望遠鏡メーカーとAPI企業の合併で生まれたObservable Spaceは、宇宙観測をどう「データの提供」に変えようとしているのか

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概要

FoundX Review Startup IdeaCastは、海外のスタートアップをAIで分析して紹介する番組である。冒頭で、情報の整理にAIを使っているため一部が古かったり誤っていたりする可能性があると断っている。今回取り上げたのは宇宙観測スタートアップのObservable Spaceだ。望遠鏡の製造から画像処理、クラウドAPIまでを一社で抱える珍しいフルスタック型の企業である。話し手は、この会社が「望遠鏡を売る会社」から「観測データと通信リンクを継続的に提供するインフラ企業」へ移行しつつあると見ており、その背景、ビジネスモデル、戦略、日本での応用可能性を順に解説した。

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取り上げた理由と全体像

話し手がObservable Spaceを選んだ理由は二つある。一つは、望遠鏡からデータまでを垂直統合している点だ。もう一つは会社の成り立ちである。2006年ごろに創業した望遠鏡メーカーのPlaneWave Instrumentsと、宇宙データ/APIを手がけていたOurSkyが合併し、新しいスタートアップとして「再起動」した。光学ハードウェアの製造とソフトウェアの両方を持つ点が珍しいという。

同社が掲げるのは、高精度なハードウェアとクラウドAPIを組み合わせ、宇宙と地球をつなぐ「光のインフラ」を作ることだ。光学観測は宇宙を「見る」ために、レーザー通信は宇宙と「通信する」ために使う。背景として話し手は、2026年時点で軌道上の人工衛星が約1万5000機、追跡対象の宇宙物体が約4万4870個あるという数字を紹介した。宇宙の混雑とデータ通信量の増加によって、従来の電波通信や分断された観測網は限界を迎えつつある、というのが同社の問題設定である。

では、これはハードウェア企業なのか、データ企業なのか。話し手の答えは「両方」だ。ただし事業価値の中心は、望遠鏡から継続的に使える観測・通信ネットワークへ徐々に移っていくだろうと見ている。ハードウェアはネットワークを作るための入り口であり、最終的な収益の中心はAPI、データ、運用インフラになる。そのため、単体の機器メーカーとしてではなく、垂直統合型のインフラ企業として見るべきだという。

「ソフトウェア定義の望遠鏡」とは何か

同社は自らの製品を「ソフトウェア定義の望遠鏡」と呼んでいる。普通の望遠鏡では、設置、調整、撮影、画像処理を人間が個別に行うことが多い。これに対してObservable Spaceは、観測タスクの指定、撮像、処理、データ取得をソフトウェアとAPIで一貫して扱えるようにした。

その結果、顧客は望遠鏡を操作するのではなく、対象を指定して必要なデータを受け取ればよくなる。望遠鏡の制御、スケジューリング、キャリブレーション、画像処理がソフトウェアで扱えるため、研究者や専門オペレーターが個別に運用する必要がなくなる。さらにそれをクラウド経由で使えるインフラにしていく。話し手は、これが顧客から見たフルスタック戦略の姿だと説明した。

宇宙物体が増えるほど、いまどこに何があるかを把握するSpace Domain Awareness(SDA:宇宙状況把握)の価値は上がると言われている。従来の観測網は電波通信や公開データ、個別の専用観測所に依存しがちだった。Observable Spaceはこれをプログラム可能なネットワークに近づけようとしている、と話し手は位置づけた。

顧客と三つの壁

初期の主な顧客は、SDAに強い課題を抱える防衛機関、衛星オペレーター、レーザー通信事業者だ。宇宙の状況をリアルタイムに知る必要があり、支払い能力もある層である。

話し手は、彼らが直面する課題を三つの「壁」として整理した。一つ目はハードウェアの壁で、特注の観測所やレーザー地上局は開発費が高く、導入に時間がかかる。二つ目は天候の壁で、光学観測やレーザー通信は雲、雨、大気の揺らぎによって可用性が落ち、データへのアクセスが途切れる。三つ目はソフトウェアの壁で、望遠鏡、カメラ、画像処理、スケジューリング、顧客システムをつなぐ作業が複雑である。

