ボイドから宇宙誕生まで:空間と時間の両端をたどる13の旅

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概要

宇宙の「最も遠い場所」と「最も遠い時間」には何があるのか。この動画はVAIENCE(バイエンス)の宇宙シリーズ13本をつなげたもので、空間では銀河の少ない「ボイド」、太陽系の外、観測可能な宇宙の端を訪れる。時間では1億年後から1兆年後の未来と、1億年前から宇宙誕生までの過去をたどる。ナレーターは、架空の「バイエンススーツ」を着た視聴者を各地へ送り込むという設定で、現在の科学で分かっていることと、まだ分かっていないことを分けて語っていく。

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ボイド:宇宙で最も孤独な場所

宇宙は階層構造をしている。地球は太陽系に、太陽系は天の川銀河に、天の川銀河はおとめ座銀河団に、おとめ座銀河団はラニアケア超銀河団に属する。さらに超銀河団は繊維や壁のような形に集まって銀河フィラメントをつくる。フィラメントとフィラメントの間には、銀河の数が極端に少ない「ボイド」が広がっていると考えられている。ナレーターは、水面に浮かぶ石鹸の泡の膜の部分に銀河が集まっている様子にたとえた。

大きさについては次の数字が示された。天の川銀河の直径は約10万光年、ラニアケア超銀河団は約5億光年、それを含む銀河フィラメントの長さは約16億光年である。ボイドは球に近い形のものが多く、直径3000万〜3億光年程度が中心だが、10億光年に迫るものも見つかっている。

ボイドの空虚さは物質の密度で説明された。地球上の「空のコップ」にも、1立方メートルあたり約2.5×10²⁵個の空気分子が入っている。銀河の中の星と星の間では1立方メートルあたり10万〜100万個程度の原子があり、銀河の外では1個以下と推定されている。銀河フィラメント内では銀河同士の平均距離が100万光年程度とされるのに対し、ボイドの中はずっと疎らだ。たとえば直径2億5000万光年のうしかい座ボイドでは、銀河は60個しか見つかっていない。天の川銀河の周囲では直径300万光年の範囲に20個を超える銀河があり、この密度をうしかい座ボイドの大きさに当てはめると1万個程度あってもおかしくない計算になる。2014年の研究は、宇宙の体積の77%をボイドが占める一方、質量は15%程度にすぎないと推定している。

では、ボイドの中心から空を見上げたらどう見えるのか。ナレーターの答えは「高い確率で真っ暗」だった。肉眼で見える星のほとんどは天の川銀河の中の比較的近い星であり、銀河全体の光であっても肉眼で見える距離には限りがある。アンドロメダ銀河(約250万光年)は条件が良ければ肉眼で見えるが、その次に近い三角座銀河(約300万光年)は肉眼で見える限界に近い明るさだ。ここからナレーターは、肉眼で見える銀河はせいぜい数百万光年以内と見積もる。直径3000万光年以上のボイドの中心では光の点が一つも見えない可能性があり、運が良ければ近くにある数少ない銀河がかすかに見える程度だという。

ナレーターは、ボイドの境界ははっきりしないとも付け加えた。ボイドは「周囲より銀河の密度が小さい空間」と定義されるが、内部にも銀河はあるため、新しいボイドの発見が発表されるたびに、それをボイドと呼んでよいかという論争がよく起こる。また、天の川銀河自体が直径20億光年の巨大ボイドのほぼ中心にあると主張する研究もある。提唱した3人の頭文字から「KBCボイド」と名付けられた。反対意見もあるが、ボイドは意外と身近な存在かもしれない、とナレーターは述べている。

太陽系を脱出する:カイパーベルトからオールトの雲の外へ

2つ目の旅は太陽系の外を目指す。太陽の重力を振り切るのに必要なエネルギーは速度で表され、これを脱出速度と呼ぶ。地球表面から地球を脱出するには秒速11.2km、地球軌道上から太陽系を脱出するには秒速42.1kmが必要になる。地球の公転速度などを考慮すると、地表からは秒速16.7km分のエネルギーが要る。実際の探査機は、天体の重力を利用して燃料を使わずに加速する「スイングバイ」を使う。ボイジャー1号・2号は木星と土星の重力を利用して、太陽系を脱出するエネルギーを得た。2021年時点で、太陽からの距離は1号が約230億km(約150天文単位)、2号が約190億km(約130天文単位)であり、人類が消えた後も旅を続けると予想されている。

