施工業者を裏側から束ねる「エネルギー版Shopify」:Clooverはなぜ金融から参入したのか
東京大学FoundXFoundXの「Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで分析して紹介する番組である。今回取り上げたのは、ベルリン発のCloover(クルーバー)だ。解説役がClooverを選んだ理由は二つある。一つは、エクイティに比べて桁違いに大きいデット(借入)による資金調達をしている点である。もう一つは、以前紹介した米国のBase Powerとは異なるやり方で太陽光発電を広げようとしており、比較対象として面白い点である。番組は、Clooverが「分散型エネルギーのAIオペレーティングシステム」を目指しながら、なぜ最初は金融から入ったのかを中心に解説した。なお番組冒頭では、AIで情報を整理しているため一部に古い情報や誤りがありうると断っている。
分散型エネルギーの「OS」という構想
Clooverは自らを分散型エネルギー、特に太陽光のオペレーティングシステムと位置づけている。ただし現在の主な収益源は、埋め込み型金融(エンベデッドファイナンス)だという。掲げる目標は10億人規模にエネルギー自立を届けることで、そのためにエネルギー経済の裏側を支えるインフラを作り直すとしている。
解説役は背景となる変化として、AIによる電力需要の増加、EV普及に伴う電力網の不安定化、EUで新築建物に太陽光パネルの設置を義務づける規制が入りつつあることを挙げた。家庭からの需要は増えている。しかし普及を支える資金と業務のインフラが追いついていない、というのがClooverの見方だという。
太陽光のバリューチェーンは長い。メーカー、卸、地域の施工業者、家庭があり、家庭は銀行や保証提供者、投資家から資金を借りる。導入後にはエネルギーマネジメントシステム(EMS)による料金最適化があり、その先には電力網への接続や補助金も絡む。Clooverはこの長い連鎖をつなぐ役割を担おうとしている。
既存の仕組みでは足りない理由について、解説役はこう説明した。小規模な住宅向け案件を大量かつ効率的に審査・処理することは、欧州の伝統的な銀行が得意としてこなかった。またClooverが言う「エネルギー自立」とは、各家庭が太陽光パネルと蓄電池を設置し、ヒートポンプも導入して、外部の送電網や化石燃料への依存を下げる、あるいは下げ切った状態を指すという。
狙うのは中小の施工業者
Clooverがターゲット顧客とするのは、地域の中小施工業者である。番組によれば、こうした業者が欧州の住宅向け再エネ設置の85〜90%を担っている。
消費者側の痛みは初期費用だ。太陽光、蓄電池、ヒートポンプを組み合わせると3万〜5万ユーロ、日本円で数百万円かかり、一括で払える家庭は多くない。施工業者側にも痛みがある。銀行ローンの審査に時間がかかるうちに顧客の熱が冷めて失注する。機器を先に仕入れるため資金繰りも苦しくなる。銀行ローンは事務作業が多く、成約を逃す原因になっている。さらに既存の銀行ローンは、再エネ設備がもたらす将来の光熱費削減効果を審査に十分織り込めていない。Clooverはこの点も問題視しているという。
聞き手が「なぜ大手ではないのか」と尋ねると、解説役はこう答えた。大手は自前でソフトウェアや金融機能を持っている。一方、市場の大多数を占める中小業者はそれを持つ体力がなく、痛みが大きい。
解決策:ワークフローと金融の一体化
Clooverが掲げる解決策は「Shopify for Energy」である。施工業者の業務に溶け込むプラットフォームとして、CRMによるワークフロー管理、ファイナンス、調達、EMSによる最適化を一体で提供する。高額な初期費用は、販売現場での即時審査によって月額のサブスクリプションや分割払いに変える。
解説役が特に大きいとした差別化要素は、独自のAI与信モデルである。過去の信用情報だけでなく、導入後の光熱費削減額も返済能力の評価に組み込む。加えて、見積もり、月額提示、審査、補助金の反映、導入までを施工業者の業務フローに組み込み、複雑な政府補助金を事前に立て替える機能も持つ。解説役は、Clooverの優位性はアルゴリズム単体ではないと見ている。データの取得、ワークフローの統合、資本調達、導入後の制御を組み合わせて初めて成り立つ、という見方である。
Clooverが示している導入効果は二つある。施工業者の売上高が平均30%増えたこと、そして見積もりから成約までの期間が5週間から2週間に短縮されたことだ。
聞き手は「ソフトウェアだけの提供もありえたのでは」と問うた。解説役によれば、Clooverは資金面こそ最大の阻害要因であり、金融機能なしには根本的に解決できないと考えたという。補助金の事前立て替えはリスクが高いのではという質問には、次のように答えた。確実な公的補助金制度を把握し、手続きをシステム化することで回収の確実性を高めている。リスクはゼロではないが、十分に緩和できると捉えているようだ。
市場規模と追い風、そしてドイツから始めた理由
番組は欧州市場の規模を次のように紹介した。クリーンエネルギー移行への年間投資額は約6,600億ユーロ(約100兆円)にのぼる。ただしこれはクリーンエネルギー全般の数字で、より絞った市場としては、欧州の約1億6,000万世帯に未導入の家庭がある。Clooverはドイツ、スイス、スウェーデン、オランダ、オーストリアで事業を展開しており、すでに100の施工業者を獲得しているという。
成長のドライバーとして挙げられたのは、ロシア産ガスへの依存から脱却するというエネルギー安全保障の文脈、ヒートポンプやEVの急速な普及、各国の補助金制度である。太陽光は2025年にやや落ち込んだものの、大きく伸びてきたと解説役は述べた。一方で、政策変更や金利変動によって需要が変わるリスクもある。ただし金融機能によって成約率を上げることが、そうした局面ではむしろ価値を高めるという見方もあるという。
最初の主要市場はドイツである。欧州最大の市場であることに加え、ロシア産ガスからの脱却や原発停止が重なり、エネルギー転換の推進力が強いことが理由だとされる。
収益構造:手数料と金利スプレッドから、継続収益へ
Clooverは家庭、施工業者、ハードウェアメーカー、銀行や投資家の4者をつなぐ構造を作っている。家庭にとっての利点は、初期費用ゼロで設備を導入し、月々の光熱費をすぐに下げられることだ。月額にすると100〜150ユーロほど安くなるという。
