動物実験を人組織・ロボット・AIで置き換える Vivodyneが目指す「創薬のOS」
東京大学FoundXFoundX Review Startup IdeaCastは、海外スタートアップのアイデアをAIで整理・分析して紹介する番組である。今回取り上げたのは、ペンシルベニア大学発のVivodyne(ビボダイン)だ。同社は、ラボで培養した人の組織、ロボティクス、AI解析を組み合わせて動物実験を置き換え、人間に最適化された創薬インフラを作ろうとしている。解説役は、同社を選んだ理由として、自身が治らない免疫系の持病を抱えており、こうしたスタートアップによって治るようになればと考えたことを挙げた。番組の冒頭では、生成AIがスタートアップの人材構成に与える影響を扱ったワーキングペーパーも紹介された。
なお番組側は、情報をAIで整理しているため一部が古かったり誤っていたりする可能性があり、事実を重視する場合は各自で確認してほしいと断っている。
冒頭の話題:生成AIはスタートアップを「少人数で速く進む会社」に近づけたか
冒頭で紹介されたのは「Generative AI & Entrepreneurship」というタイトルのワーキングペーパーである。生成AIがアメリカのスタートアップにどんな影響を与えたかを調べた研究で、結論は、スタートアップを少人数で速く進む会社に近づけたというものだという。
研究では、ChatGPTの登場以前から業務内容が生成AIの影響を受けやすかったスタートアップほど、2四半期、つまり半年以内に雇用が減ったとされる。特に減ったのはジュニア層や、実装・実務を担う職種だった。人を多く雇って実務を積み上げる成長の仕方ではなくなってきている可能性が示されている。ただし会社が弱くなったわけではなく、より早く事業を拡大し、資金調達ラウンドも進みやすくなったという。紹介者は、少ない人数でより多くのアウトプットを出せるようになった可能性がある点、そしてAIで仕事がなくなるかという話ではなく、人材構成や成長の仕方が変わっている点が面白いと述べた。
一方で懸念もある。コーディングやコンサルティングの分野で以前から言われているように、ジュニア層の雇用が減れば、若手が経験を積む入り口が細くなる可能性がある。また研究によれば、職を失った労働者はより長い失業期間を経験し、AIの影響を受けにくいが賃金は低い仕事へ移る傾向もあったという。紹介者は、高い賃金を得られる状況を良しとするなら、AIがネガティブに働く可能性もあると話した。
対象はIT系やB2B向けのビジネス製品が多かったが、具体的な中身まではあまり示されておらず、ミクロに見れば違う姿が見えるかもしれないという。聞き手は、ちょうど最近Andreessen Horowitzがこれを否定するような記事を出していたことに触れ、この分野ではまだまだ議論や異なるエビデンスが出てきそうだと応じた。
Vivodyneの全体像:「生物学のAWS」を掲げる
本編の解説役は、Vivodyneを単なるバイオベンチャーではなく、ハードウェア、ソフトウェア、そしてバイオの専門技術を組み合わせた企業だと説明した。事業が複雑なので上手く紹介できるか自信がないと前置きしつつ、同社が「生物学のAWS」になるという壮大な構想を持っていると紹介した。最終的な目標は、ラボで培養した人組織とロボティクス、AIを融合させて動物実験をなくし、人間に最適化された創薬インフラを作ることである。
なぜ今この事業が必要なのか。解説役は二つの理由を挙げた。一つは、動物実験をクリアした新薬候補の95%が人の臨床試験で失敗しているという歩留まりの悪さ。もう一つは、2022年に規制が変わり、新薬申請の際にそれまで義務だった動物実験が撤廃されたことで、事業の追い風になっている点である。
動物実験で成功した薬がなぜ人で95%も失敗するのか。解説役は、当たり前ではあるがマウスは人ではないという根本的な生物学的違いが大きいと説明した。特に最新の細胞治療などでは、マウスで通用しても人間には毒になったり、うまく働かなかったりすることがあると考えられているという。聞き手が規制変化の影響を尋ねると、法的義務だから動物実験をしていた部分について、より精度の高い代替手段に置き換えるインセンティブが生じたと答えた。
課題:臨床での失敗コストと、既存の代替手段の限界
臨床試験で失敗すると、数百億円から数千億円規模の損失に直結するという。そのため製薬企業の支払い意思は非常に高い。顧客として想定されているのは、大手製薬企業の安全性・有効性評価チームやR&Dチーム全般である。
既存の代替手段としては、平面での細胞培養や、単純なオルガノイド(細胞の集まりで作るミニ臓器)がある。しかしこれらには血管がなく、細胞間の相互作用もないため、人の体を再現しきれていない。その結果、薬がどう働くか、時間の経過とともにどう影響し合うかが見きれないと解説役は説明した。
聞き手がオルガノイドの限界をもう少し詳しく尋ねると、解説役は二点を補足した。一つは、従来の手法が手作業中心でスケールしないこと。もう一つは、オルガノイドはもともと生体環境に近づけるために登場し、幹細胞を自己組織化させて小さな臓器の3D構造を作れるものの、血管がないため、栄養を運んだり老廃物を排出したりといった実際の臓器の動きが見えないことだ。Vivodyneが開発する生体模倣チップはオルガノイドをさらに発展させたもので、血管や細胞間の相互作用を観察できる点が特徴だという。
解決策:人組織、ロボティクス、AI解析の三要素
トラクションとして、世界トップ10の製薬企業の過半数がすでに提携または利用していると紹介された。提供形態はData as a Service、あるいはPlatform as a Serviceである。顧客はテストしたい薬の候補や検証したい具体的な問いをVivodyneに送り、同社がロボットなどを稼働させて得た臨床予測データと、AIによって最適化されたインサイトを受け取る。
