電力ではなく「熱」を蓄える:Tempo(旧RedoxBlox)の熱化学バッテリーは産業熱の脱炭素をどう進めるのか
東京大学FoundXFoundX Review Startup IdeaCastの今回の回は、産業用の高温熱を脱炭素化しようとする米国のエネルギー・スタートアップ、Tempo(旧RedoxBlox)を取り上げる。番組は、海外スタートアップの情報をAIで整理・分析して紹介する形式で、冒頭で「一部の情報が古い、あるいは誤っている可能性があるため、事実を重視する場合は自分で確認してほしい」という免責が述べられている。解説役は、産業の熱利用についてほとんど知らなかったことが選んだ理由だと話す。産業の熱はエネルギー消費量が大きいとされる一方、伝統的な領域で変化が進んでいないように見えたため、その重要性と技術を確認したかったという。
本編に入る前の雑談では、起業家がなぜピボットしにくいのかを扱った論文が紹介された。
雑談:アイデアを「自分そのもの」と見る人はピボットしにくい
スタートアップでは、最初のアイデアに固執せず大きく方向転換することをピボットと呼ぶ。ただ、話者は起業家を見ていて、ピボットはそう簡単には起きないと感じてきたという。Grimesの「ピボット」に関する論文は、その理由を次のように説明している。創業者にとって事業アイデアは自分と切り離されたビジネス案ではなく、自分らしさや世界の見方と結びついている。そのため、アイデアの筋が悪いと言われると、自分自身が否定されたように感じることがある。そのとき創業者は、アイデアを守るか、ビジョンは守りつつ具体的なビジネスアイデアを変えるか、アイデアを手放すかという心の整理を行うのだという。
この論文を引用した別の研究(Angusらによる、批判的フィードバックに誰がどう反応するかを扱った論文)は、パーソナリティの観点から実験を行った。100人ほどの大学生に新製品のアイデアを考えてもらい、ランダムに「平均以上」「平均以下」という評価を返して、誰がアイデアを変えるかを調べたものだ。まず「平均以下」と言われた人は、全体としてピボットしやすくなった。これは予想どおりだと話者は言う。興味深いのは、批判を受けた人の反応がパーソナリティによって異なった点である。自分の行動を観察・理解して動いている人や、物事を前向きに捉え直す力が強い人は、批判されても意外とピボットしなかった。話者は、自分のこれまでの行動に納得しているため、一度批判されても「これで大丈夫」と考えるのではないかと推測している。一方、課題を解くことへのモチベーション(タスクモチベーション)が高い人は、成果を出す意識が強いため、批判されるとピボットしやすかったという。
話者はここから、アイデアをアイデンティティと結びつけている人は変えにくく、目的を達成するための仮説と捉えている人は成果の観点から変えやすいのだろうと解釈した。支援する側としては「ピボットした方がいい」と伝えることはほとんどなく、何を実現したいのかを整理したうえで、そのために何を変え、何を残すかを一緒に考えることが大切なのではないか、と話を締めた。聞き手は「前向きに考え直す人の方がピボットしづらい」という結果を、言われてみれば確かにそうだと受け止めた。論文紹介のコーナーを作ってはどうかという話も出たが、毎週は難しいとしつつ、AIを使えば重要な論文の音声化などはできるかもしれない、という話になった。
Tempoの全体像:天然ガスの熱を熱化学バッテリーで置き換える
Tempoは、産業に必要な高温の熱を、現在の主な熱源である天然ガスの燃焼に代えて供給しようとする企業だ。マグネシウム・マンガン酸化物を使った熱化学バッテリーを開発し、提供している。
社名はもともとRedoxBloxだった。Redoxは酸化還元の略称で、Bloxは「ブロック(積み木)」を格好よく綴ったもの。つまり「酸化還元の積み木」を意味し、技術的に何をしているかは分かりやすい名前だった。しかし商業的にスケールしていく段階では、反応の仕組みを示す名前では顧客に伝わりにくい。そこで、顧客にとっての価値から社名を考え直したという。工場の連続操業のペースを守り、熱を安定して届け、燃料費を下げる、信頼できるビジネスパートナーであることを示すため、Temperature(温度)やタイムシフティングのT、Pace(ペース)のPなどを組み合わせて「Tempo」にしたと紹介された。聞き手はSEOの面で大変そうだと指摘し、解説役も「Tempo」で検索しても出てこず、RedoxBloxの方が明らかに上位に出ると認めた。リブランディングの一環ではあるが、どうするのだろうとも話している。
事業の構造はシンプルだ。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは出力にムラがあり、導入が増えすぎると日中の電力価格が非常に安くなる。ただ同然、あるいはマイナス価格になる時間帯も増えている。Tempoはその時間帯に電気を買って熱化学バッテリーを充電し、熱として取り出す。一方、重工業の工場は24時間365日、途切れなく高温の熱を必要とする。発電のムラと常時の熱需要の間のギャップを埋めることがTempoの役割だと説明された。
なぜリチウムイオン電池ではないのか
よく出る疑問として、リチウムイオン電池では駄目なのかという問いが挙げられた。解説役の答えは、コストが高すぎるという点に尽きる。工場が必要としているのは電気ではなく高温の熱であり、リチウムイオン電池に電気を貯めてから熱に変えるのは割高になる。
特に初期コストの差が大きいという。リチウムイオン電池はリチウムやコバルトなど高価な金属を多く使うため、容量あたりのコストが1kWhあたり600〜1000ユーロ程度になる。これに対し、Tempoのような蓄熱・熱化学システムはマグネシウムやマンガンなど豊富な素材を使うため、蓄熱のコストは1kWhあたり20〜80ユーロ程度になるとされる。数分の一以下のコストになり、設備投資額が大きく変わるというのが主な理由だと紹介された。
顧客の課題:連続して高温の熱を使う重工業
