KoBold Metalsの戦略:AIで鉱物探査を「再現可能な科学」に変え、鉱山の権益まで取りに行く
東京大学FoundXFoundXの「Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで分析して紹介する番組である。今回は、AIと地質学者の専門知を組み合わせて重要鉱物を探査するKoBold Metals(コボールドメタルズ)を取り上げた。発表者がこの会社を選んだ理由は二つある。一つは、AIを既存のレガシー産業に持ち込み、人間の能力を広げる使い方をしていること。もう一つは、AIツールを作って売るだけで終わらず、探査プロジェクトの権益を取得し、開発した鉱山から価値を得るビジネスモデルを取っていることだ。
番組の冒頭では、経済産業省の「スタートアップ・エコシステム調査2026」も紹介された。なお番組は、情報をAIで整理しているため一部が古い、または誤っている可能性があると断っている。以下の数値や事実は、番組内で紹介された内容として記す。
経産省調査から見た日本のスタートアップ環境
調査は、スタートアップを単なる新設企業とは定義していない。独自の技術・製品・ビジネスモデルを持ち、VC、エンジェル投資家、事業会社から株式で資金を調達している、またはその可能性がある未上場企業としている。自己資金と売上だけで成長する会社やスモールビジネスは対象外である。
発表者が印象に残った点として挙げたのは三つだった。一つ目は、日本ではイグジットに占めるIPOの比率が高いことだ。2011年から2025年のIPOとM&Aを比べると、日本と韓国は件数・金額ともにIPOの比率が大きい。日本は件数ではM&Aもかなり多いが、金額ベースではIPOが約50%を占める。比較対象のアメリカは20%程度である。そのため日本でスタートアップをやるなら、「最終的にIPOできるか」を早い段階から投資家に意識されやすい、と発表者は述べた。
二つ目はIPOまでの期間と規模である。ばらつきは大きいものの、設立からIPOまでの中央値はおよそ10年、グロース市場での上場時時価総額の中央値は約100億円だという。発表者は大まかに「10年で100億円規模の企業価値を説明できるか」が、起業する際に考えるべき問いになるとまとめた。
三つ目は資金環境の差だ。スタートアップへのVC投資額は、アメリカが3370億ドル、GDP規模が近いドイツが91億ドル、日本が61億ドルと紹介された。ディープテックに限ると差はさらに広がり、アメリカ2540億ドル、ドイツ68億ドル、日本34億ドルとなる。聞き手が「ドイツとも2倍違う」と驚くと、発表者も意外だったと応じた。ディープテックは開発期間が長くなりやすい。だから日本では、VCからの調達に加えて補助金や共同研究をどう組み合わせて資金をつなぐかを考える必要がある、というのが発表者の見立てである。
KoBold Metalsの全体像
KoBold Metalsは2018年に創業した。AIに人間の地質学の専門性を組み合わせ、銅、リチウム、ニッケル、コバルトなどの重要鉱物を探査・開発している。発表者は同社を一言で「地下資源の探査を再現可能な科学へ」と表現した。これまで地下資源の探査は、属人的な勘や経験に頼ってきた。同社はそれを、データとモデルによって反復・再現できる科学に変えようとしている。
特徴はフルスタックであることだ。AIツールを提供するだけでなく、自ら権益を取得し、鉱山開発まで手がける。
なぜ今この事業なのか。発表者の説明では、EVや再生可能エネルギーの普及で銅やリチウムなど重要鉱物の需要が大きく伸びている。一方で、地表近くの見つけやすい鉱床はすでに多くが発見済みで、過去30年で探査コストは約10倍に上がったという。今後は深い場所や複雑な地質の鉱床を探さなければならず、データとAIの価値が高まる。同社が着目したボトルネックは、鉱物そのものが存在しないことではない。どこに、どの程度の品位で、経済的に採算の取れる鉱床があるのかが分からないという「情報の問題」である。
聞き手が「本当に情報が足りないのか」と尋ねると、発表者は次のように答えた。鉱床の場所、品位、形状を特定する情報が不足している。既存のデータは古かったり、ばらばらに分断されていたり、そもそもデジタル化されておらずAIやツールで解析しにくかったりするという。
伝統的な探査の限界と16年のリードタイム
同社のターゲットは大手鉱業会社だけではない。探査権は持っていても資金や解析能力が足りない「ジュニアマイナー」も対象にしている。
従来の探査は、熟練地質学者の経験、紙の地図、手書きのメモ、分散した地球物理・地球化学データに頼ってきた。その結果、発見から生産開始まで平均16年かかり、探査プロジェクトの99%は鉱山にならないとも言われるほど失敗率が高いという。コストが高い理由も掘削そのものだけではない。候補地の選定、許認可の取得、現地調査、環境・社会への対応、インフラの検討が連鎖するためだと発表者は説明した。
16年もかかる理由を聞かれると、発表者は工程が順番に積み重なる構造を挙げた。探査に続いてボーリング、資源量の評価、予備的な経済性評価、許認可の取得、環境・社会影響の評価、建設が必要になる。鉱床が見つかっただけでは不十分で、インフラ、水、電力、地域の合意が揃わないと生産できない。
聞き手は、大手なら自社でAIを導入できるのではないかとも尋ねた。発表者はその可能性を認めた。ただし大手は資本を持つ一方で、データがサイロ化してあちこちに散らばっている。組織が大きく、探査リスクをどこまで取るかの意思決定も遅くなりやすい。そこでKoBoldは大手に対して、外部からデータ基盤、AI、資本を提供する形で入っていくのだという。
解決策:データ統合、AI予測、人間の判断
同社のプロセスは三段階で説明された。
最初は「データインジェスチョン」である。自社開発のツール「TerraShed(テラシェッド)」で、古い地質レポート、地図、手書きのノート、地球物理・地球化学データを標準化して統合する。
次は「AIプロセシング」だ。別の自社ツールで、鉱化の可能性、品位、厚さ、感度、導電率などを予測し、その不確実性も合わせて扱う。この段階で、次にどこを調べれば最も情報価値が高いか、どのデータを取れば不確実性が最も減るかも評価する。
最後が「ターゲティング」である。AIの出力を人間の地質学者が解釈し、現地の地質構造や権益の条件も踏まえて掘削ターゲットを決める。
同社は「AI+HI(ヒューマンインテリジェンス)」を掲げているという。AIが地質学者を置き換えるのではない。地質学者が担ってきた検証と優先順位付けを、AIで速くするという位置づけである。
聞き手は、TerraShedは普通のデータベースと何が違うのかと質問した。発表者は、実際の仕組みは分かっていないと前置きした。そのうえで、データを保存するだけでなく、古い資料、複数の言語、地図、手書き情報など形式の異なる情報を、機械学習で使える形に変換・標準化する点が違うと説明した。AIに入れる前にデータをそもそも解析可能にすることが競争力につながっており、取り組むのが難しい部分だったのだろう、と発表者は推測している。
