題」
大栗によれば、今のところ弦理論と矛盾するデータや観測、実験はない。しかし「ないのが問題」だという。科学としては、矛盾するかもしれない実験や観測の可能性があり、やってみたら間違っていなかった、という形が望ましい。弦理論はまだ開発途上で、そこから予言できることは直ちに実験で検証できるものではない。初期宇宙には高温・高密度の状態があったので、そうした状況での観測の可能性はあるが、「こういう結果が出たら理論は棄却される」と言える段階にはまだない。大栗はこれを望ましい状況ではないと認めつつ、今は反証可能ではないが、いずれ反証可能になると考えていると述べた。
成田はさらに、反証可能ではないが現実と矛盾しない理論が複数あったとき、どれを使うべきかという判断はどこから来るのかと尋ねた。大栗の答えは、量子力学の枠組みに従い、しかも縦・横・高さのある3次元空間の重力現象を再現する理論は、現在のところ弦理論しかない、というものだった。重力と量子力学を両方含む数学的な理論は作ること自体が極めて難しく、それを示すのに50年かかった。
大栗は、物理学が進むほど理論の可能性は狭まっていくと説明する。知っていることが増えるほど、基本法則が満たすべき条件も増え、それをすべてクリアする理論を作るのは至難の業になる。たとえば量子力学と特殊相対性理論を統合する理論は、数学的な整合性から場の量子論しかないと言える。同様に、過去50年、重力と量子力学を含み3次元空間を説明する理論は弦理論以外に見つかっていない。大栗自身も30年ほど前にループ量子重力など他の理論を研究したことがあるが、理論の内部に矛盾があり、弦理論ほど満足のいくものではなかったという。
場面ごとに理論を切り替えればよいのではないか
成田は「雑な素人意見」として、重力には一般相対性理論、それ以外には場の量子論を使い、両者をスイッチのように切り替えるアドホックな理論は作れないのかと問うた。
大栗は、物理学には階層構造があり、特定の現象では他の部分を忘れてよいと答えた。地球上の現象のほとんどは今もニュートンの理論で説明できるし、量子力学だけ、重力だけを考えればよい現象も多い。しかし、宇宙の始まりや、物質が小さな領域に集まって重力が強くなりすぎるブラックホールのような現象では、両方を扱わないと分からない。天の川銀河の中心には太陽の約100万倍の重さのブラックホールがあることが発見され、数年前にノーベル賞の対象になったが、その量子力学的な性質は両方の理論がないと分からない、と大栗は述べた。
統合は未知の現象を見せる――電磁波と光の例
大栗は、統合が起きると世界観が広がり、これまで知られていなかった現象が見えてくると主張し、電気と磁気の例を挙げた。マクスウェルの方程式を解くと、電場と磁場が交互に変化しながら伝わる波が数学的に予言された。その速さを計算すると光の速さと同じで、光は電場と磁場の波であることが分かった。光の理論が別にあるのではなく、電磁現象に含まれていたのである。
さらにヘルツがさまざまな電磁波を作ってみせ、マルコーニらによる電磁波通信が可能になった。現在スマートフォンで日常的に会話できるのもマクスウェルのおかげだと大栗は言う。成田が「光はさまざまな電磁波の中で一番速いのか」と尋ねると、大栗は、マクスウェルの理論の範囲ではすべての電磁波は同じ速さで伝わり、光は目で観測できる特定の波長のものだと説明した。統合によって、光しか知らなかった状態から、X線、ガンマ線、赤外線まで説明できるようになった。同じように重力と量子力学を統合すれば、宇宙の始まりやブラックホール以外にも、これまで気づかなかった自然現象が理解できるようになるだろう、と大栗は見込んでいる。
時間と空間は不確定になる
後半、成田は日常感覚に沿って時間軸の質問を投げた。私たちは昨日、今日、明日と時間が流れているように感じる。では宇宙に始まりと終わりはあるのか、始まりより前や終わりより後は意味をなすのか。
大栗はまず、私たちが普通に理解している時間は古典物理学の時間だと説明した。ニュートンの運動方程式では、ある時刻での物質の運動(初期条件)がすべて分かれば、将来も過去も予言できる。その世界の発展を表すパラメーターを時間と呼んでいる。マクスウェルの理論も、アインシュタインの一般相対性理論も基本的には同じで、空間や時間の様子も含めて方程式を解くことで時間発展が決まる。
しかし、この描像が宇宙の始まりなどで成り立つかは明らかではない。量子力学には不確定性原理があり、観測される量の値が正確に決まっているとは限らず、異なる量を同時に測れないこともある。アインシュタインの重力理論では、「今何時か」「今どこにいるか」といった時間や空間そのものも観測量として扱われる。そこに量子力学を加えると、時間や空間も不確定になり、ある尺度より先では精密に測れなくなる、と大栗は述べた。
