ロケットではなく「契約・決済・資金繰り」を取りに行く 宇宙経済の取引インフラを目指すNebex

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概要

FoundX Review Startup IdeaCastは、海外スタートアップのアイデアをAIで整理・分析して紹介する番組である。番組冒頭では、AIを使って情報を整理しているため古い情報や誤りが含まれる可能性があり、事実を重視する場合は各自で一次情報を確認してほしいと断っている。今回取り上げたのは、宇宙経済の「取引」を支えるインフラを作ろうとするスタートアップNebexだ。解説役は、成長産業で物理的な技術が整ったあとに何がボトルネックになるのかを考える材料として、この会社を紹介した。

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なぜ「宇宙の取引インフラ」を取り上げるのか

番組ではこれまでにもロケット開発など宇宙関連のスタートアップを紹介してきた。解説役によれば、Nebexはそうした技術開発ではなく、取引・契約・決済の摩擦に着目している点が違う。宇宙の話題が続くことを断ったうえで、解説役はこの事例を選んだ理由を2つ挙げた。1つは、プロダクトだけでなく、市場が回るためのインフラがどう作られるのかを見られること。もう1つは、ロケットなどのプロダクトが増えた次に、どんな課題が表に出てくるのかを考える参考になることだ。

解説役はNebexを一言で、宇宙経済の買い手・供給者・資本をつなぐ「金融取引所」のようなものを作ろうとしている会社だと説明する。狙っているのはロケットではなく、請求書、契約、決済といった商流と金融のインフラ層である。

SpaceX以降に宇宙市場はどう変わったか

解説役は、まず歴史的な背景を振り返った。冷戦期の宇宙開発はロシアと米国の2国間競争の中で始まり、取引は基本的にバーター取引だった。現在はSpaceXなどが民間の台頭をけん引し、軌道へのアクセスが日常化しつつある。

宇宙ビジネスでは、ロケットの打ち上げや衛星製造といった物理インフラに注目が集まりやすい。これに対して解説役は、次のボトルネックは金融インフラ、つまり契約・決済・資金繰り、さらに政府調達や輸出管理まで含めた取引のインフラではないかと見る。ロケットは整ってきたが、決済・契約・金融のインフラが追いついていない。特に政府調達の国際化や防衛需要の拡大によって摩擦が増えており、Nebexはそこを解こうとしている、というのが解説役の整理だ。

聞き手から、SpaceX以降に環境がどう変わったのかを改めて問われると、解説役は、宇宙が国の威信をかけた一回限りの国家プロジェクトから、取引が継続的に生まれる市場へ変わりつつある点を挙げた。取引が増えれば、商取引を回す仕組みが必要になる。Nebexはそこを解決しに行っているのだろう、と解説役は述べた。

解説役は、ここから一般的な見方も引き出している。成長産業における大きな事業機会は、派手な製品開発ではなく、市場参加者の地味な課題や取引の摩擦の側にあるのかもしれない、という見方だ。

「金融取引所」とは具体的に何をするのか

「金融取引所」というたとえの意味を聞かれると、解説役は株式のような単純な売買とは違うと答えた。かつては国同士が打ち上げ枠を交換するような、1対1のバーター取引や相対取引が中心だった。それを契約として整え、買い手、供給者、資本提供者といった多くの参加者を条件でマッチングできる市場のインフラにする。解説役はNebexをそういう会社だと見ている。

具体的には、政府や宇宙機関が何を買いたいのか、供給者が何を提供できるのか、金融機関がどんな資金を出せるのかを、Nebexが作る市場を通じて接続する。そのうえで、契約、マイルストーン、決済、場合によっては防衛を含むコンプライアンスまでを1つのワークフローにまとめようとしている、と解説役は説明した。

取引を阻む3つの摩擦

顧客は3者に分かれる。政府契約を取りたい宇宙スタートアップが供給者側、宇宙関連の能力を調達したい主権国家が需要側、投資機会を探す金融機関が資本の提供側だ。解説役によれば、問題は3者それぞれにニーズがあるのに、取引がなかなか成立しないことにある。その原因として、解説役は3つの摩擦を挙げた。