ターゲット顧客は、セメント、金属、化学、食品など連続稼働のプロセスを持ち、100〜1200℃の熱を連続的に必要とする重工業の企業だ。米国では産業熱の約95%がいまだ化石燃料、特に天然ガスに依存しているという。既存の代替策には電気ボイラーやリチウムイオン電池があるが、電気ボイラーは電気代の高い夕方や夜にも動かすとコストがかさむ。リチウムイオン電池は高温の熱をそのまま出せず、設備コストも高い。電気を単に熱に変えるだけでは、コスト面で厳しいとされた。
聞き手は、工場側に脱炭素のニーズはどの程度あるのかと尋ねた。解説役によれば、工場はまだそれほど焦っていないようで、安くて安定しているなら天然ガスのままでいい、というのがおそらく本音だという。そのためTempoは脱炭素だけでなく、コスト削減と、燃料価格の変動に対するヘッジを売りにしている。
必要な温度帯は業種によって異なる。セメントでは800〜1500℃の高熱が必要で、石灰石から二酸化炭素を追い出す焼成(カルシネーション)工程などで使われる。金属産業では200℃から1000℃以上、製錬では1500℃を超える温度が必要になる。化学産業は100〜900℃と幅が広く、蒸留・精製、熱分解、乾燥、合成や触媒反応のための熱として使われる。食品は他より低い100〜300℃で、牛乳の殺菌、食品の乾燥、揚げ物などに使われるという。
解決策:マグネシウム・マンガン酸化物の熱化学バッテリー
Tempoが提供するのは熱化学バッテリーである。解説役は、詳細はおそらく企業秘密で、調べてもあまり出てこなかったと前置きしたうえで、公開情報から分かる範囲の仕組みを説明した。材料は、地球上に豊富にあり安全なマグネシウム・マンガン酸化物だ。充電時には電気で材料を加熱し、酸素を放出させて化学エネルギーとして蓄える。放電時には空気を吹き込み、材料が酸素を吸収して酸化する。その反応熱で100〜1200℃に加熱された空気が生まれ、それをそのまま工場に送る。4時間で充電し、24時間連続で熱を出せるとされる。化学式自体はシンプルだが、実際はもっと複雑だろうと解説役は付け加えた。実績としては、UC San DiegoやDow Chemicalなどと実証を進めているという。
聞き手は、電気と化学反応を繰り返すと劣化しそうだと疑問を投げた。解説役もまさにそこが肝だろうとしつつ、詳しい情報は見つからなかったと答えた。そのうえで、研究の過程で、多数のサイクルを回しても劣化が見られない素材を発見したことが強みだと紹介した。特徴的な性質として、この材料は「電気を通すセラミック」だという。一般に皿やレンガなどのセラミックは絶縁体だが、この材料は600℃以上になると電気を通すようになる。こうした性質が劣化しにくさと関係しているのかもしれないが、技術的な細部は分からない、と解説役は留保している。
市場:大きいのに見過ごされてきた産業熱
解説役によれば、この市場はEVやデータセンターより大きいとも言われる。世界の最終エネルギー消費の約半分は熱で、その多くを重工業が占める。産業用熱を完全に電化する市場のTAMは約6兆と言われているという。一方、気候テックへの投資は電力やEVに偏っており、産業熱セクターにはあまり投資が向かってこなかった。市場の成長要因としては、再生可能エネルギーの増加によって電力が安く供給される時間帯が出てきたことと、炭素規制の強化や企業に対するスコープ1排出削減の圧力が挙げられた。
聞き手の「市場は大きいのに見過ごされがちだ」という指摘に対し、解説役はAIに理由を尋ねた経緯を話した。最初の答えは「地味だから」だった。さらに聞くと、ソフトウェアやEVのような派手さがないことに加えて、産業顧客が保守的で生産ラインの変更を嫌うため入り込みにくいこと、天然ガスが安すぎて対抗しづらいこと、立ち上げに大きな投資が必要なのにリスクマネーが投じられにくいことが挙がった。こうした背景から、この分野のディープテックは発展しにくかったという。大企業は既存ボイラーの効率化に注力しがちで、新技術の開発はカニバリゼーションにつながる。そのため熱化学のような技術を統合していく部分では、スタートアップの機動力が強みになるのではないか、と解説役は見ている。
ビジネスモデル:機器販売、保守、熱の従量課金
収益モデルはまだ確定していない。想定されているのは、ハードウェア機器の販売、長期的な保守契約、熱そのものを従量課金で売る仕組みである。プロダクトを売ること自体は決まっているが、保守的な顧客を相手に導入を進めることや、国・地域ごとの法規制に対応することを踏まえ、どの売り方が最適かを今まさに検証している段階だという。
最大の強みは、1kWhあたりのコストの低さとされる。リチウムイオン電池より断然低く、将来的には天然ガスを買うより、安い余剰電力と高密度な自社製品を組み合わせた方が安くなることを目指している。ただし解説役は、この点は現時点では不透明だと付け加えた。製造コストについては、材料がレアメタルではなくマグネシウムとマンガンなので、量産効果が効けば下がるとされている。
ハードウェア販売と熱の販売のどちらが主流になるかについては、初期は工場側が初期投資のリスクを避けるために熱を買う形を好む傾向があり、競合のRondo Energyもこのモデルを採っているという。将来的には変わる可能性もある、と解説役は述べた。
戦略:コンテナ化、ファブレス製造、ドロップイン
Tempoはハードウェア企業だが、プロジェクトごとに特注品を作るのではなく、標準化されたコンテナサイズの製品を軸に展開する。巨大な自社工場は建てず、契約製造会社と組むファブレス方式で製造することを考えているという。
もう一つの大きな特徴がドロップイン設計だ。工場の既存設備を全面的に入れ替えるのではなく、今ある天然ガスの配管に接続するだけで使えるようにしている。導入手順としては、既存の天然ガスバーナーを炉の接続部から取り外し、その位置にTempoから伸びる加熱空気のパイプを取り付けるという。加熱される炉の側から見れば、ガスを燃やした熱風が入ってもTempoからの熱風が入っても物理的には同じなので、工場は生産ラインや配管を改造する必要がない、という説明である。解説役自身は、実際にどうなるのだろうという疑問も口にしていた。
ロードマップ:大学研究から量産、欧州展開へ
