「株は勝負ごとだ」――朝倉慶が語る、遊びで身につけた相場観とインフレ時代の投資

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概要

経済評論家の朝倉慶氏が、新著『勉強しなくてよかった』の刊行を受けて、楽待チャンネルの公開収録に出演した。聞き手はフリーアナウンサーの野沢春日氏で、会場には20〜30人ほどの観覧者が集まった。

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話は大きく二つに分かれる。一つは、麻雀や競馬、恋愛や失恋といった「遊び」の経験がなぜ相場で役に立つのか、そしてエリートの経済学者やアナリストに何が欠けているのかという話である。もう一つは、日本がデフレから本格的なインフレへ移る局面にあるという時代認識と、その中で個人がどう資産を守るべきかという話だ。朝倉氏の立場ははっきりしている。「株の世界は勝負ごとであり、教科書だけでは絶対にだめだ」というものだ。

エリートに欠けているのは「遊び」だという問題意識

朝倉氏によれば、この本は昔から書きたかったもので、自分の人生そのものでもある。経済を語るアナリストや株の解説者は、朝倉氏にとってはライバルのような存在だ。ただ、彼らの多くは学生時代から社会人までエリートの道を歩み、留学も経験しているタイプだという。その彼らがやってこなかったことが「遊び」だ、と朝倉氏は言う。

朝倉氏自身は博打が好きで、学生時代から麻雀、競馬、さらには賭けゴルフまでやってきた。その中で勝負ごとの機微を身につけたという。朝倉氏の分析では、株の世界は基本的に勝負ごとである。どこで投げるか、投げずに持ち続けるかという判断は、勝負の呼吸や心理に左右される精神的なものだ。日銀の人も経済アナリストも、知識はあっても遊びを長く続けた経験がない。そのため、勝負ごとの機微を実感として分かっていないのではないか、と朝倉氏は見ている。

この違いが今の時代に特に効いてくる理由として、朝倉氏は金融の膨張を挙げる。デリバティブなども含めて金融が世界を動かすほど大きくなり、金融そのものが博打のようになっている。その感覚がないと、市場の動きを見極めるのは難しいという。だから「勉強しないで遊んでいたことが自分の強みになっている」というのが本のタイトルに込めた意味だと朝倉氏は説明した。

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麻雀の卓で見た人間模様と「平常心」

学生時代の遊びから具体的に何を学んだのか。朝倉氏がまず挙げたのは人間模様である。麻雀では、負けが込むとカッカして掛け金を上げ、さらに負けていく人がいる。冷静な人、悲観的な人、楽観的な人、勝負どころで勝負をかける人もいる。こうした人間模様の機微が、相場をやるうえで非常に役に立っているという。

株を買えば値段は上がったり下がったりし、そのたびに人は精神のバランスを失っていく。朝倉氏は、このバランスの取り方がPERや経済を勉強することよりずっと大事だと言う。勝負ごとで常に注意すべきなのは平常心を保つことだ。

朝倉氏は、下手な人ほど損をすると熱くなって売れなくなると指摘する。「こんなに損しているのに売れるわけがない」という心理になるからだ。しかし100円の株が50円になったなら、売っても売らなくても損をしている事実は変わらない。本人がそれを認めたくないだけだ。この現実を冷静に見る訓練が必要で、ゴルフのメンタルと同じように心の面がとても大事なのに、誰もそこを教えてくれない。朝倉氏が普段から「株は腹でやらなければだめだ」と言っているのは、このことだという。

破滅的になっていく人の心理についても、朝倉氏は証券会社時代の顧客の例を挙げた。信用取引を最初は1000株単位でやっていた人が、損をすると頭に血が上って5000株単位に増やす。そこでまた損をすると、さらに単位を大きくする。勝負ごとの心理にはこうしたリズムがあり、朝倉氏はそれを徹底的に学んだことが自分の糧になっていると話す。