1つ目はコンプライアンスである。輸出管理や制裁ルールなどに準拠しなければならない。2つ目は資金のタイミングのずれだ。政府の支払いは進捗に応じたマイルストーン払い、つまり後払いが多い。一方で企業は先に設備投資や運転資金を用意する必要があり、このギャップが企業側を苦しめる。3つ目は、政府が自国産業に予算を還流させたいという、地政学的・政治的な要件である。

その結果、技術を持つ宇宙スタートアップでも、政府契約を取るには財務体力、法務体制、輸出管理への対応、場合によっては現地パートナーが必要になる。金融機関の側は、投資したくても契約が成立する確度、マイルストーン、支払い、規制リスクが見えにくい。解説役は、情報を見つけるだけなら既存の手段やChatGPTでもできるかもしれないが、取引を実際に成立させ、支払いまで完了させ、場合によっては前払いも組み込んだ契約をまとめるのは難しいと指摘した。

誰が一番困っていて、既存手段では何が足りないのか

困っている順番について、解説役はまず、技術はあっても政府契約を実行する資金力や法務体制が整っていない宇宙スタートアップを挙げた。次が需要側の政府で、調達したくても信頼できる供給者や、供給者を支える資金構造をうまく見つけられない。3番目が金融機関で、宇宙案件に投資したくてもリスク評価や決済の仕組みが足りない。

既存の手段としては、弁護士、商社、政府調達ポータル、入札情報サービスなどがある。解説役は、弁護士や商社は調達プロセスの一部を肩代わりし、法務的なコンプライアンスを支援できると認める。しかし、どれも人手中心で案件ごとの対応になり、コストが高いため、スタートアップには使いにくい。データやワークフローが蓄積されにくく、学習も進みにくい。そのためコストが下がらない。宇宙市場を「取引可能な案件が増えていく市場」にするには、標準化され、繰り返し使えるインフラが必要になる。Nebexはそう考えているのだろう、と解説役は推測する。

Source / Coordinate / Paymentsという解き方

Nebexの価値提案は3つに整理されている。Sourceは、グローバルな供給者のネットワークを可視化すること。Coordinateは、地理的な予算還流の要件、コンプライアンス、政府調達の要件、政治的な制約を満たすパートナーの組成やコンソーシアムの編成を調整すること。Paymentsは、スタートアップが資金ギャップを埋めるための資金提供と決済の仕組みを用意することだ。

解説役が重視するのは、NebexがRFP(提案依頼書)を並べる案件掲示板ではないという点である。政府側の需要の発見から契約の実行、決済までをつなぎ、取引そのものを前に進めるインフラを目指している。

この構想を支える背景として、解説役は創業者のバティア氏の経歴を挙げた。同氏はAxiom Spaceで大型の商業宇宙契約に携わった実績がある。さらにNebexはJ.P. Morganとの銀行提携を実現しており、金融ライセンスや決済インフラをすべて自前で抱えるのではなく、既存のメガバンクの信用とインフラを活用する枠組みをすでに作れている。解説役はこれを大きな点だと評価した。

マッチングとも銀行とも違う立ち位置

単なるマッチングサービスとの違いについて、解説役はUberを例に挙げた。移動の出発地点と到着地点さえ合えばよいような単純なサービスなら、需要と供給をつなげば済む。Uberはマッチングに加えて決済までこなしている。これに対してNebexが扱う取引では、契約とコンプライアンスに加えて前払いを含む資金繰りが大きな比重を占める。そのため解説役は、Nebexをマッチングと呼ぶのは違うと感じている。