旅は海王星軌道(約30天文単位)から始まる。ここでの太陽は直視しても眩しくない程度の明るさだが、それでも地球から見た満月の4000倍以上明るい。表面温度はマイナス200度を下回る。その外側のカイパーベルトには1兆を超える天体が円盤状に分布し、公転周期200年以下の彗星はここから来ると考えられている。

冥王星は太陽に最も近いとき30天文単位、最も遠いとき49天文単位と距離の差が大きく、軌道も大きく傾いている。ナレーターは、これがカイパーベルト天体としては典型的な特徴だと説明した。直径1400kmのマケマケは38〜53天文単位、冥王星とほぼ同じ直径約2400kmのエリスは38〜98天文単位を回る。冥王星を惑星と定義すると、ほかの多くの天体も惑星と呼ばざるを得なくなる。これが冥王星が惑星から外れた要因の一つだという。一方で、天体は多くても衝突の心配はほとんどない。2015年に冥王星を観測したニューホライズンズも、通過後に軌道修正して接近できる天体は見つからなかった。

約50天文単位で天体の数は急に減る。これを「カイパークリフ(カイパーの崖)」と呼ぶ。原因は分かっていないが、未発見の惑星があるためだと考える科学者もいる。約120天文単位では、太陽風が星間物質や銀河の磁場とぶつかって混ざり合うヘリオポーズに達する。これより外側では、宇宙線から守ってくれていた太陽風の影響がなくなる。

ただし、太陽の重力はまだ及んでいる。2000天文単位付近から10万天文単位付近にかけては、天体が殻のように太陽を取り巻く「オールトの雲」があると考えられている。直接観測されたことはないが、数十万年という非常に長い周期の彗星の存在から確実視されている。それを抜けた約10万天文単位、つまり約1.6光年の地点では、太陽の重力の影響が銀河系内の他の重力と混ざり合って希薄になり、太陽の明るさはシリウスより少し明るい程度になる。ナレーターは、ここを太陽系脱出の終点とした。

宇宙の端は存在するのか

光は10億分の1秒で約30cm進む。そのため、見ているものはすべて過去の姿である。太陽は8分前、ケンタウルス座α星は4年前、アンドロメダ銀河は250万年前の姿だ。現在は約138億年かけて届いた光も観測できるようになっており、これが「地球から観測できる宇宙の端」である。

ただし、その場所までの現在の距離は138億光年ではなく約465億光年だ。宇宙そのものが膨張しており、光が進んでいる間に光を発した場所も遠ざかり続けたからである。膨張の詳しい原因はまだ分かっていない。この138億年前の光は宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれ、ビッグバンから約37万年後に放たれたと考えられている。それ以前は温度が高すぎて、光が陽子や電子に邪魔されてほとんど進めなかった。

では、465億光年先へ行くと何が見えるのか。ナレーターの答えは「あまり変わらない」だった。天の川銀河に似た銀河があり、さらに遠くを見渡しても、地球から見た景色と見分けがつかない。観測可能な宇宙の端とは、138億年前にそこを出た光がちょうど今の地球に届く場所というだけで、宇宙全体から見れば何の変哲もない場所なのだ。

それなら一方向に進み続ければ端にたどり着けるかというと、現在の定説では宇宙に端はない。鍵になるのは、空間がどれだけ曲がっているかを表す曲率である。曲率が0なら平らな紙のように、0より小さければ馬の鞍のような形で、どちらも無限に広がる。0より大きければ球の表面のように有限だが、進み続けると元の場所に戻ってくる。どの場合も端はない。

実際の観測では、曲率はほぼ0とされている。宇宙マイクロ波背景放射に見える温度の高い領域と低い領域の大きさは、ビッグバンから37万年後の状態から理論的に計算できる。空間が曲がっていれば光も曲がり、見かけの大きさは理論値とずれるはずだ。ところが観測結果は理論値とほぼ一致した。なぜ曲率がほぼ0なのかは解明されていないと、ナレーターは述べている。

