流通革命から知能革命へ:川邊健太郎と安野貴博が語るAI時代の「大願」と「実験グセ」

YouTubeで開く ↗
概要

前LINEヤフー会長で、退任後に「AIソロプレナー」として起業した川邊健太郎氏と、AIエンジニアで「チームみらい」の参議院議員でもある安野貴博氏の対談の後編である。MCは「The HEADLINE」編集長の石田健氏が務めた。前編ではインターネット30年の歴史を振り返った。後編では、AI時代にどう生き、どう事業を起こすかが主題になる。川邊氏の立場ははっきりしている。インターネットは結局「流通革命」にすぎなかったが、AIは知能を持つため、あらゆる領域に影響する。その時代に問われるのは技術との付き合い方ではなく、「自分が何をしたいか」だという。

19分で読めます
1:06

ヤフーはなぜECに燃えきれなかったのか

石田氏はまず、前編で扱いきれなかった通販や広告の話から入った。ヤフーは近年、ZOZOの買収などでEC強化を進めていた印象がある。マスのビジネスとして、合従連衡で通販を戦わなければならないという感覚があったのか、と尋ねた。

川邊氏は「退任したから言えますけど」と前置きし、あれは孫正義氏がやりたかったという色合いが強いと答えた。ヤフーはどこまで行ってもメディアの会社だった。C2Cの領域には思い入れを持って取り組む人たちがいたが、Eコマースで燃える人たちがいたかというと「正直微妙」だったという。一方の孫氏は、ECが一番大きい市場なのだからそこをやらなければ話にならない、という考えだった。社内には、あらゆるものを合わせてでも楽天やAmazonを抜くべきだという雰囲気が当時あり、それは今も続いているだろうと川邊氏は話す。

川邊氏はメディアとECの性格の違いを強調した。メディアは「インターネットっぽい」ビジネスである。スタンフォードの学生や、渋谷をうろうろしていた当時の自分たち、中川綾太郎氏のような若者でも始められる。これに対して物を売るには仕入れのリスクを取らなければならず、物流という難しいものも絡む。「むちゃくちゃ大人のビジネス」であり、「子供」だったヤフーが本当にそこで燃えられたかは微妙だったという。

3:34

「Amazonなかりせば」今のEコマースはなかった

川邊氏の見立てでは、Eコマースという世界が成立したのは、実行力が世界的に見ても尋常ではない例外的な組織としてAmazonが生まれたからだ。「Amazonなかりせば、今のEコマースの世界はなかった」という。長く赤字だった物売りの事業を、Amazonとそれを支えた投資家、つまり資本市場がやり切った。その後AWSのような別の事業が出てきて高収益企業になった。

インターネット30年で最大の激変はSNSだったが、一番「エモい」のはEコマースだと川邊氏は言う。朝に頼んだものが夕方に届く。石田氏がエモいと思ったことはないと返すと、川邊氏は「当たり前すぎるからでしょ」と応じ、インターネットの黎明期から見てきた人間には信じがたいことだと語った。楽天についても、ポイントを絡めた楽天経済圏を作ったことは素晴らしいと評価した。ただ、仕入れて物流を作って売るという王道のビジネスをあれほどしつこく続けたAmazonとは違うという。川邊氏にとってAmazonは精神的には先輩のような存在で、かなわないと思っていた。それなのに孫氏からは「Amazonを超えるんだ」と言われ続けた。そういう環境にいたと、半ば笑いながら振り返った。

5:48

ハイパースケーラーの時代と「不確実性の低下」

石田氏は次に、現在のAIをめぐる二極化を取り上げた。一方には巨額の資本を投じるハイパースケーラーがあり、もう一方にはAIソロプレナーが生まれている。インターネットはかつて物づくりやサービスづくりの場だったが、いまは資本主義の場になりつつあるのではないか、という問いだ。

川邊氏の答えは「不確実性が減った」だった。1995年と2025〜26年の雰囲気はよく似ているが、不確実性の度合いは大きく違う。95年のインターネットは、どうなるのか、大きくなるのか、どう使えばいいのか、誰にも分からなかった。ムーアの法則くらいしか手がかりがなかった。今はGPUをこれだけ用意し、これだけのデータと電力を使えば推論能力がこう上がる、ということがある程度計算で見える。だから投資すればいいという判断になる。もともとネット産業は金のかからないものだったが、Amazonによって資本市場とネット産業が近づいた。そこに不確実性のより低いAIが現れたので、その複合体が一斉に向かっている、というのが川邊氏の見方である。