ミクロへ向かう階層と加速器の原理
その説明の準備として、大栗は物質の階層を描いた。物質は原子でできていて、原子核の周りを電子が回っている。原子核は陽子と中性子からなり、陽子や中性子の中にはクォークが3つある。これが標準模型の世界である。小さな世界へ行くほど基本的な理論が分かり、そこから上の階層の性質を導ける。大栗が訪問している理化学研究所では、スーパーコンピューター「富岳」にクォークの理論を入れ、陽子や中性子の間の力を導く研究も行われているという。素粒子物理学、原子核物理学、原子物理学と階層をなしており、先へ進めばより深い理論が分かるはずだと考えられてきた。しかし重力と量子力学を統合すると、時間や空間が不確定になり、ある先は分からなくなる世界がある、と大栗は話を戻そうとした。
陽子の中にクォークがあることを見つけた方法の一つが粒子加速器である。プラスの電荷を持つ陽子を、リニアモーターのように電場で加速して衝突させ、高いエネルギーの領域を作る。量子力学では、すべてのものは波であり、エネルギーが高いほど波長が短く、波長が短いほど小さな世界が見える。電子顕微鏡が光学顕微鏡より小さなものを見られるのも、電子を速く加速して波長を短くしているからで、それを極端にしたのが加速器だと大栗は説明した。
「すべては波」と「波動」という言葉
「すべてのものは波」と聞いた成田は、オカルト系の人も言いそうだと反応した。大栗は、それこそが量子力学の最も基本的な考え方だと応じ、1925年にハイゼンベルクが最初の量子力学を作ったがとても難解で、1926年にシュレーディンガーがすべての粒子を波と考え、その振る舞いを方程式にした波動力学を作ったと説明した。
成田は、科学的な裏付けのある「波動」と、気分やムードで使われる「波動」が並存しているのが面白いと言う。大栗はその分野には詳しくないと断ったうえで、波には遠く離れたものにも影響を及ぼすという遠隔的な印象があるからではないかと推測した。磁石が子供に不思議に感じられるのも、離れていても力が働く遠隔力だからである。少なくとも西洋の科学では、離れていても力が及ぶことはオカルト的だと考えられていた。マクスウェルの電磁場の理論によって、空間に満ちた場が力を伝えるという考え方への抵抗がなくなり、それを粒子にまで広げたのがシュレーディンガーだった、と大栗は述べる。ここで大栗は、力とは物質の状態を変えるもののことで、それが場によって伝わるというのが重力や電磁場の理論であり、それを物質の側にも広げたのが量子力学だと補足した。
人間の感覚と言葉の限界、数学という言語
成田は、目で見たり体で触れたりできない作用による変化を人間は「変だ」と感じがちだが、その区別に物理的な意味はあるのかと問うた。大栗は、物理的に意味のある区別ではないと答えた。変だと感じるかどうかは慣れ親しんでいるかどうかであり、人間の言葉や感覚は非常に限られた経験に基づいている。人間の脳は地球上の数km程度の環境で生き残るために進化してきたので、ミクロの世界や何億光年も先の宇宙を理解しようとすれば、そこで起きる現象が感覚とずれるのは仕方がない、というのが大栗の見方である。
そのうえで大栗は、遠隔力は日常でも起きていると指摘した。大栗が成田の顔を見ているのは、光が成田の顔に当たって大栗に届いているからで、声が聞こえるのも空気の振動が鼓膜に伝わるからで、ある意味で遠隔力とも言える。
成田が、そうした日常感覚に縛られた人間がこうした問題を考えようとしていること自体が涙ぐましいと言うと、大栗は、それができるのはすごく不思議なことで、一つには数学があるからだと答えた。この日のテーマは「本当のことを教える」ことだったが、限界があるのは日本語で説明しようとしているからだという。日本語のような自然言語は、人類が数kmの世界を説明するために発展させてきた言葉なので、こうした世界を説明するには限界がある。数学はあらかじめ対象を仮定せずにできている言語なので適用範囲が広く、それを手に入れたことで人類はこうした世界を理解できるようになった、と大栗は述べた。成田はこれを、生活のための包丁でとてつもなく小さいものや大きなものを調理しようとしているようなものだとたとえ、大栗も日本語で説明する限りはそういうところがあると同意した。
残された問い
対談の終盤、成田は「解けるかどうかも分からない問題をやって何になるのか」「この宇宙の最先端を人類に伝えるにはどうしたらいいのか」と問いかけた。大栗は研究を人間の知のフロンティアと位置づけかけたが、字幕はその答えの途中で途切れており、動画内では結論まで示されていない。宇宙の始まりと終わり、その前後に意味はあるのかという成田の最初の問いも、時間と空間が不確定になるという説明の入り口まで進んだところで、明確な答えには至らなかった。
[音楽]
その理論が統合できると何が分かる?あるいは何が理解できる?