代替手段もあるが、不十分だとされる。RF(電波)通信は帯域幅に限界がある。政府の公開SSAデータは基礎的な軌道情報にとどまり、詳細な情報や画像、低遅延のタスキングは難しい。特注の専用観測所は開発期間が長く、経済的なスケーラビリティがない。こうした状況から話し手は、顧客が本当に欲しいのは望遠鏡ではなく、必要なタイミングに信頼できる観測データや通信リンクが得られることだと述べ、そこにチャンスがあるかもしれないと見る。

この点を示す例として、TechCrunchの記事が紹介された。PlaneWaveはデモで高品質な望遠鏡を使ったにもかかわらず、最初の画像を得るまでに長い時間がかかった。ハードウェアが良くても運用ソフトウェアが弱いと成果が出ないことを、彼ら自身が痛感していたのではないかと話し手は推測している。

三つの壁のうちどれが最も重要かと問われると、話し手はソフトウェアの壁を挙げた。ハードウェアや天候は分かりやすい課題だが、実際にはシステムを統合して運用し、データを処理する部分がボトルネックになりやすい。わざわざ合併したのも、光学性能だけでなく、統合された形で運用し、API経由で顧客に提供するためだろうという見立てだ。一方で、光学・レーザーは天候に弱いため、電波通信を完全に置き換えるのではなく、RFと補完関係になるだろうとも話し手は述べた。

解決策とトラクション

Observable Spaceの解決策は、ハードウェア、エッジコンピューティング、APIプラットフォームを組み合わせた垂直統合である。顧客に届ける成果物は、高精細な画像、サブ秒角精度の軌道データ、高帯域のレーザー通信といったものだ。エッジコンピューティングでは、すべての生データをクラウドに送るのではなく現場で処理し、遅延、帯域、クラウドコストを下げることを考えているという。API化によって、顧客は望遠鏡を操作するのではなく観測タスクを投げるという、抽象度の高い指示ができるようになる。公式サイトには、フリートレベルのコマンド、リアルタイムテレメトリー、REST API、SDKといった機能が並んでいると紹介された。

トラクションとして話し手が挙げたのは次の実績である。米宇宙軍との上限9400万ドル超のIDIQ契約(初期受注は2200万ドル)、260万回を超える自動タスクの実行実績、NASAのアルテミス計画のミッションへの関与。差別化の核は、ガラス(光学部品)からクラウド基盤までの完全な垂直統合によってサブ秒角精度を保証し、これまで顧客側で担っていた統合の負荷を肩代わりして成果物だけを提供することにある。

顧客にとっての「成果物」とは何かという質問に対して、話し手はこう答えた。API経由ですぐ使える形の画像、軌道データ、ターゲット識別などを手に入れられること。そして生の画像ではなく、ミッション判断やシステム連携に使えるデータとして出てくること。ハードウェアの価値ではなく、結果を解釈しやすい形に丸めて返すことが「クリーンなデータ」の意味だという。

市場:SDA、レーザー通信、政府需要

同社はTAM(獲得可能な最大市場規模)を412億ドルとしている。SAMとSOMは非公開だ。話し手は、企業自身の発表なのでどこまで信じてよいかは分からないと留保している。市場の中身は、レーザー通信地上局、精密光学機器、軌道上センサーや商用SDAの三つに分けて見るとよいという。

成長ドライバーとして挙げられたのは三つである。第一に、メガコンステレーションによって宇宙物体が増え、衝突回避の需要が高まっていること。第二に、RF通信の10〜100倍程度のデータレートを持つ光レーザー通信への移行。第三に、安全保障上のニーズから防衛や政府が宇宙データを積極的に買い上げていること。ただし話し手は、Observable Spaceが取れる市場が大きいかどうかは別の問題だとも述べた。それは顧客がどこまで内製するか、政府調達がどこまで増えるかに左右される。それでも、ハードウェアの売上だけで勝負せず、観測・通信の継続利用からリカーリング収益を作ろうとしている点は面白いと評価した。