安野氏はこれに一部同意しつつ、区別を加えた。投資してどれくらいの性能が出るかまでは不確実性はそれなりに低い。しかし、それが社会をどう変えるかの不確実性は非常に大きい。応用範囲が広すぎて、社会のどこがどう変わるのかまったく分からない、という。

8:22

1995年の起業家と2026年の起業家

安野氏は、95年の起業家と2026年の起業家は何が違うのかを川邊氏に尋ねた。川邊氏は「何もかも違う」と言う。本人の力量も、支えるプラットフォームの充実度も含めて、ビジネススキルの面では少年野球とメジャーリーガーくらいの差があるという。

安野氏は自分の感覚を付け加えた。2010年代には「こういうサービスを作りたい」「世界を変えたい」という人がいた。2020年代の今は、東大生の人気就職先の一つのように、キャリアの選択肢としてスタートアップが位置づけられている。ムードがだいぶ違うという。石田氏は、自分は面白くないと思っているが、世の中的には悪くないのかもしれないと話した。海のものとも山のものともつかないものが勝つ面白さが当時はあったが、不確実性が下がって予測可能性が高まり、つまらなくなったとも感じているという。

川邊氏は、ハイパースケーラーやプラットフォーマーの戦いについては確かにつまらなく、勝敗はほぼ決まるだろうと認めた。ただ、出来上がったAIを使って何をするかは、あらゆる分野でアイデアが出てくるので「全然楽しい」という。東大生よりはるかに頭のいいAIがこれから出てくる。そうなれば、東大生ほどの知力がない人でも、願望や欲さえあればAIで実現できるようになる。川邊氏の著書の副題にある「いかがわしい者たち」の活躍の場は、むしろ広がるという見立てだ。

石田氏は、アクセンチュアのようなコンサルティング会社が大企業にAIを導入するビジネスで大勢が決まるのでは、と考える人もいるだろうと指摘した。これに対して川邊氏は、前提がビジネスに寄りすぎていると答えた。応用範囲はビジネスの外にも広く、最終的には科学革命に至ると考えている。科学者にも新しいフロンティアが開けるし、幸せに生きること、冒険することなど、やりたいことがある人には使い方次第で大きな可能性が開ける、という。

11:47

数学者の危機感は「お前の話じゃない」

石田氏は、AIが数学の未解決問題を解き、知のフロンティアで人間は何をすればいいのかというアイデンティティ・クライシスに陥っている人もいると投げかけた。川邊氏の返答は「なった気になってんじゃねえよ」だった。

数学の未解決問題が解かれて嫌になる人は、数学界の中でも5人ほどしかいないはずだと川邊氏は言う。フィールズ賞受賞者の半分ほどが今のAIはまずいという趣旨のものを先週出したという話題にも触れた。そのうえで、それは何人の話なのかと問い返した。大多数の人にとっては、TechCrunchを読んで「このサービスがあるから」とやる気をなくすのと同じ構図だという。フィールズ賞受賞者がやる気をなくしているのを見て自分もやる気をなくすのは、「お前は違うぞ」という話だ。虚無感に襲われる必要はない。自分の尺度の中で、できなかったことができるようになることに素直にワクワクしたほうが人生は楽しい、というのが川邊氏の考えである。

日本の挑戦者と、IT史上4回目の大変化

日本はデジタル敗戦国と言われ、起業家も少ないとされてきた。ワクワク感を持って挑戦する人が増えれば社会は良くなるのか、という問いに、川邊氏は「全然ありますよ」と答えた。ただし日本は気質としてチャレンジする人がそれほど増えない国だとも見ている。95年に比べれば挑戦しやすくなり、挑戦者も増えたが、それが社会のメジャーかといえばまったくそうではない、という評価だ。

安野氏は、95年と2026年ではどちらが機会が多いのかと尋ねた。川邊氏は、ネットサービスなど市場ごとに見れば、時間が経った分混み合っているのは当然だと答えた。しかし根本にあって一番怖いのは技術革新だという。コンピューターが出て、それを共有するWebが出て、共有の頻度を大きく上げるスマートフォンが出た。ITの世界で3回ほどしかなかった大変化の4回目がAIだと川邊氏は位置づける。これまでの3つは知能を持っていなかったが、AIは知能のようなものを持つ。これは相当な技術革新だという。混み合った市場もどうせ全部壊される。分野がたくさんできていた分、それぞれに「AI×何々」をやれば出し抜けると思える人と思えない人とで、盛り上がり方が変わるだろうと話した。

