アルコール依存症になると脳と体では何が起きるのか
VAIENCE バイエンス「やめたいのに止まらない」「たくさん飲まないと眠れない」「酒がないと毎日が楽しくない」。動画は、こうした状態に心当たりがあれば、すでにアルコール使用障害(アルコール依存症)かもしれないと問いかけるところから始まる。2016年の調査では15歳以上の世界人口の32.5%が飲酒者だったという。そのうえで動画は、人類はこの液体が依存性の高い毒だと本当に認識しているのかと問う。良い側面も多いアルコールだからこそ負の側面も知っておくべきだ、というのが動画の立場である。
飲酒の心地よさはどこから来るのか
動画によれば、飲酒の心地よさは、アルコールが中枢神経系、つまり脳や神経の興奮を抑えると同時に、快感に関わる報酬系にも作用することで生じる。その結果、独特のリラックス感や多幸感がもたらされる。一方でこの飲料には負の側面も多く、その一例がアルコール依存症だと動画は位置づける。
アルコール依存症の症状として挙げられるのは、飲酒量を制限できない、飲酒のために重要な社会的・職業的活動を減らす、離脱症状が出る、問題があると分かっていても飲酒を続ける、といったものである。
依存に至る「負のスパイラル」
なぜ人は酒に溺れるのか。動画はそのメカニズムを「実にロジカル」だと説明する。飲酒の初期段階では、アルコールが報酬系を繰り返し刺激し、多幸感や不安の軽減をもたらす。これが「アルコール=ポジティブな体験」として脳に刷り込まれ、飲酒への欲求と習慣の形成につながる。
その後、依存症に陥ってから断酒を試みても、睡眠障害や体調不良、不快感や精神的苦痛といった離脱症状が襲ってくる。その苦痛から逃れるために再び酒に手を伸ばす。動画はアルコール依存症を、アルコールの持つ負の側面がもたらす「負のスパイラル」だと表現している。
初期症状は意外に身近
動画は、アルコール依存症の症状が誤解されがちだと指摘する。医学的には、11の症状のうち12か月以内に少なくとも2つが現れることで定義される。その一部を要約すると、「意図した量より多く、あるいは意図した期間より長く摂取することが多い」「アルコールを摂取したいという強い欲求や衝動、渇望がある」といったものだ。この2つに当てはまる人は、医学的には軽度の依存症に分類されるという。
つまり依存症は、体の震えや社会生活の破綻だけを指すのではなく、症状の程度によってスペクトラム上に広がっている、というのが動画の説明である。
薬物として見たアルコールの有害性
身近すぎるために危険性が認識されにくいアルコールだが、動画は「脳に効くドラッグ」として見るとかなり極悪な化学物質だと述べる。その根拠として紹介されるのが、アルコール、ヘロイン、コカイン、覚醒剤など20種の薬物について、使用者本人と他者に及ぼす害を評価した研究である。この研究ではアルコールが72で断トツの1位となり、ヘロインが55、クラックコカインが54と続いたという。
脳内で起きる3つの反応
アルコールを摂取すると、脳内ではいくつかの異なる反応が生じると動画は説明する。
1つはGABAA受容体の活性化である。これにより抑制系のシグナルが増強され、脳の興奮が抑えられる。もう1つはNMDA受容体の抑制で、興奮性のシグナルが抑えられるとともに、短期記憶の低下などにもつながる。さらにアルコールは、側坐核を含む腹側線条体でドーパミン放出を誘発し、飲酒を強化する作用も持つ。
動画はこれを平たく言い換えている。飲酒とは、脳のブレーキ役であるGABAA受容体の作用を強めて強制的にリラックス状態へ導くと同時に、アクセル役であるNMDA受容体の作用を抑えることで判断力を鈍らせ、記憶を曖昧にし、いわゆる酔った状態に近づけるものだ。そしてこの体験がドーパミンによって「気持ちいいもの」として脳に学習され、次の飲酒へとつながっていく。
やめられない2つの要因:入手しやすさとキンドリング
毒だと分かっていてもなぜやめられないのか。動画は無視できない要素として2つを挙げる。
