ブラックホールとは何か:誕生、事象の地平面、特異点、観測史、そして蒸発まで

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概要

ブラックホールは「宇宙に開いた穴」のように思われがちだが、動画はまずそのイメージを否定する。遠くから見れば他の天体と変わらないが、近づきすぎると光でさえ二度と脱出できない。この動画は、ブラックホールがどのように生まれ、その内部で何が起きていると考えられているのか、人類がどこまでそれを観測してきたのか、そして最後にどうなると予測されているのかを順に解説している。

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恒星の崩壊から生まれる

動画によれば、ブラックホールは巨大な恒星が寿命を迎え、自らの重力に耐えきれず崩壊することがきっかけで生まれると考えられている。恒星は生涯のほとんどにおいて、核融合による外向きの圧力と重力による内向きの圧力が釣り合うことで形を保っている。しかしこの均衡は永遠には続かない。

太陽のおよそ8倍以上の質量をもつ恒星では、核融合の燃料が尽きると、このきわどいバランスが破滅的に崩れる。鉄でできた中心部のコアが重力で圧縮され、その直後に衝撃波が外層を吹き飛ばす。これが超新星爆発で、動画はこれを宇宙で最もエネルギーの高い爆発の一つと説明する。爆発後に残ったコアが重力に耐えきれず際限なく潰れると、ブラックホールになることがある。

ただし、恒星の質量などの条件が揃わなかった場合には、ほとんどが中性子で構成された中性子星が残る。そして、この中性子星同士が衝突することによってもブラックホールが誕生することがあるという。

恒星の崩壊以外の起源として、動画はビッグバンから1秒以内に物質の密度が極端に高い領域ができ、それが直接ブラックホールになったという説も紹介している。こうしたものは原始ブラックホールと呼ばれるが、現状ではまだ一つも発見されていない。

「穴」ではなく、小さな領域に質量が詰め込まれた天体

動画は、ブラックホールは実際には質量がごく小さな領域に押し込まれた天体であり、「穴」という表現からは程遠いと述べる。

その性質を説明する鍵として持ち出されるのが脱出速度である。宇宙のあらゆる物体には、その重力を振り切るために最低限必要な速度がある。地球では秒速およそ11km、太陽では秒速およそ600kmだ。これがブラックホールでは、光の速度である秒速およそ30万kmを超える。宇宙で光の速度を超えるものは存在しないため、ブラックホールに近づきすぎたものは二度と戻れない。光をはじめとする電磁波も例外ではないため、ブラックホールを直接観測することは非常に困難だと動画は説明する。

現在発見されているブラックホールは、太陽の数倍から100倍程度の質量をもつ恒星ブラックホールと、太陽の数十万倍以上の質量をもつ超大質量ブラックホールに分けられる。その中間の質量をもつ中間質量ブラックホールは、現時点で確実には発見されておらず、天文学に残る謎の一つだという。

事象の地平面とシュワルツシルト半径

事象の地平面とは、光や物質が二度と脱出できなくなる境界のことである。その内側に落ちたものは、光であっても外側に戻ってこない。動画は、一般相対性理論によれば事象の地平面の内側は未来永劫観測できない、と説明する。

回転していないブラックホールを想定すれば、事象の地平面の大きさは厳密に計算できる。その半径がシュワルツシルト半径で、天体の質量に比例する。太陽の場合はおよそ3kmになる。動画はこれを東京に置き換え、太陽と同じ質量のブラックホールがあれば、東京駅を中心に東京タワーや東京ドーム、両国国技館あたりまでの範囲に、太陽の質量である約2×10の27乗トンが集まっていることになる、と例えている。

一方で、事象の地平面は天体の「表面」とは異なる。ブラックホールそのものを表すものでもなく、そこに壁があるわけではないと考えられている。動画は、仮に人が事象の地平面を跨いだとしても、特に何も感じない可能性が高いと述べている。

近づいたら何が起きるか:スパゲッティ化

ブラックホールは何でも飲み込むイメージをもたれがちだが、動画によれば、近づきすぎなければ他の天体と同じように扱える。例として、太陽をまったく同じ質量のブラックホールに置き換えても、地球をはじめとする惑星の軌道は一切影響を受けないという。

では近づきすぎた場合はどうか。その体験はブラックホールの質量によって大きく異なる。比較的質量の小さい恒星ブラックホールの場合、事象の地平面に到達するはるか前に悲惨な最期を迎える。足から近づいたとすると、足と頭にかかる重力の差がどんどん大きくなり、最終的には体を引き裂くほどになる。

