日米・米中首脳会談と東アジア情勢の深層――トランプ外交の力学と台湾・レアアースを巡る攻防
楽待 RAKUMACHI国連総会に合わせて開催された日米首脳会談、そしてそれに続く米中首脳会談を巡り、神田外語大学の興梠一郎教授と経済アナリストのジョセフ・クラフト氏が、対中政策、台湾海峡を巡る緊張、レアアース供給網、米国内政の行方について多角的な議論を展開した。トランプ大統領の政治的思惑と米政府・議会の基本方針との乖離、そして日本が取るべき外交姿勢について語られた分析を整理する。
首脳会談の表と裏:日米韓共同声明に見る対中・台湾方針の実際
首脳同士の直接会談と、その前段でまとめられた閣僚レベルの合意文書との間には、明確な温度差や役割分担が存在する。興梠氏は、トランプ大統領と日本の首相による首脳会談そのもの以上に、その直前に発表された日米韓外相レベルの共同声明の内容こそが肝要であると指摘する。
首脳レベルのやり取りでは、直後に控える米中首脳会談への配慮もあり、トランプ大統領の発言は一定程度抑えられたトーンになる傾向がある。しかし、ルビオ国務長官らが主導した日米韓共同声明には、台湾問題に関して「両岸問題の平和的解決を促し、あらゆる一方的な現状変更の試みに反対する」「適切な国際機関への台湾の意味ある参加を支持する」といった踏み込んだ文言が明記された。台湾が国際機関へ参加することは中国側が最も嫌う点であり、首脳会談の華やかな演出とは別に、米国政府・議会が共有する対中牽制の基本方針がこの文書に色濃く反映されていると興梠氏は分析する。
クラフト氏は、首脳会談そのものは全体で約35分、通訳を介した実質的な協議時間は20分から25分程度であり、双方の発言時間を分ければ各10分から15分程度にとどまる点に注意を促す。日本の外務省発表に多数の議題が並んでいても、短時間で詳細な深掘りができたとは考えにくく、首脳間で重要項目を提示し、具体的なフォローは外務大臣や経済産業大臣などの閣僚会談に委ねられたとの見立てを示した。また会談での首相の振る舞いについて、通訳のペースを仕切り直したり、記者団を退出させて機密性の高い議論へ移る主導権を握るなど、堂々とした態度で臨んでいた点を評価した。
加えてクラフト氏は、米政府内でルビオ長官が提起している国際刑事裁判所(ICC)への強い反発にも言及した。米国側には、米軍兵士の訴追や国内移民の強制送還を巡る動きが自国の死活問題につながるとの警戒感がある。日米首脳間では「率直なやり取り」にとどまり具体的な合意には至っていないものの、ICCが本来対象とすべき重大犯罪の枠組みを超えて米国内政に介入しないよう対話を促すなど、日本側が仲介や打開策を模索する余地が残されていると指摘した。
トランプ外交の行動原理:「勝ち馬主義」と対中姿勢の揺らぎ
トランプ大統領が日本の首相を「歴史に名を残す偉大な首相の一人になる」などと高く評価した背景について、クラフト氏はトランプ氏特有の「勝ち馬主義」によるものだと解説する。トランプ氏は支持率が高く強固な政権基盤を持つリーダーを尊敬し、基盤の脆弱な相手には一方的な要求を突きつけたり無視したりする傾向が強い。国内で高い支持を維持している相手とは真剣に対話し、耳を傾ける姿勢をとるため、首脳個人としての関係構築において日本側は有利な地歩を占めているという。
一方で、大統領個人の取引(ディール)重視の姿勢と、米国の国家戦略との間には深刻な齟齬が潜んでいる。トランプ氏は過去に台湾を「対中交渉のカード」と見なすような不用意な発言を行っており、台湾防衛へのコミットメントを疑わせる波紋を広げた経緯がある。1982年にレーガン政権が提示した「6つの保証」では、台湾への武器売却について中国と事前協議を行わないことが定められており、台湾問題を対中交渉の具にしてはならないという原則が存在する。
しかし、トランプ大統領自身がそうした外交原則を十分に把握しているとは限らず、目先の取引のために譲歩しかねない危うさがある。議会が承認済みの140億ドル規模に上る台湾向け武器売却計画に対しても、超党派の上院議員が早期売却を促す書簡を送っているにもかかわらず、大統領側が明言を避ける姿勢を続ければ、それ自体が中国に対する取引カード化してしまうと興梠氏とクラフト氏は懸念を示した。
さらに、中国の習近平国家主席の訪米に際し、トランプ大統領が空港まで自ら出迎えたことについて、両氏はその政治的影響を分析した。トランプ氏側には中間選挙を前に農産物やボーイング社製航空機の購入を取り付けたいという思惑があるものの、最高指導者が自ら空港に出向く対応は、中国側に「米国の焦りと弱さ」を露呈したと受け取られかねない。中国国内向けには自国のリーダーの権威を誇示する絶好の宣伝材料を与えてしまったと評価された。
台湾統一に向けたシナリオ:武力侵攻にとどまらない多角的手法
台湾海峡の情勢を巡り、クラフト氏はトランプ政権の任期中(2028年末まで)に中国が台湾統一に向けた明確な行動を起こす可能性を排除できないと指摘する。バイデン前大統領が台湾防衛への軍事介入を明言したのに対し、トランプ大統領はそのような明言を避けている。また現在、米海軍の空母が中東情勢への対応等でアジア地域に展開しておらず、米韓軍事演習の規模縮小など、中国側から見て軍事的な間隙が生じているように映る要素が重なっている。
統一に向けた手法について、興梠氏は大規模な地上戦やミサイル攻撃による全面衝突だけが選択肢ではないと論じる。現実的な脅威として挙げられるのが「兵糧攻め(海上封鎖)」である。
- エネルギーの脆弱性:台湾の天然ガスや石油の備蓄日数は約14日分程度と極めて短く、海上輸送路を1か月封鎖されるだけで島内の電力供給や経済活動は麻痺状態に陥る。
- 物流とインフラの遮断:主要港湾(基隆や高雄など)の封鎖に加え、通信を担う海底ケーブルの切断など、すでに軍事演習を通じて実演・検証されている封鎖手法が存在する。
中国の戦略は伝統的な兵法に基づく「文攻武嚇(言論や外交による攻撃と、武力による威嚇)」の組み合わせである。軍事演習によって封鎖能力を誇示して威嚇しつつ、外交面ではトランプ氏から台湾を軽視するような言動を引き出し、台湾内部の世論を「米国は助けに来ないのではないか」「抵抗しても無駄ではないか」という方向へ誘導する世論戦・心理戦が展開されている。
さらに興梠氏は、国共内戦は法的に終結していない未完の戦争であるという認識が中国側に根強く、「どれほどの犠牲を払っても統一を果たす」という執念の強さを米側が見誤ってはならないと警告する。万一、台湾で親中派勢力が影響力を強め、経済的・人的交流が深まる中で内部からの浸透が進めば、流血を伴わずに統治下に組み込まれるシナリオすらあり得る。トランプ政権が「正義や民主主義」ではなく「自国の損得(TSMCをはじめとする半導体供給網の防衛など)」のみで動く以上、台湾問題が軽視されるリスクを日本側は常に念頭に置く必要がある。
レアアースを巡る主導権争いと西側諸国の供給網再構築
米中対立における最大の急所の一つが、中国が圧倒的なシェアを握るレアアース(希土類)の供給網である。中国は日本向けのイットリウムなどの輸出規制を強めており、半導体製造に必要な在庫が逼迫する懸念が出ている。中国側は、米国向け製品を製造する日本企業には一定のデータ開示を条件に輸出を認める一方、日本国内向けにしか使わない企業への供給を止めるなど、極めて巧妙な選別と圧力を加えている。
クラフト氏は、米中間の関税枠組みの延長について、米国が融和的になったのではなく、中国にレアアースという急所を握られているために強硬策に出られない実態があると指摘する。レアアースや永久磁石の供給が完全に断たれれば、米国の防衛産業や自動車産業は深刻な稼働停止に追い込まれるためである。さらに、中国側はレアアースを使用する製品の用途や輸出先データの提出を企業に求めており、軍事転用や特定国への流通を厳格に管理・把握する力を強めている。