1億年後の地球:自転、歳差、天体、大陸

未来の旅は1億年後から始まる。社会の10年後は予想しにくいが、地球や宇宙の出来事には確実に分かっていることも多い、というのが前提だ。

1000年後には、月の重力で地球の自転が遅くなり、1日がわずかに長くなる。閏秒を毎月足しても追いつかなくなり、世界で時刻をそろえるのが困難になる。専門家にも良い案がないという。1万5000年後には、自転軸の歳差運動によって夏と冬の太陽との距離が現在と逆転する。北半球の季節の差が激しくなり、約1万年前と同じようにサハラ砂漠が緑のサバンナになると推定されている。2万年後には、1986年のチェルノブイリ原発事故で汚染された地域全体で、放射線が問題ない程度まで下がると推定されている。一方で、文明を崩壊させうる破局噴火が5200年〜4万8000年周期で起きてきたという2017年の研究も紹介された。5万年後には氷期が来ると予想されているが、二酸化炭素排出の影響でさらに5万年遅れるという試算もある。約6万4000年後にはシリウスが南極星になる。

危険な天体現象も取り上げられた。ベテルギウスやアンタレスは1万〜100万年後に超新星爆発を起こすと確実視されている。数か月間、満月に匹敵する明るさになり、昼でも見える可能性がある。生命に影響が出るのは約30光年以内とされ、どちらも数百光年離れている。ただし、一部の超新星で起こるガンマ線バーストは、数千光年先からでもオゾン層を破壊しうる。8400光年先のWR104が100万年以内に爆発し、ガンマ線バーストが地球を直撃する可能性が指摘されている。ナレーターは、発生の仕組みはよく分かっておらず、当たる確率も低いと留保をつけた。また、約129万年後には恒星グリーゼ710が太陽系から0.17光年まで近づくと見積もられている。オールトの雲にある数千万〜1億個の彗星の軌道を乱し、その一部が内側に飛び込んで地球に衝突する恐れがある。

大陸の動きについては、1000万年後に紅海が浸水してアフリカ大陸が二つに分かれるとされる。それ以降は予測が難しく、多くのモデルがある。よく知られる「5000万年後に日本とハワイが衝突する」という話も、プレートの動きが逆転する可能性があるため断言しにくいという。あるモデルでは、5000万年後にヨーロッパとアフリカが衝突して地中海が消え、ヒマラヤのような山脈がペルシャ湾まで連なる。同じモデルでは、南極の氷床とグリーンランドの氷床が融けて海面が約90m上がり、8000万年後に現在のハワイ諸島が海に沈み、2億5000万年後には超大陸パンゲア・ウルティマに向かって大陸が集まっていく。

10億年後の地球:皆既日食の終わりと生命の退場

太陽の光度は、コアに溜まったヘリウムのせいで核融合の領域が広がるため、1億1000万年ごとに約1%上がっている。2億年後には、月との潮汐摩擦で1日が25時間になる。3億年後には、土星探査機カッシーニの最終ミッション「グランドフィナーレ」のデータ(リングの物質が毎秒400〜2800kg失われている)から、土星の環が完全に消えると予想されている。

超大陸は5億〜7億年周期でできては分かれてきた。それでも「最後のパンゲア」という名前が付いているのには理由がある。大陸を動かすマントル対流の熱源は冷えていく地球の核であり、プレートテクトニクスはいつか止まる。その時期は10億年以降という予想が主流だが、最短では5億〜8億年後とされる。パンゲア・ウルティマが分裂した後、超大陸が二度と現れない可能性がある。

月は1年に約4cm地球から遠ざかっている。そのため6億年後に地球最後の皆既日食が起き、それ以降は金環日食しか見られなくなる。ただしナレーターは、そのころにはもっと深刻な問題があると指摘する。高温になるほど岩石が大気中の二酸化炭素を吸収しやすくなる炭素・ケイ酸塩サイクルによって、太陽光度が5%以上増える約6億年後には二酸化炭素濃度が極端に下がる。大半の植物が使うC3型光合成は150ppmほどを下回ると成り立たないため、コメ、小麦、芋、大豆などを含む植物の大量絶滅が起こる。C4型やCAM型の植物も、8億年後に濃度が10ppmを切ると耐えられなくなり、多細胞生物は消える。11億年後には光度が10%増えて平均気温は47度になる。成層圏に達した水蒸気が紫外線で分解され、水素が宇宙へ逃げて海の大部分が失われていくという。

1兆年後の宇宙:銀河の合体、太陽の最期、見えなくなる宇宙

11億年後に残るのは、極域のわずかな海で硫化水素やメタンを食べる微生物や、地中の微生物だと考えられている。ある予想では、28億年後には極域でも地表温度が200度に迫り、どんな生物も生き延びられない。30億年後には900度以上になる。