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ツキとバイオリズム、そして「引く時」

朝倉氏がもう一つ強調したのが、人間にはバイオリズムがあるという実感だ。麻雀でも競馬でも、なぜこんなに悪い手ばかり来るのか、なぜ負け続けるのかと思う時期がある。逆に、運よくどんどん勝ってしまう時期もある。人生でも、一生懸命やっているのに報われない時と、なぜかうまくいく時がある。

負けている時の心の持ち方として朝倉氏が挙げるのは、「今は自分にツキがない」と認めて、押す時ではないと判断し、バタバタしないことだ。朝倉氏は戦国時代の戦にもたとえた。攻めてもうまくいかない時は、引く時が一番大事になる。こうしたタイミングの感覚が、株をやるうえで実は一番大きいのではないかと朝倉氏は考えている。

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失恋もまた勝負ごとの訓練だった

本には朝倉氏の恋愛と失恋の話も書かれている。朝倉氏は本当に振られて泣いた経験があるという。恋愛は「フォール・イン・ラブ」、つまり恋に落ちることだ。両思いならいいが、恋愛の悲劇は必ずバランスが崩れたところで起きる。落ちてしまった側と冷静な側がいると、その不均衡が悲劇を生む。

朝倉氏は、失恋を経験したことでリズムやバランスを自分の中でコントロールできるようになったと話す。すると勝負ごとと同じように、今ここで自分がどうすべきかが見えてくる。恋愛にも一種の駆け引きがあり、計算ではないにせよ物事の駆け引きの感覚が身についた。遊ぶ、麻雀をする、恋愛をする、振られる、投資で損をする。朝倉氏によれば、こうした人間らしい部分は実践でしか覚えられない。「若い時の苦労は買ってでもしろ」という言葉も、恋愛や投資を含めた経験全般に当てはまる、というのが朝倉氏の考えだ。

野沢氏が冗談めかして今でもそういうことがあるのかと尋ねると、朝倉氏は「今でもありますよ」と笑って応じた。

性格は直らない。だから自分を知ってから投資する

野沢氏は、本に出てくる「神経質に電話をかけてくる顧客」の例を挙げ、そうした状態では大きな勝負ができないのではないか、胆力を身につけることが大事なのかと尋ねた。朝倉氏の答えは、胆力は身につけようとして身につくものではない、というものだった。

仕事で多くの顧客を見てきた朝倉氏によれば、少し変化があるとすぐに売らないと気が済まない人と、「これはいいから任せる、勝負だ」と腹を括れる人の違いは性格によるもので、朝倉氏が見る限りなかなか直らない。だから大事なのは、自分の性格を知ったうえで投資することだという。

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W氏とM氏――頭がいい人ほど儲からない理由

会場では、観覧者の一人が収録前の雑談で、自分は本に登場する「W氏」のタイプで、PERを細かく見て新聞もしっかり読んでいるが大きくは勝てない、と悩みを打ち明けていた。野沢氏がこれを紹介すると、朝倉氏はW氏とM氏について詳しく語った。

二人はともに朝倉氏の顧客で、相場が終わると一緒に酒を飲む仲間だった。W氏は高学歴で知識がとても豊富で、朝倉氏が何を言っても話が返ってくる人だった。一方のM氏は土建屋の経営者で、大雑把な性格だった。それでも、いつも儲かっていたのはM氏で、儲からないのはW氏だったという。

朝倉氏はその理由をこう説明する。相場の世界は、つまるところ分からないものだ。たとえば今なら、金利が上がっているから株が下がるかもしれない。一方で、朝倉氏が言うように企業業績がそれ以上に良いから上がっていく、という見方もある。見通しは常に不安定で不透明だ。そうした不安な時に人を動かしてしまうのが、意外にも株価そのものだという。不安な時に株価が下がると「やっぱり」と思って売り、上がると「上がったのだから買いでいいのだ」と思って買う。上がると買いたくなり、下がると売りたくなるという心理に陥りやすい。

頭のいい人は、金利上昇が株価にとってプラスになる理屈もマイナスになる理屈も、両方分かってしまう。だから値段が動いた方向に振られてしまい、儲からない。W氏も自分でそれを分かっていたが、分かっていても売らずにはいられない、買わずにはいられないという行動になってしまう。朝倉氏はそこに相場という勝負ごとの特有さがあると言う。

