波力発電で動く洋上データセンター、Panthalassaは「電気ではなくデータを運ぶ」

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概要

FoundXの番組「FoundX Review Startup IdeaCast」は、海外スタートアップのアイデアをAIで整理・分析して紹介している。今回取り上げたのは、海に浮かぶ鋼鉄のノードで波力発電を行い、その電力をその場でAIの計算に使うPanthalassa(パンサラッサ)である。番組はAIで情報を整理しているため、内容が古い場合や誤りを含む場合があると冒頭で断っている。

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中心的な問いは、生成AIブームでデータセンターの電力が足りなくなるなか、陸上の制約をどう回避するかだ。解説役は、陸上の制約を一つずつ解消するのではなく「前提そのものを外した」点にこの会社の面白さがあると見ている。

なお冒頭では、地熱発電(EGS)のFervo Energyが上場し、1兆円規模の時価総額がついたことにも触れた。次回はその上場申請書類を読む回にしてもよいかもしれない、と話している。

宇宙の次は海:Panthalassaを取り上げた理由

解説役がPanthalassaを選んだのは、データセンターの電力不足が話題になるなかで、先々週に紹介した宇宙データセンター(Starcloud)に続く「海のデータセンター」の事業者だからだ。ニュースでは大型の資金調達やピーター・ティールの出資が話題になった。一方で、同社は2016年ごろ創業の比較的古い会社でもある。そこで、今に至る経緯まで掘り下げたいという。

事業の骨格はこうだ。巨大な鋼鉄のノードを海に浮かべて漂わせ、波で発電し、その電力をデータセンターの電源として使う。従来の波力発電では、電力を陸へ送ることが大きな壁だった。Panthalassaは発電した電力をその場で消費することで、この壁を回避しようとしている。社名は、かつて超大陸パンゲアを取り囲んでいた唯一の巨大な海の名前に由来する。

陸上データセンターが抱える制約と「海にすべて置く」発想

解説役はまず、陸上データセンターの拡張が難しくなっている背景を挙げた。AIインフラへの投資は大きく伸びている。しかし送電網は逼迫し、冷却水は不足し、許認可は遅れている。さらに排熱の問題、地域住民の反発、水資源をめぐる農業との競合もある。

Panthalassaはこれらのボトルネックを個別に解決するのではなく、インフラごと海に移す。海は地球の7割を占め、冷却水と発電源がいわば無尽蔵にある。そこで計算まで済ませてしまう、という発想である。海洋エネルギーには数テラワット規模、つまり世界の電力消費をまかなえる水準のポテンシャルがあるとも言われているという。土地、水、送電網の問題を海で完結させ、重要インフラ投資の流れに乗せる。これが同社の狙いだと解説役は整理した。

宇宙との比較と、海を温めることへの懸念

宇宙データセンターと比べた海の利点を聞き手が尋ねた。解説役は宇宙側の弱点を二つ挙げる。一つは、下がってきたとはいえ打ち上げコストがまだ高いこと。もう一つは、真空のため排熱が非常に難しいことだ。宇宙は冷えていると思われがちだが、データセンターの熱を逃がすのは難しい。これに対し海は、無料でほぼ無限のヒートシンクとして使える。同社はこれを最大の優位性と位置づけている。

聞き手は、海を冷却に使えば海水が温まり、生態系に影響が出ないかとも尋ねた。解説役の答えは「あるかないかで言えばあると思う」。同社は、波のエネルギーを吸収して計算に使い、その熱を海に戻すので地球全体のエネルギー収支はゼロだと主張している。解説役はこの主張に少し首をかしげつつも、化石燃料を燃やすよりは環境負荷が低いのはおおむね確かだろうと述べた。

冷却が課題になる背景として、解説役はIEAの調査を引いた。AIサーバーラックあたりの電力密度は2020年から2025年の5年で11倍になり、2027年にはさらに4倍になるという。また同社は沿岸ではなく外洋を狙っている。漁業権、航路、景観との衝突を避けられるうえ、外洋のほうが波のエネルギーも高いからだという。

波力発電を阻んできた課題

解説役は、従来の波力発電の課題を「海底ケーブルの呪縛」と表現した。電気を陸に運ぶには高価な海底ケーブルの敷設が必要で、系統接続の許認可も厳しい。そのため拡張性にもコストにも難があった。Panthalassaはその場で計算し、結果を通信で送ることで、ケーブルを介さずに電力を使い切る。