それでも人類の痕跡は探査機として残る。1977年に打ち上げられたボイジャー1号・2号は、2024年時点で太陽に対して秒速約17km・約15kmで進んでおり、地球の生命と文化を記録したレコードを積んでいる。機体は宇宙の塵との衝突で少しずつ削られていくが、レコード自体は50億年は軽くもつと予想されている。そのころボイジャー1号は太陽から約28万光年の位置にいる計算になる。

アンドロメダ銀河は秒速約110kmで近づいている。ある研究では、40億年後に一度衝突してすり抜け、60億年後に両銀河の超大質量ブラックホールが合体して「ミルコメダ銀河」ができる。恒星同士の衝突はほとんど起きないが、40億年後の衝突の際に太陽がアンドロメダ側に一時的に取り込まれる可能性も指摘されている。

太陽は54億〜60億年後にコアの水素を使い切り、赤色巨星になり始める。地球軌道に迫るころヘリウムの核融合が始まり、現在の太陽の約2億年分のエネルギーが一気に放出される「ヘリウムフラッシュ」が起こる。その結果、太陽は約1万年という短い時間で大きく縮み、その状態が約1億年続く。ある研究によれば、この期間は木星や土星の衛星がハビタブルゾーンに近くなり、人間が住める可能性があるという。その後、太陽は再び膨張して地球軌道、場合によっては火星軌道を超え、外層を放出して質量の約半分を失う。80億年後には地球ほどの大きさの白色矮星になる。

さらに先には、恒星の燃料である水素が宇宙から尽きていく。8000億年後にはミルコメダ銀河の放つエネルギーが減り始めるという予想がある。やがて宇宙マイクロ波背景放射は検出できなくなり、その少し後には自分のいる銀河以外の銀河も観測できなくなると予想されている。そのころに生まれた文明は、他の銀河の存在もビッグバンの証拠も知ることができない。ナレーターはここから、宇宙誕生から138億年という現在は、宇宙の起源を解き明かすのにちょうどよい時代かもしれないと述べた。

時間とは何か:相対性理論の考え方

時間の回では、時間の進み方が観測者によって変わるという現代物理学の見方が紹介された。人類は昔から太陽や星の動きで時間を定義し、機械式時計の普及によって、時間は絶対に一定だと考えてきた。この見方を覆したのが、1905年にアインシュタインが発表した特殊相対性理論である。数年後にミンコフスキー空間の概念が提唱され、時間は空間の前後・左右・上下と同じ次元の一つとして「時空」に統合された。

特殊相対性理論では、速く動くほど時間が遅くなる。ナレーターは電車の例で説明した。電車内の「ミスターバイエンス」がリンゴを落とすと、本人には真下に落ちて見える。外から見るあなたには、電車が動いた分だけリンゴが長い距離を移動したように見える。古典的な物理学では、これをリンゴの速度の違いとして説明できる。しかし、落とすものを光に変えると、光速度不変の原理によって速度は両者で同じでなければならない。速度が同じなのに距離が違うなら、時間の進み方が違うと考えるしかない。動いているミスターバイエンスのほうが時間はゆっくり進む。

一般相対性理論では、重力が強い場所ほど時間が遅く進む。ナレーターは、自由落下と無重力状態は区別できないという等価原理を使い、「床に立つあなたは歪んだ時空の中で上向きに加速し続けている」と見る立場から、地面に近いほど時間が遅れることを説明した。日常では誤差程度だが、GPS衛星(高度約2万km)の時計は地上から見て1日に約38マイクロ秒進むため、補正しないとGPSは機能しないという。

最後に、相対性理論の外側の話として、光速を超えると時間が逆行すると主張する拡張理論が紹介された。ある計算では、光速の0.1倍で遠ざかる10光年先の惑星まで光速の30倍で往復すると、約4か月前の地球に戻ることになる。そこから親殺しのパラドックスに触れ、ナレーターは「あなたは時間とは何だと思いますか」と問いかけて締めくくった。