これに対して勝負のうまい人は、株は儲かるか損するかのどちらかだと腹を決めているので、下がっても耐えられる。ただし、判断そのものが大きく間違っていれば大損することもある。負けた時には「この決断は間違っていた」と認める判断も必要で、強気でいればいいという単純な話でもない。朝倉氏はこのバランスの難しさも認めていた。

朝倉氏の結論は、生まれ持った性格はなかなか直らないので、自分の性格に合った投資をするしかない、というものだ。自分の長所と短所をまず知ること。それは勉強以前の話で、本で書いたのはそういうことだという。

19:26

「半分になっても何とも思わない」耐性と、家康と小早川

朝倉氏は自分について、そういう勝負ごとに向いている人間だと話す。株が半分になって、自分の資金が半分になっても何とも思わない。以前、楽待の番組で「自分の金が全部なくなるどころか、保証人の金まで取られそうになったことがある」と話したように、人の何倍もの勝負をしてぎりぎりのところまで経験してきたので、耐性ができたのだという。

この耐性の話で、朝倉氏は徳川家康を例に挙げた。家康は武田信玄との戦いで負けそうになって漏らしてしまったという逸話があるほどの経験をしているし、信長に長男を切腹させるよう求められるなど、つらい思いを重ねてきた。朝倉氏は、だからこそ家康は勝負ごとの機微を分かっていたのだろうと見る。関ヶ原の戦いで小早川秀秋がどちらにも動かずにうろうろしていた時、家康は空鉄砲を撃たせた。朝倉氏の解釈では、これは小早川が気の弱い男で自分では決断できないと見抜き、恐怖を最大限に高めて寝返るきっかけを作ろうとしたものだ。慌てた小早川は、このままでは殺されかねないと徳川方に寝返った。

こうした判断は、生きるか死ぬかの体験をしてきた家康だからこそできた、と朝倉氏は言う。そして自分も、ひどい体験や厳しい体験をしてきたことで相場への耐性ができ、何が起きるか分からない相場の中で、あらゆることに冷静でいられるようになったと述べた。

22:04

耐える力は若いうちの経験でしか得られない

30〜50代の視聴者がこうした耐える力を持つにはどうすればいいか、という問いに対して、朝倉氏の答えは「経験するしかない」だった。朝倉氏のような無茶な体験をしろとは言わないが、人それぞれの体験があるはずだという。

朝倉氏は特に若いうちの経験を強調した。若い頃の失敗は必ず取り返せるが、年を取ると取り返しがきかない。相場での失敗も人生の失敗も恋愛の失敗も含めて、若いうちにどんどん挑戦するしかない。そのうえで、ここで終わらずにより高いものを次々に求めていけば、自然にレベルは上がっていく。朝倉氏は、もっと資金を張れと勧めているわけではないと断りつつ、積極的に逃げないこと、前に出ることが大事だと話した。前に出れば必ず反動があるが、その反動が糧になる。年を取ってからでは、そのバランスが取れないという。

24:32

「犬と尻尾」――なぜ経済学者はリスクを見落とすのか

後半の最初のテーマは、本の重要な論点である「経済学者はなぜリスクを見落とすのか」だった。朝倉氏は、本の冒頭に載せた漫画が大事だと言う。そこに描かれているのは犬と尻尾である。

朝倉氏によれば、経済学の世界では、まず経済があってその結果として株がある、という考え方が絶対的な前提になっている。景気が良くなれば株が上がる。だから日銀の委員もアナリストも、必ず消費者物価や春闘の賃上げ率を見る。朝倉氏はそれを「教科書」と呼ぶ。しかし、日経平均が4万円から7万円になったとしたら、その影響は消費者物価や賃上げ率よりずっと大きいかもしれない。それなのに、株価は彼らの変数の中心に入っていない。朝倉氏の見方では、経済学にとって株価は経済に従って動く従属変数にすぎない。もちろん株を見ていないはずはないが、それほど重視していないという。