だからそれは、現在僕らが理解している自然界の基本法則の全てを1つの数学的な体系で説明しようということで、実は現代の物理学っていうのは400年ぐらい前、ガリレオとかニュートンの時代から始まったんですけれども、それから現在までの物理学の進歩の1つのあり方として、これまで違う現象を説明するためにあったいろんな基本法則がだんだんに統合されてくるっていう、そういうプロセスがあるんですよね。例えば先ほどコペルニクスっていう名前出てきましたけど、ケプラーとかコペルニクスが重力の基本法則っていうものを探求してきた。
惑星の運動から、惑星とか太陽の間にどういう風に重力が働いてるかっていうのを探求してきたんですけれども、それと一方でニュートンが運動の理論を作ったんですね。ガリレオとかニュートンが。ガリレオが例えばピサの斜塔から物を落としたとかあるじゃないですか。それで物事はどういう風に運動してるかっていうのの法則で、これをニュートンは統合して万有引力の法則というものを作った。しかも彼の万有引力の法則の1つの重要なことは、地球上でリンゴが落ちる法則っていうのは重力の理論、ニュートンの理論で説明できるんですけども、月が地球の周りを回ってるっていうのもニュートンの重力法則で説明できると。
だから、地球の上の法則と天体の法則が実は1つの法則で説明できるっていうことも重要だったんですよね。それまでは実は——つまり夜空で起きてることと目の前で起きてることが両方説明できる。それまでは実は宇宙の法則と地球の法則っていうのは同じではないと思われてたんですよね。少なくとも西洋の世界では、例えばアリストテレスなんかは天界は第5の物質でできていて、違う法則が支配してると。神様の世界ですからね。
それが実は、ガリレオが例えば望遠鏡で、天体望遠鏡で初めて月の表面を見て、なんか地球と同じような形してるじゃないかと。谷があったり山があったりと。それでだんだんに実は天体の世界も地球の上の世界と同じ法則に支配されているんじゃないかっていうことが分かってきたんですね。
これは非常に重要なことで、そうすると実はそれまではね、地球の上の法則をいくら理解しても宇宙のことは分からないと思ってたわけですけれども、これがもしかしたら分かるかもしれない。ニュートンの法則っていうのはまさしく、万有引力っていうのはまさしくそれを、だからしたような感じなわけですよね。だからニュートンの法則によって月の運動も惑星の運動も説明できる。
全く違う法則で動く全く違う世界だと思ってたものが実は1つの理論。
それはだから人間が宇宙、世界を理解する範囲を広げたんですよね。だからそれまでは地球のことをいくら研究しても宇宙のことはわかんないと思ってたわけだけども、一挙に宇宙のことも同時に分かるようになった。それが1つですね。
それから19世紀になると、電気とか磁気の性質がよく分かるようになってきて、それが実は1つの理論で説明できるっていうのをマクスウェルっていう人が19世紀の後半に示して見せたんですね。それの帰結として電磁波も見つかったりなんかして、電場と磁場も統合された。実はこのニュートンの運動の理論とマクスウェルの重力、あの、電磁場の理論っていうのは矛盾してたんですよ。
その矛盾を解消したのがアインシュタインの特殊相対性理論っていうものなんですね。それで今度は電磁気の理論と運動の理論が統合された。今度はそれがしかし重力とは矛盾していた。それを統合したのが一般相対性理論というものです。
なんかどんどん出てきたので、枝分かれしてきました。枝分かれしてきたので、ちょっと時間かかりますよね、これね。
なんかね、今日の番組のポイントはいかにホワイトボードが非行…すいません。これを作ってる会社の人に申し訳ないんですけど、
ちょっとどっかにメーカーの名前が
あ、すいません。そう、そう。言わないで。で、こう運動とそれから重力っていうのがあるじゃないですか。運動と重力。これがこう、万有引力と…だんだん漢字が書けないことが明らかになる。
英語でも大丈夫です。
こういう風に、これ、リンゴと星って感じで。そうです。
そう、そう。それでここに電場と磁場とこうあるわけですよね。これがマクスウェルによって電磁場と。で、この運動と電磁場が特殊相対性理論。あ、「殊」って書けない。
殊、これ殊…
どんどん漢字が書けなくなります。いや、僕も書けないです。
特殊相対性。
それでこれが一般相対性。一般は書ける。こうですよね。
こういう風に、様々な違う…だから重力現象だけを説明していた理論が運動の理論と統合された。電気の理論と磁気の理論が電磁場に。磁気なんていうのはもう紀元前から知ってたんですよね。中国人がなんか羅針盤とか作ったりなんかしてね。電気の方は割と最近、最近というか数百年前に理解されてきたんですけども、これは電磁場になって、特殊相対論までで実はいわゆる古典物理学の世界が完成されたと言われてる。だからこれが1番偉いんですよね。この理論が古典的な物理学を全部統合したと。
これで実はだから——古典っていうのはどういう意味で古典?
古典っていうのは、これはどんなところででも言えるんですけれども、古典っていうのは現代との対比ですよね。だから現代っていうのを説明しないと古典が説明できないんですけども、あることが起きる以前の物理学の世界。例えばケルビンなんていう19世紀の偉い物理学者がいたんですけども、これで物理学でやることが全部なくなったという風に言ったりなんかしてたんです。この範囲で日常生活で直面するようなものの性質は大体説明できるんですね。
ただ19世紀の後半になって、もっと、例えば、ここにはないかな。蛍光灯なんかが…蛍光は…例えばすごい強い力の電磁現象とかが分かるようになったとか、あと原子の中の仕組みが分かるようになってきてですね。それで実は自然界に量子の世界っていうのがあるっていうことが分かってきた。一般相対論なんて1915年なんですけど、これが1925年から27年ぐらいですね。今年は実はユネスコの量子の年と言われる、
あ、100周年です。
100周年。100周年なんですよね、実はね。これが量子の世界っていうのがあってですね。量子力学って書いてあるんです。量子。子、量子ですね。なんかいちいちすいません。
え、1925年が量子力学生誕の年という感じですか?
