マネジメントにおける「対話の技術」:ティーチングとコーチングの使い分けと実践の型
PIVOT 公式チャンネルビジネスにおいてAIの活用が進む時代にあっても、人間同士が協働する現場では「対話をどう成立させるか」がマネージャーの成果を左右する要素として残り続ける。しかし、多くのビジネスパーソンは学生時代や家庭環境において対話の体系的な技術を学ぶ機会がほとんどなく、管理職になってからも手探りのまま部下と向き合っているのが実情である。
EVeM代表の長村禎庸は、マネジメントにおける対話技術を感覚に頼るのではなく、言語化された「型」として整理し、状況に応じて適切に使い分けることの重要性を説く。本セッションでは、代表的なアプローチであるティーチングとコーチングに焦点を当て、それぞれの役割、実践手法、陥りがちな失敗について詳しく解説された。
状況に応じた対話手法の使い分け:ティーチング、コーチング、フィードバック
長村はまず、マネジメントで用いられるコミュニケーションには大きく分けて「ティーチング」「コーチング」「フィードバック」の3つが存在し、マネージャーは「自分は何派か」にこだわるのではなく、相手の習熟度や状況に応じて選択しなければならないと指摘する。
例えば、自社商品の知識がおぼつかずクライアントへの説明に失敗した新卒社員に対しては、本人が知識を持っていないため、丁寧にレクチャーを行う「ティーチング」が適している。一方で、人の発言を遮って持論を展開し周囲の意欲を下げているベテラン社員に対しては、周囲からどう見えているかを客観的に伝える「フィードバック」が必要となる。また、十分な経験を持ちながら新規事業の検討で行き詰まっている社員には、マネージャー側にも正解がないため、問いを重ねて本人の思考を引き出す「コーチング」が有効に機能する。
このように、対話の目的と相手の前提条件によって選択すべきアプローチは根本から異なる。
ティーチングの6つの型と「教えること」の罠
ティーチングは、基本的に「こちらから相手へ一方通行で教える」シンプルな技術である。しかし、単に情報を伝えるだけでは相手に定着しにくいため、長村は教え方のパターンを以下の6つに分類して頭に入れておくことを推奨する。
- やってみせる(実演)
自身のタスク管理方法を実際の画面で見せるなど、具体的な動作やプロセスを直接示して真似させる。 - 事例を使う
目標設定の重要性を伝える際に、メジャーリーグに進出した著名なスポーツ選手の目標設定方法を引き合いに出すなど、他者の具体的な実例を通じて理解を促す。 - 例え話をする
納期の遵守を説く際に「誕生日会が終わった後に届くケーキに意味がないのと同じ」と比喩を用い、業務の本質的な価値を直感的に理解させる。 - ナレッジを伝える
抽象化された汎用的な知見を提供する。例えば、目標の書き方に悩む部下に対し、「目標とは期日時点の状態であるため、文末を『〜という状態』で終わるように書く」といった再現性のある知識を授ける。 - 経験を話す
マネージャー自身のコミュニケーションの失敗とそこから得た教訓など、個人的な実体験を通して相手の立場に立つ重要性を説く。 - コンテンツを読ませる
自身が感銘を受け、相手の課題解決に役立つと判断した書籍や文献を推薦し、読んでもらう。
これらは文章執筆の技術とも共通しており、抽象と具体を往復しながら相手に伝えるための有効な手段となる。
一方で、長村はティーチングにおける重大な「罠」についても警鐘を鳴らす。教える技術が上達すると、部下からリスペクトを集めやすくなり、教える側がその承認に快感を覚えてしまうことがある。その結果、相手の成長のためではなく、「自分が教えること自体」が目的化し、必要性の薄いティーチングを繰り返して部下の離脱を招くケースが少なくない。マネージャーが指導者としてのキャリアを重ねるほど、自戒すべき点である。
コーチングとヒアリングの本質的な違い
コーチングは「問いを重ねることで、本人が何を考えているのかを本人自身に認識させる」アプローチである。ここで長村が強調するのは、「コーチング」と単なる「ヒアリング」の決定的な違いである。
長村が企業向けのマネジメントトレーニングで受講生のロールプレイングを数百本レビューしてきた経験によれば、コーチングを行おうとした受講生の99%以上が実際にはヒアリングに終始してしまっているという。両者の相違点は「誰が問題を解決するのか」という目的の所在にある。
- ヒアリング:
「質問者(マネージャー)自身が問題を解決するため」に相手の状況を聞き出す行為。例えば、会社の従業員数や売上高、現状の事業内容を尋ねるような質問は、マネージャーの理解には役立っても、回答している部下自身には何の内省や気づきももたらさない。 - コーチング:
「相手自身が問題を解決するため」に効果的な問いを投げかける行為。解決の主体は部下であるため、極論を言えばマネージャー側がすべてを把握したり、話された内容の細部を記憶したりしていなくても、部下の思考が深まり行動方針が定まれば成立する。
ヒアリングの姿勢で臨んでしまうと、マネージャーが解決しようと細かく質問を重ねるため、部下にとっては詰問されているような息苦しい時間になりやすい。そして最後には、部下から答えが出ないことに痺れを切らし、マネージャーが「こうすればいいと思いますよ」と指示を出して終わるという本末転倒な結果に陥る。