朝倉氏は、これはおかしいと主張する。アメリカでは株が高いから消費が好調なのではないか。1929年や1990年も、経済がおかしくなったから株が暴落したのではなく、株が暴落してから経済がおかしくなったのではないか。金融がとてつもなく大きくなり、尻尾である金融が犬である経済を振り回す時代になっているのに、経済学は昔のまま「経済が先で株が後」と考えている。

経済学者がそうした見方をしない理由について、朝倉氏は「経済学を勉強しすぎているからだ」と言う。勉強した枠の中でしか物事を考えないので、教科書に書いていないことが見えない。経済は生き物で、1+1が2になる数学の世界ではない。人間の心理や行動が表れるもので、公式では計算できない。朝倉氏は、人間の心理、相場の動き方、恐怖感、そして大きな時代の枠組みを見なければ分からない、という問題意識を持っていると述べた。

28:41

新聞は「記者のレベルまで」読み込む

朝倉氏のように未来を読む力を日常で養うには何を見ればいいのか。朝倉氏は、良い例かは分からないと前置きしたうえで、新聞記事の読み方を挙げた。

最近の記事に、東京都内のマンション価格が数か月続けて下がっている、というものがあった。一面の見出しは、これからマンション価格が下がっていくだろうという論調だ。しかし記事本文を読むと、下がっているのは中央区や千代田区で、埼玉・神奈川・千葉の価格はすごい勢いで上がっていると書かれている。朝倉氏はそこから、トレンドは全く変わっていないと読む。都心が上がりすぎたので周辺に波が移っているだけで、それが一服すればまた東京に戻ってくるのではないか、というのが朝倉氏の見立てだ。4億円になれば確かに買えないが、周辺が上がっている以上、全体として上昇する流れは変わっていないという。

朝倉氏は講演の準備で、重要な記事を暗記して言えるくらいまで、つまり記事を書いた人のレベルまで理解するようにしていた時期があったという。そうすると全体像が見えてくる。見出しだけでは断片的なことしか分からない。何度か読んで納得すると、今度は必ず疑問が出てくるので、別のところを調べてみようと話が広がっていく。

野沢氏が「連想ゲームと全体感」とまとめると、朝倉氏はそれを受け入れた。関ヶ原の空鉄砲の話も、事実は歴史書に書かれているが、家康がどういう心理を読んでいたかはどこにも書かれていない。それは朝倉氏の連想で、「おそらくそうなのではないか」と考えて話したものだと本人も認めている。司馬遼太郎の『坂の上の雲』などを読めば躍動する明治の日本が見えてくるように、小説、遊び、麻雀、経済学といったさまざまなものを結びつけて考えることで、自分なりの見方ができてきた、と朝倉氏は述べた。

33:40

苦しい時代に人々はばらまきを求める――高橋是清の教訓

50年以上相場を見てきた経験から、今の日本経済をどう見るか。朝倉氏は収録当日に自身のYouTubeで話した内容から始めた。

朝倉氏によれば、ベッセント氏と片山財務大臣は、中間選挙を控えたトランプ氏の給付(字幕上は「77万」)の方針に対して、内心ではだめだと思いながらも結局は協力する政策をとっていく。片山氏は財務官僚出身で内心は反対しているはずだが、高市氏の消費税減税も選挙公約だからと一生懸命進めることになる。なぜこうした話が出てくるのかといえば、選挙が苦しく、票を取らなければならないからだ、と朝倉氏は言う。

朝倉氏は、日本は歴史上初めて本格的なインフレに入ろうとしていると見る。会場に来ている投資に問題意識のある人はおそらく何とかなっているが、そうでない普通の人は苦しんでいるはずだ。なぜこんなに物価が高いのか、なぜ一生懸命働いても報われないのか、政府は何とかしてくれないのか。そう感じた人は消費税減税や給付にすがりたくなる。朝倉氏は、減税をしても結局インフレになるから同じだ、というところまで考える人は少なく、まずは「苦しいから何とかしてくれ」という自分の財布の話になると言う。苦しくなると人々は政治にそれを求め、政治家は応えるしかなく、ばらまきをする。朝倉氏はそれを「人類の歴史」だと述べた。

