海底の熱水と深海の冷水で24時間電源をつくる:Endurance Energyが「サイエンスリスク」ではなく「統合リスク」を選んだ理由

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概要

FoundX Review Startup IdeaCastは、海外スタートアップのアイデアをAIで整理・分析して紹介する番組である。番組冒頭でも、AIで情報を整理しているため一部に古い情報や誤りがありうると断っている。今回取り上げたのは、海底地熱発電の商用化を目指すEndurance Energyだ。

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解説役が選んだ理由は、単に発電設備を海底に置くのではない点にある。海底の熱水と、深海の冷たい海水との温度差を利用する。そのうえで既存技術を統合して攻める。そのやり方が、他の起業家にも参考になると考えたという。番組は、AI電力需要と島国のエネルギー問題という課題設定から、技術、市場、ビジネスモデル、競争戦略、チーム、資金調達、日本への応用までを順に検討した。

全体像:資源の存在を前提に、残りをエンジニアリングで解く

解説役の整理では、Endurance Energyが解こうとしている課題は三つある。一つはAIによる電力需要の急増への対応、二つ目はディーゼル発電に頼る島国のエネルギー問題、三つ目は地熱資源の活用である。陸上の発電には、用地、住民合意、送電網といった制約がつきまとう。これを海へ持っていって回避するのは「どこかで何度も聞いたような戦略」だと解説役は認める。そのうえで、地熱という資源にこの戦略を当てはめた点が特徴だと述べる。

解説役が特に面白いと見るのは、問題の切り分け方だ。地熱発電を事業にするには、資源が存在するか、発電システムが動くか、十分に安い電力を供給できるか、という三つの問題を解く必要がある。Endurance Energyは、海底に資源があることを前提に置く。そのうえで残りの二つをエンジニアリングで解決しようとしている。

ただし、現時点で実証されているのは主に深海での設置、回収、計測までである。ギガワット級の商用発電とはかなり距離がある、と解説役は指摘する。目指しているのは、海底の高温資源を使ってベースロードに近い形で、必要なときに安定して取り出せるクリーン電源だという。

では、何が示されれば「本当にできそうだ」と言えるのか。聞き手の問いに対し、解説役は四つの点を挙げた。100kW級の小さな規模でよいので連続発電ができること。設置、回収、再設置に再現性があること。海底での腐食などについて、長期運転のデータで問題がないと示せること。そして、海底ケーブルを含めたLCOE(均等化発電原価)が採算に乗ると実証できることである。

課題:クリーンで、24時間安定し、速く大きく作れる電源の不足

想定顧客は大きく二種類ある。一つは、24時間稼働の電力を求めるハイパースケーラーなどのデータセンター事業者。もう一つは、ディーゼル発電に頼り電気代が高騰している島国で、こちらが最初に入る市場になる。解説役によれば、どちらの顧客もクリーン電源に三つの要件を求めている。クリーンであること、24時間安定していること、そして迅速に構築でき、拡張性もあることだ。

既存の選択肢はそれぞれ弱点を抱える、と解説役は整理する。原子力は発電性能はあっても、規制の関係で建設に10年、15年とかかる。太陽光や風力は24時間発電できず、蓄電池やバックアップ電源を組み合わせる必要がある。データセンターや島国では、その組み合わせでどこまで対応できるかという問題が残る。陸上地熱は24時間発電できる有力な電源だが、適地の制約、掘削のリスク、送電距離、地域合意がボトルネックになる。海底地熱は、これらを同時に解決できるかもしれない選択肢として位置づけられている。

こうした不足が生じた背景として、解説役は次の要因を挙げた。人口増加とAIデータセンターで電力需要が伸びている。一方で、先進国では規制などのために発電所や送電網の建設が追いついていない。脱炭素の流れで化石燃料による調整にも頼りにくくなっている。さらに再生可能エネルギーが増えるほど需給調整が必要になり、24時間安定して動く電源の価値が高まっている。

島国ではこの問題がより大きい。系統は小規模で、燃料の輸送費も高い。国際的な燃料供給への依存が危ういことは、最近の紛争でも明らかになったと解説役は述べる。聞き手は、トンガではディーゼルが発電量の73%を占め、輸入燃料が財政の負担になっていると補足した。