銀行との違いについては、将来どこまで金融リスクを取るかは分からないとしたうえで、解説役は現時点の情報から次のように見ている。Nebexは銀行や投資家になるというより、宇宙取引に特化した市場インフラを取りに行こうとしている。実際の資金提供はJ.P. Morganなどの金融機関を活用する構造になりそうだ。需要側がより早く供給側を見つけ、供給側がより早く機会にアクセスし、そこに資本が流れ込む。この流れを滑らかにする構図が解決策だと、解説役はまとめた。

市場機会:6,130億ドルの宇宙経済と1億ドル超のメガディール

市場規模について、解説役は次の数字を紹介した。宇宙経済全体(TAM)は6,130億ドル規模とされる。SAMにあたる政府の宇宙予算は1,350億ドル規模で、そのうち防衛関連が半分ほど、730億ドルを占めるといわれる。SOMとしてNebexが最初に狙うのは、金融・決済と国際間の調整が必要な主権国家向けの商業取引で、1件1億ドルを超えるメガディール層だという。

成長ドライバーとして解説役が挙げたのは2つだ。1つは地政学リスクを背景とした防衛予算の拡大。もう1つは、政府が自前での開発から商業サービスの購入へと方針を転換しつつあることだ。番組ではこれを「Buy before build」(作る前に買う)と表現していた。宇宙は通信、測位、監視、情報収集にかかわり、安全保障上の重要性が高まっている。SpaceXなどのおかげで民間が盛んになったため、各国政府はこれまで自分で作り打ち上げていたものを、商業宇宙企業の能力で置き換えたいと考えている。その結果、商業企業と政府のあいだで調達・契約・資金繰りの課題が大きくなり、それが成長ドライバーになるというのが、解説役の見立てである。

聞き手からは、案件がこれほど大きいなら、プラットフォームを作るよりまず個別案件を回すことから始めるのかという質問が出た。解説役は、1億ドル超は約150億円にあたると換算したうえで、システムを作るか、コンシェルジュ型で人が入って徐々に自動化するかのどちらかになるかもしれないと答えた。取引が大きいぶん1件あたりの成約手数料や金融手数料も大きくなる可能性が高い。ただし件数は限られ、営業サイクルも長い。解説役は、ここから入って本当にスケールするモデルを作れるかはまだ分からない、と留保した。

ビジネスモデルと、あえて人手から始める理由

収益のレイヤーは3つ考えられる、と解説役は整理した。1つ目は、案件情報の探索を無料またはサブスクリプションで提供するもので、供給者を探す入り口にもなりうる。2つ目は取引実行の支援で、成約時に手数料を取る。初期の収益はここが中心になると解説役は見ている。3つ目は金融取引の提供で、金利や手数料で収益化するもので、フィンテックに近い。

初期は1件1億ドル超の大型案件に絞り、高いテイクレートを狙う高単価モデルになるだろう、と解説役はいう。当初は人手による支援が入るが、スケールする段階ではデータを使って自動化を進め、限界費用を下げて利益率を上げる構造を狙うのかもしれない。解説役の印象では、SaaSというより、マーケットプレイス、投資銀行的なアドバイザリー業務、フィンテックが混ざったモデルである。

なぜあえて人手でやるのかという質問に、解説役は2つの理由を挙げた。複雑で大きな取引では間違いが許されないこと。そして、ソフトウェアだけで自動化する道筋がまだ見えていないのかもしれないことだ。まず人手で取引を成立させ、そのパターンをデータ化・標準化していく。サービス業から徐々にプロダクトへ移行するというよくある狙いに、規模が大きいため投資家もついている、と解説役は捉えている。

アセットライト戦略と「市場のOS」になる条件

戦略面では、解説役はNebexをアセットライトなスタートアップだと位置づけた。自社でロケットや衛星を保有・開発せず、市場のインフラをソフトウェアとして構築する。取引プラットフォームは市場全体の取引量に連動して伸びるので、その性質を利用した戦略だという。コンプライアンス要件やマッチングのアルゴリズムはソフトウェア基盤として内製し、実際の金融・決済インフラは既存のメガバンクの資本などを使う、という分担になると解説役は見ている。

