「モーター界のTSMC」を掲げるWestmag、フィジカルAIのボトルネックを米国内の量産で押さえられるか

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概要

FoundXの番組「FoundX Review Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで整理・分析して紹介している。今回取り上げたのは、米国でドローン用モーターとロボット用アクチュエーターを設計・量産するWestmag(Western Magnetics Company)である。番組の中心的な問いは、フィジカルAIの「筋肉」にあたる部品を、中国に依存したサプライチェーンから米国内の製造へ移すことが事業として成り立つのか、という点にある。解説役はWestmagの戦略を「発明ではなく量産能力で勝負する会社」として紹介し、聞き手はコスト、中国との競争、資金規模などについて疑問を投げかけた。番組は冒頭で、AIを使って情報を整理しているため、内容が古かったり誤っていたりする可能性があると断っている。

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前置き:Dealroomの指標から見た東京

本題の前に、Dealroomの「Global Tech Ecosystem Index 2026」が紹介された。世界の都市・地域にある325のスタートアップ・エコシステムを、投資額、イノベーション、人材、成果などの指標で評価し、ランキングにした資料である。

この資料で東京はアジア太平洋地域の8位に入っている。ただし世界全体ではトップ20に入っていない。トップ20にはシリコンバレーのほか、アジアからは北京、上海、ソウル、シンガポールが入っているという。急成長している都市として目立つのはシンガポール、インド、中国、オーストラリア、ニュージーランドの都市で、東京は伸びている都市というより、ある程度成熟した都市として評価されているようだと紹介された。セクター別では、AIと防衛で東京は比較的上位に出てくる。そのため東京で起業するなら、AIや防衛とつながるテーマに東京らしい利点があるかもしれない、というのが話者の見立てである。聞き手は、東京都がDealroomと組んで英語で情報を発信するページ(tokyo.dealroom.co)を作っていることも付け加えた。

なぜWestmagを取り上げたのか

解説役がWestmagを選んだ理由は、AIがソフトウェアからハードウェアへ広がるなかで、アクチュエーターがボトルネックだと言われているからだ。ヒューマノイドロボットではアクチュエーターがコストの40〜60%を占めるとも言われており、フィジカルAIの時代にはここが鍵になりそうだと考えたという。

Westmagはサンフランシスコを拠点に、ドローン用モーターとロボット用アクチュエーターを米国内で設計・量産するハードウェアスタートアップである。解説によれば、モーターやそれに使うネオジム磁石の供給は90%が中国に依存している。2025年の米国の規制によって、中国製部品を新たに採用することが実質的に締め出され、米国内の調達へ切り替える動きが起きている。Westmagはこの規制を追い風にし、地道な量産そのものを参入障壁(モート)にしようとしている、と整理された。

聞き手は、米国内に量産ラインを作ること自体はできても、コスト面では厳しいのではないかと疑問を示した。解説役はコストが高くなることを認めたうえで、Westmagは初期には防衛のように高くても買う産業を対象にし、規模の拡大と自動化でコストを下げる狙いだと説明した。

顧客の課題:小口顧客として後回しにされる

ターゲット顧客は、米国のドローンメーカーと、ヒューマノイドなど次世代ロボットのOEMである。こうした企業が中国やアジアのサプライヤーからモーターやアクチュエーターを調達すると、サプライヤー側から見れば小口の顧客になる。そのため仕様変更や不具合への対応がサプライヤーの都合で後回しにされることがある。顧客側はもっと速くイテレーションを回したいのに、それができず、開発スピード全体が落ちてしまうという。

それなら自社でモーター工場を作ればよいとも考えられる。しかし工場には大規模な設備投資とノウハウが必要で、1社分の需要では投資を回収しにくい。そのため各社とも自社生産には踏み込めていない、というのが解説の説明である。

聞き手が反復サイクルの遅れの程度を尋ねると、解説役は、海外に発注すると仕様変更、試作、輸送、関税などを含めて数カ月かかることも珍しくないと答えた。国内生産なら数日から数週間単位で届くため、短い期間で新しいプロトタイプを試せるという。中国メーカーが米国に工場を建てる可能性については、やろうとしている会社があるという噂レベルの話はあるものの、規制や安全保障の観点から、特に防衛や重要インフラ向けではかなり難しい状況だと説明された。

