Iceotopeに学ぶ「熱の壁」の攻略法:冷却技術を既存のバリューチェーンに乗せる
東京大学FoundXFoundXの「Startup IdeaCast」は、海外のスタートアップをAIで調べて分析し、起業を考える人向けに紹介する番組である。今回取り上げたのは、AIデータセンターの冷却技術を手がける英国発のスタートアップ、Iceotopeだ。番組冒頭では、情報の整理にAIを使っているため一部に古い情報や誤りが含まれる可能性がある、という断りが入っている。
解説役がこの会社を選んだのは、これまで番組で「AIが伸びればデータセンターが増え、その周辺のビジネスも伸びる」という構図の事例をいくつも扱ってきたなかで、データセンターの「熱」の話はあまりしていなかったからだという。議論の中心にあるのは、Iceotopeが冷却液そのものではなく、設計と知財、パートナーとのエコシステムで勝負しようとしている点である。
1ラック120kWという発熱
Iceotopeは、Precision Liquid Cooling(精密液体冷却)と呼ぶ方式で、サーバーを特殊な液体で冷やす技術の設計と知財を提供している。掲げているビジョンは、あらゆる計算機から熱の制約を取り除き、冷却にかかる無駄をゼロにすることだ。
背景として解説役が挙げたのは、AIインフラの発熱量である。NVIDIAのスーパーチップなどを積んだAI向けのラックでは、1ラックあたりの発熱量が120kWを超えるという。これは一般家庭の電力消費のおよそ45カ月分に相当する、と解説役は紹介した。従来の一般的なデータセンターのラックは平均10kW未満だったため、単純計算で10倍以上の熱が出ることになり、ファンで空気を送る空冷では厳しくなっている。
ただし、すべてのデータセンターが液冷に移るわけではない、と解説役は補足する。一般的なサーバーならファンで十分に冷やせる。熱の問題が深刻なのは、AIやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)のように密度の高いラックであり、そこで液冷を含めた検討が進んでいるという整理だ。
Iceotopeのもう一つの特徴として解説役が強調したのは、冷却技術をつくるだけでなく、既存データセンターにある縦置きの標準ラックにそのまま収まる構造をつくっている点である。
既存の3つの冷却方式とその限界
ターゲット顧客は、高密度のAIやHPCを運用するデータセンター事業者とハイパースケーラーである。番組では、既存の冷却手段を3つに分けて、それぞれの課題を説明した。
1つ目は空冷だ。冷却ファン単体でシステム電力の約5〜10%を消費しているという。施設の外で水を使って冷却するため水の使用量も多く、環境負荷が高い。さらに騒音やほこりが出るので、エッジ環境や工場のような場所には空冷サーバーを置きにくい。
2つ目はタンク型の液浸冷却で、サーバーごとプールに沈める方式である。こちらは床にかかる荷重が大きくなりすぎ、建物ごと改修が必要になる場合がある。運用やメンテナンスのときには、クレーンでサーバーを上から引き上げなければならない。解説役は、運用フローそのものを根本から壊してしまった事例もあったと紹介した。
聞き手が「運用負荷が高いとは、現場で具体的に何が起きているのか」と尋ねると、解説役は次のように答えた。故障時にはサーバーを液体から引き上げ、液が垂れないようにしながら作業しなければならない。冷却液そのものが高価なので、その管理も必要になる。保守担当者を、こうした作業ができるよう改めて教育する必要もある。
3つ目は、コールドプレートを使う直接液冷である。CPUやGPUのように熱を多く出す部品に金属板を密着させ、その内部に冷却液を流す。ただしこの方式で冷えるのは特定のチップだけで、メモリや電源などほかの部品には引き続きファンが必要になる場合がある。そのため、この方式にも限界があるという。
解決策:サーバーごとに「ウェットスーツ」を着せる
Iceotopeの精密液体冷却は、サーバー単位で筐体を密閉し、内部で少量の液体を精密に循環させる方式である。解説役は、タンク型が「プールに沈める」方式だとすれば、Iceotopeはサーバーごとにウェットスーツや水の羽織りものを着せるようなものだと例えた。
番組で紹介された効果は次のとおりだ。ファンをなくすことで、施設の総電力を理論上約30%削減できるとされる。クローズドループ設計のため、水の消費量は最大96%削減できると見込まれている。標準的な縦型ラックに収まるので既存の設備を大きく変えずに導入でき、稼働中の抜き差し(ホットスワップ)による保守もできるという。これは実機の試験で実証されている、と解説役は説明した。
聞き手は、チップにだけ水冷プレートを貼る方式と何が違うのかを確認した。解説役によれば、プレート方式ではメモリや電源の熱が残るため、結局ファンが必要になる。これに対してIceotopeは基板全体を液体で冷やすので、ファンを完全に取り除ける。