これに対抗するため、日米はオーストラリアやフランスなどの有志国を巻き込み、重要鉱物の供給網強靱化に向けた行動計画を進めている。レアアースの課題は単なる採掘だけでなく、環境負荷の高い「製錬・加工プロセス」の技術と施設を中国が独占してきた点にある。興梠氏は、かつて米国が環境汚染やコスト競争を理由に撤退した経緯を振り返り、西側諸国で製錬インフラを再建するためには、政府による「最低価格保証制度」などの公的支援によって民間投資を支える仕組みが不可欠であると説く。
代替技術の開発やリサイクル、供給網の多国間連携が進めば、中国が持つ「レアアースの独占」というカードの価値はやがて薄れていく。そのため、クラフト氏は、自らの優位性が失われる前の数年(2028年前後まで)に中国が動く動機になり得ると分析し、経済安全保障上の時間軸を見極める重要性を訴えた。
11月米中間選挙の逆風とトランプ政権の「レガシー外交」
米国内政に目を向けると、11月に控える中間選挙においてトランプ政権は極めて厳しい立場に置かれている。クラフト氏によれば、トランプ大統領の国連演説での発言――「自分は出馬しておらず、共和党を手伝っているだけだ」という趣旨の弁明――は、すでに中間選挙での敗北を織り込み、責任回避を図るポーズにほかならない。
米国民の不満の根底にあるのは激しいインフレとエネルギー危機である。
- ディーゼル燃料の危機:全米平均価格が高騰し、物流、農業、医療、軍事など経済基盤全体を直撃している。輸出停止措置が報じられるほど事態は切迫している。
- 支持率の低迷:直近の世論調査では、生活費対策への支持率は10%台に沈み、大統領の職務支持率も30%台前半に低迷、議会選挙での支持意向でも民主党が共和党を大きくリードしている。
中間選挙で下院、あるいは上下両院を民主党に奪回された場合、政権幹部や関連企業に対する議会の調査・弾劾手続きが本格化し、内政は停滞を余儀なくされる。トランプ大統領は予算権限を議会に握られて内政での主導権を失うため、大統領権限で動かせる「外交」に活路を見出そうとする公算が大きい。
その結果として懸念されるのが、大統領自身の「個人的レガシー作り」を優先した予測不能な外交である。国連演説で触れられたキューバ体制の転覆模索や、金正恩氏との再会談など、歴史的成果を誇示するための行動に走る可能性がある。もし習近平国家主席が「北朝鮮との会談設定」や「大規模な通商購入」をトランプ氏のレガシーとして持ちかけ、その見返りに台湾問題での譲歩を迫った場合、トランプ氏が自らの名声のためにそれに応じる危険性をクラフト氏は指摘した。
日本外交の指針:同盟強化と「国力」に裏打ちされた毅然たる姿勢
米中関係が流動化し、トランプ政権の行動が読みにくくなる中で、日本が取るべき戦略について両氏は具体的な提言を行った。
米中首脳の接近やパフォーマンスに動揺し、日本が慌てて中国に対して融和的な態度を取ったり、頭越し外交を恐れて下手に低姿勢に出ることは最も避けるべき悪手である。興梠氏とクラフト氏は以下の原則を共有する。
- 安易な融和姿勢の戒め:中国は米中関係が緊密なときは日本を軽視し、米中関係が悪化しているときに限って日本へ接近してくる傾向がある。日本側から頭を下げて会談を懇願しても、相手に足元を見られるだけで外交的利益は得られない。
- 演出・プロパガンダへの警戒:中国外交は「相手を待たせる」「下を向いた瞬間の写真を撮る」「わざと小声で話して頭を下げさせる」など、映像やイメージを通じた心理戦を緻密に仕掛けてくる。国内政治家や若手議員の安易な訪中が、相手の国内向け宣伝や分断工作に利用されないよう、日本国内で対中・対台湾政策の足並みを統一する必要がある。
- トランプ大統領への直接対話:トランプ氏に対しては、強固な政権基盤と高い支持率を示し続けることが最大の抑止力となる。安倍政権期のように、頻繁な電話外交を通じて個人的な懐に入り込み、米国の国益と直結する形で東アジアの安全保障の重要性を説き続ける努力が欠かせない。
- 多国間連携と自前の国力:インドやオーストラリアなど、基本的な価値を共有するミドルパワー諸国を結集し、力による現状変更に反対する勢力のリーダーシップを日本が発揮していくべきである。
最終的には、他国への依存や外交的駆け引きだけでなく、日本自身の経済力、軍事力、技術力といった総合的な「国力」を高めることこそが、激変する国際秩序の中で主権と国益を守り抜く唯一の基盤であるという認識で議論は締めくくられた。
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楽待チャンネルをご覧の皆さん、こんにちは。MCの高橋です。現地時間の9月22日、国連総会に合わせて高市総理とトランプ大統領の会談が行われました。今回は徹底解説の会談と題してお送りしていきます。現地時間24日夜にはトランプ大統領と習近平国家主席の米中首脳会談も控えています。
日本は対中政策でアメリカとどこまで足並みを揃えられたんでしょうか? 今日はこのお二方とともに解説していきます。まずは神田外語大学の興梠一郎教授です。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
そして経済アナリストのジョセフ・クラフトさんです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
お二方、現地時間22日にニューヨークで行われた日米首脳会談、まずは今回の会談をどのように評価されていますでしょうか? 興梠先生、いかがでしょう?
発表文というのが出ますよね。日本語も出てますけど、外務省のこの首脳会談よりも、日米韓のその前の共同声明というのがあるんですよ。そこが肝かなと。首脳レベルになると、米中首脳会談も控えているから、トランプ大統領も結構抑えている感じですよね。だけどルビオ国務長官が出てきてやった日米韓の共同声明の中に、みっちり台湾のこととか結構突っ込んで書いてます。だから分けたかなという感じです。
トランプ大統領は、空港まで出迎えに行くぐらいだから、中間選挙も近いし、とにかく習近平主席と大歓迎してものを買ってほしいんでしょう。農産物とかボーイングとかね。数字を見ると支持率とか共和党に入れる人とかも、数字で見るとちょっと負けてる感じなので、それもあると思う。だけど彼が個人的にどうやろうとしているかというのと、アメリカの議会とか政府としてのスタンスというのは違うんですよね。
でも、トランプ大統領が1人で全部やれるわけじゃないから、そこがはっきり出たのがこの共同声明です。これは当然、ルビオ長官が勝手にやってるわけがないので。これを見ると台湾問題とかも、両岸問題、要するに台湾と中国の平和的解決を促し、あらゆる一方的な現状変更の試みに反対したと。で、「適切な国際機関への台湾の意味ある参加の支持を表明」って書いてある。これ、中国が一番嫌なんですよ。台湾が国際機関に入ること。これが一番嫌なんです。実は日米韓の首脳会談の前の共同声明、外相レベルのそこがアメリカ側としては、政府のスタンスとしてはそれなんですね。
もう1つ、自動車ですね。実は今回、習近平氏が中国の企業関係者を連れていくはずだったわけですよ。そういう噂になってましたよね。BYDとか自動車会社も入っているけど、直前に「行かない」となりましたよね。ロイターが出した。これはトランプ大統領が、実は中国の自動車メーカーがアメリカに投資してアメリカで生産するんならいいよ、みたいな発言をしたんですよね。
だけど、これはもう議会とか業界とかは絶対嫌なんですよ。特にIT関係のコネクテッドカーみたいなのが入ってくると絶対嫌だった。アメリカの世論、業界、政府、軍事関係者。だから結局、来ませんでしたよね、中国の財界は。それを見ていると、やっぱりアメリカは1つではなくて、大統領が独走しているわけじゃなくて、ブレーキがかかるところは結構かかっている。ちょっと長くなりましたが、そういう印象です。
そうですね。今回、日米首脳会談の後の米中首脳会談も非常に重要になってくるかと思いますので、この後もそのあたりをしっかり伺っていきたいと思います。クラフトさんは今回の日米首脳会談、どうご覧になりましたか?