事例:ザンビアのMingombaプロジェクトと独自センサー
このプロセスの代表例として紹介されたのが、ザンビアのMingomba(ミンゴンバ)プロジェクトである。100年間見過ごされてきた世界最大級の高品位銅鉱床をAIで発見し、開発を進めているという。年産約30万トンを目標に、2030年代初頭の出荷を目指している。
技術面では、同社は独自センサーも開発している。「ハイパーポッド」と呼ばれるセンサーハードウェアでは、RGB、ハイパースペクトル、LiDARなどを使っているという。「CoreCam 360」は、掘削現場でコアの360度画像を取得するものだ。聞き手が「結構いろいろやっている」と言うと、発表者は、提供するものは分かりやすいが内部ではかなり複雑なプロセスが動いている、と応じた。
自社でセンサーまで作る理由については、既存サービスでは最新のイメージング技術の導入が遅くなるためだという。自社でハードウェアを作ったほうが、高品質なデータを高速かつ高密度に取得できると説明された。
市場規模と成長ドライバー
市場の規模感も紹介された。TAMはエネルギー転換向けの重要鉱物市場全体で、2040年時点で7700億ドル規模と予測されているという。ただし発表者は、これは同社が直接得られる売上ではなく、銅・リチウム・コバルトなどの市場全体の規模感だと補足した。SAMは、新規の探査と鉱山開発に向けた投資市場で、AI探査や権益取得で同社が入り込める領域である。SOMは、同社が自ら権益を取得し、開発・生産から得る現実的なアップサイドだ。数十億ドル規模とも言われるが、公式に示された数字ではないという。
成長ドライバーとして挙がったのは、EVの普及に加え、AIデータセンターの増加に伴う電力インフラと送電網の増強、防衛・産業政策である。地政学的な追い風として、アメリカやEUが重要鉱物供給で特定国への依存を下げたいという政策的なニーズもあるという。
SOMの数十億ドルにどう至るのかと聞かれ、発表者はMingombaを例に挙げた。総投資額は20億ドルを超え、年産30万トンを目指している。こうした大型権益を複数持つことで規模を取っていく、という考え方のようだと説明した。銅が特に重要なのかとの問いには、送電網、データセンター、EV、電気機器に不可欠で、比較的安価で導電率が高く、代替が難しい基礎素材だからまず重要になる、と答えた。
SaaSではなく権益のアップサイドを取るモデル
発表者は、ここは自分もきちんと理解できているか少し怪しいと前置きしてビジネスモデルを説明した。従来のSaaSはソフトウェア利用料を取りやすい。しかし鉱床が見つかっても、そこから生まれるアップサイドは顧客に残り、ソフトウェア提供側は取れない。KoBoldは探査資金とAI技術を提供し、その見返りにプロジェクトの権益や将来収益への参加機会を得る、アセットの重いモデルを取っている。
例として挙げられたのがグリーンランドの案件である。1500万ドルの探査資金と引き換えに51%の権益を取る契約があったという。このモデルは初期投資が大きい。掘削、データ取得、現地対応に資金が要るため、通常のSaaSより資本効率は重い。一方で鉱山が成立すれば、10年以上の長期キャッシュフローや資源の権益が得られ、LTVは非常に大きくなりうる。
スケールの仕方も、ライセンス販売のように線形で伸びるものではない。案件ごとにジョイントベンチャーを組成したり、「アーンイン」契約を結んだり、100%保有案件を持ったりして、それらを組み合わせたポートフォリオで進めるという。アーンインとは、一定額の探査費用を負担して決められた作業を行うことで、段階的にプロジェクトの権益を獲得する契約である。発表者は、AIで不確実性を下げ、それを他社へのライセンス販売で終わらせず自社のリターンに変換する点が面白いと述べた。
許認可や建設などの重いリスクまで取って、1回の失敗で破綻する恐れはないのか。聞き手の問いに、発表者は「一発で飛ぶ」ことはやらないようにしているはずだと答えた。地域、鉱石の種類、開発段階を分散させてポートフォリオ化し、初期データで見込みが薄い案件からは撤退できる設計にしているという。
フルスタック垂直統合と「次世代デジタル資源メジャー」
同社はAIアルゴリズムの提供にとどまらず、有望な鉱床のアップサイドを逃さないために、探査から鉱山開発まで踏み込んでいる。利点は、探査で得たデータが開発判断に活き、開発で得た実データが次の探査モデルを改善するフィードバックループが働くことだ。弱点は、建設、安全、労務、環境、地域社会など、AIの得意領域の外にあるリスクが増えることである。
そのため同社は内製と外部活用のバランスを取っている。データ基盤、予測モデル、独自センサー、地質データの標準化、探査判断は内製する。一方、採掘や建設の実務は、現地の政府系企業や既存の鉱山会社と連携しているという。10〜20年後の理想像として同社が掲げるのは、単なる探査テック企業ではなく、エネルギー転換の時代を支える「次世代のデジタル資源メジャー」だと紹介された。
ロードマップ:技術構築からアセット開発へ
ロードマップは三つのフェーズで説明された。
フェーズ1(2018年〜)は技術構築の段階である。100年分の地質データを統合するTerraShedの構築と、AI予測モデルの技術実証が中心だった。検証していたのは顧客数ではなく、実案件でデータが掘削判断に使えるかどうかだった。
フェーズ2(2021年〜)は権益取得とパートナーシップの段階である。大手のBHP、ジュニアマイナー、既存の権益保有者とJV契約を結び、案件網を作っていった。
フェーズ3(今年〜)はアセット開発とスケールの段階だ。Mingombaのように20億ドルを超える規模の資本を投じて鉱山開発へ進む。発表者は、いきなり鉱山を作るのではなく、まずソフトウェアとデータで信頼を作り、権益を集め、段階的に進めているとまとめた。初期は収益化よりも技術実証とデータ基盤づくりに力を入れ、Andreessen HorowitzやBreakthrough Energy Venturesなどからの資金でランウェイを確保していたという。
フェーズ3への移行でのリスクを問われ、発表者は、フェーズ2である程度検証されているかもしれないが、AIだけでは現実の問題に対応できない点が最大のリスクだと答えた。具体的には、地域住民との合意形成、環境アセスメント、水や電力などインフラの確保、建設資金のマネジメントといった物理的・政治的リスクを挙げた。
競争優位と競合との違い
同社の堀(モート)として五つが挙げられた。データフライホイール、自社開発センサー、チーム、資本力、探査から開発までのフルスタック能力である。