一つ目の要素は人組織である。Vivodyneは血管網を持つリアルな3Dの人組織を培養でき、その細胞数は20万から50万に及ぶという。平面培養の先にある技術で、血管を持つことで薬が働くプロセスを時間的なダイナミクスとして再現できるとされる。
二つ目はロボティクスで、1回の稼働で1万個以上の独立した組織を、人の手を介さずに同時に培養・投薬・観察できる。解説役によれば、既存の受託サービスでは人が作業に入り、ピペットの押し方などがノイズとなってAIの学習データに混入してしまう。ロボティクスによって、短時間で膨大かつ質の高いデータを獲得できるという。聞き手が1万という数字の水準を尋ねると、手作業では数十から数百程度が限界だったとされ、桁がいくつも違うことでスループットと再現性を担保できる点が強みだと答えた。
三つ目はAI解析である。ロボティクスで取得した画像、単一細胞RNA、タンパク質などの複数のデータをAIで分析し、人で試験したらどうなるかを予測してデータとして提供する。マルチオミクス解析について聞き手が説明を求めると、解説役は、細胞の形を画像解析するだけでなく、遺伝子の発現状況や分泌されるタンパク質など複数の生体情報を統合して解析することだと述べた。見た目の変化、細胞内の設計図(遺伝子)の変化、その結果として出てくるもの(タンパク質)の変化を取得し、AIで結びつけて人体の反応を再現しようとしているという。聞き手はこれを、ウェット・ハード・ドライのすべてを組み合わせた事業だと整理した。
市場規模と規制の広がり
解説役は、TAMとSAMの数字の大小が逆転している点を断ったうえで、TAMとして動物実験市場の26.8億ドルを挙げ、ここを直接奪いに行くのが大前提だと説明した。SAMとしては人オルガノイド市場の36.1億ドルを挙げ、成長率が非常に高く急拡大している市場だとした。成長の背景には、抗体医薬や細胞治療など、人特有の反応を見る必要のある領域が伸びていることがあるという。
米国外の規制動向について聞き手が尋ねると、欧州でも動物実験の代替は推進されており、日本のPMDAも前向きだが、現時点でルール形成と資金の流入が最も速いのはアメリカだと解説役は答えた。
ビジネスモデル:機器ではなくデータとインサイトを売る
Vivodyneはバイオデバイスというハードウェアを売るのではなく、テストの実行、データの提供、AI解析といったサービスやインサイトを売るモデルを取っている。顧客が製薬企業であるためエンタープライズ営業となり、顧客獲得コストは高い。ただし顧客にとっては臨床での失敗を一つ防ぐだけで数億ドル単位の経済効果があり、LTVが非常に大きくなる構造だという。加えて、ロボットによる自動化で限界費用を下げ、1件あたりのコストを下げていくことも狙っている。
具体的なマネタイズのタイミングについて、解説役は推測だと断ったうえで、エンタープライズ案件なので個別契約になっているだろうとし、共同研究時の一時金、マイルストーン達成時の報酬、データへのアクセス料などを組み合わせているのではないかと述べた。基本はデータ提供モデルだが、製薬企業の自社ラボに装置を販売・導入するケースもあり、柔軟に対応しているようだという。
戦略:コア技術の垂直統合と、外部の薬剤を活かすエコシステム
Vivodyneはロボティクス、組織培養、AIアルゴリズムというコア技術を完全に内製して垂直統合している。一方で、薬剤の候補物質そのものは外部の製薬企業のものを活用する。自社で創薬するのではなく、業界全体のR&Dインフラになることで、あらゆる新薬の成功から恩恵を受ける「創薬のOS」を目指しているという。
解説役が個人的に納得した点として挙げたのは、大義の強さである。10〜20年後の最終形として動物実験の完全根絶を掲げており、倫理的にも強いパーパスを持つことが、PRなどにも効いているとした。
聞き手は、将来的に自社で創薬に乗り出す可能性を尋ねた。解説役によれば、同社は2023年の資金調達時に自社創薬の可能性にも言及しており、利益率を高めるために自社創薬とプラットフォーム提供のハイブリッドになる可能性もあるという。
聞き手はさらに、ウェット・ハード・ドライをすべて手がけるのはバーンレートの観点から厳しいのではないかと指摘した。解説役は本当にその通りで非常に重たい事業だと認めたうえで、その重さゆえに他社が参入できず、現時点ではそれがモートとして機能しているのだろうと述べた。
ロードマップ:なぜウェット→ハード→ドライの順なのか
同社はウェット、ハード、ドライの順に事業を展開している。フェーズ1では複雑な人組織の培養を成功させ、ロボット化の概念実証を行い、シードで3800万ドルを調達した。現在地とされるフェーズ2では、4000万ドルのシリーズAでサンフランシスコに2万3000平方フィートの完全自動化ラボを作り、キャパシティを力技で広げている。フェーズ3では拡張や海外展開を狙いつつ、最終的には物理的な実験すら不要になるコンピューター予測への移行を見据えているという。
聞き手が、ドライ(AI)から始めなかったのは面白いと指摘すると、解説役は同社の説明を紹介した。世の中にある既存データは動物実験や2D培養のものが中心で、それでAIを学習させてもノイズが多く、本当に欲しい人の臨床予測ができないと気づいたため、ウェットから始めたのだという。ただし解説役は、もともと教授が臓器チップの専門家だったことも理由かもしれないと付け加えた。
聞き手は、完全なインシリコ(実験不要)の状態になれば、今投資している巨大ラボが不要になるのではないかとも問いかけた。解説役はその可能性を認めつつ、未知の病気が出てくる可能性や、製薬企業が取り組む疾患の範囲が広がればAIモデル自体の更新が必要になることを挙げ、どこまでかは分からないが実験施設はある程度必要であり続けるだろうと答えた。
モートと競合:5つの技術的優位と重いキャペックス
解説役は技術的なモートとして5点を挙げた。第一に、血管網や免疫応答の観察を可能にする、細胞レベルを超えた生体模倣。第二に、1回で1万個を同時に実験できる圧倒的なスケール。第三に、マルチオミクスのAI解析。第四に、手作業を排してミリ単位の再現性を担保していること。第五に、自社で解析を行うことで蓄積されていくデータである。