ロードマップは、技術を開発して広げていく典型的な形だと紹介された。フェーズ1は大学での基礎研究から始まり、DOE(米エネルギー省)などの助成金を使ったパイロット実証。現在はフェーズ2の量産体制確立の段階にあり、Tempoへのリブランディングとともにサンディエゴに新本社を構え、量産体制に入った。フェーズ3は海外展開で、オーストリアとスペインに拠点を構え、天然ガスが高く規制も厳しい欧州を主戦場にしようとしている。
米国企業がなぜ欧州を狙うのかという問いには、ロシアからのガス供給問題などで欧州の天然ガス価格が高騰しやすく、炭素規制も厳しいため、Tempoの経済合理性が響きやすいからだと説明された。
競合:Rondo Energy、Antora Energyとの違い
直接の競合として挙げられたのは、レンガを加熱して蓄熱するRondo Energyと、炭素ブロックを使うAntora Energyである。提供できる最高温度などは各社で異なるが、Tempoの優位性は、単なる顕熱の蓄熱ではなく化学反応も利用するためエネルギー密度が高いことだとされる。また、1200℃の加熱空気を直接出せるので、既存のガスバーナーの配管につなぎやすく、ドロップイン性が高いという。そして最大の競合は、実は「天然ガスを使い続けること」であり、これに勝つために価格を下げ続けようとしている。
聞き手は、Rondo Energyの方が技術的にシンプルで良さそうに見えると指摘した。解説役もRondoの方が実際に先行しており、技術も非常にシンプルだと認めた。そのうえでTempoは、高密度でよりコンパクトに設置できる点と、空気で熱を運べる点で逆転を狙っているようだと述べた。
参入戦略:天然ガス設備を残すハイブリッド運用
参入先のターゲットは、食品、飲料、化学など、熱を連続して使う工場である。工場全体を電化したり既存の天然ガス設備を廃棄したりするのではなく、天然ガスの燃焼器をバックアップとして残すハイブリッド運用を提案して入っていったという。Tempoのシステムを主熱源としてバイパスで接続し、Tempoが止まったときや電気が高いときにはガスバーナーに切り替える。これによって「ラインが止まったらどうするのか」という工場側の不安を解消している。
顧客の導入の決め手になる数字としては、初期投資を何年で回収できるかと、熱の製造単価(1kWhあたりのドル)が挙げられた。補助金なしでもガスより安くなるという見通しを示せることが決め手になるだろう、と解説役は述べた。
起業の経緯:大学研究、DOEグラント、偶然の発見
起業のプロセスは比較的ストレートだと紹介された。出発点はミシガン州立大学の研究室でのブレイクスルーで、そこからいきなりVCの資金を入れるのではなく、DOEなどのグラントを使って技術リスクを潰していった。技術が証明された段階でプロの経営者を招き、経営とスケールの基盤を固めたという。
研究の源流は2000年代後半にさかのぼる。ジェームズ・クラウスナー教授は、太陽の熱で水や二酸化炭素を分解し、燃料となる合成ガスを作る技術に取り組んでいた。そのためには1000〜1500℃の高温で酸素を吸ったり吐いたりできる、酸化還元材料が必要だった。しかし当時研究されていた材料は1000℃を超えると粒子同士がくっついて塊になってしまい、何サイクルも回すことができなかった。そうしたなか、フロリダ大学でクラウスナー教授のもとにいた博士課程の研究者が、マグネシウムとマンガンを組み合わせると固まらないことを見つけた。これを蓄熱バッテリーに使えばよいと考えたところ、ちょうどARPA-Eに長期エネルギー貯蔵のグラントがあり、そこに応募して研究が発展していったという。
聞き手は偶然が重なってうまくいった印象だと述べた。解説役は、実際にはもっといろいろあったはずで、後からストーリーだけ描くと綺麗になるとしつつ、グラントの存在が燃料製造から蓄熱バッテリーへの転換のきっかけになった点で、方向付けに効いたのだろうと見ている。さらにクラウスナー教授はARPA-Eでプログラムディレクターを務めた経験があり、公的資金の獲得や実証のプロセスに詳しかったことも有利に働いたのではないかという。聞き手が冗談めかして「ずるい」と言うと、解説役は、詳しい人がいると物事が早く進むので、エコシステムごと作っていく必要があると改めて感じると応じた。
初期の学び:環境価値から経済合理性への転換
創業チームは当初、CO2をどれだけ削減できるかという環境価値を前面に押し出していた。しかし実際の顧客である工場の責任者からは、環境のためにコストが上がるのでは取締役会で許されない、という反応が返ってきたという。そこでメッセージを転換し、CO2削減はあくまで副産物と位置づけ、天然ガスより安いエネルギーであることと、操業を止めずにドロップインで導入できることを売り文句にしていった。
聞き手が経済性重視は求められているのかと尋ねると、解説役は、これまで番組で紹介してきた企業でも同様だったと答えた。金利が上がって資金調達が厳しくなってからは、「環境に良いから高くても買う」というグリーンプレミアムに依存するモデルは投資家から敬遠されやすく、経済性が重視されるようになっているという。現CEOのRomano氏もインタビューで、脱炭素は経済的な妥協なしに実現されなければならないと明言しており、それがTempoの目指す世界なのだろうと解説役は述べた。
資金調達:4000万ドル超は量産に足りるのか
資金面では、シード期にBreakthrough Energy Venturesが入り、シリーズAでは総額4000万ドル超を調達した。気候テックやディープテックの目利きとしてトップクラスのKhosla Venturesが入っている点も特徴だという。加えて、DOEなどから累計1560万ドル以上のグラントを得ており、サンディエゴの新しいR&D施設でギガワット時級の量産に向けた準備に入っているとされる。