また、長村は社内のマネジメントにおけるコーチングの適用範囲は限定的であると述べる。部下にとってマネージャーは評価者であり利害関係者であるため、「会社を辞めたい」といった本音をすべて曝け出すことは構造上難しい。したがって、マネージャーは外部のプロコーチのように振る舞うのではなく、以下の2つの条件を満たす場面に絞ってコーチングを活用すべきであるとする。
- 部下が業務スキルを十分に持っており、自力で答えを導き出せる力がある場合
- キャリアプランや、ある出来事から何を感じ学んだかなど、本人の中にしか答えが存在しない場合
コーチングの基本姿勢:場の設定と解決主体の委譲
コーチングを機能させるためには、高度な質問テクニックを繰り出すことよりも、事前の関係構築と基本姿勢の徹底が重要であり、長村は「場づくり」と「相手にボールを委ねること」ができればコーチングの8割は成功したと言えると語る。
話しやすい場づくり
物理的な対面の場合、机を挟んで正面に向かい合うと対決や評価の構図になり緊張感を生みやすい。リラックスして内面を語らせるためには、斜めの位置関係に座ることが有効である。
オンライン会議でも同様の工夫が可能である。画面の真正面に顔を大きく映すと威圧感が生じるため、少しカメラから引いて距離を取り、位置をやや横にずらす。相槌を打つ際や相手の話をじっくり聞く際にあえて少し斜めを向くことで、横に並んで座っているような安心感を与えることができる。また、PCで内職をしていないことを示すために、両手を画面内に収めてペンを持ったり腕を組んだりして、「あなたの話だけに集中している」と視覚的に証明することも信頼関係の醸成につながる。
相手を信じ、解決のボールを渡す
質問の技術に不安を抱えるマネージャーは、「うまく質問できなければ相手が良い答えを出せない」と考えがちだが、それは裏を返せば部下の能力を信じていないことの表れでもある。拙い質問であっても、「この人なら自分で答えを見つけられる」と信じて真剣に耳を傾ける姿勢こそが重要である。
特に陥りやすい誤りが、部下から「業務が多すぎてパンクしています」と相談された際の対応である。多くのマネージャーは即座に「今の業務状況を教えて」とヒアリングを始め、自分が状況を整理して解決してあげようとしてしまう。しかしこれでは、問題解決の主体がマネージャー側に移ってしまう。
コーチングのアプローチを取るならば、「業務が立て込んでいるのですね。では、いつまでにどのような状態になっているのが理想ですか?」と問い返し、目標設定と解決の責任を部下自身に委ねなければならない。部下から「どうすればいいですか?」と正解を求められた場合でも、「あなた自身はどう思いますか?」とボールを投げ返し続けることが求められる。
マネジメントで使える4つの質問テンプレート
長村は、マネージャーがゼロからオリジナルの問いを考える必要はなく、ビジネスで用いるコーチングの質問は定型化できると説明する。あらかじめ用意された質問スクリプトを手元に置き、面談時にそれを順に読み上げるだけでも十分な効果を発揮する。主要な場面に応じた4つの型は以下の通りである。
1. 目標達成コーチング
目標達成に向けて悩んでいる部下や、タスクに追われて混乱している部下に対して用いる。
- 得たい結果と達成基準の確認
- その目標を達成することの意味付け
- 現在の状況と直面している課題・壁の言語化
- 活用できるリソース(スキル、知識、予算、協力者など)の整理
- 達成に向けた方針の策定
- 方針を具現化する具体的な重要アクションの決定
- 面談直後に行う第一歩の確認
2. 要因分析コーチング
業務上の失敗や、目標が未達成に終わった際の振り返りに用いる。
- 実際の結果と当初目標とのギャップの確認
- 生じた要因の洗い出しと、その中でも特に大きな要因の特定
- その要因に至った背景・理由の深掘り
- 再度取り組むとしたら改善できた点についての考察
- 分析を踏まえた今後の方針策定
- 面談直後に着手するアクションの確認
長村は、この要因分析のアプローチは人間だけでなくAIを活用する際にも極めて有用であると言及する。複雑なワークフローを組んでAIの処理が途中で止まった際、人間側が原因を決め打ちして修正するのではなく、「なぜ止まったのか」「改善するにはどうすべきか」をAI自身に考えさせるプロンプトを投げることで、AIが自律的にワークフローを強化していく手法に通じるものがあるという。
3. 経験学習コーチング
プロジェクトが成功した際や、困難な局面を乗り越えた際など、部下にとって貴重な学びの機会となった直後に差し込む。
- 経験した具体的な事実関係(いつ、誰と、何をしたか)
- 当初想定していなかった想定外の出来事の抽出(ここに学びが潜んでいる)
- 今回の結果に対する本人の受け止め
- 出来事から得られた教訓の言語化
- その学びを今後の仕事にどう活かすかの展望
- 次に実行するアクションの特定
経験を本人の言葉で言語化させておくことで、将来同じような場面に遭遇した際に知識を引き出して再利用できるようになり、個人の自律的な成長が促される。
4. キャリア構築コーチング
中長期的な方向性に悩んでいる部下の面談で用いる。
- キャリアにおける理想のゴール(遠い未来が描きにくい場合は、社内外のベンチマークとなる人物や、1年後といった身近な期間に時間軸を短縮する)
- 現在地と不足している能力・経験の客観的把握
- 活用可能な社内外のリソース(現在の事業機会、チーム環境など)の洗い出し
- 今後目指すキャリア方針の策定