弱点はキャペックスの重さだ。ロボット施設の構築には大きな初期投資が必要で、その資本集約性のリスクは投資家の視点でも議論になっているという。競合との比較では、自動化による高スループットと、生体の再現性の高さがポジショニングになる。
聞き手が、Emulateのような先行する臓器チップ企業がなぜ自動化に追従できないのかを尋ねると、解説役は、従来のチップは人間が手作業でピペットを操作することを前提に設計されており、ロボットアームで自動化するにはデバイス自体の再設計が必要になるため参入しづらいと説明した。最大のモートはどれかという問いには、個々の要素もそれぞれ強いが、複雑な組織を作り、ロボットでミリ単位に制御し、AIでマルチオミクス解析するという統合されたオペレーション体制そのものがモートになると答えた。
参入戦略:論文による裏付けと、切実なニッチからの突破
最初の突破口として、同社はまず学術的な証明を得た。特定臓器の臓器チップをPoCとして、Scienceなどの一流誌に査読付き論文として発表し、科学的なお墨付きを得たという。そのうえで初期には、抗体薬や抗体薬物複合体のように、動物実験では効果や毒性を測れず、人間特有の生物学的メカニズムに依存して設計されたモダリティを開発するチームの切実なニーズを最初のターゲットに選んだ。エンタープライズ導入では、臓器チップ分野の世界的権威である創業者側の研究者と共同研究をしないかという形で営業しているという。
聞き手は、論文発表が特許取得の妨げや技術流出のリスクにならないかと尋ねた。解説役はリスクはゼロではないとしつつ、査読付き論文というエビデンスがなければ保守的な業界の顧客とは話を始めづらいため、まずは必要だと答えた。技術流出については、具体的なノウハウを特許で保護する形になるだろうと述べた。
チームと初期のピボット:「ドリルではなく穴を売る」
創業の経緯について、解説役は次のように紹介した。ペンシルベニア大学のダン・フー(Dan Huh)教授は臓器チップの世界的権威で、そのラボで博士課程にいたアンドレイ・ジョルジェスク氏が現在のCEOである。同氏は研究の中で、手作業ではスケールしないというペインに気づき、Vivodyneの創業に至った。師弟関係からのスピンアウトという、大学発スタートアップによく見られる構成だという。CEOはバイオエンジニアリングの博士号を持ち、ロボティクスにも詳しいとされ、聞き手はそうした複合的な人材は珍しいと評した。チームにはウェットの生物学、ハードウェア、ソフトウェアの専門家がそろい、互いに共通言語を持てるエンジニアリングの視点を共有していたという。
初期には迷いもあった。当初は手作業で作る精巧な組織モデル、つまり臓器チップそのものをデバイスとして売ろうとしていた。しかし製薬企業が本当に欲しいのは結果のデータと数万スケールでの再現性だと気づき、チップを売るのではなくサービスを提供するモデルへ転換した。解説役はこれを、マーケティングで言われる「ドリルを売るな、穴を売れ」のバイオ版であり、実験器具ではなくデータを売るピボットだったと表現した。
解説役はまた、インタビューで紹介されたCEOの言葉として、あえて信じられないほど難しい技術課題に取り組んだことで誰も真似できなくなり、結果的にそれが優秀な人材や投資家を引きつけるレバレッジになったという趣旨の発言を紹介した。技術系の人は非常に難しい課題に取り組むべきだというメッセージだという。聞き手は、かつてY Combinatorが語っていた「難しい課題ほど簡単になる」という話を思い出すと応じた。
納品物は何かという問いに対しては、AI解析のレポートに加え、生データへのアクセス、そしてどのターゲットを選ぶべきかといったコンサルティング的な提言にも価値があるのではないかと解説役は考えを述べた。
資金調達と運営規模
資金調達は、シードで3800万ドル(約50億円)、シリーズAで4000万ドル(約60億円)で、アーリーステージとしてはかなり大きな金額をKhosla Venturesなどから集めている。稼働規模としては、1回の稼働で1万以上の実験を処理できる段階に到達しているという。
解説役は、キャペックスの重い重厚長大な事業でありながら巨額調達に成功した要因として、動物実験の撤廃という倫理的な後押しが支持につながったことを挙げた。聞き手がKhoslaがシードからこれほどの額を出すのは大きいと述べると、解説役は、AI創薬のボトルネックはアルゴリズムではなく質の高い大量の生体データだという点に投資家側も共感した、あるいは見抜いたのではないかと推測した。従業員数については450名ほどと紹介されたが、解説役は、手作業では回らなかったであろう業務をロボティクスによる完全自動化で賄い、少人数で大きなスループットを実現している点を強調した。
日本で同様の事業を起こすなら
番組では、日本で同様のアイデアで起業する場合の案をAIに考えさせた結果も紹介された。案Aは、iPS細胞のノーベル賞技術の蓄積を活かし、患者固有の遺伝子疾患や、アジア人・日本人に特有の疾患モデルのデータを作るというもの。案Bは、ファクトリーオートメーションに強い日本企業と組み、生体培養のハードウェアオペレーションで世界をリードするというもの。案Cは、日本の超高齢社会の医療データを活かし、老化モデルや加齢性疾患に特化した組織チップとデータセットを販売するもので、ロンジェビティにもつながりうるとされた。
ただし日本の規制当局は、アメリカに比べて動物実験から代替手法への移行が遅れるリスクがあるため、日本で起業しても最初からグローバル展開を見据える必要があるという。聞き手が、結局はグローバルでVivodyneに勝たなければならないのではと問うと、解説役は正面突破は難しいだろうとしつつ、アジア人を対象にする、あるいはロボットアームの制御技術が特に尖っていて特定の疾患なら勝てるといった形で、顧客や対象を変える余地はあるかもしれないと答えた。