今、先生がおっしゃった日米韓、これは非常に重要で、もう1つそこでもルビオでICC(国際刑事裁判所)の話も持ち上げてるんですね。ですから、今回は首脳会談の周りの閣僚会談で閣僚を連れてってますから、裏で本格的な話をしていると。一方で、首脳会談は35分で、通訳を入れたら実質上20分から25分で、さらに半分で分けたら10分から15分程度と。外務省の発表した内容についても項目は書いてあるんだけど、本当に細かく深掘りしたのかどうかというのは分からない。
そこで1つ私が印象的だったのが、高市総理の姿勢、態度が非常に面白くて。3月19日にアメリカに行った時の会談はそわそわで、最初英語で喋ろうとしたんだけど、あまり英語が出てこなくて日本語に変えると、ちょっと浮き足立ってたっていう感じだった。ところが今回はどっしり構えて、びっくりしたのが、トランプが発言し、その後通訳さんが早口でぶわっと言って、それでトランプがいじり始めたら……。
「なんで早口なんだ」って話ね。
そうそう。そこでみんな盛り上がったところを切って、「ちょっと私、話していい?」というところ。これ、結構すごいというか。さらに最後、「これからイシューを話さなきゃいけないから、もうプレスは出てってくれ」と、出しゃったんです、彼女は。ホストはアメリカなのに勝手に。で、それでトランプが「どうぞどうぞ」と。あの態度からは、言いたいことは言うんだなということは推測できる。
ただ、短いところでさっき興梠先生が言ったように、おそらく首脳間では項目だけずっと差し込んで高市総理から、そこのフォローを外務大臣あるいは経産大臣がフォローしていくことだったんではないかと私は読んでますね。
これ、日本の外務省の記録を見ても、ICCの話、国際刑事裁判所の話、高市さんもしてるんですよね。
そうです。ICCなどやり取りをしましたっていうことは、全く合意はないんですよ。率直なやり取りで、お互い言いたいことを言ってそれで終わってるんですね。
実はちょっとICCの話になってしまうと、そもそもアメリカがなんでICCを攻撃してるのかというと、ルビオ長官が7月14日にレターを出してるんですね。なぜICCを崩すんだというところに関して、1つは最近のICCの行動がアメリカをマークしてると。例えばアフガニスタンでの兵士の訴追だったり、特に彼が気にしたのは、トランプ政権がアメリカ国内の移民を強制退去させてエルサルバドルとかに送り込んで、これも犯罪だというのをICCを主張してる団体が言い出してると。
つまり、これは僕の推測ですけど、中間選挙を控えて、例えばアメリカ人あるいはアメリカの高官がICCに訴追、あるいは逮捕されたら死活問題だと。そこに少し脅威を感じていて、そういうふうにICCを……。これ何を言いたいかというと、それが本当であれば日本としても打開策はあると。外務大臣同士でICCと話して、アメリカを特段ターゲットにしないとか、こういったアメリカ国内の移民問題には触れないとか、一定程度ICCも巻き込んでそのへんの話し合いをすれば、アメリカも態度を軟化させる可能性があるんで、それをどこまでできるかは茂木大臣が1つの鍵だと思いますね。
ただ、そういうことをした時に、ICCという機関の信用性というのは失われてしまわないのかなというのが気になるんですけれども。
そもそもアメリカが言ってるのは当初のICCの目的、これはアメリカから見た、凶悪犯罪、一連の国家の犯罪からはみ出るような、本当の、例えばウクライナで見られたような、あるいはハマスが行うこういった凶悪犯罪を取り締まっていく組織であるっていうのがアメリカの見方。それが今度はアメリカの内政まで口を挟んだり……。これ、なんでアメリカ兵を守らなきゃいけないかというと、戦争に行って国際機関から「お前は戦争犯罪だ」と言われたら、兵士は戦いたくないですよね。
アメリカにとっては死活問題、指揮官に関しては。そういうところに最近のICCは、権力じゃないけど幅を広げてるんだっていうのが、正しいか正しくないかは別としてアメリカの見解です。そこはもう少しICCもアメリカ、あるいは日本を巻き込んで話し合って、お互いの腹の内をちゃんと理解する必要があるのかなというふうに思いますね。
率直なやり取り、そうですね。
なるほど。そしてトランプ大統領が会談の冒頭で高市総理について、「素晴らしい仕事をしている私の友人」「歴史に名を残す偉大な首相の1人になるだろう」と高く評価しているような発言があったかと思うんですけども、こうした発言はどのように受け止められましたか?
これね、よくトランプがやる勝ち馬主義なんですよ。彼は強いリーダー、あるいは独裁的な地位を築いている人を尊敬するわけですよ。だから習近平、プーチン。高市総理も国内の人気が非常に高い。つまり政権が盤石であるということ。それに対してのリスペクトですよね。ですから一見、大したことのないように聞こえるけど、これ実は重要で。トランプからすれば「弱いは無視あるいは攻撃する」「強ければ尊敬する」。
こういう発言というのは、トランプからすると一応、習近平など尊敬するリーダーの部類に入っているということは、今後の交渉を行う、率直なやり取りをするにあたって、ある程度聞く耳を持ってくれるというところで重要な発言ですね。
トランプさんとやり取りをするには、まず国内で強いリーダーであるということが第1の条件。
トランプだけじゃなくて、外交は全てそうであって。来年あるいは来月にいないかもしれない人と真面目に話し合う国家のリーダーはいないですよね。やっぱり強い盤石な政権基盤を持っているリーダーとは真剣に交渉していくけど、「もうそろそろダメだろう」というような人には相手にしませんから、そこは非常に、そういう意味では高市総理はいい立場にいるんじゃないでしょうか。
3月にも言ってるんですよ。3月の初の会談で3回も言ってるんですよ。「非常に人気があり、力強く素晴らしい」って。「人気がある」って一番先に……要するに支持されていると。
そう、これが弱い相手だと、一方的にもう要求を突きつけて無理難題を突きつける。強いリーダーだとちょっと腰が引けるというか、引け目になる。そういう意味では、日本は今のところすごくいい立場にあるんじゃないでしょうかね。
トランプ氏も自分の支持率をすごく気にしてるんじゃないですか?
めちゃくちゃ気にしてる。羨ましいでしょうね、高市総理の。ロイターの調査で32%ですからね。
ですね。この後、中間選挙もありますからね。そのあたりも非常に気になるところかと思うんですけれども。あと、今回の会談のトピックで言うと台湾、台湾海峡の問題、そして安全保障のところが非常に大きなトピックだったのかなと思うんですけれども。今回の会談では台湾海峡情勢を含む東アジアの安全保障については、日米でどこまで認識を共有できたと見られますか? 興梠さん、いかがでしょうか?
さっき言いましたけど、首脳レベルの高市・トランプ会談の日本側の発表文が出てるんですけどね、それを見ると「台湾」という言葉は出てこない。だけど「米中首脳会談も念頭に」、つまりこれから米中首脳会談があるから、その直前に来ましたよって話なんですよ。すり合わせをしておきましょうという意味じゃないですか。
で、次に「経済安全保障を含む中国をめぐる諸課題」って、ここでも「中国」っていうふうに発表に出てるんですよ、名指しで。これ日本側の外務省ので、ホワイトハウスはまだ出してないから、リードアウトを出してない。
だけど、さっき言いましたその直前の日米韓の共同声明、外相レベルの、ここでは本当にはっきり言ってるんですよ。「一方的な現状変更の試みに反対」ということですね。「平和的に解決する」。もう1回言いますよ。「適切な国際機関への台湾の意味ある参加の支持を表明」って、これ中国が一番嫌がることです。国際機関に入ると統一をしにくくなる。
そうですよ。色々な国際機関があるけども、そこも中国がかなりブロックしてるわけですよ、入らないように。それは最終的に、例えば国連なんてことになると、せっかく排除したのにまた帰ってくる、国家になるじゃないですか、台湾という。こういうことですから、共同声明ではっきり書いてる。ってことは、これアメリカもこの見解で一致してるってことです。
だから中国側も、トランプが空港に来ようが宴会を開いてくれようが、最終的にここの部分というのは、アメリカも超党派で今こういう感じですよ。超党派で、民主党なんかもかなり厳しいですよね。だからここがやっぱり一番大きなポイントで。
あとサプライチェーンの問題とか、過剰生産能力というのも批判してるんですよ、この共同声明で。これ中国のことなんですよ。過剰に生産して、自動車とか色んなものを海外に捌いてくる、国内で売れ残ってるから。過剰生産能力、ここは名指しはしてないけど分かりますよね。あと「経済的威圧、非市場的政策慣行」。だから、この共同声明、3カ国の日米韓の共同声明が一番実は基本的な立ち位置なので。トランプ・習近平外交というのは絵にはなるんだけど、じゃあアメリカが議会も含めて、軍も政府もどういうスタンスかっていうのは、実はこれを見た方が分かります。
今回の首脳会談の前にもう足並みを揃えていた。
韓国も入ってますよ。韓国、よくこれに乗ってきたなと思うんですけど。
これがなんでまとまったかというと、ルビオ国務長官は元々対中強硬派なんです。中国から制裁されているぐらいなので、彼の本心というのはまさしくここに反映されてるんですよね。トランプの前では大人しくはしているものの、日本側もルビオ長官とこういう文言を入れるようにかなり外交努力をしてるんで。
でも、トランプさんは無視してやってるわけじゃないですか。読まないですから。
あ、そういうことなんですか。じゃあルビオ発言とかはほとんど関係ない?