解決策:Factory 01での垂直統合と共通アーキテクチャ

Westmagの解決策は、自社で作ることである。サウスサンフランシスコにある「Factory 01」で、設計だけでなく巻線や組み立てまで一貫して行う垂直統合型の体制をとっている。

解説役が特に面白いと評価したのは、共通アーキテクチャの考え方だ。ドローン用モーターとロボット用アクチュエーターは最終製品としては違うが、中心にあるコアのモーター構造は共通だという。同じ部品や同じ工程を使えるため、製品が異なっても規模の経済が働き、コストを下げられる。Westmagはこれを狙っている。

トラクションとしては、ステルス期間中にすでに数万ユニット規模の契約を受注していたという。解説役はここから一定のニーズがあると読んでいる。聞き手が顧客名を尋ねると、非公開のため契約の詳細は分からないとしたうえで、Andreessen Horowitz(a16z)などの発表によれば、ドローンまたはロボティクス企業から長期の購入契約があるとされていると説明した。

なぜ人件費の高いサウスサンフランシスコなのかという質問も出た。解説役は、人件費は確かにとても高いと認めつつ、トップクラスのロボティクス企業やその技術者がシリコンバレーに集まっていることを理由に挙げた。顧客の近くにいれば初期のイテレーションを高速で回せる、という判断だという。

狙う市場:ドローンからヒューマノイドへ

当面の市場は、防衛用や商用ドローンで、数十万から数千万ユニット規模の需要だと紹介された。最終的な狙いは、2060年までに数十億台が普及すると言われるヒューマノイドの市場である。ドローンにはすでに実需があるので、そこで工場の稼働率と技術を高め、ロボット市場が大きくなるタイミングで十分な供給能力を持っておく、という戦略である。

聞き手が100億ユニット規模という数字の根拠を尋ねると、解説役は長期的な業界予測に基づく計算だと答えた。ヒューマノイド1台あたり20個ほどのアクチュエーターが使われるため、普及が進めば市場は100億ユニット規模になる、という考え方だという。

ビジネスモデルとIdiot Index

ビジネスモデル自体はモーターとアクチュエーターを売るというシンプルなものだ。論点は、どう収益性を高めるかにある。解説によれば、Westmagは3段階を想定している。フェーズ1では、防衛などに向けた高単価のオフテイク契約で利益率を高く確保する。次に、量産効果と自動化によってプロセスが成熟し、歩留まりが上がり、製造コストが下がる。最終的には多品種をカタログ販売のプラットフォームで買えるようにし、中国製品と純粋なコストと性能で勝負できるようにする、という構想である。

聞き手は、自動化しても深圳のサプライチェーンの効率には及ばないのではないかと疑問を示した。解説役も、どこまで勝てるかは本当に分からないと認め、特に人手に頼る組み立て工程では難しいだろうと述べた。ただ米国にはソフトウェアとの連携や、完全自動化されたラインを作る力があり、それを導入して中国と同等の水準を狙う、というのがWestmag側の考え方だと説明した。

収益性を考えるための概念として、Idiot Indexも紹介された。イーロン・マスクがよく使う概念とされ、完成品の価格と、部品の原材料コストの比率を指す。この値が高いほど製造工程に無駄があるという意味になる。解説役は、その理屈ならレストランのシェフはすごいことになると冗談を交え、「idiot」は言い過ぎだという感想も述べた。ただ、限界まで安くすれば原材料費と同程度で作れるはずだ、という考えからこの名前がついているようだと説明した。

「モーター界のTSMC」という戦略

Westmagは、垂直統合をしながら水平に展開するプラットフォームを狙っている。比喩として掲げるのが「モーター界のTSMC」だ。ドローンなどの完成品は自社で作らず、他社の製品の基盤になるハードウェアの製造に特化する。製造工程では、ステーターの打ち抜きから磁石の仕上げ、巻線までを深く内製化する。これによって、ドローン、ヒューマノイド、産業用アームなど、あらゆるフィジカルAI企業の製造基盤になることを目指している。

ただし、すべてを内製しているわけではない。電磁鋼板には日本の素材を使うなど、外部も活用しているという。解説役の整理では、基本は内製による垂直統合で、その部品を幅広い顧客に提供する水平展開の会社である。