液漏れのリスクについて聞かれると、解説役は、Iceotopeは電気を通さない絶縁液を使っているため、漏れても水のようにショートすることはないと説明した。また、サーバー単位で密閉しているので、トラブルが起きても影響範囲をそのサーバーに限定でき、被害を小さく抑えられると考えているという。
市場:AI、ESG、エッジの3つのドライバー
番組で紹介された予測では、データセンター冷却市場全体は2030年に400億〜450億ドル規模に成長し、そのうち液冷は150億〜200億ドル規模になる見込みだという。
成長のドライバーとして挙げられたのは3点である。1点目は、AIチップの進化に伴う発熱密度の上昇。2点目は、カーボンニュートラルや水消費削減をめぐる国際的なESG規制の強化。3点目はエッジへの拡張で、通信基地局や工場など、使う場所の近くでコンピューティングを行うとサーバーを過酷な環境に置くことになり、そこで液冷が求められるという見立てだ。
エッジ需要について聞き手が掘り下げると、解説役は、5Gやその先の6G、自動運転、工場のDXやスマート化などでデータが発生する場所の近くでAIの推論を行う必要が出てくると説明した。そうした場所には大きな空調設備や騒音の出る設備を置けないため、密閉型の液冷が求められるようになる、と予測されているという。
ビジネスモデル:製造を持たないアセットライト戦略
Iceotopeは自社でハードウェアを製造していない。知財と設計に特化してスケールするアセットライトな戦略をとり、量産や製造はサーバーメーカーなどのOEMパートナーに任せ、保守も外部パートナーを活用している。固定費を抑えながら高い利益率を確保し、スケールしやすくしている、と解説役は説明した。
聞き手がこのモデルの弱点を尋ねると、解説役は2つのリスクを挙げた。1つは技術をOEM側に内製化されるリスク。もう1つは、OEMパートナーの中で自社技術の販売優先度をどこまで上げられるかに依存してしまうリスクである。その対策としてIceotopeは特許を多く取得しており、出願中のものも含めると200件以上になるという。
では、内製化のリスクがあるなかで、OEMメーカーにとってIceotopeの技術を使うメリットは何か。解説役によれば、OEMはAIサーバーを売りたいが、ファン冷却では顧客のデータセンターの熱処理が追いつかず売れない、という状況を抱えている。Iceotopeの技術を組み込めば、自社サーバーを既存施設に売れるようになる。これがOEM側にとっての価値だという。
エコシステムの構成:OEM、Schneider Electric、Avnet
Iceotopeの戦略は、全体として知財を軸にしたエコシステムの構築である。役割分担は次のように説明された。
サーバー製造と半導体については、HPやDellなどのパートナーを活用している。Iceotopeが担うのは、サーバーを液冷化するための精密な密閉シャーシや内部の流路の設計で、量産、在庫管理、物流はパートナーが行う。これにより顧客は、知らない新しい会社のサーバーを買うのではなく、使い慣れた標準的なサーバーを液冷構成で買えるようになる。
設備やインフラについては、Schneider Electricがラックや CDU(冷却液分配ユニット)を提供している。Iceotopeの液冷サーバーをデータセンター施設側とシームレスに連携させるため、インフラのレベルで統合しているという。
インテグレーション、保守、サポートにはAvnetを活用し、技術統合のサービスとサプライチェーン管理を担ってもらっている。聞き手が保守をAvnetに任せる仕組みを尋ねると、解説役は、Avnetがグローバルにサプライチェーンを持ち技術者を派遣する機能を備えているため、Iceotope単独では難しい世界中での24時間365日の保守が可能になっていると説明した。
一見するとコアに見える冷却液についても、特定の1社に依存するリスクを避けるため、他社の冷却液を検証・認定して使えるようにしており、現在は複数メーカーの冷却液を認定しているという。
さらに10年後、20年後の理想像として、単に冷やすだけでなく排熱を回収して暖房や給湯に回す循環型の仕組みも実現しようと考えている、と紹介された。
ロードマップ:大学での実証から大手との共同検証へ
データセンター市場では信頼性が非常に重視されるため、Iceotopeは最初から大企業に売ることはできなかったという。
フェーズ1では、大学などの小規模で高密度な環境で技術実証を行い、電力使用効率の改善を確認した。フェーズ2ではHPやIntelなどの大手と共同検証を行った。現在はフェーズ3にあたり、複数の冷却液メーカーの認定プログラムを拡大したり、製品をグローバルに展開したりしようとしている。解説役は、かなり王道のマイルストーンを積んでいると評した。
聞き手は、大学は痛みが存在するうえに、それほど厳しい稼働保証が求められない環境だったと整理したうえで、Metaとの共同検証の内容を尋ねた。解説役によれば、72ドライブのような高密度ストレージ環境で液冷ができるかを検証し、CPUなどの計算機だけでなくストレージにも技術を応用できることを示したという。