1つは社会的障壁の低さである。コンビニやスーパーに行けば24時間すぐに手に入り、テレビCMでも飲酒をポジティブな体験として描く映像があふれている。こうした環境ではアルコールの呪縛から逃れにくいのは明らかだ、と動画は述べる。
もう1つが、飲酒と断酒の負のスパイラルである。人間の脳には、飲酒・離脱・再飲酒のサイクルを繰り返すたびに神経の興奮性が亢進し、将来の離脱症状を悪化させる性質があるという。これは「キンドリング」と呼ばれる概念で、アルコールの呪縛から逃れられない大きな要因の1つだと動画は位置づけている。
依存症に陥った生活
依存症に陥ると、アルコールを摂取したいという欲望に絶えず追い立てられ、抗おうとしても失敗する。乱用によって職場、学校、家庭で重要な役割を果たせなくなることもある。生活の中心には常にアルコールがあり、社会活動を放棄することさえある。それでも飲酒はやめられず、アルコールを入手して飲むためだけに多くの時間が費やされるようになる、と動画は描写する。
断酒を阻む離脱症状
「このままではダメだ、断酒しよう」という強い決意すら、アルコールは頑なに拒むと動画は言う。それが離脱症状である。
程度には差があるが、軽度から中等度の症状は、酒をやめてから数時間以内、早ければ6時間以内に出始める。手の震え、頭痛、体に力が入らない、汗が止まらない、吐き気といった症状である。人によっては痙攣発作を起こすこともあり、これはアルコール離脱による発作で、単なる二日酔いとは全く別物だと動画は強調する。
さらに重くなると、自分を非難する声が聞こえるといった幻聴を経験することもある。場合によっては錯乱、不眠、眠れても恐ろしい悪夢、大量の発汗、重度の抑うつ状態に陥ることもあり、恐怖感を駆り立てるような幻覚が繰り返し生じることもあるという。一度深みにはまると、アルコールとの別れは決して容易ではない、というのが動画の見立てである。
肝臓だけではない身体的ダメージ
身体的なダメージについて、動画は脂肪性肝炎や肝硬変といった肝臓への影響に触れたうえで、それ以外にもアルコールが少なくとも7種類のがんと関係していると述べる。具体的には口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸、そして女性では乳がんである。アルコールは肝臓に悪いだけでなく、体のさまざまな部位でがんのリスクを高める可能性がある、というのが動画の指摘だ。
進化のミスマッチという仮説
最後に動画は、人がアルコールに溺れる理由を進化生物学の観点から考える。アルコールはもともと、自然界の果実に含まれる糖が酵母によって発酵して生じる揮発性の液体で、常温でも揮発して空気中に拡散する。そのためアルコールの存在は、周辺に熟した果実というエネルギー源があることを意味する。
太古の昔、樹上で暮らしていた人類の遠い祖先は、この香りを頼りに高カロリーな熟した果実を探し、地上へ降りたとする説があるという。動画は、この仮説が正しければ、人のDNAにはアルコールを渇望し魅了されるシグナルが刻まれていると言ってよいだろうと述べる。そしてこの欲望は、アルコールが微量で貴重な天然資源だった時代には有用でも、ワンコインでどこでも買える現代には適応していない。アルコール依存症の本当の姿は、こうした進化のミスマッチが生んだ悲劇なのかもしれない、と動画は推測として示している。
「人類に最も愛された毒」との距離
動画は、アルコールが食の喜びを高め、人々のコミュニケーションを豊かにし、時に一人の孤独な時間を埋めてくれる魅力的な飲み物であることを認めている。そのうえで、距離を誤れば極めて依存性の高い毒と化すと述べ、アルコールを「人類に最も愛された毒」と呼び、視聴者が適切な距離を保ち続けられることを願って締めくくっている。
やめたいのに止まらない。たくさん飲まないと眠れない。酒がないと毎日が楽しくない。そんなあなたは残念ながら、すでにアル中かもしれません。正式名称、アルコール使用障害。アルコール依存症とも呼ばれるこの疾患は、今も多くの人々を苦しめています。