- 方針に沿った具体的なアクションの設定
- 面談終了後の最初のアクションの明確化
これら4つの型は、いずれも「目標達成コーチング」の基本構造(理想の状態→現状との差分→リソースの確認→方針とアクションの決定)を特定の目的に応じてアレンジしたものである。
コーチングの境界線:「クイズ」や「壁打ち」との混同を避ける
対話を行う際、マネージャーは自分が取っているコミュニケーションが本当にコーチングなのか、他の形態なのかを識別しておく必要がある。長村は「クイズ」や「壁打ち」との境界線を明示する。
- クイズ:
「東京都の人口は何人だと思いますか?」と尋ね、相手が「500万人」と答えた後に「正解は1,400万人でした」と返すようなやり取り。質問の形を取ってはいるが、出題者側に唯一の正解が存在しており、相手の内省を促すものではない。 - 壁打ち:
部下が新規事業などのアイデアを持ち込み、マネージャーが「自分はこう思う」「ここが弱いのではないか」と自身の意見や見解を提示して思考を深めさせる対話。意見交換としては有益であるが、マネージャー自身の考えを述べている時点でコーチングではない。
コーチングの本質は、「相手が出した答えを正解として扱い、相手自身にその選択で突き進んでもらう」点にある。人間は他者から指示されたことよりも、自分で思考して結論を出した方針に対して強い当事者意識と推進力を持つ。マネージャーが持論を挟むべき場面なのか、それとも部下に自ら答えを決めさせるべき場面なのかを意識的に区別することが重要である。
「マネジメント=コーチング」という誤解を排する
近年、コーチングの重要性が広く認知された結果、「マネジメントとはコーチングを行うことである」「1on1はすべてコーチングで進めなければならない」といった極端な捉え方が見られるようになった。
しかし長村は、新卒社員で業務知識が不足している相手に要因分析コーチングを行っても「分からないのでまず教えてほしい」となるのが自然であり、教えるべき知識がある段階でコーチングを強要するのは不適切であると指摘する。
マネージャーに求められるのは、特定の対話手法に固執することではない。「教える(ティーチング)」「引き出す(コーチング)」、そして次回に扱われる「耳の痛い事実を伝えて立て直す(フィードバック)」という3つの技術の特性と型を理解し、相手の習熟度や直面している課題の性質に応じて、冷徹かつ柔軟に使い分けていくことこそがマネジメント技術の要諦である。
対話の技術全体が大事になっています。AIをたくさん使う時代ではあると思うのですが、ひょっとしたらそこが最後、ラストワンマイルの差別化になるかもしれません。「うまく教えるためにどういうコツがありますか」ということで、先に佐々木さんに問いをお渡ししておいて答えを伝えることで、より効果的に浸透します。このこと自体も方法の1つですし、1番から6番の方法があるなと認識しておくだけで、だいぶ教え方が上手になるのではないかと思います。
コーチングとヒアリングの違いについて、コーチングは問いによる納得感、問いの質が問われますよね。目的が違うのです。「あなたの問題を解決するのは私です」というのと、相手が何か良い答えや自分の行き先を導くために効果的な問いを投げるのとでは異なります。話しやすい場を作った上で相手に委ね、相手にボールを渡し続けることさえできれば、コーチングはもう8割できたようなものだと思っています。残りラスト2割を埋めるとしたら、うまく質問することです。
皆さん、こんにちは。PIVOTの佐々木です。連続シリーズでお送りしております「マネジメント技術大全」、9回目の今回は対話の技術、ティーチングとコーチングをテーマにお話を伺います。ゲストにお迎えしましたのは、EVeM代表の長村禎庸さんです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
9回まで来ましたね。クライマックスも近づいてきましたけれども。
そうですね、もう後半の最後3分の1のところですね。
3分の1ということで、このピープルマネジメントの中の今日は対話の技術、特にティーチングとコーチングですね。これらは似たような意味で使われますが、明確な違いがあるということですね。
そうですね。ティーチングとコーチングはよく聞く言葉だと思うのですが、それぞれ使うシーンも効果も全然違いますので、見ていきたいなと思います。
特に対話の技術全体が大事になっているというか、そういう時間が増えているので、これができる人とできない人ではマネージャーでも全然違いますよね。
差がつきますよね。AIをたくさん使う時代ではあると思うのですが、人間と仕事をするのもそれはそれで残り続けると思いますし、ひょっとしたらそこが最後、ラストワンマイルの差別化になるかもしれないですよね。
確かにね。企業に入るまで、一般的な日本人って対話をどこで学んでいるんでしょうね。
どこで学んでいるんでしょうね。私の認識では、どこでも学んでいないんじゃないかなと思いますけど。
友達とかとのおしゃべりは対話とちょっと違いますもんね。
そうですね。なので最初何も学ばずに社会人になって、友達との会話とビジネスの対話が違うということに気づいて、そこからいろいろとやられつつ、今度初めて管理職になったら、やっぱり管理職とメンバーの対話とメンバー同士の対話も違うってことに気づいて、頭がモヤモヤしたままやり続けているという人が多いんじゃないかなと私は思いますけどね。佐々木さんはどうですか?