15:48

インターネットは「流通革命」にすぎなかった

石田氏は、SNSや検索もかつては金にならないと言われていたと振り返った。今はビジネスと捉えられていない何かが大きな市場を作るかもしれないのか、と問うた。川邊氏は、市場になる可能性もあるし、市場性はなくても時間の使い方として人を幸せにするものが出てくる可能性もあると答えた。

ここで川邊氏は、インターネットは「所詮、流通革命だっただけ」と語った。情報の非対称性を解消するという流通革命であり、Amazonという特殊な人たちがいたために物の流通にも飛び火した。それでも結局はそこだけだった。AIは知能を持ち、影響範囲がはるかに大きいので、あらゆるものに影響が出る。ビジネスだけという尺度で捉えるのではなく、まったく違うものが出てきたと捉えるべきだという。

具体例を求められた川邊氏は、資産運用を挙げた。AIによって資産運用がかなり楽に、継続的にできるようになるのではないかという。親から受け継ぐにせよアルバイトで貯めるにせよ、最初の種銭さえあれば、ある程度安定した収入を前提に好きなことができる。その好きなこともAIでレバレッジをかけて取り組める。そうして以前よりいろいろなことがやりやすくなる、という見通しである。

18:00

なぜ「ソロ」プレナーなのか

1人でできることが大きく増えたことと、ソロプレナーという選択は関係しているのか。石田氏の問いに、川邊氏は「やめたから言いますけど」と前置きして率直に答えた。ネットサービスを作るのが大好きだったが、自分にはプログラミングのスキルがない。だからエンジニアを巻き込んでワイワイやるのが好きだった。ところがネット産業が世界中で大きくなりすぎた。エンジニアは希少資源になり、収入は上がり、扱いも難しくなって、仕事がしづらくなったという。

そこにバイブコーディングが現れた。これまで4〜5人でやっていたことが1人でできる。「腹落ち感がない」と言われて動いてもらえない、といったことも起きない。これはいい、と思ったことが、ソロプレナーになった直接のきっかけであり動機だったと川邊氏は語った。

19:38

300年変わらない政治システムと、「ミッシングピース」としてのAI

話題は、経済合理性の外でAIが大きく変えうる分野としての政治に移った。安野氏は、政治のシステムは300年ほど前からまったく変わっていないと考えている。投票で代表者を選び、代表者同士が議論して結論を出す。情報の流れ方は、インターネットやスマートフォン、SNS、動画メディアがある今なら全然違うやり方ができるはずだ。それでも2020年代まで世界中を見ても目立った成功例はない。安野氏は、ミッシングピースは知能、つまりAIだったのではないかと話す。だからこそ、チームみらいのような政党は今だからこそできる実験を重ね、成功事例を作れるのではないか。これが安野氏の仮説である。

石田氏は、デジタル政治というとWeb2.0的な「スマホでボタンを押してオンライン投票する」イメージにとどまる人が多いと指摘し、知能を持つAIを前提にすると違う形になるのではと尋ねた。安野氏は、自分の考えを言葉にできている人はあまり多くないと話す。AIが深掘りして聞いてくれれば、より深いところまで意見を言えるようになる。今起きていることを正しく理解するのも難しいが、たとえば「消費税を下げるとこういうことが起きる」といったことが分かりやすくなるだけでもかなり変わりうるという。人が意見を言うのを助ける使い方もあれば、本人が言わなくても困っている状況をAIが見つける使い方もありうる、と説明した。

エージェント同士がやりとりして政策的な意思決定をしてくれる世界になるのか、という問いには、それも一つのシナリオとしてありうると答えた。自分とアラインしたAIエージェントが代理人として動いてくれる世界観は、買い物なども含めて、政治に限らずさまざまなところで始まってもおかしくないという。