競争優位:既存ラックへの適合と200件超の知財
既存技術との比較では、Iceotopeの方式は空冷とタンク型液浸の「いいとこ取り」、あるいは中間をとったものと位置づけられた。熱効率が高く、既存のラックでそのまま運用でき、保守も容易で、施設の大規模な改修もいらない、というのが解説役の整理である。
参入障壁(モート)として挙げられたのは、200件以上の知財と、特定の冷却液に依存しないエコシステムである。特許の中身について聞かれると、解説役は、密閉する筐体の構造、流路の設計、熱交換器の仕組みから、ラック側の構成まで、ハードウェアのアーキテクチャ全体に幅広く張り巡らされていると説明した。
参入戦略:研究室の騒音と熱というニッチな痛み
最初から巨大なクラウド事業者を狙うのは難しい。そこでIceotopeが初期ターゲットに選んだのは、大学の研究室に置かれたサーバー群だった。ファンの騒音と熱が大変だという、局所的ではあるが確かな痛みがある場所である。巨大なタンクを使わないブレード型のモジュールをMVPとして、そこからPMFに至ったという。
研究室のサーバーの騒音がどれほど深刻なのか想像しにくい、と聞き手が補足を求めると、解説役は、サーバーのファンは掃除機よりうるさく、研究者が働く部屋の隣で24時間鳴り続けるのはかなり気が散る環境だったため、解決してほしいというニーズがあったと説明した。
ハイパースケーラーへの導入状況については、Metaなどとの共同研究によって技術検証は進んでいる。ただ、解説役が調べた範囲では、全社で一括して量産導入するという段階にはまだ至っていないようだという。
創業の経緯:空気を動かすことへの疑問
創業の起点は2005年で、創業者はPeter Hopton氏である。Hopton氏は、電力が計算そのものではなく、空気を動かすファンに使われていることに物理的な矛盾を感じた。そこから、空気より熱伝導率の高い液体を使えば熱を効率よく逃がせるのではないかと発想したという。
初期チームはITやソフトウェアのエンジニアだけではなく、大学の機械工学の研究者などとも連携して立ち上がった。熱力学や流体力学の専門知見を統合し、流体解析と熱設計の研究に特化したスタートアップとして始まったという。
熱と流体の専門家が必要だった理由について、解説役は、単に液体に沈めるだけでは局所的に熱暴走が起きるからだと説明した。チップに液体を適切に当てて熱を逃がすには流体解析が欠かせず、それが競争力にもつながっているという。
周辺情報として、Hopton氏は創業後の2019年に瀕死のスキー事故に遭い、それまでの仕事人間から、ほかの起業家を支援する方向へと大きく変わったと紹介された。現在はIceotopeに加えて、ほかのテック系創業者のサポートも行っているという。聞き手が「創業者は今は経営トップではないのか」と確認すると、解説役は、CEOは別のプロ経営者に引き継がれ、組織も再編されている状況のようだと答えた。
学び:全部自社で作ろうとして壁に当たる
初期のIceotopeは、ハードウェアを全部自社でやろうとしていたという。サーバーを液体に沈めればよいという発想から始まり、ハードウェアもすべて自社で作るつもりだった。しかしエンタープライズ市場では、OEMのお墨付きとグローバルな保守体制が欠かせず、その壁に当たった。そこで冷却設計に特化し、パートナー企業と組むエコシステムモデルにピボットしたという。
OEM認証の壁がなぜ厳しいのかと聞かれると、解説役は次のように説明した。サーバーは設計が少し変わるだけで熱暴走が起きたり、保証の対象外になったりする。そのため、メーカーが公式に「この冷却装置に組み込んでも動作を保証する」と認めない限り、顧客は買いにくい。
資金調達:少ない資本で拡大できる理由
資金調達は複数回行っており、2014年に1,000万ドル、2022年に3,000万ドルを調達したと紹介された。2026年にも調達しており(字幕上の金額表記は「26」)、現在はシリーズBの段階にある。VCからの調達に加えて、EUの研究プロジェクトなどを通じてグラントを活用し、検証の機会や公的資金も得ているという。
聞き手が「調達額が意外と大きくない」と指摘すると、解説役は、自社で巨大な工場やデータセンターを建てたりハードウェアを作ったりしない道を選んだため、少ない資本でスケールでき、その分金額が小さくなっているのではないかと述べた。
日本で起業するなら
番組では、日本で同様のアイデアを事業化するならどうするかをAIに考えさせ、3つのアプローチを挙げた。1つ目はビル内に置く都市型マイクロデータセンター、2つ目は工場などの過酷な環境に置くエッジコンピューティング、3つ目は排熱を活用するサーキュラーモデルである。
