KoBold Metalsの戦略:AIで鉱物探査を「再現可能な科学」に変え、鉱山の権益まで取りに行く

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概要

FoundXの「Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで分析して紹介する番組である。今回は、AIと地質学者の専門知を組み合わせて重要鉱物を探査するKoBold Metals(コボールドメタルズ)を取り上げた。発表者がこの会社を選んだ理由は二つある。一つは、AIを既存のレガシー産業に持ち込み、人間の能力を広げる使い方をしていること。もう一つは、AIツールを作って売るだけで終わらず、探査プロジェクトの権益を取得し、開発した鉱山から価値を得るビジネスモデルを取っていることだ。

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番組の冒頭では、経済産業省の「スタートアップ・エコシステム調査2026」も紹介された。なお番組は、情報をAIで整理しているため一部が古い、または誤っている可能性があると断っている。以下の数値や事実は、番組内で紹介された内容として記す。

経産省調査から見た日本のスタートアップ環境

調査は、スタートアップを単なる新設企業とは定義していない。独自の技術・製品・ビジネスモデルを持ち、VC、エンジェル投資家、事業会社から株式で資金を調達している、またはその可能性がある未上場企業としている。自己資金と売上だけで成長する会社やスモールビジネスは対象外である。

発表者が印象に残った点として挙げたのは三つだった。一つ目は、日本ではイグジットに占めるIPOの比率が高いことだ。2011年から2025年のIPOとM&Aを比べると、日本と韓国は件数・金額ともにIPOの比率が大きい。日本は件数ではM&Aもかなり多いが、金額ベースではIPOが約50%を占める。比較対象のアメリカは20%程度である。そのため日本でスタートアップをやるなら、「最終的にIPOできるか」を早い段階から投資家に意識されやすい、と発表者は述べた。

二つ目はIPOまでの期間と規模である。ばらつきは大きいものの、設立からIPOまでの中央値はおよそ10年、グロース市場での上場時時価総額の中央値は約100億円だという。発表者は大まかに「10年で100億円規模の企業価値を説明できるか」が、起業する際に考えるべき問いになるとまとめた。

三つ目は資金環境の差だ。スタートアップへのVC投資額は、アメリカが3370億ドル、GDP規模が近いドイツが91億ドル、日本が61億ドルと紹介された。ディープテックに限ると差はさらに広がり、アメリカ2540億ドル、ドイツ68億ドル、日本34億ドルとなる。聞き手が「ドイツとも2倍違う」と驚くと、発表者も意外だったと応じた。ディープテックは開発期間が長くなりやすい。だから日本では、VCからの調達に加えて補助金や共同研究をどう組み合わせて資金をつなぐかを考える必要がある、というのが発表者の見立てである。

KoBold Metalsの全体像

KoBold Metalsは2018年に創業した。AIに人間の地質学の専門性を組み合わせ、銅、リチウム、ニッケル、コバルトなどの重要鉱物を探査・開発している。発表者は同社を一言で「地下資源の探査を再現可能な科学へ」と表現した。これまで地下資源の探査は、属人的な勘や経験に頼ってきた。同社はそれを、データとモデルによって反復・再現できる科学に変えようとしている。

特徴はフルスタックであることだ。AIツールを提供するだけでなく、自ら権益を取得し、鉱山開発まで手がける。

なぜ今この事業なのか。発表者の説明では、EVや再生可能エネルギーの普及で銅やリチウムなど重要鉱物の需要が大きく伸びている。一方で、地表近くの見つけやすい鉱床はすでに多くが発見済みで、過去30年で探査コストは約10倍に上がったという。今後は深い場所や複雑な地質の鉱床を探さなければならず、データとAIの価値が高まる。同社が着目したボトルネックは、鉱物そのものが存在しないことではない。どこに、どの程度の品位で、経済的に採算の取れる鉱床があるのかが分からないという「情報の問題」である。

聞き手が「本当に情報が足りないのか」と尋ねると、発表者は次のように答えた。鉱床の場所、品位、形状を特定する情報が不足している。既存のデータは古かったり、ばらばらに分断されていたり、そもそもデジタル化されておらずAIやツールで解析しにくかったりするという。

伝統的な探査の限界と16年のリードタイム

同社のターゲットは大手鉱業会社だけではない。探査権は持っていても資金や解析能力が足りない「ジュニアマイナー」も対象にしている。

従来の探査は、熟練地質学者の経験、紙の地図、手書きのメモ、分散した地球物理・地球化学データに頼ってきた。その結果、発見から生産開始まで平均16年かかり、探査プロジェクトの99%は鉱山にならないとも言われるほど失敗率が高いという。コストが高い理由も掘削そのものだけではない。候補地の選定、許認可の取得、現地調査、環境・社会への対応、インフラの検討が連鎖するためだと発表者は説明した。