大学発ベンチャーでこうした事業をやる場合にどんな人を集めるべきかという問いには、ウェット・ハード・ドライがすべてそろわなければならない点が難しさであり、解決すべきポイントだとした。そのうえでVivodyneの例として、ロボティクスのエンジニアを採用する際に、自動車のような機械系の人材ではなくバイオに関係するロボティクスの人材を採ったことを紹介した。そうすることで、細胞は壊れやすいので力を非常に小さなレベルで制御しなければならないといった前提を最初から共有できたという。共通の言語や考え方を持つ人を集めることが重要だというのが解説役の見方だ。聞き手は、AIを使えばそれぞれの領域を速く学べるだろうと付け加えた。
結論:難しい課題に取り組むことがモートになる
解説役はまとめとして3点を挙げた。第一に、動物実験の不正確さという既存の限界を、人のデータが不足しているという問題として定義し直し、戦い方を変えたこと。第二に、ウェット・ハード・ドライを組み合わせて統合する難しさは自社にとっても大きな負担だが、結果的に最強の参入戦略になっていること。第三に、今後変わる可能性はあるものの、ビジネスモデルを機器の売り切りからデータとインサイトの提供へ転換したこと。そこから得られる示唆として、自分の業界で非効率なのに当たり前になっている職人技を探し、別分野の技術で自動化やデータ化ができないかを考えると、アイデアにつながるかもしれないと述べた。
解説役は、自分にとっても非常に難しい題材で、うまく説明できた自信はないと率直に語った。聞き手は、難しいことに取り組むことこそが実は最大のモートなのだという点に納得したと述べ、AI時代だからこそ複数の領域を速く学んで組み合わせ、大きく難しい課題に取り組むスタートアップが増えてほしいと話した。解説役も、大きなパスがあることも見据えて、難しい課題に正面から取り組む人が増えるといいと応じ、番組を締めくくった。
皆さん、こんにちは。FoundXのマ田です。
FoundXのトミターです。では、冒頭の雑談ですが、最近出たワーキングペーパーを紹介したいと思います。「ジェネレーティブAI&アントレプレナーシップ」というタイトルで、生成AIがアメリカのスタートアップにどういう影響があったかを見たような研究があります。
その結論としては、ちょっとイメージしやすいんですけど、スタートアップを少人数で早く進む会社に近づけたという話みたいです。ChatGPTが出る前から仕事の中身が生成AIの影響を受けやすかったスタートアップほど、どういう風に変わるかというのを分析したみたいなんですけど、影響を受けやすい会社だと2四半期以内、半年以内に雇用が減ったらしくて、特に減ったのがジュニア層とか、実装とか実務も担うような職種だったそうです。
なので、人を多く雇って実務を積み上げるというような成長ではなくなってきたんじゃないかということが可能性として示されています。ただ、会社が弱くなったかというとそういうわけではなくて、せが高くなって、より早く事業拡大して、資金の調達ラウンドも進みやすくなったそうなんですね。なので、少ない人数でより多くのアウトプットを出せるようになった可能性があります。
というところで、面白いところとしては、AIで仕事がなくなるかという話ではなくて、スタートアップの人材構成とか成長の仕方が変わっているという点にあるかなと思います。ただですね、ChatGPTで特にコーディングとかができるようになってきた頃から言われているところではあるんですが、あとコンサルとかもジュニア層の雇用が減るというところから考えると、若手が経験を積む入り口が細くなっている可能性があるという論点があるのが、ちょっと懸念というか、これから直面するかもしれない点だなと思います。
そうですね。こんな早く出ているものなんですね。
そうですね。出てましたね。はい。でも、どういう業種? 業種というか領域としては、IT系とかB2B向けのビジネス製品とかが割と対象に多かったそうなんですけど、具体的にどういう風なのかというのはそんなに出てないので、ミクロで見るともう少し違ったものが見えるかもしれないですね。
ちょうど最近もアンドリーセン・ホロウィッツがそれを否定するような記事を出してましたが、まだまだこの辺は色々と出てきそうですね。
そうですね。状況とかにもよるでしょうしって感じはしますね。ただ、職を失った労働者の方がより長い失業期間を経験するというところと、あとはAIの影響を受けにくいけど賃金は低いような仕事に移る傾向もあったそうなので、なんというか、賃金が高いようにするのがいい状況だと考えると、AIはそういう意味だとネガティブに働く可能性もあるかもしれないとは思います。
ありそうですね、そこは。
はい。なかなかこの辺りはまだまだ議論があると思いますし、違うエビデンスとかもこれからどんどん出てくるとは思うんですけど、そういう研究というか、ワーキングペーパーが出てましたという紹介でした。では、ここからアイデアキャストのコーナーです。FoundX Review Startup IdeaCastですが、海外のスタートアップのアイデアをAIを使って分析している番組になります。
これからアイデアを考えていく方たちの参考になればという風に思います。最初にディスクレーマーですが、AIを活用して情報を整理しているので、一部の情報は古かったり間違ったりしている場合もあります。ファクトを重視される場合は必ずご自身で調べていただくようお願いいたします。本ポッドキャストはあくまでそこからアイデアの参考情報や考え方を引き出すことを主な目的としています。
そしてですね、今日紹介するスタートアップですが、ビボダインというものになります。
これ、ポッドキャストで聞いている人にはどういう綴りか言っていただいてもいいですか?
確かに。VIVODYNEですかね。インビボというのがバイオ系の話で、細胞のかな? ちょっと違ったらすいません。そのような意味で、それとダインというのを合わせているような感じなのかなと思っています。
今回、なぜこれを選んだんでしょうか?