収益は、融資成立時のオリジネーション手数料と、月々の返済から得るマージンである。つまりトランザクション手数料と金利が主な収入源だ。ただしClooverは、金融単体から始めて、最終的にはEMSを通じた電力の最適化やダイナミックプライシングによる継続的な収益モデルへ移行しようとしている。資本の流れとデータの流れの両方を自社プラットフォームに取り込むことが狙いだと解説役は説明した。ハードウェアメーカーについては、施工業者の裏側に位置し、施工業者の販売力が上がれば自社製品の流通も増えるため関与している、という説明だった。
B2B2Cのアセットライト戦略
戦略面で解説役が強調したのは、Clooverが自ら巨大な施工業者になることを避けている点である。施工部隊やハードウェアを自社で持つBase Powerや、ドイツの1Komma5°のような垂直統合型とは異なり、アセットを軽くした「イネーブラー」として、市場の85%を占める無数の中小施工業者を裏側から束ねる。1件あたりの利益や売上規模は小さくなるかもしれないが、資本効率が良く、広く展開できる可能性がある。10年後の理想像は、メーカー、施工業者、家庭、投資家のすべてがClooverのAPIの上で取引する、分散型エネルギー経済の共用インフラになることだという。
聞き手は解約のリスクについても尋ねた。解説役は、CRMなどの業務SaaSがオペレーションに組み込まれれば強くロックインできる、資金提供以外の機能を提供することで離脱リスクを下げられる、と答えた。大手が中小向けにシステムを開放する可能性については、ありえなくはないとした。ただしEnpalなどの大手は自社ブランドで顧客まで囲い込む統合を目指しているため、仮にシステムを開放しても中立的な共用インフラにはなりにくい、というのが解説役の見立てである。
一方で解説役は留保も付けた。アセットライトとはいえ、金融は重い。施工や在庫のリスクは持たないが、補助金の前払いを含めてデット調達とバランスシート管理が必要になり、その意味では資本集約的である。この難しさは、同時に参入障壁にもなるという。
金融→業務SaaS→エネルギーOSの3段階
Clooverの成長ステップは3段階で整理された。第1段階は、最も痛みの強い資金繰りと初期費用を解決する埋め込み型金融を「楔(ウェッジ)」にして、施工業者に強く食い込む。第2段階は、見積もりや発注を統合するCRMなどの業務SaaSを提供し、日々の業務インフラとして定着させる。第3段階は、各家庭の機器を制御し電力市場と連携させるエネルギーOS(EMS)へ広げ、顧客生涯価値を最大化する。解説役はこの流れを「お金で懐に入り、業務で定着させ、データで長期的なプラットフォーム価値を生む」とまとめた。
現在地について解説役は、第1段階をほぼ終えて強いトラクションを得ており、第2段階のSaaSを深めつつ、第3段階のエネルギー管理への投資を始めた段階だと見ている。また、当初はSaaSを狙っていたものの、施工業者にとって失注の最大要因は業務フローより資金の手当てであり、金融を解決するほうが導入のハードルが圧倒的に低かったため、金融へピボットしたようだとも述べた。
競合とのポジショニング
ドイツには太陽光関連のスタートアップが多い。解説役はClooverの立ち位置を三方向の比較で整理した。D2Cの統合ブランドであるEnpalに対しては、施工はせず施工業者を支援する金融インフラに集中する。SaaSのみを提供するOpusFlowのような企業に対しては、金融機能の有無で差別化する。伝統的な銀行に対しては、施工現場に組み込まれたUXと、光熱費削減を加味したAI与信の速さで勝負する。防御の源泉(モート)としては、現場業務への統合、将来のエネルギー削減額を加味したAI、補助金の前払い、欧州投資基金(EIF)の保証による低コストの調達が挙げられた。
直接の競合としては、施工業者向けプラットフォームに金融を載せるZolarがある。ただしClooverほど包括的なスタックを前面に打ち出してはいない、と解説役は見る。どの攻め方が正解かはまだ分からない、とも付け加えた。そのほかにもOpenSolar、ERP寄りのOpusFlow、Base Powerに近い1Komma5°、Enpalなど多様なプレイヤーがおり、日本で同様の事業を考える人にとってドイツは面白い市場だという。
EIFについては補足があった。EUの公的機関で、ローンの焦げ付きリスクを一部保証する仕組みを持つ。これによりClooverは銀行から安く安全に資金を調達し、それを貸し出せる。公的機関がリスクを抑えることで、銀行も参加しやすくなっていると解説役は見ている。
初期の突破口:現場への張り付きとシンプルなCRM
番組が最も具体的に紹介したのが、初期の突破口である。施工業者にとって強烈な痛みは、顧客が買いたいと言っているのに銀行審査の間に失注してしまうことだった。対象は、月に数件から数十件を施工する地域の中小業者である。ClooverはMVPとして最初からフル機能のERPを作ることはしなかった。現場のタブレットで月額ローンの審査結果をすぐ提示できる、単機能のツールから始めた。
市場開拓(GTM)も泥臭く進めた。営業担当者が施工業者の現場に1日張り付き、業務フローを観察しながら導入を支援したという。現場の営業担当者は複雑な機能を使いこなせない。その結果シンプルなUIにたどり着き、それがキラー機能になった。
ここには失敗談もある。当初Clooverは、施工業者はすでにCRMを使っているのだから、既存CRMとAPI連携してファイナンス部分だけ作ればよいと考えていた。ところが創業者が現場に密着して観察すると、高度なCRMは使いこなされておらず、複雑なツールがむしろ足かせになっていた。そこでClooverはAPI連携の路線を捨て、機能を最小限に絞った独立型のシンプルなCRMを自社開発した。これが第2段階での最大の導入理由につながったという。
どれほどシンプルなのかという質問に対しては、一般的なCRMに統合されがちなマーケティング機能を削ぎ落とし、顧客情報の入力、現場でのローン見積もりの即時作成、契約締結に特化したUIにしている、と解説役は説明した。今後はプラットフォーム化に向けてEMSの拡充など機能が増えている印象だという。現在の即時審査は、APIで信用情報機関のデータと独自のエネルギー削減アルゴリズムを組み合わせ、現場でリアルタイムに与信判断を下す形で実現しているとされる。解説役は、Clooverが自ら資金を出している以上、判断を誤れば自社が損をするリスクも取っているのだろうと推測した。
チーム:SaaS×金融×プロダクト
