全宇宙を一つの塊にしたら何が残るのか 人類の塊からブラックホール宇宙論まで

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概要

小さなものを次々と巻き込み、一つの塊を大きくしていくゲーム「塊魂」。この動画は、その発想を宇宙全体にまで広げたらどうなるかを、物理的な数値を使って段階的に検討していく。巻き込む対象は人類から始まり、地上の人工物と生物、地球、太陽系、天の川銀河、そして観測可能な宇宙の範囲へと広がっていく。ナレーションは人類を「あなたたち」と呼ぶ外部の視点で語られ、最後には「宇宙そのものがブラックホールなのではないか」という仮説と、宇宙が無限である場合の結論にたどり着く。

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導入で動画はまず、地球自体も最初は小さな塵の集まりで、宇宙空間でガスや岩石、小惑星を巻き込みながら気の遠くなる時間をかけて成長し、あまたの生命を宿す星になったと述べる。重力によって物質が集まるという宇宙の営みを、塊魂の「巻き込んで大きくする」遊びに重ねるのがこの動画の出発点である。

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全人類を一つにまとめると直径930mの塊になる

最初に巻き込むのは人間である。2026年現在の人口をおよそ83億人とし、平均体重を50kgと仮定すると、全人類の重さはおよそ4億1500万トンになる。人体の密度はほぼ水と同じなので、隙間なく球状に詰め込むと直径はおよそ930mになると動画は計算する。東京タワーはもちろん、東京スカイツリーも巻き込める大きさだ。これを大きいと感じるか小さいと感じるかは人それぞれだろう、と動画は付け加える。

ただし、この塊も地球の重力には逆らえない。高さ930mまで人間が積み重なると、一番下には深さ930mの海底と同じ、およそ90気圧の圧力がかかる。1平方cmあたりおよそ93kgの重さを受ける計算である。

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骨は耐えても、体は「肉津波」になる

では骨はこの重みに耐えられるのか。動画によれば、人体で最も強い骨は太ももの大腿骨で、長さ方向から押される力に強く、およそ1000気圧まで耐えられるというデータがある。横方向から押されると強度は下がるが、それでも骨の組織はおよそ400気圧に相当する圧縮に耐えられるという。したがって約90気圧というだけで骨が折れるわけではない。ただし力が一部に集中したり、骨を曲げるように加わったりすれば折れるものもあるだろう、と動画は留保をつける。

問題はもっと柔らかい組織である。筋肉も脂肪も内臓も、これだけの圧力を受ければ容易に変形する。一方で人体の大部分を占める水は、押されてもほとんど縮まない。縮まないものを上から無理やり押し込めば、逃げ場を失った体は横に広がるしかない。その結果、全人類の塊は史上最大の「肉津波」となって四方八方に流れ出すだろう、と動画は描く。もっとも塊魂の世界では肉津波は起きないようなので、話はこの塊を使ってさらに巻き込む方向へ進む。

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人工物、生物、水を集めても地球の0.1%に届かない

次に地上のものをすべて巻き込む。ビルや道路、機械、プラスチックなど、人類が作ったもののうち廃棄物を除いて利用されているものを集めると、2020年時点でおよそ1兆1000億トンになる。これをコンクリートと同じ密度(1立方cmあたり2.4g)の球にすると、直径はおよそ9.6kmである。

興味深いことに、人間を含む地球上の全生物も、水分を抜いた乾燥重量ではおよそ1兆1000億トンと推定されている。つまり人工物の総量と生物の乾燥重量はほぼ同じだ。水分を含めると生物はおよそ2兆2000億トン、塊にすると直径はおよそ16kmになる。さらに地球上の水をすべて集めると、およそ135京トン、直径1300kmを超える塊ができる。

では、人工物も生命も水も取り去った後の地球はどうか。それでも直径およそ1万2800kmの塊が残る。地上から集めた塊は、質量で言えば地球の0.1%にもならない。月を加えれば多少の足しにはなるが、46億年という「プレイ時間」の差はあまりにも大きい、と動画は表現する。結局、地上のものをどれだけ集め直しても、最後にできるのはよく知っている地球そのものだという結論になる。

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太陽系を集めても、ほぼ太陽のまま

続いて太陽系のすべてを巻き込む。しかしここでも地球と似たことが起きる。太陽系の質量のおよそ99.85%は太陽が占めており、残りの質量のおよそ7割は木星で、これは太陽系全体のおよそ0.1%にあたる。地球に至っては、その木星の300分の1ほどしかない。つまり太陽系をすべて一つにしても、質量は今の太陽とほとんど変わらない。

