「手放せば始まる」マコなり社長が語る、willとmustの天秤とやめどきの判断

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概要

新R25は2026年9月でメディア運営を終了する。編集長の渡辺さんは卒業企画として、これまで世話になった人たちへの最後のインタビューを続けており、この回の相手はマコなり社長こと真子就有さんである。収録は真子さんが現在経営する会社のオフィスで行われた。

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新R25と真子さんのYouTubeチャンネルはほぼ同じ時期に始まり、新R25はテックキャンプが急成長した時期にそのプロモーションも担当していた。真子さん自身も、テックキャンプを運営するdiv社の代表を辞任し、新しい会社を立ち上げた経験を持つ。対談はこれまでの共演を振り返るところから始まり、後半は「やめる」「手放す」をどう判断するかという話に移っていく。

2019年、堀江さんとの対談が「伝説回」になった理由

真子さんの新R25への初出演は2019年、堀江さんとの対談だった。当時の新R25にはまだYouTubeチャンネルがなく、新R25が記事と、真子さんのチャンネルで公開する動画を制作した。渡辺さんによれば、真子さんのチャンネル登録者が数十万人に届き人気が出始めた時期で、「そこで堀江さんと絡むのか」という意外性もあり、動画は100万再生ほどに伸びた。テックキャンプのプロモーションという位置づけだったが、広告以外の経路でも大きく再生されたという。真子さんは「これはもう完全に味をしめましたね」と振り返る。

真子さんにとってこの回は「伝説回」で、撮影中は笑いをこらえるために腹筋に力を入れていたという。渡辺さんは、プログラミングはハードルが高いと感じる人の目線で話を広げようとしていた。一方の堀江さんは冒頭から「プログラミングなんて簡単なんだよ」と言い切る。それでは話が終わってしまうので、渡辺さんが「でも難しいと感じる人もいますよね」と何度も切り返し、そのたびに堀江さんが「違うよ、簡単なんだよ」と怒り続けた。真子さんはこの状況を、立場上話を広げるしかない渡辺さんと、決して相手に合わせない堀江さんの構図としてメタ的に見ており、「コントよりも面白い」と感じていた。

最終的に堀江さんはテックキャンプの仕組みを評価し、プロモーション効果は大きかった。真子さんは「億単位の経済効果を生んだ動画」だったと語る。div社では年末に感謝の手紙を送る文化があり、当時マーケティングを担当していた近藤さんが新R25に手紙を送ったというエピソードも紹介された。

その後、新R25では著名人と真子さんを引き合わせ、「自分の人生を変えたスキルは何か」をテーマに話す対談シリーズを制作した。本田圭佑さんなども出演し、最も伸びたのはひろゆきさんの回だった。ひろゆきさんは1時間ほど遅刻し、しかも「遅刻に不満があるならそもそもオファーしないでほしい」と公言している。現場は焦ったが、結果的にシリーズで一番伸びた動画になったという。

自分では出せない話を、第三者メディアが引き出す

渡辺さんが最初に真子さんを取材したのは「しくじりランキング」という企画で、「クラス全員卒業事件」などの話が出た。真子さんはこの企画をありがたかったと言う。当時の真子さんのチャンネルは、真子さんをまったく知らない人でも面白い、有益だ、学びになると感じる動画しか出さないと決めていた。対象を広く取る方針なので、自分の失敗談のような話は出しても伸びない。それでも面白い話は手元にたくさんあり、それを引き出してくれる場として新R25が役に立ったという。

真子さんは、同じ話でも自分で語るか他人に聞かれるかで伝わり方が変わると説明する。自分で動画を作って失敗談を話すと、周到に準備した「作られた感」が出る。「面白いだろ」「苦しかったよ」と苦労人として自ら語る時点で、少し寒く、武勇伝のように見えてしまう。まったく同じ話を同じ語り口でしても、誰かに聞いてもらう形なら成り立つ。真子さんは、新R25がやってきたことは「第三者だからこそ出せる付加価値」を出し続けることだったと評価した。

新R25はほかにも、Zoomでのプレゼン番組(真子さんはiPadについてプレゼンした)、真子さんの人柄を関係者に聞く企画、退任のタイミングと番組コンセプトが重なって伸びた企画などに真子さんを起用した。最近では、スタッフの森久保さんがADHDの悩みを相談する回が560万再生ほどになったという。

