施工業者を裏側から束ねる「エネルギー版Shopify」:Clooverはなぜ金融から参入したのか

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概要

FoundXの「Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで分析して紹介する番組である。今回取り上げたのは、ベルリン発のCloover(クルーバー)だ。解説役がClooverを選んだ理由は二つある。一つは、エクイティに比べて桁違いに大きいデット(借入)による資金調達をしている点である。もう一つは、以前紹介した米国のBase Powerとは異なるやり方で太陽光発電を広げようとしており、比較対象として面白い点である。番組は、Clooverが「分散型エネルギーのAIオペレーティングシステム」を目指しながら、なぜ最初は金融から入ったのかを中心に解説した。なお番組冒頭では、AIで情報を整理しているため一部に古い情報や誤りがありうると断っている。

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分散型エネルギーの「OS」という構想

Clooverは自らを分散型エネルギー、特に太陽光のオペレーティングシステムと位置づけている。ただし現在の主な収益源は、埋め込み型金融(エンベデッドファイナンス)だという。掲げる目標は10億人規模にエネルギー自立を届けることで、そのためにエネルギー経済の裏側を支えるインフラを作り直すとしている。

解説役は背景となる変化として、AIによる電力需要の増加、EV普及に伴う電力網の不安定化、EUで新築建物に太陽光パネルの設置を義務づける規制が入りつつあることを挙げた。家庭からの需要は増えている。しかし普及を支える資金と業務のインフラが追いついていない、というのがClooverの見方だという。

太陽光のバリューチェーンは長い。メーカー、卸、地域の施工業者、家庭があり、家庭は銀行や保証提供者、投資家から資金を借りる。導入後にはエネルギーマネジメントシステム(EMS)による料金最適化があり、その先には電力網への接続や補助金も絡む。Clooverはこの長い連鎖をつなぐ役割を担おうとしている。

既存の仕組みでは足りない理由について、解説役はこう説明した。小規模な住宅向け案件を大量かつ効率的に審査・処理することは、欧州の伝統的な銀行が得意としてこなかった。またClooverが言う「エネルギー自立」とは、各家庭が太陽光パネルと蓄電池を設置し、ヒートポンプも導入して、外部の送電網や化石燃料への依存を下げる、あるいは下げ切った状態を指すという。

狙うのは中小の施工業者

Clooverがターゲット顧客とするのは、地域の中小施工業者である。番組によれば、こうした業者が欧州の住宅向け再エネ設置の85〜90%を担っている。

消費者側の痛みは初期費用だ。太陽光、蓄電池、ヒートポンプを組み合わせると3万〜5万ユーロ、日本円で数百万円かかり、一括で払える家庭は多くない。施工業者側にも痛みがある。銀行ローンの審査に時間がかかるうちに顧客の熱が冷めて失注する。機器を先に仕入れるため資金繰りも苦しくなる。銀行ローンは事務作業が多く、成約を逃す原因になっている。さらに既存の銀行ローンは、再エネ設備がもたらす将来の光熱費削減効果を審査に十分織り込めていない。Clooverはこの点も問題視しているという。

聞き手が「なぜ大手ではないのか」と尋ねると、解説役はこう答えた。大手は自前でソフトウェアや金融機能を持っている。一方、市場の大多数を占める中小業者はそれを持つ体力がなく、痛みが大きい。

解決策:ワークフローと金融の一体化

Clooverが掲げる解決策は「Shopify for Energy」である。施工業者の業務に溶け込むプラットフォームとして、CRMによるワークフロー管理、ファイナンス、調達、EMSによる最適化を一体で提供する。高額な初期費用は、販売現場での即時審査によって月額のサブスクリプションや分割払いに変える。

解説役が特に大きいとした差別化要素は、独自のAI与信モデルである。過去の信用情報だけでなく、導入後の光熱費削減額も返済能力の評価に組み込む。加えて、見積もり、月額提示、審査、補助金の反映、導入までを施工業者の業務フローに組み込み、複雑な政府補助金を事前に立て替える機能も持つ。解説役は、Clooverの優位性はアルゴリズム単体ではないと見ている。データの取得、ワークフローの統合、資本調達、導入後の制御を組み合わせて初めて成り立つ、という見方である。