では蓄電池を大量に増やせば済むのか。解説役の答えはこうだ。数時間の需給調整ならリチウムイオン電池で対応できるとよく言われる。しかし、数日間の悪天候や季節変動まで考えると、より長時間の蓄電が要る。長時間蓄電(LDES)などの手段もあるが、島国では設置面積や輸入物流の制約がある。近くの海底で熱資源が取れるなら、そちらのほうが良い場合もありうるという。

解決策:約400℃の熱水と約2℃の深海水の温度差

Endurance Energyが開発しているのは、高温の海底熱水と約2℃の深海水の温度差でタービンを回す、回収可能なモジュール型の発電システムである。解説役は、これは未知の物理現象に頼るものではなく、既存の海洋技術を統合して作るものだと強調する。プレート境界にある熱水噴出孔の温度差を利用すれば、陸上の用地や送電の制約を迂回できる、というのが価値提案になる。

差別化の軸は、深海掘削、タービン、海底ケーブルといった隣接産業の既存技術を、一つのモジュールに統合することにある。創業者たちはSpaceX出身で、SpaceX流の開発手法でこの統合を進めているという。故障したときに海底で大がかりな修理をするのではなく、設備を引き上げて交換や改良をする。そういう仕組みを目指している点も特徴として紹介された。

トラクションとしては、創業から短期間で4回の深海プロトタイプ展開を行った。最大水深は3,300m、最高で386℃の環境だったとされる。マグマの熱で約400℃になる熱水と、深層の約2℃の冷水との温度差を使うという構図だ。トンガ王国政府とは実証に向けたMOUを締結している。

ただし解説役は、「既存技術の統合」といっても簡単ではないと念を押す。高温、高圧、腐食性の流体、海底での接続、長時間の無人運転という難題を、エンジニアリングで解かなければならない。

実証済みのことと、まだ残る壁

4回もプロトタイプを展開したなら実現に近いのではないか。聞き手の問いに対し、解説役は実証済みの範囲と未検証の範囲を分けて答えた。できたのは、深海への投入、高温流体への接続、計測、回収である。まだ検証できていないのは、長期間の連続発電、商用に耐える稼働率、保守の周期、LCOE、生態系への長期的な影響だ。いずれも長期運転をしていないため、まだ確かめられていない。

技術的なリスクとしては、まず熱水に鉱物が混ざっていることによるスケーリング(付着)や閉塞がある。加えて、高温・高圧下での接続部の劣化、腐食、無人での保守、ケーブル障害など、課題は多く残っていると解説役は述べた。

市場:6TWという技術的ポテンシャルと、その読み方

市場として同社が狙うのは、環太平洋の火山帯を中心とする資源ポテンシャルである。同社は6TWという数字を掲げる。解説役によれば、これは海底火山周辺での発電設備容量としての技術的ポテンシャルであり、同社が約5〜10年の開発ポテンシャルとして見積もっているものだ。

比較対象として、世界のデータセンターの電力消費量が約945TWhと言われていることも紹介された。解説役は、両者は単位が違うので直接は比較できないと注意したうえで換算してみせた。945TWhを年間で平均すると約108GW相当になり、6TWのポテンシャルがあればかなりの部分を賄えるかもしれない、という見方である。

ただし、環太平洋火山帯に資源が分布しているからといって、すべての地点で商用開発ができるわけではない。熱源の温度、流量、水深、海域の条件によって価値は大きく変わる。

初期ターゲットは、トンガのようにディーゼルを使う太平洋の島国である。その後、沿岸部のハイパースケーラーのデータセンターへ広げる。AIによる電力逼迫、脱炭素目標、島国のエネルギー自立政策に乗って市場を攻める構想だ。島国は市場規模こそ小さいが、既存の電力価格が非常に高く、新技術でも価格で競争しやすい。そこから入り、性能や品質への要求が高いAIデータセンター市場へ進むのが典型的なパターンだと解説役は見る。

最初に入る島国の条件としては、次の点が挙げられた。ディーゼル発電のコストが高いこと。海底熱水資源が需要地の近くにあること(遠いと海底ケーブルが長くなる)。系統規模が初期設備に合っていること。政府の脱炭素方針が明確であること。港湾や補給拠点が利用できること。