最初に立ち上がりそうな市場について、話し手はSDAと政府・防衛向けの観測インフラを挙げた。実際にトラクションも出ているからだ。レーザー通信地上局は成長余地が大きいものの、標準化、天候、導入サイクルに課題があり、少し遅れるだろうと見る。研究・アマチュア市場は市場参入の最初の戦略としては有効かもしれないが、売上は限定的だという。

ビジネスモデル:売り切りからSaaSへ

ビジネスモデルの流れを一言でまとめると、ハードウェアの売り切りから、観測ノードを増やしてデータ価値を高め、SaaS収益へ移行することである。CDK望遠鏡は約6.5万〜70万ドル規模、レーザー通信局は個別見積もりで、最新価格は分からないという。API SaaSは月額制で、公式サイトでは月100ドル、月2500ドル、アドバンスが月5000ドルという価格帯に整理されている。

想定されているサイクルはこうだ。まずハードウェアを売り切りで販売する。設置された機器が観測ネットワークのノードになる。ノードが増えるとプラットフォームのカバレッジ、可用性、データ量が増える。その結果データの価値が上がり、SaaS収益につながる。資本集約的な機器販売から、設置ベースを活かした高利益率のAPI従量課金やデータ課金へ移行していく構図だと話し手は説明した。

月額5000ドルは高いのではないかという問いに対して、話し手は、一般的なSaaSと比べれば高いかもしれないが、衛星運用やSDA、研究用途を考えればむしろ安いという印象すらあると答えた。

リスクとしては三点が挙げられた。一つ目は、ハードウェアの導入・設置コストがどこまで重くなるかで、それ次第で高利益率のAPIやSaaSで十分に回収できるかが変わる。二つ目は、顧客ごとにニーズが違う領域であるため、カスタム対応が増えて標準化されたSaaSになりにくい可能性。三つ目は、政府・防衛向けに特有の長い調達サイクルや規制の影響である。

戦略:製造から運用まで内製するフルスタック

同社の戦略は、市販品を寄せ集めるのではなく、製造からソフトウェアまで自社で完全に制御するフルスタック垂直統合だ。市販品やオフザシェルフ部品を組み合わせるだけでは統合に摩擦が生じ、スケールしにくい。そこで光学精度からソフトウェア運用までを一体的に最適化する。ミシガン州に自社キャンパスを持ち、ガラス加工、コーティング、機械加工、ソフトウェア開発を100%内製していると言われ、これで品質の均一化と開発スピードを担保しているという。2026年の発表では、レーザー通信地上局、地上光学センシング、軌道上光学ペイロードの三つの製品を扱い、デトロイトとロサンゼルスの施設で内製しているとされる。

話し手の表現では、同社は「望遠鏡のテスラ」を狙っている。特注だった観測所の設備を反復生産可能なプロダクトに変え、地球と宇宙の光通信・観測インフラのバックボーンを作る。ハードの製造、ソフトの更新、ネットワーク化を一体で扱う戦略だ。

聞き手は、これはかなり重いやり方ではないかと問うた。話し手はそれを認めた。垂直統合は資本効率が悪くなりやすく、製造、サプライチェーン、品質管理、ソフトウェアを同時に回す必要があるため実行難度も高い。しかし宇宙、防衛、光学のような領域では、品質、供給能力、規格対応がそのまま参入障壁になる。あえて初期投資をすることで競合が入りにくくなる、という見方だ。ソフトウェアだけでやる道もあり得るが、既存のハードウェアや他社の設備を使う形では差別化が難しく、競合が出やすくなるという。

ハードウェアの自社製造にこだわる理由については二つが挙げられた。一つは、光学性能の制御とソフトウェア処理が最終成果物に密接に関係し、両者が緊密に連携しないと良い成果が出にくいこと。もう一つは、部品を寄せ集めると顧客ごとの統合コストが高くなるため、標準化されたターンキー製品にするには設計段階から一体化する必要があると判断したのではないか、という話し手の推測である。