ただし、そこには別の課題もある。AIサーバーの熱密度の上昇だ。GPUの進化で空冷は追いつかなくなり、液冷や液浸への移行が必須になりつつある。データセンター建設では冷却インフラの設備投資がかさんでいる。一方で推論ワークロードは膨大で、データセンターの電力需要は2030年に現在の約2倍、950TWhに達するとされる。

波力そのものにも弱点がある。資源量は魅力的だが、塩害、腐食、嵐、保守、保険といった課題が多い。その結果、商用化は風力に後れを取ってきたと解説役は説明した。

顧客が受け取るのは「計算結果」

ケーブルがないなら顧客は何を受け取るのか、と聞き手は尋ねた。解説役の答えは、AIの計算処理の結果である。たとえばStarlinkなどを経由して衛星にデータを上げ、そこから地上に届ける。電気ではなく計算結果を返す、というのがこの会社の答えだ。

既存のデータセンター事業者との違いについて、解説役はこう説明した。既存事業者は原子力発電所の再稼働、SMR(小型モジュール炉)、PPA(電力購入契約)などで電源確保に巨額を投じている。しかし契約しても建設や許認可に何年もかかり、需要に追いついていない。陸上でも水冷化は進んでいるが、巨大なチラー(冷却機)とその電力が必要で、大量の真水も消費する。Panthalassaは海水をそのまま熱交換に使うため、チラー設備を省略できるという。

4つの要素の垂直統合とシンプルな物理

同社の解決策は、4つの要素を一つに統合する点にある。波力発電、発電した電力のオンサイト消費、海をヒートシンクとする冷却、そして衛星通信によるデータ輸送だ。これらを個別に手がけるのではなく、垂直統合に近い形で運営している。

発電の仕組みは単純だ。波の上下運動で内部の水を押し上げ、ダムのようにタービンを回して発電する。その電力で自社のAIサーバーを動かし、熱は海に逃がし、推論のトークン(学習の可能性もある)を低軌道衛星経由で送る。解説役は、物理的なケーブルの制約をStarlinkの進化という別の技術トレンドに乗って解決した点を、発想の転換と評価した。複雑な機械を使わない物理モデルのシンプルさが量産の鍵になっている点も面白いという。

同社はOcean 1、Ocean 2とプロトタイプで洋上の実証を重ね、現在はOcean 3の段階にある。Ocean 3は自律推進するプラットフォームで、アンカーも海底ケーブルも使わない。実機での実証に加え、シミュレーションも多く行っている。解説役によれば、技術上の最大の論点は発電そのものよりも、外洋での稼働率、故障時の保守、サーバーの更新、衛星の通信容量で本当に足りるか、外洋での規制、保険といった点だという。

塩害と通信容量への答え

保守運用について、聞き手は塩害への対策を尋ねた。解説役によれば、海水はサーバーに直接触れない。内部の密閉された冷却ループと外部の海水の間で熱交換するクローズドループ設計になっているという。

衛星通信の容量についても質問が出た。大規模な学習には向かないと解説役は認める。一方、推論の入出力データは比較的軽いため、現在の低軌道衛星の帯域でも通信は成り立つと言われているという。入出力のデータ量が小さい推論をバッチ処理するなら何とかなるかもしれない、というのが解説役の見方だ。ただ、衛星の通信容量が一つの課題になるとも指摘されているという。

市場、初期顧客、ビジネスモデル

市場規模として、解説役は次の数字を紹介した。TAMはデータセンターインフラ投資額の5,800億ドル(約87兆円)。単なるエネルギー市場ではなく、AIコンピュートのためのエネルギー市場という位置づけである。SAMは世界の水中データセンター市場予測の148億ドル。SOMは大規模なノード配備と初期のAI推論需要だ。陸上の電力網の限界や環境規制といったネガティブな要素が、同社には逆に成長ドライバーになるという。

初期顧客は、低遅延を求めない層になると想定されている。安価で大量の計算資源を必要とする推論事業者や、合成データ生成・強化学習を行うAI企業だ。聞き手がハイパースケーラーも顧客になり得るかと尋ねると、解説役は「有力なシナリオの一つ」と答えた。ハイパースケーラーも電力確保に苦しんでおり、Panthalassaが提供するインフラを借りる、あるいは共有する形が考えられるという。

ビジネスモデルの要点はコストの大幅な削減である。陸上で必須だったチラー、土地、建屋の費用が小さくなるか、丸ごと削ぎ落とされる。本体も鋼鉄で比較的安く作れる可能性がある。目標発電コストは1kWhあたり0.02〜0.025ドルとされ、天然ガス発電の限界コストや太陽光を下回る「世界最安クラス」のポテンシャルがあると言われているという。この安い電力で動く計算資源を、推論枠やコンピュート容量としてAI企業に販売する。