ハードウェアの量産に4000万ドルで十分なのかという問いに対し、解説役は、自社工場を建てるなら全く足りないが、ファブレスで契約製造するため設備投資が小さく、必要額も小さくなっているのではないかと答えた。ただし足りるかどうかは分からないという。次の調達のタイミングについては、Dow Chemicalなどでの初期商業プラントが実際に稼働し、コスト目標が実績として示された段階で、グローバル展開の資金を集めるのではないかと予想した。
日本市場への応用アイデア
最後に、AIに日本での事業アイデアを考えさせた結果が紹介された。前提として、日本でも再生可能エネルギーが余るエリアがあり、九州、そしておそらく今後は北海道などで、太陽光発電を捨てる出力制限が深刻な問題になっている。これを踏まえてAIは3つの案を出した。
- 案A(地産地消型):九州エリアの工場向けに、出力制限で捨てられている電力を買い取り、熱にして売る。
- 案B:既存のボイラーメーカーなどと組み、Tempoのような蓄熱システムを後付けパッケージとして展開する。
- 案C:日本が得意とするセラミックスや酸化物の素材技術を生かし、Tempoの1200℃を超える高温に特化した素材を開発し、鉄鋼やセメントなど別の業界で勝負する。
聞き手は案Bについて、既存のボイラーメーカーが協力してくれるのかと疑問を示した。解説役は、ボイラーメーカーも脱炭素の流れで電気ボイラーを開発しているが、電気代の高さがネックになっているため、蓄熱と組み合わせることはボイラーメーカーにとってもプラスになるかもしれないと答えた。
まとめ:ディープテックを経済合理性で売る
解説役は3点にまとめた。第一に、ディープテックを環境価値だけで売るのではなく、顧客の損益に直接効く経済合理性から入っていくこと。第二に、顧客の既存インフラを全面的に置き換えるのではなく、バックアップとして残すことで導入リスクを下げられること。第三に、公的なグラントで技術リスクを下げてから、VCの資金を入れてスケールすること。今すぐできるアクションとしては、出力制限が起きている地域や時間帯、24時間稼働の工場がないかを調べてみると、面白いビジネスの種が見つかるかもしれない、と提案した。
聞き手は、これまで紹介してきたスタートアップ、特にシリーズA・Bまで進んだ企業には、ドロップインとモジュール化がある程度共通しているのではないかと感想を述べた。解説役もこれに同意し、既存の施設に入りやすくすることと、スケールして価格を下げていくことの両面で、モジュール化とドロップインが鍵になるのだろうと話して番組を終えた。
皆さん、こんにちは。FoundXのです。
同じくFoundXのと田です。今日の雑談ですが、最近たまたま見つけた論文について紹介したいと思います。ピボットについての話です。
スタートアップだと、アイデアを大幅に変えることをピボットと呼びます。最初の案に固執せずに転換することをピボットと呼んでいますが、私たちが起業家の方々を見ていて、それは簡単には起きないなというのは感じるところではありました。
ピボットについて書かれたグリムスさんの「ピボット」という論文だと、本当に実際簡単じゃないというところが書かれていて、なぜかと言うと、創業者にとって事業アイデアというのは、単なる自分と関係ないビジネスの案じゃなくて、自分らしさとか、自分がこういう風に世界を見ているというところと結びついているからです。なので、誰かにこのアイデアは筋が悪いと言われると、そのアイデアではなくて、自分が否定されたという風に感じることがあると。そうなった時に、アイデアを守るのか、あるいはそのアイデアが目指すようなビジョンと実際の具体的な案を切り分けて、ビジョンは守るけどビジネスのアイデアは変えるよという風にするのか、あるいはアイデアをもう手放してしまうのか、そういう心の整理が行われるという話があって、なるほどなというのが1つです。
そこからさらにそれを引用した論文だと、じゃあ誰がピボットするんだという話もありまして、アンガスさんという方たちの「Who Responds to Critical Feedback」という論文だと、もう少し実験でやられているんですけど、批判的なフィードバックを受けた時に誰がプロダクトの案を変えるのかというのを、パーソナリティの観点から分析しているようです。
やったこととしては、大学生100人超ぐらいの人に根長職のアイデアを考えてもらって、ランダムに「あなたのアイデアは平均以上です」「平均以下です」という風な評価を返して、どういった人がアイデアを変えるのかというところを調べたらしくて、まず平均以下と言われると、そもそもピボットしやすくなるというのはあるらしいです。これはまあそうだろうなと思うんですけど、面白いのは、批判的なフィードバックを受けた中でも、みんなが同じように反応したわけじゃなくて、パーソナリティによって少し違いがあったと。
どういうパーソナリティかと言うと、自分の行動を観察して理解して動いている人とか、物事を前向きに考え直して次に繋げていこうという力が強い人は、批判されても意外とピボットしないというのがあるらしくて、自分の今までの行動に自信がある、納得しているから、1回批判されても「いや、これでも大丈夫」って思うのかなというところなんですけど、なかなか動かないと。一方で、タスクモチベーション、課題を解くというようなモチベーションが高い人とかは、批判されると成果を出すというところの意識があるので、ピボットしやすいという結果があったそうです。
これは結構面白いなと思っていて、このアイデアが自分そのものだというか、アイデンティティと結びついている人だと、やっぱりアイデアを変えにくいし、逆に目的を達成するための仮説だと捉えていると、成果を上げるという観点で変えやすいのかなという風に思います。なので、我々の立場からすると、ピボットした方がいいよとか、そんなことを言うことはそうないですけど、そういうところではなくて、もう少し何を実現するといいのかといったようなところの整理から、じゃあそのために何を変えるか残すかという話を一緒にしていくところなのかなと思いましたという話でした。ちょっと長くなりましたが。
面白いですね。前向きに考え直す人の方がピボットしづらい。言われてみれば確かになとは思いますけど。
いや、そうなんですよね。なかなか面白いなと思いますね。
なんか論文紹介を始めたらいいんじゃないですか?