ただし巻き込む過程では激しい光景が見られると動画は言う。例えば木星が太陽と一つになるとき、重力によって解き放たれるエネルギーだけでTNT換算でおよそ870メガトンに達し、先ほど作った地球の塊を100万回以上粉々にできるほどだという。

また、巻き込まれたものは元の姿を保てない。太陽は固体ではなく、表面がおよそ5500度、内部が1500万度にもなるプラズマである。人類も海も惑星もその中では溶け、それどころか原子核と電子にまで分かれ、何が何だったのか区別がつかなくなる。

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天の川銀河は「何もない空間」を転がし続ける苦行

太陽系を飛び出し、次は天の川銀河を丸ごと集める。動画はここで縮尺を変え、太陽系を集めた塊を直径5cmに縮めて考える。太陽に最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリまでの距離は、この縮尺でもおよそ1400kmある。天の川銀河の中心まではおよそ880万kmで、それでも銀河全体の幅の半分に届かない。端から端まで転がすなら、およそ3400万km移動する必要がある。

銀河には無数の星があるが、星と星の間はこれほど離れている。すべてを巻き込むには、何もなさそうに見える空間をひたすら転がしていくしかない、と動画は説明する。

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銀河を集め終わる前に塊はブラックホールになる

では天の川銀河を一つにしたとき、塊はどんな姿になっているのか。物質は重力で引き合って集まろうとする一方、圧縮されればそれに抵抗する圧力も生まれる。この二つが釣り合えば塊はそれ以上潰れず、星を集めても釣り合いが保たれるうちは、さらに重い星になるだけだ。

しかしそれにも限度がある。太陽の10万倍を超えるような質量の恒星は自らの重力を支えきれず、直接ブラックホールになると考えられている。超新星爆発を起こさず、比較的静かに崩壊していく。こうして生まれるのが「直接崩壊ブラックホール」である。

天の川銀河の質量は太陽のおよそ1兆5000億倍と言われている。したがって銀河をすべて集め終わるよりはるかに前に、塊はブラックホールとなり、近づいた光さえ逃がさなくなるだろう、と動画は述べる。

さらに銀河には最初から多数のブラックホールが存在し、天の川銀河だけでもその数は1億ほどとも言われる。筆頭は銀河の中心にあるいて座A*で、質量は太陽のおよそ400万倍と推定されている。ブラックホール同士も重力で引き合い、やがて合体する。塊はこうしたブラックホールも巻き込みながら大きくなっていき、その合体では時空の揺らぎが重力波となって伝わり、莫大なエネルギーを運び去る。

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光さえ逃さないはずのブラックホールが光る理由

物質を巻き込む際には強烈な光も放たれる。光さえ脱出できないはずのブラックホールがなぜ光るのか。動画の説明では、光を放っているのはブラックホールの周囲にできる降着円盤である。ブラックホールに近づいた物質は重力に引かれて落ちていくが、その途中で周囲を高速で回転し、円盤を作る。円盤の中では物質が摩擦などによって高温になり、原子核と電子に分かれたプラズマとなって、そこから強烈な電磁波が放射される。

超大質量ブラックホールの周囲がこうしてまばゆく輝く天体はクエーサーと呼ばれる。宇宙がまだ幼かった頃は超大質量ブラックホールの周囲に多くのガスがあったため、活発に輝いていたと考えられている。クエーサーは、この宇宙で発見されている最も明るい天体だという。

動画はこの仕組みが、質量をエネルギーに変える方法として非常に効率的である点を強調する。計算上は条件によって質量の40%以上をエネルギーに変えられる可能性がある。太陽のエネルギー源である核融合ではおよそ0.7%なので、その差は歴然だとする。

具体的な試算として、天の川銀河の恒星の合計質量を太陽の500億倍、エネルギーへの変換効率を10%と置く。すると銀河中の星をすべて巻き込んだときに放出されるエネルギーは、TNT換算で合計2×10の41乗トンになる。このエネルギーを使って毎秒一つずつ地球を破壊し続けても、使い切るまでに10年以上かかるという。

ただしこの輝きも永遠には続かない。光にも圧力があり、強くなりすぎると落ちてくる物質を外へ押し返してしまうことがある。またブラックホールが大きくなるほど、降着円盤の物質も大量に消費される。やがてすべてを巻き込み終えると塊は再び沈黙し、銀河全体をまばゆく照らしていた場所には完全な夜の静けさだけが残る、と動画は描写する。