アイデアの実現性を判断する変数としては、発電設備コストに加えて、海底ケーブルの距離とコスト、設備利用率、保守頻度、許認可にかかる期間、資本コスト、既存の電力価格が挙げられた。これらを合わせたLCOEで、海底での発電が本当に有望かどうかが見られていくという。

ビジネスモデル:PPA/IPPとプロジェクトファイナンス

同社は、海底で発電して陸上に送電し、PPA(長期売電契約)またはIPP(独立系発電事業者)として収益化することを考えている。設備を売って終わりにするのではなく、長期にわたって電力を販売するインフラ型の事業である。PPAは長期で価格が固定される場合が多い。そのため将来のキャッシュフローを担保にしたプロジェクトファイナンスが可能になる。その一方で長期の性能保証を求められるため、それを満たせるかが鍵になると解説役は指摘する。

コスト構造も整理された。CAPEXとしては、海底ケーブル、発電モジュール、海底での掘削と接続、保守のための船舶、港湾作業、環境調査、系統接続が必要になる。OPEXは、ROVを使った無人保守、遠隔監視、船舶の運用、モジュールの回収と交換が中心になる。燃料を投入する必要はないが、船舶、保守、保険の費用は残る。回収可能なモジュールで保守コストを下げ、海底ケーブルのコストを抑えることが、このビジネスモデルでは重要になるという。

誰がお金を払うのか、という問いに対しては、島国では政府系の電力会社が多いだろうと解説役は答えた。データセンターの場合は、ハイパースケーラーや電力の小売事業者などが想定される。

発電容量を大きくしていく際の資金について、解説役の見立てはこうだ。VCの資金は技術の実証までに使う。商業設備はプロジェクトファイナンスや政府系の資金でまかなう形になるだろう。そのためにも長期PPAで需要を押さえ、融資の前提となる条件をエクイティの資金で実証しておく必要がある。技術開発の会社と発電資産を分け、一部のプロジェクトを特別目的会社で進める可能性もあるという。

競争戦略:サイエンスリスクを避け、統合リスクを取る

番組が最も時間を割いたのが、この戦略の整理である。サイエンスリスクとは、科学的にまだわかっていないことを発見・発明していくアプローチに伴うリスクだ。創薬などはこの色合いが強く、見つかれば大きくなる可能性がある。これに対してEndurance Energyは、エンジニアリング、特にインテグレーション(統合)のリスクを取っていると整理されている。石油・ガス業界や海洋工学といった成熟した業界のサプライチェーンを使う。そして、それらを高温・高圧・強腐食の極限環境で動く単一の回収可能なモジュールにまとめる。

ただし解説役は、各部品が動くことと、システム全体が長期間動くことは別の問題だと強調する。接続部、制御系、保守手順などに故障が集中しやすく、統合はそれ自体が難しい。

初期はフルスタックで進めようとしている。その理由として解説役は、初期段階ではシステム全体の仕様が固まっておらず、既存サプライヤーに分けて発注しにくいことを推測する。一方、商業規模になってもすべてを自社で抱えると、資本や組織が肥大化する。そのため最終的にはコアを残し、他は外部化していくのではないかという。

競争優位は単一の特許よりも、蓄積の中から生まれる、というのが解説役の見方だ。海底での運用データ、設置と回収の手順、故障パターンの知識、資源評価、サプライヤーのネットワーク、規制対応である。SpaceXを前面に出していることについては、短期間で試作・投入・回収を繰り返し、学習曲線をたどってコストを下げる姿勢の表れだろうと推測した。ただし海洋では、許認可、生態系調査、船舶の日程が関わる。そのためロケットと同じスピードで回せるかはまだわからない、とも付け加えた。

サイエンスリスクがゼロというわけでもない。熱の持続性、熱水の化学組成、スケーリングには不確実性が残る。聞き手が「サイエンスリスクはないわけではないが低い、ということか」と確認すると、解説役は、何と比べるかによるが相対的には低いのかもしれないと応じた。核融合はまだ、投入したエネルギー分を回収できるかすらわかっていない。それに比べれば、熱が存在することはわかっている。ただし長期的に安定して熱を回収できるかは未証明で、リスクは「ゼロではなく相対的に低い」と表現するのが適切だという。