いやあ、もう毎週は無理です。でもAIがあるから確かにできるかもしれないですね。
ああ、確かに。確かに。そういうのはできそうですね。確かに重要な論文とかを音声化するとかできるかもしれないですね。というところで雑談は以上として、IdeaCastのコーナーに移っていきたいと思います。
FoundX Review Startup IdeaCastですが、海外のスタートアップのアイデアをAIを使って分析して紹介する番組になります。これからアイデアを考える方のご参考になればと思います。最初にディスクレーマーですが、AIを活用して情報を整理しているので、一部の情報が古かったり間違ったりしている場合もあります。ファクトを重視される場合は必ずご自身で調べていただくようにお願いいたします。本ポッドキャストはあくまでそこからアイデアの参考情報や考え方を引き出すことを目的としています。
というところで、今日はTempo、今の名前を書いたんですけど、元々はRedoxBloxと言っていた会社になります。
なぜ今回これを選んだんでしょうか?
そうですね、産業の熱利用を全然知らないので調べたいなというところはあったんですが、産業で熱ってエネルギーの消費量として大きいと言われつつ、トラディショナルなところなのであまり進んでないみたいなのもあったので、どれぐらい重要なのかとか、どういった技術があるのかというところをご紹介できたらと思います。
ちょっとご説明に移りたいんですが、一言で言うとこのTempoが何をしている会社かと言うと、産業用に必要な高温の熱を、今は天然ガスを燃やして作っているので、それを脱炭素化するために、マグネシウム・マンガン酸化物を用いた熱化学バッテリーを開発して提供しているスタートアップになります。
入る前にTempoに変えた理由なんですが、RedoxBloxというのは、Redoxというのが酸化還元の略称で、Bloxというのは積み木のかっこいい書き方みたいなところだったので、RedoxBloxだと「酸化還元積み木」みたいな感じで、どんなプロダクトなのか、技術的に何かというのがかなり分かりやすい名前だったと。ただ、これから商業的にスケールするにあたって、酸化還元の積み木と言われてもなかなか顧客に伝わらないというところで、反応の話ではなくて、顧客に対してどういう価値があるかというところを考えて名前を変えたらしくて。
顧客に対しては、工場の連続操業のペースを守って、熱を安定して届け、光熱費を下げるところで信頼できるビジネスパートナーであるというところを示すために、TemperatureのTとTime-shiftingのT、あとPaceのPみたいに取ってTempoにしたらしいです。
なんかむちゃくちゃあれですね。SEO対策的には結構大変そうじゃないですか?
いや、そうなんですよね。Tempoで調べても出ないからどうするんだろうとは思うんですけど。一応リブランディングの一環としてやったそうです。そうなんです。RedoxBloxの方が明らかに1位で出てくるので、ちょっとどうするんだろうなとは思います。
では全体像の話をしたいと思います。話した内容と重なっちゃうんですが、Tempoがやろうとしているところはシンプルでして、産業用熱の脱炭素化を天然ガスより安価な熱化学バッテリーで実現するというところなんですが、提供している価値自体は、安く電気を買って熱を高く売るという「Buy Low, Heat High」というところを言っているそうです。
何をインプットするかというところで、太陽光とか風力の再生可能エネルギーですが、これはかなりムラがあるというので、増えすぎると日中には電力価格がとても安くなってしまう。ただ同然あるいはマイナス価格になる時間帯が増えているんですね。ここの電気を買って彼らの熱化学バッテリーを温めて、それを熱として出すというところです。
重工業の工場は24時間365日途切れることなく高温の熱が必要となっているというので、ムラがあるところと、ずっと必要なところのギャップを埋めるというのがTempoの役割になっているようです。
ちなみに、よく聞かれる質問だと思いますが、リチウムのバッテリーだとダメな理由は一体何なんでしょうか?
そうですね。私もちょっと気になったんですが、要はコストが高いというのが大きなところです。工場が必要としているのは電気ではなくて熱なんですね。高温の熱です。なので、リチウムイオン電池に電気を貯めてそれを熱に変えるというのは結構コストが高くなってしまうそうです。大きいところとしては初期コストが全然違うらしくて、リチウムイオン電池だとリチウムとかコバルトとか、ちょっと高い金属をたくさん使うので、容量あたりのコストが1kWhあたり600から1000ユーロぐらいになるらしいと。一方でTempoのような蓄熱とか熱化学のシステムを使うと、マグネシウム、マンガンといったような豊富な素材を使うので、蓄熱のコストが1kWhあたり20から80ユーロになるらしくて、そうなると本当に数分の1のコストになるというところで、CapExが変わってくるというのが大きいようです。
では、このTempoの顧客が抱える課題についてです。まずTempoのターゲット顧客ですが、セメントとか金属、化学、食品といったような連続稼働のプロセスがあって、そこで100から1200°の熱を連続的に必要とするような重工業の会社になっています。
この会社さんの課題というところがありまして、脱炭素をしないといけないというプレッシャーはあるんですが、アメリカの話をすると、そこの産業熱の約95%はまだ化石燃料、特に天然ガスに依存しているそうです。既存の解決策として電気ボイラーとかリチウムイオン電池があるんですが、電気ボイラーは電気代が高い夕方とか夜とかにも稼働させるとコストが大きくなってしまうというところで、リチウムイオン電池だと高温の熱をそのまま出すということができないですし、先ほど言ったように設備のコストがとても高くなってしまうというところで、電気を熱にするだけというところだと、コスト的にかなり厳しくて耐えられないというところになっているようです。
工場側は脱炭素に結構まだニーズがあるという感じなんでしょうか?
いや、そこまですごく焦っているというところではないらしいです。なので、安くて安定しているんだったら天然ガスのままでいいというのがおそらく本音だろうと。なので、脱炭素もそうなんですけど、それだけではなくて、コストが削減できますよというのと、価格変動のヘッジができますというところを売りにして、Tempoは顧客に売り出しているというところになっているそうです。
あとは熱と言っても、必要な温度帯は顧客によって色々と違うと思うんですけど、この辺りはどういう状況でしょう?
