波力発電で動く洋上データセンター、Panthalassaは「電気ではなくデータを運ぶ」
東京大学FoundXFoundXの番組「FoundX Review Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで整理・分析して紹介している。今回取り上げたのは、海に浮かぶ鋼鉄のノードで波力発電を行い、その電力をその場でAIの計算に使うPanthalassa(パンサラッサ)である。番組はAIで情報を整理しているため、内容が古い場合や誤りを含む場合があると冒頭で断っている。
中心的な問いは、生成AIブームでデータセンターの電力が足りなくなるなか、陸上の制約をどう回避するかだ。解説役は、陸上の制約を一つずつ解消するのではなく「前提そのものを外した」点にこの会社の面白さがあると見ている。
なお冒頭では、地熱発電(EGS)のFervo Energyが上場し、1兆円規模の時価総額がついたことにも触れた。次回はその上場申請書類を読む回にしてもよいかもしれない、と話している。
宇宙の次は海:Panthalassaを取り上げた理由
解説役がPanthalassaを選んだのは、データセンターの電力不足が話題になるなかで、先々週に紹介した宇宙データセンター(Starcloud)に続く「海のデータセンター」の事業者だからだ。ニュースでは大型の資金調達やピーター・ティールの出資が話題になった。一方で、同社は2016年ごろ創業の比較的古い会社でもある。そこで、今に至る経緯まで掘り下げたいという。
事業の骨格はこうだ。巨大な鋼鉄のノードを海に浮かべて漂わせ、波で発電し、その電力をデータセンターの電源として使う。従来の波力発電では、電力を陸へ送ることが大きな壁だった。Panthalassaは発電した電力をその場で消費することで、この壁を回避しようとしている。社名は、かつて超大陸パンゲアを取り囲んでいた唯一の巨大な海の名前に由来する。
陸上データセンターが抱える制約と「海にすべて置く」発想
解説役はまず、陸上データセンターの拡張が難しくなっている背景を挙げた。AIインフラへの投資は大きく伸びている。しかし送電網は逼迫し、冷却水は不足し、許認可は遅れている。さらに排熱の問題、地域住民の反発、水資源をめぐる農業との競合もある。
Panthalassaはこれらのボトルネックを個別に解決するのではなく、インフラごと海に移す。海は地球の7割を占め、冷却水と発電源がいわば無尽蔵にある。そこで計算まで済ませてしまう、という発想である。海洋エネルギーには数テラワット規模、つまり世界の電力消費をまかなえる水準のポテンシャルがあるとも言われているという。土地、水、送電網の問題を海で完結させ、重要インフラ投資の流れに乗せる。これが同社の狙いだと解説役は整理した。
宇宙との比較と、海を温めることへの懸念
宇宙データセンターと比べた海の利点を聞き手が尋ねた。解説役は宇宙側の弱点を二つ挙げる。一つは、下がってきたとはいえ打ち上げコストがまだ高いこと。もう一つは、真空のため排熱が非常に難しいことだ。宇宙は冷えていると思われがちだが、データセンターの熱を逃がすのは難しい。これに対し海は、無料でほぼ無限のヒートシンクとして使える。同社はこれを最大の優位性と位置づけている。
聞き手は、海を冷却に使えば海水が温まり、生態系に影響が出ないかとも尋ねた。解説役の答えは「あるかないかで言えばあると思う」。同社は、波のエネルギーを吸収して計算に使い、その熱を海に戻すので地球全体のエネルギー収支はゼロだと主張している。解説役はこの主張に少し首をかしげつつも、化石燃料を燃やすよりは環境負荷が低いのはおおむね確かだろうと述べた。
冷却が課題になる背景として、解説役はIEAの調査を引いた。AIサーバーラックあたりの電力密度は2020年から2025年の5年で11倍になり、2027年にはさらに4倍になるという。また同社は沿岸ではなく外洋を狙っている。漁業権、航路、景観との衝突を避けられるうえ、外洋のほうが波のエネルギーも高いからだという。
波力発電を阻んできた課題
解説役は、従来の波力発電の課題を「海底ケーブルの呪縛」と表現した。電気を陸に運ぶには高価な海底ケーブルの敷設が必要で、系統接続の許認可も厳しい。そのため拡張性にもコストにも難があった。Panthalassaはその場で計算し、結果を通信で送ることで、ケーブルを介さずに電力を使い切る。
ただし、そこには別の課題もある。AIサーバーの熱密度の上昇だ。GPUの進化で空冷は追いつかなくなり、液冷や液浸への移行が必須になりつつある。データセンター建設では冷却インフラの設備投資がかさんでいる。一方で推論ワークロードは膨大で、データセンターの電力需要は2030年に現在の約2倍、950TWhに達するとされる。
波力そのものにも弱点がある。資源量は魅力的だが、塩害、腐食、嵐、保守、保険といった課題が多い。その結果、商用化は風力に後れを取ってきたと解説役は説明した。
顧客が受け取るのは「計算結果」
ケーブルがないなら顧客は何を受け取るのか、と聞き手は尋ねた。解説役の答えは、AIの計算処理の結果である。たとえばStarlinkなどを経由して衛星にデータを上げ、そこから地上に届ける。電気ではなく計算結果を返す、というのがこの会社の答えだ。
既存のデータセンター事業者との違いについて、解説役はこう説明した。既存事業者は原子力発電所の再稼働、SMR(小型モジュール炉)、PPA(電力購入契約)などで電源確保に巨額を投じている。しかし契約しても建設や許認可に何年もかかり、需要に追いついていない。陸上でも水冷化は進んでいるが、巨大なチラー(冷却機)とその電力が必要で、大量の真水も消費する。Panthalassaは海水をそのまま熱交換に使うため、チラー設備を省略できるという。
4つの要素の垂直統合とシンプルな物理
同社の解決策は、4つの要素を一つに統合する点にある。波力発電、発電した電力のオンサイト消費、海をヒートシンクとする冷却、そして衛星通信によるデータ輸送だ。これらを個別に手がけるのではなく、垂直統合に近い形で運営している。
発電の仕組みは単純だ。波の上下運動で内部の水を押し上げ、ダムのようにタービンを回して発電する。その電力で自社のAIサーバーを動かし、熱は海に逃がし、推論のトークン(学習の可能性もある)を低軌道衛星経由で送る。解説役は、物理的なケーブルの制約をStarlinkの進化という別の技術トレンドに乗って解決した点を、発想の転換と評価した。複雑な機械を使わない物理モデルのシンプルさが量産の鍵になっている点も面白いという。
同社はOcean 1、Ocean 2とプロトタイプで洋上の実証を重ね、現在はOcean 3の段階にある。Ocean 3は自律推進するプラットフォームで、アンカーも海底ケーブルも使わない。実機での実証に加え、シミュレーションも多く行っている。解説役によれば、技術上の最大の論点は発電そのものよりも、外洋での稼働率、故障時の保守、サーバーの更新、衛星の通信容量で本当に足りるか、外洋での規制、保険といった点だという。
塩害と通信容量への答え
保守運用について、聞き手は塩害への対策を尋ねた。解説役によれば、海水はサーバーに直接触れない。内部の密閉された冷却ループと外部の海水の間で熱交換するクローズドループ設計になっているという。
衛星通信の容量についても質問が出た。大規模な学習には向かないと解説役は認める。一方、推論の入出力データは比較的軽いため、現在の低軌道衛星の帯域でも通信は成り立つと言われているという。入出力のデータ量が小さい推論をバッチ処理するなら何とかなるかもしれない、というのが解説役の見方だ。ただ、衛星の通信容量が一つの課題になるとも指摘されているという。
市場、初期顧客、ビジネスモデル
市場規模として、解説役は次の数字を紹介した。TAMはデータセンターインフラ投資額の5,800億ドル(約87兆円)。単なるエネルギー市場ではなく、AIコンピュートのためのエネルギー市場という位置づけである。SAMは世界の水中データセンター市場予測の148億ドル。SOMは大規模なノード配備と初期のAI推論需要だ。陸上の電力網の限界や環境規制といったネガティブな要素が、同社には逆に成長ドライバーになるという。