このうち都市型マイクロデータセンターは、日本の事情と相性がよいのではないかという。日本は狭い土地が多く、静かで省スペースであってほしいというニーズが強い。ビル内に静音で高密度なAI推論基盤を構築する用途が想定されている。戦略としては、冷却液をつくって勝負するのではなく、国内の設備会社と組み、設計、設置、保守、故障対応をセットにしたパッケージをつくることが重要になるだろう、という整理だった。
聞き手が、日本ではすでに複数の会社が液浸冷却の実証実験を行っているが、どう差別化すればよいかと尋ねた。解説役は、大手が取り組んでいるのは大規模データセンター向けのプール型液浸だと説明した。そのうえでスタートアップとしては、大手が狙わない、あるいは採算が合わないような設置制約の厳しい環境から入れば可能性があるかもしれない、という程度の見立てを示した。
まとめと感想:誰のバリューチェーンに乗せるか
解説役は最後に、今回の事例から次の点を挙げた。熱という物理的な限界をビジネスの機会に変えている発想が面白いこと。尖った単体の最高技術ではなく、既存インフラに適合し、パートナーが売りやすい仕組みをつくっていること。省エネのような環境面の価値を、経済的な価値に翻訳して伝えていること。そして、新技術を開発するときには、それを既存の誰のバリューチェーンに載せるかを製品自体に組み込んで考えると、ビジネスにつながりやすいのかもしれない、と結んだ。
聞き手は、垂直統合とは別の、バリューチェーンにうまく乗っていく進め方として参考になりそうだと感想を述べた。解説役もこれに応じて、全部を自社でやるのではなく外部パートナーを活用し、その結果としてグローバルに広がっていくこと自体がモートにつながっていると指摘した。そうした仕組みを作れれば事業を広げやすいのではないか、というのが番組の締めくくりである。
皆さん、こんにちは。FoundXのマナです。
同じくFoundXの富田です。今日なんですけど、昨日まで実は鹿児島に帰っていてですね、気温が東京より全然高いのと、そこそこ暑くてですね、今年の夏もなかなか来そうだなという風にも思ったので、ちょっとこれから備えをしないとなと思いました。
え、何度ぐらいだったんですか?
30°とか。
おお。
しかも梅雨なので結構ジメジメしてて、不快な感じでしたね。だったので、いやあ、東京ってまだ快適なんだなとなんか思いました。
でもすぐに来ますね、きっと。
いや、そうですね。去年よりは暑くならないんじゃないかっていう話なので、ちょっとマシになるかなと思います。ちょっとそういう暑さに関しての今日の話にもなるんですけれども。
あ、そういう繋がりがあるんですね。
いや、今無理やりちょっと繋げたんですけれども。はい。
ここからIdeaCastのコーナーですが、今日はAIのデータセンターを冷やす技術の会社について取り上げたいと思います。FoundX Review Startup IdeaCastですが、海外のスタートアップのアイデアをAIを使って分析して紹介する番組になります。これからアイデアを考える方のご参考になればと思います。
最初に免責事項ですが、AIを活用して情報を整理しているので、一部の情報は古かったり間違ったりしている場合もあります。ファクトを重視される場合は必ずご自身で調べていただくようにお願いいたします。本ポッドキャストはあくまでそこからアイデアの参考や考え方を引き出すことを主な目的としています。
そしてですね、今日ですがIceotopeというスタートアップをご紹介しようと思います。
なぜこのスタートアップを選んだんでしょうか?
そうですね、最近そのAIが伸びる、データセンターが増える、それでその結果こういうビジネスが伸びるみたいなのを今まで色々とご紹介してきたと思うんですけども、そういう何かが伸びてその周辺に伸びるビジネスって何だろうというので、データセンターの熱の話はそんなにしてなかったなと思ったので、自分も興味があって調べてみた次第になります。
Iceotopeですが、サーバーを特殊な液体で冷却する、彼らが精密液体冷却と呼んでいる技術の設計と知財を提供するようなスタートアップになります。
では、次に全体像についてお話ししたいと思います。Iceotopeですが、全ての計算機から熱の制約を排除し、冷却にかかる無駄を0にするというところを謳っています。AIのラックの発熱量についてはですね、NVIDIAのスーパーチップとかを積んだようなAIのインフラは1ラックあたりの発熱量が120kWを超えるそうで、これが大体1つの家庭で使う電気の45ヶ月分ぐらいに当たるって、とにかく大きいということですね。なので、従来のファンで冷やすような空冷が限界に来ているというところで、こういった熱の制約を彼らは排除しようという風にビジョンとして掲げています。
あとは面白いポイントとしてはですね、冷却技術を作るだけではなくて、既存のデータセンターの縦型のラックにそのまま適用するような構造を作って勝負している会社になります。
ちなみに、従来のデータセンターも結構この熱の問題あったと思うんですが、この120kWっていうのはどれぐらい昔と比べて厳しい数字なのかってどうなんでしょう?