その例として挙げたのが1920〜30年代の日本である。高橋是清は財政を拡大したが、これはまずいと引き締めに転じようとした途端に暗殺された。朝倉氏は、苦しんでいる時に引き締めなどされては困るという世の中のムードがあり、その大きな流れは人間には止められず、結局日本は戦争へ突き進んでいった、と解釈している。

今回も同じだと朝倉氏は見る。トランプ氏の給付、高市氏の消費税減税に続いて、給付付き税額控除、さらにはベーシックインカムのような「お金を配れ」という話が必ず出てくる。それは、お金の価値が下がっていく大きな流れの中に自分たちがいるということだ、と朝倉氏は確信しているという。株高、円安、金利上昇が止まらないというのは、高市氏でも小泉氏でも林氏でも同じことだ。止める方法は引き締めしかないが、引き締めれば高橋是清は殺され、政治家は当選できない。実際、消費税をゼロにしろと主張する政党が次々に出てきている。

38:35

財政は本当に大丈夫なのか――朝倉氏が認める「分からなさ」

リフレ派は、財政赤字など心配ない、日本はG7の中で最も財政状態が良い、と朝倉氏を批判する。これについて朝倉氏は、結論ははっきり言って「よく分からない」と認めた。ただ、朝倉氏の見るところでは、インフレになってきたらおしまいで、すでに警報が鳴っている状態だという。

それでも「いくらでも大丈夫だ」という意見の方が大きくなりがちだ、と朝倉氏は言う。人々はそれを期待し、望んでいるからだ。その時代を背景に高市氏が当選したのであり、日銀が金利を上げるのはおかしい、もっと積極財政ができるという主張に国民はすがりたいのだ、と朝倉氏は見ている。だから同じ政策が続き、株が儲かり、インフレが進むだけだ。これは止められない時代の流れで、自分たちはそれに対応するしかない。朝倉氏は、この歴史観・時代観から導かれる結論は「想定を超えた株高」だと述べた。

40:41

株のリターンがインフレに負けたらどうするか

続いて、インフレが自分に100の打撃を与える一方で、株の儲けは50〜60にとどまるかもしれない、それでも株をやっていて大丈夫なのか、という視聴者の不安が紹介された。

朝倉氏の答えは「時間軸で考えろ」というものだった。株価は基本的にインフレに伴って上がっていくが、年によってはインフレ率に負ける年も、大きく上回る年もある。大まかに見ればインフレに沿って上がっていくので、ある一時点だけを見て「インフレに負けた」と慌てる必要はない。負けた年があっても、次にはインフレ率を上回るほど上がることもある。

個別銘柄についてはいろいろあるので分からないと断ったうえで、朝倉氏は、最終的にはインフレと同じか、それ以上に株が上がると考えている。理由は、上場企業が選ばれた優秀な企業だからだ。朝倉氏は、今年の決算で70%増益の企業もある一方、インフレ率は2%にも行っていないと述べ、全然大丈夫だと言った。そこで動揺しても仕方がない。中長期で見るしかないと腹を決めておくことが、冒頭で言った「腹」だという。

43:01

AIとロボットは人手不足を解決するが、仕事も奪う

朝倉氏が警戒する供給不足によるインフレは、AIやロボット、半導体関連の技術で改善できないのか、という質問もあった。朝倉氏の答えは「改善できる」だったが、そこには順番があるという。

最初に来ているのは頭脳の分野だ。ChatGPTのように、頭脳が安く誰でも手に入る時代になり、頭を使う仕事からなくなり始めている。朝倉氏によれば、アメリカではホワイトカラーの仕事が減っており、それが若者の失業率に表れている。企業が新卒を採らなくなり、AIが代わりを務めている段階だという。これはさらに加速し、コールセンターのような単純な頭脳労働は廃れていく、と朝倉氏は見る。