創業者の人数は記事によって異なり、途中で変わった可能性があるが、現在は3名とされる。共同CEOのJodokはB2B SaaS企業の創業とスケールの経験を持ち、ソフトウェア面の実行を担う。もう一人の共同CEO兼CFOのピーターはクレジット市場とストラクチャードファイナンスで10年以上の経験があり、巨額のデット調達を経験したことが資金調達の鍵になったという。CPOのバレンティンは法務・コンプライアンスの背景とプロダクト開発経験を持ち、複雑な金融規制をクリアしながらプロダクトに落とし込む役割を担う。3人は「気候変動の解決には金融の再構築が必要」という共通認識で集まったとされる。
聞き手は、太陽光業界の出身者がいない点に着目した。解説役は、だからこそ初期に営業現場に何日も張り付いてドメイン知識を学んだのだろうと応じた。そのうえで個人的な見方として、単に現場に行けばよいという話ではないとも述べた。大きな市場を見据えてどこから入るかを決め、そのための知識を得に現場へ行った点が強かったのではないか、という指摘である。
資本構成と実績
解説役が「本当のすごさ」と評したのは資金調達の構造である。約2,200万のエクイティ(円換算で30億〜40億円程度)に加え、12億ドルのデットファイナンスを確保した。さらにEIFから3億ドル規模の保証を受け、合計で約1,800億円相当の資金枠を得たという。スタートアップではなかなか見ないバランスだと解説役は述べた。エクイティよりもデットをどう確保し、それを支える公的保証枠をどう引き出すか。それによって安価で長期的な資本を施工業者ネットワークへ大量に流し込めるようになり、それ自体が競争上のモートになった、というのが解説役の見方である。
実績として、2025年に売上が8倍に成長し、黒字を維持しながら1億ドル規模に到達、2026年には約5億ドルの流通を目指すとされる。いずれも会社発表ベースの数値だと解説役は断っている。
12億ドルものデットをスタートアップが得られた理由について、解説役は三つを挙げた。金融のバックグラウンド、EIFの制度を知って交渉し公的保証を取り付けたこと、設備による電気代削減のパフォーマンスデータを持ち、それを証明できたことである。黒字である点については、設備販売の粗利ではなくトランザクション手数料と金利スプレッドで稼ぐ金融モデルのため、規模が拡大すれば利益が出やすい構造だと説明した。ただし今後はこの資金を使って赤字を掘る可能性もある、とも述べている。
日本への応用:AIが挙げた案
番組では、Clooverのモデルを日本で展開する案をAIに考えさせた。前提は、単純なコピーではなく、FIT制度、集合住宅の多さ、地域工務店の強さといった日本の事情に合わせることである。出てきた案は次のとおりだ。
- 地方工務店に特化し、災害対策としての蓄電池導入をフックに、販売用タブレットに即時ローンと補助金を組み込むモデル
- 日本に多いマンションの管理組合向けに、EV充電器の導入、合意形成、ファイナンスを一括で提供するモデル
- FIT期間が終わった住宅の蓄電池をネットワーク化し、機器制御と初期費用ゼロの設置を組み合わせるモデル
- 信販会社が強い日本の事情を踏まえ、自社でデットを持たず、信販会社の裏側で再エネ専用のAI与信エンジンだけをホワイトラベルのSaaSとして提供するモデル
日本の補助金制度にも応用できるかという質問に対して、解説役はこう答えた。日本の補助金は複雑で入金までのタイムラグもあるため、それをソフトウェアで吸収することにこそペインがある。特に事前立て替え機能は、日本市場で強い差別化要因になりうる。
学びとして示されたこと
最後に解説役は、このケースからの学びを三つにまとめた。
一つ目は、大企業と正面から戦わず、ロングテールの中小企業を裏側から束ねるプラットフォームになるという方向性である。
二つ目は、机上ではなく現場の摩擦を探すことである。API連携のほうが楽だが、現場の営業担当者が迷わない泥臭い単機能ツールこそがPMFとロックインの鍵だった。解説役は、ビジョンを持ったうえで現場に行くことが大事だと述べた。
三つ目は、金融の実行力である。良いソフトウェアを作れば終わりではない。本当のペインが金融にあるなら、ストラクチャードファイナンスを使いこなして資本を増強することが、他社には真似できないモートになる。
解説役は視聴者に対し、全体の構造を見たうえで、自社のターゲット顧客の業務現場で言語化されていない小さな摩擦や失注要因を見つけてほしいと呼びかけた。聞き手は、制度やマクロ環境を味方につけて巨額の資金を動かしている金融面に驚いたと感想を述べた。解説役は、エクイティに対して桁違いのデットを組み合わせる戦い方もスタートアップにはできることを教えてくれる例だと応じた。そして、日本もパートナー企業や施工業者が多く地方に分散しているからこそ、このモデルを検討する価値があると述べて番組を締めくくった。
皆さん、こんにちは。FoundXの田です。
同じくFoundXのとです。
はい。いよいよ年度が明けて1回目の収録となりますが。
はい。開けてしまいましたね。
開けてしまいましたね。
直近私たちは新しい期に向けてのマーケティングと、FoundXに参加いただく方向けのマーケティングをどうすればいいかなどを議論してます。
そうですね。今日も参加者の方に、前にどういう風なことを考えてどんなことに参加したかと聞きましたね。
そうですね。是非こういうYouTubeからも、皆さんの周りにいる起業家の方とかをFoundXにご紹介いただけるといいなと思いながら、はい、日々動画撮ってます。
そうですね。はい。繋がってるといいなと切に願いますね。
はい。何かいい起業家の、アイデアを考えてる方がいらっしゃったら、こういう動画あるよと皆さんからも伝えていただけると嬉しいです。ではそんなアイデアキャストのコーナーに入っていきたいと思います。
FoundX Review Startup IdeaCastでは、海外のスタートアップのアイデアをAIを使って分析して紹介していく番組です。これからアイデアを考える人たち向けの参考の情報を提供できればと思ってます。ディスクレーマーですが、AIを活用して情報を整理してるので、一部情報が古かったり間違ってる場合があります。ファクトを重視される場合は必ずご自身で調べるようお願いいたします。本キャストはあくまで、ここからアイデアの参考情報や考え方を引き出すということを目的としています。今日紹介するスタートアップはClooverです。
はい。こちらはどうして選んだんでしょうか?