そうですね。私が免疫の持病があって、治らない病気なんですけど、こういうスタートアップが出て治るといいなという風に思って選びました。
では、早速ご紹介していきたいと思います。このビボダインですが、アメリカのペンシルベニア大学発のスタートアップになります。ちょっと事業が難しいのでうまくご紹介できるか自信がないんですけど、バイオベンチャーではなくて、ハードウェアとソフトウェアと、それからバイオの、もちろん専門的な技術を使ったような企業になります。彼らが言っているところとしては、生物学のAWSになるというようなところを考えていると言われているのかなというような、壮大な基準を持つ企業になります。
では、早速全体像をお話ししていきたいと思います。まず一言で言うとというところですが、最終的には、ラボで培養された人組織とロボティクス、AIを融合して動物実験をなくす、そして人間に最適化された創薬インフラを作るというところを目指している会社になります。
なぜ今この事業が必要かというところですが、ちょうどまたお話しするんですが、動物実験をクリアした新薬の候補の95%が人の臨床試験で失敗しているというので、大変に歩留まりが悪いそうです。というのがまず1点あります。また2点目として、規制が2022年に変わって、新薬を申請する際に、前は動物実験の義務があったそうなんですが、それが撤廃されたというところで、少しこの事業に追い風になっているというところになります。
そうですね。動物実験で成功して、なんで人で95%も失敗するのかというところなんですが、当たり前ではあるんですけど、マウスは人ではないというところで、根本的に生物学的な、また入れてきなさいというのがすごく大きいらしくて、特に最新の細胞治療とかだと、マウスで通用しても人間には例えば毒になったりとか、うまく働かなかったりというところがあると考えられるそうです。
このFDAの規制の変化は、このビボダインに対してどういった影響を与えるんでしょうか?
そうですね。法的な義務だから動物実験しますとやっていたようなものが、より精度の高い代替手段に置き換えるようなインセンティブが生じたというところですね。では、その今のお話の続きで、課題についてお話ししていきたいと思います。
先ほど言っているように、動物実験で成功しても臨床試験では95%ドロップアウトとか失敗してしまいます。そうすると、臨床で失敗すると損失がとても大きいそうでして、数百億円から数千億規模の損失に直結してしまうそうなんです。なので、製薬企業の支払い意思がとても高い課題になっています。そして顧客としては、大手の製薬企業の安全性・有効性評価および前臨床R&Dチームというところになるそうです。
既存の代替手段ですね、平面での細胞の培養とか単純なオルガノイド、ちょっとした細胞の集まりで、ミニ臓器みたいなところらしいんですけど、それについては血管というのがないらしくて、あとは細胞間の相互作用がないんですけど、これがないことによって人の体を再現しきれていないそうで、その薬がどういう風に働くかとか、どういう風に時間的に影響し合っていくかというところは見切れていないことになるそうです。
オルガノイド、ミニ臓器でダメな理由というのはもう少し聞いてもいいですか?
そうですね。あとはですね、従来の手法だと手作業が中心だったそうなんです。なのでスケールしないという点もあったそうです。元々オルガノイドというのが生体の環境に近づけるために登場したんですけど、これが幹細胞とかを使って自己組織化するようなところなので、それでちっちゃいミニ臓器の3D構造を作れるそうなんですね。ただ、これが血管網がないので、実際の臓器のように栄養を運ぶとか老廃物を排出するというところが動きとしては見えなかったそうなんですね。
ビボダインとかが開発しているような生体模倣チップというものが、これをさらに発展させた、オルガノイドを発展させたようなものになっていて、血管とか細胞間の相互作用が見られるというところが特徴というか、ダメだったところを克服できるということになるようです。
そして、ちょっと話してもいるんですけれども、解決策になります。そうですね、これうまく説明できるか自信がないんですが、まずトラクションからいきます。トラクションとしては、世界のトップ10の製薬企業の過半数がすでに提携したり利用したりというところになります。提供しているものとしては、データ・アズ・ア・サービス、あるいはプラットフォーム・アズ・ア・サービスというところになりまして、顧客は基本的にテストしたい薬の候補とか、あるいは検証したい具体的な疑問をビボダインに送る。それをビボダインがロボットとかを働かせて、それから得た臨床の予測データとAIによる最適化されたインサイトを受け取るというようなサービスになっています。
ここでビボダインの解決策というか要素としては3点あります。1点目が人組織というところです。先ほどもお伝えしているような、血管網を持つリアルな3Dの人組織を彼らは培養できます。これが20万から50万の細胞を持っているそうです。これは平面の培養された細胞の先売の細胞になっているそうでして、血管も持っているというところから、時間的なダイナミクスでこの薬が働くプロセスを再現できることになるそうです。
解決策の技術の2点目としてのロボティクスですが、これはロボットによって1回の稼働で1万個以上の独立した組織を、人間の手を介さずに同時に培養、投薬、それから観察ができるというので、スループットがとても大きくなっているということですね。
人が入ってしまうと、既存の競合のサービスとかだと人が入るそうなんですけど、ピペットの押し方とかがノイズになってしまって、AIのノイズになってしまうというところがあるそうです。ロボティクスによって、短い時間で膨大かつ高品質なデータを獲得することができます。
彼らの解決策の技術の3点目がAIの解析になります。ロボティクスのところで取得した複数のデータ、画像とか単一細胞RNAとか、あとタンパク質とかをAIに分析させて、これを人に試験したらこうなるんじゃないですかというような結果を予測するものを計算して、それをデータとして提供することになっているそうです。
ウェット、ハード、ドライを全て組み合わせてやっているという感じなんですね。
そうです。なので、要素が集まって、顧客としてはデータとかAI的なコンサルの要素を受け取ることができるということのようですね。
ちなみに、このハードのロボティクスが言っている1万以上の組織みたいなところの同時培養って、競合と比べてどれぐらいすごいんでしょうか?
そうですね。手作業のベースだと、数十から数百が限界だったそうです。確かに手でやるからそうだろうなと思うんですけど、そうすると、それから1万個ってなると桁がいくつも変わってくるので、スループットと再現性が担保できるところからすごさがあるということのようですね。
このAIとマルチオミクス解析、このマルチオミクス解析というのは具体的にどういうことをやっているのか、もう少し詳しく説明してもらっていいですか?