ハードウェアを作らないため、開発費、打ち上げ失敗、製造遅延といったリスクは負いにくい。そのかわり、規制対応、取引の標準化、信用の形成という別種の難しさを引き受けている。理想は、10年後、20年後に宇宙産業の標準的な取引所、あるいは市場のOSのような存在になることだろう。ただし、インフラはみんなが使って初めてインフラになる。ネットワーク効果をどう作るかが非常に難しい、と解説役は付け加えた。

OSになるための条件を聞かれると、解説役は次の点を挙げた。このインフラ上で取引が繰り返し成功していること。政府・企業・金融機関の3者それぞれが受け入れられるワークフローを作ること。取引を問題なく進めるためのコンプライアンスと決済の信頼を確保すること。そして、複数の国にまたがる事業になるため、中立性と透明性をきちんと保つこと。加えて、初期の大型案件のプロセスをソフトウェアに落とし込めるかどうかがリスクとして残る、と解説役は述べた。

ロードマップ:手動のメガディールからNebra Exchange、金融機能へ

解説役はロードマップを3つのフェーズに分けて説明した。

フェーズ1は、投資銀行型ともいえる段階だ。創業者の人脈を使い、人手でメガディールを組成する。解説役はここで、初期の信用構築と複雑な取引パターンの獲得を進めるのだろうと見ている。一般的なSaaSのようなセルフサーブ型ではなく、資本・供給・需要のいずれも複雑なので人手で進める。

フェーズ2では、Nebra Exchangeとして一般公開を予定しており、自動マッチングやワークフローの提供を行うと聞いている、と解説役は話した。現時点では招待ページがあり、ウェイトリスト待ちの状態だという。

フェーズ3では、おそらく金融・クレジットへ拡張する。取引データに基づく与信モデルの構築、宇宙産業特有のファクタリング、決済の前倒しなどが想定される、と解説役は推測した。ソフトウェアを先に作るのではなく、人手のサービスで満点に近い実績を先に作り、そのプロセスを後からシステムで補完・自動化していく順序だという。

最初からプラットフォームを作っても使われないのかという質問に、解説役は、取引が複雑すぎること、自動化の条件がまだ整っていないこと、規制も変わり始めていることを挙げた。人手で進めながら何を標準化できるかを学んでいく段階であり、初期に高単価の案件を選んでいることも、人手でやらざるを得ない理由の1つかもしれないという。

金融・クレジットが最後に置かれている理由については、与信には取引履歴、支払いの確度、取引相手の情報といった信用データが必要だが、そのデータがまだないからだと解説役は答えた。まず取引データと銀行との関係を作り、取引が十分に積み上がってから、信用スコアなどを使ってファクタリングに進むのだろう、という見立てである。

競合・代替手段とモートの弱点

競合は直接の同業だけでなく、既存の代替手段も含めて考える必要がある、と解説役は述べた。ソフトウェア面で近いものとしては、宇宙部品やサプライヤーを技術要件に合わせて探せる検索エンジン型マーケットプレイスのSatsearchがある。アンテナ、推進系、太陽電池などが並んでいて見ていて面白い、と解説役は紹介したが、直接の競合かどうかは分からないとした。次に、政府調達データ、つまり需要側を可視化するサービスがある(字幕上は「デルテックガブ」)。さらに既存の商社や弁護士があり、個別案件の取引実行や調整を担うが、コストは高めだ。

解説役の整理では、Satsearchは供給者側の情報、政府調達データのサービスは需要側、商社や弁護士は取引の実行や決済を担っている。Nebexはこれらをすべて押さえたうえで、前払いなどに対応できる資本の提供まで加え、1つのワークフローに統合しようとしている。差別化要素として解説役が挙げたのは、規制対応と外交的な調整力のシステム化、J.P. Morganとの連携による決済インフラ、トップレベルの大型取引の実績データ、予算還流要件などのコンプライアンスを設計する能力、そして政府と企業をまたぐ中立性である。既存ツールが情報提供にとどまるのに対し、実際にお金を動かして取引を成立させるインフラ層に入ろうとしていることが最大のモートだろう、というのが解説役の見方だ。