16年もかかる理由を聞かれると、発表者は工程が順番に積み重なる構造を挙げた。探査に続いてボーリング、資源量の評価、予備的な経済性評価、許認可の取得、環境・社会影響の評価、建設が必要になる。鉱床が見つかっただけでは不十分で、インフラ、水、電力、地域の合意が揃わないと生産できない。

聞き手は、大手なら自社でAIを導入できるのではないかとも尋ねた。発表者はその可能性を認めた。ただし大手は資本を持つ一方で、データがサイロ化してあちこちに散らばっている。組織が大きく、探査リスクをどこまで取るかの意思決定も遅くなりやすい。そこでKoBoldは大手に対して、外部からデータ基盤、AI、資本を提供する形で入っていくのだという。

解決策:データ統合、AI予測、人間の判断

同社のプロセスは三段階で説明された。

最初は「データインジェスチョン」である。自社開発のツール「TerraShed(テラシェッド)」で、古い地質レポート、地図、手書きのノート、地球物理・地球化学データを標準化して統合する。

次は「AIプロセシング」だ。別の自社ツールで、鉱化の可能性、品位、厚さ、感度、導電率などを予測し、その不確実性も合わせて扱う。この段階で、次にどこを調べれば最も情報価値が高いか、どのデータを取れば不確実性が最も減るかも評価する。

最後が「ターゲティング」である。AIの出力を人間の地質学者が解釈し、現地の地質構造や権益の条件も踏まえて掘削ターゲットを決める。

同社は「AI+HI(ヒューマンインテリジェンス)」を掲げているという。AIが地質学者を置き換えるのではない。地質学者が担ってきた検証と優先順位付けを、AIで速くするという位置づけである。

聞き手は、TerraShedは普通のデータベースと何が違うのかと質問した。発表者は、実際の仕組みは分かっていないと前置きした。そのうえで、データを保存するだけでなく、古い資料、複数の言語、地図、手書き情報など形式の異なる情報を、機械学習で使える形に変換・標準化する点が違うと説明した。AIに入れる前にデータをそもそも解析可能にすることが競争力につながっており、取り組むのが難しい部分だったのだろう、と発表者は推測している。

事例:ザンビアのMingombaプロジェクトと独自センサー

このプロセスの代表例として紹介されたのが、ザンビアのMingomba(ミンゴンバ)プロジェクトである。100年間見過ごされてきた世界最大級の高品位銅鉱床をAIで発見し、開発を進めているという。年産約30万トンを目標に、2030年代初頭の出荷を目指している。

技術面では、同社は独自センサーも開発している。「ハイパーポッド」と呼ばれるセンサーハードウェアでは、RGB、ハイパースペクトル、LiDARなどを使っているという。「CoreCam 360」は、掘削現場でコアの360度画像を取得するものだ。聞き手が「結構いろいろやっている」と言うと、発表者は、提供するものは分かりやすいが内部ではかなり複雑なプロセスが動いている、と応じた。

自社でセンサーまで作る理由については、既存サービスでは最新のイメージング技術の導入が遅くなるためだという。自社でハードウェアを作ったほうが、高品質なデータを高速かつ高密度に取得できると説明された。

市場規模と成長ドライバー

市場の規模感も紹介された。TAMはエネルギー転換向けの重要鉱物市場全体で、2040年時点で7700億ドル規模と予測されているという。ただし発表者は、これは同社が直接得られる売上ではなく、銅・リチウム・コバルトなどの市場全体の規模感だと補足した。SAMは、新規の探査と鉱山開発に向けた投資市場で、AI探査や権益取得で同社が入り込める領域である。SOMは、同社が自ら権益を取得し、開発・生産から得る現実的なアップサイドだ。数十億ドル規模とも言われるが、公式に示された数字ではないという。

成長ドライバーとして挙がったのは、EVの普及に加え、AIデータセンターの増加に伴う電力インフラと送電網の増強、防衛・産業政策である。地政学的な追い風として、アメリカやEUが重要鉱物供給で特定国への依存を下げたいという政策的なニーズもあるという。