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宇宙膨張とハッブル半径

天の川銀河を一つにした超巨大ブラックホールで、さらに宇宙全体を巻き込もうとしたらどうなるか。今度は直径10万光年の天の川銀河を5cmに縮めて考える。隣のアンドロメダ銀河はおよそ125cm先にある。この二つを含む数十個の銀河の集まりが局所銀河群で、その端から端まではおよそ5mである。

それぞれの大きさを基準にすると、銀河同士は銀河内の星同士よりもずっと近くにある。一つの銀河を集められたのなら、宇宙全体も案外簡単に集められると思うかもしれない、と動画は言う。

しかし宇宙は膨張している。宇宙の膨張によって遠くの天体ほど速く遠ざかっていき、ある距離を超えるとその速度は光の速度を上回る。その境目までの距離をハッブル半径と呼ぶ。観測結果にもよるが、およそ137億光年で、銀河を5cmに縮めた世界ではおよそ7kmにあたる。

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ハッブル半径の内側を集めると、同じ大きさのブラックホールになる

ここまでの範囲を巻き込んでできた塊を、動画は次のように検討する。ブラックホールには事象の地平面と呼ばれる境界があり、その内側から外へ情報が伝わることはない。ハッブル半径の内側にある物質とダークマター、そしてダークエネルギーをすべて質量に換算し、それを使って回転していないブラックホールの事象の地平面を計算すると、半径はおよそ137億光年となり、元のハッブル半径と同じ値になる。

つまり、この宇宙の領域にある物質とエネルギーを集めて計算すると、元の領域と同じ大きさのブラックホールになる。もしこの領域を外から眺められたら、ブラックホールに見えるのではないか。そんな疑問が浮かぶ、と動画は言う。この発想につながる仮説が「ブラックホール宇宙論」で、私たちが暮らす宇宙はさらに大きな宇宙にあるブラックホールの内部なのではないか、というものである。動画は、突飛に聞こえるかもしれないが数式上はブラックホールの内部に私たちが存在するような宇宙を形成することは可能だと紹介する。

一方で動画は、この仮説を支持する観測結果は今のところ見つかっていないと明言する。そして二つの半径が一致することには理由があると説明を加える。関係しているのは宇宙の曲率である。一般相対性理論では重力を時空の歪みとして説明するが、ここでいう曲率は個々の天体の周囲にできる時空の歪みとは区別され、宇宙全体を大きな尺度で見たときに空間がどう曲がっているかを表すものだ。観測によるとこの宇宙の曲率はゼロ、もしくは限りなくゼロに近い。これを前提に現在の宇宙の膨張率を使うと、物質とエネルギーの平均密度が決まる。その密度をもとに計算しているため、ハッブル半径と事象の地平面の半径が一致するのだという。つまりこの一致は、宇宙がブラックホールの内部である証拠ではなく、計算の前提から導かれるものとして位置づけられている。

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ハッブル半径の外側、そして無限の宇宙

宇宙はハッブル半径で終わりではなく、膨張によって光の速さで遠ざかる領域のさらに向こうにも広がっている。宇宙の本当の大きさには様々な推定値があり、曲率が限りなくゼロに近いことから、半径7兆光年以上と推定した物理学者もいると動画は紹介する。

では半径7兆光年の範囲をすべて巻き込んだらどうなるか。できるブラックホールの半径を計算すると、およそ180京光年となり、集めた範囲よりはるかに大きくなる。この計算をそのまま当てはめれば、すべてを集め終える前に塊が宇宙の大きさを超え、宇宙を丸ごと巻き込んでしまうことになる。

しかし動画は、現在は宇宙が無限に広がっていると考える方が主流だとする。そうであれば答えは単純で、どこまで転がしても終わらない。塊がどれほど大きくなっても、その先には常に無限の宇宙が広がっている。さらに、宇宙が無限なら自分たちが暮らす場所とまったく同じ宇宙も無数に存在することになり、転がし続けた先でまったく同じ光景を目にするかもしれない、と動画は続ける。

締めくくりとして動画は、今この瞬間も宇宙では重力によって塊が作られていると述べる。塵が集まり、岩石が衝突し、銀河が引かれ合う営みは、宇宙誕生から138億年が経った今も続いている。そして宇宙が無限なら、巻き込めるものにも終わりはない。「転がして巻き込み、大きくする」という138億年前に始まったこの営みは、まだ始まりに過ぎない、というのが動画の結論である。