まあ、ちょっとこの辺はね、幅があるんですけど、大体25から27。ドイツ人だと25って言うし、オーストリア人だと26って言ったりするんですけれども、それで、この特殊相対性理論と量子力学の統合っていうのはすぐにできたんですよね。これが場の量子論っていうやつで、1番最初にできたのが1929年だから、2年ぐらいでパッとすぐできたんですよ。
で、実はこれがですね、しかし僕らの自然界で素粒子の世界とかを説明するようになるのに50年ぐらいかかったんですよね。それが1970年代の半ばになってようやく素粒子の標準理論っていうのができてですね。それが現在実験で観測できる素粒子の世界を全て説明できると。だからこれが進化して、その標準模型というものができたんですね。これが大体1975年かな。75年ぐらい。こう50年ぐらいかかってできた。
模型っていうのは何なんですかね。
いろんなバージョンがあって、そこの中に素粒子の理論に使えるバージョンができて、それでモデルと言っているわけで、これが実は検証されるのにさらに40年か、ヒッグス粒子っていうものが発見されて、これで——これはノーベル賞を取って——これで完成したと言われてるんですね。
で、こっちはですね、
え、そうするとものすごく相性が悪いのはその量子の世界と重力の世界ってこと?
だから重力の世界はここの一般相対論の方に来てるわけですけども、こいつとこいつの統合はまだできてないんですよね。これはものすごく難しくって。
どのくらい難しいか、先ほど物理学者って定量化するのが好きだっていう話。これを合わせるのは、ここの統合の25倍ぐらい難しいという風に、エスティメートすることができるんですね。
25倍ってなんで、
25倍って言うかっていうことですね。そうすると、ここのところはあるから、これとこれをどう統合するかっていうことですけども、この場の量子論に対応する候補——この量子と一般相対論を統合する候補として、弦理論っていうのがあるんですけども、この弦理論っていうのが重力を含んでるってのが分かったのが1974年なんですね。
はあ。で、てことはこの量子力学ができて大体これが50年。だからこれ2年ね。50年ということで25倍ぐらい難しいと
なるほど。
いう風に評価される。そうするとですね、宇宙のことが説明できるようになるためには、標準模型みたいなのを作る必要があるわけですよね。ですから、ここに50年かかってるから、多分その次の段階に行くのに1250年ぐらいかかると思うんですよね。その後、ヒッグス粒子みたいに実際に実験的に検証されるのに、多分これ40年だから25倍して1000年ぐらいかかるでしょ。だから多分この統合が完成して、それが実際に検証されるのは多分2250年ぐらいかかるかなという風に思っています。
なるほど。多分だから今から…西暦から…今から、古代ギリシャの人たちが原子とか原子論とか考えていた頃から今までぐらいかなと。
え、これに足りてないものは何なんでしょう?
これに足りてないものっていうのは、僕らがまだ自然のことをそこまで実験・観測的に知らないっていうことがあるんですね。ここもこれ50年かかったでしょ。これなんで50年かかったかって言うと、そもそも2つ理由があって、1つはこの場の量子論っていうのを作って見せたんですけども、これが当時の数学では説明的な理論だったんですよね。それを何とか辻褄を合わせるのにまず20年かかった。これが有名な朝永振一郎とかファインマンとかシュウィンガーの繰り込みっていうやつで、それをやるのに20年か。その後、それが第二次世界大戦直後なんですけども、その頃に世界各地で粒子の加速器っていうのが作られることになって、素粒子をすごい速い、高いエネルギーで加速してぶつけて何が起こるか。それでこれまで知らなかった事象が次々に分かるようになって、それを何とか場の量子論で説明するのが30年ですから、理論が整備されて実験ができて新しい事象が見つかるのに50年かかったということなんですよね。
で、その今これを統合しよう、量子の世界と一般相対性理論を統合しようとしてる弦理論の数学っていうのはさらに…実はこの場の量子論の数学っていうのですら、ここですらまだ数学的には完成されてなくって、これ実は21世紀の初めにクレイ数学研究所っていうのがミレニアム問題っていうのを出して、全部で7つあるんですけど、そのうちの1つは解かれちゃったんですけれども、その数学の未解決問題、その中にこの場の量子論の数学をちゃんと作れっていうのがあるんですよね。数学の人たちはまだこれちゃんとした理論じゃないと思ってるわけ。物理の人は一応これ使っていろんな計算できるんですけど、ですからこれすらまだ実は数学的に完成してないんですね。でもこっちはもっと難しい数学なので、今数学をちゃんと、少なくともこれの繰り込み理論ぐらいまでは作ってですね。でもこれ25倍ですから、それだけでも多分500年ぐらいかかるという風に思うわけですけれども、
今2025年ですよね。そこに2250年を
そうそうそう。だから
4000…4275年。
そうそう。そのくらいまで長生きして達成したいなという風に思っています。
僕もちょっと一丁噛みしてこのホワイトボードに貢献したぞという感じ。4275年。これで目標ですね。でもこの4275年になると、希望的観測としては今と比べて何が分かってることになるんですか?
だから量子力学と重力の統合ができて、これは実は1つは少なくとも、これまでの人類の、過去400年の自然の理解の歴史っていうものが、ここで一応ある程度完成できるという風に思われてる。これよりもさらに深い理論っていうのは、今の段階では考えられないという。僕は基本法則のラスボスって言ってるんですけれども、という風に思います。それはなぜかっていうのをちょっと説明しましょうか。いいですか?