そうですね。マルチというところから想像できるように複数というところなんですが、何がどう複数かと言うと、細胞の形を画像解析するというだけではなくて、遺伝子の発現状況とか、分泌されるようなタンパク質とか、複数の生体情報を統合して解析するということのようです。なので、見た目の変化、細胞がどういう風に見た目が変わるかというのと、細胞の中の設計図がどう変わるか、設計図の結果出てくるものがどう変わるか、遺伝子という設計図と、出てくるものであるタンパク質がどう変わるかというのを取って、それをAIで結びつけて人体の反応を再現するというようなことをやっているということのようです。
そして、この市場ですね、ビボダインが直面している市場になりますが、数字の大きさがちょっとTAMとSAMが逆転していたりするんですけれども、ごめんなさい。TAMとしては、まず動物実験市場です。これが26.8億ドルで、これを直接奪いに行くというのがまず大前提になっているそうです。SAMとしては人オルガノイド市場で、これが36.1億ドルなんですが、成長率がとても高くて、急拡大しているような市場になっているそうです。
この成長ドライバーの背景としては、抗体医薬とか細胞治療といった、より人特有の反応を見る必要があって、この市場が伸びているということのようですね。ごめんなさい。そうですね。この市場全体が伸びているということのようですね。
ちなみに、この規制緩和というものは、米国の外でも起きてきているような流れなんでしょうか?
そうですね。欧州の方でも推進されているそうです。また日本のPMDAも前向きだそうなんですが、ただ現在最もルール形成と資金の流れが早いのはアメリカになっているそうです。
では、先ほどもご紹介してはいるんですけど、ビジネスモデルについてです。そうですね。彼らがやっていることとしては、細胞を培養して、たくさん培養してその結果をAIで解析するということをやっているんですが、彼らがやっているのはそういったバイオデバイスといったハードウェアを売るのではなくて、テストの実行、それからデータの提供、そしてAIの解析といったサービスとかインサイトを売るようなデータサービスのモデルを取っています。
営業というか、顧客が製薬企業になるので、エンタープライズ営業になります。なので、顧客獲得コストも高いんですが、ただ顧客にとっても臨床での失敗を1つでも防げれば数億ドル単位の経済効果があるので、製薬企業からのLTV(顧客生涯価値)はとても大きくなるような構造になっているそうです。
一方で、ロボットで自動化をしているので限界費用がどんどん小さくなっていく。そして一件あたりのコストが下がっていくというのも狙っているところです。
ちなみに、この具体的なマネタイズのタイミングはどういったタイミングになるんでしょう?
そうですね。エンタープライズということもあって、多分個別の案件になっていると思いますが、共同研究を行った時の一時金というか、そこで生じるところと、マイルストーンが達成された時の報酬とか、あとはデータへのアクセス料金といったような組み合わせで、おそらくマネタイズをしているのかなと思います。
あとはですね、基本的には先ほど言っているようにデータ・アズ・ア・サービスというモデルなんですが、そうではなくて、製薬企業の自社ラボに装置を販売、導入するというところについても、そういったケースもあるそうで、柔軟に対応してはいるようですね。
そして、彼らの取った戦略です。まずコア技術、先ほども言っているようにコア技術が多くあるというか、全部やっているんですけど、ロボティクスと、それから組織の培養、そしてAIのアルゴリズムですね。こちらについては完全に内製して垂直統合している一方で、薬剤の候補物質自体は外部の製薬企業のものを活用するといったようなエコシステムの戦略を取っています。ですので、彼らとしては自社で製薬を行うのではなくて、今は業界全体のR&Dのインフラになる形を取ることで、あらゆる新薬の成功から恩恵を受けるような創薬のOSを目指しているそうです。
あとは個人的に納得したところで、確かにいいなと思ったのは、大義があるというのも面白いポイントだと思っていて、10年から20年後の最終形態として動物実験の完全根絶といったような、倫理的にも強力なパーパスを持っているというところから、PRにも効いているということのようですね。
将来的には自分たちで創薬を直接やっていくみたいなことは考えているんですかね?
そうですね。2023年の資金調達時にですね、自社で創薬していくという可能性にも言及しておりまして、なので利益率を高めることを狙って、自社での創薬と、それからプラットフォームを提供していくというようなハイブリッドになる可能性もあると思います。
あとは、このウェット、ハード、ドライ全てやるというのは、なかなかバーンレートの観点から行くと難しいところもあるのかなと思いましたが、ここはどうなんでしょうね。
いやあ、本当にそうだなと思います。とても重たいです。なので、そうではあるんですが、その重たさゆえに、それが他社が参入できないようなモートにもつながっているというところで、今は多分モートとして使っているというところかなと思います。
彼らのロードマップですね、どういう風な時間軸で事業を展開していったかというところですが、順番としてはウェット、ハード、ドライという風に進めていっているようです。まずフェーズ1として、ウェットですね、複雑な人組織の培養を成功させて、ロボット化の概念を実証したそうです。この時に、シードで3800万ドルを調達したというところになります。
次にフェーズ2、ここが今の現在地というところになるそうなんですが、ここでは4000万ドルのシリーズAの調達によって、サンフランシスコに2万3000平方フィートの完全自動化ラボを作って、キャパシティを力技で広げているというフェーズになるそうです。
フェーズ3としては拡張とか海外展開を狙っているところですが、最終的にはですね、実空間の実験すら不要になるようなコンピューター予測への移行を見据えているということのようです。
最初にドライから始めないというのは面白いですね。
そうですね。そこはAIから始めなかったのは面白いなと思います。理由としては、今世の中にあるような既存のデータだと、動物実験とか、また細胞の2D培養のデータになってしまって、それをAIに学習させてもノイズが多かったそうで、そうすると、本当に欲しいような人の臨床での予測ができないという風に気づいたそうで、それでウェットからだったという風に説明されてはいるんですが、ただ、元々教授が臓器チップの専門家だったそうなので、そこからだったのかもなとも思います。
このロードマップの中で完全なインシリコ、実験不要な状況になったとしたら、今投資している巨大ラボとかが不要になるかもしれないなとも思うんですが、その辺はどうなんでしょうね。
確かに、それはそうだなとは思うんですけれども、ただ病気も、これから未知の病気が出る可能性もありますし、なんというか、製薬企業が取り組む病気というのが広がっていくと、まだAIのモデル自体もアップデートする必要があるので、実験施設というのは、どこまでか分からないですけど、ある程度は必要になってくるかなと思います。
そして、彼らのモートと、それから競合についてです。まずモートですが、技術的なところになります。5点挙げられるんですが、まず1点目が細胞レベルを超えた生体模倣というところです。血管網と、それから免疫の応答の観察ができるところ。2点目が圧倒的なスケールがあるというところです。1万個を1回で同時に実験することができることですね。それが3点目で、先ほど申し上げたようなマルチオミクスAIの解析。そして4点目で、手作業を完全に排して、ミリ単位で再現性が担保されるということのようです。そして5点目ですが、データの蓄積ですね。自分たちが解析するので、データが蓄積していくというところがあるかなと思います。
一方で弱点もあります。それが、キャペックスがとても重たくなってくるというところにはなります。ロボット施設の構築にとても大きな初期投資が必要になってくるので、そこの資本集約性のリスクというのは、投資家の視点でも議論になるポイントになっているそうです。
競合とのポジショニングですが、スループットが自動化で、かつ生体の再現性が高いというところになります。
ちなみに、このエミュレート、手作業のところとか、先行する臓器チップ企業が自動化に追従できないのは何なんでしょう?