「面白く料理してくれない人とは、絶対に仕事をしたくない」

YouTubeが最も伸びていた時期、真子さんにはほぼすべてのメディアから声がかかり、一度はいろいろ出演してみた。そこで思ったのが「面白く料理してくれない人とは絶対に仕事をしたくない」ということだった。

例として真子さんが挙げたのは、「マコなり社長が出る」というタイトルでYouTube動画を作ると決まっているのに、「そもそも何のお仕事をされているんですか」から始まる対談である。その動画を見るのはマコなり社長を知っている人だけなので、基本的な説明はいらない。そもそも下調べをしてきていない、と真子さんは感じる。1週間前に商品紹介動画を出しているのに「最近買ったおすすめの商品は?」と聞かれることもある。すでにメディアに出ている人物を取材するなら全動画を見ているのは当然で、これまでにない切り口をどう提供するかが「第三者の唯一の価値」だというのが真子さんの考えだ。

真子さんによれば、YouTubeでは常識的な人間ではだめで、全力でマコなり社長をやると「何言ってるのこの人」という空気になる。伸びやすいのはその少しクレイジーな方向にどう料理するかで、そのためには制作側にメタ的な視点が必要になる。新R25は真子さんを「狂人にしてくれる」場所で、キャラクターを出してもいいという心理的安全性があった。渡辺さんは、真子さんが「イル・キャンティのドレッシング」について熱弁したときに「あ、そうなんですね」と流されたら困るだろう、と例を挙げ、真子さんも「めちゃくちゃ困ります」と応じた。

準備があるからリラックスできる、そして「渡辺さん依存」という指摘

真子さんにとって新R25の現場は「楽」だった。ゆるい雰囲気なのに、きちんと準備されている。真子さんは、リラックスするには準備が必要だと言う。準備なしにバタバタ現場に入り、「誰々さんが来る、どうしよう」となると緊張が現場に広がる。何が来ても大丈夫なように段取りができていれば、あとは楽しくやるだけになる。渡辺さんはこれを、体育会系の部活で「やるだけやったから今日は楽しもう」と試合に臨む心境になぞらえた。

一方で真子さんは「あえて批判的に見るなら」と前置きし、新R25は渡辺さんの世界観や空気感への依存度がとても高いとも指摘した。ただし「いい意味で」「メディアはそうあるべき」とも補足している。堀江さんに「違うよ、簡単なんだよ」と言われ続ければ普通は帰りたくなるが、渡辺さんは物おじしなかった。渡辺さん本人は「焦っていたが、飲み込まれたら終わりだと思って焦らないようにしていた」と明かす。真子さんにとってもこれは最も緊張した収録のひとつで、本田圭佑さんがテックキャンプを受講しに教室へ来た瞬間に並ぶほどだったという。

真子さんは、サイバーエージェントの藤田さんに遠慮なく突っかかり続けられる人は、自分の知る限り渡辺さん以外にいないとも話した。さらに、それをかなりメタ認知したうえでやっていると見る。丁寧な社長インタビューなら社内の人間がやる必要はなく、出たいメディアはいくらでもある。社内の人間だからこそできる遠慮のなさにどう価値を出すかを考えているのだろう、と真子さんは推測し、「普通にやっても面白くないから突っ込まなきゃ、でも怒らせるかも、でもやらなきゃ」という緊張を抱えながらやっていたのではないかと語った。渡辺さんは「その奥を読み取っていただいて嬉しい」と応じた。

9年間は「手放せば始まる」の連続だった

渡辺さんが真子さんにとってのこの9年間を尋ねると、真子さんは「一言でまとめると『手放せば始まる』」と答えた。これは真子さんが過去の動画のプレゼンテーションで使った言葉でもある。やめるタイミングだけの話ではない。9年間ずっと、自分が積み上げてきたものや自分の中の当たり前を手放し続けなければならなかったという。なお真子さんのYouTubeは現在「第2形態」に入っており、半年以上動画を出していないと本人は話している。

YouTubeを始めたきっかけも手放すことだった。自分が全部仕切っていた仕事を幹部に任せ、自分は最終的な意思決定にだけ時間を使う。この権限移譲を限界まで進めた結果、時間ができてYouTubeが生まれた。