え、ちなみに今のところ弦理論と矛盾するデータとか観測とか実験というのはないんですか?
ないんですけれども、そのないのが問題なんですね。というのはやっぱり科学っていうのは、矛盾するかもしれないような実験・観測の可能性があって、やってみたら間違ってなかったっていうのが望ましい。弦理論の場合には、まだ理論も開発途上だし、今その開発途上の理論で予言できることというと、直ちに実験で検証できることではないんですよね。ですので、ただ初期宇宙には先ほど申しましたように高温高密の状態があったので、そういう状況での観測の可能性ってのはあるんですけれども、今直接その実験観測と対峙するようなことはないんですね。ですから、つまりこれが観測できたり、この実験をやってこれが出たら間違いだってことが言える、そこにはなってないんですね。だからそこが実は問題で、科学としてはやはり検証可能性って言うんですけれども、こういうことをしたらこの理論が棄却されますよっていうことを予言したいもんだという風に。ただ理論がまだそこまでできてないので、まだそういう状況にはないんですね。それは望ましい状況ではないです。
なるほど。でもそのやっぱ反証可能じゃないかもしれない理論——
いや、今は反証可能ではないけれども反証可能になると思います。思われてる。
ですね。いや、つまりちょっと思ったのは、反証可能でないが現実と無矛盾な理論があった時に、それに意味があるかないかとか、
ああ、はいはい。
様々な理論の中でこれを使うべきだっていう判断はどこから来るんだろうなってのがちょっと。
それは1つはですね、現在のところ量子力学の枠組に従っていて、しかも僕らの3次元の空間の中の重力現象を再現する理論っていうのは弦理論しかないんですよ。そもそも重力の理論と量子力学を含むような数学的な理論っていうのはものすごく作るのが難しい。それを作ってみせるのに50年かかったんですよね。ですから、現在僕らが知っている理論でそれができるのは弦理論しかないんですね。
過去の物理学の進歩を見ていっても、これだんだんだんだんに収束してきてるわけですけど、先の方に行けば行くほど理論的な可能性っていうのはどんどん狭まってくるんですよね。やはり知ってることが増えてくるわけなので、僕らが知ってることを全部説明しないといけないわけです。基本法則なので。そうすると、その基本法則の満たすべき条件っていうのがものすごく増えてくるわけです。それを全部クリアしてる理論を作って見せるというのはだんだんに至難の業になってきてですね。ですから例えば量子力学と一般、あの、量子力学と特殊相対性理論を統合する理論っていうのは場の量子論しかないんですよね。だからこの2つの理論の数学的整合性からもうこれしかないって言えちゃう。
同じように、今のところ、少なくとも過去50年の間ね、重力の理論と量子力学を両方含むような、しかも僕らの住んでるこの縦横高さのちゃんとあるような空間を説明するような理論っていうのは弦理論しかないんですよ。ですから、その弦理論はまだこれから検証可能になるから、じゃあまだ科学の理論としては不満足なので、他にないかっていうことはあって、僕自身も実は30年ぐらい前には他の理論の可能性、量子重力とかですね。いや、ループ量子重力かな。いろんな他の理論も研究したことあるんですけども、弦理論のように満足のいく理論ではないですね。色々矛盾、理論の中自身の矛盾があってですね。そういう数学的に矛盾がなくって、僕らが知っているこれらの事実を全て説明する理論っていうのは弦理論しかない。
雑な素人意見としては、例えば重力というものについては一般相対性理論、それ以外の現象については場の量子論を使いましょうって言って、この2つの間をスイッチオンオフするみたいな謎のアドホックな理論を考えることはできるんですか?
ああ、えっとですね、物理学の世界っていうのは階層構造みたいなのがあってですね。ある特定の現象については他の部分を忘れてしまって、例えば今でもですね、地球上の現象のほとんどはニュートンの理論で説明できるわけだし、例えば電磁気の理論の現象なんかでも特殊な状況を考えなければ、こういうものを考えなくても良いわけですよね。
ですから、量子力学だけ考えてればいいような現象もあるし、重力の理論だけ考えてればいいような現象も数多くあります。でも、しかしですね、例えば宇宙の始まりがどうなっていたかとかですね、例えばブラックホールっていう現象があるんですけど、物質が非常に小さな領域に集まってくると重力が強くなりすぎて、非常にいろんな不思議な現象が起こる。僕らの天の川銀河の中心にも太陽の100万倍ぐらいの重さを持つブラックホールがあるっていうことが発見されて、数年前にノーベル賞の対象になったんですけども、そういうものの量子力学的な性質っていうのは例えば両方やらないとわからない。
ああ、なるほど。
ということがあってですね。ですから、全ての自然現象に両方いるわけじゃないですけれども、両方を統合した理論がないと説明できないような現象もあると。
これまでの物理学の進歩の仕方からすると、大体こういう統合が起きると、より世界観が広がるというかですね、より広い世界のことが分かるようになって、これまで知らなかった物理現象が見えてくるってことがあるんですよね。
例えば電気と磁気の統合によって電磁場ってのができて、それから電磁波っていう、電場と磁場が交互に馬跳びみたいに変化しながら移り合っていくっていう波が見つかった。波が数学的に予言されたんですね。実はその波の伝わる速さっていうのが光の速さと同じだということが分かって、これは実は光っていうのは電場と磁場の波の一種だってことが分かったんですね。それが…
あ、よろしいですか?ちょっと行く前になんか首をかしげられたので。
はい。えっと、つまり電気と磁気と光っていうのは
だから光っていうのは実は電磁現象である。こう光ってますよね。これは実は光の理論っていうのが別にあるわけじゃなく、ここに光っていうのが別にあるわけじゃなくって、これは実は電気や磁気の現象に含まれているというわけ。実際このマクスウェルの電気や磁気を統合する電磁場の方程式を解くと、方程式の解として波が現れる。これ電磁波って言うんですけど、電磁波の伝わる速さが光の速さと同じだったんですね。計算してみたら。でも電磁波の中で目に見える電磁波っていうのは可視光の波長を持ってるもので、他の電磁波もあるんですよね。それでヘルツっていう人がいろんな電磁波を作ってみせて、それでマルコーニなんかによる電磁波通信っていうのができるようになった。だから実はマルコーニなんかが…現在僕らはiPhoneとかスマホを使ってですね、日常的に会話ができるわけですけども、そういう電磁波による通信ができるようになったっていうのはマクスウェルのおかげなんですよね。
様々にある電磁波の中で光というのが1番早く伝わるものなんですか?