データフライホイールとは、AIが掘削候補を選び、現地調査とコアデータがモデルを改善し、次の案件でさらに良い判断ができるという循環だ。自社センサーは、競争上重要なデータを外部サービスに頼らず、標準化された形で自社に蓄積する仕組みとして重要だとされる。
競合には、Earth AIやGeologicAIなど、AI探査のスタートアップがほかにもある。ただしそれらは権益の売却や「プロジェクトジェネレーター」にとどまる傾向があるという。自ら開発まで行う点がKoBoldとの大きな違いである。とはいえ、開発まで行うことはオペレーションリスクや資本の拘束を伴うため、差別化要素であると同時に弱点にもなりうると発表者は指摘した。
聞き手は、これだけ競合がいるならAIモデル自体は比較的作りやすく、コピーされるのではないかと尋ねた。発表者は、モデルの構築やモデルそのものは模倣されうると認めた。差別化はモデルではなく、独自データ、センサー、チーム、資本力にある。単一の技術ではなく組み合わせで堀を作っているのだろう、というのが発表者の見方である。
Go-to-market:ジュニアマイナーに「51%」を求める
最初のターゲットは、探査権や地質データを持ちながら、十分な資金、解析能力、掘削判断のツールを持たないジュニアマイナーだった。彼らの痛みは、どこを掘るべきか決められない、掘る資金がない、過去データを活かしきれない、というものだったという。
同社がMVPとして提供したのは、AIアプリではない。古い記録や断片的なデータを標準化し、鉱床の仮説を立てられる状態にするシステムだった。最初の突破口もツール販売ではなく、「資金とAIを提供するので、プロジェクト権益の51%をください」という形だったという。PMFの指標も予測精度や利用者数ではなく、実際の掘削で無駄な掘削をどれだけ減らせたか、鉱化にヒットしたかという現場の成果で見ていた。
聞き手は51%という条件に驚いた。発表者は、それを飲んでもよいと思うほど痛みが強かったのだろうと述べた。ジュニアマイナーは自社だけでは資金も統合データ基盤も人材も用意しにくい。KoBoldと組めば開発、売却、追加資金の可能性が広がると判断したのではないか、と推測している。聞き手は、何もしなければゼロなので51%を渡してもやるほうがよいということか、と整理した。KoBold側のリスクもきわめて高い。だからこそa16zなどのトップVCから大型資金を調達し、ハイリスク・ハイリターンのゲームに参加できる体制を作ったのだろう、と発表者は答えた。
創業チーム:AI、地質、資本市場の結合
創業者として紹介されたのは、カート・ハウス、ジョシュ・ゴールドマン、ジェフ・ジュリナックの3人である。ハウスはエネルギー・地下資源領域での起業経験があり、ゴールドマンは物理学や自然資源領域の専門家、ジュリナックは大手資源会社での開発経験があるという。
発表者は、この組み合わせの意味を次のように説明した。AIエンジニアだけでは、地質の解釈、現地での検証、権益の交渉ができない。地質の専門家だけでは、大規模なデータ基盤や機械学習を組めない。さらに鉱山開発はソフトウェアより資本集約的で、投資家にリスクとアップサイドをきちんと説明する必要があるため、資本市場の知見も欠かせない。創業の背景には、電化が進む社会で問題は資源がないことではなく、探査方法が前時代的なために情報のボトルネックが起きている、という発見があったという。
シリコンバレーのAIエンジニアが鉱業に興味を持つのかという聞き手の問いには、気候変動の解決に必要な重要鉱物を探すというインパクトの大きさに引きつけられる人もいたのだろう、と発表者は答えた。
空振り(ドライホール)を学習データに変える
鉱物探査では、掘っても何も出ない「ドライホール」が日常茶飯事だという。KoBoldはこれを単なる「外れ」で終わらせなかった。「ここに鉱脈はない」「この地質仮説は弱い」「鉱床の境界は別の場所にある」といった反証データとして、TerraShedに還元するループを作ったという。同社の考え方は、空振りの結果もモデルの更新に使えるよう、データの取得と記録を標準化することにあった。そのうえで、一発で鉱脈を当てるのではなく、次にどこを調べれば最も不確実性が減るかを最適化する仕組みを作っていった。
聞き手は、ボーリングの失敗は高くつくのに、どうやって試行回数を稼いだのかと質問した。発表者は「あまり答えになっていないかもしれない」と断ったうえで、こう説明した。AIの事前予測で不確実性が最も減る場所を選んで掘り、その結果からまた次の場所を探す。予算内で最も大きく学べるよう、学習効率を最大化しているのだという。聞き手が、当たり外れが大きい点でAI創薬に近いのではないかと指摘すると、発表者は、膨大な候補から絞り込み、実験で駄目だった結果を次に活かすという点で同じようなものだと同意した。
資金調達:累計10億ドル超の資本集約型スタートアップ
同社の累計調達額は10億ドルを超えると報じられているという。直近の大型調達は2025年1月のシリーズCで5.37億ドル、評価額は30億ドル規模とされる。投資家にはBreakthrough Energy Ventures、Andreessen Horowitz、そして日本の三菱商事も含まれる。
発表者は、調達がうまくいった要因として、投資家ごとに異なる価値を示したことを挙げた。テック系投資家にはAIとソフトウェアのレバレッジを、気候系投資家には脱炭素インフラのボトルネック解消を、インフラ系投資家には重要鉱物の供給安全保障というアップサイドを示したという。調達資金はMingombaの開発、世界各地での探査、R&Dの強化に使われると考えられている。
a16zが鉱山会社に投資したのは、いつものソフトウェア投資とは文脈が違うのかという問いに対し、発表者は重なる部分もあると答えた。ソフトウェアが物理世界に入り込む象徴的な事例と捉え、AIが産業構造自体を変えるポテンシャルに投資したのではないかという。シリーズCの資金の大部分はザンビアのMingomba鉱山の開発に、残りは新規探査に向かうのではないかと発表者は見ている。聞き手が「本当に鉱山会社という感じ」と言うと、発表者も「本当にそう。重たいですよね」と応じた。
日本で応用するなら:都市鉱山、地熱、商社向けAI
日本には大規模な鉱山が少ないため、海外の陸上鉱床を自社開発するKoBoldのモデルをそのまま持ち込むのは難しい、というのが番組のAI分析の見立てである。そのうえで三つの案が示された。
- A:都市鉱山AIプラットフォーム。廃バッテリー、廃電子機器、産業廃棄物に含まれる金属の発生時期、場所、品質、回収ルートをAIで予測・最適化する。地下の地質ではなく、社会に散らばる資源の所在・品質・回収タイミングの不確実性を下げるものになる。
- B:地熱やCCS向けの地下探査。日本は地熱ポテンシャルが高いと言われるため、地下開発での掘削成功率を高める意思決定を支援する。
- C:商社向け海外権益AIコンサル。総合商社が持つ過去の探査・操業データと海外権益の情報を解析し、投資判断を支援する。