キャラクター作りも同じだと真子さんは言う。プライベートの自分をそのまま出しても面白くない。自分とは何か、何が面白いのか、何が人と違うのか、人にとって価値があるのは何かを考え、「生産性を大事にしている自分」だけを切り出した。渡辺さんが「それを誇張したものがマコなり社長か」と聞くと、真子さんは「誇張というと語弊がある」と訂正した。自分という大きな人間像の中の一部だけを見せ、ほかはすべて手放したのだという。そのため多くの人には生産性のことしか考えていない人という印象を持たれている。間違いではないが、人生でそれだけを考えているわけではない。だらける瞬間が0.1秒もないわけではないが、そういう自分を目指して努力しているのは事実だ、と真子さんは説明した。

コロナで教室という戦略の根幹を失う

大きな転機はコロナだった。当時のテックキャンプは多額の資金を投じて全国に教室を展開していた。オンラインスクールが多い中で、教室があることを売りにしていた。真子さんは、自分が受講するなら教室があった方がいいと考え、人とのつながりや仲間との出会いを重視していた。オフラインへの投資は誰もやりたがらないことで、良くも悪くも逆張りで積み上げた自分たちなりの付加価値だった。

その戦略の前提が外部環境の変化で成り立たなくなり、真子さんは「どう考えても詰んだ」と思ったという。真子さんは「戦略の失敗を戦術で取り返すことはできない」と語る。だが、それを言ったら終わりなので、どこから戦略を巻き直すかを考えた。出した答えは、一般の受講者向けのBtoCから、企業研修なども含めて法人の需要に応えるBtoBに力を入れる方針だった。

結果的には、そこから会社が伸び、未来もあったので良かったと真子さんは振り返る。ただしその瞬間は売上が減り続け、2021年には真子さん自身の炎上騒ぎもあった。新しいことを始めても浮上できるのか、まったく見えなかったという。

責任感だけで動いている自分に気づく

BtoBの会社に適応しようと、真子さんは興味のなかった会食などにも顔を出した。そういうこともできる自分に変わらなければと考え、1年ほど頑張ったが、結論は「しんどかった」。

真子さんによれば、起業もサービス作りも、そしてメディアも、本来は金儲けを超えた「これが面白そうだ」という夢や希望が原動力のはずだ。ところがふと気づくと、責任感だけで動いていた。やりたくてやっているのではなく、やらなければならないからやっている。「will」はもうなく、すべて「must」で動いていた。株主から投資を受け、上場を前提に資金調達もしていたので、mustに議論の余地はなかった。

真子さんは「そのタイミングでパブリックに言えることでは絶対にない」と断ったうえで、心を殺してまで人生でやるべきことは一つもないと考えていると話した。どれほど大きな借金を背負っても、どれほど人に迷惑をかけても、自分の心が死んだまま続けた先に、関係者も含めた持続的で豊かな未来はない。極端な話、倒れて働けなくなったら、それは誰にとって豊かだったのか。取り組むことはすべて持続的でなければならず、その持続性を支えるのは、夢に向かって進んでいる希望や、自分のやっていることへの納得感だという。仕事にはやりたくないことも必ず生まれるが、大枠でポジティブが上回っていればいい。その比率が少しずつ逆転していったのだと真子さんは語る。

渡辺さんは、事業が伸びているときは成長のドーパミンで勢いに乗れるが、何かで停滞するとその部分がむき出しになると共感した。真子さんも、売上が右肩上がりのときは自分のすべてが「悪い意味で」肯定されてしまうと応じた。2021年からは事業もYouTubeも停滞した。そこで「自分は何がしたいのか」と考えたとき、答えは「クリエイティブなことがやりたい」だった。自分の仕事で多くの人に影響を与えることが起業の原点で、創造的な部分を発揮できないならやる意味がないと思えてきたという。渡辺さんは、プログラミングスクールの前に真子さんがプロダクトアウト型の事業ばかり手がけていたことを挙げ、テックキャンプでマーケットイン型に移ったものの原点はそちらにあると指摘した。

ただし真子さんは、やりたいことだけをやってうまくいくわけでもなく、それもまた持続的ではないと付け加える。大事なのはwillとmustの天秤のバランスを整えることだ。だから真子さんは、人生をかけて作ったWebサービスやアプリからも撤退してきた。人生のどこかで必ず、積み上がったものを減らすタイミングが来ると考えている。

mustの正体は「お金の関係」

渡辺さんは、willから始めた事業が大きくなると関係者が増え、それがmustの典型になるのではないか、と問いかけた。雇用する社員が増えると、自分で終わりを決めにくくなる。