初期顧客は、低遅延を求めない層になると想定されている。安価で大量の計算資源を必要とする推論事業者や、合成データ生成・強化学習を行うAI企業だ。聞き手がハイパースケーラーも顧客になり得るかと尋ねると、解説役は「有力なシナリオの一つ」と答えた。ハイパースケーラーも電力確保に苦しんでおり、Panthalassaが提供するインフラを借りる、あるいは共有する形が考えられるという。
ビジネスモデルの要点はコストの大幅な削減である。陸上で必須だったチラー、土地、建屋の費用が小さくなるか、丸ごと削ぎ落とされる。本体も鋼鉄で比較的安く作れる可能性がある。目標発電コストは1kWhあたり0.02〜0.025ドルとされ、天然ガス発電の限界コストや太陽光を下回る「世界最安クラス」のポテンシャルがあると言われているという。この安い電力で動く計算資源を、推論枠やコンピュート容量としてAI企業に販売する。
ノード1基の製造コストは約100万ドル(約1億円)とされる。土地取得のリードタイムがなく、工場から海に投入するだけで収益が上がる。解説役自身は「本当かって思いますけれど」と留保をつけた。
保守コストの重さについて聞き手が問うと、解説役は同社の想定を紹介した。定期的にノードを港に戻し、チップ交換や保守を一括で行うモデルだ。船の派遣コストを含めても、CAPEXとOPEXの削減効果は大きいとされているという。100万ドルが実現可能かという質問には、詳細は企業秘密だろうとしつつ説明した。特殊なレアアースを避け、既存の造船やパイプ製造のインフラを流用する鋼鉄の塊として設計しているため、量産効果が効きやすく、現実的な目標とされている。解説役はこれを「ディープテックというより、インテグレーションのテック」と表現した。
「海のiPhone」:引き算による量産戦略
戦略の核は、ハードウェアをシンプルにして大量生産することにある。過酷な海では、制御翼やフラップのような可動部品は塩害や嵐で確実に壊れる。そこで同社は可動部品を内部のタービン一つに絞り、鋼鉄の缶のような塊に徹した。これにより造船やパイプ製造の既存インフラを使い、iPhoneのように量産できるようにしたという。「海のiPhone」とも呼ばれているらしい。自動車工場よりシンプルな設備で、次々と製品を海に送り出す構想だ。
地政学的な狙いもある。バッテリーのように中国のサプライチェーンに依存するのではなく、欧米に残る鉄鋼・造船のインフラを使い、同盟国内での生産を進められる。解説役は、造船は欧米にもうあまり残っていない気がすると付け加えている。
10〜20年後には数千から数万基のノードを外洋に配備し、世界の主要なエネルギープロバイダーになることを構想している。将来は洋上でのグリーン水素やグリーン燃料の製造も視野に入れているという。
シンプルな設計は真似されないのか
聞き手は、シンプルだとかえって真似されやすいのではないかと懸念を示した。解説役は同社の主張を紹介した。外装は単純に見えても、内部には流体力学に基づく制御、発電、自律航行、冷却を統合して制御するソフトウェア群がある。そこに特許とノウハウの塊、つまりモート(参入障壁)があるという。解説役はテスラを例に、シンプルなハードウェアを統合・制御するソフトウェアにこそ本当の強みがあるのかもしれないと述べた。
ロードマップと、8年かかった理由
同社は2016年に創業し、約8年間、シミュレーション、プロトタイプ、波力発電、自律航行、最近では洋上コンピューティングに取り組んできた。次の段階では、3つ目のプロトタイプであるOcean 3のパイロットノードを北太平洋に配備する。そこで洋上でのAI推論能力を証明し、工場での大量生産プロセスを確立する狙いだ。その後は商業規模に拡大し、南半球などの波の荒い高エネルギー海域に大規模なフリートを自律配備する計画だという。ハードウェアのテストは失敗コストが高いため、泥臭い小規模テストと数万回のシミュレーションを経てから量産工場に進む、という進め方をしている。
聞き手は8年は長いと感じ、その理由を尋ねた。解説役は二つを挙げた。一つは、当初ビットコインマイニングを狙っていてそこからピボットしたこと。もう一つは、可動部品をなくし波の力だけでタービンを回す方式が前例のない物理モデルで、数百万回の流体力学シミュレーションに時間をかけたことだ。
Ocean 3で検証すべき点として、解説役は三つを挙げた。第一に、確立された技術ではない波力発電の効率。第二に、実際のAI推論チップを搭載し、衛星通信経由で商業レベルのSLA(サービス品質保証)を満たせるかという統合システムとしての検証。第三に、パイロット工場での量産プロセスの立ち上げと歩留まり改善だ。特に三つ目はハードルが高く、次のスケールを遅らせるリスクになるかもしれないと解説役は見ている。
競合との違い:何を捨てたか
電力とデータセンターを組み合わせる企業はほかにもある。陸上型のCrusoe、洋上風力とデータセンターを組み合わせる企業、以前紹介した宇宙のStarcloudなどだ。そのなかでPanthalassaは、通信速度と保守のしやすさを捨てた。遅延は許容する代わりに、土地の制約を回避し、冷却コストを極限まで下げる。このメリハリのあるトレードオフが特徴だと解説役は整理した。
同社は地理的なモートも主張している。中国の近海には波力発電に適した資源がないこと、そして鉄をベースにした模倣困難なサプライチェーンだ。Crusoeや Starcloudと比べても、自社のほうがシンプルで物理法則に即している、というのが同社の主張である。
聞き手は、捨てるものを決めている潔さを認めつつ、Starlinkへの依存度の高さを懸念した。解説役によれば、この点はStarcloudと同様の説明になっている。SpaceX以外にもAmazonのKuiperなど低軌道衛星の企業体が出てきて競争が激しくなっており、通信インフラはコモディティ化するので交渉力は保てる、という理屈だ。
ほかにも、波力単体ではCorPower Oceanのような企業がある。水冷などの冷却事業を中心に手がける企業もある。Microsoftの海中コンテナ型データセンターも存在するが、GPUの交換が難しいという話を解説役は聞いたことがあるという。Panthalassaの違いは、波力にデータセンターを加えて垂直統合している点にある。
参入戦略:ビットコインマイニングからAI推論へ
同社が最初に狙ったのはビットコインマイニングだった。大量の電力を消費する一方、データの送信量はごくわずかで、通信の遅延もまったく問題にならない。生成AIブームが来ると、入出力のデータ量が比較的軽いAI推論へとターゲットを移した。解説役はこれを、マクロトレンドの波に乗った動きと評価した。
最初のMVPは物理装置ではなく、徹底した流体力学のシミュレーションだったという。記事を見る限り、ガレージに水槽を用意して小さなハードウェアで試したことや、海に出て鋼鉄の筒を上げ下げして人工的に波を起こす実験もしていたらしい。
投資家へのピッチでは、ムーアの法則でチップが進化してもエネルギー消費は指数関数的に増えるので、陸上インフラは早々に限界を迎える、と訴えていたようだ。解説役はこれを第一原理思考的な話だと見る。トラクションを得にくいハードウェアスタートアップが、プロダクトを出せない段階で「避けられない未来」を投資家に伝えて資金を集め、シミュレーションでMVPを回した。Ocean 1で小規模な計算の実証も行った。これが同社の参入戦略だったと解説役はまとめた。
創業チーム:ヘッジファンド出身CEO、発明家、SpaceX人材
CEOのガース氏はヘッジファンドのBridgewater出身で、マクロ経済やAIを研究していたという。解説役は、その経歴ゆえにビットコインに目をつけたのではないかと推測している。ガース氏は、人類のエネルギーを倍増させるには海しかないと考えていた。共同創業者のブライアン氏は元ディズニー・Googleの発明家で、波力発電のコンセプト動画をYouTubeに投稿していた。ガース氏がその動画を見つけて声をかけ、ロサンゼルスのファストフード店で4時間ほど議論した末に起業を決めたのが2015〜2016年ごろだという。その後、複雑な海洋ロボティクスを実現するため、SpaceXでロケット着陸を手がけたエンジニアらを採用した。