家族も対話と言えるけれど、ちょっと近すぎる関係なので対話と少し違う面もあるのかなと思いますし、ずっと先生はどちらかというと教える感じですもんね。対話の中でもティーチングというか。ただ、日本の場合、一方通行になったり上下関係が厳しかったりするじゃないですか。体育会もそうだし、サークルはおしゃべりみたいな感じだし、バイトもまたちょっと違うし、対話の機会はありそうでないですね。
そうですね。機会もないですし、そこに技術もやっぱりないというのが問題だと思います。普段やっていることかもしれないのですが、改めて「それってこういう技術ですよ」という認識をしておくと必要なときに出せるようになります。普段曖昧で感覚的にやっていることをカチカチと言語化していきましょう、というのが今日のテーマです。
ぜひいきましょう。
では、このティーチングとコーチングをやっていきましょうということで、事象と対策を3つ持ってきたので、佐々木さんに伺いたいなと思います。
事象としては、A「ある新卒社員と同行営業をしたところ、自社商品の説明がおぼつかなく、クライアントに理解を得られなかった」。B「あるベテラン社員は、ミーティングのときに人の発言を遮って自分の経験ばかり話す。そのことが周囲のモチベーションを下げている」。C「経験豊富な社員だが、新規事業の検討に行き詰まってしまい、どうして良いか方向性が見えずに悩んでいる」。 一方で対策としては、1「どうすれば良いのか丁寧にレクチャーをしてあげる」。2「本人に質問をいくつか重ね、本人が何を考えているのかを本人自身に認識させる」。3「自分や他人から見たときにどう見えているのか客観的に伝えてあげる」。事象ABCと対策123を線で結ぶとしたら、どの組み合わせが良さそうですか?
これ間違うとまずいですね。でも結構明確かなと。Aはやっぱり1ですよね。分かってないんだから丁寧に教えてあげる。Bはやっぱり3で、どれだけ他人の目から嫌な感じに映っているかを見せてあげる。Cは模索している人たちなので、マネージャーに答えがあるわけでもないから、良い対話相手になって引き出してあげる。
見事です。正解です。これはティーチング、コーチング、フィードバックと言われるものです。何が言いたかったかというと、「私はティーチング派」「コーチング派」「フィードバック派」といった派閥は関係ないということです。その時々に応じてこの3つの技術を使い分けなければいけないので、このマネジメント技術大全で3つの技術を理解していただいた上で、ちゃんとシーンによって使い分けられるマネージャーになりましょう、というのがとても大事ですね。1個1個解説をしていきつつ、それがどういうシーンで生きるのかという話もしていきたいと思います。
お願いします。
まずはウォーミングアップではないのですが、ティーチングですね。「どうすれば良いのか丁寧にレクチャーをしてあげる」ということで、コミュニケーションの技術としては本当にシンプルで、一方通行ですよね。「あなたに教えます」と。ただシンプルにそれだけなのですが、この教えるというティーチングにおいては教え方がすごく大事です。私も人に何かを教える仕事をしているのですが、教え方にパターンがありますので、それを頭の中で認識しておくだけでも「こういう方法を使って教えるのが良さそうだな」と気づくことができます。 「うまく教えるためにどういうコツがありますか」ということで、佐々木さんは人に教えるときにコツなどはありますか?
コツですよね。できるだけケーススタディ的に抽象と具体を行き来することですかね。抽象ばかりだとよく分からないですし、具体ばかりだと応用が利かなくなるので、抽象具体の往復をすること。あとは一方通行だけではなく、教えるための問いも入れますね。自分で頭が動いた上で学ぶのとそうじゃないのとでは違うので、問いも入れていく。そんな感じです。
素晴らしいですね。ありがとうございます。まさに今私が佐々木さんにお伝えしていることですよね。先に佐々木さんに問いをお渡ししておいて、答えを伝えることでより効果的に浸透するという、このこと自体も方法の1つです。 実際に伝えるときの伝え方として6つの方法がありまして、パターンですね。1つ目は一番シンプルに「やってみせる」というものです。事例としては、自分のタスクの管理方法を画面で実践してみせるのを見てくださいね、というシンプルなものです。
2番目は「事例を使う」というもので、目標を立てることの重要性を、あるスポーツ選手の事例をもとに「このスポーツ選手はこんな風に目標設定したからメジャーリーグに行けたんだよ」という話をすることです。
3番目は「例え話をする」。例えば、納期を守ることが重要だという話をするために、「ケーキが誕生日会に来なければケーキの意味がないのと一緒ですよ。相手に約束した期日までに届けるということこそが本当の仕事の本質なんだよ」と伝えることです。
4番目は「ナレッジを伝える」。これは抽象化されていて汎用的で、どこでも使えるようなものを伝えるという意味です。目標設定で悩んでいるメンバーに「目標は終了日の状態だから、『〜という状態』という語尾で終わらせるように書いてみると良いよ」とアドバイスをする。これはマネジメント技術大全で話した内容そのものですが、少し抽象化したナレッジを伝えるというやり方です。
5番目は「経験を話す」ですね。コミュニケーションの失敗とそこから得た学び、つまり相手の立場に立つことが大事だというのを自分の経験談で説明する。
6番目は「コンテンツを読ませる」。これも立派なティーチングですね。自分が愛読している本がその人に対して刺さるものが多いだろうと思ったので、「ぜひ読んでみて」とお勧めする感じです。 ティーチングをするパターンは1番から6番で大体分かれると思うので、この方法があるなと認識しておくだけで、だいぶ教え方が上手になるのではないかと思います。
これは良い文章を書く秘訣とほぼ同じですね。事例を出していく、例え話を使う、著者自身の経験を話す、そしてそれを抽象化したナレッジを話したり、コンテンツを読ませるというのは引用ですよね。「他の著作でこういう良いところがあるので、これをおすすめします」みたいな。似ていますね。
なるほど、面白いですね。人に何かを伝えるときの鉄則かもしれないですね。
ティーチングには罠がありまして、ティーチングが上手になるとリスペクトを集めやすくなります。その結果、リスペクトされるのが気持ち良くなってしまうんですよね。なので相手を成長させることではなく、ティーチングをすること自体が目的化してしまい、結果として目的のないティーチングを繰り返すと人は離れていきます。キャリアを重ねれば重ねるほど、これは気をつけなければいけないことです。
でも、ティーチングの専門になればいいんですよね、ある種。
そうですね。私のようにティーチングを職業にしていて、「教えてください」という人が目の前にいる状態だといいのですが、マネージャーとメンバーは必ずしもそういう関係ではないじゃないですか。一部ですからね。これがティーチングの罠ということで、割とシンプルですが、ちゃんと技術を持って教えましょうということです。
2番目はコーチングですね。「本人に質問をいくつか重ね、本人が何を考えているのかを本人自身に認識をさせる」ということで、コーチングを受けられたりしたことはありますか?