動画が示す数値では、太陽質量の5倍という一般的なブラックホールの場合、中心から20km、事象の地平面から5kmほどの距離では、わずか1mmの差でも重力の差が地球の重力の1万7000倍に達する。体は言葉では表せないほど細かく引き伸ばされ、一直線になってブラックホールへ消えていく。この現象は「スパゲッティ化」と呼ばれ、ブラックホールに近づきすぎたあらゆる物体が経験するものだという。

これに対し、超大質量ブラックホールでは、事象の地平面にいても距離の差による重力の差はごくわずかである。この場合は事象の地平面を何事もなく通過し、ブラックホールの内部に入ることになる。ただしそれ以降は決して脱出できず、外部に向けて情報を送ることも理論的に不可能になる。あとは中心にあるとされる特異点へ向かって進むのみだと動画は説明する。

一般相対性理論が予測する内部

現在の物理学で重力の理論として広く受け入れられているのは、アインシュタインの一般相対性理論である。観測が決して叶わない事象の地平面の内側について、この理論はどのような予測を立てるのか。

動画によれば、事象の地平面の内部では、一般相対性理論の記述上、時空の性質が外部と大きく変わると考えられている。これはよく「時間と空間の役割が入れ替わる」と表現されるが、動画はより正確には、ブラックホールの中心へ向かう方向が、外部における時間の進行のように避けられないものになる、ということだと説明する。私たちが時間の流れを止めたり逆らったりできないのと同じように、事象の地平面の内側では中心へ向かうことを避けられない。どのように運動しても最終的には特異点に至る、と一般相対性理論は予測している。

特異点の正体は分かっていない

では中心には何があるのか。動画は、現在の物理学ではその答えは全く分からないと言っても過言ではない、と率直に述べる。一般相対性理論によればそこには特異点があり、計算上その密度は無限大になる。しかし多くの科学者は、これはブラックホールの中心付近が一般相対性理論の適用範囲を超えているだけであり、一般相対性理論に代わる重力の理論が必要だと考えている。

観測も理論もない状態で特異点の様子を予測するのは困難を極めるが、動画は近年盛んに研究されている新たな理論をいくつか紹介している。

その一つがループ量子重力理論である。この理論によれば、時間と空間にはそれ以上分割できない最小単位が存在する。そうすると、特異点の密度が無限大になるという計算結果を避けることができる。さらにこの理論に基づいて、特異点の先にも時空は続いておりホワイトホールにつながっている、と考える物理学者もいる。その場合、ブラックホールに落ちた物質は細かく潰されたのち、宇宙の別の場所、あるいはひょっとすると全く別の宇宙に吐き出されることになる。動画は、このような観測結果が見つかったことはないと断ったうえで、ループ量子重力理論は一般相対性理論に代わる重力理論として期待されていると述べている。

また、特異点どころか事象の地平面についても一般相対性理論では不十分だとする説がいくつかある。その一つが弦理論におけるファズボール仮説だ。弦理論では、宇宙のあらゆるものはごく小さな弦(ひも)の振動によってもたらされていると考える。ブラックホールを絡まった弦の集合とみなせば、特異点の問題を解消できるという。とはいえ、観測がほぼ不可能である以上、人類が特異点の謎を解き明かすのはまだまだ先のことだろう、と動画は見ている。

理論上の存在から観測対象へ:はくちょう座X-1

ブラックホールは長らく理論上の存在にすぎなかった。一般相対性理論の発表から間もなく、光さえ脱出できない天体が計算上は存在しうることは分かっていたが、それが実在するかどうかは全く未知の段階が続いた。

転機として動画が挙げるのは、1964年にはくちょう座付近で強烈なX線を放つ天体が観測されたことである。さらに1971年、その付近の恒星が揺れているように見えることが分かった。つまりその恒星は、光をはじめとする電磁波では全く観測できない「何か」の周りを回っていたのである。恒星の質量と公転周期から割り出された見えない天体の質量は、理論上の中性子星の限界を超えていた。太陽の数十倍の質量をもち、観測できず、中性子星でもない天体――現在ではこれがブラックホールであることは確実視されている。

2019年、ブラックホールの撮影

さらに2019年、人類は姿形が分からないはずのブラックホールの撮影に成功した。撮影したのはイベント・ホライズン・テレスコープで、地球上の複数の電波望遠鏡を一つの望遠鏡として扱うことで非常に高い解像度を実現している。