そうですね、最近少し面白い資金調達、デットがかなり大きい資金調達をしていて、すごい面白いなと思ったところと、やはりこの太陽光パネルをどのように広げていくのか、太陽光発電を広げていくのかというところで、以前紹介したBase Powerとまた違うやり方でやろうとしているところで、比較という意味でも面白いかなと思って、このClooverを紹介しようと思いました。
はい。このClooverですが、簡単に言うと、分散型エネルギー、特に太陽光とかのオペレーティングシステムと書いてますが、主にエンベデッドファイナンスですね、埋め込み型の金融を今の主な収益源にしているベルリンのスタートアップになっています。本当に分散型エネルギー向けのAIオペレーティングシステムっていうのを目指しながら、最初はこの金融というところから入ろうとしている。そうしたところが面白いかなと。あとはデットの調達がかなり大きいというところで、その背景なども今日お伝えしていければいいなと思ってます。
では早速次のページに行きたいと思います。この全体の構造というところなんですけれども、Clooverはですね、この10億人、EU圏プラスアルファみたいなところだと思いますが、人にエネルギー自立を届けていく、そのインフラの再構築をしていく、特にエネルギー経済のバックとなるようなシステムをやっていくということを主なところにしています。背景にあるマクロな構造変化としてはですね、AIによる電力需要の構造であったりとか、EV普及に伴うグリッドの不安定化というものがある。さらにEUの規制として、新築のものに関してはソーラーパネルの設置義務化とか、そういった規制が入りつつあるというところです。
一方で、需要はそのようにして民間から、あるいは家庭からもかなり来ているものの、普及を支える資金や業務のインフラがまだそれに追いついていないということで、この技術革新である1つの太陽光パネルとか太陽光発電というものを、より普及させていくためには、それを必ず普及させるための金融インフラであったりとか業務インフラがあるというような考え方で今回のこのビジネスの構造を見ているというのが、このスタートアップの背景になっています。
概ねこうしたバリューチェーンを見ていくと、メーカーから卸があり、地域の施工会社、施工業者がいて、そして家庭がいて、その家庭がいわゆる融資とか、銀行さんとか、保証提供とか投資家とかいうところに今お金を借りて、そしてそこでつけて、そこからさらに導入後のエネルギーマネジメントシステムとか料金の最適化、さらにそこから先に系統とか、グリッドについてとか、交流の電力とか、あるいは場合によっては補助金っていうものもあって、結構すごい長いバリューチェーンがあると。ここを繋いでいくっていう風な役目をしようとしている、あるいはそこは足りてないんじゃないかというのがClooverの背景なのかなという風に思います。
既存のような仕組みだとダメな理由ってどの辺りにあるんでしょう?
そうですね。まさにその融資みたいなところ、既存の伝統的な銀行などもやっているところだと思いますけれども、小規模な住宅向けの案件を大量かつ効率的に審査していく、あるいは処理していくというところは、EUの銀行とかは得意にしてはいないということがあり、こうしたインフラが既存のインフラだとなかなか追いつけないというところが言われてます。
Clooverさんが目指している最終的なエネルギーの自立っていうのはどういった状態なんでしょうか?
そうですね。彼らが言うには、各家庭がソーラーパネルや蓄電池を設置していて、さらにヒートポンプなどを導入して、外部の送電とか化石燃料への依存度を下げていくという状態、あるいは下げ切った状態というのがエネルギー自立だという風に考えてるです。
そんな課題ですね。少し話してしまいましたが、彼らがどこを狙っているのか。全体の課題は先ほどお話しした通りですが、彼らが狙ってる課題、特にターゲット顧客に関しては地域の中小の施工業者です。実はですね、彼ら彼女らが欧州の住宅向けの再エネの設置シェアの85%から90%になっていると言われています。
消費者側の痛み、ペインを考えてみると、ソーラーとか蓄電とかヒートポンプ、これらは組み合わせると導入費用が結構かかると。3万から5万ユーロなので、日本円にして結構、数百万円かかってしまいますと。これを一括で払える家庭はそこまで多くはないっていうのが1つ、消費者側のペインになりますと。
一方で施工業者ですね、それを設置していくような業者さんのペインとしては、銀行のローンの審査とかに時間がかかってしまったりとか、そのせいで、その間に顧客の熱が冷めて失注するということもあったりとか、機器を先行的に仕入れることによってキャッシュフローが施工業者も厳しくなっていくということがあったりはすると。そこに対して既存の銀行ローンもあるんですけれども、この銀行ローンはですね、紙業務が多いと、手数がかかってしまうということで、成約を逃してしまうみたいなところがあったりする。プラスして、この辺は解決策にちょっと関わるところですが、既存の銀行ローンは再エネの設備の将来の光熱費の削減効果というものを審査に十分に織り込めていないみたいな、そうしたところも彼らは問題として考えているところみたいですね。
なるほど。ターゲット顧客が中小の施工業者ってことですが、大手ではない理由ってどの辺りにあるんでしょうか?
そうですね。大手は自前でソフトウェアとか金融の機能を持ってるというところです。一方で、市場の圧倒的多数を占めるような中小の施工業者は、そうしたものを持たずに、持つ体力がないので、そこのペインがすごく高いということがあり、そこを狙ってる。そうですね。ではそれをどう解決しようとしてるのか。
彼らが言ってるのはShopify for Energy、オブエナジーですね、というところです。解決策として、施工業者の業務に完全に溶け込むようなオペレーティングシステムだったりとか、Shopifyみたいなそういうプラットフォームというものを提供するというのが彼らの解決策です。より具体的には、ワークフロー管理、CRMであったりとか、ファイナンスであったりとか、調達、あるいはエネルギーマネジメントシステムによる最適化、これらを一体化して提供しているというところです。さらにもう1つ言うと、その高額な初期費用を、販売現場での即時審査による月額サブスクリプションで提供、分割払いで提供していたりとか、そういうところもやって、初期費用を落としつつ業務の非効率を効率化していくみたいな、そうしたツール群を提供しています。
差別化要素としては、彼らはいわゆる与信のAIをしてますというところがありますが、一方でプラスしてですね、将来のエネルギー削減額を審査に組み込む独自のAIの与信モデルというものを作っている。ここが非常に大きいと。さらにそれに加えて、さっき言ったワークフローですね、見積もりから月額、審査、補助金反映、導入後までを施工業者の業務フローにいかに組み込むかというところをやっている、というところが大きい。さらに、複雑な政府補助金を事前に立替えする、プレファイナンスするという機能を持っていて、まさにそのCRMからファイナンス、EMS、プロキュアメントまで、全てをうまく統合していくというモデルをやっている。
さらに先ほどのにプラスして言うとですね、この与信モデルに関しては、過去の信用情報だけではなく、導入後の光熱費の削減まで審査を行うということで、いわゆる信用の情報だけではなく、導入後のエネルギー節約も返済能力の評価に入れること。これが彼らのAI与信モデルの面白いところであり、そしてさらに、このワークフローを通じていくというところだという風に言われています。逆に言うと、Clooverの優位性はアルゴリズム単体ではなくて、そのデータの取得であったりとか、ワークフローの統合とか、資本の調達、あるいは導入後のその制御みたいなところで成立させていくというところが大きいのかなと思っています。
それでですね、導入後の効果としては、施工業者の売上高が平均30%増加しているという風な効果があったりとか、見積もりから成約までの期間が5週間から2週間という風に大幅に短縮できているというのが、彼らの今現状の状況だと言われています。
いや、すごいですね。ソフトウェアだけの提供も全然あり得るなと思ったんですけど、やっぱそこだけでは終わらなかったんですね。
そうですね。やはりこの資金面が最大の阻害要因であるという風に彼らは考えて、金融機能がなければ根本的には解決できないということで、やはりそのファイナンスの機能というものを持っていこうとしたみたいですね。
結構その事前に支払うってかなりリスク高いような風にも思うんですけど、どうやって回収を担保できてるんでしょうか?