真子さんはこれに同意し、mustを突き詰めると結局はお金だと話す。株式会社で利害関係者が増えるということは、儲かるか儲からないかでつながる人が増えるということで、それは社員も含む。スタートアップの初期には、雇用される側として得か損かを考える人はいない。給料の安さすら議論にならず、「これが世界にあるべきでしょ」「面白いじゃん」という熱量で集まる。その熱量は会社が大きくなっても残るが、薄まっていく。株主も数多くの投資先の一つとして、会社を金融商品のように見るようになる。「それが嫌なら投資を受けるな」というのが正論だ、と真子さんは認めている。

真子さんは、周りを見渡すと全員がお金のことしか考えておらず、自分も利益が上がるかどうかしか考えていない状態になったら、その人はリーダーをやめるべきではないかと考えている。企業価値や利益を高めることにゲーム的な面白さを感じるプロ経営者のような人もいて、その人はそれでいい。だが真子さん自身はそうではなかった。どれほど儲かっても意義を感じない仕事はやりたくないし、仲間とお金だけの関係ならやらない。どんな巨大企業の経営者のオファーがあっても同じだという。困難な時期は、自分のやりたくないことや手放すべきものをはっきりさせてくれる、と真子さんは語った。

渡辺さんは、伸びている時期は意外とそこに目が向かず、自分で決めているのに自分の会社ではなくなっていく感覚がある、と話した。多くの人が「面白いね」と言ってくれていたものが、伸びているか、利益が出ているかという軸に変わっていく。それは当然だが、熱狂的なファンがいなくなるような感覚がある、という。

真子さんは対照的な例としてイーロン・マスクを挙げた。良くも悪くも権力を自分に集中させ、議決権を握り続け、「火星に行く」という巨大な夢を掲げて困難を達成し続ける。次々と夢を示し、すべてを自分で決められ、「任せておけば大丈夫」という信用を保ち続ける人は、ああなるのだろうと真子さんは言う。渡辺さんは、あれほど大きくなればmustも積み重なるはずなのに、それに飲まれない振る舞いができるのはすごい、普通はできないと応じた。

渡辺さん自身の「やめる」難しさと、周囲の声

渡辺さんは、ひとつのメディアを9年続けてきた中で、やめようと思ったことはなかったと明かした。事業が立ち行かないような状況ではなく、続けられてしまう。だからこそ自分でやめる決断をするのは非常に難しかった。一方で、キャリアや人生のワクワクや鮮度を保つには、やめどきを自分でうまく設計することが大事だと感じたという。真子さんは「やめどきがすべて」と応じ、自分の決断が正しかったかは別として、違うと感じたときに思い切ってやめたことで人生が大きく変わってきた、それが自分にとっての「手放せば始まる」だと話した。

渡辺さんが「真子さんが決めたとき、周りは意外と賛同したのでは」と聞くと、真子さんは「身近な人ほど止めなかった」と答えた。渡辺さんは、やめるときは本人がメタ的に見られなくなっているので、周囲の声を参考にするのもいいのではないかと考えている。

真子さんは当時、困難を乗り越えてきた経営者たちに相談して回った。外部の人の多くは「もう少しやってみたら」という意見で、特に多かったのは「あと半年やってみて、それでも考えが変わらなければやめたほうがいい」という助言だった。「6か月後にまた会いましょう、そのときにまた聞かせてください」と言ってくれた人がいて、真子さんは救われたという。渡辺さんは、「1年に一度も着なかった服は処分する」といったルールのように、やめどきにも線引きしやすい基準を持てるといいのではないかと話した。

最悪のケースを「想定しきる」

ただ、半年待つと決めるのも簡単ではなかった。真子さんには連帯保証の借金があり、場合によっては10億円ほどの借金を個人で抱えたまま、すべてを失う可能性もあった。一旦考える時間をつくるには、最悪の未来を想定しなければならなかったと真子さんは言う。事業はすべてなくなり、顧客に迷惑をかけ、借金が残り、家も持てずに実家へ帰る。そこから始まる未来がどうなるか、実家で毎日何を食べ、何から始めるのかまで「想像しきった」。

そのとき、真子さんは自分ならまず生活のためにプログラミングをやると考えた。エンジニアリングができるので、その時点で食べていける。借金はもちろん返すが、生活が成り立たないほど取り立てても持続的に返せないので、返済は収入の一部になるはずだ。自分が倒れたら返せなくなる。なんだかんだで「詰んではいない」し、また起業する機会もあるだろう。こうして最悪の事態をすでに起きたものとして受け入れ、そうなってもいいと思ったうえで、結論を出すまでの時間を置くことにした。