そうですね。従来の一般的なデータセンターのラックが大体10kW未満ぐらいが平均的だったそうです。なので、単純計算で10倍以上の熱が出るようになって、ファンだと結構厳しいというところみたいです。
じゃ、全てのデータセンターが液冷になるというわけでもないって感じなんですかね。
そうですね。一般的なサーバーとかはファンで十分なので、AIとかハイパフォーマンスコンピューティングとかの密度の高いラックというところで、その熱の問題がより深刻になっているというところで、液冷も含めて検討していくとか、液冷になっていくっていうようなことかなと思います。
では課題についてです。彼らのターゲット顧客ですが、今お話ししたように、高密度のAIとかハイパフォーマンスコンピューティングを運用するようなデータセンターの事業者、またはハイパースケーラーになります。既存の手段として、空冷ファンで冷やすというものがあります。ただそれだとですね、まず電力消費がとても大きいというところで、空冷ファン単体でシステム電力の約5%から10%を使っているそうです。また、外で水で冷却するので、水を大量に使うので環境負荷が高くなってしまっている。また、エッジ環境とか工場とかに置くようなところだと、騒音も出るし、粉塵も出るので、なかなか空冷のサーバーが置きづらいというような状況だったそうです。
一方で、代替手段として、タンク型と言って、サーバーごとプールに沈めるというような方式もあるんですが、これだと床の荷重が重くなりすぎるので、建物ごと改修が必要になってくるのと、それから運用とかメンテの時にはサーバーを上からクレーンで引き上げる必要があるとか、運用フロー自体を根本から破壊してしまうような事例もあったそうです。
あとは既存の手段としてですね、直接液冷でコールドプレート方式で、CPUとかGPUとかのたくさん熱が出るような部品に金属板を密着させて、その内部で冷却液を回すっていう方式もあるそうなんですが、これだと特定のチップのみが冷却されるので、メモリとか電源とか他の部品ですねについてはまだファンが引き続き必要になってくる場合もあるので、ちょっとそっちもそっちで限界があるねっていうような状況だったそうです。
タンク型液浸に関して運用負荷が高いっていうのは、現場でより具体的にどういうことが起こってるんでしょう?
故障した時にですね、サーバーを液体から引き上げて、かつその液が垂れるのを防ぎながら作業するのと、冷却液自体も高価なものになるので、それを管理する必要がある。そういった必要がありますし、かつその保守の方はですね、そういったことができるように再度教育する必要もあるというところで、負荷がかかっていたそうです。
そういった課題に対して彼らが取っている解決策が、精密液体冷却になります。彼らの解決策ですが、サーバー単位で密閉して内部で少量の液体を精密に循環させるような方式になります。先ほどタンクに沈めるのがプールに沈めるというようなことを話したんですが、彼らの解決策はそういった感じで例えるなら、ウェットスーツとか水の羽織り物をサーバーごとに着るみたいなような状態になります。
この解決策によってですね、ファンが排除されて、施設の総電力を約30%削減することが理論的には可能になっているそうです。また、水の消費についても、クローズドループの設計になっているので、消費量としては最大96%削減できるんじゃないかと見込んでいるそうです。またですね、標準的な縦型のラックに適合しているので、既存のフローを変えずに導入しやすいのと、稼働中に抜き差しができるところも、そういった風に保守することも可能になっているそうで、これは実際の試験で実証されているそうです。
そのチップだけに水冷プレートを貼る方式と、具体的にどういう感じで違ってくるって感じなんですか?
そうですね。先ほどお話したところと重なるんですが、CPUとかGPUとかを冷やすっていうプレートの方式で、それはそういったパーツは冷やせるんですが、メモリとか電源の熱は残るので、結局空冷ファンは必要になってくる。ただIceotopeが基板全体を液体で冷やすのでファン自体を完全に排除できるというところが異なってくるようです。
この液体を密閉するとなると、逆に液漏れのリスクとかもあるのかなと思ったんですが、その辺りは?