そうですね。そこはおそらくリスクを取ってるところではあるとは思いますが、一方で、確実なその公的な補助金制度をきちんと知っておくという風なこと。そして手続きをシステム化するということで回収の確実性を高めている、担保しているという仕組みを導入してるみたいですね。なので、リスクは取ってるので0とは言えませんが、十分ミティゲート、緩和できるリスクだという風に捉えてるみたいです。
では、この市場規模なんですが、欧州の市場規模を見てみます。欧州の市場規模に関しては、クリーンエネルギーの移行にかかる年間の投資額が約100兆円規模になっているという風に言われています。約6,600億ユーロですね。日本円だと100兆円。これは年間投資額です。ただこれはクリーンエネルギー全般なので、SAMの方を見てみますと、大体欧州のマスマーケットである約1億6,000万世帯に未導入の家庭が存在するということが言われています。さらにSOMとして、短期的に獲得できる市場としては、ドイツ、スイス、スウェーデン、オランダ、オーストリアで彼らは事業を展開していて、既に100の施工業者を獲得しているというところです。
それで成長のドライバーとしてはですね、ロシア産ガスへの依存脱却みたいなエネルギー安全保障の文脈が、この欧州ではかなり大きいというところで、太陽光はちょっと2025年は若干下がっちゃったみたいですけども、ただすごい欧州で伸びているというところがありますと。そしてヒートポンプとかEVの急速な普及があって、さらに各国の補助金制度を用意できているというところもあり、かなり規制とか、いろんな社会の流れに沿ってきているというところです。なので、市場はかなり巨大ですし、追い風は吹いている。一方で政策の変更とか金利の変動によって需要がちょっと変わる。2025年まさにそうしたところだったかもしれませんが、そうしたリスクもありつつ、ただ、金融機能によるその成約率の向上というところが、実はそうしたリスクにうまく対応していくことによって価値が高まるんじゃないかみたいな風なところもあったりするという風に言われてます。
EUといろんな国があると思うんですけど、最初とか、あるいは主要なターゲット市場っていうのはどの辺りになるんでしょうか?
そうですね。彼らも実はスウェーデンで1回色々話しててみたいな記事を読んだんですけども、実はドイツが最初の主要なターゲットです。なぜかと言うと、やはり欧州最大の規模の市場がドイツですというのと、かつロシア産のガスの依存から脱却するとか、あるいは原発の停止とか、そうしたものが重なって、エネルギー転換のすごい強いドライバーがあるというところが、このドイツを主要なマーケットにした理由だと言われています。
ではそこに対して、彼らのエンベデッドファイナンス、埋め込み型金融というものの仕組みを少し紹介したいと思います。Clooverのビジネスモデルは、家庭と施工業者、ハードウェアメーカー、そして銀行、あるいは投資家の4者をつなぐ、この構造というか、システムを提供しています。消費者、家庭にとっての最大のメリットは、初期費用0で設備を導入して、月々の光熱費を20〜30%削減できるということで、この辺りを月額にすると100から150ユーロぐらい安いみたいなことをすぐに実現できますと。
収益構造は、融資の成立時の組成の手数料と月々の返済の金利マージンから取ってきます。つまりそのトランザクションの手数料と月々の返済の利息が、彼らの主な収益になります。ただ、進化の方向性として、金融単体から始まって、最終的にはエネルギーマネジメントシステム、EMSを通じた電力最適化、ダイナミックプライシングとかによる継続的な収益モデルにどんどん移行していこうということをやろうとしてるみたいです。このモデルをちゃんと提供することによって、資本の流れ、お金の流れとデータの流れ、この両方を自分たちのプラットフォームにロックインできるんじゃないかということを考えてるみたいですね。なので本当に、いろんな銀行もあれば施工業者もあり、リースとかもやったりとか、いろんなことをやったりするとは思うんですけども、この複雑な構造をオペレーティングシステムとして運営していくということをやっているんですね。
なるほどです。ハードウェアのメーカーさんも関わってくるんですか?
そうですね。このハードウェアのメーカーは、具体的な施工業者の裏にあるというところだと思います。施工業者がうまく販売をすることによって、販売力が上がることによって、そのハードウェアメーカーも自社製品の流通量とか販売が拡大するというメリットがあるので、ハードウェアメーカーも関わってるんですね。
では、彼らはこの戦略をどのように取られてるのか、というところの話をしたいと思います。彼らはB2B2Cのインフラですという風にも言えるのかなと。自らが巨大な施工業者になっていくというところを避けているというのが彼らの戦略です。いわゆる自社で施工業者とか施工部隊とかハードウェアを持つというような、そのBase Powerみたいなものであったりとか、ドイツとかだと1Komma5°みたいな競合がいたりしますが、そうしたところではなくって、もうちょっとアセットはライトにしていくというのが彼らのポジショニングになるのかなと思います。あくまでイネイブラーとなっているプラットフォームになっているみたいなところがある。
ただ一方で、そうすることによって、大企業が独占していく、その垂直統合を狙っていく中、市場の85%とかを握るような無数のこの中小施工業者を裏側から束ねていくみたいな、そうしたアプローチで彼らはやっているというのが大きな違いなのかなと思います。この結果、1社あたりの利益は削られますし、1つあたりの利益は削られますし、売上という規模で見ると少なくなってくるかもしれませんが、資本効率はいいという風なところで、広く広がっていくことができるかもしれないということになっています。その結果、彼らとしては10年後の理想像としては、全てのメーカーとか施工業者、あるいは家庭、投資家が、ClooverのAPIの上で取引を行う、そうした分散型のエネルギー経済の共用インフラ、OSになっていくというのが、彼らの最終的な10年後の理想像だという風に言われてます。
結構ロックインを狙ってるとは思うんですけど、Clooverを使わなくなるような可能性っていうのもあるんでしょうか?