いや、波長が目で観測できるものが光ですよね。マクスウェルの理論の範囲では、全ての電磁波は同じ速さで伝わる。
あ、そうなんですね。
ええ、伝わるんですけれども、その中で波長がある特定のものが光として観測されるということです。だから光っていうのは電磁波の特別な形態ということで、そんな風にしてですね、これまで光しか知らなかったことが、もっと広い…だからX線からガンマ線、可視光、赤外線、全部これで説明できるわけですよね。そういう風に世界が広がるということなので、例えば別々に重力とか量子力学を考えてるより、これを統合した理論を考えると、さっき宇宙の始まりとかブラックホールとか言いましたけれども、それ以外にもおそらく自然界の現象の中で僕らの知らない、これまで気がついてなかったようなものがたくさんあって、これが初めて統合することで理解できるようになるっていうこともあると思います。
なるほど。とすると物理学の究極のゴールは分からないが、42世紀ぐらいまでのロードマップは
はい。あります。もうちょっとこれ早くにやりたいなと思って。
大栗先生、この辺りまで生きてらっしゃいそうです。
ちなみに番組ホームページではノーカット版の配信もしています。番組が大赤字で大変です。是非皆さんカンパをよろしくお願いします。
じゃあそうすると、現状の理解の範囲でこの世界がどう成り立っているのか、いくつか伺いたいんですね。普通の素人の日常的な感覚で整理すると、時間軸と空間軸で整理して質問させていただきたいんです。まず時間軸は、普通に生活してると時間が流れてるように感じて、昨日があって、今日があって、明日があるように感じると。そうすると宇宙とか世界そのものについても時間の流れがあるんじゃないかと感じて、どこかに最初があって、どこかに終わりがあるのかもしれないっていう気がしてくるわけなんですよね。宇宙のその始まりと終わりというのはしっかりあるものなのか。そして宇宙の始まりより前とか終わりより後みたいなことは意味をなすのか。みたいなことがまず気になると思うんですが、それについてはどこまで分かってるんですか?
えっと、そもそも僕らが普通に理解している時間っていうのは、ここの現在の古典的な世界の時間のことですよ。例えばニュートンの運動方程式だったら、ニュートンの方程式っていうのがあって、そこの中に時間っていうパラメーターがあると。ニュートンの方程式ってのはそもそもどういうものかって言うと、ある時間のある値のところ、初期値、それを初期条件と言いますけれども、その初期条件での物質の運動が全部分かっていたら、そっからニュートンの方程式を当てはめて将来のことが予言できる、過去のことも分かるというのがニュートンの方程式ですね。その時の世界の発展のパラメーターのことを時間と言ってるわけですよね。マクスウェルの電磁場の理論でも同じことですね。同じように時間っていうパラメーターがあって、マクスウェルの方程式によって電磁場の変化が予言できるというものなわけです。アインシュタインの一般相対性理論でも基本的にそうですね。だから重力も含むような、宇宙の空間や時間の様子も時間発展していくと。それをアインシュタインの方程式を解くことで決まっていくわけなんです。
ただしですね、そういう世界の描像っていうのが、例えば宇宙の始まりなどについて成り立つかどうかっていうのは明らかではないんですね。それはなぜかって言うと、量子力学の世界っていうのは、不確定性原理っていう言葉をお聞きになったことがあるかもしれませんけれども、僕らが古典的な物理の世界で理解してるいろんな観測する量の値っていうのが正確に決まっているとは限らないということがあるんですね。しかも、いろんな観測量の間に矛盾みたいなのがあって、異なる観測量を同時に測ることができないとか、そういう問題があるんですよ。特にアインシュタインの重力理論までいくと、時間とか空間というものも観測されるべきものですよね。今何時ですかとか、今どこにいますか?っていうことも1つの観測量としてアインシュタインが捉える。そうするとそれに量子力学を加えると時間や空間っていうものも不確定になってしまうんですよね。時間や空間を、ある量より先には精密に測ることはできなくなってしまうんです。ちょっとそれを今説明しますね。