ロードマップ:地上から軌道上ペイロード「Iguana」へ

ロードマップは三段階で説明された。フェーズ1は、PlaneWaveの高性能望遠鏡とOurSkyのAPI・画像処理を組み合わせ、画像提供と観測の市場でPMF(プロダクトマーケットフィット)を作る段階。フェーズ2は、合併後に防衛・商用向けのレーザー通信地上局をターンキーで提供していく段階。フェーズ3は宇宙空間への拡張で、軌道上光学ペイロード「Iguana」を展開する。地上から宇宙を見るだけでなく、宇宙空間で見て、追跡して、接近運用を支える領域に進む計画だ。地上で光学精度を確立し、ネットワーク化してから宇宙に進出するという順序である。

Iguanaは200mm・三波長の軌道上イメージャーで、センサーとエッジ処理を含む自己完結型のペイロードだと紹介された。今の事業との関係を問われると、話し手は、衛星自身のSDAやRPO(ランデブー・近接運用)を支援するための位置づけだと説明した。エッジ処理などを軌道上のハードウェアに拡張することで、「見る・追跡する・通信する」を一貫して担うインフラの構想につながるという。2026年後半にApexの衛星バスに搭載し、年内の初飛行が予定されているとされる。ただし話し手は、打ち上げの遅延、宇宙での実証、顧客の衛星バスとの統合など、フェーズ3には地上事業とは違う難しさがあると指摘した。

競争環境

競争軸として話し手は、「ソフトウェア中心かハードウェア中心か」と「商業寄りか研究寄りか」の二つを挙げた。Observable Spaceはソフトウェア・データ中心の会社でありながら、垂直統合によって性能面で違いを出している、という位置づけだ。

比較対象として紹介された企業は次の通りである。

  • ExoAnalytic Solutions:350を超える自律望遠鏡による商用光学SDAネットワークを持つ既存プレイヤー
  • Slingshot Aerospace:150を超える光学センサーと20を超えるグローバルサイトで宇宙物体を追跡。防衛・政府寄り
  • LeoLabs:レーダー系のSDAで、全天候性と低遅延データが強み。光学系とは補完関係になり得る
  • 10Gbps超の光地上局や大気揺らぎ対策を含むレーザー通信地上局を手がける企業:競合にも補完関係にもなり得る

これらと比べると、Observable Spaceの特徴は個々の分野で単独トップであることではない。光学製造、SDA、レーザー通信、API、自社製造をすべて手がける統合度にあると話し手は見る。この市場は勝者総取りではなく、顧客が複数のセンサーやベンダーを組み合わせる構造になる可能性があるため、競合が複数いてもよいとも述べた。

差別化要素として挙げられたのは、CDK光学設計、ダイレクトドライブ、完全内製、API、米国政府要件への対応である。最も強いのはどこかと問われると、話し手は光学製造能力とソフトウェアを同時に持っていることだと答えた。それが信頼性や観測実績につながる。また、一度APIが顧客システムに組み込まれれば使われ続けるため、スイッチングコストが高まるという。ハードを作れる競合がソフトに参入した場合は差別化が崩れる可能性もあると話し手は認めた。その場合は、ハードウェア品質、設置ネットワーク、データ履歴、運用ノウハウの統合度で差別化することになるという。

参入戦略:アマチュア天文家と研究機関から

意外なことに、初期ターゲットは高度な天体撮影を行うアマチュア天文家と、高精度な追跡を行う大学・研究機関だった。市場規模は小さい。しかし彼らはすでに課題を強く感じており、画像品質への要求が高く、コミュニティ内で口コミが広がりやすい。検証の場として適していたというのが選んだ理由だとされる。