聞き手は、金融出身のCEOがハードウェアのどこまでを担っているのかを尋ねた。解説役によれば、CEOはマクロトレンドの読み、資金調達、ビジョンを語ることを担い、技術のコアはブライアン氏やSpaceX出身の専門家に任せる分担だという。初期には、流体力学やパワーエレクトロニクスなど各分野のトップクラスを一人ずつ口説き落とした。それによって「このチームならできるかもしれない」という期待を生み出していった、という話もあるという。
初期の学び:複雑な機構を捨てた「引き算のピボット」
同社は当初、滑車のような複雑な機構を検討していた。しかし過酷な海では複雑な機構は生き残れないと悟り、可動部品を極限まで減らす「引き算のピボット」を決断した。船の上から筒をぶら下げてクレーンのように上下させ、人工的に波の環境を作ってタービンが回るかを確かめるといった泥臭い検証を繰り返した。その結果、鋼鉄の塊という、量産可能で極めてシンプルな現在のデザインにたどり着いたという。
この判断にデメリットはなかったのかと聞き手が問うと、解説役は発電効率を挙げた。瞬間的な最大効率は落ちる設計になった。その代わり、故障による稼働停止が大幅に減り、長期的な総発電量とメンテナンスコストの面でメリットを得たという。さらにこうしたテストを通じて、自然の波を制御するのではなく、波に逆らわずその力をタービンに流し込むという流体力学的な発想に転換したとされる。
資金調達の経緯と現在
初期は、CEOが自分の貯金の半分ほどを使ったという。Bridgewater時代の人脈からエンジェル投資家を集め、個人の信用でシード資金を得た。その後Founders Fundから調達してR&Dを加速し、現在はピーター・ティール主導のシリーズBに至っている。ジョン・ドーア氏らスタートアップ界の著名な投資家や創業者も出資しているという。
累計調達額は2.1億ドル、企業価値は約10億ドルの規模になった。解説役は、R&Dを抜けて工場建設や実配備という実行フェーズに移りつつあると見る。ティールが出資した理由については、宇宙開発の次の未開拓フロンティアとして海があり、AIの電力危機という構造的課題に賭けているのではないかと推測した。
直近で調達した1.4億ドルの使い道は、オレゴン州での製造工場の建設と、2026年に北太平洋へ配備するOcean 3のノードの製造・運用だという。
リスク:規制、環境影響、データ主権
解説役が最初に挙げたリスクは規制である。外洋で発電・計算するノードは、発電設備なのか、船舶なのか、自律航行体なのか、データセンターなのか、扱いがはっきりしない。環境当局や規制当局がどう許認可し、制度がどう整備されるかは大きなリスクで、ロビイングも行うのではないかと解説役は見ている。
環境面では、排熱に加えて騒音、振動、照明、生物の付着、衝突のリスクがある。波力はクリーンに見えやすいが、商用フリートを展開すれば局所的な海洋環境影響評価が必要になる。さらにセキュリティとデータ主権の問題、通信への強い依存、国家安全保障や輸出管理上の扱い、保守、保険と、課題は多い。それでも解説役は「スタートアップらしい挑戦」と評した。
日本で同じアイデアをやるなら
番組では、同じアイデアで日本から起業するならどうするかをAIに考えさせた。前提は、日本が世界第6位の排他的経済水域(EEZ)を持ち、トップクラスの造船・特殊鋼の技術とサプライチェーンを持つことだ。そこから3案が出た。
- A案:造船・鉄鋼を生かしたノード製造特化型ベンチャー。 超高耐久ノードの製造に特化し、世界のインフラベンダーになる。
- B案:洋上風力とのハイブリッド。 沿岸で進む洋上風力プロジェクトに相乗りし、風車の土台にサーバーを沈めて電力と冷却を得る。
- C案:超低遅延への特化。 太平洋の真ん中ではなくEEZ内の近海に配置し、自動運転や高頻度取引向けの「止まらない低遅延の洋上データセンター」としてアジア市場を取る。Panthalassaが捨てた低遅延を逆に取りにいく案である。
聞き手は日本ならではの壁を二つ挙げた。一つは台風や強風である。解説役は厳しいのは事実だとしたうえで、防錆技術、特殊鋼、海洋土木技術で高耐久ノードを開発できれば、世界に輸出するビジネスが成り立つかもしれないと答えた。もう一つは漁業権や規制である。解説役はかなりの壁になるだろうと認めた。そのうえで、地元に直接的な経済メリットを提供するビジネスモデルや、データセンターの排熱を使って高級魚を周辺で養殖するといった組み合わせが必要になりそうだと述べた。
まとめ:最大の制約を無効化する
解説役はPanthalassaから引き出せる示唆を三つにまとめた。
一つ目は、前提を外したこと。「データセンターは陸にある」「波力の電気はケーブルで送らなければならない」という固定観念を捨て、電力を送らずデータだけ通信すればよい環境を見つけた。そこに思考の跳躍があったという。
二つ目は、ハードウェア設計での引き算。機能を足すのではなく、壊れる要素を削ぎ落としてタービン一つにした結果、量産性と超低コストを得た。
三つ目は、マクロトレンドの波に乗ったこと。自社プロダクトのすごさを語るだけでなく、エネルギー需要の増大という流れにどう乗っているかを伝えることで、巨額の資金を引き寄せた。
Starcloudの回と同じく、解説役が強調したのは次の点だ。自分のビジネスにとって最大の制約や前提を特定し、それを根本から無効化できる別次元のアプローチや環境を考える。また、AIや半導体のように供給制約がある領域には新しい技術が入り込みやすい。そこで「こうすればできるかもしれない」と発想することは、他のスタートアップにとってもヒントになるのではないかという。
聞き手の感想は、賛否両論がありそうで、とてもスタートアップらしいというものだった。陸のデータセンターに限界があるのは本当なので、その先をどうするかで各社がしのぎを削るなか、これから必須になるものかもしれないと述べた。解説役は、技術的・制度的なハードルは高いと認めた。そのうえで、実現すればデータセンターの電力や将来の水素製造を通じてエネルギー環境を変えうる技術かもしれないと期待を示し、日本からも同様の挑戦が生まれることへの期待で番組を締めくくった。
皆さん、こんにちは。FoundXの田です。
同じくFoundXの富田です。
はい。今週ですね、Fervoという、EGSですね、エンハンスト・ジオサーマルの会社がなんと上場して、1兆円ぐらいの時価総額がついていて、いや、すごいなと思いながら見てました。
そうですね。
どうですか?
いや、めちゃくちゃ大きいですよね。
そうですね。なのでちょっと次回とか私の担当回で、いつもと趣向を変えてFervoのS-1を、S-1というか上場の目論見書みたいなもんですけど、あれを紹介する回とかをやってもいいかなとちょっと思ってます。
なんか私もさっとChatGPTに解説してもらったんですけど、多分前提知識がなさすぎてあんまりよく分かってないなと思うって、いけたらと思います。
はい。私もなんか勉強ついでにやろうかなと思いました。
ということで、今日はちょっと別のスタートアップになりますが、Panthalassaというスタートアップのアイデアキャストを始めていきたいと思います。このFoundX Review Startup IdeaCastですが、海外のスタートアップのアイデアをAIを使って分析して紹介する番組になっています。これからアイデアを考える人たちの参考になればと思って情報を提供しています。
最初にディスクレイマーですが、AIを活用して情報整理しているので、一部情報が古かったり間違ってる場合もあります。ファクトを重視される場合は必ずご自身で調べるようお願いいたします。本ポッドキャストはあくまでアイデアの参考情報とか考え方を引き出すことを目的にしています。ということで、今日紹介するスタートアップはPanthalassaっていうところになります。
はい。こちらはどういう背景で選んだんでしょう?