そうですね、一応彼らは絶縁液、電気を通さない液体を使ってるので、水のようにショートするってことは漏れても起こらないそうです。また、ブレード単位で密閉をしているので、被害があっても切り分けられてるので、最小単位に被害を小さくできるってことを考えているそうです。
では、彼らが相対している市場についてです。データセンターの冷却市場全体がですね、2030年に400億から450億ドル規模に成長するという風に予測されていて、とても大きな市場になります。その中で液冷については、150億から200億ドル規模に成長するような見込みになっているそうです。
この市場が伸びていくドライバーとしては3点あって、1点目がAIチップがどんどん進化していって、発熱の密度が上昇していくことで、2点目が、ESG規制で、カーボンニュートラルであったり水消費の削減に対する国際的な規制が強化されていること。3点目がエッジへの拡張というところで、通信基地局とか工場とか、そういった使う場所の近くでエッジコンピューティングを展開していくところで、なかなか過酷な環境に置くことになっていくので、そこで水冷が求められていくんじゃないかというようなのがドライバーになっているそうです。
エッジにおける需要は伸びていく想定であれば、どういったところで伸びていく想定なんですかね。
そうですね。5Gとか、その次の6Gとか、あとは自動運転、工場のDX化、スマート化とかでデータが発生するような場所の近くに、つまりエッジでAIの推論を行う必要があるんじゃないかと。そうなってくると、とても大きな空調設備とか、また騒音が発生するようなものですねを置けないので、密閉型の液冷が求められてくるんじゃないかという風に、伸びていくと予測されているようです。
彼らの取っているビジネスモデルですが、自社でハードウェアを製造するということは行っていません。知財と設計に特化してスケールするようなアセットライトな戦略を取っています。量産だったり製造だったりっていうのはOEMのパートナー、サーバーのメーカーさんなどに任せて、保守自体もですね、外部のパートナーを活用しているそうです。なので、固定費が抑えられる。ただ利益としては高いものを確保してスケールをしやすくしていっているということのようです。
そのビジネスモデルの弱点とかリスクっていうのはなんかあるんでしょうか?
そうですね。技術の内製化っていうのも大きなリスクですし、OEMのパートナーの中で販売の優先度がどれぐらい高くなれるかっていうのに依存してしまうので、そこもリスクだと思います。なので、彼らがですね、特許です。数多く取っていって、200件以上ですね、出願中のものも合わせると取っているそうで、そういったところでIPを守っているということになっているようです。
あとそのOEMに内製化されちゃうリスクもありつつも、今のOEMメーカーからするとこのIceotopeの技術を使うメリットっていうのは一体何なの?
そうですね。AIサーバーを売りたいけどファンだと売れないとか、顧客のデータセンターの熱処理が追いついてないので売れないっていうような状況が彼らとしてはあって、そこにIceotopeの技術を組み込めば自社のサーバーを既存の施設に売れるようになるっていうところで、OEMメーカーにも価値があるっていう提案になっているようです。
彼らの戦略ですが、今のビジネスモデルとも関連するんですが、全体として、IP主導でプラットフォームを、エコシステムを構築するようなものになっています。サーバーの製造や半導体は、HPとかDellなどに、OEMのパートナーを活用しています。Iceotopeはサーバーを液冷化するための密閉のシャーシとか内部の流路の設計といったものを担うんですが、実際の量産とか在庫管理、物流っていうのはパートナーが行うそうです。これによってですね、その先のお客さんは、全く知らない新しい会社のサーバーを買うのではなくて、既存の使い慣れた標準的なサーバーを液冷の構成で買うことができるようになるっていうのがメリットになります。
次に設備やインフラについてはシュナイダーさんなどにお願いしているそうで、シュナイダーがラックとかCDUとかを提供しているそうで、Iceotopeの液冷サーバーがデータセンターの施設側とシームレスに連携できるようにインフラレベルで統合しているそうです。
次にインテグレーションと保守とサポートについては、Avnetさんなどを活用していて、こちらが技術の統合のサービスとサプライチェーンの管理を行っているそうです。
またですね、一見コアに見えるような冷却液なんですが、こちらについても、特定の冷却液のメーカー一社に依存するようなリスクを避けるというところで、彼らが承認して、他社の冷却液も使えるようになっているそうで、今だとNFさんなど複数のメーカーの冷却液を自社のシステムで検証して認定しているそうです。
こういったエコシステムを作りつつ、10年、20年後の理想像として単に冷やすだけではなくて、排熱を回収して、それを暖房だったり給湯に回すようなサーキュラーエコノミーも実現していこうという風に考えているそうです。
なんか色々とインテグレーションしてるって感じなんですね。
そうですね。
その中でも保守とかをAvnetに任せてるっていうのはどういう仕組みになってるんでしょう?
そうですね。Avnetさんが、グローバルでサプライチェーンと技術者を派遣するような機能を持っているそうなので、Iceotope単独だとできない、世界中で24時間365日保守を行いますっていうことが、彼らと一緒に行うことで可能になっているということのようです。
では、ロードマップについてです。まず、データセンター市場だと、信頼性っていうのがとても大事になってくるので、いきなり大企業に売ることができなかったというところで、まずフェーズ1ではですね、大学などの小規模で高密度の環境で技術的な実証を行っていって、電力の使用効率の改善を確認したそうです。次にフェーズ2でHPだったりIntelなどの大手との共同実証を挟んだそうです。次に今当たっているフェーズ3の拡張、海外展開として、複数の冷却液メーカーの承認プログラムを拡大したりとか、向けの製品におけるグローバル展開を行っていこうとしているそうで、かなり王道のマイルストーンを積んでいるようになります。
フェーズ1の大学は、ペインが存在していて、そこまで稼働保証が求められないみたいなところから入っていって、Metaとかの共同検証みたいな感じに進んだということだったんですけれど、Metaの共同検証っていうのはどういった内容だったんでしょうか?