そうですね。CRM等の業務用のSaaSがうまく刺さることによってオペレーションに組み込まれていくと、すごく強くロックインしていくので、資金提供だけではない、そうしたメリットと言いますか、機能とかを提供していることで、その離反するリスクを下げていくというところは言えるのかなと思いますね。
話になってしまうかもしんないですけど、大手の企業さんも中小企業向けにシステムっていうのは提供していかないんでしょうか?
その可能性もなくはないとは思いますが、基本的にそのEnpalとか大手については、基本的に自社ブランドでカスタマーまで囲い込もうと、垂直統合していこうっていうのを目指しているので、中立的なその共用インフラには、仮にシステムを開放したとしてもなりづらいんじゃないかなという風な見立てはできるかなと思いますね。
あとは、比較的アセットライトだとは言いましたけど、垂直統合に比べると金融はやっぱり重くて、施工とか在庫のリスクは持ちませんが、デットの調達とか、つまりその補助金を事前に払うみたいなことになりますので、そうしたリスクはあって、デットの調達とかバランスシート管理というところは、ある意味資本集約的でもあって、そこは難しいところでもあり、逆に言うと参入障壁にもなっているというところかなと思います。
では、彼らはどういう風にこのステップを踏んでいこうとしてるのかというところの紹介をします。彼らはですね、まずは楔として、ウェッジとして、最も痛みの強い資金繰りとか初期費用を解決するエンベデッドファイナンスで、まずは市場、特に施工業者に強烈に食い込もうとしているというところがまず1本目です。次のフェーズとしては業務ですね。先ほど申し上げたロックインのために、金融から入って、その後見積もりとか発注を統合していく業務用SaaSですね。CRMとかを提供して日々の業務インフラとして定着させていく。これがフェーズ2。そしてフェーズ3として、最終的に各家庭の機器を制御する、あるいは電力市場と連携させるエネルギーのOS、EMSとかですね、と拡張していって、ライフタイムバリューをどんどんと最大化していくということで、いわゆるお金で懐に入って、業務で定着させ、データによって長期的なプラットフォームの価値を生んでいくという風な流れでやっていこうとしているみたいです。
今はどのフェーズに当たるんでしょう?
そうですね。今はフェーズ1がちょっと終わって、強力なトラクションを持って、フェーズ2のSaaSをまさに深めつつ、フェーズ3のエネルギー管理基盤への投資を始めているという段階かなと思います。
最初はSaaSを提供したわけではなかったんですね。
なんか最初から、その辺を狙ってみたもののピボットしてるっぽくてですね。施工業者にとって最もクリティカルな課題、失注要因は、どっちかって言うと業務フローというよりは金融とか資金の手当て。なので、そこを解決する方が圧倒的に導入ハードルが低くなったということで、SaaSではなくってその金融というところを狙っていったというところみたいですね。
そして、それをうまく使って、武器としてのキャピタルスタックと言いますか、今22ミリオンの話をしますが、22ミリオンのエクイティの調達に加えて1.2ビリオンですね、100倍に近い、50倍近いみたいなデットファイナンスみたいなことをしていて、さらに300ミリオンのギャランティの恩恵をEIFから受けるみたいな風なところをニュースとして出していて、エクイティをそこそこ調達した上で、割とそのデットをかなり引いているところもあって、このデットの引き方、このキャピタルの引き方っていうところで、今フェーズ1もかなり盤石にしていこうとしているフェーズかなと思います。
ということで、ポジショニングの話。今すでに何度か話してきているところではありますが、Clooverですね、似たようなスタートアップ、ドイツを中心に色々、Enpalとか1Komma5°とかあったりするんですけれども、あります。その中で彼らがポジショニングしているのは、D2Cの統合ブランド、Enpalとかに対しては施工業者の支援という立ち位置で、いわゆる競合を避けてと言いますか、自分たちは垂直統合しませんみたいな。向こうは大手として中に囲ってやっていますが、自分たちは施工とかはせずに、その金融とかのインフラの部分に集中しますというのがClooverです。一方でSaaSのみを提供する企業もあって、Opusflowとかですね。こちらに関しては、もちろんそのSaaSをClooverは提供するんですが、一方で金融機能は彼らは提供しないので、そこで差別化をしますみたいな、そうしたポジショニングを取っています。そして伝統的な銀行に対しては、施工現場に組み込まれたUXとか、光熱費削減を加味した独自のAIの与信のスピードで勝つ、そうしたポジショニングをしていて、それぞれちょっと違うみたいな、非常に面白いポジショニングになっているなという風に思います。
なのでこの防御要因、モートとしては、現場の業務への完全統合であったりとか、将来のエネルギー削減額を加味したAI、補助金の前払い、そしてEIF、欧州投資基金の保証による低コストな調達ということで、こうしたキャピタルもあれば、ツールもあれば、金融もあれば、ただし全部を全部するわけではないみたいな、そうしたところの差別化、そしてモートというものを持っていると。競争優位性としては、SaaSのみの企業には金融で勝って、金融のみにはUXと審査速度で勝ち、その統合している1Komma5°とかに対しては、施工業者の皆さんと一緒にやっていくところで勝つみたいな、それぞれ違うポジショニングをしてるという風に言えるかなと思います。
すごいポジショニング。
そうですね。本当に直接な競合は、今のところZolarとかですかね。施工業者向けのプラットフォームに金融を載せるZolarとかはもちろんいるんですけれども、Clooverほど包括的な資本のスタックっていうものを全面的に打ち出してるわけではないので、やっぱりそれぞれ攻め方が違う。どれが正解かはまだ分からないと思いますが、攻め方は違うという状況かなと思います。
ちなみにEIFというのは、すいません、あまり詳しく話さなかったんですが、EUの公的機関ですね。ローンの焦げ付きリスクを一部保証する仕組みになっています。これによってClooverはより安価に、かつ安全に、銀行からデットファイナンスで資金を調達できるというところプラス、そこから貸し出すこともできるということで、やはりここは政府がそうしたモデルを評価して補助している、あるいは公的にリスクをちゃんと抑えているということによって、銀行とかも乗ってきやすくなっているというところがあるのかなと思います。
この辺、本当ドイツは非常に面白いですね。いろんなソーラー系のスタートアップがあったりするので、日本でこういうことをやろうとしてるところにとっては面白いマーケットなのかなと思います。名前が出てきてないところで言うと、オープンソーラーとかですかね。あとはOpusflowはさっき言ったとおりERP寄りのところですが、この辺は金融をそこまでやってないとか、1Komma5°とかはどちらかというとBase Powerに近いみたいなところとか、Enpalもあったりとか、そんな本当にいろんなスタートアップがあるので面白いなという風に思います。
では最初のウェッジと言いますか、突破口というところです。最初の突破なんですけれども、初期のターゲットのミクロなペインというところは、顧客が買いたいと言ってもローン審査を待つ間に失注してしまうというのが施工業者側の強烈なペインだと言われています。本当に月間数件から数十件を施工する地域の中小企業のところに対して、まずは彼らはMVPとして、最初からフル機能のERPを作らずに、現場のタブレットで即座に月額ローンの審査とか提示ができる単機能のツールを作って、そこからスタートしたと言われています。
そして、GTMに関しても非常に泥臭くやっていて、営業担当者が施工業者の現場に1日張り付いて、実際の業務フローを観察しながら導入を支援するみたいなことをやっていた。本当に現場でインストールしていくみたいな風なところをやっていたのかなという風に思います。その時ですね、現場の営業の方とかは複雑な機能を使いこなせないというところから、結果としてシンプルなUIの提供にたどり着いて、それが彼らにとっても非常にキラーなアプローチと言いますか、キラーファンクションになったというところみたいです。本当に机上の空論で終わらせずに、徹底的に現場に行き、現場からプロダクトを作っていった。これがすごくいい例だなという風に思います。
なるほど。今は現場ですぐに審査してファイナンスできるよってことをやってるかと思うんですけど、それは今はどういう風に実現してるんでしょうか?