次に来るのがロボットだ。ファナックのロボットのような定型作業をこなすものに加えて、人型ロボットが出てくると状況は変わり、できる仕事が広がっていく。それでも最後まで残りにくいのは、対面の仕事、人間らしい仕事、配線を付け外ししたり中身を見たりする作業、大工仕事、コミュニケーションが必要な仕事だと朝倉氏は言う。人手不足がAIやロボットで改善されるのはいいが、改善で止まらず仕事そのものがなくなる流れまで行くことに注意すべきだ、というのが朝倉氏の指摘だった。

この2〜3年のポイントとして朝倉氏が挙げたのが自動運転である。自動運転が実際に機能し始めれば、タクシーより安いという問題が必ず出てくる。日本にすぐ来るわけではないが、世界的な動きになり、タクシー運転手が職を失うという問題が起き、そのあたりから「仕事がない」という問題が本格化するだろうと朝倉氏は見ている。そしてインフレは、避けられずに襲ってくるという。

47:19

30歳の会社員だったら、どう投資するか

「朝倉さんが今30歳の会社員なら、どんな投資をするか」という質問に、朝倉氏はまず「分からない」と答えた。そのうえで、自分の性格ならインデックス投資はやらないと言う。面白くないからだ。儲けるだけでなく刺激が欲しい、損をしても得をしてもいいが刺激がないとだめだ、人の何倍も儲けるのが刺激だ、と朝倉氏は話す。

始める時に銘柄を決めているのかと聞かれると、何も決めていないと答えた。魅力のあるものがあれば1分で決めて「バン」と行くかもしれないという。トヨタやソフトバンクのような大型株か、10倍・100倍になる株か、という質問には、10倍・100倍の方を見つけたいと答えた。10倍になる株を見つけると面白くてどうしようもなく、その快感を知ると麻薬のように逃れられなくなる。朝倉氏はそれを「自分の弱点」とも呼んだ。昔はレバレッジもかけ、空売りもやったという。毎日どんどん儲かって株価が上がっていく時の喜びは、大漁の漁師が喜ぶのと同じで、相場をやっていてあれほど面白いことはない、と朝倉氏は語った。

49:29

最後のメッセージ――「投資しないとやばい」、資本の側に乗れ

締めくくりに心構えを求められた朝倉氏は、「はっきり言って投資しないとやばい」と述べた。デフレからインフレへと時代が大きく動いている局面で、現金を持っているだけでは終わりだという。株に限らず金などもあるが、とにかく一歩踏み出さなければ沈む一方だと理解すべきだ、と朝倉氏は言う。時代の変化に文句を言っても仕方がない。朝倉氏はガザにいる人を例に挙げ、置かれた状況でなんとか頑張るしかないのだと話した。インフレ率を下回ったらどうしようという不安は必ずあるが、それでも踏み出すしかないという。

朝倉氏はさらに、ロボットの登場で仕事がなくなるような、人類がこれまで経験したことのない変化が起こると警告した。自動運転が100円、タクシーが1000円となれば、最初は国が何とか雇用を守ろうとするだろうが、いずれどうにもならなくなる。日本のように無理に1000円のタクシーを守ろうとすれば、かえってインフレになる、と朝倉氏は見る。想定外のことが次々に起こると覚悟しておくべきだという。

そのうえで朝倉氏が示した生き残り方が「資本に乗れ」である。働くだけでは足りない。ロボットの所有者がいて、勝っている企業がいる。その側に乗ることが投資だという。そうしなければ、「なぜ国はもっとお金をくれないのか」と文句を言うばかりになる。しかし国にも限界があり、みんなを助けたくても技術的にできない。だから自分で人生を切り開くしかない、と朝倉氏は言う。

朝倉氏は、今もAmazonやNetflixのような勝ち組がいるように、勝つ企業は必ず存在すると述べた。幸い日本にも、半導体、電力、水といった流れに乗る強い上場企業がたくさんある。勝ち組に乗ってこの流れを乗り越えることが、難しい時代だからこそ重要であり、「働いているだけではこの時代はもたない」と伝えたい、という言葉で朝倉氏は話を終えた。