あります。何回かありました。あと『社長改造』という番組でも社長としてのコーチングを受けて、すごい効果がありましたね。
基本的には問いを出されて、佐々木さんが考えを整理するという感じですかね。
そうですね。今後もぜひやりたいなと思っていますし。
コーチングのイメージは、コミュニケーションのスタートラインに立って、「失敗した要因って何だと思いますか」とか「もう一度やるんだったらどういう風にしますか」「さらに結果をもたらすためにどうすべきですか」といった問いを重ねながら、本人自身が自分でゴールを見出していくときに横で問いを投げながら導いていく、という感じだと思っています。 コーチングイコール質問とか問いというイメージがあると思うのですが、コーチングとヒアリングの違いについて、もし何かあるとしたら佐々木さんは何だと思いますか?
コーチングとヒアリングですか。ヒアリングは特に聞いてあげることで納得感という形ですけれど、コーチングはやっぱり問いによる納得感という感じなので、問いの質が問われますよね。ヒアリングは相手のことを本当に聞けばいいというか、そこで吸収していく自分側に負荷がある感じがしますけれどね。
まさにそうでして、目的が違うんですよね。コーチングは問題を解決するのは相手なので、相手が解決するために、相手が良い答えや自分の行き先を導くために効果的な問いを投げます。 一方、ヒアリングは何のためにしているかというと、「私が解決するために聞いている」という感じです。「PIVOTさん、社員数は何人でしょうか?設立はいつでしょうか?売上はいくらあるんでしょうか?現在の事業は何でしょうか?」と私が佐々木さんに聞くその質問は、正直佐々木さんにとっては何の気づきもないじゃないですか。
「あなたの問題を解決するのは私です」というのと、佐々木さんが問題を解決するんだったら、正直佐々木さんが知っていることで私が知らないことがあってもいいじゃないですか。なんなら佐々木さんが何を話しているかは私は忘れてもいいわけですよ、ただ問いを投げるだけなので。 私がマネジメントトレーニングでコーチングのお題を渡して、受講生同士でロールプレイングをしてもらい、その動画をレビューすることを今まで何百本とやってきたのですが、私の認識では99%以上がヒアリングになるんですよね。「何のために聞いているんですか?」というと、「全部解決するのが私」という前提で聞いているので、相手からすると息が詰まるような時間になっていたりします。 質問はされるけれど何の気づきもなくて、オチとしては聞いている方が最後に答えを言っているんですよね。「こうすればいいと思いますよ」と。相手が言わないんだったらこちらが言うしかないので、結果としてヒアリング調査になってしまっています。まずこの前提がすごく大事ですね。
その上で、コーチングを利用するシーンはマネジメントでいうと限られていて、そんなに頻繁に使うものではないと思っています。2つくらいしか使うシーンはないと思っていて、1つは相手に十分なスキルがある業務について、相手に答えを出す力があるので相手に出していただくパターンです。もう1つは、相手にしか答えがない案件ですね。その人のキャリアプランとか、その人がその出来事から何を学んだのかなどは、こちらが知らないことなのでその人しか答えを見出せません。その2つくらいしか使うことはないというのが私の考えです。
これも大事なのですが、メンバーにとってマネージャーは評価者であり利害者なので、全部の本音は言えないんですよね。「実は会社を辞めようと思ってまして」というのは上司に言えないじゃないですか。本音が言えない以上、技術云々に関係なく、存在としての本当のコーチになることはできないと思うのです。なのでお伝えしたいのは、プロのコーチになるための話ではなくて、マネジメントにおいてコーチングという技術をどういう風に使うのかという話をしていきたいなと思います。
分かりやすい。
コーチングの基本として大事なのは、話しやすい場作りですね。リアルの場だと、正面に座ると相手と自分に一線を画しやすいというか、何かについてディスカッションしたり対話したりするときは正面でいいと思うのですが、その人の話をじっくり聞くとか、相手が好きに話すのを引き出すような場合は斜めに座ると、自分の世界に相手を招くというか、安心感を持って話してもらえるイメージがあります。 オンラインでも可能で、オンラインの場合はまずちょっと横にずれた方がいいですね。真ん中はすごく圧があるので横にずれて、あとはちょっと画面から離れた方がいいです。ものすごく近いと圧があるので、すっと離れていただいて。相手と話すとき、相槌を打つときや「なるほど」と感心するときは斜めを向いた方がいいですね。
相槌のときだけですか?