SOMの数十億ドルにどう至るのかと聞かれ、発表者はMingombaを例に挙げた。総投資額は20億ドルを超え、年産30万トンを目指している。こうした大型権益を複数持つことで規模を取っていく、という考え方のようだと説明した。銅が特に重要なのかとの問いには、送電網、データセンター、EV、電気機器に不可欠で、比較的安価で導電率が高く、代替が難しい基礎素材だからまず重要になる、と答えた。

SaaSではなく権益のアップサイドを取るモデル

発表者は、ここは自分もきちんと理解できているか少し怪しいと前置きしてビジネスモデルを説明した。従来のSaaSはソフトウェア利用料を取りやすい。しかし鉱床が見つかっても、そこから生まれるアップサイドは顧客に残り、ソフトウェア提供側は取れない。KoBoldは探査資金とAI技術を提供し、その見返りにプロジェクトの権益や将来収益への参加機会を得る、アセットの重いモデルを取っている。

例として挙げられたのがグリーンランドの案件である。1500万ドルの探査資金と引き換えに51%の権益を取る契約があったという。このモデルは初期投資が大きい。掘削、データ取得、現地対応に資金が要るため、通常のSaaSより資本効率は重い。一方で鉱山が成立すれば、10年以上の長期キャッシュフローや資源の権益が得られ、LTVは非常に大きくなりうる。

スケールの仕方も、ライセンス販売のように線形で伸びるものではない。案件ごとにジョイントベンチャーを組成したり、「アーンイン」契約を結んだり、100%保有案件を持ったりして、それらを組み合わせたポートフォリオで進めるという。アーンインとは、一定額の探査費用を負担して決められた作業を行うことで、段階的にプロジェクトの権益を獲得する契約である。発表者は、AIで不確実性を下げ、それを他社へのライセンス販売で終わらせず自社のリターンに変換する点が面白いと述べた。

許認可や建設などの重いリスクまで取って、1回の失敗で破綻する恐れはないのか。聞き手の問いに、発表者は「一発で飛ぶ」ことはやらないようにしているはずだと答えた。地域、鉱石の種類、開発段階を分散させてポートフォリオ化し、初期データで見込みが薄い案件からは撤退できる設計にしているという。

フルスタック垂直統合と「次世代デジタル資源メジャー」

同社はAIアルゴリズムの提供にとどまらず、有望な鉱床のアップサイドを逃さないために、探査から鉱山開発まで踏み込んでいる。利点は、探査で得たデータが開発判断に活き、開発で得た実データが次の探査モデルを改善するフィードバックループが働くことだ。弱点は、建設、安全、労務、環境、地域社会など、AIの得意領域の外にあるリスクが増えることである。

そのため同社は内製と外部活用のバランスを取っている。データ基盤、予測モデル、独自センサー、地質データの標準化、探査判断は内製する。一方、採掘や建設の実務は、現地の政府系企業や既存の鉱山会社と連携しているという。10〜20年後の理想像として同社が掲げるのは、単なる探査テック企業ではなく、エネルギー転換の時代を支える「次世代のデジタル資源メジャー」だと紹介された。

ロードマップ:技術構築からアセット開発へ

ロードマップは三つのフェーズで説明された。

フェーズ1(2018年〜)は技術構築の段階である。100年分の地質データを統合するTerraShedの構築と、AI予測モデルの技術実証が中心だった。検証していたのは顧客数ではなく、実案件でデータが掘削判断に使えるかどうかだった。

フェーズ2(2021年〜)は権益取得とパートナーシップの段階である。大手のBHP、ジュニアマイナー、既存の権益保有者とJV契約を結び、案件網を作っていった。

フェーズ3(今年〜)はアセット開発とスケールの段階だ。Mingombaのように20億ドルを超える規模の資本を投じて鉱山開発へ進む。発表者は、いきなり鉱山を作るのではなく、まずソフトウェアとデータで信頼を作り、権益を集め、段階的に進めているとまとめた。初期は収益化よりも技術実証とデータ基盤づくりに力を入れ、Andreessen HorowitzやBreakthrough Energy Venturesなどからの資金でランウェイを確保していたという。

フェーズ3への移行でのリスクを問われ、発表者は、フェーズ2である程度検証されているかもしれないが、AIだけでは現実の問題に対応できない点が最大のリスクだと答えた。具体的には、地域住民との合意形成、環境アセスメント、水や電力などインフラの確保、建設資金のマネジメントといった物理的・政治的リスクを挙げた。