関係ない。ただ大事なのは、こういう土台を作った上で首脳会談でこういうテーマをちゃんと刺しておくっていうのが重要なわけですよね。だからこれ文書ですから、アメリカとしても決してこれを無視することはできないです。なので、そこはうまく、よくここまでの文言を作ったなと。
韓国が乗ってきたのは、核の拡大抑止の話まで出てるんですよ。アメリカが核で拡大抑止しますよと。これ対北朝鮮関係で、やっぱり韓国はありがたいですよ。そういう思惑もあったかもしれない。
日米韓3者会談のもう1つの重要性があって、実は今、米韓関係が戦後最悪の状況なんですね。ひどいんです。これはなぜかというと、色んなものが重なっちゃった。1つの始まりが対米投資。この話が進んでない。で、アメリカが苛立ってる。
そこにクーパンの問題とか、アメリカ議会が……議会は日本に対してはすごくいいんですけど、逆に韓国に対して厳しくて、下院の司法委員会が韓国に対して制裁を加えるように、クーパン問題とかインターネットのアメリカ企業を韓国政府が不利に扱っているというようなことで、非常に今、米韓がギクシャクしている中で、ここで日米韓が取りまとめたというのは結構重要なことですね。
韓国も色々事情があるってことです。
事情があるんです。
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そうなってくると、今後のアメリカが台湾で中国に譲歩する可能性というのは、こういうふうにもう文章が出てるとなると低くなるんですか?
これクラフトさんの方が詳しいかもしれないけど、議会、政府、軍、大統領っているじゃないですか。トランプさんはどちらかというと、台湾が交渉カードになるみたいなことを前回発言してしまってね。
そうです。それがバーっと揉めて、インタビューを受けた時もそういう発言をしてしまって。あれFOXだったかな? これ大問題になったんですよ、台湾でも。「じゃあ、いざという時は守らないのか」って話でしょ。
でも、アメリカにはレーガン政権の時かな、「6つの保証」というのがあって。1982年ですね。こういうものを交渉材料にしちゃいけないって決まりがあるんです。で、トランプさんは知らない。知ってるか知らないか、彼もうほとんどこういうの興味ない。知らないし、大変なことを言ってしまったんですよ。確かインタビューの動画のそこの部分も削除されているような気がする。後で多分アメリカ政府がこれヤバいと思って。中国はそれを社説に書いたぐらいですよ、喜んで。
そうですね。元々この1982年にレーガン政権が「6つの保証」を出していて、そのうちの2つ目に「武器売却について中国とは事前協議しない」というのが言われているんですよね。
ただそれは表向きは共同コミュニケがあるんで、そこでは「徐々に減らしていく」というふうに言ってるから、中国はそれをカードに使ってる。でも裏ではこういう内部の了解があって、文章に残ってるからアメリカも公開しましたよね、確かね。
だから、例えば日米韓あるいは外相で意見が、あるいは議会であっても、問題はトランプが不用意に妥協してしまう。もうすでに、本来は「1つの中国」政策すら言えないわけです。こないだ米中首脳会談に行って、習近平に初めて国家主席がアメリカの大統領を脅したわけですよ。要するに台湾で「対立」とか「危険な境地」とか「打撃」、こういった言葉をアメリカ大統領に向かって言った。脅迫に近い。それに対してアメリカ大統領は一言も言えなかった。せめて「1つの中国政策に変わりない」ぐらいは言わなきゃいけないのに、それすら分かってないんで。
で、逆に今回、習近平がなぜアメリカに来たのか。1つは台湾の武器売却については言及しないと。もうすでに台湾を交渉のカードにしてしまっちゃったわけですよ、本来はカードでなかったものを。中国にとってはさらに物を買ってほしいから空港まで迎えに行くとか、もう下手に出ちゃって自分の弱さを、焦りを、打算を露呈しちゃってますよね。
こういうことを勝手にやってしまう、あるいは周りの閣僚が止められないから、たとえ議会あるいは国務省が対中強硬姿勢が強くても、やっぱり大統領の権限ってアメリカでは圧倒的ですから。そこで勝手に妥協されたり、勝手に交渉されたりカードにされると非常に問題だからこそ、今回高市総理が30分だけでも要するに会って、中国と会う前に日米関係を強調しトランプに一言でも言えたということは、それなりに意義のある日米首脳会談だったというふうに私は思います。
米中首脳会談の直前に、まず日本がしっかり会って正式に会談ができたということは非常に大きなことなんですね。
これね、外務省が相当頑張ったのは、そもそもトランプはその日、中東諸国と会う、ゼレンスキー大統領と会う、アメリカには懸念事項がいっぱいあるわけです。で、日本はプライオリティが低いんです。日本を軽視してるという意味じゃなくて、日本とは問題がないから。他の問題に大統領は時間を費やさなきゃいけない。わざわざその過密スケジュールの中で日本とも会ったということは、日本の外務省が相当押し込んで、なんとか無理やりこじ開けてミーティングを作ったということは、中国に対しても強い重要なメッセージになると思います。
これだって台湾向けの武器売却、140億ドル規模、これ議会はもう承認でしょ。承認されて、お金も用意されてた。9月23日に超党派で、上院の台湾議員連盟ですか、民主党・共和党の超党派でトランプさんに手紙を出して「ちゃんと売却しろ」って言って。で、まだ言わないんですよね。絶対言わない。つまり、もうこの時点でカードになってしまったということです。中国側は「絶対売るな」と言ってる。中国にカードで色んなことを揺さぶられて、そもそもカードじゃなかったわけです。ここで議論になってること自体がもう浅はかなんです、カードになってしまって。
でも、この後の米中首脳会談でそれをチラつかせて、レアアースだったり貿易面で譲歩を引き出すようにする可能性というのはありますか?
これ自体が議論になること自体がまずいんですよ。これ、交渉しちゃいけないんですよ、さっき言いましたレーガン政権の時にね。多分知らなかったのか。
今回の日米首脳会談でちょっと私が重要というか面白かったのは、トランプの国連演説なんです。そこの中から今度の米中会談のヒントが少しあって、2つポイントがあって。1つは、トランプは今回の中間選挙、要するにイランに対して「中間選挙で負けたくないから譲ると思うなよ」と。「中間選挙は全く気にしてない、自分は出馬してない、共和党を手伝ってるだけなんだ」と。つまり、もう負け戦を認めちゃってるわけですよね。負けても「私の責任ではないですよ」というポーズを見せてる。
そこが1点。もう1つ僕がもっと注目したのは、イランに対して「合意か壊滅か」ということにメディアが注目したんですが、実はもう1つ、やっぱり彼はレガシーを重要視してると。だから残りの2年間、彼のトランプレガシーを作り上げるんだっていうところに着目してる。そのレガシーの1つがキューバなんですね。キューバ体制の根本的な変化を模索、つまり今のキューバ政権の転覆を狙う可能性が出てくるわけですね。
もう1つが、習近平だったらこれをどう読み解くかというと、「そうか、レガシーが欲しいのか」と。そこに例えば、「じゃあ金正恩との会談を中国が設定するよ、その代わり台湾には武器を売却するな」とか、こういうことを持ち出していくと危ないのは、トランプは自分のレガシーさえ作ればいいんで、台湾はどうでもいい。金正恩と会談できればこれはレガシーになる。そっちになびきかねない。そういう自分の内心の目標とか欲しがっていることを平気で出しちゃう。そこは中国はしたたかですから、巧みにそれを利用してトランプを引き込んでいい状況を作っていくっていうことをやれる。台湾問題を彼は軽く見てる。
軽く見てるというか、これは僕の大胆予想かもしれませんが、トランプ政権内、つまり2028年末までに中国は台湾統一、ミサイルをぶち込むとか地上戦で台湾に乗り込むとかそういうことではなくて、台湾統一に向けた明確なアクションを中国が起こすのは、1つはトランプであればアクションを起こしても介入してこない。バイデンの時は、中国が台湾を侵攻すれば介入すると彼ははっきり言ってます。トランプは言わないわけです。
で、今イラン情勢でそんなどころではない。今あまり話題にならないんですけど、アジアにアメリカの空母艦が一隻もないんですよ。エイブラハム・リンカーンは今戻って、ジョージ・ワシントン、横須賀基地にあった空母は今中東に行っちゃってます。さらに韓国との軍事演習を半分にしちゃったでしょ。このメッセージからすれば、中国は「今だったらやれる」と思う。
アジアは今、アメリカの力がちょっと手薄な状態ということですね。
政治的にトランプはレガシーですから、中国と戦争して負けちゃったらレガシーが痛みますよね。だからそういうところはおそらくやらない。2028年の1月に台湾の選挙があって、親中派の野党が勝たなかった場合、そうすると中国はあと4年、頼政権には対応できませんから、習近平も4期目を狙う意味では台湾統一を本格的に……。だから僕は、これはアメリカ国務省の高官も同じ意見だったんですけど、米中首脳会談は中国が、習近平が初めてアメリカに対してはっきりと台湾統一の覚悟を示した重要な会談だったと僕は思うんですね。
興梠さんはいかがですか? この台湾統一に関する期限ってどう見てらっしゃいますか?