既存の代替手段が機能を広げてくる可能性についても議論があった。解説役は、情報提供から契約・決済・資金提供に進むにはまったく違うケイパビリティが必要だと答えた。宇宙領域では輸出管理、地政学的な変化、マイルストーン払いが複雑に絡むため、大きなジャンプが要る。ただし情報提供だけでは稼ぎにくいので、既存事業者も参入せざるを得ないかもしれない、とも付け加えた。

一番弱い点を問われると、解説役は、取引やワークフローがまだ十分に成立していない以上、それが本当にモートになるかは未確定だと答えた。ネットワーク効果が働けば先行者利益になるかもしれないが、それを取り切れるかが弱点になる。創業者の人脈も今は強いが、永続的なモートにはならない、と解説役は指摘した。

参入戦略:招待制α版でコールドスタート問題に挑む

初期のターゲットは2つある。予算はあるがコンプライアンス要件が極めて厳しい主権国家の宇宙機関と、優れた技術を持ちながら実績や資金が足りない宇宙スタートアップだ。買い手がいないと供給者は来ず、供給者がいないと買い手も来ない。解説役によれば、Nebexはマーケットプレイスに典型的なこのコールドスタート問題を解こうとしている。その方法が、バティア氏がAxiom Space時代に築いた政府機関や宇宙企業のトップ層とのネットワークを使い、人手で最初の流動性を作ることだ。

MVPは作っているようだが、誰でも登録できるオープンなサービスではなく、かなり厳格な招待制のα版だという。解説役は、これによってノイズを排除し、質の高い需要と供給だけをマッチングすることを目指しているのだろうと述べた。したがって検証の指標は登録者数やマッチング数ではない。1件1億ドルを超えるメガディールがNebexのワークフローを通じて適切かつ円滑に決済まで完了するかどうか、つまり少数でも深い「ライトハウス」的な成功事例が出るかどうかが、表面的なユーザー数より重要だと彼らは考えているのではないか、と解説役は推測した。

なぜ招待制にしたのかを改めて聞かれると、解説役はマッチング率と評判の関係から説明した。マッチングのプラットフォームを継続して使ってもらえるかは、マッチング率の高さで決まる。良い需要者と良い供給者がいて成約が次々に生まれると評判が立ち、さらに参加者が増えていく。その環境を作るため、創業者が選んだ質の高い供給者と需要者だけを入れて閉じた環境で成約を増やす。人数を増やすだけでは成約は増えず、誰でも入れれば質の低い案件が混ざり、この領域特有の規制リスクも高まる、と解説役は述べた。

創業者のネットワークをどう会社の仕組みに変えるかについては、標準的な取引テンプレートや審査基準を作り、いま人手でやっている部分をソフトウェアに落とし込めるかどうかが大事になるだろう、と解説役は答えた。

創業チーム:Axiom Space、取引所、外交の専門家

創業の経緯として、CEOのバティア氏がAxiom Spaceで10億ドルを超える契約を主導したことが紹介された。そこで同氏は、需要はあるのに決済と契約の摩擦のせいで取引が成立しないという、業界ならではのペインを見つけたといわれている。解説役は、創業者がこの産業に深い知見を持ち、実際に経験していることが大きいとみる。

チームのもう1人はアナンダ氏で、アドエクスチェンジ(広告取引所)を創業した経験を持つ、取引所づくりの専門家として紹介された。Axiom Spaceにも関わっていたようだという。さらに、外交・政治面には元イタリア外務副大臣のステファノ氏が加わっている。同氏もAxiom Spaceに一部関わっていたといわれる。解説役はこのチームを、宇宙の技術だけでは解けない問題に対して、外交、政治、金融のトップエキスパートを集めた構成だと評した。