聞き手が、半導体ほどの参入障壁があるのかと尋ねた。解説役は、分かりやすい比喩である一方、半導体ほど大がかりな装置は必要ないと答えた。それでも、何百万個ものモーターを歩留まりよく、同一の品質で、自動で作ることはかなり難しいという。これを達成できれば大きな参入障壁になりうる、というのが解説役の見方である。

ロードマップと現在の生産状況

ロードマップは、ドローンから始めてロボットへ進み、その後は両方を組み合わせて提供するという単純なものだ。スタートアップが最初からロボティクスのような巨大市場を狙うと、設備投資のリスクが非常に大きくなる。そこで、実需があり、規制の追い風もあって確実に売れそうなドローン用モーターで最初のプロダクトマーケットフィットを狙う。そこで得た利益と量産ノウハウを、本命のロボット用アクチュエーターに転用していく計画だという。

現在の生産状況について、解説役は、Factory 01がどこまで稼働しているかは公表されていないと述べた。2026年6月にステルスが解除された時点で生産はすでに立ち上がっており、オフテイク契約の注文に応える準備を進めている状態のようだという。

競合とモート:Atlas Motion Systemsとの違い

競合の整理では、横軸に調達・規制面の安全性、縦軸に製造スケールの能力をとった2軸の図が示された。解説役自身も「この軸はちょっとずるい」と断ったうえで、Westmagは規制面の安全性をクリアし、製造スケールの能力も高い位置にあると整理した。

同じ領域を狙う競合としてAtlas Motion Systemsが挙げられた。中国に依存しないモーターのサプライチェーンを作るという点はWestmagと同じだが、Atlasは設計を米国で行い、量産はフィリピンで行っているという。この方針の違いが今後どう差になるかは、まだ分からないとされた。

Westmagのモートとしては、プロセスの習熟、規制への適合、上流工程の統合と共通アーキテクチャの活用、顧客との近さが挙げられた。聞き手が、プロセスの習熟という暗黙知はモーター生産のどこで効くのかを尋ねた。解説役は巻線工程を例に挙げた。髪の毛より細い銅線を切らずに、しかも隙間なく巻きつけるための力の制御が難しい。ほかにも磁石の接着や熱管理など、細かい制御の積み重ねがプロセスの習熟にあたるという。

最初の突破口と「Dumb Guy, Smart Guy」アプローチ

初期のターゲットは、規制によって中国製品からすぐに脱却しなければならない米国のドローンOEMだった。Westmagはこうした顧客に新しい発明を持ち込んだのではない。既存の中国製と同等スペックのモーターを米国内で安定して量産・供給することを優先した。ボリュームの大きい顧客に直接営業し、数万ユニット単位のオフテイク契約を得たという。

この考え方は、CEOが「Dumb Guy, Smart Guy」と呼んでいるものだと紹介された。モーターの物理的な効率はほぼ限界に近く、改善できても1%程度にとどまる。そうした改善より、量産できる体制を回すことが大事だ、という考え方である。

聞き手が、投資家はこのアプローチに納得したのかと尋ねた。解説役によれば、むしろ高く評価されたという。ハードウェアスタートアップには、製品開発に時間をかけすぎて資金が尽きる「R&Dの罠」がある。それを避け、最速で量産プロセスを立ち上げてキャッシュフローを改善する戦略が評価されたと説明された。

創業の経緯:モーターオタクのCEOと量産のプロ

CEOはDavid Hansen氏と紹介された。ボックスカーに住みながらモーター研究に没頭していたとされ、X(旧Twitter)ではモーター好きとして知られているという。解説役が実際にプロフィールを見に行くと「I like motors & actuators」と書かれていたそうだ。

Hansen氏は前職で、電動モビリティを開発する企業を創業していた。その際、モーターやアクチュエーターの調達で壁にぶつかったという。要件を満たす既製品が存在しない、言葉が通じない、小ロットなので相手にされず門前払いされる、といった経験である。さらに米国のOEM各社と話すうちに、どの会社も社内でのモーター自作に失敗しているという共通の構造的な欠陥に気づいた。

ただ、モーターオタクだけでは量産はできない。そこで、量産オペレーションや工場の立ち上げを経験してきたプロがCOOとして加わり、実行可能なチームができた。そうしてFactory 01の設立に至ったという。