聞き手は、Cはスタートアップっぽくないと指摘した。発表者も同意し、AIの分析では短期的にはおすすめとされているものの、これではコンサルになってしまうと述べた。そこから入ってどう大きくしていくかが課題になるという。
日本企業がKoBoldに正面から勝つ方法はあるかという問いには、発表者は否定的だった。同じ土俵で海外鉱山の権益を得て、巨額のVC資本を集め、人材を揃えるのはなかなか難しい。むしろ、地熱に強い、循環型社会が進んでいるといった一般に言われる日本の強み(それがどこまで本当かは分からないと発表者は留保した)に着目し、隣接領域で探してみるのは一つの手かもしれない、と述べた。
まとめと振り返り
発表者はまとめとして三点を挙げた。第一に、AIの利用料だけでなく、AIで下げたリスクを実物資産の権益アップサイドとして取りに行く、つまり価値の源泉そのものを取りに行く戦略がありうること。第二に、デジタル人材、レガシー産業のドメインエキスパート、長期資本を扱う金融のプロを意図的に組み合わせることで、レガシー産業にテクノロジーが入っていけること。第三に、掘削の空振りを失敗やミスとしてではなく、モデルの不確実性を下げる不可欠なデータとしてプロセスに組み込むと、プロセス自体が回り改善されていくこと。
視聴者へのアクションとしては、自分の業界に、長年の経験則に依存し、失敗コストが高く、データが分断されている意思決定がないかを探すことが提案された。もしあれば、その不確実性をデータで定量化し、何らかの価値に転換できないかを検証する。
最後に聞き手は、どこまでをフルスタックと呼ぶかは議論があるとしつつ、AIフルスタック型スタートアップの一例であり、鉱業のようなレガシー産業でもフルスタックで行けるというのは学びになると振り返った。発表者も、やってやれないことはないと同意した。日本でもレガシー産業や重い産業にスタートアップが入り込む余地はまだあるかもしれない、という言葉で番組は締めくくられた。
皆さん、こんにちは。FoundXの田です。
はい、同じくのと田です。で、今日の雑談というか最初の冒頭なんですけども、経産省が最近公開していたスタートアップ・エコシステム調査2026をちょっとご紹介したいと思います。
そうですね、スタートアップに関わる人はみんなもうすでに知ってるよというところかもしれないんですけれども、いくつか情報としてお知らせできたらと思います。
まずここで、経産省が調査している調査の定義としてスタートアップを定義してて、単に新しく作った企業ではなくて、オリジナルなユニークな技術とか製品、ビジネスモデルを持って、VCとかエンジェル投資家とか事業会社から株式で資金調達している、またはその可能性がある未上場の企業という風に整理されていますと。なのでスタートアップと言った時に、自己資金と売上だけで成長するような会社とかスモールビジネスは対象外っていうような調査をした上で、結果が出てますっていう前提があります。
で、そうですね、印象的なことで3点あって、1点目が、前から言われていたことではあるんですけど、日本の特徴でイグジットでIPOがめちゃくちゃ多いというところですね。2011年から2025年までIPOとM&Aの比率を見ると、日本と韓国は件数と金額ともにIPOの比率が大きいっていう風にされているそうです。で、日本の場合だと件数だとM&Aもかなり多いんですけど、金額ベースで見るとIPOの比重が50%で、比較の対象でアメリカを持ってくると20%程度なので、かなり高い。はい。なので、もし日本でスタートアップをやるなら、最終的にIPOできますかっていうのは、早くから投資家というか、他の方から意識されやすいようなところになるかなと思います。
はい。じゃあそのIPOまでどれぐらいの期間だったり、どれぐらいの規模でIPOするんだっていう話なんですが、期間について中央値は大体設立から10年程度らしい、というか、かなりどこの時点でのIPOかでばらつきがあるんですけど、大体10年ぐらいで。グロース市場での上場時の時価総額の中央値も100億円程度。これもかなりばらつきがありますが、大体100億円なので、ものすごく粗々にまとめると、10年くらいで100億円規模の企業価値を説明できるのかっていうのが、投資を受ける上では、というか、スタートアップとして起業する上では考える必要があるというのが2点目です。
3点目ですね。資金環境、これがかなり違いが大きいなというか、外国との違いが大きいなと思った点です。日本でもですね、スタートアップ向けの資金はすごく広がってきてはいるんですけれども、欧米に比べると全然もう桁が違うぐらい小さくて、スタートアップへのVC投資額っていうところで、アメリカだと3370億ドルで、同じぐらいのGDPの規模としてドイツは91億ドルで、日本は61億ドルでっていうのがスタートアップ全般で。この中でも特にディープテックでいったところにするともっと差が大きくて、アメリカが2540億ドル、ドイツは68億ドル、日本は34億ドルっていうところで、かなり諸外国との差が開いているというか、規模も小さくなっている。なので、ディープテックで起業する、FoundXとかが多く支援しているようなところだと、技術だけでは足りなくて、開発期間も長くなりやすい、そういったところをどういう風に資金面でつなぐか、投資調達以外にも補助金とか共同研究とかをいかに組み合わせていくのかっていうのを考える必要があるというのが、面白い点というか、調査から見て思ったようなところでした。
ディープテックこんなに違うんですね。ドイツともう2倍違う。
いや、そうなんですよね。それは結構びっくりでしたね。はい。ディープテックの定義も書いてあって、AIとかバイオとか、いわゆるディープテックっぽいとこであったので、そんなにイメージと違いがあるところではないとは思うんですけど。はい。そうですね、ディープテック起業家はかなりVC調達とVC調達以外も考えないとなっていうのは思ったところです。図が多くて見やすいので、気になる方は是非パラパラ見ていただけるといいかなと思います。
では、IdeaCastのコーナーに入りたいと思います。FoundX Review Startup IdeaCastですが、海外のスタートアップのアイデアをAIを使って分析して紹介する番組になります。これからアイデアを考える方のご参考になればと思います。最初にディスクレーマーですが、AIを活用して情報を整理しているので、一部の情報は古かったり間違ったりしている場合もあります。ファクトを重視される場合は必ずご自身で調べていただくようお願いいたします。このポッドキャストはあくまでアイデアの参考情報とか考え方を引き出すことを主な目的としています。ではですね、今日ご紹介するスタートアップですが、KoBold Metalsになります。
なんか有名なところ、KoBold Metals持ってきましたね。なんで選んだんでしょう?