今は話を聞くところによると、APIを通じて信用情報機関のデータとか、独自のエネルギー削減アルゴリズムを組み合わせて、現場でリアルタイムに与信判断を下しているということが言われています。ここも多分、自分たちがそのデットと言いますか、お金を払えるので、間違ったら自分たちが損する、そうしたリスクを取ってるということもあるのかなと思います。
では続いて、金融×SaaS×プロダクトのチームの話というところです。Clooverの創業チームが何人かってのはちょっと記事によって変わってて、多分途中で変わっていったのかなと思いますけれども、一応今3名だという風に言われています。1人は共同CEOのジョドックさんです。彼はB2BのSaaS企業の創業、スケール経験がある方で、ソフトウェア側の実行力を担ってる人です。もう1人の共同CEO兼CFOのピーターさんは、クレジット市場とかストラクチャードファイナンスで10年以上経験していて、巨額のデットの調達もしたことがあるということで、調達の鍵、キーマンとなったという風に言われています。そしてCPOのバレンティンさんは、法務とかコンプライアンスの背景とプロダクトの開発経験があり、複雑な金融規制をクリアしながらそれをプロダクトに落とし込んでいく、そうした力を持っている3人チームになっています。
元々その気候変動の解決には金融の再構築が必要という風な共通認識で結集して、いわゆる再エネの技術系の方々ではなく、ビジネスと実行力をうまく組み合わせて、そこを重視して実行していったというところだそうです。なので本当に複雑な金融規制とか、あるいはその金融の調達力、そしてSaaSの実行力みたいなところがうまく組み合わさったチームだという風に言えるかなと思います。
業界とか太陽光パネル系のバックグラウンドの方はいらっしゃらなかったんですね。
みたいですね。だからこそ初期にちゃんと現場に、営業の現場をちゃんと見て、何日も張り付いて徹底的な観察を行って、ドメイン知識を吸収、学習していったと。まさにスタートアップらしい動き方をしてたんだなと。
やっぱりここは個人的には、単純にその現場に行けばいいという話ではなく、やはりこの大きなマーケットを見据えた上で、どこから入るかというのを決めて、その知識を入れていくために現場に行くみたいな、そうした計画。単純に現場に行ってドメイン知識をつければいいって話ではなく、その大きなマーケットにつながる最初のところはどこなのかを考えて、そこに行ったというのが強かったのかなという風には思います。
ということで、最初の話ですね。実は初期の失敗談として、既存のCRMとAPI連携すればいいんじゃないかみたいな、施工業者は既にそうしたCRMも使ってるだろうし、API連携だけ作ってそのファイナンスだけ作ればいいんじゃないかみたいなことを考えていたみたいです。ただですね、創業者が現場に密着して観察していくと、このCRM、特に高度なCRMは使いこなせていないと。複雑なツールが逆に足かせになっていたみたいなことを発見したみたいです。そこでClooverは、スマートに見えるようなAPI連携みたいな路線を捨てて、自社で、機能は最小限で迷わない、そしてシンプルで独立したCRMというのを独自に自社開発して、これが逆に、フェーズ2の導入の決め手にもつながっていくみたいな、そうしたことがあったと言われています。なので、顧客の本当の姿に合わせて自社プロダクトの境界を柔軟に広げたり、あるいは狭めたりとか、そうした事例になってるのかなと思います。
シンプルなCRMってことなんですが、どれぐらいシンプルなんでしょうか?