競争優位と競合との違い

同社の堀(モート)として五つが挙げられた。データフライホイール、自社開発センサー、チーム、資本力、探査から開発までのフルスタック能力である。

データフライホイールとは、AIが掘削候補を選び、現地調査とコアデータがモデルを改善し、次の案件でさらに良い判断ができるという循環だ。自社センサーは、競争上重要なデータを外部サービスに頼らず、標準化された形で自社に蓄積する仕組みとして重要だとされる。

競合には、Earth AIやGeologicAIなど、AI探査のスタートアップがほかにもある。ただしそれらは権益の売却や「プロジェクトジェネレーター」にとどまる傾向があるという。自ら開発まで行う点がKoBoldとの大きな違いである。とはいえ、開発まで行うことはオペレーションリスクや資本の拘束を伴うため、差別化要素であると同時に弱点にもなりうると発表者は指摘した。

聞き手は、これだけ競合がいるならAIモデル自体は比較的作りやすく、コピーされるのではないかと尋ねた。発表者は、モデルの構築やモデルそのものは模倣されうると認めた。差別化はモデルではなく、独自データ、センサー、チーム、資本力にある。単一の技術ではなく組み合わせで堀を作っているのだろう、というのが発表者の見方である。

Go-to-market:ジュニアマイナーに「51%」を求める

最初のターゲットは、探査権や地質データを持ちながら、十分な資金、解析能力、掘削判断のツールを持たないジュニアマイナーだった。彼らの痛みは、どこを掘るべきか決められない、掘る資金がない、過去データを活かしきれない、というものだったという。

同社がMVPとして提供したのは、AIアプリではない。古い記録や断片的なデータを標準化し、鉱床の仮説を立てられる状態にするシステムだった。最初の突破口もツール販売ではなく、「資金とAIを提供するので、プロジェクト権益の51%をください」という形だったという。PMFの指標も予測精度や利用者数ではなく、実際の掘削で無駄な掘削をどれだけ減らせたか、鉱化にヒットしたかという現場の成果で見ていた。

聞き手は51%という条件に驚いた。発表者は、それを飲んでもよいと思うほど痛みが強かったのだろうと述べた。ジュニアマイナーは自社だけでは資金も統合データ基盤も人材も用意しにくい。KoBoldと組めば開発、売却、追加資金の可能性が広がると判断したのではないか、と推測している。聞き手は、何もしなければゼロなので51%を渡してもやるほうがよいということか、と整理した。KoBold側のリスクもきわめて高い。だからこそa16zなどのトップVCから大型資金を調達し、ハイリスク・ハイリターンのゲームに参加できる体制を作ったのだろう、と発表者は答えた。

創業チーム:AI、地質、資本市場の結合

創業者として紹介されたのは、カート・ハウス、ジョシュ・ゴールドマン、ジェフ・ジュリナックの3人である。ハウスはエネルギー・地下資源領域での起業経験があり、ゴールドマンは物理学や自然資源領域の専門家、ジュリナックは大手資源会社での開発経験があるという。

発表者は、この組み合わせの意味を次のように説明した。AIエンジニアだけでは、地質の解釈、現地での検証、権益の交渉ができない。地質の専門家だけでは、大規模なデータ基盤や機械学習を組めない。さらに鉱山開発はソフトウェアより資本集約的で、投資家にリスクとアップサイドをきちんと説明する必要があるため、資本市場の知見も欠かせない。創業の背景には、電化が進む社会で問題は資源がないことではなく、探査方法が前時代的なために情報のボトルネックが起きている、という発見があったという。

シリコンバレーのAIエンジニアが鉱業に興味を持つのかという聞き手の問いには、気候変動の解決に必要な重要鉱物を探すというインパクトの大きさに引きつけられる人もいたのだろう、と発表者は答えた。

空振り(ドライホール)を学習データに変える

鉱物探査では、掘っても何も出ない「ドライホール」が日常茶飯事だという。KoBoldはこれを単なる「外れ」で終わらせなかった。「ここに鉱脈はない」「この地質仮説は弱い」「鉱床の境界は別の場所にある」といった反証データとして、TerraShedに還元するループを作ったという。同社の考え方は、空振りの結果もモデルの更新に使えるよう、データの取得と記録を標準化することにあった。そのうえで、一発で鉱脈を当てるのではなく、次にどこを調べれば最も不確実性が減るかを最適化する仕組みを作っていった。