そうですね、やはりこの生成AIのブームによってデータセンターの電力不足というのが色んな話題になる中で、宇宙のデータセンターを前々回、先々週かもうちょっと前かな、紹介しましたが、宇宙じゃなくって今度は海です、みたいなところのデータセンターの事業者であり、そして結構話題になっていたスタートアップでもあるので、このスタートアップを、単純に170M調達しましただけではなくて、その裏側に関してお話しできればなと思っています。
ニュースだとピーター・ティールが投資したとかいう話がありますけれども、実は2016年ぐらいに創業している結構古い企業になっていて、どういう経緯で今に至っているのか、そうしたところを是非お話しできればいいなと思っています。
早速ですが、ちょっと簡単にご説明させていただきましたけれども、このPanthalassaというところですが、データセンターを洋上でやるというスタートアップになっています。巨大な鋼鉄の缶というものを海に展開して、電力を生んでそれをデータセンターの電力として使っていくみたいな、波力発電をしているスタートアップになっています。
従来の波力発電と違うところとしては、この後も詳しく説明しますが、陸に電力を送るとなるとなかなか難しかったところに対して、データセンターと組み合わせることによって、その場で電力を消費するという新しいアプローチを取ったことによって、この新しい発電というものがもしかしたら成り立つかもしれないというところで、このPanthalassa、もしくはパンサという風なところになりますけども、やっているスタートアップになります。
ちなみにこの由来ですけども、かつて地球に存在した超大陸パンゲアを取り囲んでいた唯一の巨大な海という意味を持っている単語になっていまして、他にもいろんなブランド名とかでこの名前が使われてたりしますが、今回はエネルギーの会社の紹介になります。
では早速ですが、こちら全体像から見ていければと思います。まず全体像として、陸上のデータセンターがなかなか難しくなっているというところがまずあります。なぜかと言うと、需要がすごく伸びていて、AIインフラ投資は伸びていますと。すごく投資されているんですが、一方で既存の送電網がパンクしていたりとか、冷却水ですね、データセンターを冷却する水の不足が限界に来ている、あるいは許認可の遅れといったような規制関係の遅れとかがあり、陸のデータセンターの拡張がなかなか難しくなってきているというのが背景の情報としてあります。
あとはデータセンターの排熱の問題ですね。地域住民の反発であったりとか、水資源に関しては農業系とやはりどうしてもバッティングしてしまうというところもあり、そこが問題になってきていると。そこで、このスタートアップに関しては、ボトルネックを1つずつ解消していくのではなくって、もう海に全て置こうと。無尽蔵の冷却水、そして無尽蔵の発電場を備える地球の7割の海にインフラごと移動させて、そこでもう計算もしちゃおうというような、そうした発想の転換をしている海洋エネルギーのプラットフォーム企業になっています。
この海洋エネルギーのポテンシャルに関しては、全世界の電力消費量を賄えるレベルの、数テラワットというような途方もない規模があるんじゃないかとも言われていて、そうした規模があり、そしてボトルネックになっている土地とか水とか既設の電力網といったようなものを個別に解決するんじゃなくて、もうこの海で全て完結させようというところを、重要インフラの投資の波と合わせてやっていくというところが、今このスタートアップが狙っているところになってます。
なんかすごい発想だなと思うんですけど、宇宙と比べて優れている点っていうのは何かあるんですか?
そうですね。宇宙はまず打ち上げが安くなってきてるとはいえ高いというところが1つあります。あとは真空なので、Starcloudのところでも話しましたが、排熱が結構困難。宇宙って結構冷えてると思われがちですが、排熱が非常に困難な領域でもあり、そうした意味でデータセンターで生まれてくる熱をどうするのかというのが宇宙はなかなか難しくなってくると。ただ海であれば無料かつ無限とも言えるヒートシンクとしての海、冷却材があるというところが最大の優位性だという風に言ってますね。
そこと関連して、一方で海を冷却水として使っちゃうと海が温まってしまって、ただでさえ温暖化でサンゴが死んでるみたいな話もあるんですけど、そういった影響、生態系への影響とかもあんまりないんでしょうか?
いや、なんかあるような気もするんですけれども、少なくともあるかないかで言えばあるとは思います。どれぐらい高いかどうかっていうところですが、彼らの主張によると、波のエネルギーを吸収して計算に使ってその熱を海に戻すので、地球全体でのエネルギーの総和は0だと。なんかちょっと、うん、て感じしますけども、化石燃料を燃やすよりは環境負荷は低いというのはまあまあ確かかなというところですね。
はい。実際にデータセンターの熱密度の上昇っていうところは課題になってきていて、IEAの調査によるとAIのサーバーラックあたりの電力密度は2020年から2025年までの5年で11倍になったと。そして2027年にはさらに4倍になっていくみたいなことがあって、冷却はかなり課題になっていて、その熱をどこに逃がすのか、というので1つ海というものが今話題に上がっているというところかなと思います。
ちなみに海の中でも沿岸部ではなくって外洋ですね、の方に行こうとするので、漁業とかに関して、沿岸部の漁業とかに関してはそこまで影響は与えないんじゃないかというところが言われています。漁業権とか航路とか景観とかを避けるという観点においても、外洋ですね、海の真ん中あの辺りを狙っていって、その方が波のエネルギーも実は高いというところがあるので、そこを狙っていくというところがあったりはするそうですね。
では課題です。何が課題なのかというところですが、従来の課題としてはこの波力発電っていうところは従来も言われていたんですが、海底ケーブルの呪縛というものがありました。波力発電の電気を陸に運ぶということが必要で、その時に高価な海底ケーブルの敷設が必要であったりとか、系統接続に対する厳しい許認可というものが必要だったりとか、拡張性とコストにやっぱりなかなか難しいところがあったというのが従来の課題だったという風に言われています。
そうした海底ケーブルの呪縛から逃れるというところに関して、今回は、後で解決策のところで言いますけれども、その場で計算をしてその計算結果を通信で送ることによって、その海底ケーブルを介さずにそのまま電力を使っちゃうというところですと。ただ、そのためにはもう1個課題が出てきます。それがAIサーバーの熱密度の上昇です。先ほど言った通りGPUの進化に伴ってですね、空冷ではもはや追いつかずに、液冷とか、水に浸ける、液体に浸けるみたいなところへの移行が必須になっていて、データセンター建設において冷却インフラのCapExがかなり上がってきているというところがあったりはすると。
一方でとはいえ、膨大なAIの推論のワークロードっていうところが必要になってきていて、データセンターは必要だと。データセンターの電力需要も2030年には現在の2倍、950TWhになっていくということで、こうした様々な問題が、波力にするにしてもなかなか難しいところがあるというところだという風に言われています。
あとは波力自体ですね。資源量としては魅力的なんですが、係留とか腐食とか嵐とか保守とか、あと保険ですかね、が結構課題としてあって、その結果商用化が風力より遅れているんですけれども、そうしたところも一方で課題としてあるというところはあったりはします。
うん。結構業界の課題だなって感じはするんですが、ケーブルしかないので、なんというか、お客様が受け取るようなものっていうのは誰が何を受け取るのかしらと思ったんですけど、どういうものに…
そうですね。なので、AIの計算処理の結果を返すみたいなところかなと思いますね。特にStarlinkとか経由して、例えばデータを宇宙に1回上げて、そこから経由して地上に降ろしていくみたいなことができるのかなという風に思います。なので、電気じゃなくって計算結果を返しますというのがその答えになってると思います。
その今、データセンター企業もすごいきっと対応してるところだと思うんですけれども、そことの違いというか、今やってるところだとどういうところが限界になってるんでしょうか?