そうですね。CRM一般は、複雑なマーケティング機能と統合されてることが多いと思いますが、そこは削ぎ落として、顧客情報の入力とか、現場でのローンの見積もりの即時作成とか、契約締結に特化したUIとか、本当にその現場で使う、特にこの業界で使いやすいようなワークフローみたいなところを意識して作っているという風に聞いています。あとは、本当にこれがきっかけとなって、ロックインをしていくみたいなところになっていったというところなので、非常に大きな、現場からのインサイトの一つだったのかなと思います。あとは今後は多分、いろんな形で最後のプラットフォーム化していくためにEMSを拡充していったりとか、いろんな機能がついてきているような印象はあります。
そうした彼らですが、本当のすごいところは、やはりそのエクイティだけではないデットファイナンスであったりとか、EIFのギャランティーみたいな、その公的な保証枠を引っ張ってきたというところかなと思います。合計で1,800億円相当の資金枠だとしています。ただ、そのうちのエクイティの調達はまあまあ30億円、40億円ぐらいみたいな、結構スタートアップではなかなか見ないバランスだなという風に思いますね。
真の強みはまさにこの資本の調達力にあって、エクイティよりもデットをどう確保するか、そしてそのデットを支えるための基金からの公的な保証枠というのを引っ張ってくるか。こういうものが揃うことによって、彼らはなかなか他でも真似できないような、安価で長期的な資本を施工業者のネットワークに大量に流し込む、その力がついたと。そしてそれ自体が強固な、いわゆる競争力、モートにもなって、実際の実業の実績としても、2025年には売上が8倍に成長していて、黒字を維持しながら1億ドル規模に到達しているということで、2026年には約5億ドルの取引額を目指していくそうです。まさにこの単なるSaaSではなく、メガバンクから住宅用の再エネ向けのインフラ資産として巨額の融資枠を引き出したストラクチャードファイナンス。この設計力が彼らの強いリソースなのかなと思います。
その12億ドルをスタートアップが取れるのってすごいですね。
そうですね。やはりこの金融のバックグラウンドがあるっていうところですよ。それに加えて、EIFみたいなその制度を知っていて、そことうまくネゴシエーションして、公的な保証枠をちゃんと取り付けて、そして実際の資産ですね、設備とかの電気代の削減のパフォーマンスデータをちゃんと持って、それを証明できたというところが、この大きな資金調達に繋がってるのかなと思います。あとは利益が出てるっていうのもやっぱすごいですよね。
そうですね。スタートアップというと、ちょっと赤字を掘っていくっていうのがイメージしやすいですけど、そうではないモデルなんですね。
そうですね。あくまで会社発表ベースの数値になりますけれども、設備販売の粗利ではなく、トランザクション手数料と金利のスプレッドという金融なので、規模が拡大すれば利益が出やすいみたいな、そんな構造もあるみたいで、今黒字になっているというのが発表内容です。これからもしかしたらこのお金を使って赤字を掘っていくっていうこともあるかもしれませんが。はい。
ではこれを日本でどう応用できるかというのをAIに考えてもらいました。このClooverのモデルを日本市場で展開する場合、単純なコピーではなくって、日本のローカル要件、例えばFITの制度があるとか、共同住宅の多さとか、地域の工務店の強さとかに適応していく必要があるんじゃないかということで、案Aは、地方工務店特化の災害対策であったりとか、蓄電池導入というのをフックに、地方の工務店の販売タブレットに即時ローンと補助金を組み込む、まさにClooverがやっていたようなモデルっていうところが1つあるのかなというのが出てきます。
もう1つが、VPPとかマンション特化ということで、日本に多いマンションの管理組合向けに、EVの充電器とかの導入とか合意形成、あるいはファイナンスを一括で提供していくものとかがあるんじゃないかというところ。あとは、FIT切れの住宅の蓄電池をネットワーク化して、機器制御と金融、初期費用0設置をしていくみたいなところもあるかもしれないというところ。そして信販SaaSというところですけども、日本は信販会社が強いので、自社でデットを持たずに、その信用保証とか信販会社の裏側で、再エネ専用のAI与信エンジンだけをSaaS提供していくみたいな、ホワイトラベルみたいな展開もできるんじゃないかみたいな。
ということをAIは言ってきた、というところです。なるほど。
日本の補助金制度とかもこうなんですかね、Clooverのやつをそのまま使える、というか敷衍できるようなものなんですかね。
そうですね。まさに日本の補助金制度は複雑なので、逆に言うと、まさにその複雑さ、あるいは入金までのタイムラグとかをソフトウェアで吸収する、そのペインがある部分でもあるのかなと。特に事前立て替えを行う機能が、おそらく日本市場での強力な差別化要因にもなってくるのかなという風に思いますね。
では、本件からの学びと明日のアクションに関して最後お話ししたいと思います。このケースの学びの1つはですね、ある意味大企業と正面から戦わずにロングテールを狙っていく、中小企業を裏側から束ねるプラットフォームになっていくというのが、1つ方向性としてはあるというのがポイントなのかなと思います。
2つ目は、机上ではなく現場の摩擦をちゃんと探していくこと。API連携の話が先ほどありましたけれども、もちろんそちらが楽なんですが、現場の営業班が迷わない、実は泥臭い単機能のツールこそがPMFの鍵で、そしてロックインの鍵だったという風に言われているところを見ると、まさにこの現場に行く、そのビジョンを持って現場に行くというのが大事というのが2つ目。
で、それで3つ目が金融の実行力ですね。SaaSを作るだけではなく、裏側でその巨大なデットを引っ張ってくる金融の設計力。これがですね、ビジネスにおける本質的な彼らにとってのモートになっているというところで、いいソフトウェアを作ればそれで終わりというわけではなく、実はこうしたサービスだと、本当のペインは金融にある、であればこそ、その金融、ストラクチャードファイナンスをうまく使って、自分たちの資本を増強していくことが、誰もできないような大きなモートになっていくんだということが学べるのかなと思います。
そうした意味でもですね、是非こうした全体の構造を見た上でどこがペインなのか、あるいは自社のターゲット顧客の実際の業務現場というところを見て、そうした現場でも、なんでしょうね、言語化できていないような小さな摩擦とか中の要因とか、これが解決できればすごい大きいよね、みたいな、そうしたところを是非見つけていっていただけるといいのかなと思いました。
ということで、今日はClooverを紹介しました。どうですかね、聞いて。
いや、なんかその金融がすごいですね。600億を動かしてるっていうのは、なんというか、なかなかやっぱりそれだけうまく制度だったりとか、そのマクロな環境を、なんすかね、味方につけているんだろうなっていうのは思いました。
そうですね。本当に22の、22ユーロに対して1200、1800億円みたいなところは、本当になんかその桁が違うなみたいな。ただ、そういう戦い方もスタートアップでもできるんだっていうのをすごく教えてくれる例かなと思います。
はい。統合もすごくいいモデルだなと思いながら、日本もやはりそのパートナー企業とか施工業者が多い、あるいは地方に色々分散しているっていう状況だからこそ、こうしたモデルっていうのも1つ検討してもいいのかなという風に思いました。
こうしたアプローチ、他の業界のスタートアップにも多分参考になることがあると思いますので、是非参考にしていただければと思います。それでは今日はこれで終了です。
FoundX Review Startup IdeaCastでは、今後皆さんのアイデアのためになるような最新のスタートアップの状況、あるいは戦略というものを紹介していきます。ご興味のある方は是非チャンネル登録や高評価、あるいは皆さんの周りの方にですね、FoundX Reviewがあるよというのを伝えていただければと思います。ではまた次回よろしくお願いします。ありがとうございました。
ありがとうございました。
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