聞き手は、ボーリングの失敗は高くつくのに、どうやって試行回数を稼いだのかと質問した。発表者は「あまり答えになっていないかもしれない」と断ったうえで、こう説明した。AIの事前予測で不確実性が最も減る場所を選んで掘り、その結果からまた次の場所を探す。予算内で最も大きく学べるよう、学習効率を最大化しているのだという。聞き手が、当たり外れが大きい点でAI創薬に近いのではないかと指摘すると、発表者は、膨大な候補から絞り込み、実験で駄目だった結果を次に活かすという点で同じようなものだと同意した。

資金調達:累計10億ドル超の資本集約型スタートアップ

同社の累計調達額は10億ドルを超えると報じられているという。直近の大型調達は2025年1月のシリーズCで5.37億ドル、評価額は30億ドル規模とされる。投資家にはBreakthrough Energy Ventures、Andreessen Horowitz、そして日本の三菱商事も含まれる。

発表者は、調達がうまくいった要因として、投資家ごとに異なる価値を示したことを挙げた。テック系投資家にはAIとソフトウェアのレバレッジを、気候系投資家には脱炭素インフラのボトルネック解消を、インフラ系投資家には重要鉱物の供給安全保障というアップサイドを示したという。調達資金はMingombaの開発、世界各地での探査、R&Dの強化に使われると考えられている。

a16zが鉱山会社に投資したのは、いつものソフトウェア投資とは文脈が違うのかという問いに対し、発表者は重なる部分もあると答えた。ソフトウェアが物理世界に入り込む象徴的な事例と捉え、AIが産業構造自体を変えるポテンシャルに投資したのではないかという。シリーズCの資金の大部分はザンビアのMingomba鉱山の開発に、残りは新規探査に向かうのではないかと発表者は見ている。聞き手が「本当に鉱山会社という感じ」と言うと、発表者も「本当にそう。重たいですよね」と応じた。

日本で応用するなら:都市鉱山、地熱、商社向けAI

日本には大規模な鉱山が少ないため、海外の陸上鉱床を自社開発するKoBoldのモデルをそのまま持ち込むのは難しい、というのが番組のAI分析の見立てである。そのうえで三つの案が示された。

  • A:都市鉱山AIプラットフォーム。廃バッテリー、廃電子機器、産業廃棄物に含まれる金属の発生時期、場所、品質、回収ルートをAIで予測・最適化する。地下の地質ではなく、社会に散らばる資源の所在・品質・回収タイミングの不確実性を下げるものになる。
  • B:地熱やCCS向けの地下探査。日本は地熱ポテンシャルが高いと言われるため、地下開発での掘削成功率を高める意思決定を支援する。
  • C:商社向け海外権益AIコンサル。総合商社が持つ過去の探査・操業データと海外権益の情報を解析し、投資判断を支援する。

聞き手は、Cはスタートアップっぽくないと指摘した。発表者も同意し、AIの分析では短期的にはおすすめとされているものの、これではコンサルになってしまうと述べた。そこから入ってどう大きくしていくかが課題になるという。

日本企業がKoBoldに正面から勝つ方法はあるかという問いには、発表者は否定的だった。同じ土俵で海外鉱山の権益を得て、巨額のVC資本を集め、人材を揃えるのはなかなか難しい。むしろ、地熱に強い、循環型社会が進んでいるといった一般に言われる日本の強み(それがどこまで本当かは分からないと発表者は留保した)に着目し、隣接領域で探してみるのは一つの手かもしれない、と述べた。

まとめと振り返り

発表者はまとめとして三点を挙げた。第一に、AIの利用料だけでなく、AIで下げたリスクを実物資産の権益アップサイドとして取りに行く、つまり価値の源泉そのものを取りに行く戦略がありうること。第二に、デジタル人材、レガシー産業のドメインエキスパート、長期資本を扱う金融のプロを意図的に組み合わせることで、レガシー産業にテクノロジーが入っていけること。第三に、掘削の空振りを失敗やミスとしてではなく、モデルの不確実性を下げる不可欠なデータとしてプロセスに組み込むと、プロセス自体が回り改善されていくこと。

視聴者へのアクションとしては、自分の業界に、長年の経験則に依存し、失敗コストが高く、データが分断されている意思決定がないかを探すことが提案された。もしあれば、その不確実性をデータで定量化し、何らかの価値に転換できないかを検証する。

最後に聞き手は、どこまでをフルスタックと呼ぶかは議論があるとしつつ、AIフルスタック型スタートアップの一例であり、鉱業のようなレガシー産業でもフルスタックで行けるというのは学びになると振り返った。発表者も、やってやれないことはないと同意した。日本でもレガシー産業や重い産業にスタートアップが入り込む余地はまだあるかもしれない、という言葉で番組は締めくくられた。