Clooverが示している導入効果は二つある。施工業者の売上高が平均30%増えたこと、そして見積もりから成約までの期間が5週間から2週間に短縮されたことだ。

聞き手は「ソフトウェアだけの提供もありえたのでは」と問うた。解説役によれば、Clooverは資金面こそ最大の阻害要因であり、金融機能なしには根本的に解決できないと考えたという。補助金の事前立て替えはリスクが高いのではという質問には、次のように答えた。確実な公的補助金制度を把握し、手続きをシステム化することで回収の確実性を高めている。リスクはゼロではないが、十分に緩和できると捉えているようだ。

市場規模と追い風、そしてドイツから始めた理由

番組は欧州市場の規模を次のように紹介した。クリーンエネルギー移行への年間投資額は約6,600億ユーロ(約100兆円)にのぼる。ただしこれはクリーンエネルギー全般の数字で、より絞った市場としては、欧州の約1億6,000万世帯に未導入の家庭がある。Clooverはドイツ、スイス、スウェーデン、オランダ、オーストリアで事業を展開しており、すでに100の施工業者を獲得しているという。

成長のドライバーとして挙げられたのは、ロシア産ガスへの依存から脱却するというエネルギー安全保障の文脈、ヒートポンプやEVの急速な普及、各国の補助金制度である。太陽光は2025年にやや落ち込んだものの、大きく伸びてきたと解説役は述べた。一方で、政策変更や金利変動によって需要が変わるリスクもある。ただし金融機能によって成約率を上げることが、そうした局面ではむしろ価値を高めるという見方もあるという。

最初の主要市場はドイツである。欧州最大の市場であることに加え、ロシア産ガスからの脱却や原発停止が重なり、エネルギー転換の推進力が強いことが理由だとされる。

収益構造:手数料と金利スプレッドから、継続収益へ

Clooverは家庭、施工業者、ハードウェアメーカー、銀行や投資家の4者をつなぐ構造を作っている。家庭にとっての利点は、初期費用ゼロで設備を導入し、月々の光熱費をすぐに下げられることだ。月額にすると100〜150ユーロほど安くなるという。

収益は、融資成立時のオリジネーション手数料と、月々の返済から得るマージンである。つまりトランザクション手数料と金利が主な収入源だ。ただしClooverは、金融単体から始めて、最終的にはEMSを通じた電力の最適化やダイナミックプライシングによる継続的な収益モデルへ移行しようとしている。資本の流れとデータの流れの両方を自社プラットフォームに取り込むことが狙いだと解説役は説明した。ハードウェアメーカーについては、施工業者の裏側に位置し、施工業者の販売力が上がれば自社製品の流通も増えるため関与している、という説明だった。

B2B2Cのアセットライト戦略

戦略面で解説役が強調したのは、Clooverが自ら巨大な施工業者になることを避けている点である。施工部隊やハードウェアを自社で持つBase Powerや、ドイツの1Komma5°のような垂直統合型とは異なり、アセットを軽くした「イネーブラー」として、市場の85%を占める無数の中小施工業者を裏側から束ねる。1件あたりの利益や売上規模は小さくなるかもしれないが、資本効率が良く、広く展開できる可能性がある。10年後の理想像は、メーカー、施工業者、家庭、投資家のすべてがClooverのAPIの上で取引する、分散型エネルギー経済の共用インフラになることだという。

聞き手は解約のリスクについても尋ねた。解説役は、CRMなどの業務SaaSがオペレーションに組み込まれれば強くロックインできる、資金提供以外の機能を提供することで離脱リスクを下げられる、と答えた。大手が中小向けにシステムを開放する可能性については、ありえなくはないとした。ただしEnpalなどの大手は自社ブランドで顧客まで囲い込む統合を目指しているため、仮にシステムを開放しても中立的な共用インフラにはなりにくい、というのが解説役の見立てである。

一方で解説役は留保も付けた。アセットライトとはいえ、金融は重い。施工や在庫のリスクは持たないが、補助金の前払いを含めてデット調達とバランスシート管理が必要になり、その意味では資本集約的である。この難しさは、同時に参入障壁にもなるという。

金融→業務SaaS→エネルギーOSの3段階

Clooverの成長ステップは3段階で整理された。第1段階は、最も痛みの強い資金繰りと初期費用を解決する埋め込み型金融を「楔(ウェッジ)」にして、施工業者に強く食い込む。第2段階は、見積もりや発注を統合するCRMなどの業務SaaSを提供し、日々の業務インフラとして定着させる。第3段階は、各家庭の機器を制御し電力市場と連携させるエネルギーOS(EMS)へ広げ、顧客生涯価値を最大化する。解説役はこの流れを「お金で懐に入り、業務で定着させ、データで長期的なプラットフォーム価値を生む」とまとめた。