ノード1基の製造コストは約100万ドル(約1億円)とされる。土地取得のリードタイムがなく、工場から海に投入するだけで収益が上がる。解説役自身は「本当かって思いますけれど」と留保をつけた。

保守コストの重さについて聞き手が問うと、解説役は同社の想定を紹介した。定期的にノードを港に戻し、チップ交換や保守を一括で行うモデルだ。船の派遣コストを含めても、CAPEXとOPEXの削減効果は大きいとされているという。100万ドルが実現可能かという質問には、詳細は企業秘密だろうとしつつ説明した。特殊なレアアースを避け、既存の造船やパイプ製造のインフラを流用する鋼鉄の塊として設計しているため、量産効果が効きやすく、現実的な目標とされている。解説役はこれを「ディープテックというより、インテグレーションのテック」と表現した。

「海のiPhone」:引き算による量産戦略

戦略の核は、ハードウェアをシンプルにして大量生産することにある。過酷な海では、制御翼やフラップのような可動部品は塩害や嵐で確実に壊れる。そこで同社は可動部品を内部のタービン一つに絞り、鋼鉄の缶のような塊に徹した。これにより造船やパイプ製造の既存インフラを使い、iPhoneのように量産できるようにしたという。「海のiPhone」とも呼ばれているらしい。自動車工場よりシンプルな設備で、次々と製品を海に送り出す構想だ。

地政学的な狙いもある。バッテリーのように中国のサプライチェーンに依存するのではなく、欧米に残る鉄鋼・造船のインフラを使い、同盟国内での生産を進められる。解説役は、造船は欧米にもうあまり残っていない気がすると付け加えている。

10〜20年後には数千から数万基のノードを外洋に配備し、世界の主要なエネルギープロバイダーになることを構想している。将来は洋上でのグリーン水素やグリーン燃料の製造も視野に入れているという。

シンプルな設計は真似されないのか

聞き手は、シンプルだとかえって真似されやすいのではないかと懸念を示した。解説役は同社の主張を紹介した。外装は単純に見えても、内部には流体力学に基づく制御、発電、自律航行、冷却を統合して制御するソフトウェア群がある。そこに特許とノウハウの塊、つまりモート(参入障壁)があるという。解説役はテスラを例に、シンプルなハードウェアを統合・制御するソフトウェアにこそ本当の強みがあるのかもしれないと述べた。

ロードマップと、8年かかった理由

同社は2016年に創業し、約8年間、シミュレーション、プロトタイプ、波力発電、自律航行、最近では洋上コンピューティングに取り組んできた。次の段階では、3つ目のプロトタイプであるOcean 3のパイロットノードを北太平洋に配備する。そこで洋上でのAI推論能力を証明し、工場での大量生産プロセスを確立する狙いだ。その後は商業規模に拡大し、南半球などの波の荒い高エネルギー海域に大規模なフリートを自律配備する計画だという。ハードウェアのテストは失敗コストが高いため、泥臭い小規模テストと数万回のシミュレーションを経てから量産工場に進む、という進め方をしている。

聞き手は8年は長いと感じ、その理由を尋ねた。解説役は二つを挙げた。一つは、当初ビットコインマイニングを狙っていてそこからピボットしたこと。もう一つは、可動部品をなくし波の力だけでタービンを回す方式が前例のない物理モデルで、数百万回の流体力学シミュレーションに時間をかけたことだ。

Ocean 3で検証すべき点として、解説役は三つを挙げた。第一に、確立された技術ではない波力発電の効率。第二に、実際のAI推論チップを搭載し、衛星通信経由で商業レベルのSLA(サービス品質保証)を満たせるかという統合システムとしての検証。第三に、パイロット工場での量産プロセスの立ち上げと歩留まり改善だ。特に三つ目はハードルが高く、次のスケールを遅らせるリスクになるかもしれないと解説役は見ている。

競合との違い:何を捨てたか

電力とデータセンターを組み合わせる企業はほかにもある。陸上型のCrusoe、洋上風力とデータセンターを組み合わせる企業、以前紹介した宇宙のStarcloudなどだ。そのなかでPanthalassaは、通信速度と保守のしやすさを捨てた。遅延は許容する代わりに、土地の制約を回避し、冷却コストを極限まで下げる。このメリハリのあるトレードオフが特徴だと解説役は整理した。