そうですね。いや、意外と話してなかったなと思って。自分でもこんな有名なのでいいのかなというのも思ったんですけど、そうですね、なんで選んだかというところだと、鉱物探査っていうのをAIを使って人間の能力を拡張するというか、広げるようなことをしているっていうのが、AIを既存のレガシー産業に適用してるっていう点が面白いと。AIのツールを作ってツールだけ売って終わりっていうところではなくて、探査の権益とかですね、開発した鉱山の権益を得るみたいなところのビジネスモデルが面白いってことでご紹介させていただいています。
ではKoBold Metalsですが、ちょっと入っていく前に簡単なご紹介ですが、2018年に創業された企業になります。で、やってることとしては、AIだけではなくて、人間の地質の専門性っていうのを組み合わせて、銅とかリチウム、ニッケル、コバルトっていったような重要鉱物を探査・開発するような企業になります。
で、全体像についてまずお話しします。KoBold Metalsのキーフレーズというか一言で言うと、地下資源の探査を再現可能な科学へといったところになります。これまでは地下資源の探査っていうのが属人的な勘とか経験に依存していたんですが、それをデータとモデルを使って、反復が可能になるような、再現が可能になるような科学に変えていくっていうことを彼らはやっています。で、ここで地下資源の対象としては、銅とかリチウム、コバルト、ニッケルといったような重要鉱物になります。あとはですね、彼らがやっていて面白いのが、フルスタックでやっていて、AIツールの提供だけではなくて、自ら権益を獲得し、取得して鉱山の開発まで手掛けるっていうことをやっています。
Why Nowという点ではですね、まずEVや再エネがこう移行していくというか、広がっていくことによって、銅とかリチウムなどの鉱物の需要がとても増えている。ただですね、この鉱山なんですが、地表近くの容易な鉱床っていうのはもうすでに多くが発見されてしまっているそうで、過去30年間でですね、探査コストは10倍ほどに上昇していってしまっているそうです。なので今後、深いところにあるとか複雑な地質の鉱床を探す必要があって、ここでデータとかAIの価値っていうのは高まっていくそうです。
ここでボトルネックですね。鉱床を探すためのボトルネックとしては、鉱物が存在しないといったところではなくて、どこに、どれぐらいの品位で、かつ経済的にペイするような鉱床があるか分からないというような情報の問題があるので、そこに着目したというのが彼らのアイデアになります。
本当に今もう情報って足りないというか、問題になってるんですね。
その鉱物自体がないっていうのではなくて、掘って経済的にペイするか、経済的に取れるかどうかっていったところの、取れる鉱床の場所とか品位とか、あと形を特定するような情報が不足しているそうですね。既存のデータが古かったりとか、まちまちになって分断されてしまっていたりとか、データ化されてなくて、AIとか何かツールで解析しにくいっていった状況も含まれているそうです。
今お話ししたところとも重なるんですが、伝統的な鉱業の限界というところで課題についてお話ししていきたいと思います。まず彼らのターゲット顧客ですが、大手の鉱業会社だけではなくて、探査権は持つけれども資金や解析能力が不足しがちなジュニアマイナーの企業も対象としています。で、今までの手段としては、どういう風に見つけるかってところでは、熟練の地質学者の経験とか紙の地図、手書きのメモ、それからバラバラにいくつかあるような地球物理とか地球科学データに依存していたそうです。で、そういった既存の手段だと、発見から実際に生産を開始するまで平均16年というように、リードタイムがとても長くなっていたっていうことに加えて、探査プロジェクトの失敗率が極めて高かったそうです。99%が鉱山化しないとも言われるほどに高いそうです。
このように探査コストがとても高くなってしまうんですけど、これは掘削そのもののコストもあるんですが、それに加えて候補地を選定すること、許認可を取ること、現地の調査とか環境・社会への対応、インフラの検討っていうのが連鎖するので、コストがとっても高くなってしまっているというような状況になります。で、こういった状況で、KoBoldが最初にMVPとして入っていったのが、AIツールではなくて、その前にデータを学習可能な形にするっていうところから入っていったそうです。
ちなみにこの16年、発見から生産までかかる理由っていうのは一体何なんでしょうか?
そうですね、探査に加えて、ボーリングするのと、資源量がどれぐらいあるか評価すること、経済性の評価を予備的に行うこと、許認可を取ることと、環境と社会への影響の評価、そして建設するっていった、こういったものが順々に必要になってくるので、鉱床が見つかったっていうだけでは不十分で、インフラとか水とか電力、それから地域の合意っていうのが整わないと生産できないって点で、とてもリードタイムが長くなってしまうそうです。
あとこのジュニアマイナーの話と大手会社の話とあると思いますが、大手会社だったら自分たちでAI導入するとか、そういうのってないんでしょうか?
いや、それもあるなとは思います。ただ、大手の鉱山会社だと、資本は持つ一方で、データが散在して、色々な場所にちりぢりになってしまっているので、プラス組織が大きくて、探索リスクをどの程度取るかっていう意思決定が遅くなりやすいと。なので、KoBoldはその大手に対しては、外部からデータ基盤とかAIとか、それから資本ですね、を提供するっていった点で入っていくそうですね。
彼らが提供している解決策についてです。いくつかのプロセスでサービスを提供しています。まず最初のプロセスですが、データインジェスチョン、すいません、読み方忘れちゃったんですけど、インジェスチョンですと。で、彼らが開発したツール、TerraShedというもので、ここで古い地質レポート、地図、手書きのノート、それから地球物理とか地球科学データを標準化して統合していくそうです。
で、プロセスの2つ目で、AIプロセシングで、ここでまた彼らが開発している別のツールで、鉱化の可能性と、品位がどの程度か、厚さどれぐらいで、感度どれぐらいで、導電率っていったものを予測して、不確実性も合わせて扱うそうです。で、この段階で次にどこを調べれば最も情報価値が高いかを算出して、確実性を評価していく。どのデータを取ると不確実性が最も減るかっていったところも評価していくそうです。その後にターゲティングで、AIの出力を人間の地質学者が解釈して、現地の地質の構造であるとか権益条件も踏まえて、掘削のターゲットを決めていくそうです。
KoBoldはAIだけではなくてAI+HI、ここでHIがヒューマンインテリジェンスっていったところで掲げているそうです。なので、AIが地質学者を置き換えるのではなくて、地質学者がやっていた検証と優先順位付けっていうのをよりAIで高速化するということをやっているそうです。
で、彼らがこのプロセスで取り組んだ例として、ザンビアのMingomba Projectというものがあるそうです。ここでは100年間見過ごされていたような世界最大級の高品位の銅の鉱床をAIで発見して、開発を進めているそうです。年産の目標は約30万tで、それを2030年代の初頭に出荷するってことを目標に進めているそうです。
あとは技術的には、今言ったところに加えて、独自のセンサーも技術要素としてありますと。ハイパーポッドというようなセンサーのハードウェアを開発しているそうなんですが、ここだとRGB、ハイパースペクトル、ライダーなども使っているそうです。あとはコアキャム360°は、掘削現場でコアの360°の画像取得にも関わっていたりするってところで、色々なツール、ハードもソフトも開発して取り組んでいる会社になります。
結構色々やってるんですね。
そうですね。うん。かなり色々やっていて、なので、提供するものは分かりやすいんですけど、内部ではいっぱい複雑なプロセスで動いてるんだなと思います。
最初のTerraShed、データインジェスチョンのところって、普通のデータベースとはなんか違うところがあるんでしょうか?