聞き手が「ドリームチームすぎる」と感想を述べると、解説役も同意しつつ、学べる点を挙げた。防衛のような重く難しい市場では、先行者の優位の価値が高い。業界を知らない人がすぐに入り込めるわけではない。こうした市場の摩擦は技術ではなく、人脈、信用、現場経験、規制の理解にあるかもしれない。宇宙なら外交、別の分野なら取引や規制かもしれない。自分の市場で本当に必要なケイパビリティは何か、その交差点ができていないから問題が解けていないのであれば、どうやって交差点を作るか。資金だけでなく人材の獲得という観点でも、解決に必要な人を巻き込むことが大事な発想だ、と解説役は述べた。

MVPより先に「Minimum Viable Trust」を作る

解説役は、Nebexの出発点にある仮説を次のように紹介した。最高のソフトウェアを作っても、国家やメガバンクは使ってくれない。金融インフラ事業にまず必要なのはプロダクトではなく、強烈な信用である。だからシステムが完成する前に信用の基盤を築く。

実際にNebexは、プロダクトの一般公開前にGV(Google Ventures)をはじめとするトップ投資家から出資を受け、J.P. Morganとの銀行提携も取り付けた。解説役はこれを単なるブランディングではないと見る。政府や大手企業に対して、このインフラは大規模な資金を安全に扱えるという信用を、投資家や提携を通じて築いたのだという。スタートアップではよくMVPを作れといわれるが、市場のインフラを作るような事業では、信用のMVP、つまり「Minimum Viable Trust」を作ることが重要なのかもしれない、と解説役は提起した。その基盤は、創業者の実績、投資家、パートナーシップ、招待制で選ばれた参加者からなる。

ただし解説役は、資金調達や銀行との提携はPMFそのものではなく、今後どうなるかは分からないとも留保した。そのうえで、まず一歩使ってみようと思わせる最小限の信用を作る手段としては有効だったのではないか、と評価している。

この業界でなぜ信用がそこまで重要なのかについて、解説役は取引の構造から説明した。マッチングの片側には政府、金融機関、大企業がいて、供給者側には失敗するかもしれない新興の宇宙スタートアップがいる。大規模な取引をスタートアップに流すには、外部からの信用補完や、何かあったときの手当て、供給者がきちんと審査されているかといった点が重要になる。GVのような大手VCが審査したうえで出資していることはNebex自体の信用を担保し、J.P. Morganは金融インフラとしての信頼度を高める。解説役は、VCと銀行が、特に政府や大企業側の初期顧客の心理的なハードルを下げる機能を一部果たしているのかもしれない、と述べた。

資金調達:GV主導の3,000万ドルSeedとJ.P. Morgan提携

Nebexは最近、シードラウンドで3,000万ドル(約45億円)を調達した。GVがリードし、10社ほどのVCが参加したラウンドだという。あわせてJ.P. Morganとのバンキングリレーションシップも発表している。

解説役は、この調達は技術開発のためというより、政府や金融機関に「この会社は信用できる」と示すためのバランスシートの強さを確保する意味があったのではないか、と見ている。金融インフラ事業では、重要な取引を任せて大丈夫かが参加者から問われるので、バランスシートを厚くしておくことは非常に大事だという。今後はα版の招待制運用の段階で、決済が実際に完了したか、決済総額、成約件数などが見られることになるかもしれない。ファクタリングや与信に進むのであれば、貸倒れ率、回収率、資本効率も重要になる、と解説役は述べた。

資金の使い道を問われると、解説役は3つを推測として挙げた。第1に、資本力そのものを政府や金融機関への信用として示すこと。第2に、法務、コンプライアンス、金融など、まだソフトウェア化できず人手でやっている部分の外部協力にかかる費用。第3に、プロダクト開発を進めつつ、取引成立までの長い営業サイクルを乗り越えるための資金である。