そうですね。先ほど挙げたところについてそれぞれお話ししていくと、セメント産業だと800から1500°の高熱が必要になってくるそうです。色々使うんですが、カルシネーション、石灰石から二酸化炭素を追い出すような工程でかなり使われるというところだそうです。
次に金属産業だと200°から1000°以上になってきて、精錬になってくると1500°を超えるような温度も必要になってくるそうです。次に化学産業だと100°から900°の広い範囲になってくるそうです。これは蒸留精製であるとか、熱による分解であったり、あとは乾燥とか合成といったところで、乾燥させたりとか触媒反応させるための熱として使うそうです。最後に食品なんですが、これは他のところよりは低くなっていて、100°から300°の温度になっています。使い道としては、牛乳みたいに殺菌するであるとか、食品の乾燥とか、揚げ物に使うというようなところになっているようです。
では次に解決策についてです。彼らが提供しているものですが、熱化学バッテリーになっています。これは多分企業秘密だと思うので、調べてもあまり詳しいところは出なかったんですが、彼らがやっているところとしては、地球上にたくさんあって安全なマグネシウム・マンガンの酸化物を使います。
化学式自体はシンプルなんですけれども、多分実際はもっと複雑だと思うんですけど、一応仕組みとしては、マグネシウム・マンガン酸化物を電気で加熱すると、酸素が出ていくので、充電の時にそれをすると化学エネルギーが蓄えられると。放電する時には空気を吹き込むと材料が酸素を吸収する、つまり酸化するので、そこの反応熱で100から1200°に温められた空気が生み出されるということのようです。この空気をそのまま工場に送るそうで、あとは4時間で充電して、24時間連続で熱を出せるような素材になっているそうです。トラクションとしても、UC San DiegoであるとかDow Chemicalといった化学メーカーとも実証しているようです。
出てくるのは熱された空気なんですね。
熱された空気みたいですね。なのでそれをそのまま既存の工場のパイプに繋いで使うというところですね。
電気を化学エネルギーにすることによって、劣化とかしそうな感じもするんですけれど、どうなんでしょう?
いや、本当にそうだと思うんですが、これは本当に企業秘密だと思うので全然出なかったんですが、強みとしてはそこになっていると。1回以上サイクルを回しても劣化が見られない素材を研究で発見したそうです。
どういう特徴かというと、面白いところがいくつかあるんですが、性質として電気を通すセラミックになっているらしくて、一般的にお皿とかレンガとかって絶縁体なんですけど、この材料だと600°以上になると突然電気を通すという珍しい性質があって、そういった性質があって多分劣化しない。ここら辺の技術的な細かいところは分からないですけれど、そういった特徴を持っているようです。
では、彼らの相対している市場についてです。この市場はかなり大きいところになっています。実はEVとかデータセンターよりも大きいとも言われています。世界の最終エネルギー消費の約半分は熱だそうでして、その多くが重工業に占められているそうです。TAMとしては、産業用熱を完全電化するような市場だと約6兆と言われています。
ただ、世の中の気候テックの投資とかだと電力とかEVに偏っていて、産業熱セクターというのはあまり投資がなされていないというところらしいんですが、市場の成長ドライバーとして、再エネ電力の増加に伴って安価に電力が供給される時間が出ていること、またそれから炭素規制の強化とか、企業に対するスコープ1の排出削減の圧力というところから市場が成長しているので、ここが取れると結構大きいんじゃないかという風に言われているようです。
市場は大きいんですけど、結構見過ごされがちですよね。
いや、そうなんですよね。ここら辺も聞いてみたんですけど、地味だからですって返ってきて、いやいや、もうちょっとあるだろうと思って聞いたら、地味というのもあるんですが、ソフトウェアとかEVみたいな派手なところではないというのと、産業の顧客が保守的でラインの変更を嫌うのでなかなか入っていきづらいとか、あとは天然ガスがアンカーすぎるので対抗しづらいというところと、開発していくには大きな投資が必要なんですが、なかなかそこにリスクマネーが投下されないというところで、ディープテックがなかなか発展しづらいという背景があったみたいですね。
こういう市場に対して、大企業とかは入ってこないんですかね?
そうですね。大企業だと、既存のボイラーの効率化というところに注力しがちでして、要は新しいものを開発するとカニバってしまうということだと思うんですが、なので根本的に熱化学といったような技術を使って統合してやっていくというところだと、スタートアップの機動力が強みになってくるのかなと思います。
では、彼らのビジネスモデルについてです。どういう風に収益を上げるのかというところですと、収益モデルはまだ決まっているというところではないんですが、ハードウェアの機器販売、それから長期的な保守契約、あるいは熱そのものを従量課金で売るような仕組みが想定されています。決まってないという風にも申し上げたんですけれども、プロダクトを売るという方向は明確に決まっているそうです。ただ、お客様が保守的なので、保守的な相手と話を進めるというところと、それから国とか地域ごとの法規制に対応するために、売り方は何がベストなんだろうというのを本当に今実証しているような段階になっているそうです。
彼らの最大の武器というか強みとしては、1kWhあたりのコストが低いことになっているそうで、これがリチウムイオン電池よりも断然低くて、将来的には、現在ちょっとそこは不透明なんですけど、天然ガスを買うよりも、安価な余剰電力と高密度な彼らの製品を使った方が安くなるというところで勝とうという風にしているようです。
この蓄熱モジュールの製造コストは安くなっていくんですかね?