習近平もレガシーが必要だからね。いつやるかとかね、それはロシアのウクライナ侵攻と同じで突然というのもよくあるので。ただ今、本当に実戦形式の軍事演習を台湾を包囲して何回もやってるじゃないですか。見てると、いつでも実戦に移れることを中国の報道で言ってるわけですよ。あれ海上封鎖なんですね。一番現実的なのは兵糧攻め。台湾というのはエネルギー、天然ガスと原油は14日間しか備蓄がないんですよ。だから1カ月包囲されるともう……そこに日本とかアメリカが破るか破らないか。
中国の公式メディアって結構正直で、軍の関係者とかが出てきて解説するんですよ、軍事研究員が。もうゾッとすることを言ってますよ。図を出して、天然ガスは2週間かなって言ってるわけです。これが入らないと、例えば電力も含めてエネルギーがダウンするから。
台湾の中でじゃあ武器を生産するのかって、これもまず無理だ。もう1個は、基隆とか高雄とかあの辺の港をターゲットにしてるから、物が入ってこない、出ていかないでしょ。完全に兵糧攻め。もう1つは海底ケーブル。それ、もう実際にやりましたよ、海底ケーブルを切るって。具体的な道筋はできてるんです。あとは政治的な判断。
そこにトランプは何をするのか。トランプ後の政権は分からないじゃないですか、台湾をどうするのか。議会は台湾寄りですから。だからトランプ政権のうちにやった方が見込みがあるというふうに思うかもしれないですよね。「今がチャンスだ」って。
ペロシ下院議長が行った時にものすごい軍事演習をやったじゃないですか。あの時に与那国から大体80kmだったかな、日本のEEZにミサイルを撃ち込んでるんですよ。これで中国の解説は何かというと、「あちらから入ってくるのを止める」と。あちら? 沖縄、米軍でしょうね。あちらから来るのを迎撃、インターセプトすると。空母が前は台湾の東側に展開しなかったんです。今、展開してるんですよ。台湾は東側に飛行場がありますから、そこをターゲットにするってことですよ。だからもう徐々に徐々に実戦形式のことをやってるから、台湾の中では大変な危機感を持ってるんです。
だからトランプ大統領が一言ポロッと「交渉カードだ」なんて言ってしまうと、中国は……。中国はずっと公式メディアで「俺たちの方が本気だ」って言ってるんですよ。「アメリカ人は若い人を送ってくるか? 遠くの島を守るために。ベトナム戦争はどうだったんだ、アメリカは。親たちがどう思うか」と。「これは内戦がまだ終わってない」ってことを言うんですよ。これ、実は本当なんですよ。国民党と共産党の内戦って終わってないんですよ。朝鮮半島の方がまだ分かりやすい、停戦ラインがあったから。まだ戦争継続中なんですよ、中国からすれば。これ未完の戦争なんですよ。
「やって何が悪いんだ」ってことなんですよ。「本気度はうちの方が遥かにあるんだと。どれだけ犠牲を出したってやるんだ」と。「それにアメリカ人は対抗できるか」って、精神的なね。それは結構中国の公式メディアに出る。
僕、5月の首脳会談はアメリカの米中関係の歴史的な汚点というか敗北だったのは、中国の国家主席が台湾に関して、アメリカが介入すれば打撃、あるいは深刻な事態という言葉を使った時に、アメリカが一言も言えなかったこと。このメッセージは、「あ、そういう腰が引けてるんだ」というふうにも勘違いされかねない。あれは本当にまずかったと思いますね。
中国側には「相当圧力を強めたら、もうアメリカは台湾支援をだいぶ弱められるんだろうな」というような姿勢に見られてるっていうことですよね。
と思ってると思いますね。
もう1個ね、台湾の内政にものすごい影響を与えるんです。民進党か国民党か野党かっていう時に。野党の国民党は中国と交流して仲良くしたいという方針じゃないですか。民進党は共産党から見ると敵じゃないですか。なんとかしてあそこから政権を倒したいっていうんでしょう。トランプ氏がなんか一言言うと動揺するんですよ。「え、じゃあ助けてくれないのか」「ウクライナみたいになるんじゃないのか」「誰も助けてくれないのか。じゃあ仲良くした方が話がつくかな」っていう。
今年の1月にトランプ政権が国防総省の安全保障政策戦略を出して、そこに「第1列島線に強固な体制を作る」と。これ日本のメディアは読んで「あ、良かった良かった。アメリカはちゃんとアジア、台湾を守ってくれる」と。よく読むと、第1列島線のどこに強固な体制を作るんですかというと、中国の内側じゃなくて外側ですよね。フィリピン、沖縄、日本。内側に何があるかというと台湾、尖閣。そこを守るっていうことは……逆に言うと、僕なんか読むと「そっちは守らない、こっちを守る」っていう線引きをしちゃってるわけです。防衛ラインね。こういうメッセージも非常に浅薄というか、間違った印象を与えてしまう。
そういうところを細かく見ていくと、アメリカが台湾を守る気がないっていうのは非常に見えてきてしまうところですけども。
軍とか政府がどう考えてるかって、大統領とは別にあるんだけど、メッセージが強烈なんですよ。台湾の中の政治に与える影響とかね。そうすると今度は総統選挙とかも影響が出てくるから、それで日本側が慌てて「本当に重大なんですよ」ってことを言いに行くわけで、そういう構図になってる。
唯一の救いは……トランプ政権はもうはっきり台湾のためには守らない、国際安全保障のためには守らない、正義のため、民主主義のためにはもう守らない。「アメリカファースト」しか守らない。であるならば、唯一台湾を守る理由は、台湾が中国に統一されてTSMCとか半導体、AI、これが取られてアメリカの安全保障を脅かしかねないということをトランプが、あるいは議会が痛感すれば「台湾を守ろう」ということはあり得るけども、ただ台湾の自由とかそういう正論ではトランプ政権は守らないと僕は思います。
アメリカに対して損害が起きますよっていうことをアピールしないといけないということですよね。
そうです。
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かなりこう見ていくと台湾はどうなってしまうのかというところが非常に心配になってくるところなんですが、あとレアアースの面も今、日本と中国、アメリカでは非常に重要なトピックになってくるかと思います。この中国のレアアースの輸出規制に関してはどうでしょう? 日米の連携というのは強めることはできているんでしょうか?