そうですね。今データセンター企業に関しては、それこそ原子力発電所を再稼働したりとか、SMR作ったりとか、再エネを入れるためにPPAとか、電源確保にかなり巨額を投じている状況ですけれども、そうした契約をしたとしても、いずれにしても建設とか許認可に何年もタイムラグが発生してしまうので、そこに追いつけてないというところが、今課題感としてデータセンター側にはあるのかなと思いますね。
あとは陸上のデータセンターも水冷化ってのが進んでいるところがあって、その熱に関してはやろうとしているところではあるんですが、一方で陸上の水冷は巨大なチラーですね、冷却機が必要で、そのための電力も必要ですと。大量の真水も消費するというところがありますが、Panthalassaはその辺、海水をそのまま熱交換に使っているみたいなところがあって、チラー設備を省略できるっていうところが、この後の解決策にも関わってきますが、そうしたメリットもあるみたいです。
では続いて解決策に関してお話ししたいと思います。このPanthalassaですが、主に4つのブレイクスルーを活用していると言われています。1つが波力発電です。そしてオンサイトで消費する、いわゆる自分たちが電気を使って計算する。そして無料の冷却って書いてますが、ヒートシンクとして海を使いますというところ。そして衛星通信を使ってデータを運んでいくということをやって、それらを個別にやっていくのではなくって1つに統合されている、垂直統合に近い形でこのデータセンター事業というものを運営しているのが彼らの解決策になっています。
この自律的なエネルギー生成ですね。波の上下運動のみで内部の水を押し上げて、ポンプを駆動させる。そしてタービンが回転して発電して、その電力をそのまま自分たちのAIサーバーで使うと。そしてそこで生まれてくる熱は海に逃がし、生まれてきた電気はそのまま使ってデータとして、推論のトークンとか、学習かもしれませんけれども、Starlink等の低軌道衛星を経由して送信して、そしていわゆる規制を、完全になのかわかんないですけど、突破していくというのが彼らのやり方というところです。
やはり発想の転換はこの電気ではなくってデータを運ぶというところかなと思います。物理的なケーブルによる制約というところを、SpaceX等のですね、Starlinkの進化によって、別のテクノロジーのトレンドに乗ることで解決したというところです。あとはシンプルな物理モデルっていうところも使ってるのを面白いなと思っていて、複雑な機械を使うことなく、波の上下の動きで内部の水を押し上げてダムのようにタービンを回していくという物理的なモデルのシンプルさ、綺麗さというところ、そしてそれが量産の鍵にもなってくるというところが解決策として面白いところかなと思ってます。
そしてそれをですね、実証していると。机上の空論ではなくって、Ocean 1とかOcean 2、今3だと思いますけれども、そうしたプロトタイプで洋上の実証に成功しているというところが非常に面白いところかなと思います。Ocean 3はさらにですね、自律推進する無人プラットフォームということになっていまして、そうしたところもやっていますし、アンカーとか海底ケーブルを使わないというところが非常に大きいというところ。
ただ、技術上の最大論点としては発電効率そのものというよりは、外洋での稼働率とか故障時の保守をどうするか、あるいはサーバーの更新をどうするかとか、衛星の通信容量をどうするかで本当にさばけるのか、あとは規制に関しても外洋におけるその規制をどうしていくのかとか、あと保険どうしていくのかみたいなところが割と課題、解決策を推進していく時の課題になってきているのかなという風には思いますが、一方でやっぱりこのシンプルなところ、ハードウェアの単純化をしているというところが割と綺麗なところになるのかなという風に思います。あと実証だけではなくてシミュレーションも結構やってるみたいですね。
いや、確かに多分保守運用とかめちゃくちゃ大変だろうなと思ったんですけど、パッと思いつくところだと塩害みたいなのってあるのかしらって思ったら、その辺りどうカバーされてるんでしょうか?
そうですね。まず海水が直接サーバーに触れるわけではないっていうところです。内部の密閉された冷却系と、外部の海水との間で熱交換を行うようなクローズドループ設計をしているので、塩がどこまで入ってるかわかんないですけど、直接触れるわけではないっていうところが1つあるかなと思いますね。
あとは通信の速度というか、通信量が衛星の通信でどこまでさばけるのかっていうと、どこを対象にしてるんですか?
そうですね。大規模な学習トレーニングには向かないと思いますが、質問と回答のテキストデータ自体は、AI推論、インファレンスの方は比較的軽いはずなので、であれば現在の低軌道衛星の帯域でも十分に通信は成立するんじゃないかというところは言われているみたいです。とはいえ、その衛星のデータ容量とかが1つ課題にはなってくるだろうなという風には言われてますね。はい。入出力データ量は比較的小さいAI推論とかバッチ処理であれば、まあまあなんとかなるかもしれないなというところです。
では続いてですが、市場に関してです。このTAMの大きさからお話しすると、データセンターインフラ投資額が5800億ドルあるというところなので約87兆円とか言われてますが、その巨大市場が彼らのターゲットになってきます。これは単なるエネルギー市場ではなくて、AIのコンピュートのエネルギー市場というところですと。SAMに関しては148億ドル。これ世界の水中データセンター市場予測というところになってます。SOMに関しては、大規模なパイロットの配備と初期のAI推論需要というところで、ここを使っていくというところみたいですね。
今陸上の電力網の限界とか環境規制というネガティブな要素が、Panthalassaにとっては逆に成長ドライバーになっていくみたいなところがあるので、それをうまく使って最初くさびを打って、そこからどんどんと簡単に置けるようになってきますよってことになれば、洋上で、外洋においてデータセンターを置いていくということが可能になっていくのかもしれないなと思います。
なるほど。SOMっていうのは、これはどういった顧客というか、どういったお客さんを狙うような予定なんでしょう?
そうですね。まずは低遅延というものを求めないところが基本ターゲットになってくるかなと思います。なので安価で大量のコンピューター資源というものを必要とするAI推論事業者であったりとか、合成データ生成とか強化学習とか、そうしたところを行うAI企業が最初のターゲットになってくるんじゃないかという風に想定されます。
重なるかもしれないんですけど、既存のデータセンター事業者の大きなところも顧客にもなり得るんでしょうか?
そうですね。ハイパースケーラーも電力確保に苦しんでいると言われているので、もしPanthalassaがインフラを提供して、ハイパースケーラーがそれを借りる、もしくは共有をするというのは、有力視されてるシナリオの1つかなと思います。
では続いてビジネスモデルです。彼らのビジネスモデルとしては、まず劇的なコストの削減というところができるんじゃないかというのがポイントになってくるのかなと思います。陸上データセンターで必須だったチラー代とか土地代とか、施設の建設費とかが、ある意味かなり小さくなると。洋上ノードでは丸ごと削ぎ落とされているような部分があったり、あるいは建設に関しても鋼鉄を使って比較的安くできるかもしれないみたいなところがあったりすると。そうすることによって発電コストが安くなりますと。目標発電コストが0.02から0.025ドル/kWhということであって、これは天然ガス発電の限界コストを下回るという風に言われています。太陽光も下回るみたいなことが言われていて、世界最安クラスのエネルギーになるポテンシャルがあるという風に言われています。
そこに対して、AIの計算リソースを求める企業に推論枠とかコンピュートのキャパシティというものを販売していくというのが彼らのビジネスモデルになります。大体1ノードあたりの、1個あたりの製造コストが約100万ドル、1億円ぐらいという感じかなと思いますが、すごく安価です。他のところに比べても安価になっていて、しかも土地取得のリードタイムがないというところ。工場から海に投下するだけで収益が上がってくるみたいな、本当かって思いますけれど、Hardware as a Serviceなのか、ハードウェアにコンピュート資源を乗せてコンピュートを売るサービスなのか分かりませんが、そうした比較的低コストかつ収益性がスケールしていくようなビジネスモデルを作っていますというのが、彼らの1つのポイントかなと思います。
これって多分メンテが重たいのかなと思ったんですけど、それを入れてももう十分安いっていうことなんですよね。
みたいですね。その定期的にノードを港に1回戻して一括でチップ交換とか保守するモデルっていうのを想定してるようですが、その船の派遣コストとかを含めても、トータルのCapExとかOpExの削減効果は高いという風に言われてるみたいです。
結構製造コスト100万ドルっていうのも、なんか高いのか安いのかちょっと分からないなと思ったんですけど、安いのかなって感じはするんですけど、実現できるような数字なんでしょう?