そうですね。素材自体がレアメタルではなくてマグネシウム・マンガンなので、量産効果が効けば安くなるという風にされているようです。
あと、ハードウェアを売るのと熱を売るのと、どっちの方が主流になりそうなのかと言うとどっちなんでしょうね。
そうですね。初期については、工場側が初期投資のリスクをなくすというところで、熱を売る形が好まれる傾向にあるそうで、競合のRondo Energyさんもこのモデルを取っているそうです。将来的にはまた変わってくるかなと思います。
では、彼らの戦略についてです。彼らはハードウェア企業ではあるんですが、プロジェクト単位で特注品を作るというのではなくて、プロダクト主導で、標準化されたコンテナサイズのものを作って広げていきますと。一方で、自社で巨大な工場を建てるのではなくて、契約製造するような会社と契約して、ファブレスで作っていくということを考えているそうです。
あとは大きな特徴が、ドロップインになっているそうでして、工場の既存設備を全部入れ替えるのではなくて、今ある天然ガスのパイプに繋ぐだけで使えるように設計しているそうです。
ドロップインって結構聞きますね。
そうですね。やっていることとしては、既存のガスバーナーで出ている排気熱、その熱い風の物理的な性質を、Tempoで作ったような熱で再現して、そのまま穴に突っ込むというようなことだそうです。導入手順としてはシンプルらしくて、既存の天然ガスのバーナーを炉の接続部から取り外して、その場所にTempoから伸びる加熱された空気のパイプをくっつけるらしいと。
そんなこと、実際どうなるんだろうと思うんですけど、温められる側からすると、ガスを燃やして熱風が入っても、Tempoから熱風が入っても、結局物理的には一緒なので、工場側とかは特にラインとか配管を改造する必要がないということみたいです。
では、彼らのロードマップについてです。これはかなり分かりやすいというか、よくあるというか、技術を開発して広げていくというモデルになっています。まずフェーズ1としては、大学での基礎研究から始まって、DOEなどの助成金を使ってパイロットで実証していきましたと。現在はフェーズ2の段階、量産体制確立の段階になっています。先ほども申し上げたようにTempoというところにリブランディングして、サンディエゴに新しい本社を構えて量産体制に入ったというようなフェーズになっています。
最終的にフェーズ3ですが、海外に展開していくというところで、オーストリアとスペインに拠点を構えているらしくて、天然ガスが高くて、かつ規制が強まっているヨーロッパを主戦場として展開しようと考えているそうです。
なぜアメリカの会社なのにヨーロッパから攻めるんですかね。
そうですね。欧州が現在、ロシアのガス供給問題などで天然ガス価格が高騰しやすいこと、また炭素の規制も厳しいというところで、Tempoが経済的に合理性があるよというところが刺さりやすいということになるそうです。
では、彼らの競合についてです。ここでは、競合や代替手段と比較した時の違いについてお話ししたいと思います。直接的な競合としては、Rondo Energyさん、これがレンガを温めるような会社なんですが、ここと、あるいは炭素ブロックを使うようなAntora Energyさんになります。提供できる最高温度などは変わってくるんですが、Tempoの優位性としては、単なる熱だけではなくて化学反応も使うので、エネルギー密度が高くなることだそうです。あとは、1200°に加熱された空気を直接出せるので、既存のガスバーナーの配管に繋ぎやすい、ドロップインすることのできる性能が高いというところになっていますね。
最大の競合というか現状なんですが、そこが天然ガスを使い続けることなんですが、そこで勝つというところで、価格をどんどん下げていこうという風にやっているところになります。
Rondo Energyの方が技術的にシンプルで良さそうにも見えるんですが、他にもいろんな競争優位性があったりするんですかね?
そうですね。Rondoさんの方が実際先に進んでいるとも思いますし、技術としては非常にシンプルなところになっています。違いがあるとすると、Tempoだと高密度なので、よりコンパクトに置けるというところ。それから空気を使って熱を運べるというところで、逆転できるんじゃないかというのを狙っているようです。
では、彼らの参入戦略についてです。ターゲットは、食品、飲料、化学などの連続して熱を使うような工場になります。先ほどから申し上げているように、工場全体を電化するのではなくて、今ある天然ガスの設備を捨てるとかではなくて、今の天然ガスの燃焼器をバックアップとして残して、ハイブリッドでやっていきましょうというところで入っていったそうです。
Tempoのシステムを主熱源としてバイパスで接続して、Tempoが止まったり電気が高かったりすると、既存のガスバーナーに切り替えるバックアップにしましょうというようなハイブリッドの運用を提案しているそうです。これによって、ラインが止まったらどうするんだという不安を潰しているようです。
この時、顧客が導入を決めるような数字ってどういうものがあるんでしょうか?
そうですね。初期投資をどれぐらいの年数で回収できるかというところと、熱の製造単価ですね。円・ドル/kWhというところになっているようで、補助金がなくてもガスより使った方が安くなるというところが描けるところが決め手になるかなと思います。
では、彼らの起業プロセスについてです。かなりストレートなストーリーになっています。最初は西願就立大学の研究室でのブレイクスルーから始まったそうです。そこから、いきなりVCからお金を入れるのではなくて、エネルギー省、DOEなどのグラントを使って技術リスクを潰していったそうです。技術が証明された段階で、プロ経営者の方を招いて、経営とスケールの基盤を固めていったそうです。
元々の研究の発展なんですが、元々は2000年代後半から始まるそうで、ジェームス・クラウスナーさんという教授の方が、太陽熱化学の世界的な権威の方であったそうなんですが、ここで、太陽の熱を使って水や二酸化炭素を分解して不倫な合成ガスを作り出す技術というところに乗り出したそうなんです。ただ、そのためには1000度から1500°という高い温度の中で酸素を吸ったり吐いたりできるような、Redox、酸化還元するような材料が必要だったそうです。ただ、当時研究されていた材料だと、千度を超えちゃうと熱で粒子同士がくっついちゃって、塊に固まってしまって、何サイクルも回せないということがあったそうなんです。
ここの状況から、たまたまなのかな、分からないんですけど、フロリダ大学で、このクラウスナー教授の下で学んでいた博士の方が、研究の過程でマグネシウムとマンガンを組み合わせると固まらないというのを見つけたらしくて、どんな研究だったんだろうと思うんですけど、それでじゃあこれを蓄熱バッテリーに使えばいいじゃないかと。プラス、その頃ARPA-Eで長期エネルギー貯蔵のグラントがあったらしくて、そこに応募して、どんどん研究が発展していったということのようです。
すごい偶然が重なってうまくいっているという感じですね。
そうですね。多分実際はもっと色々あるとは思うんですけど、後からストーリーだけ描くとすごく綺麗にはなりますね。でも、そのグラントがいいタイミングであるとか、そういうのは大事だなと思っていて、なぜかと言うと、そういうのもきっかけになって、元々燃料を作るというところから蓄熱バッテリーという少し転換があったので、そこでグラントというのは方向づけに効いてきたのかなとは思います。
あと、このクラウスナー教授ですが、ARPA-Eでプログラムディレクターを務めていた経験があったそうで、なので公的な資金の獲得とか実のプロセス自体にもお詳しかったようで、そういったものもプラスに働いたのかなと思います。
すごいな。ずるいですね。
そうですよね。やっぱり詳しい人がいると早いんだなと思いますね。やっぱりエコシステムごと作っていかないといけないなと改めて思います。
では、彼らの学びと初期の歩みです。初期の壁ですが、創業チームは、最初はCO2がこれだけ削減できますというような環境の価値を押し出していたそうです。ただ、実際の顧客にあたるような工場の責任者の方からは、環境のためにコストが上がるのだとすると、取締役会で許されないですよというようなお話があったそうです。なので、そこからピボットをして、CO2の削減はあくまで副産物として、天然ガスより安いエネルギーと、操業を止めないでドロップインで入っていけるというところを売り文句にしていったそうです。
やっぱりこの経済性重視みたいなところは求められているんですかね?