投資家との出会いについては、a16z自身がサプライチェーンのリスクに気づき、モーター会社をインキュベートしようと探していたという話が紹介された。モーター界隈を探すうちにHansen氏にたどり着き、タコスを食べながら話して意気投合した、というエピソードがあるそうだ。

初期の学び:受託ではなく標準部品の安定供給へ

Westmagは当初、顧客が個社向けにカスタマイズした受託製造を求めていると想定していた。実際に求められていたのは、個別対応よりも、標準的で信頼できる部品を大量に安定供給するインフラだった。そこで個社対応をやめ、水平展開するプラットフォームへ舵を切ったという。

米国内へのサプライチェーン回帰についても、当初は5年から10年かかると見込んでいた。ところが2025年12月に規制が始まり、市場が一気に動いたという。聞き手が、FCCの規制発表の前から工場を準備していたのかと確認すると、解説役はそうだと答えた。ステルスで資金調達をして準備を進めていた最中に規制が発表され、大きな追い風になったという。

資金調達:1,100万ドルのシードで何ができるか

シードラウンドは2025年にクローズし、2026年に発表された。調達額は1,100万ドル(約16億円)で、複数の投資家が参加したという。解説役は、ソフトウェアなら大きな金額だが、ハードウェアではこれから始まる段階の額にすぎず、使い道は設備投資が中心だと説明した。

聞き手は、工場を作るには少なく、これだけの投資家が関わるにしては小さな金額だと指摘し、この資金の位置付けを尋ねた。解説役によれば、Factory 01は月に数万ユニットを作れる程度の初期の自動化ラインを立ち上げるためのもので、その用途なら足りる水準だという。より大きな工場を作るには、今後もっと大きな調達が必要になるとの見方が示された。

日本で同様の事業を作るなら

番組では、日本で同様のアイデアで起業する案をAIにも考えさせている。日本の強みとしては、電磁鋼板、精密加工、ロボット産業の集積といった資産が挙げられた。案は3つである。

  • 案A:防衛・インフラ向けの国産モータープラットフォーム。 市場は小さいが、国の支援を受けやすく、国産品が確実に求められる領域である。
  • 案B:ヒューマノイド特化。 日本が強いロボット産業の知見を活かし、次世代アクチュエーターに特化するモデル。
  • 案C:ファブレスのアグリゲーション型。 中小工場などが持つ既存設備をAIやソフトウェアで束ね、ひとつの巨大な仮想工場として販売するモデル。

聞き手は、案Cでは品質管理が重要になると指摘した。解説役は、ソフトウェアのレイヤーが鍵になるだろうと答えた。検査工程の自動化、AIによる画像判定、複数の工場から上がるデータの管理などを通じてトレーサビリティを保証するシステムが必要になる、という考えである。

番組が引き出した学び

最後に、解説役は学びを整理した。第一に、製造のスケールそのものがモートになりうるという点である。ハードウェアでは特許や設計図も大事だが、毎日何万個も安定して作れること自体が参入障壁になる。

第二に、マクロ環境の変化を自分たちの追い風に変えるという点である。地政学リスクや規制といった外部環境の変化は、既存企業には制約になりうるが、スタートアップにとっては参入の機会にもなる。そうした規制がないか探してみることが、アイデアを考える手がかりになるかもしれないという。

第三に、共通アーキテクチャを使って垂直統合しつつ水平展開するモデルは、他の分野でも成り立ちうるという点だ。自分の分野でもできないか考えてみると面白い、と解説役は述べた。さらに、ソフトウェアやAIモデルの背後にある、一見退屈に見える物理的なサプライチェーンのボトルネックに事業機会を探す視点も示された。

聞き手の感想:共通点とアメリカ特有の条件

聞き手は、退屈なボトルネックを狙いに行く発想は、AIデータセンターで同種のボトルネックが注目されているのと似ており、フィジカルAIではそれがモーターやアクチュエーターにあたるのではないかと感想を述べた。その一方で、FCCの規制によって需要が一気に変わるタイミングがあること、しかもそれがそこそこ大きな市場で起きることは、アメリカならではの条件だとも指摘した。

解説役はこれに同意し、日本にも当てはまる部分と切り分けて考えるべき部分があると応じた。そのうえで、トレンドがどう動くか、いまは見えていないが今後本当に必要になるものは何かを考えること自体は、何らかの形で活かせそうだと述べて番組を締めくくった。