22:44

川邊氏が政治に近づき、離れた理由

一方の川邊氏は、政治とは「一旦距離を置こうかな」と話した。政治に近づいた理由は2つあったという。1つは防御的な理由で、ヤフーとLINEの合併で会社が大きくなり、インシデントや規制などのリスクが増えた。それを話し合いで未然に解決することが、社長・会長として必要だった。もう1つはライドシェアを実現するためだった。ライドシェアは中途半端な状態ではあるが一区切りがついた。柄にもなくああいうことをやってみたが、自分が拠って立つところはやはり技術だと思った。ちょうどそのタイミングでAIが出てきたので、こちらをグローバルな視野でやるべきだと考えたという。

そのうえで川邊氏は、政治とAIについて、行政と立法を分けて考えるべきだと述べた。行政は作業であり、価値観が入り込む余地がなく、人手不足でもあるので、「一も二もなく」AI化を進めるべきだという。立法には人の価値観や個人の意思が関わるので、導入には安野氏らも苦労するだろうと見る。それでも、60年ほどの中長期のスパンで見れば、立法もオートモードに近づいていくのではないかと川邊氏は予想する。バイブコーディングをしていると、途中から「もう全部オートで」と任せたくなる。それと同じだという。全データを見て最大多数の最大幸福を考えられる超知能がある一方で、ほとんどの人は理解の浅いまま「AかBか」の投票を迫られても大変だ。消費税について詳しく知り、こうすべきだと考えている人は少ない。代表制もそうした事情から出てきたのだろうと川邊氏は言う。何十年かけてオートモード的な設定に移っていくという大局観を示しつつ、そこは「安野さん頑張って」と笑った。

25:25

GPT-6で「何でもできる」時代に残るもの

ほとんどがオートモードで済むなら、人間はぼんやりご飯を食べるくらいしかやることがないのではないか。石田氏のこの問いに、川邊氏は収録の少し前に出たGPT-6を使い倒した感想を語った。コンピューターとネットワーク上でできることは何でもできてしまう。これまでは「これができる」「これはできない」と比べていたが、その意味がまったくなくなったという。何でもできるとなると、もはやAIがどうこうは関係なく、「自分が何をしたいのか」に回帰する。やりたいことがある人はAIで大きなレバレッジがかかり、AIとの関係が重要になる。やりたいことがない人には関係がない。そういう状況にいよいよなってきた、と川邊氏は見る。欲や大願があることが非常に重要になるという。

では川邊氏自身は何をやりたいのか。答えは「今探している最中」だった。日本が好きなので、キャンピングカーで全国を旅していろいろなものを見ている。やり方として決めているのは、「AIから遠いところ」をやることだ。フロンティアAIがコンピューターとネットワーク上のことをほぼすべて担い、ユーザーインターフェースもそこに集約されていく。だからSaaSが終わると言われるような状況になった。プロとしてそれは分かっているので、AIから遠い何かを探しているという。方向性としては、自然が好きなことと、相変わらずメディアが好きなことを挙げた。好きなものを自分のやりたいようにやる、と語り、「ためにならない話をしている」と笑った。

石田氏も、ご飯を食べて雑談して旅に出るくらいしかやることがないという感覚があると明かした。政治は珍しく残っている分野だと感じるが、ネガティブな意味ではなく人間のアイデンティティが問われている、と話した。川邊氏は「仕事を奪われる」とは考えないほうがいいと言う。仕事が楽になるのであって、仕事だけが人生ではない。仕事以外のことができるチャンスはこれから大きく増えていく。川邊氏はXのプロフィールに「金持ちよりも時間持ちを目指します」と固定表示している。作業的なことはAIに任せて豊かな時間を作り、やりたいことをやる。能力やリソースの制約でこれまでできなかったことが、AIの発達で安価にできるようになる、という考えだ。

28:42

模倣の時代の終わりと、「その日暮らし」の実践

石田氏は、ピーター・ティールの『ゼロ・トゥ・ワン』が「模倣するな」という教えから始まっていることに触れた。日本のインターネットは一時期アメリカのものを模倣して作ってきたし、そうでなくても「あいつらがやっているから、もっと早く、もっと安く作ろう」という発想で動いてきた。その模倣というルールが変わり、人類は初めて「あなた自身の欲望は何か」を問われているのではないか。若者がいきなりそれを問われても困るだろう、というのが石田氏の問題提起だった。

川邊氏も「絶対ある」と同意した。そうした訓練をしていないので、いきなり大志を抱いてAIで何かをするのは無理だ。だから、今日できる小さなことを実現するのを繰り返すところから始めればいいという。AIを使ってやれば、AIの使い方も分かる。川邊氏自身、退任してからは「その日暮らし」だと話す。予定も入っておらず、朝起きてやりたいと思ったことをバイブコーディングで試してみる。話を聞いてみたい人にメッセンジャーで連絡し、電話してみる。そういう難易度の低いことを繰り返し、だんだんやることを大きくしていけばいい。身の丈に合った形で、現実的に進めればいいという。