現在地について解説役は、第1段階をほぼ終えて強いトラクションを得ており、第2段階のSaaSを深めつつ、第3段階のエネルギー管理への投資を始めた段階だと見ている。また、当初はSaaSを狙っていたものの、施工業者にとって失注の最大要因は業務フローより資金の手当てであり、金融を解決するほうが導入のハードルが圧倒的に低かったため、金融へピボットしたようだとも述べた。

競合とのポジショニング

ドイツには太陽光関連のスタートアップが多い。解説役はClooverの立ち位置を三方向の比較で整理した。D2Cの統合ブランドであるEnpalに対しては、施工はせず施工業者を支援する金融インフラに集中する。SaaSのみを提供するOpusFlowのような企業に対しては、金融機能の有無で差別化する。伝統的な銀行に対しては、施工現場に組み込まれたUXと、光熱費削減を加味したAI与信の速さで勝負する。防御の源泉(モート)としては、現場業務への統合、将来のエネルギー削減額を加味したAI、補助金の前払い、欧州投資基金(EIF)の保証による低コストの調達が挙げられた。

直接の競合としては、施工業者向けプラットフォームに金融を載せるZolarがある。ただしClooverほど包括的なスタックを前面に打ち出してはいない、と解説役は見る。どの攻め方が正解かはまだ分からない、とも付け加えた。そのほかにもOpenSolar、ERP寄りのOpusFlow、Base Powerに近い1Komma5°、Enpalなど多様なプレイヤーがおり、日本で同様の事業を考える人にとってドイツは面白い市場だという。

EIFについては補足があった。EUの公的機関で、ローンの焦げ付きリスクを一部保証する仕組みを持つ。これによりClooverは銀行から安く安全に資金を調達し、それを貸し出せる。公的機関がリスクを抑えることで、銀行も参加しやすくなっていると解説役は見ている。

初期の突破口:現場への張り付きとシンプルなCRM

番組が最も具体的に紹介したのが、初期の突破口である。施工業者にとって強烈な痛みは、顧客が買いたいと言っているのに銀行審査の間に失注してしまうことだった。対象は、月に数件から数十件を施工する地域の中小業者である。ClooverはMVPとして最初からフル機能のERPを作ることはしなかった。現場のタブレットで月額ローンの審査結果をすぐ提示できる、単機能のツールから始めた。

市場開拓(GTM)も泥臭く進めた。営業担当者が施工業者の現場に1日張り付き、業務フローを観察しながら導入を支援したという。現場の営業担当者は複雑な機能を使いこなせない。その結果シンプルなUIにたどり着き、それがキラー機能になった。

ここには失敗談もある。当初Clooverは、施工業者はすでにCRMを使っているのだから、既存CRMとAPI連携してファイナンス部分だけ作ればよいと考えていた。ところが創業者が現場に密着して観察すると、高度なCRMは使いこなされておらず、複雑なツールがむしろ足かせになっていた。そこでClooverはAPI連携の路線を捨て、機能を最小限に絞った独立型のシンプルなCRMを自社開発した。これが第2段階での最大の導入理由につながったという。

どれほどシンプルなのかという質問に対しては、一般的なCRMに統合されがちなマーケティング機能を削ぎ落とし、顧客情報の入力、現場でのローン見積もりの即時作成、契約締結に特化したUIにしている、と解説役は説明した。今後はプラットフォーム化に向けてEMSの拡充など機能が増えている印象だという。現在の即時審査は、APIで信用情報機関のデータと独自のエネルギー削減アルゴリズムを組み合わせ、現場でリアルタイムに与信判断を下す形で実現しているとされる。解説役は、Clooverが自ら資金を出している以上、判断を誤れば自社が損をするリスクも取っているのだろうと推測した。

チーム:SaaS×金融×プロダクト

創業者の人数は記事によって異なり、途中で変わった可能性があるが、現在は3名とされる。共同CEOのJodokはB2B SaaS企業の創業とスケールの経験を持ち、ソフトウェア面の実行を担う。もう一人の共同CEO兼CFOのピーターはクレジット市場とストラクチャードファイナンスで10年以上の経験があり、巨額のデット調達を経験したことが資金調達の鍵になったという。CPOのバレンティンは法務・コンプライアンスの背景とプロダクト開発経験を持ち、複雑な金融規制をクリアしながらプロダクトに落とし込む役割を担う。3人は「気候変動の解決には金融の再構築が必要」という共通認識で集まったとされる。