つまり、こういう空間が箱としてあって、そこに時間が流れていて、この時点ではこの状態っていう風に言えるようなものではなくなるってことですよね。まず。
えっと、それはどういうことかって言うとですね、なんか綺麗に消せないっていうのも嫌ですよね。
不確定ですね。
なんかこう、ほら残ってるでしょ。
例えば素粒子の世界だと、より小さい世界を見たいと思うんですよね。より小さい世界のことがより基本的だという風に思うんです。例えば僕らの全ての物質ってのは原子でできてると思ってるわけじゃないですか。そうすると原子があって、その周りを電子が回ってると。でも実はこの原子核っていうのはよくよく見てみると陽子とか中性子とかが集まってできてると。これ陽子とか中性子とか。これをまた開けてみると、ここの中にクォークっていうものが3つあると。これが現在理解されている標準模型の世界なんですけれども、こういう風により小さな世界に行くほど、
これも物を細かく分解していったら、この中にこういうものが入っていてってことですね。
ミクロですから、物理学の進歩の1つの方向として、どんどんミクロの世界に行って、どんどんその基本的で奥の世界のことが分かってると、それから数学的に解く…それを解ければ陽子や中性子の性質が分かる。例えば僕今理研っていうところに訪問してるんですけど、そこに富岳っていうすごいスーパーコンピューターがあってですね。例えばクォークの理論をその富岳に入れてですね、陽子や中性子の間の力を説明するっていうこともやってるんですよね。そういう風に、こっちの理論が分かると、こっちの理論でこれが分かると。今度、
つまりこいつらの間にどういう力が働いてるかをスーパーコンピューターでシミュレーションして、核子の間の力を導いてみると。
で、これからまたここのことも分かるんですね。ここをなんか素粒子物理学と言って、ここを原子物理学と言って、これを原子核物理学と言って、これを原子物理学と言うんですけれども、こういう風に階層になっていると。ヒエラルキーになってる。だからどんどん先に行くと、どんどんより深い理論が分かるはずではないかと思う。でもしかしですね、実は重力と量子力学を統合すると時間や空間が不確定になって、あるところよりも先は分かんなくなるっていう世界があるんですね。それをちょっと今説明しようと思います。そもそもその例えば陽子や中性子の中にクォークがあったっていうのはどうやって見つけたかって言うと、1つのやり方は粒子加速器っていうのを使って見つけるんですね。それはどういうことをするかっていうと、陽子っていうのはプラスの電荷を持ってるわけですね。そうするとこっちに電場をこういう風に作ってやる。リニアモーターみたいにしてですね、陽子を加速してやることができる。
で、こうぶつけると。
ここにすごい高いエネルギー領域ができるんですけれども、エネルギーが高ければ高いほど小さな世界が観測できるようになるんですね。それはなぜかと言うとですね、アインシュタイン、あ、そう、ごめんなさい。量子力学によるとですね、エネルギーっていうのは波長に反比例するっていう…そもそも全ての物質は波だと思うんですね。波動力学があるんですけれども、全てのものは波だと思ってる。だから陽子の波があるんですね。
陽子が波として伝わってる。で、この波長…
ちょっと、全てのものは波とか言うと、オカルト系の人も言いそう。
はいはいはい。でも波なんですよ。それで、波でできていて、エネルギーが高ければ高いほど波長が短いんですね。波長が短ければ短いほど小さい世界が分かるんですね。例えば電子顕微鏡っていうのをお聞きになったことあるかもしれません。電子顕微鏡ってなんで小さいところが見えるかって言うと、電子をものすごい速さで加速するから波長が短くなって小さな世界が見えるようになると。普通の光学顕微鏡っていうのは光の波長でしか見えないのを、もっと短い波長で。これをもっと極端にしたのが加速器なんですよね。そのエネルギーが高ければ高いほど波長が短くなって、より小さな世界が見えるという原理に基づいて、僕らはよりミクロな世界を観測してきたわけなんですよ。よろしいですか?
で、ちなみに、え、物体は波でもあるんですか?