この層に向けて作ったのは、撮影面の周辺で星像が歪むのを減らすCDK20望遠鏡と、複雑な画像処理を簡単にするOurSky APIとの統合だ。統合前の2023年、OurSkyは天体撮影ソフトN.I.N.A.との無料統合を発表し、約5万人のユーザーがOurSkyに参加してリアルタイム画像処理を受けられるようにした。話し手はこれを、開発者向けAPIのGTMとして、既存ワークフローに入り込んで導入の手間を下げ、コミュニティを通じて認知を広げるやり方だと解釈している。天文コミュニティやカンファレンスでの実証と口コミも重ねたという。

アマチュアや研究向けと防衛・SDA向けでは、求められるSLA、セキュリティ、サポートが大きく異なる。それでもこの層から入ったのは、売上のためではなく、熱心なユーザーからフィードバックを得てプロダクトを磨き、口コミで広げてもらうためだと話し手は見る。開発者に近い領域でよく使われるデベロッパーリレーションズ的な発想に近いという。防衛市場は大きいが、要求水準が高く調達サイクルも長い。そのため、まずアマチュア・研究機関向けに品質、体験、実績を作り、それを基にSDAや政府向けへ拡張する戦略をとっていると説明された。

二社の成り立ちと合併の理由

PlaneWaveは2006年の創業で、創業者はセレストロンでの経験を持つ。大型望遠鏡の製作を通じて既存の光学設計の限界を痛感したことが創業のきっかけだと言われている。OurSkyは2022年、元SpaceXのソフトウェアVPが創業した。宇宙機器の通信や制御における統合の複雑さをAPIで解決する必要性を確信したことが出発点だという。

二社は2025年に合併し、Observable Spaceとなった。光学設計のエキスパート、クラウドAPIのアーキテクト、SpaceXで顧客ニーズを知る人材がそろい、物理世界とデジタル世界の知見を組み合わせた組織である点がよく紹介されるポイントだと話し手は述べた。前述のTechCrunchの記事にあるデモでの経験から、ハードウェアだけでは片手落ちだと分かり、統合に至ったのではないかという。

聞き手が互いを補完し合う合併なのかと問うと、話し手はそうだと答えた。PlaneWaveは高品質な望遠鏡を持ちながらソフトウェアに課題があった。OurSkyはAPIやデータ処理に強い一方で、ハードウェアの品質を完全に制御するには限界があった。ハードウェア企業とソフトウェア企業が別々に存在するだけでは解けない課題があり、両者が一つになってフルスタックになった。話し手はこれをSpaceX的な形に近いとも表現した。

学び:顧客が欲しいのは最高の望遠鏡ではない

2006年ごろのPlaneWaveは、天体撮影家向けに最高の望遠鏡を作れば売れると考えていた。しかし望遠鏡の性能が上がるにつれて防衛やSDAの需要が急増し、その需要はハードウェア単体では満たせなかった。特に顧客側でのシステム統合がボトルネックになった。話し手は「ドリルではなく穴が欲しい」という格言になぞらえ、顧客が欲しかったのは最高のハードウェアではなく、ミッションに使えるシステムだったとまとめた。これを受けて2025年に合併し、望遠鏡の販売から宇宙インフラのプラットフォーム提供へ事業モデルを変えたという整理である。

話し手はこれを「よくあるパターン」とも述べた。最初は部品や装置を作るが、現場で使われ始めるとシステム統合が課題になり、やがて装置売りからプラットフォームやシステム売りへ移っていく。最初の製品仮説が間違っていたのではなく、そこから始めたことでより大きな課題が見えた、という解釈だ。他業界への応用を問われると、産業機械、検査装置、ロボットなどでも単体装置からAPI化・ネットワーク化する流れがあると答えた。既存設備が孤立している業界ほど、同じ発想が使えるかもしれないという。

資金調達と現状

OurSkyは2023年に950万ドルのシードを調達した。2026年にはObservable Spaceとして9000万ドルのシリーズAを発表している。Lux Capitalがリードに入り、Upfront Ventures、デトロイトに拠点があることからDetroit Venture Partnersなども参加した。話し手は、政府・防衛・ハードテック寄りの投資家が比較的多い構成だと見ている。