そうみたいですね。ちょっと詳細は彼らの多分企業秘密だと思いますが、一応その特殊なレアアースを使うとかってのは避けていて、既存の造船とかパイプの製造のインフラを流用して、基本の鋼鉄の塊みたいな形で設計しているので、量産効果も効きやすいので現実的な目標じゃないかという風に言われています。なので、本当になんかディープテックっていうよりは本当インテグレーションのテックみたいな感じですよね。いかに安く、電力系大体そうなりがちですが、いかに安く既存の技術を使って量産効果をやって、使って、作っていくのかっていうところなのかなという風に思います。
じゃあ続いてですが、戦略です。彼らの戦略としては、そのハードウェアをやっぱりシンプルにして大量生産していく、いわゆるハードウェアのビジネスで、海という過酷な環境においては複雑な可動部品、例えば調整弁であるとかフラップであるとかは確実に塩害とか嵐とかで破損してしまうので、可動部品を内部のタービン1つに絞った、そうした鋼鉄の缶みたいな塊に徹することによって、造船とかパイプ製造の既存のインフラを利用して、iPhoneのように量産していくってのを可能にしたというところがあります。なので本当に引き算をしていくというのが非常に大事だと。フラップとかの可動部品は全部タービン1つにする。そうしたシンプル化が設計上大事なポイントになってくるのかなと思いますと。
いわゆる海のiPhoneみたいなこととか言われてるみたいですけれども、エコシステムですね、自動車工場よりもシンプルな設備で、かつ既存の鉄鋼とか造船のインフラをハックして、次々と製品を海に送り出す大量生産、マスプロダクションっていうことを構想していて、かつ中国のサプライチェーンに依存せずですね、バッテリーとか依存してしまってるので、そうしたサプライチェーンに依存せずに欧米のまだ残っているこの鉄鋼とか造船に、造船残ってない気がしますけど、まあなんかインフラを活用した同盟国の内製化というのを推進できるというような、そうしたところを考えていると。そうしたサプライチェーン的な、地政学的な強みというところもあるというのが彼らのポイントですと。
そして10年後から20年後に関しては、ここですね、数千とか数万のノード、さっきのなんかどんぶらこどんぶらこするようなあれを数千、数万個外洋に配備して世界の主要なエネルギープロバイダーになっていく。そして将来は、今はグリーンデータセンターっていう感じですけれども、洋上でのグリーン水素とかグリーン燃料とかを製造していくみたいなことも一応視野に入れているみたいですね。
いや、めちゃくちゃ面白いなと、面白いっすねっていうのはあるんですが、
そうですね。
シンプルだと逆に真似されちゃうのかなっていうのもちょっと心配になったんですけど、その辺りって彼らはどう考えてるんでしょうか?
そうですね。外装は単純に見えても、内部の流体力学に基づいた制御とか発電とか、あと自律航行ですね、さっき言った自律型で動いていくところとか、AI冷却とか、これを統合して制御していく、そうしたソフトウェア群に強力な特許のノウハウの塊があると、モートがあるという風に言っています。実はこうしたハードウェア、すごいシンプルにするハードウェアっても大事なんですが、そこを統合して制御していくソフトウェア群っていうところに実はすごくポイントがあるっていうのは、Teslaとかも思い返してみてもなんかそんなところかなとは思うんで、実はここにありますってのは別のところにあるのかもしれないなと思います。
そうですね。あとは、ポイントはやっぱりその電力を運ぶ、最初多分波力発電系から始まったと思いますが、その電力を運ぶじゃなくて計算結果を送る。これはStarcloudと同じですが、そうしたところに1回フォーカスしたってところがやっぱり面白い、いいところかなと思いますし、複雑な海洋の機械というところを狙わずにシンプルにして量産を可能にしていくっていうところに関しては、戦略として非常にいいところかなというところだと思います。
じゃあロードマップです。先ほど冒頭に少しお話ししましたが2016年に始まっている企業です。そこから約8年間、シミュレーションとかプロトタイプとか波力発電とか自律航行、あるいは最近だと洋上のコンピューティングという風なところをやってきましたと。そしてそこからですね、次のフェーズに入っていって、検証とかコスト最適化ということで、北太平洋へのOcean 3という3つ目のプロトタイプのパイロットノードの配備をしていますと。そこでAI推論能力の洋上の証明と、工場での大量生産プロセスというのを確立していこうというところを狙ってるみたいです。
そして今後、拡張計画ということで商業規模での拡大、そして南半球などへの高エネルギー海域ですね、波が荒い地域に大規模にフリートを自律配備していく。そうしたことを今考えているみたいですので、実証して、そしてそれを大量生産の準備をして、今後大量生産をしていく、それを指数関数的にスケーリングしていきますよというのが、彼らのロードマップになってるのかなと思います。特に最初、ハードウェアのテストってやっぱり極めて失敗コストが高いので、泥臭いスモールテストと、数万回の数値シミュレーションっていうのを経てから量産工場に移していく、実行していくということをしているみたいですね。
フェーズ1の8年間って長いなとも思うんですけど、8年かかった理由っていうのは技術的なところなんでしょうか?
そうですね。最初、この後またちょっと話しますけれども、最初ビットコインマイニングをターゲットにしていたみたいな、2016年ちょうど流行ってた頃みたいなところだったんですが、そこからピボットしたっていうところがあったりもしましたし、あと可動部品をなくして波の力だけでタービンを回すみたいなっていうのは前例のない物理モデルだったと言われています。そこで流体力学のシミュレーションっていうものを数百万回して、構築に結構時間をかけたというところが言われていますね。
これからOcean 3をやってくってところだと思うんですけど、何が検証できると次に進めるっていうようなところを考えてるんでしょうか?
1つが波力発電の効率です。最初の方に言いましたが、まだこなれているわけではない技術なので、そこの効率が1つ。そしてもう1つがやはり実際のAI推論チップを搭載して、衛星通信経由で商業レベルのSLAを満たすような、サービスレベルアグリーメントを満たすようなシステムになっているか、いわゆる統合システムとしての検証っていうところをOcean 3ではやっていくというところが鍵みたいです。その時にあとは多分大量生産ですね。大量生産と言いますか、パイロット製造工場における量産化プロセスを立ち上げ、製造の歩留まりとかの向上っていうところもハードルが高くて、ここがおそらく次のスケールを遅らせる最大のリスクになってくるかもしれないなと思います。
では続いてモートと競合ですが、競合に関してはですね、色々ありますと。Panthalassaの代わりに、Crusoeみたいなデータセンターをやっているところもあれば、Aikidoみたいな洋上風力かけるDC、データセンターをやってるところもあります。
あとは以前紹介したStarcloud、宇宙のデータセンターみたいなところもあって、いくつかアプローチ、皆さん発電とデータセンターを組み合わせているっていうところがいくつかありますが、この時にPanthalassaに関しては、いくつか捨てますと。1つが通信速度を捨ててます。とか、保守の容易さってのを捨ててます。遅延はあってもいいけど、その土地制約を回避したりとか、冷却コストを極限ですね、に減らしていくみたいな、そうしたメリハリをかなりつけていると、トレードオフをつけているというところが1つポイントとしてあるかなと思いますと。
あとは、地理的に強力なモートがあるという風に言われています。1つが特許群というところに加えて、中国に関しては近海には適した波力資源がないみたいな、そうした中国を意識した資源の有無という風なところ。そして鉄をベースとした模倣困難なサプライチェーン構築みたいなところが今後モートになっていくんじゃないかという風なところが言われています。CrusoeとかStarcloudのアプローチと比べても、シンプルで物理法則的になっているというのが彼らの主張ですね。
なんですかね。なんか捨ててるものがちゃんとあって潔いなとも思いつつ、一方で衛星とかでそのStarlinkにかなり依存してるようにも見えるんですけれども、その辺りってそれでもいいやってところなのか、今後変えていくようなところなのか、どういう風に考えてるんでしょうか?