同社は地理的なモートも主張している。中国の近海には波力発電に適した資源がないこと、そして鉄をベースにした模倣困難なサプライチェーンだ。Crusoeや Starcloudと比べても、自社のほうがシンプルで物理法則に即している、というのが同社の主張である。

聞き手は、捨てるものを決めている潔さを認めつつ、Starlinkへの依存度の高さを懸念した。解説役によれば、この点はStarcloudと同様の説明になっている。SpaceX以外にもAmazonのKuiperなど低軌道衛星の企業体が出てきて競争が激しくなっており、通信インフラはコモディティ化するので交渉力は保てる、という理屈だ。

ほかにも、波力単体ではCorPower Oceanのような企業がある。水冷などの冷却事業を中心に手がける企業もある。Microsoftの海中コンテナ型データセンターも存在するが、GPUの交換が難しいという話を解説役は聞いたことがあるという。Panthalassaの違いは、波力にデータセンターを加えて垂直統合している点にある。

参入戦略:ビットコインマイニングからAI推論へ

同社が最初に狙ったのはビットコインマイニングだった。大量の電力を消費する一方、データの送信量はごくわずかで、通信の遅延もまったく問題にならない。生成AIブームが来ると、入出力のデータ量が比較的軽いAI推論へとターゲットを移した。解説役はこれを、マクロトレンドの波に乗った動きと評価した。

最初のMVPは物理装置ではなく、徹底した流体力学のシミュレーションだったという。記事を見る限り、ガレージに水槽を用意して小さなハードウェアで試したことや、海に出て鋼鉄の筒を上げ下げして人工的に波を起こす実験もしていたらしい。

投資家へのピッチでは、ムーアの法則でチップが進化してもエネルギー消費は指数関数的に増えるので、陸上インフラは早々に限界を迎える、と訴えていたようだ。解説役はこれを第一原理思考的な話だと見る。トラクションを得にくいハードウェアスタートアップが、プロダクトを出せない段階で「避けられない未来」を投資家に伝えて資金を集め、シミュレーションでMVPを回した。Ocean 1で小規模な計算の実証も行った。これが同社の参入戦略だったと解説役はまとめた。

創業チーム:ヘッジファンド出身CEO、発明家、SpaceX人材

CEOのガース氏はヘッジファンドのBridgewater出身で、マクロ経済やAIを研究していたという。解説役は、その経歴ゆえにビットコインに目をつけたのではないかと推測している。ガース氏は、人類のエネルギーを倍増させるには海しかないと考えていた。共同創業者のブライアン氏は元ディズニー・Googleの発明家で、波力発電のコンセプト動画をYouTubeに投稿していた。ガース氏がその動画を見つけて声をかけ、ロサンゼルスのファストフード店で4時間ほど議論した末に起業を決めたのが2015〜2016年ごろだという。その後、複雑な海洋ロボティクスを実現するため、SpaceXでロケット着陸を手がけたエンジニアらを採用した。

聞き手は、金融出身のCEOがハードウェアのどこまでを担っているのかを尋ねた。解説役によれば、CEOはマクロトレンドの読み、資金調達、ビジョンを語ることを担い、技術のコアはブライアン氏やSpaceX出身の専門家に任せる分担だという。初期には、流体力学やパワーエレクトロニクスなど各分野のトップクラスを一人ずつ口説き落とした。それによって「このチームならできるかもしれない」という期待を生み出していった、という話もあるという。

初期の学び:複雑な機構を捨てた「引き算のピボット」

同社は当初、滑車のような複雑な機構を検討していた。しかし過酷な海では複雑な機構は生き残れないと悟り、可動部品を極限まで減らす「引き算のピボット」を決断した。船の上から筒をぶら下げてクレーンのように上下させ、人工的に波の環境を作ってタービンが回るかを確かめるといった泥臭い検証を繰り返した。その結果、鋼鉄の塊という、量産可能で極めてシンプルな現在のデザインにたどり着いたという。

この判断にデメリットはなかったのかと聞き手が問うと、解説役は発電効率を挙げた。瞬間的な最大効率は落ちる設計になった。その代わり、故障による稼働停止が大幅に減り、長期的な総発電量とメンテナンスコストの面でメリットを得たという。さらにこうしたテストを通じて、自然の波を制御するのではなく、波に逆らわずその力をタービンに流し込むという流体力学的な発想に転換したとされる。

資金調達の経緯と現在

初期は、CEOが自分の貯金の半分ほどを使ったという。Bridgewater時代の人脈からエンジェル投資家を集め、個人の信用でシード資金を得た。その後Founders Fundから調達してR&Dを加速し、現在はピーター・ティール主導のシリーズBに至っている。ジョン・ドーア氏らスタートアップ界の著名な投資家や創業者も出資しているという。