そうですね。私たちが過去に紹介してきたところでもそうですし、金利が上がって資金調達が厳しくなってから、グリーンプレミアム、環境にいいから高くても買うというところに依存するモデルは、やっぱり投資家から敬遠されやすいというところで、経済性を重視するようになっているようですね。あとは今のCEOのロマノさんも、インタビューなどで、脱炭素は経済的な妥協なしに実現されなければならないという風に明言していて、そこ自体はTempoも目指している世界なのかなと思います。
では、彼らの資源についてです。資金調達ですが、シード期にBreakthrough Energy Venturesが入って、シリーズAで総額4000万ドル超を調達しています。Khosla Venturesだと、気候テックとかディープテックの目利きとしてトップクラスのVCが入っているというところは特徴になります。またDOEなどからも累計1560万ドル以上のグラントも得て、そういった資金を使っていって、サンディエゴの新しいR&D施設でGWh級の量産に向けた調整に入っているそうです。
ハードウェアの量産に向かって今4000万ドル。これは十分と言えるんでしょうか?
そうですね。自社で工場を建てるなら全然足りないとは思うんですが、ファブレスで契約した会社さんで作るというところなので、設備投資が小さくなっているというところで、足りるか分からないですが、必要な金額は小さくなっているということかなと思います。
次の調達はどういうタイミングで起きそうですかね?
そうですね。今やっているDow Chemicalなどの初期の商業プラントが実際に稼働して、コストの目標値が実証される実績として出たタイミングで、グローバル展開の資金を集めるために次の調達をするんじゃないかなと予想されます。
では最後に、日本での起業アイデアをちょっとAIにも考えていただいたんですが、日本でも実は再エネが安くなっているエリアがありますと。九州とそれから多分これから北海道とか、そういったところを中心に、太陽光発電が余っちゃって捨てられてしまうような出力制限が深刻な問題になっているというような背景がありますと。
なので、こういった背景をもとに、AIはアイデアを3つ出していて、案Aが地産地消型となっています。九州のエリアの工場向けに、捨てられているような電力を買い取って熱にして売るモデルです。案Bが、既存のボイラーメーカーさんなどと組んで、Tempoのような蓄熱システムを後付けパッケージとして日本に展開していくようなモデルになります。案Cが、日本の得意なセラミックスとか耐火物の素材の技術を生かして、Tempoは1200°ですけど、これを超えるような高温に特化したような素材を開発して、鉄鋼とかセメントとか異なった業界の方向けに勝負するのはどうでしょうかというところを出していただきました。
既存のボイラーメーカー、2つ目のアイデアですけど、協力してくれるんですかね?
いや、確かにそうですね。そこはありそうな気はしますが、確かに。ただ、ボイラーメーカーさんも脱炭素化の波で電気ボイラーなども開発されているそうです。ただこれが電気代の高さがネックになっているそうなので、蓄熱と組み合わせるというのは、もしかしたらボイラーメーカーさんにとってもプラスになるのかもしれません。
では最後にまとめになります。まず1点目ですが、ディープテックは環境だけで売るのではなくて、経済合理性で入っていくと。顧客のPLに直接効いていくようなところから設計していくといいんじゃないかというところになります。2点目ですが、顧客の既存インフラを全部置き換えるのではなくて、バックアップとして残すということで、導入のリスクを下げることができるという点です。3点目ですが、資金調達について、公的なグラントも活用して技術的なリスクを下げてから、VCのマネーを入れてスケールするというのがいいんじゃないかというところになります。
今すぐできるアクションとして、出力制限が行われているような地域や時間帯がないかとか、24時間稼働の工場がないかというのを調べてみると、もしかしたら面白いビジネスの種が見つかるかもしれません。
では以上、今日はTempoをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
そうですね、これまで紹介してきたスタートアップとの共通点を思うと、このドロップインとモジュール化みたいな、この辺りはシリーズA、Bぐらいまで行っているスタートアップにある程度共通しているようなところなのかなと思いながら聞いていました。
確かにすごく共通しているところになりますね。やっぱり既存の施設に入りやすいというところと、スケールして価格を下げていくというところで、モジュール化とドロップインというのが鍵になってくるのかなと思いました。
では今日はこちらで終了となります。FoundX Review Startup IdeaCastですが、今後も皆さんのアイデアのために最新のスタートアップをご紹介していきます。ご興味のある方は是非チャンネル登録や高評価をお願いいたします。またFoundXの各プログラムでも応募者の方を募集していますので、周りにご興味のありそうな方がいらっしゃったらご紹介いただけると大変ありがたいです。ではまた次回よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
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