ちなみに2016年の調査では、15歳以上の世界人口の32.5%が飲酒者でした。人類はその液体が依存性の高い毒であることを本当に認識しているのでしょうか?良い側面も多いアルコールだからこそ、この液体がもたらす負の側面も知っておくべきでしょう。今回は、アル中になるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
飲酒の心地よさについては今更言うまでもありません。この作用は、アルコールが中枢神経系、つまり脳や神経の興奮を抑えると同時に、快感に関わる報酬系にも作用することで生じます。その結果、独特のリラックス感や多幸感などがもたらされるのですが、この飲料には負の側面も多くあり、その一例がアルコール依存症です。
この疾患において、飲酒量を制限できない、飲酒のために重要な社会的・職業的活動を減らす、離脱症状が出る、問題があると分かっていても飲酒を続けるなどの症状が発生します。皆様の中にも当てはまる人がいるのではないでしょうか。
なぜ人は酒に溺れるのか。そのメカニズムは実にロジカルです。飲酒の初期段階において、アルコールは報酬系を繰り返し刺激し、多幸感や不安の軽減などをもたらします。そしてこれが「アルコール=ポジティブな体験」としてあなたの脳内に刷り込まれ、飲酒への欲求と習慣の形成につながるのです。その後依存症へと陥り、ある日突然断酒を試みてももう遅い。睡眠障害や体調不良、不快感や精神的苦痛などの離脱症状があなたを襲います。そしてあなたはこの苦痛から逃れるために、酒に再び手を伸ばす。アルコール依存症とは、アルコールのどす黒い素顔がもたらす負のスパイラルなのです。
ちなみにアルコール依存症の症状について誤解されている人も多いようですが、その初期症状は身近です。医学的にアルコール依存症とは、11の症状のうち12ヶ月以内に少なくとも2つが現れることと定義されるのですが、その症状の内訳の一部を要約して示すと、意図した量よりも多く摂取したり、意図した期間よりも長く摂取することが多い、アルコールを摂取したいという強い欲求や衝動、あるいは渇望があるなど。この2つに当てはまる人は、医学的には軽度の依存症に分類されます。体の震えや社会生活の破綻だけではなく、この疾患は症状の程度によってスペクトラム上に広がっているのです。
それでは、この病にあなたが冒される時、あなたの脳と肉体では何が起きているのでしょうか?アルコール依存症の真実を覗いてみましょう。
あまりに身近であるため危険性が認識されづらいアルコールですが、実はこれ、脳に効くドラッグとして見た時はかなり極悪な化学物質です。というのも、アルコール、ヘロイン、コカイン、覚醒剤など20種の薬物について、使用者本人や他者に及ぼす害を評価した研究では、アルコールがぶっちぎりの1位で、そのスコアは72。続いてヘロインが55、クラックコカインが54と続きます。
そしてあなたたち人間がこの魔性の液体を摂取した時、脳内では異なるいくつかの反応が生じます。1つはGABA-A受容体の活性化。この反応により抑制系のシグナルが増強され、脳の興奮が抑えられます。そしてもう一方はNMDA受容体の抑制。この反応により興奮性のシグナルが抑えられるとともに、短期記憶の低下などにもつながります。さらにアルコールは、側坐核を含む腹側線条体でドーパミン放出を誘発し、それによって飲酒を強化する作用も有します。
難しい言葉が続きましたが、つまり飲酒とは、脳のブレーキ役であるGABA-A受容体の作用を強め、強制的にリラックス状態へと導くと同時に、脳のアクセル役であるNMDA受容体の作用が抑制されることで判断力は鈍り、記憶も曖昧になり、いわゆる酔った状態へと近づいていくのです。さらにこの体験はドーパミンによって気持ちいいものとして脳に学習され、次の飲酒へとつながっていきます。このような人の姿は、街中であなたもよく目にすることでしょう。
なぜ毒と分かっていながらも、人はアルコールをやめられないのか。これには無視できない2つの要素が大きく関係しています。1つは社会的障壁の低さ。要するに、コンビニやスーパーに行けば24時間すぐに入手可能であり、テレビCMでもそれをポジティブな体験として描写する映像で溢れています。このような状態では、アルコールの呪縛から逃れることが困難であることは誰にとっても明らかでしょう。