そうですね。確かにそこのリスクはあると。これStarcloudもなんか同じようなリスクの話をした気がしますが、SpaceX以外にもですね、最近Amazonの支援している、Kuiperみたいなところとか、低軌道の衛星に関してはいくつか企業体が出てきていて、競争も激化しているので、通信インフラはコモディティ化していって交渉力は保てるんじゃないかというのが、これもStarcloudと同じような説明になっているのかなと思いますね。
あとは、今回、波力プラスDCってことでPanthalassaですが、波力だけだとCorPower Oceanとかがあったりとか、他にもNautilus Data Technologiesみたいなところは、水冷とかをやっている冷却事業というところを中心にやっているっていうところもあったりしますし、Microsoftなんかもその海中コンテナ型データセンター、非常にGPUの取り替えが難しいみたいな話を聞いたことがありますけど、そうしたところも出てきていて、いろんなアプローチがあり、今回のPanthalassaに関してはそこにプラスDCで垂直統合をしているというのが、普通の波力発電とか水冷のデータセンター、海中データセンターとはちょっと違うっていうところになるのかなと思います。
では参入戦略です。初期はですね、少しお話ししましたがビットコインマイニングっていうところをターゲットにしていたそうです。大量の電力を消費するけれども、データの送信量っていうのはごくわずかで、通信の遅延が全く問題にならないので、このビットコインのマイニング用のデータセンターと言いますかを作ろうというところから始まったみたいです。まずここに関して入っていこうってのは面白い視点だなと。ただそこからピボットして、生成AIブームの到来とともに入出力のデータ量が比較的軽いAI推論、インファレンスの方にターゲットを移して、そして最初のMVPは物理装置ではなくって徹底した流体系のシミュレーションで入っていったと。マクロトレンドの波乗りをしたというところですね。
最初の検証ということで、投資家に対してエネルギーの指数関数的な需要の増加というマクロトレンドを啓蒙して資金を得て、トラクションも獲得して、そしてOcean 1で小規模な計算実証を実行したというような、そうした形で入っていったというところがあります。初期にやっぱりハードウェアスタートアップはなかなかトラクション獲得が難しいので、初期にプロダクトを作れない中でですね、こうしたエネルギーの需要増という避けられない未来っていうのを投資家に伝えていって、シミュレーションをやりながらMVPを回していったというところが、彼らの参入戦略だったという風に言えると思います。
その最初のMVPっていうのは物理装置ではなくて、シミュレーションだったんですね。
そうですね。シミュレーションをやっていったっていうところが言われていますが、他にもですね、一応記事を見ていると、なんか自分たちのガレージに水槽を用意して、その水槽の中でガチャガチャやったっていう、ちょっと小さめのハードウェアを使ってやっているっていうところもあったと聞いてますし、あと何でしょう、海に出ていって、その鋼鉄ですね、を上げ下げして、本当に自分たちで波を起こしてみるのかみたいな、そうした実験もしてはいたみたいな記事を見たことがあります。
あとは投資家に対する啓蒙みたいな話がありましたけれども、なんかプレゼンの内容がどうもですね、ムーアの法則でチップが進化したとしても消費エネルギーは指数関数的に増大するというような、そうした傾向と言いますか、それはその通りなので、そういうところを言って、陸上インフラは早々に限界を迎えるから何か別の手法が必要ですみたいなことを言ってたみたいですね。第一原理思考的な話なのかなという風に思います。
では起業プロセスです。実はですね、このヘッジファンド出身のCEOの方、それがあってビットコインとかに目をつけてたのかなという感じはしますけれども、がCEOです。Bridgewaterでマクロ経済とかAIを研究していたそうです。人類のエネルギーを倍増させるには海しかないと、マクロ視点でそのように思って海に目をつけた人がCEOで、共同創業者のブライアンさんという方は元ディズニー、Googleの発明家で、彼がYouTubeに投稿した波力発電のコンセプト動画をCEOのガースさんが見つけて、声をかけたという風なことが言われています。
その波力発電のコンセプト動画から、それでですね、ロサンゼルスのファストフード店で4時間ぐらい激論をして、そこから起業したみたいなところが言われています。あと初期のチームに関しては、複雑な海洋ロボティクスを実行するために、SpaceXでロケット着陸を手がけたエンジニア等を採用したというところみたいですね。
なのでこの彼らも本当に最初のこのコンセプトの動画っていうのを見て、ヘッジファンド、そしてディズニー、Googleの発明家、そしてSpaceXのロケットエンジニア、そうしたバラバラの専門性を1個にインテグレーションして地球規模の課題を解決するみたいな。ビットコインが地球規模の課題だったかわかんないですが、課題はエネルギーであって、それはそれでやったと。そして本当に4時間ぐらいそうしたところから話し合って
スタートアップをやろうと決めたのが2015〜2016年ぐらいだったみたいですね。あとは流体力学のシミュレーションであるとか、自律航行のAIを内製化するところで、普通の製造業ではなくて、本当にいろんな技術を集めてきたアスターだと言えると思います。
始まりがすごくスタートアップストーリーっぽいですね、とも思ったんですが、CEOが金融出身なんですけど、ハードウェアもできるのか、どこまで分担しているというか、どういうところを担当していらっしゃるんでしょうか?
そうですね、中の詳細は分かりませんが、CEOの方はマクロのトレンドを読んでいく、あるいは資金調達、ビジョンセリングみたいなことをしていくところをやっていて、技術のコアの部分は共同創業者のブライアンさんとか、SpaceX出身の専門家の方に任せるみたいな、そういう役割分担をやっているみたいです。あとは初期のチームに関しては、各分野、流体力学とかパワーエレクトロニクスとか、トップクラスの人たちを1人ずつ口説き落として、そうしたことによって、このチームだったら何かすることができるんじゃないかというものを生み出していったような話がありました。
初期の学びと歩みというところです。彼らは最初、滑車とか複雑な機構を検討していたそうです。でも過酷な海ではやっぱり複雑な機構は絶対に生き残れないと悟って、稼働部品を極限まで減らすような引き算のピボットを決断したと言われています。
そして泥臭い検証ということをやっていて、先ほど少しお話ししましたが、高度なシミュレーションを行う一方で、初期は船の裏から筒をぶら下げて、クレーンのように上下させて無理やり波の環境を作り出して、タービンが回るかみたいなことを検証するということをやっていたと言われています。この反復の検証によって、1枚の鉄、鋼鉄の塊という究極にシンプルな、量産可能な現在のデザインにしていったということが言われています。
こうしたハードウェアスタートアップで、頭の中で考えた複雑な機構を、いかに自然環境とかリアルな環境の前で試していくのか、あるいはそこに対してシンプルな構造を持たせることによって、量産とか保守可能性を上げていくみたいなところをきちんと検証したというところが、非常に面白いスタートアップかなと思います。
なるほど。その複雑な機構をやめちゃったことのデメリットはなかったんでしょうか。
1つが発電効率というところかなと思います。瞬間的な最大効率とかは劣る設計になったみたいですが、やはり稼働部をなくしたことによって、故障による稼働停止というものがかなり少なくなったりとか、長期的な総発電量、あるいはメンテナンスコストの削減でメリットを得たと。ここも本当にメリハリをつけたというところかなと思います。
あとはこうした泥臭いテストをすることによって、自然の波の力を制御していくという発想ではなくて、自然の波の力に逆らわずに、どうタービンにその力を流し込んでいくのかという発想に転換したと、流体力学的なアプローチに転換したみたいなところが言われています。
あと実は初期資金は、CEOがやはり自分の貯金の半分ぐらいを溶かしたと言われています。そのブリッジウォーターの時の関係性からエンジェル投資家とかを集めて、個人の信用力でシード資金も引っ張ってきて、みたいなことをやって初期は歩んでいったみたいですね。
そうしたところで資金をどうやって集めてきたのかというところです。CEOがオフィス代で貯金の半分を減らしながら開始して、エンジェル投資を獲得しつつやっていったと。そしてFounders Fundから資金調達してR&Dを加速して、今はピーター・ティール主導のシリーズBというところになっているみたいです。あとジョン・ドーアとかマーク・ベニオフとか、有名なスタートアップ関係のVCとか、あるいは創業者からも集めている。単なるニッチな技術とか、あるいは環境技術だけではなくて、シリコンバレーのメインストリームがAIインフラの次の一手として本当に賭けているというところに移りつつあるのかなと思います。
そして累計調達額に関しては2.1億ドル、企業価値は約10億ドルというスケールになってきていて、R&Dの段階を抜けて、いよいよ工場建設とか実際の配備というような実行フェーズに移りつつあるというのが今の現状なのかなと思います。
そして、ピーター・ティールがここに投資した理由は、宇宙開発の次に来るのが、地球の次のフロンティア、未開拓のフロンティアとして海というところがあって、そのAIの電力危機という構造的課題に対してヘッジしていくというところがあるのかなと。
ただ一方で、もちろんいろんなリスクはあって、海上、無係留の発電とか計算ノードを置く場合には、ここがどうやって扱われるのか、発電設備なのか、船舶なのか、自律航行体なのか、データセンターなのか、いまいちよくわからないというところがあります。環境当局とか規制当局によってどういう風に許認可が行われていくのか、今後制度が整備されていくのかというところは、結構リスクとしてはあるので、多分ロビイングとかもしていくんじゃないかなという感じはします。
あとはやはり、冒頭の質問にあった通り、その海水の冷却による排熱とか騒音とか振動とか、あるいは照明もあると思いますし、生物が付着するとか衝突リスクというところもあったりはするので、波力というのはクリーンに見えやすいですが、商用フリートとかにしてしまうと、局所的な海洋環境影響評価というのが必要になってくるので、ここをどうしていくのか。
あとはセキュリティとかデータ主権というところ、海上ノードというものの、データ主権、通信にかなり依存するというところもありますし、このデータとか、この辺りをどうしていくのか、あるいは国家安全保障とか輸出管理的にどうなっていくのかみたいなところとか、いろんな保守もそうですし、保険もそうですし、いろんなリスクはあるんですが、スタートアップらしい挑戦かなと思いますね。
そうですね。すごくスタートアップらしいなと思います。足元で1.4億ドル調達した資金というのは、どういうところに使うような予定なんでしょう?