そうですね、72ドライブのような高密度のストレージ環境で液冷ができるかということを検証したそうです。なので、CPUなどのコンピューターだけではなくて、ストレージにも技術が応用できるということを証明したそうです。
そして彼らのモートと競合になります。ここではですね、既存の技術と比較したところをお話しできたらと思います。お話ししたように、既存の技術として、空冷だったりタンクに漬けるような技術がありましたと。そこのいいとこ取りというか間を取ったようなものが、彼らが取っている精密液体冷却になります。彼らは熱効率も高くて、既存のラックでそのまま運用できること、それから保守運用も容易である。また、既存の施設の大規模な改修が不要になってくるというところで、ちょっといいとこ取りをしているようなものになります。モートとしては、200件以上あるような知財を持っていて、あとは特定の冷却液に依存しないようなエコシステムといったところになります。
ちなみにその特許っていうのはどういった特許あたりになってるんでしょう?
そうですね、結構幅広く当たっているらしくて、密閉する筐体の構造であったり、流路の設計、熱交換器の仕組みといったものから、ラック側の構成といったようなところまで、ハードウェアのアーキテクチャー全体に張り巡らせているような状況だそうです。
彼らの参入戦略です。最初からですね、巨大なクラウド事業者を狙っていくのはなかなか難しいというところで、初期のターゲットとしては、大学の研究室に置いてあるようなサーバー群でしたと。ファンの騒音と熱が大変で困っているっていうような、局所的ではあるんですけど、ペインがあるようなところをターゲットとしたそうです。そこからですね、巨大なタンクの必要ないようなブレード型のモジュールを、それをMVPとして、そこからPMFに至っていったっていうことのようです。
研究室のサーバーの騒音って多分皆さんあんまり想像つかないんじゃないかなと思うんですけれど、どれぐらい深刻な課題だったのかって追加情報とかありますかね。
そうですね。サーバーのファンがですね、掃除機よりうるさいので、それが働いてるような研究室の隣で24時間ずっと鳴り続けるのは、かなり気が散るというか、あんまり環境として良くないというところで解決してほしいというニーズがあったみたいです。
ちなみにハイパースケーラーの導入っていうところは今現状どうなってるんでしょうか?
そうですね、技術的検証は進んでいるそうです。Metaなどとのですね、共同研究とかっていうのは進んでいるそうなんですが、ただ、調べたところの情報だと全社で一括で量産で導入しますっていった状況までには至ってないようです。なので、その間で進めていって、検証を進めているっていうような段階にあたるのかなと思います。
では彼らの創業プロセスについてです。ここはかなりシンプルでして、創業の起点となったのは2005年だそうです。創業者がピーターさんなんですが、Peter Hoptonさんが、計算そのものではなくて、空気を動かすようなファンに電力が使われてるっていうのが物理的に矛盾してるというので、そこに着目して、そこからですね、空気より熱伝導率の高い液体を使って熱を効率よく逃すようなアプローチが可能なんじゃないかというところから発想したそうです。
初期のチームとしては、ITとかソフトウェアのエンジニアの集まりだけではなくて、大学の機械工学研究者などと連携してスタートしたそうでして、熱力学とか流体力学といったような専門的な知見を統合して、流体解析と熱系の研究特化型のスタートアップとして始まっていったそうです。
ちょっと周辺情報をお話しすると、このPeter Hoptonさんなんですが、この創業後の2019年にですね、瀕死になるようなスキー事故があったそうでして、そこからかなり仕事人間だったのが、他の起業家を支援することになったっていうようなかなり大きな変化もあったそうで、なので彼は現在ですね、Iceotopeももちろんなんですが、他のテック系の創業者の方をサポートするようなことも行っているっていうようです。
ということは創業者は今経営トップではないってことなんですかね。
CEOとかのトップについては別のプロの経営者の方に引き継がれていて、なので組織的にもまた再編されているっていう状況みたいです。
熱と液体の専門家を最初巻き込んでって話でしたが、この辺りが必要だった理由というのはどういった理由でしょう?