最初に撮影されたのは、約5400万光年離れた銀河M87の中心にある超大質量ブラックホールである。質量は太陽のおよそ65億倍、シュワルツシルト半径は180億kmにもなる。画像には中心の真っ黒な領域の周りを超高温に加熱されたガスが周回する様子が映っており、動画はこれを「全てが理論通り」と評している。当初は存在すら疑問視されていたが、現在ではブラックホールの存在を疑う天文学者はほとんどいない、と動画は述べる。

静かすぎるブラックホール:Gaia BH1

観測されたブラックホールの中から、動画は特徴的な例をいくつか紹介する。

Gaia BH1は、確認されている中で地球に最も近いブラックホールとして知られている。距離はおよそ1560光年、質量は太陽の9〜10倍。太陽とほぼ同じ質量の恒星と連星をなし、太陽と地球の距離とほぼ同じ間隔の軌道でひっそりと互いを公転している。

天文学者が注目しているのは、このブラックホールがあまりにも静かに存在していることだ。周囲の物質を活発に飲み込んでおらず、降着円盤も形成していないため、X線などの強い電磁波をほとんど放っていない。発見した研究者の言葉として動画が紹介するのは、太陽の位置にこのブラックホールを置き、地球の位置に太陽を置けばこの連星ができあがる、という説明である。

本来なら、ブラックホールになる前の超新星爆発の影響で、このように整った静かな連星が残るのは難しいと考えられる。しかし現実に存在している。動画はここから、人類にはブラックホールの誕生や進化についてまだ分かっていないことが多いのかもしれない、と述べている。

JWSTが見た初期宇宙の超大質量ブラックホール

もう一つの例は、2022年に観測を開始したジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が捉えた遠い過去の銀河である。光の速度は有限なので、遠くの銀河を観測するほど、より過去の姿を見ていることになる。JWSTが観測した銀河の中には、宇宙誕生から7億年程度しか経っていないものもある。そしてその時点ですでに、銀河の中心に不釣り合いなほど大きな超大質量ブラックホールが存在していた。

動画によれば、この結果が明らかになる前は、初期宇宙では超大質量ブラックホールと銀河が一緒に成長したと考えられていた。しかしJWSTの観測によって、この仮説は大きな修正を迫られている。初期宇宙では超大質量ブラックホールの成長が著しく速かったのか、それとも恒星ブラックホールから成長したのではなく、最初から大きな質量をもって誕生したのか。動画はこの二つの可能性を問いとして示し、宇宙がどのように現在の姿を形作ったのかを考えるうえで、ブラックホールが果たす役割は大きいとしている。

ブラックホールの最期:ホーキングの蒸発説

一般相対性理論は、ブラックホールに飲み込まれたものは永遠に外に出られないと予測する。しかし動画によれば、ブラックホールそのものも永遠ではなく、やがて蒸発すると考えられている。スティーブン・ホーキングが提唱した説では、ブラックホールは少しずつ電磁波を放ってエネルギーを失い、最終的には消えてしまう。

ただしその過程は極めて遅い。動画が示す予測では、恒星ブラックホールが蒸発するには10の67乗年(およそ1000不可思議年)、超大質量ブラックホールでは2×10の100乗年かかる。現在の宇宙の年齢がおよそ10の10乗年であることと比べれば、気が遠くなるほどの時間をかけてブラックホールは宇宙から消えていくことになる。

現在主流の宇宙論では、ブラックホールが蒸発するはるか前に、宇宙から恒星がなくなると考えられている。星形成でガスが消費されることや、超新星爆発などでガスが加熱されることで、新たな恒星が生まれにくくなるためだ。そのときの宇宙は、今よりずっと暗く寂しく、あまりにも広大すぎる場所になっているだろうと動画は描く。

恒星なき宇宙で残る希望

恒星がなくなった宇宙で、生命にとって最後の希望はブラックホールかもしれない、と動画は述べる。生命にはエネルギーが必要だが、ブラックホールの近くに物体を投げ込み、その一部を切り離して脱出させることで、ブラックホールからエネルギーを取り出すことが理論上可能だと分かっているという。

動画は、遠い子孫が宇宙最後の生命としてブラックホールの周りでひっそりと暮らしているのかもしれない、と想像を示す。そしてそのブラックホールさえ蒸発してしまう遠い未来には、宇宙にはもう何も残されていないに等しいだろう、という見通しで締めくくっている。