そうですね。まずオレゴン州に製造工場を建設していくということが言われています。2026年に北太平洋に配備するOcean 3のノードの製造と運用を起こすというところに充てられていくということが言われていますね。
では、もし日本で同じアイデアで起業するならということで、AIに考えてもらいました。
1つが、やはり日本特有の海洋というものをうまく使っていくというところ。世界第6位のEEZ、排他的経済水域を持っていて、トップクラスの造船とか特殊鋼の技術とサプライチェーンがすでにあるので、このA、B、Cがいけるんじゃないかということが言われています。
案Aとしては、造船、鉄を使っていくというところです。ローカル向けの超高耐久ノードの製造特化型のベンチャーを設立して、世界のインフラプロバイダーとなっていくというのが1つ。そして案Bとして洋上風力とのハイブリッド展開ができるんじゃないかと。沿岸部で進行中の洋上風力プロジェクトに相乗りして、風車の土台にサーバーを沈めて、電力と冷却をしやすくする、みたいなことができるんじゃないかというのが言われているところです。
そして案Cとしては、超低遅延AIの特化ということで、太平洋のど真ん中ではなくて、EEZ内の近海に配置して、自動運転とか金融の取引であるとか、高頻度取引ですね、ハイフリークエンシートレーディングみたいなところに不可欠な、絶対止まらない低遅延の海上データセンターとして、アジアの市場を取っていくことができるんじゃないかみたいなところが、このAIが考えているところです。Panthalassaが捨てた低遅延というところを逆にとって、日本の近海にノードを設置していくというのが、この案Cというところになるのかなと思います。
なるほど。一方で結構日本ならではの壁もありそうだなと思っていて、まず台風とか、風が強いみたいなところもあると思うんですけど、そういうのはどう耐えていけばいいんでしょうか?
そうですね。厳しいのは事実だと思うので、逆に技術を使って何とかやっていく。例えば錆を防ぐ技術、特殊鋼とかを使ったりとか、海洋土木技術をうまく使って、高耐久なノードを開発していく。そうすると世界に輸出していけるので、もしかしたらそこでビジネスモデルが成り立つかもしれないというところかもしれないと思います。
物理的な壁ではなくて、漁業権とか規制のところはどうなんですかねと思うんですけど、クリアできるんでしょうか?
そうですね。おそらくかなり壁になってくると思います。なので地元に対して直接的な経済メリットとかを提供するビジネスモデルというのが必要でしょうし、場合によってはこのデータセンターの排熱を利用して、高級魚の養殖をその周辺で行うとかいうような、ちょっと組み合わせが必要になってくるかなという印象はありますね。
とはいえ、Panthalassaさんみたいなスタートアップも別になくはないと思うので、ストレートにそうしたところもやっていく。特に鉄鋼とか特殊鋼とかが強い日本なので、その辺を使ってやっていくというのはあるかもしれないなと思います。
では、まとめです。このPanthalassaというスタートアップは前提を外したと。データセンターは陸にあるというような固定的な概念を捨てて、そして、波力だったらケーブルで送らなきゃいけないよねみたいなところを捨てて、ボトルネックの部分をうまく切り外して、海でデータセンターを作って、もう電力は送らなくていい、データ通信さえすればいいみたいな、そうした環境というものを発見したというところが、1つ思考の跳躍があった素晴らしいところかなと思います。
そしてハードウェアの設計の時には引き算をしていく。機能を足していくのではなくて、壊れるような要素を削ぎ落としていく、タービン1つにしていくみたいなところにすることによって、結果的に量産化と超低コストというような強みを獲得した。そうしたプロダクト設計、あるいは大量生産のスケールの設計というところができたというのがすごくいいのかなと思います。
そしてマクロトレンドの波にちゃんと乗っていると。AIというような、今来ているエネルギー需要に対してうまく乗っていく。そして自社プロダクトのすごさを語るというだけではなくて、そのトレンドにいかに乗っているのかというのをうまく伝えていくことによって巨額の資金を引き寄せて、資金調達を可能にしたというところなのかなと思います。
なので、Starcloudでもありましたけれども、やはりこのやろうとしているビジネスの最大の制約、前提というものを、いかに根本からひっくり返すような、無効化するような、全く別次元のアプローチがないのか。その1つを特定することによって、その特定した制約を全く無視できるような環境というようなことを考えて、新しいマーケットというのを考えてみるというのは1つポイントかなと思います。
今需要が来ているものにうまく乗っかることによって、供給の制約があるところに関しては新しい技術が入りやすいので、今だとAIとか半導体とかもそうだと思いますけれども、そうした需要に対して供給制約を抱えるところに対して、こうやればもしかしたらできるんじゃないかみたいな発想をしていくのは、もしかしたら他のスタートアップの皆さんにとってもヒントになるような動き方なのかなと思いました。
ということで今日はPanthalassaを紹介しましたが、今日はどうでしたでしょうか?
いや、なんか賛否両論ありそうで、すごくスタートアップらしいなとも思います。おっしゃるように、陸のデータセンターには限界があるよねというのは本当にそうだと思うので、その先にどうするんだというところで、これからしのぎを削っていくようなところで、これから本当に必須になっていくようなものかもしれないなと思いました。
はい。いろんな技術的なハードルとか、制度的なハードルとかは高いとは思いますけれども、実現すれば本当に世界のエネルギーを非常に多く使うデータセンターとか、あるいは今後水素とかも作っていくかもしれないということだったので、そうしたエネルギー環境を変えてくれる技術かもしれないなと思って期待していますし、日本からもこういうチャレンジが生まれてくることを期待しています。
では、FoundX Review Startup IdeaCast、今日はこちらで終了です。今後も皆さんの参考のために最新のスタートアップの情報などを紹介していければと思います。ご興味のある方は是非チャンネル登録やいいねをお願いいたします。またFoundXの各種プログラムの参加者を募集していますので、周りに起業を考えている方がいらっしゃれば是非FoundXを紹介してください。ではまた次回よろしくお願いします。ありがとうございました。
ありがとうございました。
記事公開