日本への応用:AIが挙げた3つの案

番組では、日本で同様の事業を考えるならどうなるかをAIに考えさせ、3つの案を紹介した。

1つ目は、防衛デュアルユース技術のRFPの可視化とマッチングである。国内の町工場、スタートアップ、研究機関を、防衛省などの複雑な要件と接続する調達プラットフォームだ。情報のマッチングから入るため、金融機能よりは参入しやすいと考えられている。

2つ目は、ディープテックに特化したファクタリングである。大企業や官公庁との契約を担保に、入金までの資金ギャップを埋める金融サービスだ。解説役は、資金繰りのペインが明確で収益化しやすい一方、与信、回収、金融規制の難易度が高いと見ている。

3つ目は、日本の宇宙技術と東南アジア各国の政府需要をつなぐ、アジア版Nebexともいえるインフラ調達ハブである。日本の信頼性と技術を生かして信用を高めるモデルだが、国ごとの調達制度、外交、現地パートナーの設計が非常に難しい。解説役は、売上が大きく伸びる可能性もあるが難しい案だとした。また、Nebexが欧米の巨大な主権国家向けメガディールに集中していくのであれば、日本のスタートアップには、精密部品レベルのサプライチェーン市場や、アジア特有の政治エコシステムに合わせたアジア版Nebexという余地があるかもしれない、とも述べた。

どれが有望かと聞かれると、解説役は組み合わせもありうるとしたうえで、次のように評価した。1つ目は情報を集めればできるという意味で実現性は高いが、収益性が弱い。2つ目は、特にスタートアップ相手の回収が難しそうだ。スタートアップとして大きくなりやすいのは3つ目で、狙うならここだと思うが、外交や国際調達の難易度が高く、やり切れるかどうかが問題になる。国ごとに調達制度も政治関係も違い、政治リスクもある。一方で日本には信用があり、日本の金融機関との関係をうまく使ってアジア諸国との連携を組むことは、防衛省などが目指している方向とも重なる。その意味では必要とされているサービスかもしれない、と解説役は述べた。

まとめ:成長産業のボトルネックは技術から取引摩擦へ移る

解説役は最後に、宇宙は1つの例にすぎないとして、3つの示唆を挙げた。

1つ目は、成長産業の本当のボトルネックがどこにあり、どこへ移っていくのかを見ておくことだ。産業が成熟してくると、課題は技術の欠如ではなく、法務、金融、政治、調達、決済といった取引の摩擦に移るのかもしれない。宇宙産業ではロケットや衛星など目に見える技術が進んだ結果、見えにくい取引のレイヤーで不足が目立ってきた。Nebexはそう見ているのではないか、と解説役は述べた。

2つ目は、スタートアップが狙える形としてのアセットライトなインフラである。ハードウェアを自前で作らなければ資産を軽くできる。市場全体が成長しているなら、その全体を顧客にする見えないレールを作ることで大きなレバレッジが生まれる可能性がある。

3つ目は、システムを作る前に信用を作ることだ。金融、政府、防衛が絡む領域のインフラビジネスでは、最初に必要なのはソフトウェアではなく、どれだけ信用、実績、ネットワークを積み上げているかである。創業者のネットワークも含め、ソフトウェア以外の手段でMinimum Viable Trustをどう確立するかを考えておくことが1つのポイントになる、と解説役は述べた。

そのうえで解説役は、自分が関心を持つ業界で、製品開発の後に来る摩擦や見えないインフラの不足を観察しておけば、医療、建設、エネルギー、防衛、農業、製造業などにも応用できる考え方だと話した。ただし、すべての業界で取引所が成立するわけではない。製造業の取引所のように何度も試されて苦戦してきた例もあるので、応用できるのは一部の領域だろう、と留保している。

聞き手は感想として、取引が増えた先に起きる摩擦は何かを考えて動くという発想が面白かったと述べた。今回は金融的な機能が絡んでいたため、信用をテコに参入するという話も興味深く、自分が信用を持っている業界の「その先」の事業を考えることはできそうだ、と締めくくった。