これは強めなければいけないのは、実は裏で報道されてないんですけども大きな問題になっていて。例えば中国は今、日本へのガリウムなどのレアアースを規制してるんですね。ガリウムというのは半導体を作るのに重要なレアアースで、関係者と話した時に「これ在庫が年末で切れる」と。
中国もしたたかで、実はアメリカとかに輸出する日本の企業には、一定程度データを寄越す代わりに卸すんですね。ただ日本国内にしか使わない企業には輸出しないんです。だからそこをうまく、要するにアメリカに害が加わると今度アメリカから圧力がかかるんで、そこは避ける。ギリギリのところで日本に圧力をかけたり締めつけているというところが非常にしたたかで。
当然、今日アメリカは米中の貿易関税の合意枠組みを1月にまた90日ごとに延期するんですけども、アメリカがあたかも中国との関係を重視して延期したというふうに見られがちなんですけど、それはそうじゃなくて、中国にレアアースで首根っこ掴まれて身動きが取れないんで。ただ敗北も認められないから、これを延長せざるを得ない。主導権はあくまでも中国にある。だから今回、高市総理も「西側諸国でレアアースの供給ができれば中国に依存する必要がない」、これは安全保障上大きな意味合いがあるので、こういったところを今回アピールしたんだと思います。
これそうですよね。今、レアアースは中国から輸出されてるんですよね。永久磁石、レアアース永久磁石とか一部のレアアース金属化合物、これが入ってる機器類が防衛関係とかものすごい大事で。アメリカも日本もそうなんだけど、そこはもう絞っちゃって完全に。向こうもなかなか……。
で、さらにしたたかなのは、輸出するためには企業は全て「このレアアースはどの製品に入って、その製品はどこに輸出するのか」っていうのをちゃんとデータを……このデータってすごい価値がありますよね。これ全部取れる。さらに中国としては、今度そこを見ていって「軍事品にはダメですよ」とか「この国には輸出しちゃダメですよ」とか全部制御できるんで、ものすごい力がむしろ増してる。
今回かなりアメリカはレアアースが堪えてるっていう感じですね。
中国が完全にレアアースを止めたらアメリカ軍が止まります。自動車メーカーもね、全て止まる。完全に中国は首根っこを捕まえてる。
このレアアースの中国依存を減らすために、日米って具体的にどのような連携を?
やってますけどね。前回もそうだし、行動計画というのを決めてますよ。今回も重要物資という位置づけだから、レアアースだけじゃないんですよね。重要物資ね。これは一緒にやっていこうって話になってて、3月にもう1回、今回それを確認っていう感じで。オーストラリアとかフランスとかも巻き込んで、要するにレアアースもそうなんだけど、精製加工工程も中国がかなり握っちゃってるので、そこもやらないといけないんですよ。レアアースを掘って出ました、じゃないですから。精製する技術がすごいんですよね。
どうしてこんなことになってしまったかというと、かつてアメリカも掘ってたわけですよね。でも環境がひどい。で、中国が環境を無視してやって価格も当然低いから、じゃあ業者は安く入る方がいいってそういう仕組みになっちゃったから、今どうやろうかっていうと最低価格制度。要するに国が、政府がそれを支えて、「これ以上は下げないよ」っていう価格でやってくれればみんな投資するじゃないですか。作ったら損ですから、それしかないですよね、要するに。
これ、なんで台湾有事というか台湾エスカレーションが2028年までにって言うと、これ全部時間の問題なんです。中国が今、圧倒的に持っている強いレアアースというカードというのは、やがて将来利かなくなる。西側、日本、アメリカが自分たちでレアアースを作れるように、精製できるように、あるいは代替品を作る。だから待てば待つほど中国のカードが減っていく。だからカードを持ってるうちに台湾をものにするという、その時間軸が僕は大体2028年末か2029年の初めの頃ではないかと思いますね。
日本は尖閣の時にやられてね。かなりリサイクルとか、レアアースフリーの磁石の技術とか結構先駆けてやってるので、アメリカも結構それを評価してるから。でも中国からすると「あ、もう目覚めたね」って感じなんですよ。フランスとかオーストラリアとか色んな国が連携してやるって話でしょ。韓国も今回共同声明の中に入ってるから、そうするとあんまり……10年って言われてるけど、もっと短くなるね。多分5年以内でしょ。
そういうことですね。だから技術革新が起きて自分たちのカードが減る前に、このカードを早めに切っておくということを狙っていると。
もう1つ言うと、じゃあ台湾を兵糧攻めにしましたと。国際社会が反対します。「じゃあそこで中国と経済的決別ができますか」と。そこまでの覚悟が日本、アメリカ、ヨーロッパにあるのかと。「じゃあレアアースを一切断ち切って、西側はその経済が回るのか」と。難しい。そうすると、少なくとも日本政権は別として、トランプ政権は「しょうがないね、台湾グッバイ」と。
軍事的な攻撃じゃなくても取れる可能性があるんですよ。北京なんかも共産党がね、無血開城したんです。要するに内部に自分の人間がいたりするわけ、もうとっくに繋がってて。だから民進党政権はそういうのを浸透工作と言ってものすごい警戒してるけど、交流が始まるとね、例えば野党が勝って中国との交流、経済交流、色んな人的交流が始まると、当然人間の行き来が始まるじゃないですか。それを一番怖がってるわけですよ、そういうのをね。気がついたらみんな抵抗がなくなってるというか。「別に一緒になったって問題じゃないじゃないか」みたいな。経済的にも中国にもう依存してるわけだから、台湾の企業は。
それはちょっと香港に似てますよね。だから中国は必ずしもドッカンバッカンやって相手のインフラをぶっ壊して血も流して、というのは考えてないと。だから本当に大統領の一言が大事なんですよ、政局が変わるから。それ、中国が得意なんですよ。孫子の兵法で、血を流すのは一番下手な戦争なんだから。
これ1、2年でやるかどうか、それは分からないけど、「文攻武嚇」って言うんだけど、文で攻撃、文って口です、口とか文章。で、武嚇っていうのは武力で威嚇するんですよ。これ昔から政策ってそれなんですよ。要するにこうやって軍事演習って今、かなり前よりは派手なことをやり始めたけど、これは威嚇なんですよ。「ほら、これで封鎖されたら何も入ってこないだろう、外に行けない、お前ら干上がっちゃうぞ」ってみんな怖いよね。
もう具体的に攻撃をするというよりは、こうなりますよという威嚇の段階。それで「文」というのは色んな外交交渉とかね、トランプ大統領とかと会ってこういうことをやって、トランプさんに「交渉カードだ」とか言わせてみたり、何も言われなくてもこれ自体がもう世論戦なんですよ。台湾の中ので、それが世論戦で展開されるわけ。
これって結構両面でやってるんですよ。だけどこの武嚇というのは、ただの威嚇じゃない可能性もあるんですよ。反国家分裂法というのがあって、相手がもし独立宣言をしようとしたり国連に入ろうとかいう動きがあったりとかすると、この時は使うかもしれない。段階的にこうなってるから、両トラックでやってるからね。片っぽだけ見て「絶対に武力攻撃だ」とか見てると分かんなくなっちゃうんですよ。実はこうやってソフトパワーを使ってやったりするんですよ。そこは中国の方も何千年の兵法の極意だからね、それは知っとかないと。
「やっぱり攻め込むのは大変だよ」とか「上陸するのが大変だ」、そういうレベルじゃないですよ、もうね。そもそもそういう統一の仕方ではない可能性。何千年のそういう兵法の蓄積があるんで。だけど本当に焦ったら、最後は毛沢東だってアメリカと戦争になるのに朝鮮戦争に参戦したじゃないですか。焦ると分からないですよ。プーチンだってそうでしょ、突然来るんだから。
こういうところを見ていく上で、じゃあ米中首脳会談がどうなるのかというところは非常に注目するべきところだと思うんですけれども。今回の米中首脳会談で中国側が勝ち取ろうとしているものの1番を決めるとしたら?
もうこれは1に関税、2に関税率をね、いかにして下げていくか。でも平均で36%ぐらい行ってるの? 日本は確か平均だと12%ぐらいじゃないですか? あ、でも今20%まで下げたな。とにかくこれを下げてほしいと。でも日本も平均で12%ぐらいですか? 車が15%とか部品と。だからそこまで下げてこられると、ほとんど日本と中国の差がなくなってくるんだけど、とにかく関税っていうのも1つあります。
もう1つね、こういう交渉で言うと関税であったり台湾であったり色んな個別の目的がありますけど、1番大きいのはツーショット。トランプ大統領が空港まで迎えに来たっていう。これ大きいんですよ。だから日本側も「やっぱり大丈夫か」って。しかもこれ10月に中国は大会がありますよね。四中全会やってますけど、これ習近平氏の国内の求心力にとってすごい強める。
中国って、政府はこう対峙しているように見えて、共産党幹部の子どもとかは一番アメリカに行きたがってるし、留学帰りっていっぱいいるわけだから、やっぱりアメリカは憧れの国なんですよ。そのアメリカの大統領がわざわざ基地まで自分たちのリーダーを迎えに来たということは、非常に大事なんです。世界で自分より強い国はアメリカしかいないってもう分かってるから。そうすると、そこの大統領が空港まで来たって、これものすごいメンツを与えてる。「あ、すごいな、うちのリーダーは」ってなるでしょ。他の国じゃあり得ないじゃないですか。
だからこれは習近平氏にとっては政治資源としては非常に大きい。あとは周辺の同盟国とかがこれを見てどう思うかっていうことは考えたのかな。「何を話し合うんだろう」とかね、「そんなに親密なんだろう」とか。
もう中国は勝ち取るものは勝ち取りましたよね。僕は大きなディールとか大きな進展があるように期待してるけど、僕はないと思います。中国としては5月に打ち出した安定的協力態勢、あれを維持したいわけですから。今のままを11月のAPECに持ち込みたいわけですよ。
だから今回、AIとIT関係も、半導体とかも話に出てないでしょ。話してないですよ。だからこれやっぱり象徴的な会談かな。
今回は何か具体的な着地点があるというよりは、引き続き話し合っていきましょうと。あとは農産物とかね、買ってもらうとか。
だから中国はまず、台湾の武器売却への言及がない。それから大統領が迎えに来てくれたという意味。あとは細かいことで、多少ボーイングを買うとか農産品を買うとか、トランプの顔が立てば、あとは11月のAPECで中国はいかに成功を収めるための何か秘策を作っていくということで。
さらにアメリカのイーロン・マスクやAmazonのリーダーがみんな集まって、習近平のために晩餐会ディナーをやる。あれはすごいですよ。だからもうトランプよりも習近平主席の方がなんか偉いというか、格があるように見えますよね。少なくとも中国はそういうふうな国内の映像とかプロパガンダを流しますよね。
逆にそれはトランプ大統領が、少し中国の習国家主席よりも下に見えてしまうという図も見えてるわけですよね。それはトランプ大統領としてはいいんでしょうか?