木星の大赤斑に突入する

1961年の第2室戸台風は最大風速75mを記録した。これに対し、木星の大赤斑は直径が地球を超え、最大風速は180mを超え、少なくとも150年以上吹き続けている。1664年か1665年に木星上の点が記録されているが、現在の大赤斑と同じものかは分からない。1831年には現在の大赤斑と考えられる現象が観測されている。長寿の理由の一つは、木星には地面がなく、凹凸でエネルギーを失いにくいことだ。ただ、それだけでは数十年しかもたないと考える科学者もおり、長く続く理由は解明されていない。

大赤斑の長径は、19世紀末の約5万6000kmから1979年には半分程度、2017年には約1万6000kmまで縮んだ。このため消滅が近いという報道が増えている。しかしナレーターは、楕円が円に近づいていると見るほうが自然かもしれないと述べる。2009〜2020年に縁の風速が平均8%上がったこともあり、本当に弱まっているかは誰にも分からないという立場だ。

突入の過程では、まず熱圏を通る。高度1000kmで600度以上、気圧は1億分の1気圧程度と極めて薄い。大赤斑の上空はさらに数百度高く、木星大気で最も高温とされる。原因は、大赤斑から伝わる大気の振動だと考えられている。赤茶色の正体には諸説あり、硫化水素アンモニウムが放射線で変質したものという説が有力だ。外側2000kmでは風速が常に100mを超え、180mを超えることもある。大赤斑は高気圧で、2018〜2020年には周囲の小さな高気圧と衝突して風速が増したと報告されている。中心部の風速は20〜30m程度と比較的穏やかだが、地球なら人が立っていられない強さである。アンモニア、硫化水素アンモニウム、水の雲を抜けると可視光はほぼ届かなくなる。大赤斑は深さ500km程度まで続き、最深部は約230度と考えられている。

1億年前の地球:白亜紀の生物たち

過去への旅は1億年前、白亜紀(約1億4500万〜6600万年前)から始まる。地球の歴史を1年にたとえると、1億年前は12月23日にあたる。酸素濃度は現在の約21%と同程度か少し高く、二酸化炭素は数百〜1000ppmと推定されており、呼吸には大きな問題がない。パンゲアの分裂が進み、南米とアフリカが離れ始め、インドは島で、オーストラリアと南極はつながっていた。南極は氷に閉ざされておらず、海面は現在より200mも高かったという説がある。北米大陸の中央には浅い海ができつつあった。平均気温を30度付近とする極端な予想もあり、火山活動も活発だった。

ティラノサウルスやトリケラトプスはまだ現れておらず、ステゴサウルスはすでに絶滅している。代わりに、体長14mで背中に1.5mの帆を持つスピノサウルス、ティラノサウルスより大きかった可能性のあるギガノトサウルス、サメのような歯のカルカロドントサウルス、体長30〜35mのアルゼンチノサウルスなどがいた。細かい歯が千本前後生えた曲がったくちばしを持つ翼竜プテロダウストロ、下顎がペリカンのように膨らんだ体長10mのワニ類ストマトスクス、直径1mの二枚貝、翼のようなヒレを持つサメ、爪切りのような口のニジェールサウルス、後ろ足の残るヘビ、二足歩行のワニも紹介された。

植物では、約1億3000万年前に登場した被子植物が、ハチやチョウによる受粉を得て広がり始めていた。現在は植物の約90%を占めるが、当時はまだ裸子植物が主流で、イネ科もないため草原はなく、地面はコケやシダに覆われていたと考えられている。世界の石油の約60%が白亜紀に生成されたとされ、「白亜」はチョークを指すという。

10億年前まで:大量絶滅、巨大昆虫、全球凍結

さらに過去へ遡る。約2億100万年前の大量絶滅は、パンゲア分裂にともなう、現在の南北アメリカとアフリカの境界付近での巨大な火山活動が原因とされる。溶岩の総量は300万立方kmを超えたという予想がある。約9万年前に九州を壊滅させたとされる阿蘇の噴火(1000〜2000立方km)と比べると、その規模が分かる。放出された二酸化炭素によって濃度は約1000ppmから2000〜2500ppmへ倍以上になり、気候変動と海の酸性化で全生物の約80%が絶滅した。約2億5200万年前にはシベリアの大噴火で80%以上が絶滅し、2億7000万年ほど海で生きてきた三葉虫が姿を消した。