石田氏は、受験、大学、いい会社という社会全体のルールで動いてきた人には難しいのではと重ねた。安野氏は、川邊氏が今やっていることは10年後に皆が直面する状況かもしれないと話した。働かなければならないという制約は多くの人にまだあるが、川邊氏は自由に開かれた状態で、自分は何をやりたいのかを模索している。それ自体がフロンティアにいるということだ、という。川邊氏は、今の自分の状況は95年の自分とよく似ていると応じた。何もなかった学生時代もフロンティアに立っていた。当時はTechCrunchのようなものもなく、アメリカにこういうSNSがあるから作ろう、という発想でもなかった。こういうものを使って何かやりたいという志があっただけだという。今は皆がSNSを通じて「耳年増」になりすぎ、リア充的な情報を浴びて焦っている、と川邊氏は指摘した。脅迫観念からではなく、あるがままに好きなことをやっても実現できる技術が出てきたのだから、思う存分やればいいという。

32:52

ソロでやるか、チームでやるか

石田氏は、誰かと一緒にやりたいという気持ちもあるはずで、ずっとソロなのか、チームになる可能性はあるのかと尋ねた。川邊氏は、気の合う人には話を聞いてもらえばいいという感覚だと答えた。例として挙げたのが、10年ほど一緒に会社をやり、PayPayを立ち上げた気の合う相手だ。今その人とまたPayPayのようなものを立ち上げるかというと、自分でAIと立ち上げられるなら自分でやり、その相手からは「絶対失敗するよ」と言われて盛り上がる。そういう関係でいいという。家族とは事業を起こさないが、家族には話を聞いてもらいたい。それと同じで、気の合う人や好きな人とは話し、仕事はAIとやればいい。この感覚がわずか3〜4か月で急激に強まったという。

チームプレイの会社だったヤフーからの温度差を石田氏が指摘すると、川邊氏は、そのチームプレイ自体が「AIっぽかった」と答えた。各人が機能に特化して動いていたので、それを担うものが出てくれば、本当に会いたかった社員、また一緒に働きたい社員はどれくらいいたのだろうと考える、と川邊氏は話した。10年後に答え合わせをしたいとし、寂しくなって友達と起業し直しているかもしれない、と笑った。

34:53

最後のメッセージ:「大願」と「実験グセ」

最後に2人はAI時代を生きるビジネスパーソンへのメッセージをフリップで示した。川邊氏は「大願」と書いた。意思さえあれば、つまりWhatさえあれば、Howは全部AIがやってくれる技術が出てきた。小さな願いはあっという間に実現されてしまうので、人生も人類も「課題不足」に陥るだろうと川邊氏は見る。そのとき、AIもたじろぐような大願を持つことが楽しく過ごすことにつながる、という。

石田氏は、学校は大願の見つけ方を教えてくれないし、1〜2年目のビジネスパーソンがいきなり「PayPayを作る」という志を持つのは難しいのでは、と問うた。川邊氏は、忍者がだんだん高く跳ぶ練習をするのと同じだと答えた。小さな願いをAIで実現し、できたら次はもう少し大きく、と繰り返すしかない。いきなり大谷翔平のホームラン数を超えようと考えられる人はおらず、誰もが今日の素振りから始める。そこは変わらないという。ただ、AIのおかげで一つ一つの挑戦がそのまま実現につながるので、イメージを大きくしていくための繰り返しがあるだけで、「練習」という概念はあまりなくなる、とも述べた。

安野氏のフリップは「実験グセをつける」だった。川邊氏の話を受け、自分ができる簡単なアクションからどんどんやっていくことが大事だと話した。行動してみないと分からないことはたくさんある。人に電話して話を聞く、ある人にメッセージを送ってみるといった簡単なことでも、実験と捉えてとにかく行動を取りまくることが大切だという。

川邊氏は、欲を持つことと実験を繰り返すことは、どちらもまったく難しくないと締めくくった。それでもやらないのであれば、「為さねば成らぬ」の言葉のとおり、あとは本人の意思の問題になる、というのが川邊氏の結論だった。