そしてもう1つが、飲酒と断酒の負のスパイラルです。人間の脳は、飲酒、離脱、再飲酒というサイクルを繰り返すたびに脳の神経興奮性が亢進し、将来生じる離脱症状を悪化させる性質があります。これはキンドリングと呼ばれる概念であり、皆様がアルコールの呪縛から逃れられない大きな要因の1つです。
依存症に陥ると、あなたはアルコールを摂取したいという欲望に絶えず追い立てられ、それに抗おうとしてもその試みに失敗します。アルコールの乱用により、職場、学校、家庭などで重要な役割を果たせなくなることもあるでしょう。生活の中心には絶えずアルコールが存在し、社会活動を放棄することすらあります。それでもあなたは飲酒をやめません。アルコールを入手し、その胃に流し込むためだけに多くの時間が消費されることになります。
「このままじゃダメだ。断酒しよう」。このような強い決意すらも、アルコールは頑なに拒みます。それが離脱症状の存在です。これには程度の差もありますが、軽度から中程度の症状においては、お酒をやめてから数時間以内、早ければ6時間以内に出始めます。例えば、手が震える、頭が痛い、体に力が入らない、汗が止まらない、吐き気がするといった症状です。さらに人によっては痙攣発作を起こすこともあります。これはいわゆるアルコール離脱による発作で、単なる二日酔いとは全く別物です。
さらに症状が重くなると、自分を非難する声が聞こえるなどの幻聴を経験することもありますし、場合によっては錯乱したり、眠れなくなったり、眠れたとしても恐ろしい悪夢に襲われたり、大量の発汗を経験したり、重度の抑うつ状態となることもあります。さらにダメ押しとして、あなたの恐怖感を駆り立てるような一連の幻覚が繰り返し生じることもあるのです。
毒であるアルコールとの別れ。一度その深い沼にはまってしまうと、決して容易な道ではないのです。あの手この手であなたを束縛し続けると言えるでしょう。
また、身体的なダメージも無視することはできません。脂肪性肝炎、肝硬変などの肝臓への影響については、バイエンスの民であればご存知のことでしょう。ですが、それ以外にもアルコールは少なくとも7種類の癌と関係していることが分かっています。具体的には口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸、さらに女性では乳癌のリスクとも関係します。つまりアルコールは肝臓に悪いだけではなく、体の様々な場所で癌のリスクを高める可能性があるのです。
人間がアルコールの沼に溺れてしまう理由。これを進化生物学的観点から考えると、興味深いヒントが得られます。元々アルコールとは、自然に存在する果実中の糖が酵母で発酵されて生じる揮発性、つまり常温でも揮発し、周囲へと拡散する性質を持つ液体です。そのためアルコールの存在は、その周辺に熟したエネルギー源としての果実が存在することを意味します。太古の昔、樹木の上で生活していたあなたたちの遠い祖先は、この香りを頼りに高カロリーなエネルギー源としての熟した果実を探索し、地上へと舞い降りたとする説があります。もしこの仮説が真実であるならば、人のDNAにはアルコールを渇望し、それに魅了されるシグナルが刻み込まれていると言って良いでしょう。
そして太古の昔に誕生したこの欲望は、アルコールが微量で貴重な天然資源であった時代なら有用であっても、現代のようにワンコインでどこでも買える時代には適応していません。このような進化のミスマッチが生んだ悲劇、それがアルコール依存症の真の姿なのかもしれません。
アルコールは確かに魅力的なドリンクです。食の喜びを高め、人々のコミュニケーションを豊かにし、時に1人の孤独な時間を埋めてくれます。ですが、その距離を誤ると、残念ながら極めて依存性の高い毒と化します。人類に最も愛された毒。どうか皆様が適切な距離を保ち続けられることを願っています。今回のバイエンスはここまで。またお会いしましょう。
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