従業員は約175名。40を超える地上サイトを持ち、光学観測における天候、地理、時間帯の制約を吸収しているという。実績として紹介されたのは、160万回の自動タスク実行、2000万を超えるターゲット識別、8万4000時間の継続監視である(自動タスク数は、解決策の説明では260万回超と述べられており、番組内で数字が一致していない)。話し手は、機器販売だけでなく実際の運用データが蓄積されている点を強調した。米宇宙軍からの発注もある。

シリーズAの資金用途は、公表によれば、レーザー通信パートナーシップの加速、軌道上システムのスケール、国際展開、製造能力の拡大である。40超という地上サイト数の意味を問われると、話し手は観測機会と可用性を増やせる点を挙げた。光学観測では天候と地理が大きな制約になるため、サイト数を増やすことが重要であり、ネットワークの密度がそのままサービス品質の一部になると説明した。

日本で同じアイデアを起業するなら

番組ではAIに日本版のアイデアを考えさせ、三案を紹介した。

  • 案A:既存設備のAPI化。大学や公開天文台の遊休機材をソフトウェアで束ねてAPI化し、初期投資を抑えながら国内のSDA基盤を作る。ただし、所有権、運用ルール、夜間運用、保守責任の調整が難しい。
  • 案B:APAC特化型のレーザー地上局。日本やアジア太平洋の地理的位置を活かす。グローバルなコンステレーションにとって地上局の地理的分散は重要だからだ。一方で日本には雲、雨、台風、湿度など光通信に厳しい気象条件があり、候補地の選定と気象データの連動が重要になる。
  • 案C:RF/光学ハイブリッド運用。天候という日本の弱点を逆手に取り、光学が使えるときは高帯域、使えないときはRFで可用性を確保する。常に最大性能を求めるのではなく、必要なときに途切れないことを価値として提案する。

日本にも関連する動きはある。NICT、JAXA、ソニーCSLは、ISSの日本実験棟「きぼう」に搭載した装置と地上局との間で双方向のレーザー通信リンクを確立し、高精細画像データの伝送に成功したとされる。また日米協力のQZSSホステッドペイロードでは、MITリンカーン研究所が開発したSDAセンサーが準天頂衛星システムに搭載され、GEO周辺のSDA強化に関わっているという。

それでも話し手は、Observable Spaceを丸ごと再現するのは、資本、人材、防衛調達という需要の面で難しいという印象を述べた。現実的に始めるなら、案Aの既存設備のAPI化が始めやすいのではないかという。ただし、それがどこまで重要かは分からないとも付け加えている。

まとめ:ハードウェアをデータネットワークのノードにする

最後に話し手は、学びを三点にまとめた。第一に、ハードウェアは単体で売るものではなく、継続的なデータネットワークを作るためのノードとして最初に入れてもらうものであり、稼ぐのは別のところにすること。第二に、特注品を標準化すること。案件ごとに一品物を作る業界では、ターンキーの標準品を作ればスケーラビリティが生まれる。そのためにはハードウェアとソフトウェアを一体で設計する必要があり、垂直統合がそれを可能にする。第三に、異質なDNAを完全に統合すること。物理的な光学製造と最新のクラウドAPIアーキテクチャーの両方を深く理解する組織が、最終的に高性能な製品を作れるのであり、それがモート(参入障壁)になるという。

話し手は、既存産業でも孤立して稼働しているハードウェアを束ねるAPIレイヤーを設計すれば使いやすさが増す可能性があると述べた。また、宇宙という新しい市場では光のインフラを押さえる者が宇宙空間で大きな力を持ち得るとし、新しい市場で新しいインフラを作ることにチャンスがあるかもしれないと語った。

聞き手の感想は、特注品を標準化し、ハードウェアにソフトウェアまで一体化して提供し、設置が増えるほどノードが増えて顧客にも自社にも得になるというサイクルは、他の分野にも展開できそうな面白い発想だ、というものだった。話し手もこれに同意し、ハードウェアを自ら作って配置し、ソフトウェアでラップして使いやすくする、という発想を他の領域でも活かせるとよいと述べて番組を締めくくった。