そうですね。私も実際どういう風に動いてるかっていうのが分かってるところではないんですけども、データを保存するだけではなくて、古い資料とか、複数の言語、地図、手書きの情報っていったような、形式が異なるような情報を、機械学習が使える形に変換、標準化する点が違うそうです。なのでAIに入れる前にデータをそもそも解析可能にするというところが、かなり競争力にも繋がっているそうで、取り組むのが難しかったポイントなんだろうなと思います。
彼らが対象としている市場についてです。ここでTAMとしては、エネルギー転換向けの重要鉱物市場全体を取るんですが、ここだと2040年時点で7700億ドル規模という風に予測されているそうです。これは直接獲得できる売上全体っていうよりは、銅とかリチウム、コバルトの全体の市場の規模感というところです。で、SAMはですね、新規の探査と鉱山開発に向けた投資市場になるそうです。ここはKoBoldがAI探査とか権益の取得で入り込めるような領域になります。SOMはKoBoldが自ら権益取得して、開発とか生産から得られるような現実的なアップサイドになります。数十億ドル規模という風にも言われてるんですが、ここが公式に明示されているわけではないんですが、そういう風に言われています。
で、成長のドライバーですが、最初の方にも言ってるんですけど、EVの普及もあるんですが、ここに加えてAIのデータセンターの増加に伴う電力インフラと送電網の増強、そして防衛・産業政策というところもあります。あとは地政学的な追い風としてですね、アメリカとかEUがですね、重要鉱物供給の特定国への依存率を下げたいっていう政策的なニーズもあるそうです。
ちなみにこのSOMの数十億ドルみたいなところに関しては、どんな形で数十億ドルに至るって感じなんですかね。
いや、そうですね。例えば彼らが今取り組んでるようなMingomba Projectだと、総投資額は20億ドルを超えるそうで、それで年産30万tの銅を生産することを目指しているそうですと。で、こういったような大型の権益を複数所有することで、SOMを取っていくという風に見えるというか、そういう風に考えられるようです。
やっぱり銅が大事っていう感じなんですかね。このKoBold Metalsだと。
そうですね。まずは、特に重要なのが銅だと思います。送電網とか、データセンター、EVとか電気機器っていうところに非常に重要になってくる。プラス比較的安価で導電率が高いってところで、代替が難しいような基礎素材という点で、銅がまずは重要になってくるかなと思います。
そして彼らのビジネスモデルですね。ここは私もきちっと理解できてるか少し怪しいんですが、彼らがやってることはSaaSではないですというところです。従来のSaaSモデルだとソフトウェアの利用料は取りやすいんですが、鉱床を見つけても、そこで見つけたことで得られるようなアップサイドっていうのは顧客に残ってしまうので、そこは取れないようになっていました。で、KoBoldは探査の資金とAIの技術を提供しますと、引き換えにプロジェクトの権益とか将来の収益への参加の機会を得るような、アセットの重たいモデルを取っているそうです。例としてですね、グリーンランドの案件だと、1500万ドルの探査資金と引き換えに51%の権益を取るような契約があったそうです。
で、このモデルだと初期投資はとても大きくなります。掘削とか、データ取得、それから現地の対応といったところに資金が必要になってしまうので、通常のSaaSよりは資本効率は重たくなってしまいます。一方で鉱山がもし成立すれば、10年以上の長期のキャッシュフローとか、資源の権益ですね、が得られるので、LTVはすごく大きくなり得るようなモデルになっています。
スケールについては、ライセンス販売のように線形で成長していくのではなくて、案件ごとにジョイントベンチャーを組成したりとか、アーンインと言われるような契約、それから100%保有案件を組み合わせたようなポートフォリオでやっていくことを考えているそうです。で、アーンインの契約っていうのが、一定額の探査費用を負担して、決められた作業を行うことで段階的にプロジェクトの権益を獲得するような契約になっているそうです。なので、こういうようなビジネスモデルを取っている意義としては、AIで不確実性を低減させて、それを他者へのライセンス販売で終わらせず、自社のリターンに変換するというところが面白い点ですね。
この資本集約性というか、そこのリスクを取ってるが故のリターンの長期的な大きさっていうところは面白いですね。
いや、そうですね。で、なんかもうリスクめちゃくちゃ取っていて、許認可とか、建設遅延どうなるんだみたいなものとかの重ためのリスクはやっぱり取っているので、よっぽど不確実性が減るんだろうなとは思う一方で、失敗した場合の損失とか、1回で自分たちが破綻するとかってあるんでしょうかね。
1発で飛ぶっていうのは多分やらないようにしてて、なので案件をポートフォリオ化して分散している、リスクは分散していると思います。地域とか、鉱石の種類とか、開発の段階を分散することでポートフォリオにしているそうです。あとはですね、初期のデータで見込みがなさそうだなという案件からは撤退できるような設計にしているので、なるべくリスクは低減させるようにはしているかなと思います。
で、彼らの全体の戦略ですが、今少し言ったところからも伝わるように、フルスタック垂直統合のような形を取っています。KoBoldはAIのアルゴリズムの提供だけではなくて、有望な鉱床のアップサイドを逃さないために、探査から鉱山の開発の事業まで踏み込んでいます。これによって得られる利点としては、探査で得たデータが開発の判断にも活きますと。で、プラスその開発で得た実データが次の探査モデルを改善していくっていうようなフィードバックのループも働きます。一方で弱点もありますが、それはAIが得意な領域の外であるような建設とか安全、労務、環境、地域社会といったようなリスクは増えてしまいます。
で、この戦略を取る上で、内製と外部活用っていうのもうまくバランスを取ろうとしています。彼らが内製化している部分としては、データの基盤、そして予測のモデル、あと独自のセンサーと、地質データの標準化、探査の判断っていったところは内製しています。一方で外部連携するところとしては、採掘とか建設の実務になりますね。ここに関しては現地の政府系企業とか既存の鉱山会社と連携しているそうです。彼らの10年から20年後の理想像としては、単なる探査テック企業ではなくて、エネルギーが転換していくような時代を支える次世代のデジタル資源メジャーという風に言っているそうです。
いや、本当なんか資源メジャーになっていくって感じですね。
そうですね。
でも自社で専用のセンサーとかまで開発するっていうのは一体どういう目的なんでしょうか?
いや、そうですね。既存のサービスだと最新のイメージングとかの導入が遅くなってしまうそうで、自社でハードウェアを作った方が高品質なデータを高速かつ高密度に取得できるそうで、それで自社でセンサーまで開発しているそうです。
そして彼らのロードマップについてです。そうですね、探査テックから開発企業へと大きくなっていこうとしているというようなものになります。まずフェーズ1です。これが2018年からのものになりますが、ここではですね、技術の構築をしていったそうです。この段階では100年分の地質データを統合するTerraShedの構築とAIの予測モデルの技術実証が中心だったそうです。ここでは顧客数とかではなくて、実案件でデータが掘削の判断に使えるかっていうのを検証していたそうです。
で、フェーズ2で2021年からとされていますが、ここでは権益の取得とパートナーシップに取り組んでいったそうです。大手のBHPとかジュニアマイナー、既存の権益の保有者とのJV契約を通じて案件網を作っていったそうです。そしてフェーズ3ですね、今年からっていうところになってはいるんですが、ここからはアセット開発とかスケールを狙っていくフェーズにあるそうです。Mingombaのようにですね、20億ドルを超えるような規模の資本を投下して、鉱山の開発へ進むような段階になっています。ディープテックの典型ではあるんですけど、いきなり鉱山ではなくて、まずソフトウェアとデータで信頼を作って権益を集めて、だんだん鉱山開発まで進めていくような風に進めています。
最初はでもソフトウェアだったんですね。
いや、そうみたいですね。収益化をしていくというわけではなくて、技術の実証とそれからデータの基盤を作っていくっていうところに力を入れていたそうです。で、その段階だとAndreessen HorowitzとかBreakthrough Energy Venturesといったところの出資、資金を得て、なんとかランウェイを確保していたようです。
なんかそんなソフトウェア企業が今フェーズ3、鉱山開発に移行しようとしていますが、リスクはどういったとこにありますかね?