理解してないですよね。理解してたら空港に迎えに行くはずがないですよね。
これやっぱあれですか、中間選挙が迫ってて物価が高いとかで、数字を見ても支持率も下がってる、民主党の方が有利とか、これもやっぱあるのかな。そこで「農産物をこれだけ買いますよ」とか「ボーイングこれだけですよ」とか、そのために空港に行くって、それだけの話ですか?
ちっちゃいです。国家観がないです。目先のディール。5月に中国に行った時も、ビジネスリーダーを連れてきて「ディールだ、ディールだ」と。習近平はG2覇権の話、要するに世界を米中で掌握しようとしてることを習近平国家主席は話してるのに、そこに「いやいやディールくれ、なんか買ってくれ」って、そんなちっちゃな話をしてる。もう視野が全然比べものにならないですよね。人として恥ずかしいの一言です。
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今のお話に出ていた中間選挙はどうでしょうか? 11月の中間選挙を控えて、トランプ大統領は今、状況としてはどのような状況にありますか?
もう国連演説が全てを物語っていて。「出馬してない、共和党を手伝ってるだけなんだ」と。下院は元々民主党が奪還するということになって、もう今や上院までも民主党が奪還できる現実味を帯びてきたっていうところは相当不利になってますよね。
で、結局ガソリン……今、実は伏線としてディーゼルガソリン危機なんです。アメリカで6ドルを超えて、過去15年で最も高い。自動車のガソリンよりもディーゼルの方が重要なんです。これはトラック運搬、軍、病院、ヘルスケア、経済のガソリンですから、ディーゼルは。これがもう高騰してしまってることで、実はどこまで危機感が強いかというと、今朝の報道で「アメリカがディーゼル輸出をやめる」って出たんです。そこまでもう切羽詰まっちゃったんですね。だからこれは相当インフレ、物価にも影響しますから、相当今トランプは追い込まれてるっていう状況ですね。
最近のロイターの世論調査があって、生活費の対策、要するにそれに今エネルギー価格とかのこれね、17%の支持率。もうこれ一番大きいです。あとは今「民主党に投票する」と回答した有権者が43%、共和党が35%とか、もう結構こういう数字が出始めてる。
二分してるアメリカ、左右で二分してるアメリカで、1つの党が8ポイント差を取るというのは、これ相当大きいですね。で、実は下院においては1934年以来、現職の大統領が下院で勝ったのはたった2回だけ。圧倒的に不利なんです、中間選挙は。中間選挙というのは大統領の通信簿ですから、基本的に現職が不利なんですね。当選した期待値よりも与えられないんで。だから大統領選は逆に現職が有利になるんですね。だけど中間選挙は圧倒的に現職が不利なんで、そこに輪をかけて支持率が低いですから、もう相当厳しい状況。
トランプ大統領の仕事支持率32%って、これどうですか? やっぱりやってる仕事に対する評価……。
これイランですとか、一連の大きなもの、やっぱりこれかなり効いてる。
ところがもう開き直っちゃって、「もう選挙は俺は関係ない」と言い始めたと。もう負け戦と分かっていて、「自分のレガシーにもう入るんだ」っていうことになっちゃった。習近平、絶妙なタイミングで訪米しましたね。
そうなると、選挙を意識して対中政策が融和的になるとかそういうことではなくて、自分のレガシーのための対中政策……。
怖いのは、自分のレガシーのためには国を売るということも否定はできないですよね。じゃあ自分がどういうレガシーを模索してんのかというのは、中国で国賓として迎えてもらうとか、金正恩と会うとか。これをやっちゃったらアメリカではもう共和党は負けますけど、戦後のチャーチル、スターリンのヤルタ会談、これを現代版ヤルタ会談をやるとか。もう正直レガシーにはならないですけど、それほどもう自分のことしか考えない「トランプファースト」になってしまったということです。
落ち込みますよね。
落ち込みました。話が進まなくなった。やっぱり空港に行くっていうのがね、すごいなと思ってました。
中間選挙の後、下院を民主党が取ったらどうなるかというお話を聞こうかなと思っていたんですけども、それってもはやあまりトランプ政権にとっては関係ない?
実は重要なのは、なぜ下院・上院の両方を奪還されるとまずいかというと、こっから弾劾裁判が始まります。で、調査が始まります。大統領というのはその罪には問われないんだけども、周り、官僚、ファミリー、そしてAI企業、ハイテク企業のトップ、どこまでこれが関与していたっていう調査がどんどん入ってきますから、そうするともう完全に政権は麻痺状態になってきますんで。
そこでじゃあトランプがどう動くかなんですよ。負けて大人しくなるのか、もうタガが外れてもう好き勝手を2年間やりまくる。だからキューバを攻撃するとか、キューバ政権を転覆させるとか、パナマを取るとか、何を仕出すか分からない。それが一番怖いですよね。
クラフトさんはどちらだと思いますか?
僕はもうタガが外れて好き勝手やると思います。内政においては予算を牛耳られるんで内政ができないですね。そうすると大統領というのはもう外交しかできない。そうしたらもうありとあらゆることを思い立ったらやりかねない。僕は一番キューバが危ないとは思うんですけども、本当にこれは日本を含め、その選挙後の方が僕は怖いです。
日本の対米投資って5500億ドルって決めたじゃないですか。こういうのも結構影響してくるんじゃないですか?
影響してきます。例えばもう間違いなく、今の中間選挙の2大テーマは物価とデータセンター反対。だから民主党が勝つと、おそらくデータセンター建設が軒並み止まります。
これ結構、日本が入ってんじゃなかった?
第2弾の対米投資にデータセンターが入ってます。だからちょっとこれ株式市場にも影響する。民主党が勝つとAI規制、それからデータセンター、こういったものが株価を支えてたAIブームにちょっと水が差されて。ガードレールを作ろうというところで、それと株価も下がってくるんで、ちょっとこれは全く中間選挙後の情勢が、経済金融もどうなるかなかなか見通せない。
この中間選挙の結果次第で、そういった状況になってくる可能性も見ていかないといけないですね。分かりました。では米中首脳会談がこの後にあって、中間選挙があってと、年末に向けて日米中関係で注目すべきポイントはどこになってきますか? 興梠さん、いかがでしょうか?
日米、米中ですか? 日中も入るかもしれないですね。首脳会談の前に日本がすっ飛んでいって、米中首脳会談の前にやっぱり伝えたい、中国についても話をしたって言ってるんで、「大丈夫ですか?」っていう確認でしょう。「こういうことなんですよ、今」っていうね。
日中関係がこれでどうなるかっていうのも1つありますよね。米中がじゃあ接近したらどうなるかとか、よく出るテーマ。それはちょっと分からないですね。ただ中国もずっと日本と対立してるかどうかって、これも分からないし。最近ちょっと議員さんを呼んだりとかして、外堀を埋め始めたというか。最後にAPECがあるじゃないですか、中国で。その時に高市さんと握手ぐらいはしないと、ホストなんだから、中国は。日中関係も改善の兆しは見えてきて……APECは1つの、全く無視しちゃいけないです、ホスト国だからね。安倍さんの時も一応、嫌々ながら握手したんですよ、習近平氏。その後、改善基調には変わっていったんで。
だからそこの米中がどれだけ接近するかという問題もあるんですが、僕は1つ米中に関して今回思ったのは、中国が対米投資をするかって話があったわけじゃないですか。トランプって投資してもらうのが好きでしょ。ところが財界が行かなかった。これは要するに自動車メーカーとか議会とか軍とかがブロックしたらしい。連れていくのがね、コネクテッドカーとか。これはアメリカも止めたけど、中国もやらないと思う。
中国はやりたかったんじゃないってことですか?