そうですね。単に液体に沈めるだけだと局所的に熱暴走が起きるそうなんです。なので、チップにきちんとですね、適切に液体をぶつけて熱を逃していくというところで、流体の解析が必要になってきて、それが競争力にも繋がっていくというところで必要になってきたそうです。
では、彼らの学びと初期の歩みについてです。初期の仮説としては、ハードウェアを全部やろうとしたというところだったそうです。単にサーバーを液体に沈めればいいじゃないみたいなところのアプローチから始まっていって、ただそこで、ハードウェアを自社で全部作ろうという風に考えていたそうです。ただ、エンタープライズの市場においてはですね、OEMのお墨付きであったり、グローバルな保守体制を作らないといけないというところの壁に当たったそうです。なので、冷却の設計に特化して他のパートナーの企業と組むエコシステムのモデルにピボットしていったということのようです。
OEM認証の壁っていうのは具体的にどういったところが厳しいんでしょうか?
そうですね。サーバーはですね、設計が少しでも変わると熱暴走が起こったりとか、保証の対象外になってしまうそうなんです。なのでメーカー側がですね、公式にこの冷却装置に組み込んでも動作保証するよという風に認めない限りは、やっぱり顧客が買いづらいものになっているというところが厳しさだったようです。
彼らの資金調達についてです。調達ですが、何回か行っていて、2014年に10Mドル、2022年に30M、2026年に26Mを調達していて、今シリーズBなので、順調に進めているというところになります。あとは、VCからの調達だけではなくてですね、EUの研究プロジェクトなども通じてですね、グラントを活用して検証の機会を得たりとか、公的な資金を得たりしているということです。
資金調達の額が意外とそこまで大きくないなって感じですね。
そうですね。あまり額として大きくないところとしては、自社で巨大な工場だったりとか、データセンターを建てたりとか、ハードを作らないというところを選んだので、そのため少ない資本でスケールすることが可能になってくるということで金額が小さくなっているのかなと思います。
では次に行こう。じゃあ仮に日本で同じようなアイデアで起業するならというところで、アイデアをいくつかAIにも考えてもらいましたが、3つアプローチを考えてもらいました。1点目がですね、都市型マイクロデータセンター、ビル内のデータセンター向けのもので、2点目が過酷な環境でのエッジコンピューティング、工場に置くようなもの。3点目が排熱のサーキュラーになります。
日本として狭い土地が多くて、静かであってほしいっていうのと省スペースであってほしいっていうニーズが強いので、1点目のですね、都市型マイクロデータセンターの話とかは相性がいいんじゃないかということのようです。ビル内にですね、静音で高密度のAIの推論の基盤を構築するようなものですが、こういったところは相性がいいんじゃないかということです。全体として戦略として、冷却液を作って勝負するのではなくて、国内の設備会社と組んで、設置と保守と保証っていうのをセットでパッケージを作るっていうことが重要になってくるんじゃないかということのようです。
ちなみに日本だとすでにいくつかの会社が液浸冷却みたいな実証実験をやってると思いますが、それに対してどう差別化していけばいいんでしょう?
そうですね。大手のところがやっているものだと大規模データセンター向けになっていて、これがプール型の液浸になっているそうです。なので、スタートアップとしては、エッジ環境だったり、大手が狙わないとかペイしない、設置の制約が厳しいようなところから入っていくと、もしかしたら可能性あるかもぐらいの感じかなと思います。
では、最後にまとめになります。1点目ですが、物理的な限界ですね、熱でしたが、これをビジネスに活かしていこうという風な変換がなかなか面白いなと思います。2点目としては、尖ったような最高の単体の技術ではなくて、既存のインフラに適合してパートナーが売りやすいような仕組みを作っていくというところになります。あとは3点目ですね、省エネといったような環境に優しいという環境への価値っていうのを、経済的な価値に翻訳して伝えていくということになっていきます。今日の話から考えられるところとしては、新技術をですね、開発する時に、誰の既存のバリューチェーンに載せていくかというところを製品自体に組み込んでいくことを考えると、ビジネスの鍵かもしれません。
というところで以上、今日はIceotopeをご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
そうですね、垂直統合とはまた別の、一般的なビジネスだと思いますけど、うまくバリューチェーンに乗っていくって意味で参考になりそうな進め方だなと思いました。
そうですね。自社で全部やるのではなくて、他の外部のパートナーも活用して、その結果としてグローバルに広がっていくっていうのは、それ自体がモートに繋がっていくところだと思うので、そういったものができると広げていきやすいのかなと思います。
それでは、今日はこちらで終了となります。FoundX Review Startup IdeaCastですが、今後も皆さんのアイデアのためにスタートアップを紹介していきます。ご興味のある方はですね、是非チャンネル登録だったり、高評価をお願いいたします。また、FoundXの各種プログラムでも応募者の方を募集しているので、周りに起業を考えている方がいらっしゃったら是非FoundXをご紹介いただけるとありがたいです。ではまた次回よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
ありがとうございました。
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