既存技術を持つ企業に追いつかれる可能性については、解説役は「あるだろう」と認めた。部品や船舶は既存企業も調達できるので、統合型スタートアップは素材や部品で差別化しているわけではない。差をつけるのは全体設計、反復速度、学習の過程で自社に貯まるデータ、そして運用のノウハウだ。さらに、場所を必要とする事業では、海域の利用権や長期PPAを先に押さえることが先行者優位になりうる。掘りやすい場所から権利が押さえられていくので、先に入れば他社が使えなくなる可能性もあるという。

ロードマップ:センサー給電から100kW級、そしてギガワットへ

フェーズ1は、トンガでの発電プロトタイプの深海展開である。熱水を利用したセンサーなどの自立稼働と、運用ロジスティクスを確認できたとされている。フェーズ2は100kW級のシステムで、現在開発と改良が進んでいるという。海底の計算(コンピューティング)モジュールに給電し、陸上とは光ファイバーで接続する。掘削から発電までをつなぐ初のエンドツーエンド実証と位置づけられ、2026年秋の実証が予定されている。中長期にはギガワット級プラントの建設とハイパースケーラーへの本格供給を目指すが、時期はわからない。解説役は、まだ実証段階でPMFとは言えないが、段階を一つずつ上っているところだと評した。

100kW級の実証で確認すべき点として、解説役は次を挙げた。100kWに近い連続出力が出ているか。発電・制御・需要を接続した一体運用ができているか。故障時の回収と再投入が、計画したコストと日程に収まるか。生態系への影響をきちんと測定できているか。

海底の計算モジュールに直接給電する構成について、解説役は特殊だと指摘する。初期段階では長距離の高圧送電を避け、電力を海底で使う。陸に送るのは電力ではなく、光ファイバーで送るデータである。これによって海底ケーブルのリスクを下げていると解説役は見る。ただしフェーズを拡張して電力そのものを陸に送る段階になれば、別途さまざまな調整が必要になるだろうという。

競合との位置づけと、ポジションが崩れる条件

解説役は競合の中での位置を二つの軸で示した。「海か陸か」でいえば海、「サイエンスリスクかエンジニアリングリスクか」でいえばエンジニアリングである。核融合企業は、成功すればインパクトは大きいが、科学的な不確実性も高い。上場したFervoや、Sage Geosystemsなどの地熱企業は、陸上で掘削や熱回収を改良するアプローチをとっている。ただ陸上の適地は一部すでに押さえられているので、Endurance Energyは資源が手つかずの可能性がある海底で差別化を図っている、という整理だ。

より広く見れば、競争相手は地熱だけではない。原子力、ガス発電とCCSの組み合わせ、蓄電、長距離送電、需要調整なども、ある意味ですべて競合になる。競合が陸上の制約と戦う中で、同社はあえて海に移って規制や制約を避ける。その代わりに、深海の圧力や腐食、海での運用という別のリスクを引き受けている、と解説役はまとめた。

具体的な差別化要素として挙げられたのは次の点である。400℃対2℃という大きな温度差を使えること。海を天然の冷却源にできること。陸上の用地・送電・合意の制約を回避できること(生態系・環境の問題はありうるとしつつ)。回収可能なモジュール設計を製品アーキテクチャにしていること。そしてSpaceX流の反復速度で海洋での運用実績と学習を積むこと。聞き手が海洋運用のノウハウの中身を尋ねると、解説役は腐食への対処、船舶の出し方、設置と回収の手順といった運用そのものが堀になるだろうと答えた。

では、このポジションが取れなくなるのはどういうときか。解説役は次の可能性を挙げた。海が想像以上に難しかった場合。海底ケーブルが相場以上に高くなる場合。長期の故障率が実は高かった場合。環境規制が入って有望な地点を使えなくなる場合。陸上地熱や蓄電池のコストが大きく下がり、わざわざ海底で発電する必要がなくなる場合である。

参入戦略:なぜAIデータセンターではなく島国から入るのか

最初の市場は太平洋の島国、まずはトンガである。高価な輸入ディーゼルに頼っており、強いペインがあるからだ。最終的な市場はグローバルなAIデータセンターだが、データセンターは極めて高い稼働率、長期の保証、信用力を求める。そのため未成熟な発電技術の最初の顧客にはなりにくい。そこでペインの大きいところから入るという判断である。