累計調達額は2.1億ドル、企業価値は約10億ドルの規模になった。解説役は、R&Dを抜けて工場建設や実配備という実行フェーズに移りつつあると見る。ティールが出資した理由については、宇宙開発の次の未開拓フロンティアとして海があり、AIの電力危機という構造的課題に賭けているのではないかと推測した。

直近で調達した1.4億ドルの使い道は、オレゴン州での製造工場の建設と、2026年に北太平洋へ配備するOcean 3のノードの製造・運用だという。

リスク:規制、環境影響、データ主権

解説役が最初に挙げたリスクは規制である。外洋で発電・計算するノードは、発電設備なのか、船舶なのか、自律航行体なのか、データセンターなのか、扱いがはっきりしない。環境当局や規制当局がどう許認可し、制度がどう整備されるかは大きなリスクで、ロビイングも行うのではないかと解説役は見ている。

環境面では、排熱に加えて騒音、振動、照明、生物の付着、衝突のリスクがある。波力はクリーンに見えやすいが、商用フリートを展開すれば局所的な海洋環境影響評価が必要になる。さらにセキュリティとデータ主権の問題、通信への強い依存、国家安全保障や輸出管理上の扱い、保守、保険と、課題は多い。それでも解説役は「スタートアップらしい挑戦」と評した。

日本で同じアイデアをやるなら

番組では、同じアイデアで日本から起業するならどうするかをAIに考えさせた。前提は、日本が世界第6位の排他的経済水域(EEZ)を持ち、トップクラスの造船・特殊鋼の技術とサプライチェーンを持つことだ。そこから3案が出た。

  • A案:造船・鉄鋼を生かしたノード製造特化型ベンチャー。 超高耐久ノードの製造に特化し、世界のインフラベンダーになる。
  • B案:洋上風力とのハイブリッド。 沿岸で進む洋上風力プロジェクトに相乗りし、風車の土台にサーバーを沈めて電力と冷却を得る。
  • C案:超低遅延への特化。 太平洋の真ん中ではなくEEZ内の近海に配置し、自動運転や高頻度取引向けの「止まらない低遅延の洋上データセンター」としてアジア市場を取る。Panthalassaが捨てた低遅延を逆に取りにいく案である。

聞き手は日本ならではの壁を二つ挙げた。一つは台風や強風である。解説役は厳しいのは事実だとしたうえで、防錆技術、特殊鋼、海洋土木技術で高耐久ノードを開発できれば、世界に輸出するビジネスが成り立つかもしれないと答えた。もう一つは漁業権や規制である。解説役はかなりの壁になるだろうと認めた。そのうえで、地元に直接的な経済メリットを提供するビジネスモデルや、データセンターの排熱を使って高級魚を周辺で養殖するといった組み合わせが必要になりそうだと述べた。

まとめ:最大の制約を無効化する

解説役はPanthalassaから引き出せる示唆を三つにまとめた。

一つ目は、前提を外したこと。「データセンターは陸にある」「波力の電気はケーブルで送らなければならない」という固定観念を捨て、電力を送らずデータだけ通信すればよい環境を見つけた。そこに思考の跳躍があったという。

二つ目は、ハードウェア設計での引き算。機能を足すのではなく、壊れる要素を削ぎ落としてタービン一つにした結果、量産性と超低コストを得た。

三つ目は、マクロトレンドの波に乗ったこと。自社プロダクトのすごさを語るだけでなく、エネルギー需要の増大という流れにどう乗っているかを伝えることで、巨額の資金を引き寄せた。

Starcloudの回と同じく、解説役が強調したのは次の点だ。自分のビジネスにとって最大の制約や前提を特定し、それを根本から無効化できる別次元のアプローチや環境を考える。また、AIや半導体のように供給制約がある領域には新しい技術が入り込みやすい。そこで「こうすればできるかもしれない」と発想することは、他のスタートアップにとってもヒントになるのではないかという。

聞き手の感想は、賛否両論がありそうで、とてもスタートアップらしいというものだった。陸のデータセンターに限界があるのは本当なので、その先をどうするかで各社がしのぎを削るなか、これから必須になるものかもしれないと述べた。解説役は、技術的・制度的なハードルは高いと認めた。そのうえで、実現すればデータセンターの電力や将来の水素製造を通じてエネルギー環境を変えうる技術かもしれないと期待を示し、日本からも同様の挑戦が生まれることへの期待で番組を締めくくった。