約3億年前は、酸素濃度が35%に達したともいわれる時代だ。樹木を形づくるリグニンを分解できる生物がほとんどおらず、倒木が腐らないまま残ったため、二酸化炭素が減って酸素が溜まった。気門で呼吸する昆虫は酸素濃度によって大きさの上限が決まると考えられており、翼開長71cmになるメガネウラや、体長2mを超えた可能性のあるヤスデの仲間アースロプレウラが現れた。約3億9000万年前には深海まで酸素が行き渡って硬骨魚が繁栄し、シーラカンスの仲間が浅瀬にいた。約4億6000万〜4億8000万年前には藻類や菌類が陸に進出した。オゾン層が安定し始めたのは約6億年前である。

約5億4000万年前のカンブリア爆発では、アノマロカリス、復元図が前後も上下も間違えられていたハルキゲニア、5つの目と頭部の触手の先にハサミ状の口を持つオパビニアなど、奇妙な動物が現れた。約7億年前には赤道まで氷に覆われる全球凍結が起きた。火山活動で新しくできた岩石が二酸化炭素を吸収し、植物がなく岩がむき出しだったことも拍車をかけたという説が有力だ。食物が貴重になり、低温で海の粘性が上がって栄養が届きにくくなったため、多くの細胞が集まって獲物に向かって泳げる生物が有利になった可能性がある。ナレーターは、このとき生まれた多細胞生物が人類の祖先かもしれないという最近の説を紹介した。そして10億年前は、18億〜8億年前の「退屈な10億年」の最中にあたる。見た目の変化は乏しいが、人類と同じ真核生物が種類を増やしていた時代だとされる。

46億年前:太陽系と地球の誕生

1990年にボイジャー1号が約60億km先から撮影した、点のような地球の写真を導入に、太陽系の誕生が語られた。天の川銀河の中心から約2万7000光年離れた場所で、約46億年前、1光年以内とも推定される距離で超新星爆発が起こり、その衝撃波でガスと塵が集まり始めた。100万年もかからずに原始星が生まれ、周囲の原始惑星系円盤からは、近くに岩石の、遠くにガスや氷の原始惑星ができた。約1000万年後には木星と土星ができ、太陽は主系列星になって、強い太陽風で軽いガスを吹き飛ばした。

主流の仮説であるグランドタックモデルでは、木星は成長とともに太陽へ近づいていった。ある研究では、形成7万年後から移動を始め、10万年後には現在の火星ほどの距離まで来た。その間に原始惑星の多くが落下したり、はじき出されたりした。やがて土星が近づいて軌道共鳴が起き、2つの惑星は外へ戻る。50万年後に木星は現在とほぼ同じ約5.2天文単位に落ち着き、60万年後には土星、天王星、海王星もほぼ現在の軌道になった。直接の証拠はないが、太陽系にスーパーアースやホットジュピターがないことや、火星が不自然に小さいことを説明できるため、おおむね正しいと考えられているという。木星の移動は、外側から水を運ぶ小惑星や彗星を地球に届けたという側面もある。

月については、約45億年前に火星サイズのテイアが原始地球をかすめるように衝突し、飛び散った物質が数時間で月になったというジャイアントインパクト説が最有力とされた。月ができてから1000万年程度で海ができた可能性もある。二酸化炭素主体の100気圧の大気の下で、230度でも液体の海が存在したという説もある。43億年前には生命が誕生してもおかしくない環境で、遺伝子解析からは、全生物の共通祖先が41億〜43億年前に生きていたという推定がある。

100億年前の宇宙:宇宙の真昼

35億年前の地球には酸素がほとんどなかった。二酸化炭素は現在の10〜50倍、メタンは数十〜数百倍あり、空は土星の衛星タイタンのようなオレンジ色の霧に覆われていた可能性がある。太陽の明るさは現在の75%程度で、浅い温泉に藍藻に似た細菌のコロニーがあったと考えられている。その細菌がつくった層状の岩がストロマトライトとして残っている。すでに複数種の細菌がいたことから、生命の誕生はさらに前だと考えられている。

約50億年前には、それまで減速していた宇宙の膨張が加速に転じた。膨張で物質の密度が下がり、空間そのものの性質と考えられているダークエネルギーが支配的になったためとされる。約80億年前には、恒星の世代交代と超新星爆発で重い元素が増え、岩石惑星が多くつくられる条件が整った。銀河の中心から適度に離れ、超新星が頻繁に起きない場所という条件を当てはめると、条件を満たす恒星系の約75%は太陽系より古いと推定される。