相槌のときでもいいですし、相手が話してくれているときも、なんとなく斜めを向きながら「うんうん」でもいいかもしれないですね。
横に座っているような感じで相槌を打って、普段は前を向きながら「あ、こうだね」みたいな感じですか?
そんな感じですね。
なぜ時々斜めにするんですか?
相槌のときまでずっと相手を見ていると、正面に座っている状態になってしまうからです。でもオンラインなので、ずっと横を向いていても「話を聞いていないんじゃないか」という感じになります。聞くのは正面で聞きつつも、相槌を打つときは横に座っているような感じにする。オンラインだと「聞いていますよ」ということを証明することも大事なんですよね。真剣に聞いているというのをちゃんと証明しつつ、横も向きつつという感じです。 あとは、他の作業をしていないことを定期的に証明するのもすごく効果的ですね。例えばオンラインの画面でこれを持っていたりすると「作業していないんだな」と分かりますし、あえて画面の上の方で腕を組んだりすると今キーボードなどを触っていないと分かります。ペンを持つのもそうですね。 あとは、もし1on1が普段の業務報告みたいになっているのなら、ある回だけ突然斜めに座っても「どうしたんだろう」となってしまうので、いつもと立て付けやタイトルを変えるのが大事かなと思います。
壁紙をいつもと変えるとかもありなんですか?
あんまりやりすぎると「どうしたんですか?なんで今日は後ろに滝が流れているんですか?」みたいになるかもしれません。
2つ目が「相手を信じる」と書きました。これもテクニックでもあるのですが、コーチングをしてくださいと言われると結構焦るんですよね。「うまくできるかな」とか「どんな質問を繰り広げたらいいのか」と。コーチングの質問集を覚えている人もいますが、「うまく質問しなければいけない」というのは裏を返せば「うまく質問しないとその人は答えを導けない」ということで、相手のことを信じていないということでもあるのです。 なので、「この人だったら別に私なんかがうまく導けなくても自分で答えを出せるから」という気持ちで、相手に委ねることがすごく大事です。そうじゃないとうまく質問しなければとガチガチになってしまって、「Aですか、Bですか?いつまでにしますか?」みたいにクローズドクエスチョンを繰り返して、すごく息が詰まるような、半分尋問みたいになっちゃいます。 「じゃあどうしますか」とか「何が課題ですか」「そうなんですね」と、うまく質問できなくても真剣にその人の話を聞いて、「あなたが解決できるはず」と信じているだけで割とうまくいきます。「うまく質問しなければいけない」とあんまり焦らないでください、というのがまず大事ですね。
2番目の「相手を解決の主体にする」というのはとても大事です。これもロールプレイングを見ていると、私調べでは99%のユーザーさんが引っかかるポイントです。「業務がパンパンでしんどいです」という設定でメンバー役に最初に発言してもらうと、ほとんどのマネージャー役の人は「今、業務の状況はどうですか?」とヒアリングしちゃうんですよね。 ヒアリングしているということは「自分が解決するのであなたの業務を調査している」ということだと思うのですが、逆なんですよね。「業務がパンパンでしんどいです」と言われて「業務の状況を教えてください」と言った瞬間に、問題の解決自体がマネージャー側に移ってしまっています。そうではなくて、「業務がパンパンなんですね。あなたの問題なので、いつまでにどういう状態にするのが理想ですか?」という風に、相手に目標設定のボールを投げるのです。あなたの問題だから、あなたがいつまでに解決したいのか、解決されたというのはどういう状態なのかはすべてあなたが決めることだ、として解決のボールを投げることがすごく大事です。
相手が正解を求めてきたときはどうするんですか?
相手が正解を求めてきたとしても、相手に答えを出させようというアプローチを取るのであれば、「あなたはどうしたいですか」と目標設定をさせるべきですね。
自分の中で「こういう答えがある、これがいいな」と思っていても、あえて提案しない方がいいということですね。
そうですね。「教えてください」と言われたら「あなたはどう思いますか」が正解ですし、「その結果どうしたいのですか」という話で相手にボールを投げ続けるのがすごく大事です。
問題解決がうまかったりアイデアが多かったりする人ほど言っちゃいそうですよね。
言っちゃうんですよ。私も絶対言っちゃうタイプです。でもスポーツとかも一緒じゃないですか。「先生、蹴ってください」じゃなくて、自分で蹴ってみることが大事だと思うので。
確かにね。
その上で、今のようなコーチングの基本である「話しやすい場作り」と「相手に委ねる」ということをベースでちゃんと整えておきながら進めます。 私は質問のうまさよりもさっきの基本、話しやすい場を作った上で相手を信じてボールを渡し続けることさえできれば、マネジメントにおけるコーチングはもう8割できたようなものだと思っています。残りラスト2割を埋めるとしたら、うまく質問することです。
うまく質問するのも、別にプロのコーチではないので、オリジナルの質問を繰り出す訓練をする必要はないんじゃないかなと思っています。ビジネスシーンでコーチングをする場面が限られているのなら、質問のプリセットがありますので、時と場合によって使う機会がある4つくらいの質問セットを覚えてしまえばいいという考え方です。 なんならプロのコーチではないので、「今日は佐々木さんの話を聞きたいので、読みますね」と言って質問集を読めばいいと思うんですよね。「これどう思いますか?」「これどう思いますか?」と読むだけでも、相手は十分答えられます。
何でも型にするのがうまいですね。
型にした上で心を込めてやるのが大事なんですけれどもね。
目標達成コーチングはこんな感じですね。 「あなたが得たい結果はどういうものですか」「達成基準はどのようなものですか」「その目標を達成することにはどんな意味がありますか」という感じで、目標そのものと目標の先にある意味付けをしていただいて、その人に十分な達成意欲を持ってもらうのが最初のアプローチです。 その上で、「今はどういう状況ですか」「目標達成に向けてはどんな壁がありますか」と聞きます。「なるほど、そんな壁があるんですね。では目標達成の方法を考える前に、頭の中で整理してください。目標を達成するために、あなたはどういうリソースを活用できますか」ということで、自分の知識やスキル、予算や協力者など、自分が使えるものは何かを言語化してもらいます。 その上で、「じゃあ目標達成に向けてどういう方針を立てますか」と方針を立ててもらい、「その方針を実現するために、特に大事なアクションはどんなことが考えられますか」とアクションを聞きます。最後に「では、この面談が終わった後に何をしますか」と聞きます。 この一連の質問に答えていただくと、その人が本当に目標達成に向けて第一歩のアクションを見出せますので、紙のスクリプトを見ながらでも全然構いません。心を込めて1つ1つ聞いていくだけで、目標達成のための行動は促進されるかなと思います。メンバーが目標達成に悩んでいたり、業務でパニックになっているときなどに有効だと思います。
目標設定のときも使えるんですかね?