渡辺さんが、多くの人が勧める悩みへの向き合い方だと言うと、真子さんは「もう本当にカーネギー」と応じ、D・カーネギーの『道は開ける』に書かれている「最悪のケースを想定し、そこからどうするかを考える」方法だと説明した。ただし「簡単には割り切れないですけどね」とも付け加えている。

やめたらYouTubeが伸びた — KPIがクリエイティブを殺す

渡辺さんは、真子さんのYouTubeが投稿頻度を落とした後、再開した動画で再生回数が戻っていたことに注目していた。大量投稿の時期はmust感が強く、過去のネタも使い回していたが、mustがなくなってからのほうが創造性が増して面白い動画になっていた、というのが渡辺さんの見方である。真子さんも、やっている最中はそれに気づけないと認めた。

真子さんによれば、登録者が95万〜96万人ほどに達したところで炎上が起き、7万〜8万人ほど減った。そこから100万人に届くまで2年以上かかっている。それまで急伸していたチャンネルがぴたりと止まり、出しても出しても伸びなかった。再生回数が大きく落ちたというより、新規の視聴者が増えず、同じ人にだけ届いていてバズらない状態だった。当時は事業の売上を下げないよう、少しでも動画で貢献しなければと焦っていた。だから本数を維持し、発言もマイルドになっていた。この時期はmustで動画を出していたと真子さんは言う。KPIが決まり、その数字のために動画を作った瞬間にクリエイティブは死ぬ。このチャンネルでは、自分が伸び伸びと面白いと思うものを出す以上の方法はない、というのが真子さんの結論だ。

渡辺さんは、雑誌やテレビ、YouTubeでも、プロデューサーが現場を回していた時代が「黄金期」「面白い時代」と言われやすいと指摘した。真子さんは、クリエイティブは個性あるひとりのプロデューサーから生まれるもので、本当は組織でやるべきものではない気もすると応じた。渡辺さんは、資金を集めることでより大きな創作に挑戦できる面もあり、組織化が手段として必要な場合もあると補った。

真子さんは、庵野さんが株式会社エヴァンゲリオンを作って上場し、「エヴァを毎年1本出します」というKPIを課されたら、また病んでしまうだろうと極端な例を挙げた。創作意欲が湧いているときに作らせ、そのとき必要なお金を大人が集めてくる、という関係でなければならない。作り手がmustで作り始めると、クリエイティブは本当に面白くなくなるという。

渡辺さんは、新しいことを始めるときもやめるときも決めるまでは悩み抜くが、決めた瞬間に不思議な解放感が生まれ、創造性が発揮されると話した。そこからwillで走り出しても、mustはまた蓄積していく。そのサイクルを繰り返すしかない、という点で二人の認識は一致した。

クリエイティブとはビジョンドリブンであること

真子さんは、クリエイティブなのは動画やコンテンツ制作に関わる人だけではないと強調した。営業にもバックオフィスにも、仕事の中に創造的な部分は必ずあり、それを殺さないようにしたいという。それはお金では測られないが、どう考えても一番重要な資産だと真子さんは言う。すべてをKPIで測れば、それは結局お金、つまり利益につながる数字で測ることになる。それだけで物事を測った瞬間に仕事は本当につまらなくなる、と真子さんは語った。

渡辺さんは、クリエイティブとは「ビジョンドリブンで走っていること」と定義できるかもしれないと述べた。真子さんは、ワクワク感を持っている人が明らかに強く、それを失わない決断をし続けることが大事だと応じた。

やめる、手放すべきタイミングの判断基準について、二人が行き着いたのはビジョンだった。世界を変えるといった大それたものでなくてもいい。身近なところをこうしたい、こういう人にこういう価値を届けたい、こういう痛みをなくしたい。それを今、説明できるかどうか。渡辺さんが「それを失いかけたらやめどきではないか」とまとめると、真子さんは「本当にやめた方がいいと思います」と答えた。

渡辺さんは、やめることを前向きに捉えて再出発したいと考えていたと話し、真子さんの「手放せば始まる」のプレゼンテーションは今見ると受け取り方が違い、すっと入ってきたと振り返った。新R25のコンテンツはしばらく残す予定だという。