それが量子力学の1番基本的な考え方ですね。先ほど量子力学が発見された年っていうのを1925年から27年と言いましたけれども、25年っていうのはハイゼンベルクっていう人が最初に量子力学っていうのを作った。これすごく難解だったんですよね。で、この26年っていうのがあって、シュレディンガーっていう人がいるんですけども、この人が波動力学っていうのを作ったんですね。全ての粒子を波だと思って、その波がどういう風に振る舞うかを方程式に書いてみせたっていう理論なんです。これは粒子が波っていうのが奇怪っていうか、オカルト的だっていう、そういう問題ですね。
うん。というか、なぜかそのオカルトっぽい人たちとか陰謀論っぽい人たちとかって、波動とかいう言葉使うの好きだなと思ったんです。だから本当に科学的な裏付けのある波動とかって言葉と、気分とかムードで使ってる波動みたいな言葉が並列してこの世の中に存在してるのが面白いなとちょっと思って。
いや、僕その辺の分野はあまり詳しくないんですけれども、ただ、波って言うと、特にオカルトというか、陰謀っていうのはよくわからないんですけれども、そういう風に繋がりやすいのは、波ってなんか遠隔的な印象があるじゃないですか。なんか遠いところのことは…自分が直接触れられないものについても影響を及ぼすことができるっていうのが不思議っていう。これを不思議だと思うっていうことは実は古来からあったんですよね。そもそも例えば電場や磁場って不思議なんですよね。磁場って不思議で、子供の頃なんか磁石とかで遊んですごい不思議だと思ったと思うんですけど、あれは遠隔力だから不思議なんですよね。離れていても力が及ぼされる。実は、少なくとも西洋の科学の世界では、この離れていても力が及ぶっていうのはオカルト的なものだと思われていたんですよね。それは多分今のこの気持ちに現れているんだと思うんですけれども。それが、マクスウェルみたいに電磁場の理論ができてきて、だんだんに科学の世界では、電場や磁場のようなものが空間に満ちていて、それが力を伝えるっていう考え方に抵抗がなくなってきたっていう、そういうことがあってですね。そういう世界に満ちている場が力を伝えるっていう考え方を、粒子にも広げたのがシュレディンガーだったんですよね。
そもそも力っていう考え方が…ちょっと話ずれていくんですけれども、力っていう考え方があるじゃないですか。物理学っていうのは物質とその間に働く力によって、世界がどういう風に移り変わっていくかを説明するんですよね。力っていうのはそもそも何かって言うと、それはこれまであるもの、物質の状態を変えるものを力と呼んでいるわけですね。そういうものがそこの間にある場によって伝わるっていうのが、マクスウェルとか、ニュートンたちの重力とか電磁場の理論だったんですけれども、それを物質の方にも広げたのが量子力学っていうことだったんですね。
なるほど。そこで1点質問は、先ほどその見えない遠隔で何かが変化するっていうと、そこに特別なものがあるかのように僕たちは感じがちじゃないですか。その力について、例えば人間がこれを持って動かす時には、何か見て触れる何かがここに作用して動いたように感じる。だから不思議にそんな感じないですよね。
はい。そう。
だからこれで力が伝わるのは不思議でもなんでもなく、ここに触ってるから力が伝わるのは自然だなって思うわけですよね。
でもここに出てきてるものの中には、人間の例えば目で見たり体で触れる何かが作用してないのに変化が生まれる場合があるじゃないですか。それは人間のその日常的な感覚だと、なんか特別で変なものだと感じがちですよね。
はい。感じがちですね。
その人間にとって変と感じるか感じないかは、物理的には意味のある区別なんでしょうか?
それは物理的には意味のある区別ではないですね。それはやはり人間が変と思うか変と思わないか、それはなんか慣れ親しんだものであるかそうでないかっていうことですけども、基本的にやっぱり僕らの言葉であるとか感覚っていうのは非常に限られた経験に基づいたものなんですよね。なんか人間の脳っていうのは本来地球上でその数kmぐらいの範囲の環境の中で生き残るために進化してきたものなわけだから、例えば物理学っていうのはすごいミクロな世界のことを探求したりとかですね、それから何億光年先の宇宙のことを調べたりとか、そういう僕らが本来進化してきた、適応してきた環境と全く違う世界のことを理解しようとしてるわけなので、当然そこで起きる現象が僕らの親しい現象とか感覚とずれたものになるっていうのは仕方がないことですよね。ですから例えば物質が波って言われても「ええ」とかいう風に思うわけですけど、でも例えば離れたものに力を及ぼすっていうことも、よく考えると日常的にも起きているわけですよね。例えば私は成田さんの姿を見て話をしてるわけですけど、そっから光が成田さんの顔に当たって僕に移ってきて、これ遠隔力ですよね。成田さんが僕に声をかけて、これはもちろん空気が振動して、それが僕の鼓膜に伝わるんですけども、ある意味で遠隔力とも言えるわけで、日常生活についてもよくよく考えてみると遠隔力っていうことはあるわけですよね。
だからそういう日常的な感覚に支配されてしまってる人間がこういう問題を考えようとしているっていうのが、ある意味涙ぐましいと言えば涙ぐましい。
そう、そうですよね。ですからそれができるっていうのがすごい不思議なことですね。それは1つはだから数学っていうものがあるからだと思うんですけれども、僕らの日常…だから今例えば成田さんにこういうものを説明しようとしていて、1つの限界というかですね、今日は本当のことを教えてあげようというのがテーマだったわけですけれども、限界っていうのは日本語で説明しようとしてるからなんですね。
で、日本語っていうのは自然言語で、それは先ほど言いましたように、何千万年かけてですね、人類が数kmの世界のことを説明するために発展してきた言葉なので、それでこんな世界を説明しようとすると限界があるのは仕方がないわけですね。
で、数学っていうのはあらかじめ対象を仮定しないでできてる言語なので、もっと適用範囲が広い。だからそういうものを手に入れたことによって、1つこういう世界のことが分かるようになったということはあると思います。
ある意味、生活のために作った道具とか包丁で、とてつもなくちっちゃいものとか、とてつもなく大きなものを調理しようとしてるって感じですよね。
そう。今、日本語でこれを説明しようと思ったらね。そういうところはありますよね。
解けるかどうかも分からない問題やって何になるんですか?
こういう研究っていうのは、人間のある意味で知のフロンティアっていうか、科学的な
この宇宙の1番最先端、これを人類に伝えるにはどうしたらいいと思われますか?
このビデオ最後まで見てくださった方はですね。残念ながらその人数がゼロの可能
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