いや、そうですよね。フェーズ2である程度検証はされてるのかもしれないんですけれども、AIだけだとやっぱり現実の問題というのには対応できないので、そこが1番リスクだと思います。具体的には地域住民との合意形成とか環境アセスメントと、インフラ、水や電力の確保、そして建設資金のマネジメントといったような物理的だったり政治的なリスクについては、フェーズ3に移る上で大きなリスクだと思います。
そして彼らのモート、競合についてです。KoBoldのモートは5つ挙げられています。1点目がデータフライホイール、2点目が自社開発センサー。3点目がチームですね。4点目が資本力、5点目が探査から開発までのフルスタック能力になります。で、データフライホイールですが、これはAIが掘削の候補を選んで、現地の調査とコアデータがモデルを改善して、次の案件でさらにいい判断ができるっていうような循環だそうです。で、自社センサーについては、競争上の重要なデータを外部のサービスに依存せずに、標準化された形で自社の中に蓄積するための仕組みとして重要になっているそうです。
競合にはですね、Earth AIとかバAI、ジオロジックAIっていうようなところもありますと。ただそのAIを使ったようなAI探査スタートアップっていうのは他にもあるんですが、これらは権益の売却とかアセットジェネレーターにとどまる傾向があるそうなんですが、KoBoldは自ら開発まで行うといった点が大きな違いになっています。ただ開発まで行うというのは、オペレーションのリスクであったりとか、資本の拘束っていうのも伴うので、差別化要素にはなるんですが、一方で弱点にもなり得るようなものになります。
これだけいくつかの競合が出てきてるってことは、このAIモデルっていうものが比較的作りやすいのかもしれないなと思ったんですが、コピーされないんですかね?
いや、そうですよね。おそらくそのモデルの構築とか、モデルそのものっていうのは模倣され得ると思います。なので、差別化の要素としては、そこのモデルではなくて、独自のデータとか、センサーとかチーム、資本力といったところになると思います。なので、単一の技術じゃなくて、組み合わせでモートにつなげていくということだと思います。
彼らのGo-to-marketの最初の戦略についてです。彼らの最初のターゲットですが、ここは探査権とか地質データを持つんですが、十分な資金、解析能力、掘削の判断のツールがないようなジュニアマイナーだったそうです。顧客の痛みとしては、どこを掘るべきか決められない、掘る資金がない、過去データを活かしきれないといったようなものだったそうです。で、ここでKoBoldはですね、MVPとして、AIのアプリではなくて、古い記録とか断片のデータとかを標準化してですね、鉱床の仮説を作れる状態にするシステムを提供したそうです。最初の突破として、ツールを売るのではなくて、我々が資金とAIを提供するので、プロジェクトの権益の51%をくださいという形で入っていったそうです。で、PMFの指標としては、予測精度とか利用者数ではなくて、実際の掘削によって無駄な掘削をどれだけ減らせたか、それから鉱化にヒットしたかっていう現場の成果を見ていったそうです。
いや、なんか資金とAI出すから権益51%くれってのはなかなかすごいですね。
いや、すごいですよね、これを。でも、それを飲むくらいには、飲んでもいいと思うくらい、やっぱり痛みが強かったのかなとは思います。
そうしたら、ジュニアマイナーがそれぐらい辛いっていうか痛みがあるっていうのは、例えばどういうところなんでしょう?一部ありましたけど。
そうですね。自社だけだと資金とか、それからその統合データの基盤を用意しにくい。もちろん人材もっていうところだと思うんですが、そういうのがあったというところで、KoBoldと組むことで、開発とか売却とか追加の資金の可能性っていうのを広げられるという風に判断して組んだのかなとは思います。
何もやらないと0だから、それに比べると
そうですよね。
51%渡してもやった方がいいみたいな感じなんですかね。一方でKoBold側も結構お金を払うとか、リスクが高いと思いますが、どうなんでしょうね。
いや、もうめちゃくちゃ高いですよね。なので、Andreessen Horowitzなどのトップ VCからですね、大きな資金を調達して、ハイリスク・ハイリターンのゲームに参加できるような体制を作ったということだとは思います。
彼らの起業プロセスについてです。創業者の方はKurt Houseさん、そしてJosh Goldmanさん、Jeff Jurinakという方だそうです。で、Kurt Houseさんはですね、エネルギーとか地下資源領域での起業経験がある方で、Goldmanさんは物理学とか自然資源領域の専門家で、Jurinakさんは大手資源会社での開発経験がある方だったそうです。で、そうですね、AIのエンジニアだけだと地質の解釈とか現地の検証、権益の交渉ができないですし、地質だけだと大規模なデータの基盤とか機械学習を組むことはできませんと。で、この2つに加えて、市場への知見っていうのも重要になってきますと。で、ここが、鉱山開発がソフトウェアよりも資本集約的で、投資家にリスクとアップサイドをきちんと説明する必要があるので、資本市場の知見は重要になってきたというところです。
で、着想の背景としては、電化していくような社会になっていく中に、資源がないんじゃなくて、探査の方法が前時代的であることで情報のボトルネックが起きているところを発見して、そして起業に至ったというか、そこから今の形に至ったそうです。
なんかシリコンバレーとかのAIのエンジニアって、鉱業に興味持つんですかね。
うん。いや、そうですよね。インパクトはとても大きいですからね。気候変動を解決するための重要な鉱物を探すっていうようなインパクトは大きいので、そこで引きつけられる人もいたということかなと思います。
で、彼らの学びと初期の歩みについてです。鉱物の探査ではですね、掘っても何も出ない、ドライホールと言われるそうなんですが、こういった失敗が日常茶飯事だそうです。で、KoBoldはですね、この空振りしたっていうのを、単に失敗したねっていうような、外れたねっていうので終わらせなくて、ここに鉱脈はないというような価値ある学習データとして、TerraShedに、システムにですね、還元するようなループを作ったそうです。ここでドライホールっていうのは、ここにはないとか、この地質の仮説は弱いとか、鉱床の境界は別にあるといったような反証のデータとして組み込んでいったところですね。KoBoldの思想はですね、空振りの結果もモデルの更新に使えるように、データの取得と記録を標準化することにあったそうです。で、こういったループを構築してですね、ピンポイントで鉱脈を当てるんではなくて、次にどこを調べれば最も不確実性が減るかっていうのを最適化するようなものを作っていったということになります。
とはいえ、なんかボーリングって失敗すると結構高いと思うんですけれど、どうやって試行回数というか回数を稼いだんでしょうね。
そうですね。いや、あまり答えにうまくなってないような気はするんですけれども、AIによる事前予測で、外しにくいような、不確実性が最も減るような場所を探して掘削して、で、また次の不確実性が減るような場所を探すっていうような、予算内で1番大きく学べるような、学習効率を最大化するようなことをやっているそうです。