聞き手が、データセンターに最初から行けない理由を他にも尋ねた。解説役は三つ挙げた。運用実績がないこと。停電がデータセンターにとって大きな負担になり、許容度が極めて低いこと。そして必要な電力がMW級なのに対し、今の実証はkW級で規模が合わないことである。

島国では、エネルギー安全保障の文脈が経済性以外の価値を持つ。燃料価格変動の回避、燃料途絶への耐性、外貨流出の抑制である。そのため通常の発電コストより高くても買ってもらえる可能性がある、と解説役は見る。トンガ政府とのMOUについても、技術実証だけではない利点があると述べた。海域へのアクセス、行政の調整、住民への説明に国が関わってくれる点である。

最初のMVPは、センサーへの給電だったという。いきなり島全体の電力をまかなうのではない。小さな負荷で発電・制御・通信を一体的に検証し、設備を持ち帰って改善できる。手頃なMVPを選んだと解説役は評価する。一方で、センサーの電源から系統の商用電源までは相当な距離があり、MVPが成功したからといって事業がうまくいくわけではないとも付け加えた。

創業プロセスとチーム:第一原理思考とSpaceX出身者

創業時、チームはSpaceX流の第一原理思考を使ったとされる。24時間稼働、低コスト、クリーン、ギガワット規模という条件を満たす技術は何か。原子力は遅い、太陽光は蓄電が必須、陸上地熱は立地に限界がある。こうした消去法で、未使用の地熱資源が残る海底というフロンティアを選んだという。ただし解説役は、現実の電力システムは複数技術の組み合わせである点も指摘する。海底地熱がうまくいっても他の技術を排除できるわけではなく、用途ごとに使い分けられることになるだろうという。

初期チームにはSpaceX経験者が多い。ハードウェア統合、安全性、極限環境での開発、高速な試作、部門横断での設計といった経験が生きているという。エンジニアリング担当VPは核融合スタートアップ出身とされる。求められているのは単なる発電や宇宙の専門家ではない。宇宙や深海のような極限環境でハードウェアを動かす統合を、高速にこなせる人材である。そこに海洋生態学、地質、熱水、電力市場、系統接続、プロジェクトファイナンスの専門性を組み合わせているという。

聞き手は技術系が多い印象だとして、今後足りなくなる人材を尋ねた。解説役は、初期の25人のうち12人がSpaceX出身と言われていることに触れた。そのうえで、今後必要になる人材を挙げた。海洋生態・環境審査、電力市場と系統接続、プロジェクトファイナンス、島国での事業開発や政府渉外、大規模な海底ケーブル、信頼性・保険・長期保守の担い手である。こうした多様なパーツを一気に集めてエンジニアリングを回すこと自体が、統合型スタートアップの特徴だという。

開発体制:シアトルの港から深海プロトタイプを回す

仮説検証のやり方も紹介された。深海の過酷な環境でハードウェアが機能するのか。まず机上計算を行い、その後プロトタイプを投入した。解説役はこれを、ソフトウェアのようにハードウェアを回す試みだと表現する。その結果、創業からわずか15か月で4回の深海プロトタイプ展開を完了し、水深3,300mに到達したとされる。

拠点はシアトルの港にあり、オフィスから直接船に機材を積み込める。港湾と海洋産業へのアクセス、太平洋北西部の試験海域への近さ、搬入のしやすさに加え、設計者と現場作業者の距離を縮められることが理由だという。作業者が実際の難しさを直接見てフィードバックできる点もあるとされる。深海設備はモデルや水槽試験だけではわからない問題が多いため、実海域での試験を早期に行うことに集中していた。

規模が大きくなってもこの速さを保てるのか。聞き手の問いに対し、解説役は難しさがあると答えた。小型の試作品なら規制はあまり関わらない。しかし大型の試験になるほど許認可が必要になり、船舶が逼迫していれば大型船は使えず、環境審査にも時間がかかる。エンジニアリング以外の問題が入ってくる可能性が高い。そのため、1回あたりの学習量を最大化すること、モジュールを標準化すること、常設の試験サイトを持つことが、速度を保つ手段になるかもしれないという。

資金調達:5,400万ドルのシリーズAと次の関門

同社は5,400万ドル(番組の換算で約85億円)のシリーズAを調達した。リードはFounders Fundで、FelicisやFirst Roundなどが参加している。技術実証から100kW級のパイロットに進むための資金と組織基盤づくりが目的だとされる。具体的には、100kW級の開発、海洋試験、掘削・発電の統合、人材採用、船舶とサプライチェーンの確保を想定しているという。