聞き手は、太陽光業界の出身者がいない点に着目した。解説役は、だからこそ初期に営業現場に何日も張り付いてドメイン知識を学んだのだろうと応じた。そのうえで個人的な見方として、単に現場に行けばよいという話ではないとも述べた。大きな市場を見据えてどこから入るかを決め、そのための知識を得に現場へ行った点が強かったのではないか、という指摘である。

資本構成と実績

解説役が「本当のすごさ」と評したのは資金調達の構造である。約2,200万のエクイティ(円換算で30億〜40億円程度)に加え、12億ドルのデットファイナンスを確保した。さらにEIFから3億ドル規模の保証を受け、合計で約1,800億円相当の資金枠を得たという。スタートアップではなかなか見ないバランスだと解説役は述べた。エクイティよりもデットをどう確保し、それを支える公的保証枠をどう引き出すか。それによって安価で長期的な資本を施工業者ネットワークへ大量に流し込めるようになり、それ自体が競争上のモートになった、というのが解説役の見方である。

実績として、2025年に売上が8倍に成長し、黒字を維持しながら1億ドル規模に到達、2026年には約5億ドルの流通を目指すとされる。いずれも会社発表ベースの数値だと解説役は断っている。

12億ドルものデットをスタートアップが得られた理由について、解説役は三つを挙げた。金融のバックグラウンド、EIFの制度を知って交渉し公的保証を取り付けたこと、設備による電気代削減のパフォーマンスデータを持ち、それを証明できたことである。黒字である点については、設備販売の粗利ではなくトランザクション手数料と金利スプレッドで稼ぐ金融モデルのため、規模が拡大すれば利益が出やすい構造だと説明した。ただし今後はこの資金を使って赤字を掘る可能性もある、とも述べている。

日本への応用:AIが挙げた案

番組では、Clooverのモデルを日本で展開する案をAIに考えさせた。前提は、単純なコピーではなく、FIT制度、集合住宅の多さ、地域工務店の強さといった日本の事情に合わせることである。出てきた案は次のとおりだ。

  • 地方工務店に特化し、災害対策としての蓄電池導入をフックに、販売用タブレットに即時ローンと補助金を組み込むモデル
  • 日本に多いマンションの管理組合向けに、EV充電器の導入、合意形成、ファイナンスを一括で提供するモデル
  • FIT期間が終わった住宅の蓄電池をネットワーク化し、機器制御と初期費用ゼロの設置を組み合わせるモデル
  • 信販会社が強い日本の事情を踏まえ、自社でデットを持たず、信販会社の裏側で再エネ専用のAI与信エンジンだけをホワイトラベルのSaaSとして提供するモデル

日本の補助金制度にも応用できるかという質問に対して、解説役はこう答えた。日本の補助金は複雑で入金までのタイムラグもあるため、それをソフトウェアで吸収することにこそペインがある。特に事前立て替え機能は、日本市場で強い差別化要因になりうる。

学びとして示されたこと

最後に解説役は、このケースからの学びを三つにまとめた。

一つ目は、大企業と正面から戦わず、ロングテールの中小企業を裏側から束ねるプラットフォームになるという方向性である。

二つ目は、机上ではなく現場の摩擦を探すことである。API連携のほうが楽だが、現場の営業担当者が迷わない泥臭い単機能ツールこそがPMFとロックインの鍵だった。解説役は、ビジョンを持ったうえで現場に行くことが大事だと述べた。

三つ目は、金融の実行力である。良いソフトウェアを作れば終わりではない。本当のペインが金融にあるなら、ストラクチャードファイナンスを使いこなして資本を増強することが、他社には真似できないモートになる。

解説役は視聴者に対し、全体の構造を見たうえで、自社のターゲット顧客の業務現場で言語化されていない小さな摩擦や失注要因を見つけてほしいと呼びかけた。聞き手は、制度やマクロ環境を味方につけて巨額の資金を動かしている金融面に驚いたと感想を述べた。解説役は、エクイティに対して桁違いのデットを組み合わせる戦い方もスタートアップにはできることを教えてくれる例だと応じた。そして、日本もパートナー企業や施工業者が多く地方に分散しているからこそ、このモデルを検討する価値があると述べて番組を締めくくった。