使えますね。1番の質問が目標の話なので、目標の設定から達成方法まで一通りできるセットですね。
2番目は要因分析コーチングですね。何か起こったとき、どちらかというと失敗したときなどが良いと思うのですが、うまくいかなかったときに「それってどういう要因だったのか」というのを本人自身が見出して、次はもっとうまくできるようにするための振り返りのコーチングです。 「今回どのような結果が出ましたか?当初の目標と比べてどういうギャップがありましたか?」と結果を認識してもらいます。特に目標が未達成だったときですね。「何が要因として考えられますか?そのうち特に大きな要因と考えられるものはどのようなものがありますか?そう考えるのはなぜでしょうか?」ということで、要因の妥当性を本人に検証してもらいます。 「その要因が起きたのはどういう理由でしょうか」と要因を深掘りして、「もう一度やるとすればどういうことは改善できたのでしょうか。今回の分析を踏まえて、今後はどのような方針で臨むと良いでしょうか。では、この面談が終わった後は何を行いますか」ということで、失敗から学んで次は同じことを繰り返さないように、もっと良い仕事ができるようにメンバーが自走するためのフレームです。
これ、AIに対してやるのもすごい有効ですね。AIでワークフローなどを組むと、複雑だったりすると途中で止まってしまったり、失敗したりするじゃないですか。そのときにAIに聞くわけです。「今回はどういう結果でしたか?」「ここで詰まって止まってしまいました」「それってなぜですか?どういう風にすべきですか?」と考えさせると、AIが自分でワークフローを強化することもできるので。こっちはAIのプロではないから細かく見られないときに、「自分で解決してください」という感じで聞くのはありですね。
AIってどうしても聞いて答えをもらうという感じですけれど、AI自身に考えさせるというのもあるんですね。
とても大事だと思います。佐々木さんも私もエンジニアではないので、非エンジニアがAIを使いこなすときにコーチングはすごく有効な技術だと思います。
AIにまでコーチングしないといけないんですね。
その次は経験学習コーチングです。これは何かのプロジェクトで成功したときや、失敗したときでも本人にとって勉強になったなと思う経験があれば、すかさず差し込んでほしいですね。 「今回どういう経験をしましたか?具体的にはいつ誰とどのようなことをしたのですか?当初想定していなかったことはどういう出来事でしたか?」と聞きます。想定していなかったことの中にタフな経験や学びが隠れているので、それを引き出します。 「今回の結果はどういう風に捉えていますか?」と聞き、「なんとか達成しました」「惜しくも未達成でした」という話の後に、「今回の出来事から学べたことはどういうことがありましたか?具体的にはどのような出来事からそれを学びましたか?今回の学びをこれからの仕事にどう生かしていきますか?では、この面談が終わった後は何を行いますか?」と進めます。 結局、誰かを育てるときは何かを教えることも大事ですが、その人が自分で経験したことからちゃんと学んで言語化してもらう。言語化できれば、またそれを生かすときに本人が引き出せるようになるので、これが一番良い育成だと思うんですよね。
しかも、この経験学習コーチングをやってストック化しておいて、AIに読み込ませると組織の知識も上がりそうですね。経験って言語化を問われないとしないですからね。
今の佐々木さんの方法だと、本当にそれがPIVOTさんにしかない差別化の要素になったりもしますよね、組織の学習というものが。
最後にキャリア構築コーチングということで、キャリアに悩んでいる、ちょっと自分はどうしようかモヤモヤしている、というときに使うといいかなと思います。 キャリアにおける理想の最終ゴールはどのようなものかを聞きます。ただ、これを聞かれてもなかなか答えられる人は少ないと思います。「先のことなんて分からないよ」となると思うので、「ベンチマークとなるような人はいますか?」と聞きます。これは社内の人でも社外の人でも、知らない人でもいいと思います。「直接面識はないけれどLinkedInで見たこういう人」とか「Xで見たこういう人」でもいいです。
もっとスパンを縮めると、キャリア目標も具体化すると思います。最終ゴールと言われるとぼんやりしますが、「1年後だと目標はどのようになりますか?」と時間を短くしてあげる。そして「現在はどのような位置付けなのでしょうか?目標達成に向けてあなたの能力や経験など足りないところはありますか?」と現状を確認します。 次にリソースの確認ですね。「キャリア目標達成に向けて活用できるリソースはどのようなものがありますか?」ということで、社内にどういう機会があるか、どんなチームメンバーがいるか、関わっている事業で何かチャンスはあるかなどを聞いた上で、「じゃあ今後どういう方針でキャリア目標達成に向かっていきますか?」と聞きます。そしてアクションとして「方針を実現するためにはどのようなアクションが考えられますか?その中でも特に重要なものはどれですか?では、この面談が終わった後は何を行いますか?」と進めます。
ここまでお話しするとお気づきになったかもしれませんが、最初の目標達成コーチングをアレンジして他の3つを生成したような感じですよね。型は変わっていないのを、シーン別にチューニングしたものです。 これはセットでお手元に持っておいて、「要因分析のシーンで使える」「経験学習のシーンで使える」「キャリア構築で使える」「目標達成で使える」という感じで、4つの質問の型があるからそれを頭の中から引き出す、という感覚で使っていただくのが、マネジメントにおいてコーチング技術を使うという意味では良いかなと思います。プロのコーチを目指す必要はないので。
最後にまとめなのですが、コーチングというと「相手に聞くことですよね」となりますが、例えばこれはコーチングですかという話です。 「佐々木さん、東京都の人口って何人いると思いますか?」と質問して、何人くらいですかね?