じゃないと思います。だって要するに、アメリカに情報を握られちゃうし、向こうに入ってしまうと……中国で作らせるんですよね、中国が握るじゃないですか。だからアメリカで作っちゃうと実はアメリカに……。
誰がこの話を出してきたんですか?
トランプが出したんです。トランプ以外はやりたくない。
制裁というか、リストアップされてる企業が中に入ってますよね。マークされてるってことは、アメリカ側が……。ああ、そういうことですか。まあまあ、それも結果としてそこで投資が進めばかなり関係が日本並みに強くなるかなっていうのはあったんだけど、今の話を聞くと投資はないですね。それだったらもう中国は昔にとっくに投資してます。相変わらず中国の車はアメリカに売るのが大変ですね。
ものすごい関税をかけられる。ただ一方で、中国はアメリカへの輸出は減ってますけど、今回の関税で世界への輸出は増えてるんですよ。余った車をバンバン出してるから。だから中国からすれば、むしろアメリカ抜きの世界戦略を……。国内は車が20%ぐらい売上がダウンなんですよ。海外にガンガン出してる。
米中関係というのはおそらくこれで一挙にガッと構造的に変わるというものではなくて、今回半導体の話とかもあんまりしてないみたいだし、規制は相変わらず続くだろうし。たださっき言った「安定」を今、基調にしてるんで、空港まで来てくれて大国みたいな、G2みたいなこの部分というのは中国側にとってものすごく大きい。それがトランプ氏にとってもメリットがあるって踏んだわけでしょ、中間選挙で。だから構造的に大きく変わるってことはないけど、このビジュアルなイメージは中国は今回すごく嬉しかったと。
今回の中国の勝利は、トランプが空港まで迎えに来たこと。これ何に使えるかというと、プーチン、イラン、金正恩に対して「これだけ私はトランプに対して力があるんだ」と。これは中国の地位を高めてしまったということは、それだけでも中国の勝利ですよね。
日本は動揺しないことですね。これで急に中国側に頭を下げたりとか絶対しない。そこは一番中国が狙ってるところだからな。米中がくっつくと、頭越しで日本が来るっていう。ニクソンと毛沢東が会ったら田中角栄が飛んできたっていう、これは絶対やっちゃいけない。だから今回国連で、敵国条項の件をガーンって言ったじゃないですか、高市さんが。中国はすぐ反論してるでしょ。だから急にこれで米中がくっつくと日本がなびいてくるっていうのは、絶対にそれはしっかりしとかないと。絶対やっちゃいけない。
もう1つは、米中関係がいい時は中国が日本を軽視します。中国が日本になびいてくるのは米中関係が悪化してる時です。そんな時に日本が中国に下手に出て「会ってくれ、会ってくれ、話してくれ」って言っても何の意味もないんで、ここはどっしりと。安倍政権の時で日中関係が良くなったのは、オバマ政権の末期に米中関係が悪くなって、で、トランプとも関税で日米関係が非常に良かった。だから今大事なことは、日中関係を良くするよりも、僕は日米関係をさらに強化すること。
高市総理は非常にトランプとはいい関係を構築していて、そこの外交面はいいんですけど、1つ足りないと思うのはトランプとの電話外交。もっとトランプに電話をかけて懐に入って、他愛のない話でいいんですよ。「CNNがあんたのこと悪く書いてたわね、かわいそうに」みたいなことでも何でも。安倍総理はそうだった。とにかくトランプとの関係を習近平以上に強化する、強く懐に入ると。
あと、中国も独裁じゃないですか。トランプがさっき言った独裁の国が好きっていうように、中国も強いリーダーは馬鹿にしないんですよ。だから高市さんの支持率が高かったり安定した政権になると、もう諦めるんですよ。「これも仲良くしないと、民意を受けてるから」。結構そういうところがある。弱いと徹底的に分裂工作を仕掛けられたりするから、どんと構えてやってね、それはアメリカとの関係も含めて。
ただ、1つ日本ももうちょっと足並みを揃える必要があるのは、今回中国に若手の議員が行ったり、あと岩屋さん、森山さん、これ反高市の人たちが行くとか言ってると。そこに中国に行ったのにも関わらず、今度来月、日華議員懇談会が台湾に50人の議員を連れていくと。これ中国を意識してますよね。だからそこの日本の中の対中姿勢の足並みがバラバラであるってことは、これは良くないので。全員行かない、あるいは全員行く、何か高市政権がまとめて、日本の中の対中政策、台湾政策の足並みをもうちょっと揃えた方がいいと思う。
中国の文化的な背景というか、行く方が願ってるから行くんですよ。だからそんな簡単に行くもんじゃないんですよ。向こうからは来ないでしょ? 絶対に来ないです。すごい格があるんですよ、格の違いっていうのは。「来る」っていうのは何か用事があるんでしょ、「あなた、何かやってほしいな」で行くから。仲いい、友好だとかで行くと逆効果になったりする、馬鹿にされたり。下に見られてしまう。
そうなんです。そう簡単に動く国じゃないんです、あそこは。どっちが先に行くかとかすごく大事でね。ニクソンが行った時もそういうのがあったんですよ。アメリカ人はあんまり気にしないかもしれないけど、どっしり構えた方がいいですね。メンツとか格とかすごくあるんで。長老はこう行って、若いのが……っていう文化なので、そこは日本も分かってないと。「今すぐ行かないと関係を改善するんだ」っていいつもりでやってるのが、向こうから見ると駒に使われたりね。向こうの文化をしっかり知っとかないと、逆に逆効果だったりする。
去年、外務省の局長が行って、向こうの局長と中で話してるのをわざわざ外に出てきて、中国側がポケットに手を入れて下に見下ろしてたんですよ。あれ、もう完全に計算されて、そこに待たせといたんですよ。あそこで撮っちゃいけないんですよね。で、その後ショート動画とかでバンバン流してる。それを撮られたっていうところの外務省もいけないんで。
そう、ちょうど頭を下げたような時を撮る。安倍さんも頭を下げて握手してる時を撮られちゃったりね。あれね、小さな声で喋るわけですよ。そうすると聞こえないから頭を下げるでしょ。それを誘われちゃう。わざとやってる。そういう巧みなイメージって、中国はすごい国民向けに見せるし、世界中に流すから。で、あの局長、その後日本企業に会いに行ってるって知ってます? 舐められてる。
見え方、見せ方というのは中国と外交していく面では非常に意識して……。
なぜそういうことをしないかって、ちょっと可哀想じゃないですか、そこまでやらないといけないって。自分がちゃんとやってますよ、日本に強く出てますよって上に見せたいのもあるんですよ。国民に見せたいのもあるけど、「私はちゃんと日本に頭を下げてませんよ」と上に見せたいのもあるから。安易に日本は下手に出ないで、どっしり日本外交をやればいいと思います。あんまり気にしない。
分かりました。世界を見ていくと危機感を煽るようなことだったり、焦りを感じるようなこともたくさんありますけど、まずは足並みを揃えてどっしりと状況を見極めていくと。
国力ですよ。経済力、軍事力、社会のね、日本全体の力をやっぱりつけていかないと、そこはもう徹底的に叩かれる。
だから高市政権、いい出足なんだけど、これから足場を固め、どっしり中国と対等に。他の国々、インド、オーストラリア、ミドルパワーを結集して、日本がある種、力による現状変更を試みる国に対して対等に戦える勢力を、日本がリーダーシップを発揮して作っていくっていうことが求められているんじゃないかと私は思います。
あとは自分の国力ですよね。仲間がいても、強くないと。
分かりました。ありがとうございます。日米首脳会談から始まり、米中関係、日米関係、そして日中関係、非常に広くお話を伺ってまいりました。本日は神田外語大学の興梠一郎教授と経済アナリストのジョセフ・クラフトさんとともにお話を伺ってまいりました。ありがとうございました。
ありがとうございました。
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