ある意味なんかAI創薬に近いのかもしれないですね。当たり外れが大きいって意味だと。
そうですね。非常にたくさんある中から絞っていって、実験でダメだった結果を、これはダメだったっていうのを次に活かすという点では、近いというか同じようなものかなと思います。
で、彼らの資金調達についてです。KoBoldですが、非常に資本集約的なところでして、累計の調達額は10億ドルを超えるという風に報じられています。鉱山開発まで行うような資本集約型企業という風に考えられます。直近のですね、大型の調達としては、2025年の1月にシリーズCで5.37億ドルを調達しているそうで、評価額は30億ドル規模とされているそうです。投資家にはですね、Breakthrough Energy VenturesとかAndreessen Horowitz、日本のところだと三菱商事なども含まれます。
彼らの成功の要因にはですね、多面性というか、色々な面がありまして、テック系の投資家にはですね、AIソフトウェアのレバレッジを提示して、気候変動系の投資家には脱炭素インフラのボトルネック解消、インフラの投資家には重要鉱物の供給安全保障というところのアップサイドを提示したということのようですね。で、調達した資金ですが、Mingombaの開発であるとか、世界各地の探索とかR&Dの強化に使われるという風に考えられています。
ちなみにこのAndreessen Horowitzが鉱山会社に投資したみたいな感じですけれど、これは彼らのソフトウェア系とはまたやっぱ違ってくる文脈なんですかね。
重なるところはあると思いますと。ソフトウェアが物理世界、実際の物理の世界に広がっていくような象徴的な事例という風に捉えたようで、なのでAIが構造自体も変えていく、そういったポテンシャルに投資したのかなと思います。
あと先ほどシリーズCで5億ドル調達したということでしたが、これはどこに使われるお金なんでしょうね。
そうですね。大部分は、先ほどのザンビアのMingombaの鉱山における開発に充てられるかなとは思います。他は新規の探査っていったところに投資されるのではないかと思います。
じゃあ本当に鉱山会社って感じなんですね。
本当に本当にそうです。重たいですよね。
で、日本で応用するならというところです。ただ日本にはですね、大規模な鉱山が少ないので、KoBoldの海外の陸上の鉱床を自社開発するというようなモデルをそのまま持ち込むことは難しいのではないかなとは言っています。その上で3つ案を提示しています。案Aは都市鉱山AIプラットフォームです。廃バッテリーとか廃電子機器、産業廃棄物に含まれるような金属の発生時期、場所、品質、回収ルートをAIで予測・最適化するものです。なので地下の地質の不確実性ではなくて、社会に散らばる資源の所在とか品質、回収タイミングの不確実性を下げることになっていくようです。
案Bは地熱とかCCS向けの地下の探査になります。日本の地熱ポテンシャルは高いと言われているので、そういった地熱のポテンシャルなどの地下開発をして、掘削の成功率を高めるような意思決定の支援を行うようなものになります。案Cが商社向け海外権益AIコンサルというところで、総合商社が持つような過去の探索とか操業データと海外の権益の方を解析して、投資の判断を支援するようなものもあるんではないかと言っています。
ちょっと案Cはスタートアップっぽくないですね。
いや、これはもうそうなんですよね。スタートアップっぽくないんですが、AI的にはおすすめらしい。短期ではおすすめということなんですが、ここだとちょっとコンサルになっちゃうかなとは思います。
そっから入っていってどうにかするって感じですかね。
そうですね。そこからどういう風に大きくしていくかということかなと思います。
一方で、日本企業がKoBold Metalsに正面から勝つ方法ってあるんですかね?
いやあ、そう。いや、完全に同じ土俵に立って、海外の鉱山の権益を得られますかとか、とっても大きなVCの資本を得られますか、人材を揃えられますかっていうのは、その3つを揃えるっていうのはなかなか難しいかなと思います。なので、日本の強みというものが、そうですね、一般に言われているのは地熱のエネルギーが強いとか、循環型の社会になってるとかっていうような、それがどこまで本当か分からないですけれども、そういったものに着目して、隣接の領域で探してみるっていうのは1つありなのかもしれません。
では最後にまとめになります。そうですね。1点目としては、AIに限らずに価値の源泉を取りに行くというところです。AIの利用料だけではなくて、AIで低減されたようなリスクを実物資産の権益アップサイドとして取りに行くというような戦略もあるというところです。で、2点目がですね、異分野の意図的な結合です。そうですね、デジタル人材だけではなくて、レガシー産業のドメインのエキスパートと、長期の資本を操るような金融のプロフェッショナルを組み合わせると、レガシー産業にテクノロジーも入っていけるというところになります。で、3点目がですね、失敗を構造化可能な学習データに変えることです。はい。掘削が外れたというのは、失敗したとかミスだとかいうのではなくて、そのモデルの不確実性を下げる
ための不可欠なデータとして、プロセスの中に組み込んでいくと、ちゃんとプロセス自体も回っていく、改善されていくというところになります。
エクストラアクションとして、自分の業界でですね、長年の経験則に依存して、失敗コストが高くてデータが分断されているような意思決定っていうのがもしあれば、その不確実性をデータで定量化して何かしら価値に転換できないかを検証すると。いうのが考えるヒントにはなるかもしれません。
はい。以上、今日はコボールドメタルズをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
そうですね、いわゆるAIフルスタックスタートアップというか、どこまでフルスタックというのかはあれですが、こうした一例なんだなというのが1つと、あとは、そのフルスタックっていう時にもかなりこのレガシー産業の、工業系でもフルスタック行けるんだっていうのは学びになるなと思いますね。
ああ、そうですよね。やってやれないことはないんだなと思いますね。確かに。
そういう意味では、日本でもレガシー産業とか重たい産業もスタートアップが入り込む余地はもしかしたらまだあるかもしれないっていうところで、皆さんのご参考になるといいかなと思います。
はい。それでは、今日はこちらで終了となります。FoundX Review Startup IdeaCastですが、今後も皆さんのために最新のスタートアップをご紹介していきます。ご興味のある方は是非チャンネル登録、高評価の方をお願いいたします。
またFoundXの各プログラムでもですね、応募者の方は募集しています。周りに起業を考えてる方がいらっしゃったら是非FoundXをご紹介いただけると、大変ありがたいです。
はい。ではまた次回よろしくお願いいたします。ありがとうございました。ありがとうございました。
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