1,500万人ですかね。
「正解は1,400万人でした」という、これってコーチングじゃないですよね。クイズです。壁打ちもそうですね。「新規事業のアイデアでこういうのがあるんだけど」と佐々木さんにお話しされたときに、「でも私はこう思いますよ」と私が自分の意見を言ったとしたら、それもコーチングではなく壁打ちですよね。 「自分が答える」と「相手が答える」という軸の中にティーチング、クイズ、壁打ち、コーチングが存在しているのですが、明確な境界線があります。相手の答えを正とするのか、自分の考えをそこで伝えたりするのかで明確に違います。クイズと壁打ちはコーチングではありません。自分が答えを示したり自分の意見を言いたいのか、相手の答えを正として相手に突き進んでほしいのか。コーチングは、相手が自分で考えて自分で答えるから効果的なんですよね。人から言われたことよりも、自分で見出したことの方が動きやすいと思うので、今回はどちらのアプローチを取るのかで分けていただくと良いかなと思います。
コーチングという概念が日本で広がってきたのって、どれくらいの時間軸ですかね?団塊の世代とかがコーチングしているイメージは全然湧かないなと思って。自分の自慢話とかの方が多いイメージじゃないですか。
我々ビジネスパーソンで言うと大体同じ世代だと思うのですが、まさに10年前、15年前くらいから徐々に言われ始めた感じですかね。自分たちの上の世代がコーチングをやってくれるイメージはないですよね。相手から引き出すようなマネジメントはあまりなかった気がします。それについては怖い上司が多かったです。
コーチングがトレンドになったときに、「マネジメント=コーチング」になってしまうケースが結構あると思うのですが、私はそれは違うと思っています。シーンによって使い分けるべきです。冒頭の例の新卒社員で、まだ自社の商品を何も知らなくて説明がおぼつかないという人に要因分析コーチングをやったとしても、「いや、分からないです。まずは商品を教えてください」という話になると思います。シーンによりますので、「マネジメント=コーチング」とか「1on1=コーチング」と固定してしまうのも良くないですし、ちゃんとシーンによって選択することが大事かなと思います。
コーチングとは何たるか、ここまで明確な説明は初めて聞きました。
本当ですか、ありがとうございます。
今回のコーチングとティーチング、この対話の技術についてもリアルで学べる機会があるということですね。
10月14日にリアルゼミの第4回を開催します。このリアルゼミでロールプレイングもしっかりやっていきたいと思います。ロールプレイングといっても、自由演技でコーチングをするのではなくて、「型でコーチングをする」というのはどういうことかを皆さんと一緒にやっていきたいなと思います。
対話の技術のところは座学するだけではなく、実際にロールプレイングしたり実践することが何より大事な部分ですね。知識だけあってもしょうがないですからね。
そうですね。なので、ぜひいらしてほしいですね。
席もわずかですがまだありますので、来たい方はすぐ申し込んでください。ということで、長村さん、本日もありがとうございました。
ありがとうございました。
次回はフィードバックということで、対話の技術の3つ目ですね。マネジメントの中でも最も気が進まない仕事ですよね。フィードバックというのは、耳が痛い事実を伝えてメンバーを立て直すもの、相手を立て直す覚悟ではっきり伝える「誠実ゾーン」なのですが、誠実ゾーン以外ではフィードバックは成立しないと思います。 内容がどんどん厳しくなればなるほど、相手は取り乱すんですよね。取り乱したときに大事なのは、ミーティングを切り上げることです。その場で決着させようとしないというのが一番のポイントですね。厳しいフィードバックを相手が受け止めるのは、その場の一席では無理です。 1、2週間置いて怒りが増幅するのを防ぐためのポイントもありまして、フォローメンバーを用意することで、内省しきれずに不満が増幅することを抑えられるかなと思います。感情の天井をちゃんと抑えるための仕込みをした上で、しっかり伝えるのが大事かなと思います。
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