解説役は、大きな調達に見えても、海洋エネルギー設備を商用化する資金としてはもっと必要だろうと見る。Fervoと同程度の水準で調達を重ねていく必要があるのではないかという。投資家にとっての魅力も指摘した。核融合のような未知の科学ではなく、既存技術を新しい場所で新しいシステムとして組み合わせる点だ。うまくいくかもしれないし、うまくいけば大きなリターンが見込めるかもしれない。

次のラウンドまでに示すべき成果として、解説役は次を挙げた。100kW級での連続発電とエンドツーエンドの稼働。設置・回収の再現性。信頼できるLCOEの見積もり。MOUから拘束力のある契約への移行や、次のLOIの獲得である。これを2〜3年でやる必要があるという。海洋試験は1回あたりのコストが大きく、ROVや掘削などさまざまなものが必要になるので、80億円余りでも忙しいだろうと解説役は述べた。

日本で同じアイデアを事業にするなら

番組では、日本で同様のアイデアに取り組む案をAIに出させている。日本は火山大国かつ海洋国家で、造船、海洋土木、耐食材料のサプライチェーンもある。AIの指摘は、Endurance Energyと同じフルスタックの発電会社を作ると、必要な資本と許認可の負担が極めて大きいというものだった。そのうえで三つの案が示された。

  • 案A:JAMSTECの既存データを活用して探査コストを圧縮し、海底センサーや小型モジュールの実証・環境検証から着手する。
  • 案B:沿岸部のデータセンターに、陸上の送電網を介さず直接給電し、海底の冷水を冷却にも活用する。
  • 案C:電力コストが比較的高い離島で、トンガの事例にならった初期MVPをマイクログリッドとして展開する。

解説役はさらに、発電事業全体に挑むだけでなく、周辺の部材や技術で勝負する道もあると述べた。防汚、防食材料、海底コネクター、ROVによる無人補修、海底設備の状態監視、熱交換器の洗浄などである。日本が強いかもしれないこれらの技術を売る道もあるし、組み合わせて発電事業に進むこともできるかもしれない。インフラの保守運用レイヤーは日本の得意分野でもあるという。

トンガと日本の違いを問われると、解説役は、離島の電力コストが高い点は共通していると答えた。一方で日本は、供給の信頼性、安全規制、漁業調整などの要求が厳しい可能性があるという。

まとめ:制約の迂回、統合による創造、優れたウェッジ

最後に、AIがまとめた三つの教訓が紹介された。

一つ目は制約の迂回である。陸上の土地、住民合意、地理的な制約を正面から解かず、事業を海底に移す。宇宙データセンターでもよく言われる発想だと解説役は重ねる。ただし実際には制約が消えたわけではない。海洋での施工、腐食、ケーブル、海域の権利へとリスクを移しただけであり、制約をなくすというより、自分たちが解きやすい制約に置き換えているのだという。

二つ目は統合による創造である。ディープテックというと科学的な発明が思い浮かびがちだ。しかし深海掘削、タービン、海底ケーブル、ロボティクスはすべて既に存在する。これを責任を持って一つの製品にまとめることで差別化する。要素技術の性能向上、コスト低下、供給の成熟によって、以前は成立しなかった組み合わせを成立させにいく、という整理である。

三つ目は優れたウェッジ(楔)である。最終市場は巨大なデータセンターだ。しかし最初の足がかりには、輸入燃料が高く強いペインを抱える島国を選ぶ。そこで未熟な技術を実証させてもらい、大きな市場へ接続していく。解説役はこれを、かつて耳にした「インテグレーションテック」の一つのパターンと位置づけた。それを成功させたSpaceXの出身者が、エネルギーという新しいフロンティアで同じことをしようとしている点を面白いと評した。

聞き手は締めくくりに、第一原理思考で海を選び、サイエンスではなく統合のリスクを取るという考え方は、他のアイデアにも適用できそうだと述べた。解説役も同意した。第一原理で本当にやるべきことを考え、そのために何が必要かを突き詰めたときに、全く新しい技術ではなく既存技術の組み合わせで解けるかもしれないと気づけることがある。そう気づければ、さまざまな事業機会が見つけられそうだという。