そして100億年前は、宇宙全体での星形成がピークを迎えた「宇宙の真昼」である。電磁気力の影響を受けないダークマター(宇宙の物質の80%以上)が早い時期から大規模構造の骨格をつくり、フィラメントに沿ってガスが銀河へ大量に流れ込んだ。その結果、現在の約10倍の速度で星ができ、この時期に銀河の恒星質量のほぼ半分がつくられたという説がある。大型銀河の質量増加のうち約30%は同程度の銀河との合体によるもので、天の川銀河もこのころガイア・エンケラドスと衝突した。ブラックホールの成長も著しく、多くのクエーサーが輝いていた。最初に観測されたクエーサー3C273が天の川銀河の中心にあったとすると、2万6000光年離れた地球から満月ほどの明るさに見えるという。112億年前にはすでに5つの岩石惑星を持つケプラー444があり、水や有機化合物は120億年以上前から豊富にあった。ナレーターは、当時この光景を眺めた文明がいた可能性はゼロではないと述べている。

宇宙誕生の謎:分かっていることと、まだ分からないこと

最終回は宇宙の起源である。アインシュタインも1917年には静的で永遠の宇宙を前提にした論文を書いたが、1929年にハッブルが宇宙の膨張を観測で示した。時間を遡ると宇宙は超高温・超高密度になるというのがビッグバン理論であり、観測から宇宙の年齢は約138億年とされる。

ただし、誕生の瞬間そのものは現代科学では全く分かっていない。ナレーターは、成長期の子どもの身長の変化を逆算して「人は無から生まれた」と結論するような誤りを例に挙げた。一般相対性理論や素粒子物理の標準模型が過去にもそのまま当てはまるかは分からない。そのため、宇宙の始まりから約10⁻⁴³秒より前は不明であり、多くの科学者は新しい法則が必要だと考えている。

その後の歴史として、次のような段階が語られた。重力以外の3つの力が一体だった大統一時代。一瞬で宇宙が最低10²⁶倍、一説には10⁴⁰倍に膨張し、観測可能な宇宙にあたる部分が直径10cm程度になったインフレーション時代。電磁気力と弱い力が統一されていた電弱時代。4つの力が独立し、クォークや電子が生まれたクォーク時代。この段階では物質と反物質が同数生まれたはずだが、なぜか約20億個に1個の割合で物質が多く、その差が現在の宇宙をつくったとされる。続いて、約1秒で陽子や中性子がそろうハドロン時代、約3分で終わるレプトン時代が来る。温度が約10億度まで下がると水素やヘリウムの原子核がつくられ、約20分後、1000万度を下回ると核融合が止まる。現在、水素とヘリウム以外の元素が少ないのはこのためだという。

約38万年後、温度が約3000度になると原子核と電子が結びつき、光がまっすぐ進めるようになる「宇宙の晴れ上がり」が起きる。このとき放たれた宇宙背景放射の温度がどの方向でも極めて均一なことは、インフレーションが起きた有力な証拠の一つとされる。その後、可視光を放つものがない暗黒時代が続く。誕生から1000万〜1700万年後には宇宙の温度が0〜100度になり、ナレーターは、このころ生まれた生命の痕跡が地球に届いたとするパンスペルミア説にも触れた。1億〜5億年後にはダークマターの網に沿って最初の星と銀河が生まれる。最初の星は太陽の数百倍の大きさで、数百万年で超新星になった。太陽はその後の第3世代の恒星と考えられ、宇宙誕生から約90億年後に生まれた。そのころから宇宙の膨張は加速し、人類はそれを説明するためにダークエネルギーを考案したが、正体は謎のままである。

宇宙の未来としては、加速膨張で銀河が孤立し、星が燃え尽きて1兆〜100兆年後に熱的な死へ向かい、10¹⁰⁰年後にはダークマターと少量の電子などが飛び交うだけになるという「ビッグフリーズ」が有力とされる。一方で、膨張が速くなりすぎてすべてが引き裂かれる「ビッグリップ」や、収縮に転じて超高温・超高密度に戻る「ビッグクランチ」の可能性もある。どれになるかは、人類がまだ理解していないダークマターとダークエネルギー、そしてそれらを取り巻く法則次第だ、とナレーターは述べた。自分たちとこの世界がどう生まれ、どこへ向かうのかという問いへの探究はまだ続く、というのが動画の結びである。