そうですね。それ私もちょっと気になったんですけど、従来のチップだと、人間が手作業でピペットを操作することを前提にチップ自体が設計されているそうなんですね。そうすると、ロボットアームで自動化するためにはデバイス自体を再設計することが必要になってきて、ちょっと入りづらいということみたいです。
ちなみに、この企業の最大のモートはどれなんでしょうね。
なんというか、単体も多分1つ1つ強いんですけれども、すいません、全部というか組み合わせというところになるんですが、複雑な組織を作れて、かつロボットでミリ単位で制御できて、AIでマルチオミクス解析ができるという、その統合されたオペレーション体制そのものがモートになってくるかと思います。
そして、彼らの参入戦略ですね、最初の突破口についてお話ししたいと思います。これはディープテック系スタートアップあるあるみたいな感じではあるんですけれども、最初に学術的な証明を得ています。特定臓器の臓器チップをPoCとして、サイエンス等の一流の論文誌で査読付き論文を発表して、科学的にお墨付きをまず得たというところになります。
そして初期には、ニッチ課題を解決したというところのようで、動物実験では効果とかそれから毒性とかが測れない抗体薬とか、それから抗体薬物複合体とか、人間特有の生物学的なメカニズムに依存して設計されているようなモダリティを開発するようなチームの、そのニッチなニーズを解消するというところで、最初のターゲットに選んだそうです。
エンタープライズの導入では、後ほどお伝えするんですけれども、創業者の研究者の先生が臓器チップ分野の世界的な権威だそうで、そういった方と組んで共同研究しませんかというようなところで営業していくということのようですね。
サイエンスにも論文が出ているんですね。
そうみたいです。臓器チップ分野では本当に強いような研究室なんだろうなと思います。
ちなみに、そうした論文の発表って、逆に特許が取れなくなるとか、技術流出のリスクにもなると思うんですが、この辺りはどうしているんでしょうか?
そうですね。まあゼロではないとは思うんですけど、まず査読付き論文がありますよというエビデンスがないと、業界の保守的な顧客とはちょっと話しづらいというか、話を始めづらいというところがあるので、まずは必要です。技術流出というところでは、具体的なノウハウとかを特許で保護しているという形になるかと思います。
彼らの起業プロセスになりますが、そうですね、ペンシルベニア大学のダンハー教授、この方が臓器チップの世界的な権威になるそうで、その方のラボで博士課程にいらしたアンドレ・ジョルジェスク氏、彼が今のCEOなんですが、ここで手作業でスケールしないというところのペインに気づいて、そしてビボダインを創業しようという風に至ったそうです。なので、元々師弟関係があって、そこからスピンアウトしたという、大学発スタートアップのよく見られるようなチーム構成になります。
チーム内には、ウェットの生物学の専門家、それからハードウェアの専門家、そしてソフトウェアの専門家がいらっしゃる。お互いに共通言語を持てるようなエンジニアリングの視点を持っていたそうです。
アンドレさんという方が学生だったということですよね。
そうですね。学生だったんですが、その後博士も取られて、なのでバイオエンジニアリングの博士も持っているような方で、かつロボティクスにも詳しいということのようですね。
はい。なかなか珍しい。
そう。マルチですね。
そうですね。こうやって始まった彼らなんですが、初期に迷いもあったということのようです。当初はですね、手作業で作る精巧な組織モデル、つまりデバイスですね、臓器チップそのものですが、それを売ろうとしていたそうです。ただですね、製薬企業が本当に欲しいのは結果のデータと、それから数万スケールの再現性だというところに気づいたそうで、そこでチップを売るのではなくて、サービスを提供するというモデルに転換していったそうです。
なので、「ドリルを売るな、穴を売れ」というのがマーケティングであるんですけど、それのバイオ版で、実験器具を売るんじゃなくてデータを売れというところでピボットしたということのようです。
あとはですね、CEOの言葉がインタビューで紹介されていて、それがちょっと面白いのでご紹介すると、あえて信じられないほど難しい技術課題に取り組んだことで誰も真似できなくなり、結果的にそれが優秀な人材とか投資家を引きつけるようなレバレッジになったという風に言っているそうです。なので、技術系の人はめちゃくちゃ難しい技術課題に取り組みなさいよというのがメッセージとして、彼は言っているということのようです。
なんか昔Yコンビネーターが言っていた、難しい課題ほど簡単になるみたいな話を思い出すエピソードですね。
そうですね。
ちなみに、このサービスを売るという形ですが、納品物はレポートになるのか、何を納品しているという感じなんでしょうか?
そうですね。AIの解析のレポートとかに加えて、あとは生データへのアクセス、そして、こういうようなターゲットを選ぶといいんじゃないですかというようなコンサル的なレポート、そういう価値もあるんじゃないかという風に考えられています。
では、彼らの資金調達とKPIの推移ですが、そうですね、シードで3800万ドル、約50億円ですね。シリーズAで4000万ドル、約60億円を調達しています。なので、アーリーステージとしてはかなり大きな金額をKhosla Venturesなどから集めているというところになります。
稼働規模なんですが、1回動かすと1万以上の実験を処理できるような段階に、もう今到達しているそうです。なので巨額調達ですけど、これが成功した要因としては、キャペックスがとてもかさむような重厚長大な事業ではあるんですけれども、動物実験の撤廃というような倫理的な後押しがあって、支持を得られたことにつながっているそうです。
Khoslaがこれほどの巨額をシードから、なかなか大きいですね。
そうですね。なので、彼らとしても、AI創薬のボトルネックがアルゴリズムではなくて質の高い大量の生体データだということを、多分共感したというか、見抜いたというところもあるのかなと思います。
あとはですね、今の従業員は450名ほどというところではあるんですが、手作業でやっていたらきっと回らなかったと思うんですが、ロボティクスで完全自動化ができて、少人数で大きなスループットを実現できるというところにつながっているみたいです。
では、日本で同じようなアイデアで起業するならというところで、AIに考えてもらったようなところになりますが、まず案AとしてはiPS細胞特化型というところで、ノーベル賞技術の蓄積を生かして、患者固有の遺伝子疾患とか、アジア人とか日本人に特有の疾患モデルのデータを作るということができるんじゃないかというのを、AIは1点目として言っています。
案Bとしては、ファクトリーオートメーションの強みがあるような日本の、そういった会社さんと組んで、生体培養のハードウェアオペレーションで世界を支配できるんじゃないかというところも、考え方としては言っています。
案Cとして、高齢化ですね、に着目するのはどうだろうということで、日本の超高齢社会の医療データを生かして、老化モデルとか加齢性疾患に特化したような組織チップとデータセットの販売もできるんじゃないかというところも、AIが言っているところですね。ロンジェビティとかにつながるかもしれないということだと思います。
ただですね、アメリカと日本でちょっとやっぱり状況が違っていて、日本の規制当局ですが、これがアメリカに比べて、動物実験から代替するようなやり方への移行が遅れるリスクはあるので、日本で起業しても最初からグローバルを見据えて展開していくことが必要だろうという風に言っています。
逆に、日本のスタートアップがグローバルでビボダインとかに勝たなきゃいけないということですよね。
そうですね。なので正面突破は多分難しいのかなとは思うんですけれども、顧客とか対象が変わってくるというところはあるのかもしれないですね。アジア人とか、あとロボットアームの制御がめちゃくちゃ技術として尖っているので、この疾患なら勝てますみたいなのはあるかもしれないです。
もし大学発ベンチャーでこうしたものをやっていく場合に、どういう人を集めればいいでしょうね。
そうですよね。ウェットとハードとドライというのが全てないといけないというところが、難しい、かつそれを解決しないといけないポイントだなと思います。彼らが面白いのは、ロボティクスのエンジニアを採るにしても、車とかのような機械系の人ではなくて、バイオに関係したようなロボティクスの方を採用されたそうで、そうすると最初から、細胞って壊れやすいから力の強さもすごく小さいレベルで制御しなきゃいけないとかいうような前提が共有できたというのがあるみたいなので、何かしら共通の言語とか共通の考え方を持つような人たちを集めるというのが大事なポイントになってくるかなと思います。
あとはAIを使って、それぞれの領域を早く学べるといいですよね。
そうですね。確かにそうですね。ものすごく早く学ぶというのは確かに可能になってくるところではあると思うので、興味があればやってみるというか、勉強してみるということはできるかなと思います。では、最後にまとめになります。
そうですね、重要なポイントとしてまず1点目ですが、既存の限界、動物実験の不正確さを、動物実験が不正確なのが悪いというよりは、人のデータが不足している問題という風に定義して、ちょっと戦い方を変えたというところですね。それから2点目として、ウェットとドライとハードを組み合わせて、そして統合するという難しさが、自社にとっても大変難しいんですが、結果的に最強の参入戦略にもつながっている点です。そして、これは今後変わるかもしれないんですが、ビジネスモデルを機器の売り切りからデータとインサイトの提供に変えたという点も面白いポイントかなと思います。
なので、今から考えられる点としては、自分の業界で非効率だけど当たり前になっているような職人技を探して、それを別分野の技術で自動化できないかとか、データ化できないかというところを考えてみると、もしかしたら何かしらアイデアにつながるかもしれませんといったところになります。すいません。
そうですね。以上で今日はビボダインをご紹介したんですけれども、ちょっと難しかったな。自分としてもとても難しくて、うまく説明ができた自信もないんですが、どうでしたでしょうか?
そうですね。でも、難しいことに挑戦しているというスタートアップでしょうし、難しいから簡単になっていくみたいな話が途中でありましたけれど、難しいことに取り組むことが実は最大のモートなんだというところは、確かになという風に思いました。ぜひAI時代だからこそ、こうした複数の領域を早く学んで、早く組み合わせて、大きな難しい課題に取り組んでくれるスタートアップが増えるといいですよね。
そうですね。大きなパーパスとかもありますし、そういったところも見据えて、難しいところに正面から取り組むような方が増えるといいなという風に思います。それでは、こちらで今日は終了となります。
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